(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】電解質測定装置、および電解質濃度測定ユニットの異常判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20240628BHJP
G01N 27/333 20060101ALI20240628BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240628BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01N27/26 371C
G01N27/333
G01N27/416 346
G01N27/26 391Z
G01N27/26 371F
G01N35/00 F
(21)【出願番号】P 2023503384
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2021045035
(87)【国際公開番号】W WO2022185641
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2021032568
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】古矢 美樹
(72)【発明者】
【氏名】牛久 恵美子
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012823(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163281(WO,A1)
【文献】特開2014-041060(JP,A)
【文献】特開2015-125000(JP,A)
【文献】特開2016-218067(JP,A)
【文献】特開2020-041968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料、あるいは内部標準液が供給されるイオン選択性電極、電位の基準となる比較電極、および前記イオン選択性電極と前記比較電極との間の電位差を測定する測定部を有する電解質濃度測定ユニットと、
前記電解質濃度測定ユニットとは異なる測定項目の測定を行う第2測定部と、
前記電解質濃度測定ユニット、あるいは前記第2測定部に前記試料の分注を行う分注部と、
前記電解質濃度測定ユニット、前記第2測定部、および前記分注部を構成する各機器の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記分注部により前記第2測定部へ前記試料を分注する際、あるいは前記第2測定部での前記試料の測定の際に、前記イオン選択性電極に前記内部標準液が充填された状態で電位を測定し、測定データに基づいて前記電解質濃度測定ユニットの異常の有無を判定する
ことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解質測定装置において、
前記第2測定部は比色測定ユニットであり、
前記制御部は、前記分注部により前記比色測定ユニットへ前記試料を分注する際、あるいは前記比色測定ユニットで前記試料の測定の際に電位を測定する
ことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電解質測定装置において、
前記制御部は、前記イオン選択性電極に前記内部標準液が充填された状態で連続して2回以上電位を測定した際の測定データに基づいて前記電解質濃度測定ユニットの異常の有無を判定する
ことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電解質測定装置において、
前記電解質濃度測定ユニットは、前記イオン選択性電極を複数有しており、
前記制御部は、各々の前記イオン選択性電極で測定された電位の状態の組み合わせに基づいて異常を判別する
ことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電解質測定装置において、
前記制御部は、測定された前記電位が全ての前記イオン選択性電極で基準範囲外となったか否かで異常原因を特定する
ことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電解質測定装置において、
前記電位の状態を、測定電位の継時変化の傾きとする
ことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電解質測定装置において、
前記制御部は、全ての前記イオン選択性電極の測定電位が基準範囲内のときは、前記測定電位の継時変化の傾きに基づいて異常を判別する
ことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電解質測定装置において、
前記測定データ、前記電解質濃度測定ユニットの異常の有無の判定の結果のうち少なくともいずれか一方を表示する表示装置を更に備える
ことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項9】
試料、あるいは内部標準液が供給されるイオン選択性電極、電位の基準となる比較電極、および前記イオン選択性電極と前記比較電極との間の電位差を測定する測定部を有する電解質濃度測定ユニットと、前記電解質濃度測定ユニットとは異なる測定項目の測定を行う第2測定部と、を備えた電解質測定装置における電解質濃度測定ユニットの異常判定方法であって、
前記第2測定部へ前記試料を分注する際、あるいは前記第2測定部での前記試料の測定の際に、前記イオン選択性電極に前記内部標準液が充填された状態で電位を測定する測定ステップと、
前記測定ステップでの測定結果から前記電解質濃度測定ユニットでの異常の有無を判定する判定ステップと、を有する
