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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】粘接着組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20240628BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240628BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240628BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240628BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/06
C09J11/08
C09K3/10 Z
C08F297/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021520865
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2020020206
(87)【国際公開番号】W WO2020235661
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019096398
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 星哉
(72)【発明者】
【氏名】千田 泰史
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-135256(JP,A)
【文献】特許第4101180(JP,B2)
【文献】S.Ouardad,Polyisoprene synthesized via cationic polymerization:State of the art,Pure.Appl.Chem.,英国,2012年07月26日,Vol.84, No.10,P.2065-2080,http://dx.doi.org/10.1351/PAC-CON-12-02-05
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C09K 3/10
C08F 297/04
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ブロック共重合体の水素添加物と、
前記ブロック共重合体の水素添加物100質量部に対し、1~1000質量部の粘着付与樹脂及び1~1000質量部の可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む、粘接着組成物。
前記ブロック共重合体が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含有し、
該重合体ブロック(B)が、共役ジエン化合物に由来する構造単位であって、下記式(X)
【化1】

(上記式(X)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~11の炭化水素基を示し、複数あるR~Rはそれぞれ同一でも異なってもよい。式(X)におけるビニル基は水素添加されていてもよい。
で表される1種以上の脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位を有し、
前記重合体ブロック(B)は、前記脂環式骨格(X)を含有しない共役ジエン化合物に由来する構造単位をさらに含有し、
前記合体ブロック(B)中の前記脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位と前記脂環式骨格(X)を含有しない共役ジエン化合物に由来する構造単位の合計が90モル%以上であり、
前記重合体ブロック(B)の水素添加率が、50~99モル%である。
【請求項2】
ブロック共重合体の水素添加物100質量部に対し、前記粘着付与樹脂を120~1000質量部含む、請求項1に記載の粘接着組成物。
【請求項3】
ブロック共重合体の水素添加物100質量部に対し、前記可塑剤を60~1000質量部含む、請求項1又は2に記載の粘接着組成物。
【請求項4】
ブロック共重合体の水素添加物100質量部に対し、さらに充填剤を10~2500質量部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項5】
前記脂環式骨格(X)において、前記R~Rのうち少なくとも1つが炭素数1~11の炭化水素基である脂環式骨格(X’)が含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項6】
前記脂環式骨格(X’)における前記炭化水素基がメチル基である、請求項5に記載の粘接着組成物。
【請求項7】
前記ブロック共重合体の水素添加物として少なくともスチレン-水添ブタジエン/イソプレン-スチレン共重合体を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項8】
前記R~Rが同時に水素原子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項9】
前記重合体ブロック(B)中に前記脂環式骨格(X)を1モル%以上含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項10】
前記重合体ブロック(B)中に前記脂環式骨格(X’)を1モル%以上含有する、請求項5又は6に記載の粘接着組成物。
【請求項11】
前記重合体ブロック(B)におけるビニル結合量が55~95モル%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項12】
前記ブロック共重合体の水素添加物が、JIS K 7244-10(2005年)に準拠して、歪み量0.1%、周波数1Hz、測定温度-70~100℃、昇温速度3℃/分の条件で測定したtanδが1.0以上となる一連の温度領域が存在し、該温度領域の最大幅が13℃以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項13】
前記重合体ブロック(A)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を70モル%超含有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項14】
前記ブロック共重合体における前記重合体ブロック(A)の含有量が50質量%以下である、請求項13に記載の粘接着組成物。
【請求項15】
前記ブロック共重合体における前記重合体ブロック(A)の含有量が16質量%以下である、請求項13に記載の粘接着組成物。
【請求項16】
前記ブロック共重合体が、前記ブロック共重合体の重合体ブロック(A)をAで、また重合体ブロック(B)をBで表したときに、前記ブロック共重合体がA-B-A又はB-A-Bで示されるトリブロック共重合体である、請求項1~15のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項17】
60℃での剪断貯蔵弾性率G’(60℃)に対する23℃での剪断貯蔵弾性率G’(23℃)の比[G’(23℃)/G’(60℃)]が1.3以上である、請求項1~16のいずれか1項に記載の粘接着組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の粘接着組成物を含む粘接着剤。
【請求項19】
請求項4に記載の粘接着組成物を含むシーラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体又はその水素添加物を含む粘接着組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロックと、共役ジエン化合物に由来する構造単位を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体及びその水素添加物の中には制振性を有するものがあることは既に知られており、制振材に利用されてきた。また、上記ブロック共重合体及びその水素添加物は、制振性の他に遮音性、耐熱性、耐衝撃性、及び粘接着性等の物性を有することが可能なものがあり、さまざまな用途に用い得ることが考えられる。
例えば、制振性や柔軟性、耐熱性、引張強さ及び耐衝撃性等の機械的特性に優れさせるためにtanδのピーク温度やビニル結合量を特定した、スチレン系化合物とイソプレンやブタジエン等の共役ジエン化合物との水添ブロック共重合体が開示されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【0003】
上記ブロック共重合体の中でも、オープンタイムが長く、良好な粘接着性を示すものは、例えばおむつや不織布等の接着剤、電気電子部品等の表面保護フィルムの接着剤として使用することが知られている(例えば、特許文献5参照)。
また上記ブロック共重合体の中でも制振性及び粘接着性を示すものは、例えば自動車や建築分野におけるシーラントとして使用できることが知られている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-284830号公報
【文献】国際公開第2000/015680号
【文献】特開2006-117879号公報
【文献】特開2010-053319号公報
【文献】国際公開第2002/040611号
【文献】国際公開第2015/087954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で粘接着剤を介して接合された被着体が、振動により剥がれることがあり、粘接着剤の性能向上が求められている。また、温度が上昇するに従い粘接着力は低下する傾向にあり、高温においても粘接着力が維持されることが望まれている。
したがって、被着体から剥離しにくく、かつ高温においても粘接着力が維持されることが望まれており、粘接着組成物には制振性及び粘接着性の両立ついて改良の余地がある。
そこで本発明は、制振性を有し、高温においても剥がれ難い粘接着組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明を想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0007】
下記ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対し、1~1000質量部の粘着付与樹脂及び1~1000質量部の可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む、粘接着組成物。
前記ブロック共重合体が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含有し、該重合体ブロック(B)が、共役ジエン化合物に由来する構造単位であって、下記式(X)で表される1種以上の脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位を有する。
【0008】
【化1】
(上記式(X)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~11の炭化水素基を示し、複数あるR~Rはそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制振性を有し、高温においても剥がれ難い粘接着組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪粘接着組成物≫
本発明の粘接着組成物は、下記ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対し、1~1000質量部の粘着付与樹脂及び1~1000質量部の可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む、ことを特徴とする。
