(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジ
(51)【国際特許分類】
G03G 9/113 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
G03G9/113 362
(21)【出願番号】P 2020119353
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019203894
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】高林 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】十亀 淳次郎
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-257026(JP,A)
【文献】特開2009-069566(JP,A)
【文献】特開2004-109633(JP,A)
【文献】特開2017-129631(JP,A)
【文献】特開2017-167427(JP,A)
【文献】特開2009-020211(JP,A)
【文献】特開2011-027874(JP,A)
【文献】特開平10-020563(JP,A)
【文献】特開2001-194832(JP,A)
【文献】特開2006-038961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する樹脂層とを含む電子写真画像形成用キャリアにおいて、前記樹脂層は、帯電性微粒子A及び導電性微粒子Bを含有し、かつ前記樹脂層に分散剤及び消泡剤を含有することを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
【請求項2】
前記分散剤がリン酸エステル系界面活性剤である、請求項1に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項3】
前記消泡剤がシリコーン系消泡剤である、請求項1または2に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項4】
前記帯電性微粒子Aが、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及びハイドロタルサイトよりなる群から選択される少なくとも1種の無機微粒子である、請求項1~3のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項5】
前記導電性微粒子Bが、タングステン、インジウム、リンのいずれか、もしくはそれらの酸化物のいずれかをドープした酸化スズの微粒子、又は、前記ドープした酸化スズを基体表面に設けた微粒子である、請求項1~4のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項6】
前記導電性微粒子Bが、タングステン、またはその酸化物のいずれかをドープした酸化スズを基体表面に設けたアルミナ微粒子である、請求項5に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項7】
前記帯電性微粒子Aが、硫酸バリウムである、請求項6に記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項8】
前記分散剤の添加量は前記帯電性微粒子Aと導電性微粒子Bの総量100質量部に対して0.5質量部以上10.0質量部以下である、請求項1~7のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項9】
前記消泡剤の固形分添加量は前記樹脂層100質量部に対して0.05質量部以上0.35質量部以下である、請求項1~8のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
【請求項10】
芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する樹脂層とを含む電子写真画像形成用キャリアにおいて、前記樹脂層は、帯電性微粒子A及び導電性微粒子Bを含有し、かつ前記樹脂層にリン酸エステル及びシリコーンオイルを含有することを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリアを用いることを特徴とする、電子写真画像形成用現像剤。
【請求項12】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を請求項11に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有することを特徴とする電子写真画像形成方法。
【請求項13】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体を帯電させる帯電手段と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を請求項11に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項14】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を請求項11に記載の現像剤を用いて現像する現像部と、前記静電潜像担持体をクリーニングするクリーニング部材とを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成用キャリア、電子写真画像形成用現像剤、電子写真画像形成方法、電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等の静電潜像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナーを付着させてトナー像を形成した後、トナー像を記録媒体に転写し、転写した画像が定着され、出力画像となる。近年、電子写真方式を用いた複合機やプリンターの技術は、モノクロからフルカラーへの展開が急速になりつつあり、フルカラーの市場は拡大する傾向にある。
【0003】
フルカラー画像形成では、一般に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のカラートナー又はこれに黒色を加えた4色のカラートナーを積層させて全ての色の再現を行う。したがって、色再現性に優れ、鮮明なフルカラー画像を得るためには、定着されたトナー像の表面を平滑にして光散乱を減少させる必要がある。
【0004】
このような理由から、従来のフルカラー複写機等の静電潜像画像には、トナー像の平滑性達成のため静電潜像のトナー付着量を多くして高光沢を実現させるものが多かった。そのため、長期印刷の際には劣化したトナーがキャリア表面に付着するトナースペントが問題になっている。トナースペントによるキャリア劣化の中で問題になるのが、キャリア抵抗の上昇とキャリア帯電能力の低下である。キャリアの帯電能力が低下した場合には、所謂トナー飛散が発生し、機内を汚染することでセンサー誤検知などの不具合原因となる。
【0005】
また近年市場が拡大しているプロダクションプリンティングの分野では、これまで以上の高画質化が求められている。高速現像をするために現像機内部でキャリアが強いストレスを受けて、キャリア被覆樹脂が摩耗し芯材が露出することで、キャリアが静電潜像担持体上に転移する、所謂キャリア付着が発生する。このため、画像端部や中央部に白抜けが現れるという不具合が発生するが、この問題に対する要求は近年さらにシビアになりつつある。
【0006】
一方で、キャリア付着防止の為、キャリア抵抗を初期の段階から高いレベルで設計することで抵抗を高い水準で維持させることは可能ではあるが、その際にはキャリア表面の帯電が現像直後で適切にリークせず、例えばハーフトーンを印字する際に端部が薄くなるという不具合が生じる。
【0007】
前記不具合を解消すべく、さまざまな試みが行われている。
例えば、特許文献1ではリンドープ導電性酸化スズ微粒子を含み、所望の低い抵抗値を有するキャリアが開示されている。また、特許文献2には被覆樹脂中に硫酸バリウムを含み、XPSにより測定した全元素に対するBa/Si比が0.01~0.08であるキャリアが開示されている。これらは、トナースペントや被覆樹脂層の膜削れの抑制において一定の効果が得られている。
