(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】平面アンテナ、アンテナ積層体及び車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20240628BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20240628BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20240628BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240628BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q1/32 A
H01Q1/40
H01Q13/08
H01Q21/06
(21)【出願番号】P 2021519461
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2020019126
(87)【国際公開番号】W WO2020230819
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019093095
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020008921
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐山 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】奥田 崚太
(72)【発明者】
【氏名】萩原 南
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】茂木 健
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121397(WO,A1)
【文献】特開2016-015679(JP,A)
【文献】特開昭63-275204(JP,A)
【文献】特開2007-180648(JP,A)
【文献】特表2013-534095(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03477766(EP,A1)
【文献】特開2018-133667(JP,A)
【文献】実開平05-057911(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
B32B 1/00-43/00
B60J 1/00- 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する誘電体層と、
前記第1面に設けられるアンテナ導体と、
前記第2面
に設けられる接地導体と、
前記アンテナ導体に接続され又は近接する信号線を有する伝送線路とを備え、
前記誘電体層のうち前記信号線と接する誘電体部分は、28GHzにおける誘電正接が
0.007以下であ
り、
前記誘電体層は、樹脂層を含み、
前記樹脂層は、前記第1面を有する第1樹脂層と、前記第2面を有する第2樹脂層と、前記誘電体層の厚さ方向において前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の間に配置される第3樹脂層とを含み、
前記第3樹脂層は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層とは異なる樹脂材料で形成され、
28GHzにおける誘電正接は、前記第1樹脂層
及び前記第2樹脂層が0.002以下であり、前記第3樹脂層が0.002よりも高く0.010以下である、平面アンテナ。
【請求項2】
前記第3樹脂層は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層よりも硬い材質である、請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
前記誘電体部分は、前記樹脂層により形成された、請求項
1又は2に記載の平面アンテナ。
【請求項4】
前記樹脂層は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含有する、請求項
1から3のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項5】
前記誘電体部分は、テトラフルオロエチレン系ポリマーにより形成された、請求項4に記載の平面アンテナ。
【請求項6】
前記誘電体部分は、前記第1樹脂層の全体又は一部である、請求項1から5のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項7】
前記誘電体部分は、28GHzにおける誘電正接が0.002以下である、請求項
1から6のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項8】
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とのうち少なくとも一方は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含有する、請求項
1から7のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項9】
前記第1樹脂層は、前記第2樹脂層と同じ樹脂材料で形成された、請求項
1から8のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項10】
前記第3樹脂層は、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂のうち、少なくとも一つを含有する、請求項
1から9のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項11】
前記誘電体層は、前記信号線の全体と接する、請求項1から10のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項12】
前記アンテナ導体は、隙間が前記アンテナ導体の内部に生じるように形成される内部線状導体を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項13】
前記接地導体は、隙間が生じるように形成される線状接地導体を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項14】
前記接地導体は、隙間が生じるように形成される線状接地導体を含み、
前記内部線状導体の少なくとも一部は、平面視において、前記線状接地導体と重複する、請求項12に記載の平面アンテナ。
【請求項15】
前記アンテナ導体は、少なくとも一つのパッチ導体を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項16】
前記アンテナ導体は、アレイアンテナを構成する、請求項1から15のいずれか一項に記載の平面アンテナ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の平面アンテナと、
ガラス板と、
前記ガラス板に対向する側の第3面と、前記第3面とは反対側の第4面とを有する誘電体と、
前記ガラス板と前記誘電体とを貼り合わせる中間膜層とを備え、
前記平面アンテナの少なくとも一部を、前記ガラス板と前記誘電体との間に、前記中間膜層を介して挟持する、アンテナ積層体。
【請求項18】
前記平面アンテナは、前記ガラス板の外側にはみ出る突出部を有し、
前記アンテナ導体に給電する少なくとも一つの給電部を前記突出部に備える、請求項17に記載のアンテナ積層体。
【請求項19】
前記平面アンテナは、前記ガラス板の前記中間膜層の側の面に沿うように、前記中間膜層の内部に位置し、
前記中間膜層の厚さを100%としたとき、前記平面アンテナは、前記中間膜層の厚さに対して、5~95%の厚さの範囲に位置する、請求項17又は18に記載のアンテナ積層体。
【請求項20】
前記ガラス板は、第1のガラス板であり、
前記誘電体は、第2のガラス板であり、
前記第1のガラス板の平面視において、前記アンテナ導体の少なくとも一部と重複する遮光膜を備える、請求項17から19のいずれか一項に記載のアンテナ積層体。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか一項に記載の平面アンテナと、
湾曲面を有する誘電性の曲面体とを備え、
前記平面アンテナの少なくとも一部は、前記湾曲面に接着層により接着される、アンテナ積層体。
【請求項22】
請求項1から16のいずれか一項に記載の平面アンテナと、
前記平面アンテナが積層されるm(mは1以上の整数)層の誘電体とを備え、
第x層の誘電体の厚さの電気長をL
x(xは1からmまでの整数)と
し、前記第x層の誘電体の厚さをt
x
とし、前記第x層の誘電体の比誘電率をε
rx
とするとき、L
xは、式(1)で表され、所定周波数における空気中の波長をλ
0とし、Nを0以上の整数とするとき、式(2)を満足する、アンテナ積層体。
【数1】
【数2】
【請求項23】
請求項1から16のいずれか一項に記載の平面アンテナと、
ガラス板と、
前記ガラス板に対向する側の第3面と、前記第3面とは反対側の第4面とを有する誘電体と、
前記ガラス板と前記誘電体とを貼り合わせる中間膜層とを備え、
前記平面アンテナの少なくとも一部を、前記ガラス板と前記誘電体との間に、前記中間
膜層を介して挟持する、車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面アンテナ、アンテナ積層体及び車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のフロントガラスをはじめとする、合わせガラス等には、種々の電波を送受するアンテナが搭載されることが知られている。とくに、機械的損傷を低減するため、このような合わせガラスの中に、薄い樹脂シートやフィルム状のシートをベースとしたアンテナ(例えばメッシュ形状にした導電線条からなるアンテナ)を封入して、メガヘルツ帯域の電波を受信するガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-180648号公報