ことを特徴とする電解質濃度測定ユニットの異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質測定装置に関し、特に複数のイオン選択性電極を用いて血液、尿等の試料の電解質の測定を行う電解質測定装置、および電解質濃度測定ユニットの異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定の迅速性の低下を抑制しつつ、信頼性を向上することができる電解質分析装置の一例として、特許文献1には、イオン選択電極を用いて試料中の特定イオンの濃度を測定する電解質分析装置において、試料の測定前及び測定後のそれぞれにおいて、予め既知のイオン濃度に調整された内部標準液のイオン濃度を測定し、試料の測定前後における内部標準液のイオン濃度の測定結果の差が、予め定めた基準値を超えた場合に、試料の測定結果を異常と判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解質測定装置は血液、尿等を試料として、試料中の特定のイオン濃度を測定する装置である。電解質測定装置には、種々の構成の装置が知られており、特にイオン選択性電極を利用して、イオン濃度を測定する構成が臨床検査の分野で広範囲に用いられている。
【0005】
イオン選択性電極を用いた電解質測定装置では、既知のイオン濃度を有する標準液を測定して予め検量線を作成する。次に、イオン選択性電極によって内部標準液と試料との間の起電力差を求め、予め作成した検量線を用いて試料中のイオン濃度を測定する。
【0006】
このような電解質測定装置は、例えば特許文献1に記載されている。また、この特許文献1には、試料の測定前及び測定後のそれぞれにおいて、予め既知のイオン濃度に調整された内部標準液のイオン濃度を測定し、試料の測定前後における内部標準液のイオン濃度の測定結果の差が、予め定めた基準値を超えた場合に、試料の測定結果を異常と判定する電解質測定装置が開示されている。
【0007】
臨床検査においては、生体試料に含まれる成分の定性・定量分析を行うために電解質測定部と比色分析部とを組み合わせた電解質測定装置が使用される。
【0008】
このような電解質測定装置では、測定原理の特性により、初めに電解質測定、次いで比色分析の順で試料分注が実施される。1試料における測定項目は電解質項目に対し比色項目が一般的に多く、電解質測定後次の試料が分注されるまでに時間が開くと、環境温度や電極膜の変化、電気的ノイズの条件変化等により、測定再開したときのイオン選択性電極の起電力が不安定になる場合がある。
【0009】
ここで、上述の特許文献1は、試料の測定前後における内部標準液のイオン濃度の測定結果の差から異常を判定するものであり、試料の測定後に判定結果が表示されることから、異常判定となれば当該試料をここから再測定しなければならない。
【0010】
臨床検査の分野では、測定の迅速性に加えて更に高い信頼性が求められる。電解質測定は一般的にフロースルー電極を用いて液を流しながら測定し、測定時間はミリ秒単位の一瞬で行われる。また、電解質測定はイオン選択性電極の起電力をもとに成分濃度を求める。そのため、イオン選択性電極の起電力が安定していることを監視することが、正確な測定のための指標となる。
【0011】
上記した従来の電解質測定装置では、試料測定時以外の待機時間においてイオン選択性電極の起電力の安定性を確認する手段がなく、更なる改善が求められることが明らかとなった。
【0012】
本発明の目的は、不安定状態を早期に察知することが可能な電解質分析装置、および電解質濃度測定ユニットの異常判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、試料、あるいは内部標準液が供給されるイオン選択性電極、電位の基準となる比較電極、および前記イオン選択性電極と前記比較電極との間の電位差を測定する測定部を有する電解質濃度測定ユニットと、前記電解質濃度測定ユニットとは異なる測定項目の測定を行う第2測定部と、前記電解質濃度測定ユニット、あるいは前記第2測定部に前記試料の分注を行う分注部と、前記電解質濃度測定ユニット、前記第2測定部、および前記分注部を構成する各機器の動作を制御する制御部と、を備え、記制御部は、前記分注部により前記第2測定部へ前記試料を分注する際、あるいは前記第2測定部での前記試料の測定の際に、前記イオン選択性電極に前記内部標準液が充填された状態で電位を測定し、測定データに基づいて前記電解質濃度測定ユニットの異常の有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、不安定状態を早期に察知することが可能となる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る電解質測定装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る電解質測定装置に含まれる電解質測定部とその周辺の構成の一例を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る電解質測定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図3中、A区間における内部標準液の起電力収集、および解析の処理内容を示すフローチャートである。
【
図5】
図3中、B区間における内部標準液の起電力収集、および解析の処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る電解質測定装置における待機時の起電力モニタの画面表示の一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係る電解質測定装置における待機時の起電力監視結果の画面表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電解質測定装置、および電解質濃度測定ユニットの異常判定方法の実施の形態について
図1乃至
図7を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0017】
<<電解質測定装置の全体構成および動作>>
最初に、
図1を用いて、本実施の形態に係る電解質測定装置の全体構成および動作について説明する。
図1は、この電解質測定装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。ここでは、生化学電解質測定装置を例に説明する。
【0018】