【0008】
しかしながら、近年は消費電力低減の為にトナーが低温定着化する傾向にあり、また、プリント速度の高速化も相まって、キャリアへのトナースペントが一段と生じ易くなっている。さらに、高画質化の要求からトナーは多くの添加剤を含有する傾向にあり、これらがキャリアにスペントして、トナー帯電量の低下、トナー飛散および地肌汚れに対する余裕度が低下しているのが現状である。また、トナーの低温定着化のために帯電性微粒子等の量が減らされており、補給時のトナーが現像剤に十分に混ざらないために帯電せず、トナー飛散してしまうといった問題も発生している。こういった新たな問題に対して、特許文献3や特許文献4には被覆樹脂最表面に帯電性能付与微粒子として硫酸バリウムや酸化マグネシウムを含有するキャリアが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、求められる画質に対して十分な低抵抗制御及び帯電制御が可能であり、キャリア付着の抑制や、トナー飛散の抑制、を可能とする電子写真画像形成用キャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記(1)の構成を備えた電子写真画像形成用キャリアにより、上記課題が解決することができることを見出した。
(1)芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する樹脂層とを含む電子写真画像形成用キャリアにおいて、前記樹脂層は、帯電性微粒子A及び導電性微粒子Bを含有し、かつ前記樹脂層に分散剤及び消泡剤を含有することを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子写真画像形成用キャリアは、求められる画質に対して十分な低抵抗制御及び帯電制御が可能であり、トナー飛散の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】キャリアの体積固有抵抗を測定する際に用いられるセルを示す図である。
【
図2】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、下記(1)に関するものであるが、下記(2)~(12)をも実施の形態として含むものである。
(1)芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する樹脂層とを含む電子写真画像形成用キャリアにおいて、前記樹脂層は、帯電性微粒子A及び導電性微粒子Bを含有し、かつ前記樹脂層に分散剤及び消泡剤を含有することを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
(2)前記分散剤がリン酸エステル系界面活性剤である、上記(1)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
(3)前記消泡剤がシリコーン系消泡剤である、上記(1)または(2)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
(4)前記帯電性微粒子Aが、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及びハイドロタルサイトよりなる群から選択される少なくとも1種の無機微粒子である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
(5)前記導電性微粒子Bが、タングステン、インジウム、リンのいずれか、もしくはそれらの酸化物のいずれかをドープした酸化スズの微粒子、又は、前記ドープした酸化スズを基体表面に設けた微粒子である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
(6)前記導電性微粒子Bが、タングステン、またはその酸化物のいずれかをドープした酸化スズを基体表面に設けたアルミナ微粒子である、上記(5)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
(7)前記帯電性微粒子Aが、硫酸バリウムである、上記(6)に記載の電子写真画像形成用キャリア。
(8)前記分散剤の添加量は前記帯電性微粒子Aと導電性微粒子Bの総量100質量部に対して0.5質量部以上10.0質量部以下である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
(9)前記消泡剤の添加量は前記樹脂層100質量部に対して0.05質量部以上0.35質量部以下である、上記(1)~(8)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリア。
(10)芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する樹脂層とを含む電子写真画像形成用キャリアにおいて、前記樹脂層は、帯電性微粒子A及び導電性微粒子Bを含有し、かつ前記樹脂層にリン酸エステル及びシリコーンオイルを含有することを特徴とする、電子写真画像形成用キャリア。
(11)上記(1)~(10)のいずれかに記載の電子写真画像形成用キャリアを用いることを特徴とする、電子写真画像形成用現像剤。
(12)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を上記(11)に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有することを特徴とする電子写真画像形成方法。
(13)静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体を帯電させる帯電手段と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を上記(11)に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有することを特徴とする電子写真画像形成装置。
(14)静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を上記(11)に記載の現像剤を用いて現像する現像部と、前記静電潜像担持体をクリーニングするクリーニング部材とを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0014】
本発明のキャリアについて詳細に説明する。
本発明の電子写真画像形成用キャリアは、芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する樹脂層とを含む電子写真画像形成用キャリアにおいて、前記樹脂層は、少なくとも2種類の帯電性微粒子Aと導電性微粒子Bを含有し、かつ該樹脂層に分散剤と消泡剤を含有することを特徴とする、電子写真画像形成用キャリアである。
【0015】
本発明では、樹脂層は少なくとも帯電性微粒子A及び導電性微粒子Bを含有することが重要である。十分な帯電保持能力を確保しつつ、抵抗を低抵抗領域に調整する場合には、トナーとの帯電性が高い帯電性微粒子Aと導電性を有する導電性微粒子Bの2種類の微粒子を導入する必要がある。また導電性微粒子Bに加え、導電性微粒子Bの一つとして抵抗調整機能の優れたカーボンブラックを処方してもよい。表層に近づくにつれてカーボンブラックを減量させることで、樹脂層が削れた際にキャリアから遊離した被覆成分に含まれるカーボンブラックの量を少なくし、その結果、トナーに対する色汚れの発生を抑制することができる。また、カーボンブラックを減量したことで表層近くの電気抵抗が高くなる懸念に対し、導電性微粒子Bをカーボンブラックの量が少ない表層側ほど多くなるように処方することで、表層側もカーボンブラックの濃度が高い深層側と同等の電気抵抗とすることが可能となる。
【0016】
加えて、本発明のキャリアは樹脂層に分散剤を含有することが非常に重要である。樹脂、無機微粒子、希釈溶媒等から成る樹脂層を形成するコート液において、分散剤を処方することで、無機微粒子を一次粒子径まで分散し、かつ粒度分布を狭分布化できる。これにより粗大粒子といった、結着樹脂に十分に包埋されずに、キャリア表面に弱く固定された微粒子をなくすことができる。前述の微粒子は印刷初期のストレスによって脱離しやすく、キャリア抵抗が低下することで、ベタ画像部へのキャリア付着を引き起こすが、分散剤の処方でこれを抑制することができる。
【0017】