【文献】国際公開第2016/017801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、通信容量の増大とともに、ギガヘルツ帯域の電波を送受するアンテナの開発が進んでいる。このようなアンテナとして、アンテナ導体に給電する伝送線路を備える平面アンテナが知られている。しかしながら、1GHzを超える周波数帯では、伝送線路における伝送損失が大きくなりやすく、その結果、アンテナ利得が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、アンテナ利得の低下を抑制可能な平面アンテナ、アンテナ積層体及び車両用窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する誘電体層と、
前記第1面に設けられるアンテナ導体と、
前記第1面と前記第2面とのうち少なくとも一方の面に設けられる接地導体と、
前記アンテナ導体に接続され又は近接する信号線を有する伝送線路とを備え、
前記誘電体層のうち前記信号線と接する誘電体部分は、28GHzにおける誘電正接が0.007以下である、平面アンテナを提供する。また、本開示は、当該平面アンテナを備えるアンテナ積層体を提供するとともに、当該平面アンテナを備える車両用窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、アンテナ利得の低下を抑制可能な平面アンテナ、アンテナ積層体及び車両用窓ガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】平面アンテナの第1の構成例を示す斜視図である。
【
図2】伝送線路の第1の構成例を示す断面図である。
【
図3】伝送線路の第2の構成例を示す断面図である。
【
図4】伝送線路の第3の構成例を示す断面図である。
【
図5】伝送線路の第4の構成例を示す断面図である。
【
図6】伝送線路の第5の構成例を示す断面図である。
【
図7】平面アンテナの第2の構成例を示す平面図である。
【
図8】平面アンテナの第3の構成例を示す図である。
【
図9】平面アンテナの第4の構成例を示す図である。
【
図10】アンテナ積層体の第1の構成例を示す断面図である。
【
図11A】アンテナ積層体の第2の構成例を示す断面図である。
【
図11B】アンテナ積層体の第2の構成例をより具体的に示す断面図である。
【
図11C】アンテナ積層体の第2の構成例の変形例を示す断面図である。
【
図11D】アンテナ積層体のアンテナ効率を高める構成を説明する断面図である。
【
図11E】シミュレーション実施対象のアンテナ積層体の斜視図である。
【
図11F】アンテナ積層体のシミュレーション結果である。
【
図12】アンテナ積層体の第3の構成例を示す断面図である。
【
図13】マイクロストリップ線路のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図14】マイクロストリップ線路の一比較例を示す断面図である。
【
図15】シミュレーション上でのマイクロストリップ線路の構成を示す斜視図である。
【
図16】アンテナ積層体のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図17】シミュレーション上でのアンテナ積層体の第1の構成例を示す断面図である。
【
図18】シミュレーション上でのアンテナ積層体の第2の構成例を示す断面図である。
【
図19】ストリップ線路のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図20】ストリップ線路の一比較例を示す断面図である。
【
図21】シミュレーション上でのストリップ線路の構成を示す斜視図である。
【
図22】アンテナ積層体のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図23】シミュレーション上でのアンテナ積層体の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について説明する。なお、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0010】
本開示の一実施形態における平面アンテナは、マイクロ波やミリ波等の高周波帯(例えば、1GHz超~300GHz)の電波の送受に好適である。本開示の一実施形態における平面アンテナは、例えば、V2X通信システム、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、車載レーダーシステムなどに適用可能であるが、適用可能なシステムはこれらに限られない。
【0011】
図1は、平面アンテナの第1の構成例を示す斜視図である。
図1に示す平面アンテナ101は、誘電体を主成分とする誘電体層40と、誘電体層40の一方の表面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40を介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10に給電する伝送線路30とを備える。平面アンテナ101は、パッチアンテナ又はマイクロストリップアンテナと称される。
【0012】
図2は、伝送線路の第1の構成例を示す図であり、断面A-A(
図1参照)での断面図である。
図2に示す伝送線路30Aは、伝送線路30(
図1参照)の一例である。伝送線路30Aは、アンテナ導体10に接続される信号線31を有するマイクロストリップ線路である。
図2に示す形態では、誘電体層40は、1層のみで形成されている。
【0013】
誘電体層40は、第1主面41と、第1主面41とは反対側の第2主面42とを有する。誘電体層40の第1主面41に、アンテナ導体10及び信号線31が設けられ、誘電体層40の第2主面42に、接地導体20が設けられる。アンテナ導体10及び信号線31は、誘電体層40を介して接地導体20に対向する。第1主面41は、第1面の一例である。第2主面42は、第2面の一例である。
【0014】
誘電体層40は、誘電体を主成分とする板状又はシート状の基材である。第1主面41及び第2主面42は、いずれも、XY平面に平行である。誘電体層40は、例えば、誘電体基板でもよいし、誘電体シートでもよい。
【0015】
誘電体層40のうち信号線31と接する誘電体部分(以下、誘電体部分Pとも称する)は、28GHzにおける誘電正接(いわゆる、tanδ)が0.007以下である。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が0.007以下であると、伝送線路30Aの伝送損失が抑制されるので、平面アンテナ101のアンテナ利得の低下を抑制できる。誘電体部分Pは、伝送線路の伝送損失(ひいては、アンテナ利得の低下)を抑制する点で、0.006以下が好ましく、0.005以下がより好ましく、0.004以下がさらに好ましく、0.003以下がさらに好ましく、0.002以下がさらに好ましく、0.001以下が特に好ましい。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接は、0よりも大きければよく、例えば、0.00001以上でもよく、0.0005以上でもよく、0.001以上でもよい。
【0016】
なお、誘電正接(tanδ)は、25℃、28GHzで、日本工業規格(JIS R 1641:2007)に規定されている方法により、空洞共振器及びベクトルネットワークアナライザを用いて測定された値である。
【0017】
図2に示す形態では、誘電体部分Pは、誘電体層40の全体でもよいし、誘電体層40の一部でもよい。誘電体部分Pは、誘電体層40の全体であれば、信号線31全てにおいて伝送損失を抑制できるので好ましい。また、例えば、誘電体層40全てが、後述するテトラフルオロエチレン系ポリマーの「樹脂F」であれば、第1主面41および第2主面42の平均算術粗さRa(JIS B 0601:2013(対応国際規格ISO 4287:1997,Amd.1:2009))を1.0μm以下にできる。そのため、信号線31又は接地導体20として、例えば、銅からなる低粒度の箔膜(メッシュ状も含む)を、第1主面41又は第2主面42に貼り付けられる。このように、伝送線路30Aにおいて、信号線31と接地導体20の少なくとも一方に、低粒度の銅からなる箔膜(銅箔)を使用できるので、高い粒度の銅箔に比べて伝送線路の伝送損失の低下をより抑制でき、アンテナ利得を向上できる。
【0018】
誘電体層40は、信号線31の一部又は全体と接する。誘電体層40は、信号線31の全体と接することで、信号線31の一部と接する形態に比べて、誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が低下するので、アンテナ利得の低下を抑制する点で好ましい。
【0019】
誘電体層40の材料は、例えば、石英ガラス等のガラス、セラミックス、樹脂などが挙げられる。誘電体層40の材料には、後述するように平面アンテナ101を、車両用の合わせガラスの中に封入したり、平面アンテナ101を曲面状の誘電体(曲面体)に沿うようにしたりして取り付ける場合において、曲げに対応可能なフレキシブル性を発揮する樹脂を好ましく使用できる。
【0020】
誘電体層40が樹脂層を含む場合(つまり、誘電体層40の一部又は全部が樹脂層である場合)、その樹脂層が含有可能な樹脂として、例えば、テトラフルオロエチレン系ポリマー等のフッ素樹脂、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。特に、樹脂層がテトラフルオロエチレン系ポリマーを含有する場合、誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が小さいので、アンテナ利得の低下を抑制する点で好ましい。
【0021】
誘電体部分Pは、樹脂層(特に、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含有する樹脂層)により形成されると、誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が顕著に低下するので、アンテナ利得の低減を抑制する点で好ましい。なお、28GHzにおける誘電正接は、GHz帯の周波数における指標の例である。そのため、28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下であれば、例えば、1GHz~100GHzにおいても伝送線路30Aの伝送損失が抑制されるので、28GHz近傍に限らず、1GHz~100GHzにおける平面アンテナ101のアンテナ利得を向上できる。
【0022】