図1に示した電解質測定装置100は、電解質項目および比色項目の測定が可能な装置であり、複数の試料容器16が載置されるサンプルディスク1、複数の試薬ボトル18が載置される試薬ディスク2、複数の反応容器21が載置される反応ディスク3、反応槽4、サンプルディスク1と反応ディスク3との近傍に設置されたサンプリング機構5、試薬ディスク2と反応ディスク3との近傍に設置された試薬分注機構6、反応ディスク3の近傍に設置された攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、コンピュータ(PC)10、電解質測定部11、記憶装置12、制御部13、圧電素子ドライバ14、攪拌機構コントローラ15、円形サンプルディスク17、円形試薬ディスク19、保冷庫20、反応容器21、反応容器ホルダ22、駆動機構23、サンプルプローブ24、サンプルプローブ支承軸25、サンプルプローブアーム26、試薬プローブ27、試薬プローブ支承軸28、試薬プローブアーム29、固定部31、ノズル33、上下駆動機構34などを備えている。
【0019】
サンプルディスク1は、円形サンプルディスク17上に、分析対象の試料(サンプルとも記す)を収容する複数の試料容器16が円周上に並んで載置されている。
【0020】
サンプルディスク1の近傍には、サンプリング機構5が設置されている。このサンプリング機構5は、該当する試料容器16から試料を吸入し、この試料を該当する反応容器21、あるいは電解質測定部11に吐出するサンプルプローブ24がサンプルプローブ支承軸25に固定されたサンプルプローブアーム26に取り付けられている。
【0021】
試薬ディスク2は、円形試薬ディスク19上に、試薬を収納する複数の試薬ボトル18が円周上に並んで載置されている。この試薬ディスク2には、保冷庫20が設置されている。
【0022】
試薬ディスク2の近傍には、試薬分注機構6が設置されている。この試薬分注機構6は、該当する試薬ボトル18から試薬を吸入し、この試薬を該当する反応容器21に吐出する試薬プローブ27が試薬プローブ支承軸28に固定された試薬プローブアーム29に取り付けられている。
【0023】
反応ディスク3は、複数の反応容器21が保持される複数の反応容器ホルダ22が円周上に並んで載置されている。この反応ディスク3には、反応槽4が設置されている。反応ディスク3は、駆動機構23により間欠回転可能となっている。また、この反応ディスク3の近傍には、攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、電解質測定部11等が設置されている。
【0024】
攪拌機構7は、反応容器21内の内容物(試料と試薬)を攪拌するための機構であり、圧電素子ドライバ14、攪拌機構コントローラ15等から構成される。
【0025】
測光機構8は、反応容器21内の内容物を透過した透過光および内容物にて散乱した散乱光を測定するための機構であり、光源や検出器(いずれも図示の都合上省略)等から構成される。洗浄機構9は、反応容器21内を洗浄するための機構であり、ノズル33、上下駆動機構34等から構成される。この測光機構8は比色測定ユニットであり、本実施の形態における電解質測定部11とは異なる測定項目の測定を行う第2測定部となる。
【0026】
電解質測定部11は、試料の電解質測定を行うための装置であり、
図2において後述するイオン選択性電極や比較電極等から構成される。
【0027】
これらのサンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、サンプリング機構5、試薬分注機構6、攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、電解質測定部11は、それぞれ制御部13に接続され、更にコンピュータ10に接続されて、各動作が制御されるようになっている。また、制御部13には記憶装置12が接続されている。
【0028】
コンピュータ10は、例えば演算処理機能や記憶機能等を含む本体、キーボードやマウス等の入力部、液晶やCRT等の表示部10aから構成され、測定試料の情報や、測定項目の登録、分析パラメータ等を設定する。
【0029】
記憶装置12は、分析パラメータ、各試薬ボトルの分析可能回数、最大分析可能回数、キャリブレーション結果、分析結果等や、分注動作を評価する判定プロセス、また予め保持する判定に必要なデータなどを記憶保持している。なお、記憶装置12に記憶保持する情報は、コンピュータ10に付属する記憶媒体に記憶されても良いし、個別の記憶データベースとして記憶装置12のように単独で存在しても良い。
【0030】
制御部13は、上述のようにコンピュータ10から入力された測定項目の登録、分析パラメータ等に基づいて各機器の動作を制御して分析動作を実行させる主体である。
【0031】
本実施の形態では、制御部13は、サンプリング機構5により測光機構8での分析のための試料を分注する際、あるいは測光機構8での試料の測定の際に、イオン選択性電極104,105,106に内部標準液が充填された状態で電位を測定し、測定データに基づいて電解質測定部11の異常の有無を判定する。その詳細は後述する。
【0032】
この際、本実施の形態の制御部13では、イオン選択性電極104,105,106に内部標準液が充填された状態で連続して2回以上電位を測定した際の測定データに基づいて電解質測定部11の異常の有無を判定したり、各々のイオン選択性電極104,105,106で測定された電位の状態、好適には測定電位の継時変化の傾きの組み合わせに基づいて異常を判別したり、測定された電位が全てのイオン選択性電極104,105,106で基準範囲外となったか否かで異常原因を特定したり、全てのイオン選択性電極104,105,106の測定電位が基準範囲内のときは、測定電位の継時変化の傾きに基づいて異常を判別することができる。これらの詳細についても後述する。
【0033】
以上のように構成される電解質測定装置100において、試料の比色分析は、以下のようにサンプリング、試薬分注、攪拌、測光、反応容器の洗浄、濃度換算等のデータ処理の順番に実施される。
【0034】
サンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、サンプリング機構5、試薬分注機構6、攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9、電解質測定部11は、制御部13によりコンピュータ10を介して制御される。
【0035】