また、分散剤は樹脂と親和性のある基と、無機微粒子に親和性のある基との両方を有することから、樹脂と無機微粒子の親和性を向上させる効果がある。結果として、樹脂層中の樹脂と無機微粒子の密着性が高まり、より強固な膜を形成することができ、印刷経時のストレスにおいても微粒子が樹脂層から脱離し難くなる。これにより経時でのベタ画像部へのキャリア付着の発生を抑制することができる。加えて、トナーの帯電を担う帯電性微粒子Aの脱離が抑えられるため、経時でもトナーの帯電能力を維持することが可能となり、トナー飛散が発生しにくくなる。
【0018】
このとき、分散剤に加えて消泡剤を併せて処方することが非常に重要である。樹脂、無機微粒子、希釈溶媒等から成る被覆層を形成するコート液に分散剤を処方する場合、分散剤は所謂界面活性剤であるため、コート液が泡立ちやすくなる。この泡立ったコート液でコーティングを行った場合、泡を取り込んだ状態で樹脂層が形成され、取り込んだ泡に起因した穴が樹脂層中に空いてしまう。この樹脂層中の穴は膜の耐久性を著しく低下させ、印刷経時にて、膜削れが進行してしまう。このため、分散剤の処方のみでは、前述した印刷経時のベタ画像部へのキャリア付着やトナー飛散発生の抑制効果を十分に得ることができない。しかし、分散剤に加えて消泡剤を併せて処方することで、コート液の泡立ちが抑えられ、樹脂層中の穴の発生を無くすことができる。これにより、印刷経時での膜の耐久性低下の課題を解決し、印刷初期に加え、印刷経時においてもベタ画像部へのキャリア付着とトナー飛散の発生を抑えるキャリアを得ることが可能となる。
【0019】
分散剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤が挙げられる。中でも、リン酸エステル系界面活性剤であることが望ましい。分散剤を用いることで帯電性微粒子A、導電性微粒子Bを一次粒子径まで良好に分散することが可能になり、樹脂層内の無機微粒子の分布を均質化し、樹脂と無機微粒子の親和性を高めることができる。加えて本発明者等の検討の結果、リン酸エステルの構造を有する分散剤を添加することで、トナー飛散に対する余裕度がさらに向上することが分かった。これはリン酸エステルの構造部分が負帯電トナーに対して正帯電するためであり、リン酸エステルを含む分散剤を添加した場合、添加しない場合と比較してトナーとの帯電性が向上するためである。特にトナーと混ぜて攪拌した直後の帯電性、所謂帯電立ち上がり性が良好となるため、補給時のトナーが十分に帯電せずにトナーが飛散してしまう、補給時のトナー飛散の抑制に大きな効果を示す。
【0020】
分散剤であるリン酸エステル系界面活性剤としては、主成分としてリン酸エステルを含むことが好ましい。本実施形態において「主成分」であるというためには、分散剤中、リン酸エステルを50質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましい。
市販品としては、ソルスパース2000、2400、2600、2700、2800(ゼネカ社製)、アジパーPB711、PA111、PB811、PW911(味の素社製)、EFKA-46、47、48、49(EFKAケミカル社製)、ディスパービック160、162、163、166、170、180、182、184、190(ビックケミー社製)、フローレンDOPA-158、22、17、G-700、TG-720W、730W(共栄社化学社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
また、分散剤の添加量としては帯電性微粒子Aと導電性微粒子Bの総量100質量部に対して0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。分散剤の添加量が0.5質量部を下回る場合には、無機微粒子の全てを一次粒子径まで分散できず、凝集状態の無機微粒子が残る。こういった凝集粒子は樹脂層に十分に固定化されず、印刷初期のストレスによって脱離し、抵抗が低下することで、キャリア付着が発生してしまう。加えて、樹脂層の最表面に存在する分散剤量が少なく、良好な帯電立ち上がり性を示さず、トナー飛散に対する優位性が得られない。
【0022】
分散剤の添加量が10.0質量部を超える場合には、無機微粒子に吸着できない分散剤成分が被覆樹脂中に多く存在することになる。このため、被覆樹脂中における結着樹脂の割合が減少し、膜の耐久性が低下し、印刷経時にて無機微粒子が脱離することで、印刷経時でのベタ画像部へのキャリア付着やトナー飛散が発生してしまう。これらのことから、帯電性微粒子Aと導電性微粒子Bの総量100質量部に対して0.5以上10.0質量部以下含有することが好ましく、より好ましいのは1.0質量部以上3.0質量部以下である。
【0023】
消泡剤としては、特に限定されないが、シリコーン系、アクリル系、ビニル系が挙げられる。中でも、シリコーン系であることが望ましい。消泡効果を発揮するためには、溶媒との相溶性と不相溶性のバランスが重要であるが、シリコーン系がこの相溶性と不相溶性のバランスが良好であり、少ない添加量でも高い消泡効果を得ることができ、被覆樹脂中の穴の発生を抑制できる。シリコーン系消泡剤としてはシリコーンオイルが好ましく使用できる。
【0024】
市販品としては、KS-530、KF-96、KS-7708、KS-66、KS-69(信越シリコーン社製)、TSF451、THF450、TSA720、YSA02、TSA750、TSA750S(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK-065、BYK-066N、BYK-070、BYK-088、BYK-141(ビックケミー社製)、ディスパロン1930N、ディスパロン1933、ディスパロン1934(楠本化成社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
前記消泡剤の固形分添加量は前記樹脂層100質量部に対して0.05質量部以上0.35質量部以下であることが好ましい。
消泡剤の固形分添加量が0.05質量部を下回ると、消泡効果が十分得られず、被覆樹脂中に穴が発生してしまう。消泡剤の添加量が0.35質量部を超える場合には、ハジキと呼ばれる塗膜表面欠陥が現れ、キャリア表面の樹脂層が脆化し、無機微粒子が脱離しやすくなり、ベタ画像部へのキャリア付着が悪化する。コート液に対する消泡剤の添加量についていうと、消泡剤の固形分濃度を1%であるとした場合、消泡剤の添加量はコート液の総量100質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部以下含有することが好ましく、より好ましくは、3.0質量部以上7.0質量部以下である。
【0026】
また、帯電性微粒子Aが、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトから選択される無機微粒子であることが好ましい。負帯電トナーを用いた場合、前述の正帯電性を持つ材料を選択することで、長期での帯電付与能力が安定する。特に硫酸バリウムは、負帯電トナーに対する帯電能が高いこと、白色であり被覆樹脂から脱離した場合でも、トナーの色味への影響が少ないため、良好である。
【0027】
また、帯電性微粒子Aは、円相当径が400nm以上900nm以下であることが望ましい。この範囲であると、キャリアコート層表面に対して帯電性微粒子Aを凸の状態で存在させることができ、トナーとの帯電性を確保できる。安定した帯電能力、現像能力を確保するためには、帯電性微粒子Aの円相当径は600nm以上であることがより好ましい。また、帯電性微粒子Aの円相当径が900nm以下であると、コート膜の厚みに対して帯電性微粒子Aの粒径が大きすぎることがないために、結着樹脂に十分保持され、被覆樹脂膜から脱離しにくくなるため好ましい。
【0028】
導電性微粒子Bは、粉体比抵抗が200Ω・cm以下であれば、従来既存の材料及び新規材料を用いることが可能である。帯電性微粒子Aや分散剤の処方により、膜の耐久性を向上させ、導電性微粒子Bを含む樹脂層表面の削れを少なく抑えているものの、それでも、長期の使用によって少量ずつの削れは発生する。その際、樹脂層から脱離した導電性微粒子B、もしくは脱離した樹脂層に含まれる導電性微粒子Bによるトナー色汚れを最小限に抑えるためには、導電性微粒子Bはできるだけ白色、もしくは無色に近いことが好ましい。
【0029】