テトラフルオロエチレン系ポリマーの好ましい具体例として、TFE(テトラフルオロエチレン)とPPVE(CF2=CFO(CF2)3F)とNAH(無水ハイミックス酸)とを有する共重合体が挙げられる。この含フッ素共重合体は、例えば、共重合組成が、TFEに基づく単位/PPVEに基づく単位/NAHに基づく単位=97.9/2.0/0.1(モル%)であり、融点が、300℃であり、MFR(溶融流れ速度)が17.6g/10分である。このような物性値を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーの28GHzにおける誘電正接は、0.001程度である。
【0023】
また、誘電体層40は、可視光を透過する透明な誘電体部材が好ましく、「透明」には、半透明が含まれる。誘電体層40の可視光線透過率は、平面アンテナ越しの視野の遮りを抑える点で、例えば、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、60%以上がよりさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。また、上限は特に限定されないが、99%以下であってよく、95%以下であってよい。ここで、可視光透過率は、分光光度計により測定された分光透過率の値に、日本工業規格(JIS R3106(1998))により規定された重価係数を乗じて加重平均した値である。
【0024】
図1に示す形態では、アンテナ導体10は、その表面がXY平面に平行な導体パターンである。アンテナ導体10は、第1主面41に形成される導体パターンであり、第1主面41に配置される導体シート又は導体基板により形成されてもよい。アンテナ導体10に使用される導体の材料として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
アンテナ導体10は、例えば、少なくとも一つのパッチ導体を有する。
図1に示す形態では、アンテナ導体10は、一つのパッチ導体を有する例を示す。
【0026】
アンテナ導体10は、光透過性を高くするために、メッシュ状に形成されることが好ましい。ここで、メッシュとは、アンテナ導体10に網目状の透孔が空いた状態をいう。
【0027】
アンテナ導体10がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形が好ましく、意匠性が良い。また、メッシュの目は、自己組織化法によるランダム形状でもよく、そうすることでモアレを抑制できる。メッシュの線幅は、1~30μmが好ましく、6~15μmがより好ましい。また、メッシュの線間隔は、50~500μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。
【0028】
アンテナ導体10の開口率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。開口率は、アンテナ導体10の開口部を含めた面積当たりの開口部の面積の割合である。アンテナ導体10の開口率を大きくするほど、アンテナ導体10の可視光透過率を高くできる。
【0029】
また、アンテナ導体10は、可視光の透過度合いが誘電体層40よりも低い領域から構成されたソリッドなパターンでもよい。例えば、アンテナ導体10の全体は、不透明な面状導体から構成されてもよい。
【0030】
アンテナ導体10の厚さは、可視光透過率を高くするために400nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。アンテナ導体10の厚さの下限は特に限定されないが、アンテナの性能を向上するために2nm以上であってよく、10nm以上であってよく、30nm以上であってよい。なお、アンテナ導体10の厚さは、可視光透過率を高くする必要がなければ、上記に示す範囲に限らず、アンテナ導体10の放射効率が高くできる範囲内の値に、適宜、設定できる。
【0031】
また、アンテナ導体10がメッシュ状に形成される場合、アンテナ導体10の厚さは、1~40μmであってよい。アンテナ導体10がメッシュ状に形成されることにより、アンテナ導体10が厚くても、可視光透過率を高くできる。アンテナ導体10の厚さは、5μm以上がより好ましく、8μm以上がさらに好ましい。また、アンテナ導体10の厚さは、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましく、15μm以下が特に好ましい。
【0032】
図1,2に示す形態では、信号線31は、マイクロストリップ線路のストリップ線路であり、その表面がXY平面に平行な導体パターンである。信号線31は、第1主面41に形成される導体パターンであり、第1主面41に配置される導体シート又は導体基板により形成されてもよい。信号線31に使用される導体の材料として銅を挙げたが、他にも、金、銀、白金、アルミニウム、クロムなどが使用でき、また、これらの材料に限られない。
図1に示す形態では、信号線31は、アンテナ導体10と一体的に形成されている。
【0033】
信号線31は、アンテナ導体10に接続される一方の端部と、アンプ等の不図示の外部装置に接続される給電端である他方の端部とを有する。
図1に示す形態では、他方の端部には、不図示の外部装置と接続するためのコネクタ61が設けられている。信号線31は、Y軸方向に延伸するストリップ導体である。
【0034】
信号線31は、光透過性を高くする必要があれば、メッシュ状に形成されることが好ましい。ここで、メッシュとは、信号線31に網目状の透孔が空いた状態をいう。なお、信号線31がメッシュ状に形成される場合は、信号線31そのものを透明な誘電体上に形成すると、信号線31の視認性を低下させるうえで有効である。
【0035】
信号線31がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形であることが好ましい。メッシュの目が正方形であれば、意匠性が良い。また、自己組織化法によるランダム形状でもよく、そうすることでモアレを抑制できる。メッシュの線幅は、1~30μmが好ましく、6~15μmがより好ましい。メッシュの線間隔は、50~500μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。
【0036】
信号線31の開口率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。開口率は、信号線31の開口部を含めた面積当たりの開口部の面積の割合である。信号線31の開口率を大きくするほど、信号線31の可視光透過率を高くできる。
【0037】
また、信号線31は、可視光の透過度合いが誘電体層40よりも低い領域から構成されたソリッドなパターンでもよい。例えば、信号線31の一部又は全体は、不透明な面状導体から構成されてもよい。例えば、周辺領域に黒色セラミックス等の遮光膜が配置される車両用のガラス(フロントガラス等)に平面アンテナ101を取り付ける場合、平面視において信号線31と該遮光膜とが重なる配置であれば、信号線31をソリッド状(べた状)にしても視認性の低下を抑制できる。その場合、信号線31がソリッド状であることで、伝送損失の低下を抑制できる。同様に、後述する接地導体20についても、遮光膜と重なる配置を有する場合、重なる部分はメッシュ状に限らずソリッド状(べた状)でもよい。このように、信号線31および接地導体20の少なくとも一部がソリッド状であれば、電気的な安定性を有するだけでなく、メッシュ状の場合に曲げが生じる際、メッシュ線の断線を生じ難くできる点で優位である。
【0038】
接地導体20は、その表面がXY平面に平行な導体パターンである。接地導体20は、第2主面42に形成される導体パターンであり、第2主面42に配置される導体シート又は導体基板により形成されてもよい。接地導体20に使用される導体の材料として銅を挙げたが、他にも、金、銀、白金、アルミニウム、クロムなどが使用でき、また、これらの材料に限られない。
【0039】
接地導体20は、光透過性を高くする必要があれば、メッシュ状に形成されることが好ましい。ここで、メッシュとは、接地導体20に網目状の透孔が空いた状態をいう。なお、接地導体20がメッシュ状に形成される場合は、接地導体20そのものを、透明な誘電体に配置すると、接地導体20の視認性を低下させるうえで有効である。
【0040】
接地導体20がメッシュ状に形成される場合も、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形であることが好ましく、意匠性が良い。また、メッシュの目は、自己組織化法によるランダム形状でもよく、そうすることでモアレを防ぐことができる。メッシュの線幅は、1~30μmが好ましく、6~15μmがより好ましい。メッシュの線間隔は、50~500μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。
【0041】
接地導体20の開口率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。開口率は、接地導体20の開口部を含めた面積当たりの開口部の面積の割合である。接地導体20の開口率を大きくするほど、接地導体20の可視光透過率を高くできる。
【0042】
また、接地導体20は、可視光の透過度合いが誘電体層40よりも低い領域から構成されたソリッドなパターンでもよい。例えば、接地導体20の一部又は全体は、不透明な面状導体から構成されてもよい。
【0043】
接地導体20の厚さは、0.09μm以上が好ましく、0.35μm以上がより好ましい。また、接地導体20の厚さは、110μm以下が好ましい。接地導体20の厚さが上記範囲内であれば、アンテナ導体10のアンテナ利得を高めることができる。
【0044】
また、接地導体20がメッシュ状に形成される場合における接地導体20の厚さは、0.3μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましく、5μm以上が特に好ましく、10μm以上が最も好ましい。また、接地導体20がメッシュ状に形成される場合における接地導体20の厚さは、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。接地導体20がメッシュ状に形成されることにより、接地導体20が厚くても、可視光透過率を高くできる。
【0045】
接地導体20の主面の面積は、アンテナ導体10の主面の面積よりも大きいことが好ましい。接地導体20の主面の面積がアンテナ導体10の主面の面積よりも大きければ、電磁遮蔽性能が高い。接地導体20の主面の面積は、アンテナ導体10の主面の面積の3倍以上がより好ましく、4倍以上がさらに好ましい。
【0046】