まず、サンプルディスク1上には、分析される試料を収容した複数の試料容器16が円周上に並んで設置されており、この分析される試料の順番に従ってサンプリング機構5のサンプルプローブ24の下まで移動する。試料容器16中の試料は、サンプリング機構5に連結された試料用ポンプ(図示せず)により、初めに電解質測定部11、次いで反応ディスク3上の反応容器21の中の順に所定量分注される。
【0036】
更に、試料を分注された反応容器21は、反応槽4の中を第1試薬添加位置まで移動する。移動した反応容器21には、試薬分注機構6の試薬プローブ27に連結された試薬用ポンプ(図示せず)により、試薬ディスク2上の試薬ボトル18から吸引された試薬が所定量加えられる。第1試薬添加後の反応容器21は、攪拌機構7の位置まで移動し、最初の攪拌が行われる。このような試薬の添加-攪拌の一連の動作が、例えば第1試薬乃至第4試薬について行われる。
【0037】
続いて、内容物が攪拌された反応容器21は、測光機構8において、光源から発した光束中を通過し、この時の吸光度は多波長光度計により検知される。検知された前記吸光度の信号は制御部13に入り、試料の濃度に変換される。また、制御部13では同時に吸光度に基づいた異常の判定を行う。
【0038】
また、試料の電解質測定は、試料をサンプリング機構5で電解質測定部11に分注して行う。なお、電解質測定部11への分注は、電解質測定用として別にサンプリング機構を設けても良い。
【0039】
そして、濃度変換されたデータは、記憶装置12に記憶され、コンピュータ10に付属する表示装置に表示される。測光の終了した前記反応容器21は、洗浄機構9の位置まで移動し、洗浄され、次の分析に供される。
【0040】
以上のように、本実施の形態に係る電解質測定装置においては、サンプリング、試薬分注、攪拌、測光、反応容器の洗浄、濃度換算等のデータ処理を順番に実施して、試料の比色分析を行うことができる。
【0041】
なお、
図1では電解質測定部11と伴に設けられている測定部(第2測定部)が比色項目を測定する測光機構8の場合を示しているが、伴に設けられる測定部は比色項目用に限られず、他の項目、例えば免疫項目測定用の測定部を設けることができる。
【0042】
また、電解質測定装置100は
図1に示すような単一の分析モジュール構成とする形態に限られず、様々な同一あるいは異なる分析項目を測定可能な分析モジュールや前処理を行う前処理モジュールを搬送装置で2つ以上接続する構成とすることができる。
【0043】
<<電解質測定装置の構成および動作>>
次いで、
図2を用いて、前述した電解質測定装置100に含まれる電解質測定部11とその周辺の電磁弁やシリンジ等の機構部を含む部分の構成および動作について説明する。
図2は、本実施の形態の電解質測定部はその周囲の構成の一例を示す概略構成図である。
【0044】
図2において、電解質測定部11は、特に制限されないが、大別すると、イオン選択性電極104,105,106等を具備する電解質測定機構と、電解質測定部に接続された制御部(制御装置)と、表示部(表示装置)とを具備している。
【0045】
電解質測定機構は、特に制限されないが、
図2に示すように、試料用容器101、サンプルプローブ24、希釈槽103、イオン選択性電極104,105,106、比較電極107、シッパーシリンジ108、内部標準液シリンジ109、希釈液シリンジ110、ピンチバルブ111、比較電極用二方電磁弁112、シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁113、廃液吐出用二方電磁弁114、およびイオン選択性電極104,105,106と比較電極107との間の電位差を測定する電圧計129を具備している。
【0046】
更に、電解質測定部11には、内部標準液吐出用二方電磁弁115、内部標準液吸引用二方電磁弁116、希釈液吐出用二方電磁弁117、希釈液吸引用二方電磁弁118が設けられている。
【0047】
この実施の形態においては、イオン選択性電極104は、Na(ナトリウム)イオン選択性電極であり、イオン選択性電極105は、K(カリュウム)イオン選択性電極であり、イオン選択性電極106は、Cl(塩基)イオン選択性電極である。
【0048】
電解質測定部11を構成する記憶部は
図1に示した記憶装置12(あるいはコンピュータ10内の記憶領域や付属の記憶媒体)の一部に対応し、また、制御部は
図1に示した制御部13(あるいはコンピュータ10も含む)の一部に対応する。この制御部13は、
図3乃至
図5において後述する、イオン選択性電極起電力を収集するフローや起電力解析処理フロー等を制御する。
【0049】
以上のように構成される電解質測定部11の動作について
図2を用いて説明する。この電解質測定部11の動作は、制御部13によりコンピュータ10を介して制御される。
【0050】
図2において、試料用容器101内の試料が、サンプルプローブ24によって設定量だけ吸引され、希釈槽103へ吐出される。また、希釈液ボトル121内の希釈液が、希釈液吸引用二方電磁弁118、希釈液シリンジ110、希釈液吐出用二方電磁弁117の動作により希釈槽103へ吐出される。これにより、試料用容器101から希釈槽103に吐出された試料が、希釈液によって希釈される。
【0051】
次いで、ピンチバルブ111が閉じた状態で、シッパーシリンジ108、シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁113の動作によって、比較電極液ボトル119内の比較電極液が、比較電極用二方電磁弁112を介して、比較電極107まで吸引される。
【0052】
次に、希釈槽103内で希釈された試料は、シッパーシリンジ108、シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁113、ピンチバルブ111により、イオン選択性電極104,105,106へ吸引される。
【0053】
希釈された試料が各々のイオン選択性電極104,105,106に接触することにより、各々のイオン選択性電極104,105,106のそれぞれにはそれぞれのイオン濃度に応じた起電力が発生する。例えば、イオン選択性電極104は、Naイオンの濃度に応じた起電力が発生する。
【0054】
この実施の形態においては、比較電極107における電圧を基準電圧として、各々のイオン選択性電極104,105,106のそれぞれに生じる起電力が電圧計129において測定される。
【0055】