前記ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を含有し、該重合体ブロック(B)が、共役ジエン化合物に由来する構造単位であって、前記式(X)で表される1種以上の脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位を有する。
粘接着組成物に含まれる各成分について以下に説明する。
【0011】
[ブロック共重合体又はその水素添加物]
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称すことがある。)において、ブロック共重合体又はその水素添加物は、制振性を有し、高温においても剥がれ難い粘接着組成物とするための必須成分である。
[重合体ブロック(A)]
ブロック共重合体を構成する重合体ブロック(A)は、制振性及び機械的特性の観点から、モノマーとして用いられる芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下、「芳香族ビニル化合物単位」と略称することがある。)を、重合体ブロック(A)中70モル%超含有することが好ましく、機械的特性の観点から、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、よりさらに好ましくは95モル%以上であり、実質的に100モル%であることが特に好ましい。
【0012】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチル-o-メチルスチレン、α-メチル-m-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、β-メチル-o-メチルスチレン、β-メチル-m-メチルスチレン、β-メチル-p-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、α-メチル-2,6-ジメチルスチレン、α-メチル-2,4-ジメチルスチレン、β-メチル-2,6-ジメチルスチレン、β-メチル-2,4-ジメチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、α-クロロ-o-クロロスチレン、α-クロロ-m-クロロスチレン、α-クロロ-p-クロロスチレン、β-クロロ-o-クロロスチレン、β-クロロ-m-クロロスチレン、β-クロロ-p-クロロスチレン、2,4,6-トリクロロスチレン、α-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、α-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、o-t-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、o-ブロモメチルスチレン、m-ブロモメチルスチレン、p-ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン、N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。中でも、製造コストと物性バランスの観点から、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びこれらの混合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0013】
本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、重合体ブロック(A)は芳香族ビニル化合物以外の他の不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「他の不飽和単量体単位」と略称することがある。)を含有してもよいが、重合体ブロック(A)中好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%未満、さらに好ましくは15モル%未満、よりさらに好ましくは10モル%未満、よりさらに好ましくは5モル%未満、特に好ましくは0モル%である。
該他の不飽和単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、イソブチレン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2-メチレンテトラヒドロフラン等からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。重合体ブロック(A)が該他の不飽和単量体単位を含有する場合の結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
【0014】
ブロック共重合体は、前記重合体ブロック(A)を少なくとも1つ有していればよい。ブロック共重合体が重合体ブロック(A)を2つ以上有する場合には、それら重合体ブロック(A)は、同一であっても異なっていてもよい。なお、本明細書において「重合体ブロックが異なる」とは、重合体ブロックを構成するモノマー単位、重量平均分子量、立体規則性、及び複数のモノマー単位を有する場合には各モノマー単位の比率及び共重合の形態(ランダム、グラジェント、ブロック)のうち少なくとも1つが異なることを意味する。
【0015】
(重量平均分子量)
重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限はないが、ブロック共重合体が有する重合体ブロック(A)のうち、少なくとも1つの重合体ブロック(A)の重量平均分子量が、好ましくは3,000~60,000、より好ましくは4,000~50,000である。ブロック共重合体が、上記範囲内の重量平均分子量である重合体ブロック(A)を少なくとも1つ有することにより、制振性のさらなる向上に寄与できる。
なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0016】
(重合体ブロック(A)の含有量)
ブロック共重合体における重合体ブロック(A)の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、16質量%以下であることがさらに好ましく、14質量%以下であることが特に好ましい。50質量%以下であれば、適度な柔軟性を有し、tanδピークトップ強度が低下することなく制振性に優れたブロック共重合体又はその水素添加物とすることができる。また、下限値は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましい。1質量%以上であれば、粘接着組成物の各種用途に好適な機械的特性、成形加工性及び塗工性等の取扱い性を有するブロック共重合体又はその水素添加物とすることができる。
なお、ブロック共重合体における重合体ブロック(A)の含有量は、H-NMR測定により求めた値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0017】
[重合体ブロック(B)]
ブロック共重合体を構成する重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物に由来する構造単位であって、下記式(X)で表される1種以上の脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位(以下、「脂環式骨格含有単位」と略称することがある。)を有する。また、重合体ブロック(B)は、脂環式骨格(X)を含有しない共役ジエン化合物に由来する構造単位(以下、「共役ジエン単位」と略称することがある。)をも含有し得る。
重合体ブロック(B)中の脂環式骨格含有単位と共役ジエン単位の合計は、優れた制振性を発現する観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、実質的に100モル%であることが特に好ましい。
ブロック共重合体中に重合体ブロック(B)を2つ以上有する場合には、それら重合体ブロック(B)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
【化2】
【0019】
上記式(X)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~11の炭化水素基を示し、複数あるR~Rはそれぞれ同一でも異なってもよい。上記炭化水素基の炭素数は、好ましくは炭素数1~5であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1(すなわち、メチル基)である。また、上記炭化水素基は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、飽和又は不飽和炭化水素基であってもよい。物性及び脂環式骨格(X)形成の観点から、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
なお、ブロック共重合体を水素添加した場合、上記式(X)におけるビニル基は水素添加され得る。そのため、水素添加物における脂環式骨格(X)の意味するところには、上記式(X)におけるビニル基が水素添加された骨格も含まれる。
【0020】
重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物に由来する構造単位であり、脂環式骨格(X)は該共役ジエン化合物に由来する。脂環式骨格(X)は後述する方法により共役ジエン化合物のアニオン重合で生成するが、用いる共役ジエン化合物に応じて少なくとも1種の脂環式骨格(X)が脂環式骨格含有単位の主鎖に含まれる。該脂環式骨格(X)が、重合体ブロック(B)に含まれる構造単位の主鎖に組み込まれていることにより、分子運動が小さくなるためガラス転移温度が上がり、室温付近でのtanδのピークトップ強度が向上して、優れた制振性を発現することができる。
【0021】
上記共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ファルネセン、ミルセン及びクロロプレン等を挙げることができる。中でも、ブタジエン、イソプレン、又はブタジエンとイソプレンとの併用が好ましい。
【0022】
ブタジエンとイソプレンとを併用する場合、それらの配合比率[イソプレン/ブタジエン](質量比)に特に制限はないが、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、さらに好ましくは40/60~70/30、特に好ましくは45/55~65/35である。なお、該混合比率[イソプレン/ブタジエン]をモル比で示すと、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは10/90~90/10、さらに好ましくは40/60~70/30、特に好ましくは45/55~55/45である。
【0023】
具体例として、共役ジエン化合物としてブタジエン、イソプレン、又はブタジエンとイソプレンとの両方を使用する場合に主に生成する、脂環式骨格(X)について説明する。
共役ジエン化合物としてブタジエンを単独で使用した場合、下記(i)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格(X)が生成される。すなわちこの場合、脂環式骨格(X)はR~Rが同時に水素原子である脂環式骨格のみとなる。したがって、ブロック共重合体又はその水素添加物の好ましい態様の一例として、重合体ブロック(B)が、R~Rが同時に水素原子である1種の脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位を有するものが挙げられる。
【0024】
また、共役ジエン化合物としてイソプレンを単独で使用する場合、下記(v)及び(vi)の置換基の組み合わせを有する2種の脂環式骨格(X)が主に生成される。
また、共役ジエン化合物としてブタジエンとイソプレンとを併用する場合、下記(i)~(vi)の置換基の組み合わせを有する6種の脂環式骨格(X)が主に生成される。
(i) :R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子