平面アンテナ101は、建物や車両等の窓ガラスに取り付けてもよく、窓ガラスは1枚からなるいわゆる単板でもよいし、合わせガラスでもよい。平面アンテナ101を窓ガラスに取り付けるために例えばスペーサが用いられる。スペーサを形成する材料としては、平面アンテナ101および窓ガラスの接触面に固定できる材料であれば特に限定されず、例えば、接着剤、弾性シール、または金属を使用できる。接着剤や弾性シールを形成する材料として、例えば、シリコーン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、アクリル系樹脂など公知の樹脂を用いることができる。金属としては、アルミニウムなどで形成できる。
【0047】
また、平面アンテナ101は、ビルや家屋のような建物用のガラスに取り付ける場合、室内側と室外側の少なくとも一方に取り付けてもよく、室内側と室外側の両方に取り付けてもよい。このように、平面アンテナ101を、室内側と室外側の両方に取り付ける場合、所定の周波数帯(例えば、28GHz)を含む電波の中継局(リピーター)として機能するインフラの役割を果たすこともできる。
【0048】
また、平面アンテナ101は、窓ガラスを誘電体層40として用い、窓ガラスにアンテナ導体10、接地導体20、および信号線31を設けることにより形成してもよい。例えば、自動車用や建築用等の窓ガラスとして28GHzにおけるtanδが、0.007以下、好ましくは0.006以下のガラス材料を対象に、該窓ガラスに信号線31、アンテナ導体10及び接地導体20を取り付けることで、容易に平面アンテナ101を実現できる。
【0049】
図3は、伝送線路の第2の構成例を示す図であり、断面A-A(
図1参照)での断面図である。上述の伝送線路と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図3に示す伝送線路30Bは、伝送線路30(
図1参照)の一例である。伝送線路30Bは、アンテナ導体10に接続される信号線31を有するマイクロストリップ線路である。
図3に示す形態では、誘電体層40は、複数の層から形成されている。
【0050】
図3に示す形態では、誘電体層40は、第1主面41を有する第1樹脂層43と、第2主面42を有する第2樹脂層44と、誘電体層40の厚さ方向において第1樹脂層43と第2樹脂層44との間に配置される第3樹脂層45とを含む。第3樹脂層45は、第1樹脂層43及び第2樹脂層44とは異なる樹脂材料で形成されている。第3樹脂層45が第1樹脂層43及び第2樹脂層44よりも硬い材質であることにより、平面アンテナ101の剛性が向上する。また、第3樹脂層45が耐熱性を有する(高いガラス転移温度)と、製造上、高温成形が可能となる。さらに、第3樹脂層45は、28GHzにおけるtanδが、第1樹脂層及び第2樹脂層のそれに比べて高い樹脂でも、生産性が高い材料であれば、材料コストを抑えることも期待できる。
【0051】
図3に示す形態では、誘電体層40のうち信号線31と接する誘電体部分Pは、第1樹脂層43の全体又はその一部である。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下であることにより、伝送線路30Bの伝送損失が抑制されるので、平面アンテナ101のアンテナ利得の低下を抑制できる。なお、第1樹脂層43及び第2樹脂層44は、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲が、第1の構成例と同じであるとよい。
【0052】
第1樹脂層43と第2樹脂層44とのうち少なくとも一方は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含有すると、誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が低くなるので、アンテナ利得の低下を抑制する点で好ましい。
【0053】
第1樹脂層43および第2樹脂層44は、同じ樹脂材料で形成されると、誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が顕著に低下するので、アンテナ利得の低下を抑制する点で好ましい。とくに、これらの層は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含有することが好ましい。
【0054】
また、第3樹脂層45は、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂のうち、少なくとも一つを含有することが好ましい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。なお、第3樹脂層45は、28GHzにおける誘電正接が小さいことが好ましく、0.010以下であればよく、0.007以下が好ましく、0.006以下がより好ましく、0.005以下がより好ましく、0.003以下がさらに好ましく、0.001以下がより一層好ましい。
【0055】
また、誘電体層40は、第1樹脂層43、第2樹脂層44及び第3樹脂層45の3層からなる場合、第1樹脂層43及び第2樹脂層44が28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下の材料、とくに、テトラフルオロエチレン系ポリマーが好ましいとしたが、これに限らない。例えば、誘電体層40は、28GHzにおける誘電正接が、0.007以下の材料、好ましくは0.006以下の材料が含まれていれば4層以上でもよい。また、誘電体層40が3層の場合、第1樹脂層43~第3樹脂層のいずれかが、28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下の材料であってもよい。この場合、第3樹脂層45が、テトラフルオロエチレン系ポリマーであり、第1樹脂層43及び第2樹脂層44が、それぞれ、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂のうち少なくとも一つを含有する構成でもよい。この構成における第1樹脂層43及び第2樹脂層44は、28GHzにおける誘電正接が0.010以下であればよく、0.007以下が好ましく、0.006以下がより好ましく、0.005以下がより好ましく、0.003以下がさらに好ましく、0.001以下がより一層好ましい。
【0056】
図1に示す伝送線路30は、マイクロストリップ線路であるが、アンテナ導体10に給電する伝送線路は、マイクロストリップ線路以外の伝送線路でもよい。伝送線路のその他の例として、ストリップ線路、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路(Conductor Back Coplanar Wave Guide;CBCPW)、SIW(Substrate Integrated Waveguide)、PWW(Post Wall Waveguide)、CPS(Coplanar Strip;平行二線型のライン)、スロットラインなどがある。
【0057】
図4は、伝送線路の第3の構成例を示す図である。上述の伝送線路と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図4に示す伝送線路30Cは、アンテナ導体10に接続される信号線31を有するコプレーナ線路である。
図4に示す形態では、誘電体層40は、1層のみで形成されているが、第2の構成例のように3層で形成されてもよい。
【0058】
第3の構成例では、誘電体層40の第1主面41に、アンテナ導体10、信号線31及び接地導体24,25が設けられ、誘電体層40の第2主面42には、接地導体が設けられていない。伝送線路30Cは、信号線31と接地導体24との間に形成される第1のギャップと、信号線31と接地導体25との間に形成される第2のギャップとを有する。
【0059】
図4に示す形態では、誘電体層40のうち信号線31と接する誘電体部分Pは、誘電体層40の全体又はその一部である。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が0.006以下であることにより、伝送線路30Cの伝送損失が抑制されるので、平面アンテナのアンテナ利得の低下を抑制できる。なお、誘電体層40は、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲が、第1の構成例の誘電体層40と同じであるとよい。
【0060】
図5は、伝送線路の第4の構成例を示す図である。上述の伝送線路と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図5に示す伝送線路30Dは、アンテナ導体10に接続される信号線31を有するストリップ線路である。
図5に示す形態では、誘電体層40は、1層のみで形成されている。
【0061】
伝送線路30Dは、第1主面41に形成された接地導体71と、第2主面42に形成された接地導体72と、接地導体71と接地導体72とに挟まれた誘電体層40と、誘電体層40の内部に設置された信号線31とを有する。また、伝送線路30Dは、Y軸方向に延びる第1導体壁73と、Y軸方向に延びる第2導体壁74とを、X軸方向に間隔を空けて備える。接地導体71と接地導体72は、第1導体壁73と第2導体壁74によって接続される。例えば、第1導体壁73と第2導体壁74は、それぞれ、Z軸方向に延伸する複数のビアがY軸方向に沿って所定の間隔で並ぶように点在して形成される。
【0062】
図5に示す形態では、誘電体層40のうち信号線31と接する誘電体部分Pは、誘電体層40の全体又はその一部である。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下であることにより、伝送線路30Dの伝送損失が抑制されるので、平面アンテナのアンテナ利得の低下を抑制できる。なお、誘電体層40は、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲が、第1の構成例の誘電体層40と同じであるとよい。
【0063】
図6は、伝送線路の第5の構成例を示す図である。上述の伝送線路と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図6に示す伝送線路30Eは、アンテナ導体10に接続される信号線31を有するストリップ線路である。
図6に示す形態では、誘電体層40は、複数の層から形成されている。
【0064】
図6に示す形態では、誘電体層40は、第1主面41を有する第1樹脂層46と、第2主面42を有する第2樹脂層47と、誘電体層40の厚さ方向において第1樹脂層46と第2樹脂層47との間に配置される第3樹脂層48とを含む。