更に、内部標準液ボトル120内の内部標準液が、内部標準液吸引用二方電磁弁116、内部標準液シリンジ109、内部標準液吐出用二方電磁弁115の動作により、希釈槽103へ吐出される。この場合、希釈された試料と内部標準液とが、交互にイオン選択性電極104,105,106へ移送されるように制御される。希釈された試料と内部標準液とが交互にイオン選択性電極104,105,106に接触することにより、イオン選択性電極104,105,106のそれぞれには、希釈された試料に基づく起電力と内部標準液に基づく起電力とが生じる。この生じる起電力は、比較電極107における電圧を基準電圧として、測定される。
【0056】
測定が終了した試料や内部標準液は、廃液吐出用二方電磁弁114を開くことにより廃液流路から電解質測定部11の外へ排出される。その後、新たに内部標準液がイオン選択性電極104,105,106へ移送され、次の試料測定のための内部標準液が移送されるまでの時間待機状態となる。
【0057】
電圧計129で測定された起電力は、イオン選択性電極104,105,106のそれぞれから信号配線128を介して、制御部13へ供給される。信号配線128を介して供給された起電力(測定された起電力)は増幅器へ供給され、増幅される。
【0058】
増幅された後、A/D変換器でデジタル信号に変換され、コンピュータ10に送られる。
【0059】
なお、
図1において、制御部13内の増幅器、およびA/D変換器は省略されている。
【0060】
予め濃度の判明している標準液を用いて検量線が、作成される。作成された検量線は、例えばコンピュータ10のキーボードのような入力装置を用いて、予め記憶装置12に格納しておく。コンピュータ10は、記憶装置12に予め記憶されている検量線を基にして、A/D変換器から供給されたデジタル信号に対して演算を行う。すなわち、コンピュータ10は、検量線を基にして、測定した試料の電解質の濃度計算を行い、その濃度計算の結果をコンピュータ10のモニタのような表示部10aに表示する。
【0061】
次に、本実施の形態における電解質測定装置の動作について
図3を用いて説明する。
図3は、本実施の電解質測定装置の動作を示すフローチャートである。なお、検量線は予め作成されているものとする。
【0062】
電解質測定装置100での測定が開始される(ステップS201)と、まず制御部13は、初めの試料に電解質項目の分析依頼があるか否かを判定する(ステップS202)。電解質項目の依頼があると判定されたときは処理をステップS203に進めて、電解質項目用の試料の分注が行われる(ステップS203)。これに対し、電解質項目の依頼がないと判定されたときは処理をステップS207に進める。
【0063】
ステップS203における電解質項目用の試料の分注処理が終了(ステップS204)した後は、次いで、制御部13は、当該試料に対する比色項目の分析依頼があるか否かを判定する(ステップS205)。比色項目の依頼があると判定されたときは処理をステップS207に進めて、比色項目の依頼がないと判定されたときは処理をステップS206に進める。
【0064】
比色項目の依頼がないと判定されたときは、次いで、制御部13は、この時点における次の試料の測定依頼があるか否かを判定する(ステップS206)。このステップS206では、測定項目は判断しないものとする。依頼があると判定されたときはステップS202の判断に処理を戻し、ないと判定されたときはステップS216にて測定終了となる。
【0065】
ステップS205において比色項目の依頼があると判定されたとき、あるいはステップS202において電解質項目の依頼がないと判定されたときは、次いで、制御部13は、比色項目用の試料の分注を開始する(ステップS207)。
【0066】
その後、制御部13は、比色項目の依頼数が、予め測定開始前に設定されていた比色項目用試料分注の時間内に判定に必要な起電力ポイントが収集可能な所定項目数以上の依頼があるか否かを判定する(ステップS208)。この所定項目数は、例えば5項目以上とすることができるが、装置構成に応じて適宜変更可能であり、限定されない。
【0067】
項目数以上の依頼があると判定されたときは、A区間における内部標準液の起電力収集、および解析を各々のイオン選択性電極104,105,106で行う(ステップS209)。その詳細は
図4を用いて後ほど説明する。これに対し、項目数以上の依頼がないと判定されたときは処理をステップS210に進め、すべての項目数に必要な試料の分注を適宜完了させる(ステップS210)。
【0068】
なお、比色項目用試料分注の時間内に判定に必要な起電力ポイントが収集可能な項目数は、予め設定されるものであり、電解質測定装置100の比色項目の分析に必要な測光機構8等の各機構の動作を考慮して、ノイズ発生の少ないタイミングで起電力取得できるポイントや収集間隔の設定により、機種別や求める精度で設定が異なる。
【0069】
また、ステップS209における「A区間」とは、当該試料の電解質測定終了後、電解質測定装置100の待機状態が開始されてから、ステップS210でのすべての比色項目用試料分注終了後、連続して測定される次の試料のために新たな内部標準液がイオン選択性電極104,105,106に移送される前までの時間をいう。連測して依頼された試料群の比色項目数が多く、試料数も複数ある場合、A区間が複数続けて収集可能となる。
【0070】
次に、制御部13は、この時点で連続して測定する次の試料の依頼があるか否かを判定する(ステップS211)。このステップS211でも、測定項目は判断しないものとする。依頼があると判定されたときはステップS202の判断に処理を戻し、ないと判定されたときは処理をステップS212に進める。
【0071】
次いで、制御部13は、比色項目の測定終了までに判定に必要な起電力ポイントが収集可能な所定時間があるか否かを判定する(ステップS212)。この所定時間は、例えば「比色項目の測定終了まで30秒」とすることができるが、この項目も装置構成に応じて適宜変更可能であり、限定されない。
【0072】
収集可能な時間があると判定されたときは、ステップS213のB区間における内部標準液の起電力収集、および解析を各々のイオン選択性電極104,105,106で行う(ステップS213)。その詳細は
図5を用いて後ほど説明する。これに対し、収集可能な時間がないと判定されたときは処理をステップS214に進める。
【0073】