色及び導電機能の良好な材料としては、酸化スズにタングステン、インジウム、リンのいずれか、もしくはそれらの酸化物のいずれかをドープした化合物が挙げられ、単体、もしくはそれらの化合物を基体粒子表面に設けた微粒子として使用できる。基体粒子としては、従来既存もしくは新規の材料を用いることが可能であり、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。
また、導電性微粒子Bは、円相当径が600nm以上1000nm以下であることが望ましい。600nm以上であると、粒子径が小さすぎることがなく、キャリア抵抗を効率良く下げることができる。また1000nm以下であると、樹脂層表面からの脱離が発生しにくくなる。抵抗調整機能を担わせた導電性微粒子Bの脱離が発生しにくくなると、キャリア抵抗の変動が生じにくく、画像品質の安定性が高くなる。
【0030】
キャリアの被覆樹脂としてはシリコン樹脂、アクリル樹脂、またはこれらを併用して使用することができる。アクリル樹脂は接着性が強く脆性が低いので耐磨耗性に非常に優れた性質を持つが、その反面、表面エネルギーが高い。このため、スペントし易いトナーとの組み合わせでは、トナー成分スペントが蓄積することによる帯電量低下など不具合が生じる場合がある。一方、シリコン樹脂は表面エネルギーが低いためトナー成分のスペントがし難く、膜削れが生じるため、スペント成分の蓄積が進み難いという効果が得られる。このため、キャリアの被覆樹脂としてシリコン樹脂を併用することで、この問題を解消することができる。しかし、シリコン樹脂は接着性が弱く脆性が高いので、耐磨耗性が悪いという弱点も有するため、この2種の樹脂の性質をバランス良く得ることが重要であり、これによりスペントがし難く耐摩耗性も有する被覆膜を得ることが可能であり、改善効果が顕著である。これは、シリコン樹脂は表面エネルギーが低いためトナー成分のスペントがし難く、膜削れが生じるためのスペント成分の蓄積が進み難い効果が得られるためである。
【0031】
本明細書でいうシリコン樹脂とは、一般的に知られているシリコン樹脂全てを指し、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコンや、アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタンなどで変性したシリコン樹脂などが挙げられるが、これに限るものではない。例えば、市販品としてストレートシリコン樹脂としては、信越化学製のKR271、KR255、KR152、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2400、SR2406、SR2410等が挙げられる。この場合、シリコン樹脂単体で用いることも可能であるが、架橋反応する他成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。さらに、変性シリコン樹脂としては、信越化学製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レ・ダウコーニング・シリコン社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)などが挙げられる。
【0032】
本明細書でいうアクリル樹脂とは、アクリル成分を有する樹脂全てを指し、特に限定するものではない。また、アクリル樹脂単体で用いることも可能であるが、架橋反応する他成分を少なくとも1つ以上同時に用いることも可能である。ここでいう架橋反応する他成分とは、例えばアミノ樹脂、酸性触媒などが挙げられるが、これに限るものではない。ここでいうアミノ樹脂とはグアナミン、メラミン樹脂等を指すが、これらに限るものではない。また、ここでいう酸性触媒とは、触媒作用を持つもの全てを用いることができる。例えば、完全アルキル化型、メチロール基型、イミノ基型、メチロール/イミノ基型等の反応性基を有するものであるが、これらに限るものではない。
【0033】
本発明のキャリアは、体積平均粒径が28μm以上40μm以下であることが好ましい。キャリア粒子の体積平均粒径が28μm以上であると、キャリア付着が発生することがなく、40μm以下であると、画像細部の再現性が低下するということがなく、精細な画像を形成できなくなるということがない。
【0034】
なお、体積平均粒径は、例えば、マイクロトラック粒度分布計モデルHRA9320―X100(日機装社製)を用いて測定することができる。
本発明のキャリアは、体積固有抵抗が8~16(LogΩ・cm)であることが好ましい。体積固有抵抗が8(LogΩ・cm)以上であると、非画像部でキャリア付着が発生することがなく、16(LogΩ・cm)以下であると、エッジ効果が許容できないレベルになることがない。
【0035】
なお、体積固有抵抗は、
図1に示すセルを用いて測定することができる。具体的には、まず、表面積2.5cm×4cmの電極(1a)及び電極(1b)を、0.2cmの距離を隔てて収容したフッ素樹脂製容器(2)からなるセルに、キャリア(3)を充填し、落下高さ1cm、タッピングスピード30回/分で、10回のタッピングを行う。次に、電極(1a)及び(1b)の間に1000Vの直流電圧を印加して30秒後の抵抗値r[Ω]を、ハイレジスタンスメーター4329A(横河ヒューレットパッカード社製)を用いて測定し、下記式1から、体積固有抵抗[Ω・cm]を算出することができる。
【数1】
【0036】
被覆樹脂としてシリコン樹脂、アクリル樹脂、またはこれらを併用して使用する場合、シラノール基を縮重合触媒によって縮合することで架橋させることにより、膜強度を高くすることができる。
縮重合触媒としては、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒が揚げられるが、本発明では、これら各種触媒のうち、優れた結果をもたらすチタン系触媒の中でも、特にチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が触媒として最も好ましい。これは、シラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活しにくいためであると考えられる。
【0037】
本発明において、樹脂層用組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、微粒子を安定に分散させることができる。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、r-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、r-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、r-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-r-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、r-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、r-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、r-クロルプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、r-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、r-クロルプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
シランカップリング剤の市販品としては、AY43-059、SR6020、SZ6023、SH6026、SZ6032、SZ6050、AY43-310M、SZ6030、SH6040、AY43-026、AY43-031、sh6062、Z-6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z-6721、AY43-004、Z-6187、AY43-021、AY43-043、AY43-040、AY43-047、Z-6265、AY43-204M、AY43-048、Z-6403、AY43-206M、AY43-206E、Z6341、AY43-210MC、AY43-083、AY43-101、AY43-013、AY43-158E、Z-6920、Z-6940(東レ・シリコーン社製)等が挙げられる。