【0065】
伝送線路30Eは、第1主面41に形成された接地導体71と、第2主面42に形成された接地導体72と、接地導体71と接地導体72とに挟まれた誘電体層40と、誘電体層40内の第3樹脂層48の内部に設置された信号線31とを有する。
【0066】
第3樹脂層48は、第1樹脂層46及び第2樹脂層47とは異なる樹脂材料で形成されている。第3樹脂層48が第1樹脂層46及び第2樹脂層47よりも軟らかい材質であっても、誘電体層40は接地導体71,72に挟まれているので、平面アンテナの剛性の低下を抑制できる。
【0067】
図6に示す形態では、誘電体層40のうち信号線31と接する誘電体部分Pは、第3樹脂層48の全体又はその一部である。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下であることにより、伝送線路30Eの伝送損失が抑制されるので、平面アンテナのアンテナ利得の低下を抑制できる。なお、第3樹脂層48は、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲が、第1の構成例と同じであるとよい。
【0068】
図7は、平面アンテナの第2の構成例を示す平面図である。上述の平面アンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図7に示す平面アンテナ102は、可視光が透過する誘電体層40と、誘電体層40の一方の表面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40を介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10に給電する伝送線路30とを備える。平面アンテナ102は、パッチアンテナ又はマイクロストリップアンテナと称される。
【0069】
図7に示す形態では、アンテナ導体10は、4つのパッチ導体11,12,13,14を有するアレイアンテナを構成する。
【0070】
アンテナ導体10は、可視光の透過度合いが誘電体層40よりも低い領域から構成されたソリッドなパターンであってもよい。例えば、アンテナ導体10の全体は、複数のパッチ導体11~14を含め、不透明な面状導体から構成されてもよい。
【0071】
信号線31は、パッチ導体11,12への分岐路とパッチ導体13,14への分岐路とが接続される分岐箇所36に接続される一方の端部32と、アンプ等の不図示の外部装置に接続される給電端である他方の端部33とを有する。平面アンテナ102では、信号線31は、Y軸方向に延伸するストリップ導体であり、端部32がアンテナ導体10に接続されている。
【0072】
接地導体20は、隙間が生じるように形成される線状接地導体27と、線状接地導体27に接続される面状接地導体26とを有する。面状接地導体26は、第2主面42の一端辺に帯状に設けられたグランド部である。面状接地導体26は、給電端である端部33に対応するグランド電極である。
【0073】
平面アンテナ102では、線状接地導体27は、隙間が生じるように網目状に形成され、当該隙間によって視野(透明性)を確保できる。平面アンテナ102では、格子状の隙間が形成されている。
【0074】
平面アンテナ102では、接地導体20は、線状接地導体27と接し、接地導体20の外縁を形成する外縁線状導体28を含む。外縁線状導体28は、線状接地導体27を囲んでいる。なお、外縁線状導体28は、線状接地導体27の一部を囲むように配置されてもよいが、外縁線状導体28自体を配置しなくてもよい。外縁線状導体28配置の有無については、他の平面アンテナの形態でも同様である。
【0075】
平面アンテナ102では、
図7に示されるように、平面視において、アンテナ導体10と重複する第1領域21と、アンテナ導体10と重複しない第2領域22とに、接地導体20が設けられている。より具体的に、平面アンテナ102では、線状接地導体27が第1領域21と第2領域22の両方に形成されている。
【0076】
第2領域22は、平面アンテナ102によって送受される電波の、誘電体層40における実効波長をλとすると、λ/4×λ/4の面積あたりに接地導体20が占める面積の割合(以下、割合Rとも称する)が50%以下の領域23を有する。例えば、領域23は、可視光の透過を遮る線状接地導体27の割合Rが50%以下である。第2領域22がこのような領域23を有することにより、視野の遮りを抑え、指向性に優れ、所望の送受感度を有する平面アンテナ102を提供できる。
【0077】
例えば、平面アンテナ102を窓ガラス200の表面又は内部に設置した場合、割合Rが50%以下の領域23を有することにより、平面アンテナ102(特に、接地導体20)が窓ガラス200越しの視野を遮ることを抑制できる。割合Rは、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。割合Rの下限は、0%超であればとくに制限されないが、安定したアンテナ利得を確保するために例えば、割合Rは、2%以上であればよく、5%以上であれば好ましい。また、割合Rが50%以下の領域23を有するとともに、第2領域22全ての面積あたりに接地導体20が占める面積の割合(以下、割合R’とも称する)が50%以下であると、より好ましい。割合R’も、割合Rと同様に、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。割合R’の下限は、0%超であればとくに制限されないが、安定したアンテナ利得を確保するために例えば、割合R’は、2%以上であればよく、5%以上であれば好ましい。
【0078】
割合Rが50%を超えると、視野の確保が難しくなる。割合Rが例えば2%未満になると、視野の確保が容易になるが、アンテナ利得の確保が難しくなる。また、割合R’が50%を超えると、視野の確保が難しくなり、割合R’が例えば2%未満になると、視野の確保が容易になるが、アンテナ利得の確保が難しくなる場合がある。
【0079】
アンテナ導体10は、隙間がアンテナ導体10の内部に生じるように形成される内部線状導体17を含む。平面アンテナ102では、内部線状導体17は、格子状の隙間が生じるように網目状に形成されている。内部線状導体17の少なくとも一部は、平面視において、接地導体20の線状接地導体27と重複しているが、内部線状導体17の全てが線状接地導体27と重複しているとより好ましい。このように、アンテナ導体10と接地導体20の両方が、隙間が生じるように線状導体によって形成されているので、視野の確保が更に容易になる。
【0080】
平面アンテナ102では、アンテナ導体10は、内部線状導体17と接し、アンテナ導体10の外縁を形成する外縁線状導体18を含む。外縁線状導体18は、内部線状導体17を囲んで閉じた状態になっている。このように、アンテナ導体10について、外縁線状導体18が内部線状導体17を囲む構成とすることで、不透明な面状導体の場合の電流分布との相違を抑制でき、良好なアンテナ特性を確保できる。
【0081】
信号線31は、隙間が信号線31の内部に生じるように形成される内部線状導体37を含む。平面アンテナ102では、内部線状導体37は、格子状の隙間が生じるように網目状に形成されている。内部線状導体37の少なくとも一部は、平面視において、接地導体20の線状接地導体27と重複しているが、内部線状導体37の全てが線状接地導体27と重複しているとより好ましい。このように、信号線31と接地導体20の両方が、隙間が生じるように線状導体によって形成されているので、視野の確保が更に容易になる。
【0082】
平面アンテナ102では、信号線31は、内部線状導体37と接し、信号線31の外縁を形成する外縁線状導体38を含む。外縁線状導体38は、内部線状導体37を囲んで閉じた状態になっている。このように、信号線31について、外縁線状導体38が内部線状導体37を囲む構成とすることで、不透明な面状導体の場合の電流分布との相違を抑制でき、良好なアンテナ特性を確保できる。
【0083】
図7に示す形態では、誘電体層40のうち信号線31と接する誘電体部分Pは、誘電体層40の全体又はその一部である。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下であることにより、伝送線路30の伝送損失が抑制されるので、平面アンテナ102のアンテナ利得の低下を抑制できる。なお、誘電体層40は、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲が、第1の構成例の誘電体層40と同じであるとよい。
【0084】
図8は、平面アンテナの第3の構成例を示す図であり、アンテナ導体10に給電する伝送線路がコプレーナ線路によって構成された平面アンテナの斜視図である。上述の平面アンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図8に示す平面アンテナ103は、可視光が透過する誘電体層40と、誘電体層40の一方の表面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40を介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10にスロット34を介して給電する伝送線路30Fとを備える。つまり、伝送線路30Fは、アンテナ導体10に近接する信号線31を有するコプレーナ線路である。
【0085】
図8において、信号線31及び接地導体20は、誘電体層40の第2主面42(アンテナ導体10が形成される第1主面41の反対側の面)に形成されている。伝送線路30Fは、並走する一対のギャップと、それらの一対のギャップに挟まれた信号線31(この場合、中心導体とも称する)とを有する。伝送線路30Fの一方の端部に形成されるスロット34と、第1主面41に形成されるアンテナ導体10とが高周波的に結合する。スロット34は、接地導体20に形成された空隙である。
【0086】
図8に示す形態では、接地導体20は、隙間が生じるように形成される線状接地導体27を有し、線状接地導体27は、隙間が生じるように網目状に形成され、当該隙間によって視野(透明性)を確保できる。なお、信号線31とアンテナ導体10との少なくとも一方が、隙間が生じるように形成される線状導体を有してもよい。これにより、更なる透明性を確保できる。
【0087】