(ii) :R=水素原子、R=メチル基、R=水素原子
(iii):R=水素原子、R=水素原子、R=メチル基
(iv) :R=メチル基、R=水素原子、R=水素原子
(v) :R=メチル基、R=メチル基、R=水素原子
(vi) :R=メチル基、R=水素原子、R=メチル基
【0025】
上記式(X)において、炭化水素基である置換基を有することによって分子運動がより小さくなり制振性がさらに向上する観点から、重合体ブロック(B)中の少なくとも1種の脂環式骨格(X)は、上記R~Rのうち少なくとも1つが炭素数1~11の炭化水素基である脂環式骨格(X’)であることが好ましい。中でも、共役ジエン化合物から脂環式骨格を効率よく生成させることができ、制振性及び機械的特性のバランスの観点から、該脂環式骨格(X’)における炭化水素基がメチル基であることがより好ましい。
特にR~Rが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、かつR~Rが同時に水素原子でない脂環式骨格であることがより好ましい。すなわち、重合体ブロック(B)は、上記(ii)~(vi)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格のうち、いずれか1種以上を主鎖に含む構成単位を有することがより好ましい。
【0026】
(重合体ブロック(B)のビニル結合量)
重合体ブロック(B)を構成する構成単位が、イソプレン単位、ブタジエン単位、イソプレン及びブタジエンの混合物単位のいずれかである場合、前記脂環式骨格(X)を形成する結合形態以外のイソプレン及びブタジエンそれぞれの結合形態としては、ブタジエンの場合には1,2-結合、1,4-結合を、イソプレンの場合には1,2-結合、3,4-結合、1,4-結合をとることができる。
【0027】
ブロック共重合体及びその水素添加物においては、重合体ブロック(B)中の3,4-結合単位及び1,2-結合単位の含有量(以下、単に「ビニル結合量」と称することがある。)の合計が好ましくは55~95モル%、より好ましくは63~95モル%、さらに好ましくは66~95モル%、よりさらに好ましくは70~95モル%である。上記範囲であれば優れた制振性を発現することができる。また、ビニル結合量が高くなる程、粘接着組成物の剥離強度が温度上昇によって低下するのを抑えられる傾向にあり、粘接着組成物が高温においてより一層剥がれ難くなる。
ここで、ビニル結合量は、実施例に記載の方法に従って、H-NMR測定によって算出した値である。
なお、重合体ブロック(B)がブタジエンのみからなる場合には、前記の「3,4-結合単位及び1,2-結合単位の含有量」とは「1,2-結合単位の含有量」と読み替えて適用する。
【0028】
(脂環式骨格(X)含有量)
重合体ブロック(B)中には脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位が含まれていればよいが、より優れた制振性の効果を発現し、高温においても粘接着力の低下を抑制しやすくする観点から、重合体ブロック(B)中に脂環式骨格(X)を1モル%以上含有していることが好ましく、より好ましくは1.1モル%以上、さらに好ましくは1.4モル%以上、よりさらに好ましくは1.8モル%以上であり、よりさらに好ましくは4モル%以上であり、よりさらに好ましくは10モル%以上であり、特に好ましくは13モル%以上である。また、脂環式骨格(X)の上記含有量が多くなる程、粘接着組成物の剥離強度が温度上昇によって低下するのを抑えられる傾向にあり、粘接着組成物が高温においてより一層剥がれ難くなる。
また、重合ブロック(B)中の脂環式骨格(X)の含有量の上限は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限はないが、生産性の観点から、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であってもよく、20モル%以下であってもよく、18モル%以下であってもよい。
さらに制振性を向上させる観点から、重合体ブロック(B)中に上記脂環式骨格(X’)を1モル%以上含有していることがより好ましく、さらに好ましくは1.3モル%以上、よりさらに好ましくは1.6モル%以上である。脂環式骨格(X’)の含有量の上限値は、上記脂環式骨格(X)の含有量の上限値と同様である。
【0029】
より具体的に、共役ジエン化合物としてイソプレンを使用する場合、ブタジエンを使用する場合、又はブタジエンとイソプレンとを併用する場合、の各場合における脂環式骨格含有量は次のとおりである。
共役ジエン化合物としてイソプレンを使用する場合において、重合体ブロック(B)中に、前記(v),(vi)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格(X’)が1種以上存在するときのそれらの合計含有量は、1モル%以上であることがより優れた制振性の効果を発現し、高温においても粘接着力の低下を抑制しやすくする観点から好ましく、1.5モル%以上であることがより好ましく、幅広い温度範囲において優れた制振性の効果を得る観点から2モル%以上であることがさらに好ましく、3モル%以上であることがよりさらに好ましく、4モル%以上であることが特に好ましい。また、イソプレンを使用する場合の上記合計含有量の上限値は、前記脂環式骨格(X)の含有量の上限値と同様である。
【0030】
共役ジエン化合物としてブタジエンを使用する場合において、重合体ブロック(B)中に、脂環式骨格(X)が存在するときのその含有量は、5モル%以上であることがより優れた制振性の効果を発現し、高温においても粘接着力の低下を抑制しやすくする観点から好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることがよりさらに好ましく、25モル%以上であることがよりさらに好ましく、30モル%以上であることが特に好ましい。また、ブタジエンを使用する場合の上記含有量の上限値は、前記脂環式骨格(X)の含有量の上限値と同様である。
【0031】
共役ジエン化合物としてブタジエンとイソプレンとを併用する場合において、重合体ブロック(B)中に、前記(ii),(iii),(v),(vi)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格(X’)が1種以上存在するときのそれらの合計含有量は、1モル%以上であることがより優れた制振性の効果を発現し、高温においても粘接着力の低下を抑制しやすくする観点から好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることがさらに好ましく、8モル%以上であることがよりさらに好ましく、13モル%以上であることがよりさらに好ましい。ブタジエンとイソプレンとを併用する場合の上記合計含有量の上限値は、前記脂環式骨格(X)の含有量の上限値と同様である。
また、共役ジエン化合物としてブタジエンとイソプレンとを併用する場合において、重合体ブロック(B)中に、前記(i)~(vi)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格(X)が1種以上存在するときのそれらの合計含有量は、1モル%以上であることがより優れた制振性の効果を発現し、高温においても粘接着力の低下を抑制しやすくする観点から好ましく、5モル%以上であることがより好ましい。ブタジエンとイソプレンとを併用する場合の上記合計含有量の上限値は、前記脂環式骨格(X)の含有量の上限値と同様である。
【0032】
なお、ブロック共重合体又はその水素添加物に含まれる上記脂環式骨格(X)((X’)を含む)含有量は、ブロック共重合体の13C-NMR測定により、重合体ブロック(B)中の脂環式骨格(X)由来の積分値から求めた値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0033】
また、ブロック共重合体又はその水素添加物は、重合体ブロック(B)の水素添加率が0モル%以上50モル%未満の場合、脂環式骨格(X)に結合したビニル基と主鎖に結合したビニル基との含有モル比を特定することができる。
例えば、前記(ii),(iii),(v),(vi)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格(X’)では、該脂環式骨格(X’)に結合したビニル基末端の炭素原子(下記化学式の(a))の13C-NMRでのケミカルシフトは107~110ppm付近に現れ、主鎖に結合したビニル基末端の炭素原子(下記化学式の(b))の13C-NMRでのケミカルシフトは110~116ppm付近に現れる。そして、水素添加率が0~40モル%の場合、13C-NMRで測定されるピーク面積比[ケミカルシフト値107~110ppmのピーク面積]/[ケミカルシフト値110~116ppmのピーク面積]が通常0.01~3.00の範囲となり、より優れた制振性を発現できる観点から、該面積比は好ましくは0.01~1.50、より好ましくは0.01~1.00、さらに好ましくは0.01~0.50、よりさらに好ましくは0.01~0.20となる。
【0034】
【化3】
【0035】
また、水素添加物については、13C-NMR測定において脂環式骨格(X)上の炭素原子由来のピークはほとんど観測されないが、前記置換基Rが炭素数1~11の炭化水素基であり、該Rを有するビニル基由来の分岐状アルキル基と結合する該脂環式骨格(X)上の炭素原子由来のピークについては観測され得る。
これにより、水素添加物について重合体ブロック(B)の水素添加率が50~99モル%の場合、上記Rを有するビニル基由来の分岐状アルキル基と結合する脂環式骨格(X)上の炭素原子とビニル基由来の分岐状アルキル基と結合する主鎖上の炭素原子との含有モル比を特定することも可能である。
【0036】
例えば、前記(iii),(vi)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格(X)では、イソプレン基と結合する脂環式骨格(X)上の炭素原子(下記化学式の(c))の13C-NMRでのケミカルシフトは50.0~52.0ppm付近に現れ、イソプレン基と結合する主鎖上の炭素原子(下記化学式の(d))の13C-NMRでのケミカルシフトは43.0~45.0ppm付近に現れる。そして、水素添加率が40~99モル%の場合、13C-NMRで測定されるピーク面積比[ケミカルシフト値50.0~52.0ppmのピーク面積]/[ケミカルシフト値43.0~45.0ppmのピーク面積]が通常0.01~3.00の範囲となり、より優れた制振性を発現できる観点から、該面積比は好ましくは0.01~1.50の範囲、より好ましくは0.01~1.00の範囲、さらに好ましくは0.01~0.50の範囲、よりさらに好ましくは0.01~0.25となる。
なお、上記ピーク面積比は、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0037】
【化4】
【0038】
(重量平均分子量)
ブロック共重合体が有する重合体ブロック(B)の合計の重量平均分子量は、制振性及び粘接着組成物の取扱い性等の観点から、水素添加前の状態で、好ましくは15,000~800,000であり、より好ましくは50,000~700,000であり、さらに好ましくは70,000~600,000、特に好ましくは90,000~500,000、最も好ましくは130,000~450,000である。
【0039】
(その他の構造単位)
重合体ブロック(B)は、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、前記共役ジエン化合物以外の他の重合性の単量体に由来する構造単位を含有していてもよい。この場合、重合体ブロック(B)において、共役ジエン化合物以外の他の重合性の単量体に由来する構造単位の含有量は、好ましくは50モル%未満、より好ましくは30モル%未満、さらに好ましくは20モル%未満、よりさらに好ましくは10モル%未満、特に好ましくは0モル%である。