なお、比色分析部の測定終了までに判定に必要な起電力ポイントが収集可能な時間は、ステップS207と同様に、機種別や求める精度で設定が異なる。また、ステップS213における「B区間」とは、一度に測定依頼された試料群の最後の試料における、電解質測定終了後に電解質測定装置100の待機状態が開始されてから、比色分析が終了して電解質測定装置100の終了動作が開始されるまで、あるいは終了動作前に次の試料群が依頼され、その初めの試料のために新たな内部標準液がイオン選択性電極104,105,106に移送される前までの時間をいう。
【0074】
上述のステップS209あるいはステップS213で収集、および解析された結果は、記憶装置12に記憶される。
【0075】
その後、制御部13は、ステップS209あるいはステップS213で測定、収集された結果を待機時起電力監視情報画面600(
図7)としてコンピュータ10の表示部10aに表示させる(ステップS214)。
【0076】
この
図7に示す待機時起電力監視情報画面600の画面表示は、ユーザが新たな試料群の依頼を開始する前に確認できるタイミングで表示することが重要であるため、ステップS209およびステップS213では、判定に必要なポイント数が収集できた時点で判定を行い、表示することが望ましい。
【0077】
また、ユーザはステップS209やステップS213で収集された起電力をコンピュータ10の表示部10aにおいて待機時起電力モニタ画面500(
図6)としてリアルタイムで確認することができる。
【0078】
なお、
図6に示すこの待機時起電力モニタ画面500は、ユーザが任意のタイミングで見るものとすることができるが、この場合に限られず、装置電源OFFの際にも表示することが望ましい。
【0079】
その後、制御部13は、この時点における次の試料の測定依頼があるか否かを判定する(ステップS215)。このステップS215も、測定項目の限定は判断しないものとする。依頼があると判定されたときはステップS202の判断に処理を戻し、ないと判定されたときはステップS216にて測定終了となる。
【0080】
次いで、ステップS209における内部標準液の起電力収集・解析(A)の詳細について
図4を用いて説明する。
図4は、A区間における内部標準液の起電力収集、および解析の処理内容を示すフローチャートである。
【0081】
最初に、制御部13は、A区間中、1区間の起電力を所定タイミング事に収集する(ステップS302)。所定区間とは、例えば4秒などとすることができるが、これに限定されない。
【0082】
次いで、制御部13は、A区間の1区間内において各々のイオン選択性電極104,105,106の起電力差が起電力変動として正常範囲であると予め設定した所定基準を満たすか否かを判定する(ステップS303)。なお、所定基準は、例えば、前後±0.2[mV]以内であるか否かとすることができるが、適宜変更可能である。
【0083】
ステップS303において所定基準を満たすと判定されれば、判定1と判断される(ステップS304)。このステップS304における判定1とは、異常なし、との判定である。
【0084】
これに対し、ステップS303において基準値を満たさないと判定されたときは、次いで、制御部13は、次のA区間において、各々のイオン選択性電極104,105,106の起電力を複数区間連続して収集する(ステップS305)。
【0085】
この後、制御部13は、ステップS305で収集した情報をもとにして、起電力レンジが基準値を超える区間が複数継続するか否かを判定する(ステップS306)。例えば、起電力のレンジがノイズや異常なスパイクを判別するために予め設定した基準値を超えたか否かを判定する。起電力のレンジがノイズや異常なスパイクを判別するために予め設定した基準値を超えたと判定されるときは処理をステップS307に進め、基準値以下と判定されるときは処理をステップS310に進める。
【0086】
なお、複数継続するか否かで判定する期待に限られず、所定期間内で基準値を超える区間が所定割合以上あるか否かなどで判定することも可能である。
【0087】
ステップS306において基準値を超えたと判定されたときは、次いで制御部13は、当該現象が見られる電極数がいくつかを判定する(ステップS307)。3電極であると判定されたときは処理をステップS308に進め、2電極もしくは1電極であると判定されたときは処理をステップS309に進める。
【0088】
3電極であると判定される場合は、不安定状態の原因として、比較電極107の電位の変動、あるいは電気的ノイズ発生が推定される判定2と判断される(ステップS308)。また、2電極以下と判定される場合は、不安定状態の原因として、当該電極の異常が推定される判定3と判断される(ステップS309)。
【0089】
これに対し、ステップS306において基準値以下と判定されたときは、次いで、制御部13は、取得した複数区間を合わせた起電力変動の傾きがドリフトを判別するために予め設定した基準値を超えるか否かを判定する(ステップS310)。このステップS310における起電力の傾きは、複数区間の測定結果を並べた近似線の傾きとして求めることができる。
【0090】
ステップS310において基準値を超えたと判定されたときは、次いで制御部13は、当該現象が見られる電極数、および傾きの方向を判定する(ステップS311)。
【0091】
3電極で同一方向の傾きが見られた場合は、不安定状態の原因として比較電極電位の変動が推定される判定4(ステップS312)と判定される。
【0092】
また、3電極であるが、同一方向ではない傾きが見られた場合、特にClだけが逆方向である場合が想定されるが、この場合は、不安定状態の原因として温度ドリフトが推定される判定5(ステップS313)と判定される。
【0093】
これらに対し、2電極での傾きが見られた場合、特にKとClが想定されるが、この場合は、不安定状態の原因として比較電極液のリークが推定される判定6(ステップS314)と判定される。また、1電極のみの場合は、不安定状態の原因として、判定3と同様に該当するイオン選択性電極104,105,106の異常が推定される判定7(ステップS315)と判定される。
【0094】
これに対し、ステップS310において基準値以下であると判定されたときは処理をステップS316に進め、流路内の気泡が推定される判定8と判定される(ステップS316)。
【0095】
次いで、ステップS213における内部標準液の起電力収集・解析(B)の詳細について