図8に示す形態では、誘電体層40のうち信号線31と接する誘電体部分Pは、誘電体層40の全体又はその一部である。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下であることにより、伝送線路30Fの伝送損失が抑制されるので、平面アンテナ103のアンテナ利得の低下を抑制できる。なお、誘電体層40は、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲が、第1の構成例の誘電体層40と同じであるとよい。
【0088】
図9は、平面アンテナの第4の構成例を示す図であり、アンテナ導体10に給電する伝送線路がマイクロストリップ線路によって構成された平面アンテナの斜視図である。上述の平面アンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図9に示す平面アンテナ104は、可視光が透過する誘電体層40A,40Bと、誘電体層40Aの一方の表面に設けられるアンテナ導体10と、誘電体層40Aを介してアンテナ導体10と対向する接地導体20と、アンテナ導体10にスロット34を介して給電する伝送線路30Gとを備える。つまり、伝送線路30Gは、アンテナ導体10に近接する信号線31を有するマイクロストリップ線路である。
【0089】
図9において、接地導体20は、一対の誘電体層40A,40Bの間に挟まれている。アンテナ導体10は、第1誘電体層40Aの表面に形成されたパッチ導体である。信号線31は、第2誘電体層40Bの表面に形成されたストリップ導体である。接地導体20に空けられたスロット34を介して、アンテナ導体10と伝送線路30Gとが電磁結合することによって、アンテナ導体10が給電されて励振する。スロット34は、平面視で、信号線31と交差する。
【0090】
図9に示す接地導体20が、隙間が生じるように形成される線状接地導体を有することが好ましい。当該隙間によって視野(透明性)を確保できる。なお、信号線31とアンテナ導体10との少なくとも一方が、隙間が生じるように形成される線状導体を有してもよい。これにより、更なる透明性を確保できる。
【0091】
図9に示す形態では、誘電体層40Bのうち信号線31と接する誘電体部分Pは、誘電体層40Bの全体又はその一部である。誘電体部分Pの28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下であることにより、伝送線路30Gの伝送損失が抑制されるので、平面アンテナ104のアンテナ利得の低下を抑制できる。なお、誘電体層40Bは、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲が、第1の構成例の誘電体層40と同じであるとよい。さらに、誘電体層40Aも、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲は、第1の構成例の誘電体層40と同じであると好ましい。
【0092】
図10は、アンテナ積層体の第1の構成例を示す断面図である。
図10に示すアンテナ積層体301は、平面アンテナ100、誘電体層としてのガラス板201、誘電体層としてのガラス板202、及び中間膜層203を備える。なお、ガラス板201及びガラス板202は、それぞれ、誘電体層の一例であり、これらの少なくとも一方に樹脂材料を使用してもよい。樹脂材料としては、アクリル樹脂、ポリエチレンフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、テトラフルオロエチレン系ポリマー等のフッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。このことは、後述する
図11A、
図11Bおよび
図11C等に示す各アンテナ積層体においても適用できる。以降、誘電体層がガラス板201及びガラス板202である形態について説明する。なお、ガラス板201は、第1のガラス板とも称し、ガラス板202は、第2のガラス板とも称する。
【0093】
平面アンテナ100は、本開示の一実施形態における平面アンテナであり、例えば、上述の平面アンテナ101等に相当する。ガラス板201は、第1ガラス面81と、第1ガラス面81とは反対側の第2ガラス面82とを有する。ガラス板202は、ガラス板201に対向する側の第3ガラス面83と、第3ガラス面83とは反対側の第4ガラス面84とを有する。ガラス板202は、誘電体の一例である。第3ガラス面83は、第3面の一例であり、第4ガラス面84は、第4面の一例である。中間膜層203は、ガラス板201とガラス板202とを貼り合わせる。つまり、アンテナ積層体301は、平面アンテナ100付きの合わせガラスである。平面アンテナ100は、ガラス板201の外側への放射方向Rdに放射する。
【0094】
ガラス板201の厚さt11は、アンテナ積層体301の用途により、適宜、決めることができ、例えば0.2mm~20mmの範囲で調整できる。例えば、アンテナ積層体301を自動車の窓ガラス(例えば、フロントガラス等)に適用する場合、ガラス板201の厚さt11は、強度確保、とくに強度の指標となる飛び石による耐性を高めるため、1.1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、1.8mm以上がさらに好ましい。また、自動車の窓ガラス(例えば、フロントガラス等)に適用する場合の厚さt11の上限は、とくに限定されないが、ガラス板は厚くなれば重量も増えるため、通常は3.0mm以下が好ましい。また、アンテナ積層体301を鉄道車両等の窓ガラスとして使用する場合、より強度の確保が必要となるため、例えば5mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましい。アンテナ積層体301を鉄道車両等の窓ガラスとして使用する場合も、厚さt11の上限は、とくに限定されないが、ガラス板は厚くなれば重量も増えるため、15mm以下が好ましい。
【0095】
ガラス板202の厚さt12も、アンテナ積層体301の用途により、適宜、決めることができ、例えば、0.2mm~15mmの範囲で調整できる。例えば、アンテナ積層体301を自動車の窓ガラス(フロントガラス等)に適用する場合、ガラス板202の厚さt12は、取り扱いの観点から、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましい。また、アンテナ積層体301を自動車の窓ガラス(フロントガラス等)に適用する場合、ガラス板202の厚さt12は、軽量化の観点から、2.3mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましい。また、アンテナ積層体301を鉄道車両等の窓ガラスとして使用する場合、より強度の確保が必要となるため、例えば3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。アンテナ積層体301を鉄道車両等の窓ガラスとして使用する場合も、厚さt12の上限は、とくに限定されないが、ガラス板は厚くなれば重量も増えるため、10mm以下が好ましい。
【0096】
アンテナ積層体301は、平面アンテナ100の少なくとも一部を、ガラス板201とガラス板202との間に、中間膜層203を介して挟持する。より詳細には、アンテナ積層体301は、ガラス板201と中間膜層203との界面から、中間膜層203とガラス板202との界面までの間に、平面アンテナ100の少なくとも一部を挟持する。平面アンテナ100の少なくとも一部が中間膜層203を介して挟持されることで、平面アンテナ100の少なくとも一部をアンテナ積層体301内に固定した状態で封入できる。アンテナ積層体301を車両用窓ガラスとして使用すると、アンテナが曝露する形態に比べて、風や紫外線に直接さらされ難くなるので、アンテナ導体、接地導体及び誘電体層の劣化を防ぐことができ、耐候性の向上や風切り音の低減の点で有利である。
【0097】
図10に示す形態では、平面アンテナ100は、ガラス板202の第3ガラス面83との間に中間膜層203を挟まずに第3ガラス面83に接している一方、ガラス板201の第2ガラス面82との間に中間膜層203の一部を挟んで対向する。
【0098】
なお、平面アンテナ100は、ガラス板201の第2ガラス面82との間に中間膜層203を挟まずに第2ガラス面82に接している一方、ガラス板202の第3ガラス面83との間に中間膜層203の一部を挟んで対向してもよい。
【0099】
平面アンテナ100は、ガラス板201の外側にはみ出る突出部85を有し、アンテナ導体10に伝送線路を介して給電する少なくとも一つの給電部60を突出部85に備えてもよい。これにより、給電部60が突出部85に設けられることにより、給電部60をアンプ等の外部装置と接続することが容易になる。平面アンテナ100のうち、少なくとも突出部85の誘電体層40は、28GHzにおける誘電正接が、0.007以下、好ましくは0.006以下の樹脂層であると、信号線31の伝送損失を低減できるとともに、突出部85の折り曲げ(フレキシビリティ)が容易となり、外部装置との接続が容易となる。なお、突出部85の誘電体層40は、28GHzにおける誘電正接の好ましい範囲が、第1の構成例の誘電体層40と同じであるとよい。
【0100】
アンテナ積層体301は、前述のように、ガラス板201の平面視において、アンテナ導体10の少なくとも一部と重複する遮光膜204を備えることが好ましい。これにより、アンテナ積層体301を第1ガラス面81側から見ると、アンテナ導体10の少なくとも一部が遮光膜204に隠れるため、意匠性が向上する。なお、
図10において遮光膜204は、第2ガラス面82上に設けているが、第2ガラス面82の代わりに第4ガラス面84上に設けてもよい。さらに、遮光膜204は、第1ガラス面81、第2ガラス面82、第3ガラス面83及び第4ガラス面84のうち、少なくとも1つ以上の面に設けられる。なお、遮光膜204は、任意に備えられる。例えば、平面アンテナ100が一定の透明性を有して視認されにくい場合等、用途に応じて、遮光膜204は、備えられなくてもよい。
【0101】
図11Aは、アンテナ積層体の第2の構成例を示す断面図である。上述のアンテナ積層体と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図11Aに示すアンテナ積層体302は、平面アンテナ100と、ガラス板201と、ガラス板202と、中間膜層203とを備える。中間膜層203としては、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)等が使用できる。
【0102】
図11Aに示す形態では、平面アンテナ100は、ガラス板201とガラス板202とに接触しないように、中間膜層203の内部に位置する。平面アンテナ100は、ガラス板201の第2ガラス面82との間に中間膜層203の一部を挟んで対向し、且つ、ガラス板202の第3ガラス面83との間に中間膜層203の一部を挟んで対向する。中間膜層203は、複数の中間膜層から形成されてもよい。例えば、