該他の重合性の単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、N-ビニルカルバゾール、ビニルナフタレン及びビニルアントラセン等の芳香族ビニル化合物、並びにメタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2-メチレンテトラヒドロフラン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、1,3-シクロオクタジエン等からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく挙げられる。
ブロック共重合体は、上記重合体ブロック(B)を少なくとも1つ有していればよい。ブロック共重合体が重合体ブロック(B)を2つ以上有する場合には、それら重合体ブロック(B)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
[製造方法]
(ブロック共重合体)
ブロック共重合体の製造方法として、例えば、1種以上の共役ジエン化合物をモノマーとしてアニオン重合法により重合させることにより、前記脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位を有する重合体ブロック(B)を形成し、重合体ブロック(A)のモノマーを添加し、また必要に応じてさらに重合体ブロック(A)のモノマー及び共役ジエン化合物を逐次添加することにより、ブロック共重合体を得ることができる。
上記アニオン重合法により脂環式骨格を生成させる方法は公知の技術を用いることができる(例えば、米国特許第3966691号明細書参照)。脂環式骨格はモノマーの枯渇によってポリマーの末端に形成され、これにさらにモノマーを逐次添加することで該脂環式骨格から再び重合を開始させることができる。そのため、モノマーの逐次添加時間、重合温度、あるいは触媒の種類や添加量、モノマーと触媒との組合せ等により、該脂環式骨格の生成の有無やその含有量を調整することができる。また、アニオン重合法では、アニオン重合開始剤、溶媒、及び必要に応じてルイス塩基を用いることができる。
【0041】
上記方法においてアニオン重合の重合開始剤として使用し得る有機リチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウム等が挙げられる。また、重合開始剤として使用し得るジリチウム化合物としては、例えばナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼン等が挙げられる。
カップリング剤としては、例えばジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼン、安息香酸フェニル等が挙げられる。
これらの重合開始剤及びカップリング剤の使用量は、ブロック共重合体及びその水素添加物の所望とする重量平均分子量により適宜決定される。通常は、アルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物等の開始剤は、重合に用いる重合体ブロック(A)のモノマー及び共役ジエン化合物等の単量体の合計100質量部あたり0.01~0.2質量部の割合で用いられるのが好ましく、カップリング剤を使用する場合は、前記単量体の合計100質量部あたり0.001~0.8質量部の割合で用いられるのが好ましい。
【0042】
溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ペンタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。また、重合反応は、通常0~100℃、好ましくは10~70℃の温度で、0.5~50時間、好ましくは1~30時間行う。
【0043】
また、共役ジエン化合物の重合の際に共触媒としてルイス塩基を添加する方法により、重合体ブロック(B)における上記脂環式骨格(X)の含有量や、3,4-結合及び1,2-結合の含有量を高めることができる。
用いることのできるルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)等のエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-メチルモルホリン等のアミン類;ナトリウムt-ブチレート、ナトリウムt-アミレート又はナトリウムイソペンチレート等の脂肪族アルコールのナトリウム又はカリウム塩、あるいは、ジアルキルナトリウムシクロヘキサノレート、例えば、ナトリウムメントレートのような脂環式アルコールのナトリウム又はカリウム塩等の金属塩;等が挙げられる。これらのルイス塩基は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ルイス塩基の添加量は、上記脂環式骨格(X)の含有量をどの程度に制御するか、並びに、前記重合体ブロック(B)が、特にイソプレン及び/又はブタジエンに由来する構造単位を含む場合には、重合体ブロック(B)を構成するイソプレン単位及び/又はブタジエン単位のビニル結合量をどの程度に制御するかにより決定される。そのため、ルイス塩基の添加量に厳密な意味での制限はないが、重合開始剤として用いられるアルキルリチウム化合物又はジリチウム化合物に含有されるリチウム1グラム原子あたり、通常0.1~1,000モル、好ましくは1~100モルの範囲内で用いるのが好ましい。
【0045】
共役ジエン化合物の平均フィード速度(以下、「平均ジエンフィード速度」と称すことがある。)は、脂環式骨格(X)の含有量を高める観点から、活性末端1モル当たり、150kg/h以下が好ましく、110kg/h以下がより好ましく、55kg/h以下がさらに好ましく、45kg/h以下であってもよく、30kg/h以下であってもよく、22kg/h以下であってもよい。下限値は、生産性を高める観点から、活性末端1モル当たり、1kg/h以上が好ましく、3kg/h以上がより好ましく、5kg/h以上がさらに好ましく、7kg/h以上であってもよく、10kg/h以上であってもよく、15kg/h以上であってもよい。
【0046】
上記した方法により重合を行なった後、アルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素化合物を添加して重合反応を停止させることにより、ブロック共重合体を得ることができる。
【0047】
(水素添加物)
上記の製造方法により得られたブロック共重合体を水素添加物とする場合、不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水素添加反応(水添反応)を行う。水添反応により、ブロック共重合体における重合体ブロック(B)中の共役ジエン化合物由来の炭素-炭素二重結合が水素添加され、ブロック共重合体の水素添加物とすることができる。
水添反応は、水素圧力を0.1~20MPa程度、好ましくは0.5~15MPa、より好ましくは0.5~5MPa、反応温度を20~250℃程度、好ましくは50~180℃、より好ましくは70~180℃、反応時間を通常0.1~100時間程度、好ましくは1~50時間として実施することができる。
水添触媒としては、例えば、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の単体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒等が挙げられる。
【0048】
このようにして得られた水素添加物は、重合反応液をメタノール等に注ぐことにより凝固させた後、加熱又は減圧乾燥させるか、重合反応液をスチームと共に熱水中に注ぎ、溶媒を共沸させて除去するいわゆるスチームストリッピングを施した後、加熱又は減圧乾燥することにより取得することができる。
【0049】
上記ブロック共重合体又は水素添加物を用いるかは、粘接着組成物の各種用途において所望される性能に応じて特定することができる。同様に、水素添加物とする際の上記重合体ブロック(B)中の炭素-炭素二重結合の水素添加率をどの程度にするかは、粘接着組成物の各種用途において所望される性能に応じて特定することができる。
例えば、水素添加物の水素添加率が高い程、耐熱性や耐候性が向上した水素添加物とすることが可能である。上記水素添加率は、例えば、50モル%以上99モル%以下、60モル%以上99モル%以下、70モル%以上99モル%以下、80モル%以上99モル%以下にすることができる。
【0050】
したがって、重合体ブロック(B)の水素添加率が0モル%以上(すなわち、未水添の場合も含む。)50モル%未満であるブロック共重合体又はその水素添加物であってもよく、また、重合体ブロック(B)の水素添加率が50~99モル%である水素添加物であってもよい。
なお、上記水素添加率は、重合体ブロック(B)中の共役ジエン化合物及び脂環式骨格(X)由来の構造単位中の炭素-炭素二重結合の含有量を、水素添加後のH-NMR測定によって求めた値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0051】
(重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合様式)
ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はこれらの2つ以上が組合わさった結合様式のいずれでもよい。中でも、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合形式は直鎖状であることが好ましく、その例としては重合体ブロック(A)をAで、また重合体ブロック(B)をBで表したときに、A-Bで示されるジブロック共重合体、A-B-A又はB-A-Bで示されるトリブロック共重合体、A-B-A-Bで示されるテトラブロック共重合体、A-B-A-B-A又はB-A-B-A-Bで示されるペンタブロック共重合体、(A-B)nZ型共重合体(Zはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)等を挙げることができる。中でも、直鎖状のトリブロック共重合体、又はジブロック共重合体が好ましく、A-B-A型のトリブロック共重合体が、柔軟性、製造の容易性等の観点から好ましく用いられる。
A-B-A型のトリブロック共重合体として具体的には、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレン共重合体が挙げられる。中でも、粘接着組成物は、ブロック共重合体の水素添加物として少なくともスチレン-水添ブタジエン/イソプレン-スチレン共重合体を含むことが好ましい。
【0052】
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが二官能のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、上記例示も含め、本来、厳密にはY-Z-Y(Zはカップリング残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロックYと区別する必要がある場合を除き、全体としてYと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはA-B-Z-B-A(Zはカップリング剤残基を表す)と表記されるべきブロック共重合体はA-B-Aと表記され、トリブロック共重合体の一例として取り扱われる。
【0053】
(重合体ブロック(A)及び(B)の含有量)
ブロック共重合体において、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、前記重合ブロック(A)及び(B)以外の他の単量体で構成される重合ブロックを含有していてもよいが、前記重合体ブロック(A)及び前記重合体ブロック(B)の合計含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。90質量%以上であれば、より優れた制振性及び高温においても粘接着力の低下を抑制しやすい粘接着組成物とすることができる。
【0054】
(重量平均分子量)