【0039】
シランカップリング剤の添加量は、シリコン樹脂に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。シランカップリング剤の添加量が0.1質量%以上であると、芯材粒子や導電性微粒子とシリコン樹脂の接着性が低下することがなく、長期間の使用中に樹脂層が脱落することがない。また、10質量%以下であると、長期間の使用中にトナーのフィルミングが発生することがない。
【0040】
本発明において、芯材粒子としては、磁性体であれば、特に限定されないが、鉄、コバルト等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;各種合金や化合物;これらの磁性体を樹脂中に分散させた樹脂粒子等が挙げられる。中でも、環境面への配慮から、Mn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Mn-Mg-Srフェライト等が好ましい。
【0041】
本発明において使用されるキャリアの芯材の体積平均粒径は特に制限するものではないが、キャリア付着、キャリア飛散防止の点から、体積平均粒径が20μm以上であるものが好ましく、キャリアスジ等の異常画像発生を防止して、画像品質の低下を防止する観点から、100μm以下のものが好ましく、特に、28~40μmのものを用いることで、近年の高画質化に対して、より好適に応えることができる。
また、樹脂層は、平均膜厚0.50μm以上であることが望ましい。平均膜厚が0.50μm以上であると、膜の欠損箇所がなく微粒子を十分に保持することができる塗膜を形成できる。
【0042】
本発明の電子写真画像形成用現像剤は、本発明のキャリアを有する。
本発明の二成分現像剤は、本発明のキャリア及びトナーを有する。トナーは負帯電トナーであることが好ましい。
【0043】
トナーは、結着樹脂と着色剤を含有するが、モノクロトナー及びカラートナーのいずれであってもよい。また、定着ローラにトナー固着防止用オイルを塗布しないオイルレスシステムに適用するために、トナー粒子は、離型剤を含有してもよい。このようなトナーは、一般に、フィルミングが発生しやすいが、本発明のキャリアは、フィルミングを抑制することができるため、本発明の現像剤は、長期に亘り、良好な品質を維持することができる。さらに、カラートナー、特に、イエロートナーは、一般に、キャリアの樹脂層の削れによる色汚れが発生するという問題があるが、本発明の現像剤は、色汚れの発生を抑制することができる。
【0044】
トナーは、粉砕法、重合法等の公知の方法を用いて製造することができる。例えば、粉砕法を用いてトナーを製造する場合、まず、トナー材料を混練することにより得られる溶融混練物を冷却した後、粉砕し、分級して、母体粒子を作製する。次に、転写性、耐久性をさらに向上させるために、母体粒子に外添剤を添加し、トナーを作製する。
【0045】
このとき、トナー材料を混練する装置としては、特に限定されないが、バッチ式の2本ロール;バンバリーミキサー;KTK型2軸押出し機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出し機(東芝機械社製)、2軸押出し機(KCK社製)、PCM型2軸押出し機(池貝鉄工社製)、KEX型2軸押出し機(栗本鉄工所社製)等の連続式の2軸押出し機;コ・ニーダ(ブッス社製)等の連続式の1軸混練機等が挙げられる。
【0046】
また、冷却した溶融混練物を粉砕する際には、ハンマーミル、ロートプレックス等を用いて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機、機械式の微粉砕機等を用いて微粉砕することができる。なお、平均粒径が3~15μmとなるように粉砕することが好ましい。
さらに、粉砕された溶融混練物を分級する際には、風力式分級機等を用いることができる。なお、母体粒子の平均粒径が5~20μmとなるように分級することが好ましい。
また、母体粒子に外添剤を添加する際には、ミキサー類を用いて混合攪拌することにより、外添剤が解砕されながら母体粒子の表面に付着する。
【0047】
結着樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリp-スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0048】
圧力定着用の結着樹脂としては、特に限定されないが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン共重合体;エポキシ樹脂、ポリエステル、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性フェノール樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0049】
着色剤(顔料又は染料)としては、特に限定されないが、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等の緑色顔料;カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等の黒色顔料等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0050】
離型剤としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、アミド系ワックス、多価アルコールワックス、シリコーンワニス、カルナウバワックス、エステルワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0051】
また、トナーは、帯電制御剤をさらに含有してもよい。帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン;炭素数が2~16のアルキル基を有するアジン系染料;C.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)等の塩基性染料;これらの塩基性染料のレーキ顔料;C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩;ジブチル、ジオクチル等のジアルキルスズ化合物;ジアルキルスズボレート化合物;グアニジン誘導体;アミノ基を有するビニル系ポリマー、アミノ基を有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂;モノアゾ染料の金属錯塩;サルチル酸;ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体;スルホン化した銅フタロシアニン顔料;有機ホウ素塩類;含フッ素4級アンモニウム塩;カリックスアレン系化合物等が挙げられるが、二種以上併用してもよい。なお、ブラック以外のカラートナーにおいては、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好ましい。
【0052】
外添剤としては、特に限定されないが、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素等の無機粒子;ソープフリー乳化重合法により得られる平均粒径が0.05~1μmのポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、表面が疎水化処理されているシリカ、酸化チタン等の金属酸化物粒子が好ましい。さらに、疎水化処理されているシリカ及び疎水化処理されている酸化チタンを併用し、疎水化処理されているシリカよりも疎水化処理されている酸化チタンの添加量を多くすることにより、湿度に対する帯電安定性に優れるトナーが得られる。
【0053】
本発明のキャリアを、キャリアとトナーから成る補給用現像剤とし、現像装置内の余剰の現像剤を排出しながら画像形成を行う画像形成装置に適用することで、極めて長期に渡って安定した画像品質が得られる。つまり、現像装置内の劣化したキャリアと、補給用現像剤中の劣化していないキャリアを入れ替え、長期間に渡って帯電量を安定に保ち、安定した画像が得られる。本方式は、特に高画像面積印字時に有効である。高画像面積印字時は、キャリアへのトナースペントによるキャリア帯電劣化が主なキャリア劣化であるが、本方式を用いることで、高画像面積時には、キャリア補給量も多くなるため、劣化したキャリアが入れ替わる頻度があがる。これにより、極めて長期間に渡って安定した画像を得られる。