図11Aに示すアンテナ積層体302は、中間膜層203として(不図示の)第1の部分中間膜層と第2の部分中間膜層の2層を備え、これらの間に平面アンテナ100を備える。そして、アンテナ積層体302は、例えば、ガラス板201、平面アンテナ100(の一部)が挟持された中間膜層203、ガラス板202をこの順に積層して、オートクレーブ内で加熱圧着することで実現できる。なお、第1の部分中間膜層と第2の部分中間膜層は、同じ材料であれば線膨張係数が同じであるので、歪みや割れが低減でき好ましい。
【0103】
平面アンテナ100は、ガラス板201の中間膜層203の側の面(つまり、第2ガラス面82)に沿うように、中間膜層203の内部に位置する。中間膜層203の厚さを100%としたとき、平面アンテナ100は、中間膜層203の厚さに対して、5~95%の厚さの範囲に位置することが好ましい。平面アンテナ100をこのような範囲に位置させることで、中間膜層203のうち平面アンテナ100とガラス板との間に挟まれる部分が整合層として機能するので、平面アンテナ100のアンテナ利得を向上させる点で有利である。また、
図10に示す形態は、平面アンテナ100とガラス板202との接触部分があるのに対し、
図11Aに示す形態は該接触部分がないため、該接触部分における機械的損傷を抑制しやすい。
【0104】
図11Bは、
図11Aに示すアンテナ積層体302のうち、中間膜層203についてより具体的に示す断面図である。なお、
図11Bに示すアンテナ積層体302Bは、遮光膜204を備えないが、アンテナ積層体302のように遮光膜204を備えてもよい。
図11Bに示すアンテナ積層体302Bは、平面アンテナ100と、ガラス板201と、ガラス板202と、中間膜層203とを備える。
図11Bにおいて、中間膜層203は、同じ樹脂材料を4層積層した例であり、第2ガラス面82側から第3ガラス面83側へ、第1中間膜203A、第2中間膜203B、第3中間膜203Cおよび第4中間膜203Dがこの順に積層されている。
【0105】
図11Bに示すアンテナ積層体302Bは、平面アンテナ100から第2ガラス面82までの部分の厚さt14を、第1中間膜203Aおよび第2中間膜203Bの厚さによって調整した例である。つまり、これらの2つの膜を合わせた総厚(t14)の部分が前述の整合層としての効果を奏する例である。例えば、一枚の膜の厚さが0.38mm又は0.76mmの樹脂膜等の膜を中間膜層203に用いる場合、厚さt14の部分が整合層として機能する厚さにt14がなるように、一枚以上の膜が積層される。なお、
図11Bに示す中間膜層203の破線は、4つの中間膜を積層していることを例示したものである。しかしながら、実際には、これらが同じ(樹脂)材料の場合、例えば、オートクレーブ内で加熱圧着することで1つの中間膜層203となるので、境界(破線部分)は、ほぼ視認されなくなる。
【0106】
図11Cは、アンテナ積層体の第2の構成例の変形例を示す断面図である。上述のアンテナ積層体と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図11Cに示すアンテナ積層体302Cは、平面アンテナ100と、ガラス板201と、ガラス板202と、ガラス板209と、第1中間膜層211と、第2中間膜層212とを備える。第1中間膜層211、第2中間膜層212としては、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)等が使用できる。なお、ガラス板209は、誘電体の一例であり、ガラスに限らず樹脂でもよい。以降、ガラス板209、第1中間膜層211及び第2中間膜層212について説明する。
【0107】
ガラス板209は、ガラス板201に対向する側の第5ガラス面86と、第5ガラス面86とは反対側の第6ガラス面87とを有する。
【0108】
図11Cに示す形態では、第1中間膜層211は、ガラス板201とガラス板202との間に挟持されている。平面アンテナ100は、ガラス板201とガラス板209とに接触しないように、第2中間膜層212の内部に位置する。平面アンテナ100は、ガラス板201の第1ガラス面81に第2中間膜層212の一部を挟んで対向し、且つ、ガラス板209の第5ガラス面86に第2中間膜層212の一部を挟んで対向する。第2中間膜層212は、複数の中間膜層から形成されてもよい。なお、平面アンテナ100は、ガラス板201の第1ガラス面81又はガラス板209の第5ガラス面86に接するように配置してもよい。また、
図11Cに示すアンテナ積層体302Cは、遮光膜204を備えないが、アンテナ積層体302のように遮光膜204を備えてもよい。
図11Cにおいて、第2中間膜層212は、同じ樹脂材料を4層積層した例であり、第5ガラス面86側から第1ガラス面81側へ、第1中間膜212A、第2中間膜212B、第3中間膜212Cおよび第4中間膜212Dがこの順に積層されている。なお、ガラス板209は、第3のガラス板とも称する。
【0109】
ガラス板209は、1GHzを超える所定の周波数、例えば28GHzにおける誘電正接が低いガラス材料を用いると、平面アンテナ100のアンテナ利得を向上できる。ガラス板209の誘電正接(tanδ)は、0.010以下であればよく、0.008以下が好ましく、0.005以下がより好ましい。ガラス板209としては、例えば無アルカリガラスを使用できる。また、ガラス板209の厚さt19は、アンテナ積層体302Cの用途により、適宜、決めることができ、例えば0.5mm~10mmの範囲で調整できる。
【0110】
図11Cに示すアンテナ積層体302Cは、平面アンテナ100から第5ガラス面86までの部分の厚さt15を、第1中間膜212Aおよび第2中間膜212Bの厚さによって調整した例である。つまり、これらの2つの膜を合わせた総厚(t15)の部分が前述の整合層としての効果を奏する例である。なお、
図11Cに示す第2中間膜層212の破線は、4つの中間膜を積層していることを例示したものである。しかしながら、実際には、これらが同じ(樹脂)材料の場合、例えば、オートクレーブ内で加熱圧着することで1つの第2中間膜層212となるので、境界(破線部分)は、ほぼ視認されなくなる。
【0111】
ここで、平面アンテナと、該平面アンテナの放射方向に配置(積層)されている誘電体とを備えるアンテナ積層体において、誘電体の外側に向けて効果的に電波放射が可能となる設計について説明する。
図11Dに示すアンテナ積層体302Dは、平面アンテナ100から放射方向Rd(正のZ軸方向)に、1層以上の、空気を除く誘電体が積層されている。そして、平面アンテナ100を基準に電波放射方向である正のZ軸方向に、第1誘電体F
1,第2誘電体F
2,・・・,第m誘電体F
mまでm層の誘電体が積層されているとする。ここで、mは1以上の整数である。第1誘電体F
1は、厚さt
1、比誘電率ε
r1であり、第2誘電体F
2は、厚さt
2、比誘電率ε
r2であり、第m誘電体F
mは、厚さt
m、比誘電率ε
rmである。
【0112】
また、各層の誘電体の厚さの電気長をL1,L2,・・・,Lmとし、第x層の誘電体の厚さの電気長をLx(x=1~mの整数)とすると、Lxは、式(1)で表される。
【0113】
【0114】
また、アンテナ積層体302Dは、第1誘電体F1から第m誘電体Fmまでの電気長の合計L1+L2+・・・+Lmが、式(2)を満足するとよい。ここで、式(2)において、Nは、0以上の整数であり、λ0は、平面アンテナ100が放射する所定周波数における空気中の波長(単位:mm)を表す(後掲の式(3)、式(4)も同様)。
【0115】
【0116】
また、アンテナ積層体302Dは、第1誘電体F1から第m誘電体Fmまでの電気長の合計L1+L2+・・・+Lmが、式(3)を満足すると好ましく、式(4)を満足するとより好ましい。
【0117】
【0118】
【0119】
次に、
図11Dのアンテナ積層体302Dについて、シミュレーションを実施した例を示す。
図11Eは、シミュレーションを実施したアンテナ積層体302Eの斜視模式図である。平面アンテナ100は、所定の(Z軸方向の)厚さを有する縦10.0mm×横10.0mmの直方体状の誘電体100bと、誘電体100bにおける正のZ軸方向側(第1誘電体F
1側)の平面上の中心に配置された、縦2.5mm×横2.5mmの正方形状の平面導体100aとを有する。そして、アンテナ積層体302Eは、平面アンテナ100の平面導体100aと対向するように第1誘電体F
1、第2誘電体F
2の順に2層の誘電体が積層された構成を備える。なお、第1誘電体F
1、第2誘電体F
2は、各々、所定の厚さt
1,t
2を有し、XY平面にて100mm×100mmの正方形を有する。平面アンテナ100は、Z軸方向での平面視で、第1誘電体F
1、第2誘電体F
2の中心に位置する。
【0120】
アンテナ積層体302Eにおいて、第1誘電体F
1の比誘電率ε
r1=2.6、第2誘電体F
2の比誘電率ε
r2=6.8とし、第1誘電体F
1の電気長L
1、第2誘電体F
2の電気長L
2をそれぞれ変化させ、アンテナ利得の結果を得た(
図11F参照)。このとき、平面アンテナ100における対象周波数を28GHzとしたことで、λ
0=10.7mmとした。
【0121】
図11Fは、横軸にL
2/λ
0、縦軸にL
1/λ
0として、L
1およびL
2を変化させたときの平面アンテナ100の放射方向Rdの利得(単位:dBi)のシミュレーション結果である。この結果より、上記の式(2)を満たすことで、平面アンテナ100のアンテナ利得が高くなることが確認できた。
【0122】
図12は、アンテナ積層体の第3の構成例を示す断面図である。
図12に示すアンテナ積層体303は、平面アンテナ100と、誘電性の曲面体205とを備える。曲面体205は、湾曲面206を有する。平面アンテナ100の少なくとも一部は、湾曲面206に接着層207により接着される。平面アンテナ100は、誘電体層40として樹脂を用いることによってフレキシブル性を有し、平面アンテナ100を湾曲面206に容易に固定できる。曲面体205は、凸面に限らず、凹面でもよく、波面状の表面を有するものでもよい。
【0123】
図13は、伝送線路30A(
図2)、伝送線路30B(
図3)、伝送線路130(
図14)のそれぞれの場合について、マイクロストリップ線路の透過係数S21のシミュレーション結果の一例を示す図である。いずれの場合も、
図15に示す形態のマイクロストリップ線路で計算された結果である。
【0124】
図13のシミュレーションにおいて、