ブロック共重合体及びその水素添加物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めた重量平均分子量(Mw)は、好ましくは15,000~800,000、より好ましくは50,000~700,000、さらに好ましくは60,000~600,000、よりさらに好ましくは70,000~600,000、特に好ましくは90,000~500,000、最も好ましくは130,000~450,000である。ブロック共重合体及びその水素添加物の重量平均分子量が15,000以上であれば、耐熱性が高くなり、800,000以下であれば、粘接着組成物の取扱い性が良好となる。
【0055】
[tanδ]
(tanδのピークトップ温度及び強度)
tanδ(損失正接)は、動的粘弾測定における周波数1Hzにおける損失弾性率/貯蔵弾性率の比であり、tanδのピークトップ温度及び強度は、制振性、及びその他の物性に大きく寄与する。ここで、tanδのピークトップ強度とは、tanδのピークが最大となるときのtanδの値のことである。また、tanδのピークトップ温度とは、tanδのピークが最大となるときの温度のことである。
【0056】
本明細書においてブロック共重合体又はその水素添加物のtanδのピークトップ温度及び強度は、ブロック共重合体又はその水素添加物を、温度230℃、圧力10MPaで3分間加圧することで、厚み1.0mmの単層シートを作製し、該単層シートを円板形状に切り出し、これを試験片として測定する。測定条件は、JIS K 7244-10(2005年)に準拠して、歪み量0.1%、周波数1Hz、測定温度-70~100℃、昇温速度3℃/分である。
なお、ブロック共重合体又はその水素添加物のピークトップ温度及びtanδ強度は、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0057】
ブロック共重合体又はその水素添加物は、上記測定により、tanδのピークトップ強度が1.0以上となり得る。より高いものでは、1.5以上、さらには1.9以上となるものもある。tanδのピークトップ強度が高い程、その温度における制振性等の物性に優れることを示し、1.0以上であれば、実使用環境下において充分な制振性を得ることができる。
また、ブロック共重合体又はその水素添加物は、tanδのピークトップ温度が、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-40℃以上、さらに好ましくは-30℃以上、よりさらに好ましくは-25℃以上であり、0℃以上であってもよい。また、上記tanδのピークトップ温度の上限は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、50℃以下であってもよく、40℃以下であってもよく、35℃以下であってもよい。tanδのピークトップ温度の範囲として、例えば、好ましくは-50~50℃であり、より好ましくは-40~40℃、さらに好ましくは-30~30℃、よりさらに好ましくは-25~25℃である。上記tanδのピークトップ温度が-50℃以上であれば、実使用環境下において充分な制振性を得ることができ、50℃以下であれば、粘接着組成物は望ましい接着性を発現することができる。
【0058】
(tanδが1.0以上となる温度領域の最大幅)
またブロック共重合体又はその水素添加物は、上記測定条件で測定した-70~100℃におけるtanδが1.0以上となる一連の温度領域が存在し、該温度領域の最大幅が、好ましくは12℃以上であり、より好ましくは13℃以上であり、さらに好ましくは15℃以上、よりさらに好ましくは17℃以上である。
前述のとおり、重合体ブロック(B)の構造単位において前記脂環式骨格(X)が主鎖に組み込まれており、さらに高いビニル結合量を有し得ることにより、分子運動が小さくなるためガラス転移温度が上昇し、温度変化に対してガラス転移がなだらかになる。これにより、ブロック共重合体又はその水素添加物のtanδが1以上を示す温度範囲が広くなり、広い温度範囲で制振性を示すことが可能となる。tanδが1.0以上となる温度領域の最大幅が12℃以上、さらには13℃以上であれば、実使用環境下においてより優れた制振性を得ることができる。また、該温度領域の最大幅には特に上限値はないが、例えば生産性の観点から、上限値が35℃であってもよいし、30℃であってもよいし、25℃であってもよい。
【0059】
[粘着付与樹脂]
粘接着組成物には、取扱い性及び粘接着力を高める観点から、粘着付与樹脂を含有することができる。
粘着付与樹脂としては、例えばクマロン・インデン樹脂等のクマロン樹脂;p-t-ブチルフェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、テルペン・フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂;芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、変性脂環式系石油樹脂等の石油樹脂;ロジンのペンタエリスリトールエステル及びロジンのグリセロールエステル等に代表されるロジンエステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンのメチルエステル、重合ロジンのペンタエリスリトールエステル、水素添加ロジンエステル、高融点エステル系樹脂、重合ロジン、硬化ロジン、特殊ロジンエステル等のロジン系樹脂などが挙げられる。中でも粘着付与樹脂として、脂環族飽和炭化水素系樹脂を好適に用いることができる。脂環族飽和炭化水素系樹脂は、芳香族系石油樹脂が水素添加されたものが挙げられ、例えば荒川化学工業株式会社製「アルコン」シリーズ等の市販品を用いてもよい。これらの粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、得られる粘接着組成物の糊残り低減、耐熱性や耐候性向上の観点、及びシーラントなどの着色を避けることが好ましい用途の場合、水素添加された粘着付与樹脂を用いることが好ましい。
上記粘着付与樹脂の軟化点は、好ましくは85~160℃であり、より好ましくは90~150℃であり、さらに好ましくは95~145℃である。粘着付与樹脂の軟化点が85℃以上であれば高温(約60℃)での接着保持力の低下を抑制しやすくなり、160℃以下であれば粘接着組成物の取扱い性が良好である。
【0060】
[可塑剤]
粘接着組成物には、柔軟性が発現し、また粘接着性を付与しやすくなる観点から、可塑剤を含有することができる。
可塑剤としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸誘導体;ホワイトオイル;ミネラルオイル;エチレンとα-オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;ポリブテン;低分子量ポリイソブチレン;液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体等の液状ポリジエン及びその水添物等が挙げられる。中でも、ブロック共重合体及びその水素添加物との相容性の観点から、パラフィン系プロセスオイル;エチレンとα-オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;低分子量ポリイソブチレン;並びにこれらの水添物が好ましく、パラフィン系プロセスオイルの水添物がより好ましい。これらの可塑剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
[充填剤]
粘接着組成物には、各種用途に求められる性状に応じて、充填剤を含有することができる。
充填剤としては、例えばタルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス中空球、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ホウ酸亜鉛、ドーソナイト、ポリリン酸アンモニウム、カルシウムアルミネート、ハイドロタルサイト、シリカ、シリカアルミナ、珪藻土、ウォラストナイト、ゼオライト、ベーマイト、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、グラフェン、炭酸バリウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、ケイ酸アルミニウム(カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト)、ケイ酸マグネシウム(アタパルジャイト)、ホウ酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、活性炭、炭素中空球、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素などの無機フィラー;木粉、でんぷんなどの有機フィラー;有機顔料などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
[含有量]
本実施形態において粘接着組成物は、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対し、1~1000質量部の粘着付与樹脂及び1~1000質量部の可塑剤から選ばれる少なくとも1種を含む。粘着付与樹脂及び可塑剤は、粘接着組成物の用途に応じ、いずれか一方又は両方を含有させることができる。
粘着付与樹脂の上記含有量が1質量部未満であると粘着付与樹脂の性能を粘接着組成物に付与することができず、1000質量部を超えると低温での粘接着力が低下するおそれがある。また、可塑剤の上記含有量が1質量部未満であると可塑剤の性能を粘接着組成物に付与することができず、1000質量部を超えると高温での粘接着力が低下するおそれがある。
【0063】
高温でも粘接着力を維持しやすい観点から、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、粘着付与樹脂の含有量は、好ましくは120~1000質量部である。また、粘接着組成物の良好な取扱い性が発現されやすく、より優れた粘接着力の維持を容易にする観点から、ブロック共重合体又はその水素添加物が100質量部に対して、粘着付与樹脂の含有量は、より好ましくは130質量部以上、さらに好ましくは140質量部以上である。一方、低温での粘接着力の観点からは、ブロック共重合体又はその水素添加物が100質量部に対して、粘着付与樹脂の含有量は、より好ましくは900質量部以下、さらに好ましくは700質量部以下、よりさらに好ましくは400質量部以下である。
【0064】
柔軟性及び粘接着性を付与しやすい観点から、ブロック共重合体又はその水素添加物が100質量部に対して、可塑剤の含有量は、好ましくは60~1000質量部である。また、粘接着組成物の取扱い性及び柔軟性に優れさせる観点から、ブロック共重合体又はその水素添加物が100質量部に対して、可塑剤の含有量は、より好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上である。一方、適度な柔軟性と粘接着力の観点からは、ブロック共重合体又はその水素添加物が100質量部に対して、可塑剤の含有量は、より好ましくは900質量部以下、さらに好ましくは700質量部以下、よりさらに好ましくは400質量部以下である。
【0065】
また、本実施形態において、粘接着組成物における充填剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲において特に制限されず、粘接着組成物の用途に応じ適宜調整することができる。
粘接着組成物の柔軟性及び制振性を好適に発現する観点から、ブロック共重合体又はその水素添加物が100質量部に対して、充填剤の含有量は、好ましくは10~2500質量部である。また、粘接着組成物の取扱い性及び柔軟性に優れさせる観点から、ブロック共重合体又はその水素添加物が100質量部に対して、充填剤の含有量は、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。一方、優れた制振性と高温においても粘接着性を維持しやすい観点から、ブロック共重合体又はその水素添加物が100質量部に対して、充填剤の含有量は、より好ましくは2400質量部以下、さらに好ましくは2200質量部以下である。
【0066】