【0054】
補給用現像剤の混合比率は、キャリア1質量部に対してトナーを2質量部以上50質量部以下の配合割合とすることが好ましい。トナーが2質量部以上である場合には、キャリアが供給過多となることがなく、現像装置中のキャリア濃度が高くなりすぎることがないため、現像剤の帯電量が増加しにくい。現像剤の帯電量が増加することにより、現像能力が下がり画像濃度が低下してしまう。またキャリア1質量部に対してトナーが50質量部以下であると、補給用現像剤中のキャリア割合が少なくなることがないため、画像形成装置中のキャリアの入れ替わりが多くなり、キャリア劣化に対する効果が期待できる。
【0055】
尚、前記二成分現像剤としては、現像剤中のトナーの濃度が、4質量%以上9質量%以下の範囲であることが好ましい。4質量%以上であるとトナー量が多く、適切な画像濃度が得られる。9質量%以下であるとキャリアのトナーが保持されやすくなり、トナー飛散が発生しにくくなる。
【0056】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、本発明の二成分現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有する。
【0057】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像担持体、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を本発明の二成分現像剤を用いて現像する現像部材と、前記静電潜像担持体をクリーニングするクリーニング部材を有する。
【0058】
図2に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ(10)は、静電潜像担持体である感光体(11)、感光体(11)を帯電する帯電部材である帯電装置(12)、感光体(11)上に形成された静電潜像を本発明の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像部材である現像装置(13)及び感光体(11)上に形成されたトナー像を記録媒体に転写した後、感光体(11)上に残留したトナーを除去するクリーニング部材であるクリーニング装置(14)が一体に支持されており、プロセスカートリッジ(10)は、複写機、プリンター等の画像形成装置の本体に対して着脱可能である。
【0059】
以下、プロセスカートリッジ(10)を搭載した画像形成装置を用いて画像を形成する方法について説明する。まず、感光体(11)が所定の周速度で回転駆動され、帯電装置(12)により、感光体(11)の周面が正又は負の所定電位に均一に帯電される。次に、スリット露光方式の露光装置、レーザービームで走査露光する露光装置等の露光装置から感光体(11)の周面に露光光が照射され、静電潜像が順次形成される。さらに、感光体(11)の周面に形成された静電潜像は、現像装置(13)により、本発明の現像剤を用いて現像され、トナー像が形成される。次に、感光体(11)の周面に形成されたトナー像は、感光体(11)の回転と同期されて、給紙部(不図示)から感光体(11)と転写装置の間に給紙された転写紙に、順次転写される。さらに、トナー像が転写された転写紙は、感光体(11)の周面から分離されて定着装置に導入されて定着された後、複写物(コピー)として、画像形成装置の外部へプリントアウトされる。一方、トナー像が転写された後の感光体(11)の表面は、クリーニング装置(14)により、残留したトナーが除去されて清浄化された後、除電装置により除電され、繰り返し画像形成に使用される。
【0060】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体を帯電させる帯電手段と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを有しており、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなるものであり、現像剤として本発明の二成分現像剤を用いるものである。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、以下の記載中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0062】
(実施例1)
<樹脂液1>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 37部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 550部
【0063】
樹脂液1において、以上の各材料をホモミキサーにて10分間分散し、樹脂層形成液を調合した。キャリア芯材として体積平均粒径35μmのCu-Znフェライトを用いた。上記樹脂液1を芯材表面に厚みが0.50μmとなるようにスピラコーターSP-40(岡田精工社製)により60℃の雰囲気下で30g/minに割合で塗布し、その後、乾燥させた。得られたキャリアを、電気炉中にて230℃で1時間放置して焼成し、冷却後に目開き100μmの篩を用いて解砕して、キャリア1を得た。芯材表面から樹脂層表面までの平均厚さTは0.50μmであった。
【0064】
芯材の体積平均粒径の測定は、マイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社)のSRAタイプを使用し、0.7μm以上、125μm以下のレンジ設定で行ったものを用いた。
前記芯材表面から樹脂層表面までの厚みT(μm)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリア断面の観察をし、芯材表面から樹脂層表面までの厚みTを、キャリア表面に沿って0.2μm間隔で50点測定し、得られた測定値を平均して求めた。
【0065】
(実施例2)
リン酸エステル系界面活性剤を、硫酸エステル系界面活性剤に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア2を得た。
【0066】
(実施例3)
リン酸エステル系界面活性剤を、スルホン酸系界面活性剤に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア3を得た。
【0067】
(実施例4)
リン酸エステル系界面活性剤を、カルボン酸系界面活性剤に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア4を得た。
【0068】
(実施例5)
シリコーン系消泡剤を、アクリル系消泡剤に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア5を得た。
【0069】
(実施例6)
シリコーン系消泡剤を、ビニル系消泡剤に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア6を得た。
【0070】
(実施例7)
<樹脂液7>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 10部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 550部
樹脂液1を樹脂液7に変更したこと以外は実施例1と同様にしてキャリア7を得た。
【0071】
(実施例8)
<樹脂液8>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 180部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 550部
樹脂液1を樹脂液8に変更したこと以外は実施例1と同様にしてキャリア8を得た。
【0072】
(実施例9)
<樹脂液9>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 37部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 160部
樹脂液1を樹脂液9に変更したこと以外は実施例1と同様にしてキャリア9を得た。
【0073】
(実施例10)