図15に示すマイクロストリップ線路の条件は、
信号線31の材料:銅
信号線31の厚さ:5μm
信号線31の幅:0.32mm
信号線31の長さ:25mm
接地導体20の材料:銅
接地導体20の厚さ:5μm
誘電体層40及び接地導体20の大きさ:縦25mm横5mm
とした。
【0125】
表1~表3は、
図13のシミュレーション時の設定値を示す。ε
rは、比誘電率、tanδは、誘電正接を表す。
【0126】
【0127】
表1は、
図2の伝送線路30Aの設定値を示し、誘電体層40がテトラフルオロエチレン系ポリマーで形成された場合を想定する。表1は、具体的には、国際公開第2016/017801号の段落[0123]の手順により、TFEに基づく単位/PPVEに基づく単位/NAHに基づく単位=97.9/2.0/0.1(モル%)の共重合組成を有する含フッ素共重合体を得た場合を想定した。なお、フィルム状のテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、上記組成の含フッ素共重合体を「樹脂F」ともいう。)は、例えば、コートハンガーダイを有する押出成形機を用いて、340℃程度の温度で所定の厚さとなるように押出成形することで得られる。
【0128】
【0129】
表2は、
図3の伝送線路30Bの設定値を示し、第1樹脂層43及び第2樹脂層44がテトラフルオロエチレン系ポリマー(樹脂F)で形成され、第3樹脂層45がポリイミド樹脂で形成された場合を想定する。
【0130】
【0131】
表3は、
図14の伝送線路130の設定値を示し、誘電体層140がポリイミド樹脂で形成された場合を想定する。伝送線路130は、誘電体層140と、誘電体層140の第1主面141に設けられた信号線131と、誘電体層140の第2主面142に設けられた接地導体120とを有するマイクロストリップ線路である。
【0132】
図13の縦軸は、伝送線路の1mm当たりの伝送損失(透過係数S21)を表し、透過係数S21が低いほど、伝送線路での伝送損失が大きいことを表す。
【0133】
【0134】
表4は、伝送線路の1mm当たりの周波数28GHzにおける伝送損失を示す。表4に示すように、誘電体層にポリイミド樹脂のみを使用する伝送線路130に比べて、誘電体層にテトラフルオロエチレン系ポリマー(樹脂F)を使用する伝送線路30A,30Bの方が、伝送線路での伝送損失が抑制されるという結果が得られた。
【0135】
図16は、マイクロストリップ線路の封入面による違いについて、透過係数S21のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図16は、伝送線路30A単体(
図2)、伝送線路30Aを第3ガラス面83に接触させたアンテナ積層体301(
図17)、伝送線路30Aを一対の中間膜203A,203Bの間に挟んだアンテナ積層体302(
図18)のそれぞれの形態で計算された結果である。
【0136】
図16のシミュレーション時の設定値は、
ガラス板201の厚さt11:2.0mm
ガラス板202の厚さt12:2.0mm
中間膜層203の厚さt13:0.76mm
第1中間膜203Aの厚さt13a:0.38mm
第2中間膜203Bの厚さt13b:0.38mm
とした。なお、第1中間膜203A及び第2中間膜203Bは、各々、前述の第1の部分中間膜層、第2の部分中間膜層に相当する。
【0137】
また、
図16のシミュレーションにおいて、伝送線路30Aは、
図15に示すマイクロストリップ線路を想定し、そのシミュレーション条件は、
図13のシミュレーション時の上掲の列記条件及び表1と同じである。
【0138】
【0139】
表5は、伝送線路の1mm当たりの周波数28GHzにおける伝送損失を示す。表5に示すように、アンテナ積層体301(
図17)とアンテナ積層体302(
図18)のいずれの場合も、伝送線路30A単体の場合と同等の伝送損失の抑制効果が得られた。なお、
図17、
図18は、便宜上、ガラス板201、202の間に空隙を有するような開示となっているが、実際には該空隙がなく封入されている状態における特性として考えてよい。
【0140】
図19は、伝送線路30D(
図5)、伝送線路30E(
図6)、伝送線路230(
図20)のそれぞれの場合について、ストリップ線路の透過係数S21のシミュレーション結果の一例を示す図である。いずれの場合も、
図21に示す形態のストリップ線路で計算された結果である。
【0141】
図19のシミュレーションにおいて、
図21に示すストリップ線路の条件は、
誘電体層40及び接地導体71,72のX軸方向の長さ:5mm
誘電体層40及び接地導体71,72のY軸方向の長さ:25mm
接地導体71,72の材料:銅
接地導体71,72の厚さ:5μm
導体壁73,74の材料:銅
導体壁73,74間のX軸方向での間隔:2.5mm
導体壁73,74のそれぞれを形成する複数のビアにおいて、Y軸方向に隣り合うビアの中心間距離:1mm
導体壁73,74の(Z軸方向からの)平面視でのビアの径:0.5mm
信号線31(
図5,6)及び信号線231(
図20)の材料:銅
信号線31(
図5,6)及び信号線231(
図20)のY軸方向の長さ:25mm
信号線31(
図5,6)及び信号線231(
図20)の幅:0.32mm
信号線31(
図5,6)及び信号線231(
図20)の厚さ:5μm
とした。
【0142】
表6~表8は、
図19のシミュレーション時の設定値を示す。ε
rは、比誘電率、tanδは、誘電正接を表す。
【0143】
【0144】
表6は、
図5の伝送線路30Dの設定値を示し、誘電体層40がテトラフルオロエチレン系ポリマー(樹脂F)で形成された場合を想定する。
【0145】
【0146】
表7は、
図6の伝送線路30Eの設定値を示し、第1樹脂層46及び第2樹脂層47がポリイミド樹脂で形成され、第3樹脂層48がテトラフルオロエチレン系ポリマー(樹脂F)で形成された場合を想定する。
【0147】
【0148】
表8は、
図20の伝送線路230の設定値を示し、誘電体層240がポリイミド樹脂で形成された場合を想定する。伝送線路230は、誘電体層240と、誘電体層240の第1主面に設けられた接地導体223と、誘電体層140の第2主面に設けられた接地導体224と、誘電体層140の内部に設けられた信号線231とを有するストリップ線路である。伝送線路230は、接地導体223,224を接続する導体壁273,274を有する。
【0149】
図19の縦軸は、伝送線路の1mm当たりの伝送損失(透過係数S21)を表し、透過係数S21が低いほど、伝送線路での伝送損失が大きいことを表す。
【0150】
【0151】
表9は、伝送線路の1mm当たりの周波数28GHzにおける伝送損失を示す。表9に示すように、誘電体層にポリイミド樹脂のみを使用する伝送線路230に比べて、誘電体層にテトラフルオロエチレン系ポリマー(樹脂F)を使用する伝送線路30D,30Eの方が、伝送線路での伝送損失が抑制されるという結果が得られた。
【0152】
図22は、平面アンテナ101(
図1)単体と、平面アンテナ101(
図1)を封入したアンテナ積層体300(
図23)とについて、リターンロス係数S11のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図22のシミュレーションでは、平面アンテナ101の伝送線路30は、伝送線路30B(
図3)とし、アンテナ積層体300は、
図10に示す形態とした。
【0153】
図22のシミュレーション時の設定値は、
ガラス板201の厚さt11:2.0mm
ガラス板202の厚さt12:2.0mm
中間膜層203の厚さt13:0.76mm
第1樹脂層43の厚さt3:25μm
第2樹脂層44の厚さt4:25μm
第3樹脂層45の厚さt5:50μm
L1(
図1):10.00mm
L2(
図1):10.00mm
L3(
図1):5.00mm
L4(
図1):10.00mm
L5(平面アンテナ101単体時):3.35mm
L5(アンテナ積層体300時):3.24mm
L6:10.00mm
とした。
【0154】
また、第1樹脂層43及び第2樹脂層44が、誘電正接が0.001で比誘電率が2.0のテトラフルオロエチレン系ポリマー(樹脂F)で形成された場合を想定し、第3樹脂層45が、誘電正接が0.01で比誘電率が3.0のポリイミド樹脂で形成された場合を想定した。
【0155】
【0156】
表10は、平面アンテナ101を封入するガラス板201,202のサイズを変えて、アンテナ利得と放射効率を計算した結果の一例を示す。いずれの場合でも、周波数28GHz付近において、十分なリターンロス特性、アンテナ利得及び放射効率が得られた。
【0157】
以上、平面アンテナ、アンテナ積層体及び車両用窓ガラスを実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0158】
例えば、アンテナ導体は、可視光の透過度合いが、誘電体層に比べて低く又は高くてもよく、誘電体層と同じでもよい。また、アンテナ導体等を構成する線状導体は、隙間が生じるように網目状に形成されてもよいし、隙間が生じるようにストライプ状に形成されてもよい。
【0159】
アンテナ導体の外形は、円形等の他の外形でもよい。また、アンテナ導体は、給電ピンやスルーホール等の他の給電ラインによって給電されてもよい。
【0160】
本国際出願は、2019年5月16日に出願した日本国特許出願第2019-093095号及び2020年1月23日に出願した日本国特許出願第2020-008921号に基づく優先権を主張するものであり、両出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0161】
10 アンテナ導体
17 内部線状導体
21 第1領域
22 第2領域
23 領域
24,25 接地導体
26 面状接地導体
27 線状接地導体
28 外縁線状導体
30 伝送線路
31 信号線
34 スロット
40 誘電体層
41 第1主面
42 第2主面
60 給電部
61 コネクタ
71,72 接地導体
73,74 導体壁
81 第1ガラス面
82 第2ガラス面
83 第3ガラス面
84 第4ガラス面
85 突出部
86 第5ガラス面
87 第6ガラス面
100~104 平面アンテナ
100a 平面導体
100b 誘電体
130 伝送線路
140 誘電体層
200 窓ガラス
201 第1のガラス板
202 第2のガラス板
203 中間膜層
204 遮光膜
205 曲面体
209 第3のガラス板
211 第1中間膜層
212 第2中間膜層
230 伝送線路
240 誘電体層
300,301,302,302B,302C,302D,302E,303 アンテナ積層体