粘接着組成物におけるブロック共重合体又はその水素添加物と、粘着付与樹脂及び可塑剤から選ばれる少なくとも1種と、充填剤との合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0067】
また、本実施形態において各成分の含有量は、粘接着組成物の用途に応じて好適な範囲を特定することができる。以下に粘接着組成物の用途に応じた含有量の一例を示すが、これに限定されるものではない。
(表面保護フィルム)
粘接着組成物を、粘着層を含む表面保護フィルムにおける該粘着層に用いる場合、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、粘着付与樹脂の含有量は、適度な粘接着力と糊残りの少なさのバランスの観点から、好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~80質量部、さらに好ましくは10~70質量部である。
また同上の場合、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、可塑剤の含有量は、ブリード抑制と粘接着力のバランスの観点から、好ましくは0~100質量部、より好ましくは0~90質量部、さらに好ましくは0~80質量部である。
【0068】
(ホットメルト接着剤)
粘接着組成物を、ホットメルト接着剤に用いる場合、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、粘着付与樹脂の含有量は、常温から高温での粘接着力と低温での粘接着力のバランスの観点から、好ましくは30~1000質量部、より好ましくは50~700質量部、さらに好ましくは100~500質量部である。
また同上の場合、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、可塑剤の含有量は、低温での粘接着力と常温から高温での保持力のバランスの観点から、好ましくは0~1000質量部、より好ましくは10~500質量部、さらに好ましくは25~300質量部である。
【0069】
[添加剤]
粘接着組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上述のブロック共重合体及びその水素添加物、粘着付与樹脂、可塑剤、並びに充填剤以外に各種添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、架橋剤(イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン樹脂等)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、撥水剤、防水剤、親水性付与剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁波シールド性付与剤、透光性調整剤、蛍光剤、摺動性付与剤、透明性付与剤、アンチブロッキング剤、金属不活性化剤、防菌剤、結晶核剤、亀裂防止剤、オゾン劣化防止剤、防鼠剤、分散剤、増粘剤、耐光剤、耐候剤、銅害防止剤、補強剤、防かび剤、大環状分子(シクロデキストリン、カリックスアレーン、ククルビツリル等)や、オレフィン樹脂やオレフィン樹脂以外の樹脂を挙げることができる。
オレフィン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン;α-オレフィンの単独重合体又は共重合体;プロピレン及び/又はエチレンとα-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。上記α-オレフィンとしては、例えば1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数20以下のα-オレフィンが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、これらのオレフィン樹脂をマレイン酸などにより変性させた変性オレフィン樹脂を用いることもできる。
オレフィン樹脂以外の樹脂としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体加硫物、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、天然ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のアセタール系樹脂、ポリメチルメタアクリレート系樹脂等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
上記添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。一方で、本発明の効果を最大限享受する観点から、粘接着組成物において、上記添加剤の含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。添加剤の含有量が10質量%以下であれば、後述するtanδ強度の挙動に影響をほとんど与えないものと考えられる。
粘接着組成物におけるブロック共重合体又はその水素添加物と、粘着付与樹脂及び可塑剤から選ばれる少なくとも1種と、充填剤との合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、95質量%以上でもよく、98質量%以上でもよい。
【0070】
[粘接着組成物の調整方法]
粘接着組成物の調整方法は、特に制限されず、例えば混練装置を用いて調整することができる。混練装置としては、本分野において一般に用いられている方法を採用できる。各成分を、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダー等の混合機を用いて混合することにより、あるいはその混合後、一軸又は二軸押出機、ニーダー等により混練すればよい。溶融混練時の温度は適宜設定することができるが、通常150~300℃であり、好ましくは160~250℃である。
得られた粘接着組成物は、用途や使用態様等に応じて適切な形態にすることができ、例えば粒状、フレーク状、ペレット状にしてもよい。
また、粘接着組成物は、各成分を各種有機溶媒に溶解して混合した後、該有機溶媒を乾燥等により除去することで調整することができる。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノール、s-ブタノール、アセトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ヘプタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族溶剤、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族溶剤等が挙げられる。
【0071】
≪粘接着組成物の物性≫
[tanδ強度]
上述のブロック共重合体又はその水素添加物は、優れた制振性を示すことができる。したがって、ブロック共重合体又はその水素添加物を含有する粘接着組成物は、tanδのピークトップ強度が、好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、さらには2.6以上となるものもある。粘接着組成物のピークトップ温度は、好ましくは-10℃以上、より好ましくは0℃以上である。粘接着組成物のピークトップ温度の上限は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、50℃以下であってよく、40℃以下であってもよい。
また、粘接着組成物の23℃の温度におけるtanδ強度は、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.50以上となり得る。粘接着組成物の40℃の温度におけるtanδ強度は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上となり得る。粘接着組成物の60℃の温度におけるtanδ強度は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上となり得る。
【0072】
[貯蔵弾性率]
本実施形態において、剪断貯蔵弾性率G’(60℃)に対する23℃での剪断貯蔵弾性率G’(23℃)の比[G’(23℃)/G’(60℃)]は、好ましくは1.3以上である。
本実施形態では、粘接着組成物は、上述のブロック共重合体又はその水素添加物を含むことにより、上記貯蔵弾性率の比[G’(23℃)/G’(60℃)]が1.3以上を達成しやすくなる。一般に粘接着力は高温になる程に低下するが、本実施形態では、該貯蔵弾性率の比[G’(23℃)/G’(60℃)]が1.3以上であれば、23℃から60℃にかけての剥離強度の低下の程度が小さくなり、高温においても剥がれ難い傾向となる。
本実施形態において、上記貯蔵弾性率の比[G’(23℃)/G’(60℃)]は、粘接着組成物(上述のブロック共重合体又はその水素添加物、上述の粘接着樹脂、上述の可塑剤、及び上述の充填剤及び任意成分の種類や含有量)等を調整することにより、1.5以上、さらには1.7以上とすることも可能である。
なお、剪断貯蔵弾性率は、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0073】
[剥離強度]
本実施形態において、粘接着組成物の剥離強度は、アクリル樹脂版を被着体として、JIS Z 0237(2009年)に準拠して測定した180度剥離強度が、測定温度23℃において好ましくは10.0N/25mm以上、より好ましくは15.0N/25mm以上、さらに好ましくは20.0N/25.0mm以上、よりさらに好ましくは25.0N/25.0mm以上とすることができる。また、同条件における剥離強度が、測定温度60℃において好ましくは5.0N/25mm以上、より好ましくは8.0N/25mm以上、さらに好ましくは11.0N/25mm以上、よりさらに好ましくは12.0N/25mm以上、特に好ましくは14.0N/25mm以上とすることができる。一般に粘接着力は高温になる程に低下するが、本実施形態では、上述のブロック共重合体又はその水素添加物を含み、その含有量を好適な範囲に調整すること等により上記粘接着力を達成しやすくなる。
また、本実施形態において、粘接着組成物の23℃での上記剥離強度に対する60℃での上記剥離強度の比は、0.2以上、さらには0.3以上、さらには0.4以上とすることも可能である。当該剥離強度の比は、粘接着組成物の組成(上述のブロック共重合体又はその水素添加物、上述の粘接着樹脂、上述の可塑剤、及び上述の充填剤及び任意成分の種類や含有量)等を調整することにより達成しやすくなる。
なお、剥離強度は、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
【0074】
≪用途≫
上述の粘接着組成物を含む粘接着剤とすることができる。
粘接着剤は、例えば加熱溶融して使用してもよい。また、粘接着剤は、例えば各種有機溶媒を用い、固形分濃度が約5~70質量%になるように溶解させて溶液状の粘接着剤として使用することができる。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノール、s-ブタノール、アセトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ヘプタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族溶剤、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族溶剤等が挙げられる。
また、粘接着組成物を含むホットメルト接着剤として使用することができ、例えばブロック共重合体又はその水素添加物、粘着付与樹脂を含み、さらに必要に応じて可塑剤を含む粘接着組成物がホットメルト接着剤に好適である。
【0075】
[シーラント]
上述の粘接着組成物を含むシーラントとすることができる。
上述の粘接着組成物をそのままシーラントとすることができるが、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、架橋を行ってもよい。架橋を行う場合は、ラジカル発生剤、硫黄又は硫黄化合物等の架橋剤を用いることができる。さらに、硫黄又は硫黄化合物を用いて架橋を行う場合は、必要に応じて架橋助剤として加硫促進剤を用いてもよい。