<樹脂液10>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 37部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 940部
樹脂液1を樹脂液10に変更したこと以外は実施例1と同様にしてキャリア10を得た。
【0074】
(実施例11)
<樹脂液11>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 7部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 550部
樹脂液1を樹脂液11に変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア11を得た。
【0075】
(実施例12)
<樹脂液12>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 190部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 550部
樹脂液1を樹脂液12に変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア12を得た。
【0076】
(実施例13)
<樹脂液13>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 37部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 100部
樹脂液1を樹脂液13に変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア13を得た。
【0077】
(実施例14)
<樹脂液14>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 37部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 1030部
樹脂液1を樹脂液14に変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア14を得た。
【0078】
(実施例15)
硫酸バリウムを、酸化マグネシウム(平均粒径0.55μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア15を得た。
【0079】
(実施例16)
硫酸バリウムを、水酸化マグネシウム(平均粒径0.61μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア16を得た。
【0080】
(実施例17)
硫酸バリウムを、ハイドロタルサイト(平均粒径0.58μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア17を得た。
【0081】
(実施例18)
酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナを、酸化インジウムドープ酸化スズ(ITO)表面処理アルミナ(粉体比抵抗20Ω・cm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア18を得た。
【0082】
(実施例19)
酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナを、酸化リンドープ酸化スズ(PTO)表面処理アルミナ(粉体比抵抗210Ω・cm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア19を得た。
【0083】
(比較例1)
<樹脂液20>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 0部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 0部
樹脂液1を樹脂液20に変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア20を得た。
【0084】
(比較例2)
<樹脂液21>
・アクリル樹脂溶液(固形分濃度:20%) 200部
・シリコン樹脂溶液(固形分濃度:40%) 2000部
・アミノシラン(固形分濃度:100%) 35部
・酸化タングステンドープ酸化スズ(WTO)表面処理アルミナ 1160部
(粉体比抵抗:40[Ω・cm])
・硫酸バリウム 680部
(平均粒径:0.60[μm])
・トルエン 6000部
・分散剤(リン酸エステル系界面活性剤) 37部
・消泡剤(シリコーン系、固形分濃度:1%) 0部
樹脂液1を樹脂液21に変更した以外は実施例1と同様にしてキャリア21を得た。
得られたキャリア特性を表1に示す。なお、以下の記載の「分散剤添加量(部)」は「帯電性微粒子Aと導電性微粒子Bの総量100質量部に対する添加量(部)」を表し、「消泡剤添加量(部)」は「樹脂固形分(アクリル樹脂溶液固形分、シリコン樹脂溶液固形分、アミノシラン、帯電性微粒子A、導電性微粒子B、分散剤)の総量100質量部に対する消泡剤の固形分添加量(部)」を表す。
【0085】
【0086】
<トナー製造例>
-ポリエステル樹脂Aの合成-
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物65部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物86部、テレフタル酸274部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で15時間反応させた。次に、5~10mmHgの減圧下、6時間反応させて、ポリエステル樹脂Aを合成した。得られたポリエステル樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が2,300、重量平均分子量(Mw)が8,000、ガラス転移温度(Tg)が58℃、酸価が25mgKOH/g、水酸基価が35mgKOH/gであった。
【0087】
―プレポリマー(活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)の合成―
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部、及びジブチルチンオキサイド2部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10~15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。
得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が49であった。
次に、冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル411部、イソホロンジイソシアネート89部、及び酢酸エチル500部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、プレポリマー(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。
得られたプレポリマーの遊離イソシアネート含有量は、1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
【0088】
-ケチミン(前記活性水素基含有化合物)の合成-
攪拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン30部及びメチルエチルケトン70部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(前記活性水素基含有化合物)を合成した。得られたケチミン化合物(前記活性水素機含有化合物)のアミン価は423であった。
【0089】
-マスターバッチの作製-
水1,000部、DBP吸油量が42mL/100g、pHが9.5のカーボンブラックPrintex35(デグサ社製)540部、及び1,200部のポリエステル樹脂Aを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。次に、二本ロールを用いて、得られた混合物を150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを作製した。