図5を用いて説明する。
図5は、B区間における内部標準液の起電力収集、および解析の処理内容を示すフローチャートである。
【0096】
図5に示すB区間はA区間よりも比較的長時間であり、ある範囲で区切ることが望ましいため、1区間内の情報で判定を行う。
【0097】
判定の手順は
図4に示したA区間での各処理とほぼ同じであり、ステップS402はステップS302に、ステップS403はステップS303に、ステップS405はステップS306に、ステップS406はステップS307に、ステップS409はステップS310に、ステップS410はステップS311に、ステップS404はステップS304に、ステップS407はステップS308に、ステップS408はステップS309に、ステップS411はステップS312に、ステップS412はステップS313に、ステップS413はステップS314に、ステップS414はステップS315に、ステップS415はステップS316に、それぞれ対応し、
図4に示したフローのステップS305に相当するステップが省略される。
【0098】
上述のステップS302やステップS305、ステップS402が、第2測定部へ試料を分注する際、あるいは第2測定部での試料の測定の際に、イオン選択性電極に内部標準液が充填された状態で電位を測定する測定ステップに相当する。また、ステップS303やステップS304、ステップS306乃至ステップS316、ステップS403乃至ステップS415が、測定ステップでの測定結果から電解質測定部11での異常の有無を判定する判定ステップに相当する。
【0099】
なお、
図4に示すA区間のステップS306では基準値を超える区間が複数継続することで判別するのに対し、
図5に示すB区間のステップS405では基準値を超える範囲が複数あることで判別を行う。B区間における範囲とは、例えば10秒間など判定に必要な起電力ポイントが収集可能な時間を予め設定するもので、この中で収集された起電力により判定を行う。
【0100】
更に、
図4あるいは
図5において解析された結果である判定1乃至判定8では、その推定原因に対応した推奨されるメンテナンス項目が予め設定されることが望ましい。
【0101】
特に制限されないが、判定1では異常なしであるため推奨されるメンテナンスはない。判定2では比較電極交換、比較電極液交換、廃出部およびシッパーシリンジにおける結晶析出確認であり、判定3あるいは判定7では該当するイオン選択性電極104,105,106の交換である。判定4では比較電極107の交換および比較電極液交換であり、判定5では装置および環境の温度安定化である。判定6では吸い上げチューブの確認であり、判定8では試薬残量の確認および電解質測定試薬プライムである。
【0102】
更に、電解質測定装置100において、測定依頼をかけた最後の試料が比色分析終了した後(ステップS215終了時)は、終了動作が実施され、その後は電解質測定装置100全体が次の測定依頼があるまでスタンバイ状態で保持される(ステップS216)。このスタンバイ状態においても、電解質測定装置100の流路内は内部標準液に満たされている。
【0103】
そこで、このスタンバイ状態においても、ステップS209やステップS213と同様に、スタンバイ状態開始後次の測定依頼がかけられるまでの時間を、例えば10分間ごとにC区間として区切り、
図5におけるB区間と同様の起電力収集および解析を行うことが望ましい。
【0104】
一つのC区間の結果が判定1であれば、上述の内部標準液入れ替え動作は行わず、判定2~8の場合では入れ替え動作により現象の改善が見込まれるものに限定して入れ替え動作を実施することができる。このように、スタンバイ状態における起電力の安定状態を収集および解析することで、起電力状態を可視化していないために定期的に実施していた動作および動作回数を、必要な場合のみに省くことが可能となる。
【0105】
なお、電解質測定装置によっては、この時間にピンチバルブが開放されている場合には、比較電極液が内部標準液との濃度差によりイオン選択性電極104,105,106側に拡散し、これによりイオン選択性電極104,105,106の起電力が不安定になることがあるため、一定時間測定が実施されない場合は、流路内の内部標準液を入れ替える処理を行うものがある。
【0106】
次いで、ステップS209やステップS213で収集された起電力が表示される待機時起電力モニタ画面500の詳細について
図6を用いて説明する。
図6は、待機時の起電力モニタの画面表示の一例を示す図である。
【0107】
図6に示すような待機時起電力モニタ画面500は、コンピュータ10の表示部10aに表示される画面であり、複数のイオン選択性電極104,105,106(Na、K、Cl)の各々で収集された起電力がグラフ501,502,503として纏めて表示される。
【0108】
各々のイオン選択性電極104,105,106のグラフ501,502,503において、縦軸は起電力の大きさであり、横軸は収集日時である。定期的に収集された起電力は、A区間あるいはB区間の一つの区間ごとに纏まって表示される。この例においては、B区間の11ポイント目が表示された時点であるが、約30分前に収集されたA区間の起電力データとは判別可能なように表示されることが望ましい。
【0109】
ユーザは随時この画面を表示させることができ、現時点および数分あるいは数時間前の待機時起電力の安定状態を目視で確認できる。
【0110】
図3におけるステップS208あるいはステップS212の解析が完了している箇所については、この画面において起電力が安定状態か不安定状態かを一目で識別できるよう色で分けたりアイコン等を追加して表示してもよい。
【0111】
このように待機時起電力モニタ画面500に現時点および過去いくつかの区間における起電力状態を表示することで、その該当する区間前後の測定がどのような起電力状態で測定されたかを示すことができる。
【0112】
そして、ユーザは、次の新しい試料群の測定を開始する際にこの起電力の安定状態を確認することで、このまま測定を開始するかあるいはメンテナンスを実施後に測定するかの判断材料とすることができる。不安定状態が不明であれば試料の再測定が必要となる可能性があるため、その前に対処する判断がなされれば無駄な再測定を省くことが可能となり、結果として正確な分析結果が速やかに得られるようになる。
【0113】