【0076】
ラジカル発生剤としては、例えばt-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド;ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α'-ビス(t-ブチルペルオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキシン-3等の過酸化ジアルキル;アセチルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド等の過酸化ジアシル;t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート等の過酸化エステル、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド等のケトンペルオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸塩、金属酸化物等の無機過酸化物、アゾ化合物、モノ及びジスルフィド、金属キレート、レドックス開始剤等が挙げられる。これらのラジカル発生剤を用いる場合は、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.05~10質量部の範囲内で使用される。
【0077】
硫黄化合物としては、例えば一塩化硫黄、二塩化硫黄等が挙げられる。
硫黄又は硫黄化合物を用いる場合、粘接着組成物における硫黄又は硫黄化合物の含有量は、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.2~10質量部である。
【0078】
加硫促進剤としては、例えばN,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール類;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン等のグアニジン類;ブチルアルデヒド-アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン-アセトアルデヒド反応物等のアルデヒド-アミン系反応物ないしはアルデヒド-アンモニア系反応物、2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン類;チオカルバニリド、ジエチルウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア等のチオウレア類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラムモノないしポリスルフィド類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のチオカルバミン酸塩類;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩類、有機過酸化物、亜鉛華等が挙げられる。これらの加硫促進剤は1種でもよく、2種以上併用してもよい。加硫促進剤を併用する場合、その添加量は、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、好ましくは0.05~30質量部、より好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは0.2~10質量部である。
【0079】
また、シーラントとする場合、粘接着組成物は上述の充填剤及び添加剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
シーラントとする場合、制振性の観点から、充填剤を用いることが好ましい。上記充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、カーボン繊維が挙げられる。
充填剤を含有させてシーラントとする場合、粘接着組成物における充填剤の含有量は、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、好ましくは10~200質量部、より好ましくは10~150質量部である。
また、添加剤の中でも、シーラントの流動性を向上させるとともに、熱劣化を抑制する観点から、滑剤を用いることが好ましい。滑剤としては、例えばシリコンオイル;パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸ステアリルが挙げられる。
滑剤を含有させてシーラントとする場合、粘接着組成物における滑剤の含有量は、ブロック共重合体又はその水素添加物100質量部に対して、好ましくは1~20質量部、より好ましくは1~15質量部である。
【0080】
[その他]
本実施態様において、粘接着組成物を含む粘接着剤及びホットメルト接着剤は種々の用途に使用できる。
粘接着剤及びホットメルト接着剤は、例えば使い捨ておしめ、大人用の失禁製品、生理用ナプキン、ベットパッド、救急絆、外科的ドレープ、片面テープ、両面テープ、転写テープ、ラベル、プラスチックシート、不織布シート、紙シート、厚紙、本、フィルタ、又は、パッケージを備える物品での使用;
ガスケットシーラント(特に、自動車、電機部品、技術照明分野)での使用;
多層フィルムの再密封可能なトレーの製造での使用;
郵送容器素材を含む物品での使用;
防振材、緩衝材、衝撃吸収材、低反発材、転倒防止材、免震材、防震材、又は制振材(好ましくは消音材、より好ましくは自動車産業での減衰又は消音材マット、パッド、シート及びテープ)での使用;
電子デバイス(特に、LCDディスプレイ、LEDディスプレイ、タッチスクリーン、又は可撓性薄膜太陽電池)での使用;
経皮的薬物送達システムでの使用;
パイプ(好ましくは冷却コイル)、電子部品(好ましくは発光素子、コンピューター機器、携帯電話、タブレット、タッチスクリーン、自動車技術ハイファイシステム、及びオーディオシステム)、太陽熱加熱の熱パイプと水タンクとの間の結合部、燃料電池及び風力タービン、コンピューターチップの製造、光デバイス、バッテリー、ハウジング、クーラー、熱交換デバイス、ワイヤー、ケーブル、電熱線、冷蔵庫、食器洗い機、空調機器、アキュムレータ、トランス、レーザー機器、機能性衣料品、車の座席、医療用機器、防火装置、電動機、飛行機、及び列車における使用;
3D印刷材料のフィラメント、発熱デバイスを封止するための注封用封止剤又は成形封止剤での使用;
木材、金属、ポリマープラスチック、ガラス及びテキスタイルから形成される基材を有する物品を接合するための使用;給水塔における、外面への接合のための使用;履物の製造における或いは窓の製造におけるグレイジングコンパウンドとしての使用、ドア及び建築パネルの製造における或いは携帯用デバイス及びディスプレイの製造での使用;
製本、木材接着、フラットラミネーション、フレキシブル包装、プロファイルラッピング、エッジバンディング、テキスタイルラミネーション、低圧成形、及び靴での使用;
書籍、包装フィルム、剛性パネル、家具、窓、履物、自動車前照灯、自動車トリム又は衣料品のための接合された布地/織物の製造での使用;
加飾フィルムでの使用;
が挙げられる。
【実施例
【0081】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
後述の製造例で得られたブロック共重合体の水素添加物の物性評価方法を以下に示す。
(1)重合体ブロック(A)の含有量
水添前のブロック共重合体をCDClに溶解してH-NMR測定[装置:「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)、測定温度:30℃]を行い、スチレンに由来するピーク強度とジエンに由来するピーク強度の比から重合体ブロック(A)の含有量を算出した。
【0083】
(2)重量平均分子量(Mw)
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、ブロック共重合体の水素添加物について、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
(GPC測定装置及び測定条件)
・装置 :GPC装置「HLC-8020」(東ソー株式会社製)
・分離カラム :東ソ-株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」及び「G5000HXL」を直列に連結した。
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7mL/min
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
・検出器:示差屈折率(RI)検出器
・検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0084】
(3)重合体ブロック(B)における水素添加率
H-NMR測定により、イソプレン及び/又はブタジエンの残存オレフィン由来のピーク面積とエチレン、プロピレン及び/又はブチレン由来のピーク面積との比から算出した。
・装置:核磁気共鳴装置「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)
・溶媒:CDCl
【0085】
(4)重合体ブロック(B)におけるビニル結合量
水添前のブロック共重合体をCDClに溶解してH-NMR測定[装置:「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)、測定温度:30℃]を行った。イソプレン及び/又はブタジエン由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン構造単位における3,4-結合単位及び1,2-結合単位、ブタジエン構造単位における1,2-結合単位、又は、イソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位の場合はそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比とからビニル結合量(3,4-結合単位と1,2-結合単位の含有量の合計)を算出した。
【0086】
(5)重合体ブロック(B)中の脂環式骨格(X)の含有量
水添前のブロック共重合体600mg及びCr(acac)40mgをCDCl4mLに溶解して10mmNMRチューブを用いて定量13C-NMR測定(パルスプログラム:zgig、Inverse gated 1H decoupling法) [装置:「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)、測定温度:30℃]を行い、下記の方法にて重合体ブロック(B)中の脂環式骨格X、X1、及びX2それぞれの含有量を算出した。
なお、表3中、X、X1、及びX2は次の脂環式骨格を示す。
X:以下(i)~(vi)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格
X1:以下(i),(iv)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格
X2:以下(ii),(iii),(v),(iv)の置換基の組み合わせを有する脂環式骨格
(i) :R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子;(1,2Bd+Bd)
(ii) :R=水素原子、R=メチル基、R=水素原子;(1,2Bd+1,2Ip)
(iii):R=水素原子、R=水素原子、R=メチル基;(1,2Bd+3,4Ip)
(iv) :R=メチル基、R=水素原子、R=水素原子;(1,2Ip+Bd)
(v) :R=メチル基、R=メチル基、R=水素原子;(1,2Ip+1,2Ip)
(vi) :R=メチル基、R=水素原子、R=メチル基;(1,2Ip+3,4Ip)
【0087】
〔算出方法〕
各ピークと由来する構造を表1-1に示す。それぞれのピークの積分値をa~gとすると、各構造の積分値は表1-2のようになり、X,X1,X2の含有量はそれぞれ、(a+g-c)/(a+b+c-d+e/2+2f), (g-c)/(a+b+c-d+e/2+2f), a/(a+b+c-d+e/2+2f)で算出できる。
【0088】
【表1】
【0089】
(6)13C-NMRのピーク面積比
製造例1及び比較製造例1の水素添加物について、上記定量13C-NMR測定[装置:「ADVANCE 400 Nano bay」(Bruker社製)、測定温度:30℃、溶媒:CDCl]を行いピーク面積比[ケミカルシフト値50.0~52.0ppmのピーク面積]/[ケミカルシフト値43.0~45.0ppmのピーク面積]を算出した。
【0090】
(7)tanδのピークトップ温度、ピークトップ強度、tanδが1.0以上となる温度領域の最大幅、20℃及び30℃でのtanδ強度
以下の測定のため、ブロック共重合体の水素添加物を、温度230℃、圧力10MPaで3分間加圧することで、厚み1.0mmの単層シートを作製した。該単層シートを円板形状に切り出し、これを試験シートとした。
測定には、JIS K 7244-10(2005年)に基づいて、平行平板振動レオメータとして、円板の直径が8mmのゆがみ制御型動的粘弾性装置「ARES-G2」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いた。
上記試験シートによって2枚の平板間の隙間を完全に充填し、歪み量0.1%で、上記試験シートに1Hzの周波数で振動を与え、-70℃から100℃まで3℃/分の定速で昇温した。せん断損失弾性率及びせん断貯蔵弾性率の測定値に変化がなくなるまで、上記試験シートと円板の温度を保持し、tanδのピーク強度の最大値(ピークトップ強度)及び該最大値が得られた温度(ピークトップ温度)を求めた。また、tanδが1.0以上となる温度領域の最大幅、20℃及び30℃でのtanδ強度を求めた。該値が大きいほど、制振性に優れることを示す。
【0091】
[製造例1]
水素添加物(H-TPE-1)の製造
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50kg、アニオン重合開始剤として濃度10.5質量%のsec-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液87g(sec-ブチルリチウムの実質的な添加量:9.1g)を仕込んだ。
耐圧容器内を50℃に昇温した後、スチレン(1)1.0kgを加えて1時間重合させ、容器内温度50℃で、ルイス塩基として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP)63gを加え、イソプレン8.16kg及びブタジエン6.48kgの混合液を表2に示す平均ジエンフィード速度で、5時間かけて加えた後2時間重合させ、さらにスチレン(2)1.0kgを加えて1時間重合させることにより、ポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
該反応液に、オクチル酸ニッケル及びトリメチルアルミニウムから形成されるチーグラー系水素添加触媒を水素雰囲気下で添加し、水素圧力1MPa、80℃の条件で5時間反応させた。該反応液を放冷及び放圧させた後、水洗により上記触媒を除去し、真空乾燥させることにより、ポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、H-TPE-1と称することがある)を得た。
各原料及びその使用量について表2に示した。また、前記物性評価の結果を表3に示した。
【0092】
[比較製造例1]
水素添加物(H-TPE-1’)の製造
各成分及びそれらの使用量、並びに反応条件を表2に記載のとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、ブロック共重合体の水素添加物(H-TPE-1’)を製造した。また、前記物性評価の結果を表3に示した。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
製造例1のブロック共重合体及びその水素添加物は、tanδのピークトップ強度が1.0以上を示し、また広い温度領域においてtanδのピークトップ温度が示されるため、制振材料として幅広い用途に好適であるといえる。特に、比較製造例1と比較すると、製造例1では20℃及び30℃のtanδ強度が比較的高く、室温付近での制振性に優れることが分かる。
【0096】
<粘接着組成物>
[実施例1~5][比較例1~5]
(粘接着組成物の作製方法〈1〉)
表4に示す配合にしたがい、前記製造例1及び比較製造例1で得られたブロック共重合体の水素添加物(H-TPE-1、H-TPE-1’)と、粘着付与樹脂と、可塑剤と、酸化防止剤(添加剤)との合計に対して、同一質量部のトルエンを添加することでトルエン溶液を作製した。このトルエン溶液をベーカー式アプリケーター(SA-201、テスター産業株式会社製)を用いて、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名 テイジンテトロンフィルムG2、帝人デュポンフィルム株式会社製)に塗布後、60℃で30分間乾燥することにより、PETフィルム上に粘接着組成物を作製した。この粘接着組成物の厚みは30μmであった。
【0097】
(粘接着組成物の作製方法〈2〉)
上記(粘接着組成物の作製方法〈1〉)と同様にトルエン溶液を作製後、このトルエン溶液5gを縦5cm×横5cm×高さ3cmの紙箱(離型PET面が内側)に添加し、23℃で24時間、さらに60℃で8時間乾燥することにより粘接着組成物を作製した。この粘接着組成物の厚みは1mmであった。
【0098】
[実施例6][比較例6]
(粘接着組成物の作製方法〈3〉)
表4に示す配合に従い、前記製造例1及び比較製造例1で得られたブロック共重合体の水素添加物(H-TPE-1、H-TPE-1’)と、粘着付与樹脂と、可塑剤と、充填剤と、酸化防止剤(添加剤)を、ブラベンダー(ブラベンダー社製、「プラストグラフEC 50ccミキサー」)に投入し、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmで3分間溶融混練した後、得られた組成物を、片面に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名 テイジンテトロンフィルムG2、帝人デュポンフィルム株式会社製)を挿入してプレス成形(200℃、2分)することにより、PETフィルム上に粘接着組成物を作製した。この粘接着組成物の厚みは0.5mmであった。
【0099】
(粘接着組成物の作製方法〈4〉)
上記(粘接着組成物の作製方法〈3〉)と同様に溶融混錬した後、得られた組成物を、プレス成型(200℃、2分)することにより、粘接着組成物を作製した。この粘接着組成物の厚みは1mmであった。
【0100】
[物性評価]
上記作製した粘接着組成物の物性評価を以下に示す。
(tanδのピークトップ温度、ピークトップ強度、23℃,60℃での剪断貯蔵弾性率、23℃,40℃,60℃でのtanδ強度、60℃での複素粘度(せん断、1Hz))
JIS K 7244-10(2005年)に従って、測定を行った。具体的には、上記(粘接着組成物の作製方法〈2〉)(粘接着組成物の作製方法〈4〉)で得られた粘接着組成物を直径8mmの円板形状に切り出したものをサンプルとし、ゆがみ制御型動的粘弾性装置「ARES-G2」(TAインスツルメント社製)を使用し、直径8mmの平面プレートに前記サンプルを挟み、歪み量0.1%、周波数1Hzで振動を与え、-70℃から180℃まで3℃/分で昇温して測定することによりtanδのピークトップ温度、ピークトップ強度、23,60℃での剪断貯蔵弾性率(G’)、23℃,40℃,60℃でのtanδ強度、60℃での複素粘度を測定した。結果を表4に示す。
【0101】
(ショアA硬度)
上記(粘接着組成物の作製方法〈4〉)で得られた粘接着組成物をそれぞれ6枚重ねて、厚さ6mmの硬度測定用試験片とし、JIS K 6253(2012年)に準じて、自動ゴム硬度計P2-A型(高分子計器製)を用いて、粘接着組成物のショアA硬度を測定した。結果を表4に示す。
【0102】
(23℃での剥離強度)
アクリル押出板(商品名 スミペックスE、厚さ1.5mm、住化アクリル販売株式会社製)に、(粘接着組成物の作製方法〈1〉)(粘接着組成物の作製方法〈3〉)で得られた粘接着組成物がアクリル樹脂板に接面するように貼り付け、幅25mmに裁断したものを試験片とした。この試験片のポリエチレンテレフタレート側から、2kgゴムローラーを用いて10mm/分の速度で2往復転圧した後、23±1℃、湿度50±5%の雰囲気下で24時間放置した。その後、JIS Z 0237(2009年)に準拠し、インストロン5566(インストロン社製)を使用して、粘接着組成物とアクリル樹脂板間の180度剥離強度を300mm/分の剥離速度で測定し、23℃での剥離強度とした。結果を表4に示す。
【0103】
(60℃での剥離強度)
23±1℃、湿度50±5%の雰囲気下で24時間放置後、さらに60℃の雰囲気で10分間放置後、60℃の雰囲気で剥離強度を測定する以外は上記(23℃での剥離強度)と同様にして、60℃での剥離強度とした。結果を表4に示す。
【0104】
【表4】
【0105】
表4に示す各成分は下記の通りである。
・粘着付与樹脂(1):アルコンP-100(脂環族飽和炭化水素系樹脂、軟化点(環球法)100±5℃、荒川化学工業株式会社製)
・粘着付与樹脂(2):アルコンP-125(脂環族飽和炭化水素系樹脂、軟化点(環球法)125±5℃、荒川化学工業株式会社製)
・可塑剤:ダイアナプロセスオイルPW-90(水添パラフィン系プロセスオイル、出光興産株式会社製)
・充填剤:エスカロン#200(重質炭酸カルシウム、三共精粉株式会社製)
・酸化防止剤:アデカスタブAO-60(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、株式会社ADEKA製)
【0106】
表4から、実施例1~6の粘接着組成物は、比較例1~6の粘接着組成物よりも、tanδのピークトップ強度の値が大きく、23~60℃の温度範囲においてtanδ強度の値が大きい。
また、実施例1~6の粘接着組成物は、比較例1~6の粘接着組成物よりも、60℃での複素粘度が低い。
さらに、実施例1~6の粘接着組成物は、比較例1~6の粘接着組成物よりも、貯蔵弾性率G’の比[G’(23℃)/G’(60℃)]が大きく、1.5以上である。このように実施例の粘接着組成物は23℃と60℃との貯蔵弾性率の比が比較例と比べて大きく、23℃から60℃にかけての剥離強度の低下が小さくなった[(60℃における剥離強度)/(23℃における剥離強度)が大きい]。
したがって、実施例の粘接着組成物は、脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位を有するブロック共重合体又はその水素添加物を含有することにより、優れた制振性、取扱い性及び粘接着力を有し、高温条件下でも粘接着性が維持されることが分かる。
【0107】
なお確かではないが、ブロック共重合体又はその水素添加物を含有する粘接着組成物が、高温(60℃)で柔軟化することで、被着材(アクリル樹脂板)表面の微小な凹凸に浸透しアンカーの様に作用した、あるいは被着材と接面する粘接着組成物表面の微小な凹凸の凸部が被着材の凹部に食い込んで弾性的な締め付け力が作用した、ことで粘接着組成物と被着材との接着力の低下が抑制されたと推測される。
さらに、実施例6の粘接着組成物は、ショアA硬度が低い。したがって、充填剤を含む実施例の粘接着組成物は、脂環式骨格(X)を主鎖に含む構造単位を有するブロック共重合体又はその水素添加物を含有することにより、シーラントとして優れた制振性、取扱い性、柔軟性及び粘接着力を有し、高温条件下でも粘接着性が維持されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の粘接着組成物は、制振性を有し、高温においても剥がれ難い粘接着性を有することから、粘接着剤、特にホットメルト接着剤として有用である。また、本発明の粘接着組成物は、シーラントにも利用することが可能である。