次いで、ステップS214で表示される待機時起電力監視情報画面600の詳細について
図7を用いて説明する。
図7は、待機時の起電力監視結果の画面表示の一例を示す図である。
【0114】
待機時起電力監視情報画面600は、
図3に示したステップS214において、ステップS209あるいはステップS213で収集、および解析された結果としてコンピュータ10の表示部10aに表示される画面である。
【0115】
図7に示す例においては、列602は不安定状態の種類を表示するための列であり、列603は不安定状態が確認された電極の組み合わせおよび電極の名称を表示する列である。列601は、不安定状態が確認された区間、および列602で表示される不安定の種類と列603で示される電極の組み合わせおよび電極名称に対応したコードが表示される列である。また、列604は現象から推定された原因を表示する列であり、列605はその原因推定から推奨されるメンテナンスを表示する列である。
【0116】
また、不安定状態が検出された区間がA区間である場合は、検出された区間前後に測定された試料の測定値確認をユーザに促す表示をすることができる。更に、B区間である場合は、ユーザが次の測定依頼を行う前に待機時起電力モニタの確認を促す表示をすることができる。
【0117】
このように、待機時起電力監視情報画面600に不安定状態、推定原因および推奨メンテナンスを表示することで、その後のユーザの対応を的確にし、定められた間隔での定期メンテナンス時期を待たずに早期に対応することによりデータの信頼性を向上することが可能となる。
【0118】
なお、ステップS209やステップS213の判定で異常なしと判断された場合は、その結果を記憶装置12に記録することが望ましい。記録した結果は、ユーザが任意のタイミングに閲覧でき、電極や装置の状態を確認するために使用することができる。
【0119】
次に、本実施の形態の効果について説明する。
【0120】
上述した本実施の形態の電解質測定装置100は、試料、あるいは内部標準液が供給されるイオン選択性電極104,105,106、電位の基準となる比較電極107、およびイオン選択性電極104,105,106と比較電極107との間の電位差を測定する電圧計129を有する電解質測定部11と、電解質測定部11とは異なる測定項目の測定を行う第2測定部と、電解質測定部11、あるいは第2測定部に試料の分注を行うサンプリング機構5と、各機器の動作を制御する制御部13と、を備え、制御部13は、サンプリング機構5により第2測定部へ試料を分注する際あるいは第2測定部での試料の測定の際に、イオン選択性電極104,105,106に内部標準液が充填された状態で電位を測定し、測定データに基づいて電解質測定部11の異常の有無を判定する。
【0121】
これによって、試料測定時以外の待機時間においてイオン選択性電極104,105,106の起電力の安定性を確認することができるようになり、起電力安定状態が可視化され、不安定状態を早期に察知することが可能となる。
【0122】
また、第2測定部は測光機構8であり、制御部13は、サンプリング機構5により測光機構8での分析用に試料を分注する際、あるいは測光機構8で試料の測定の際に電位を測定するため、電解質測定部11に待機時間が生じやすい装置構成においても、イオン選択性電極104,105,106の起電力の安定性を確認することができるようになる。
【0123】
更に、制御部13は、イオン選択性電極104,105,106に内部標準液が充填された状態で連続して2回以上電位を測定した際の測定データに基づいて電解質測定部11の異常の有無を判定することで、異常の有無をより高い精度で判定できるようになる。
【0124】
また、電解質測定部11は、イオン選択性電極104,105,106を複数有しており、制御部13は、各々のイオン選択性電極104,105,106で測定された電位の状態の組み合わせに基づいて異常を判別することで、複数電極が存在する場合に個々の電極の異常の有無や電極以外の異常の有無の判定を高い精度で行えるようになる。
【0125】
更に、制御部13は、測定された電位が全てのイオン選択性電極104,105,106で基準範囲外となったか否かで異常原因を特定することで、電極での異常か電極以外での異常かを高い精度で判定することができる。
【0126】
また、電位の状態を、測定電位の継時変化の傾きとすること、特に制御部13は、全てのイオン選択性電極104,105,106の測定電位が基準範囲内のときは、測定電位の継時変化の傾きに基づいて異常を判別することにより、電極における異常要因の特定を行うことができる。
【0127】
<その他>
なお、本発明は上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0128】
1…サンプルディスク
2…試薬ディスク
3…反応ディスク
4…反応槽
5…サンプリング機構(分注部)
6…試薬分注機構
7…攪拌機構
8…測光機構(比色測定ユニト)
9…洗浄機構
10…コンピュータ
10a…表示部
11…電解質測定部(電解質濃度測定ユニット)
12…記憶装置
13…制御部
14…圧電素子ドライバ
15…攪拌機構コントローラ
16…試料容器
17…円形サンプルディスク
18…試薬ボトル
19…円形試薬ディスク
20…保冷庫
21…反応容器
22…反応容器ホルダ
23…駆動機構
24…サンプルプローブ
25…サンプルプローブ支承軸
26…サンプルプローブアーム
27…試薬プローブ
28…試薬プローブ支承軸
29…試薬プローブアーム
31…固定部
33…ノズル
34…上下駆動機構
100…電解質測定装置
101…試料用容器
103…希釈槽
104,105,106…イオン選択性電極
107…比較電極
108…シッパーシリンジ
109…内部標準液シリンジ
110…希釈液シリンジ
111…ピンチバルブ
112…比較電極用二方電磁弁
113…シッパーシリンジ吸引用二方電磁弁
114…廃液吐出用二方電磁弁
115…内部標準液吐出用二方電磁弁
116…内部標準液吸引用二方電磁弁
117…希釈液吐出用二方電磁弁
118…希釈液吸引用二方電磁弁
119…比較電極液ボトル
120…内部標準液ボトル
121…希釈液ボトル
128…信号配線
129…電圧計(測定部)
500…待機時起電力モニタ画面
501,502,503…グラフ
600…待機時起電力監視情報画面
601,602,603,604,605…列