-水系媒体の調製-
イオン交換水306部、リン酸三カルシウムの10質量%懸濁液265部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部を混合攪拌し、均一に溶解させて、水系媒体を調製した。
【0090】
-臨界ミセル濃度の測定-
界面活性剤の臨界ミセル濃度は以下の方法で測定した。表面張力計Sigma(KSV Instruments社製)を用いて、Sigmaシステム中の解析プログラムを用いて解析を行なった。界面活性剤を水系媒体に対して0.01%ずつ滴下し、攪拌、静置後の界面張力を測定した。得られた表面張力カーブから、界面活性剤の滴下によっても界面張力が低下しなくなる界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度として算出した。水系媒体に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの臨界ミセル濃度を表面張力計Sigmaで測定を行ったところ、水系媒体の質量に対して0.05%であった。
【0091】
―トナー材料液の調製―
ビーカー内に、ポリエステル樹脂Aを70部、プレポリマーを10部及び酢酸エチル100部を入れ、攪拌して溶解させた。離型剤としてパラフィンワックス5部(日本精鑞社製 HNP-9 融点75℃)、MEK-ST(日産化学工業社製)2部、及びマスターバッチ10部を加えて、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスクの周速度6m/秒で、粒径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスした後、前記ケチミン2.7部を加えて溶解させ、トナー材料液を調製した。
【0092】
―乳化乃至分散液の調製―
前記水系媒体相150部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに前記トナー材料液100部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
―有機溶剤の除去―
攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、前記乳化スラリー100部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤し、分散スラリーを調製した。
【0093】
―洗浄―
前記分散スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。更に得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。
【0094】
―界面活性剤量調整―
上記洗浄により得られた濾過ケーキに、イオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した際のトナー分散液の電気伝導度を測定し、事前に作成した界面活性剤濃度の検量線より、トナー分散液の界面活性剤濃度を算出した。その値から、界面活性剤濃度が狙いの界面活性剤濃度0.05%になるように、イオン交換水を追加し、トナー分散液を得た。
【0095】
―表面処理工程―
前記所定の界面活性剤濃度に調整されたトナー分散液を、TK式ホモミキサーで5000rpmで混合しながら、ウォーターバスで加熱温度T1=55℃で10時間加熱を行なった。その後トナー分散液を25℃まで冷却し、濾過を行なった。更に得られた濾過ケーキに、イオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。
【0096】
―乾燥―
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子1を得た。
【0097】
―外添処理―
さらに、トナー母体粒子1を100部に対して、平均粒径100nmの疎水性シリカ3.0部と、平均粒径20nmの酸化チタン1.0部と、平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体を1.5部とをヘンシェルミキサーにて混合し、[トナー1]を得た。
【0098】
<現像剤の作製>
実施例及び比較例で得られた[キャリア1]~[キャリア21](93部)、及びトナー1(7部)を混合して、タービュラーミキサーを用いて81rpmで3分間攪拌し、評価用の[現像剤1]~[現像剤21]を作製した。また、それらの現像剤の補給用現像剤は、トナー濃度が95%となるように、前記キャリア及び前記トナーを用いて作製した。
【0099】
<現像剤特性評価>
得られた[現像剤1]~[現像剤21]を用いて下記の評価を行った。
被覆樹脂膜の削れがない印刷初期でのキャリア付着の評価として、下記現像剤特性評価1の初期ベタキャリア付着の評価を行い、印刷経時での抵抗低下の評価として、下記現像剤特性評価2の経時ベタキャリア付着の評価を行い、トナーへの帯電付与性の評価として、下記現像剤特性評価3の帯電立ち上がり性評価と経時帯電安定性評価並びにトナー飛散の評価を行った。また、評価に用いたデジタルフルカラー複合機(株式会社リコー製、Pro C9100)はカラープロダクションプリンターであり、下記現像剤特性評価2及び3により低温定着トナーを使用した高速機においても低画像面積率の印字密度での連続通紙を評価した。
【0100】
<現像剤特性評価1>
得られた現像剤を用いて市販のデジタルフルカラー複合機(株式会社リコー製、Pro C9100)にセットし、画像評価を実施した。
【0101】
(ベタキャリア付着)
上記マシンを実験室環境(25℃60%環境)にて、実施例及び比較例の現像剤1~21を用いた。
ベタ画像を所定の現像条件(帯電電位(Vd):-600V、画像部(ベタ原稿)にあたる部分の感光後の電位:-100V、現像バイアス:DC -500V)にて作像中に電源をOFFにする等の方法で作像を中断し、転写後の感光体上のキャリア付着の個数を数えて評価を実施した。なお、評価する領域は感光体上の10mm×100mmの領域とした。◎はキャリア付着の個数が0個である状態、○はキャリア付着の個数が1~3個の状態、△はキャリア付着の個数が4~10個の状態、×はキャリア付着の個数が11個以上の状態となる。◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
【0102】
<現像剤特性評価2>
得られた現像剤を用いて市販のデジタルフルカラー複合機(株式会社リコー製、Pro C9100)にセットし、画像評価を実施した。具体的には上記マシンを実験室環境(25℃60%環境)にて、実施例及び比較例の現像剤1~21と、それらの補給用現像剤を用いて、画像面積率0.5%で100万枚のランニングを実施し、ランニング後のベタキャリア付着を評価した。100万枚ランニング後に評価を実施する以外は上記と同様の方法にて評価した。
【0103】
<現像剤特性評価3>
(帯電立ち上がり性)
初期のキャリア93質量%に対しトナー7質量%の割合で混合し、摩擦帯電させたサンプルを、ブローオフTB-200(東芝ケミカル社製)を用いて測定する。このとき、キャリアとトナーの混合を開始し、15秒時点での帯電量をQ1とし、混合開始後600秒時点での帯電量をQ2とする。帯電立ち上がり性は(Q1-Q2)/(Q1)×100の絶対値と規定した。評価基準を以下に示す。
15以上 : ◎(大変良好)
10以上~15未満 : ○(良好)
5以上~10未満 : △(使用可能)
0以上~5未満 : ×(不良)
【0104】
(経時帯電安定性)
リコー社製Pro C9100(リコー製デジタルカラー複写機・プリンター複合機)に実施例及び比較例の現像剤1~21と、それらの補給用現像剤を用いて、画像面積率40%で100万枚のランニング後のキャリアで評価を行った。
まず、初期のキャリアの帯電量(Q1)は、キャリア1~18と、トナー1を、質量比93:7で混合し、摩擦帯電させたサンプルを、ブローオフ装置TB-200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。また、100万枚ランニング後のキャリアの帯電量(Q2)は、ブローオフ装置を用いてランニング後の現像剤中の各色のトナーを除去したキャリアを用いた以外は、上記と同様にして測定した。帯電量の変化率は(Q1-Q2)/(Q1)×100の絶対値と規定した。評価基準を以下に示す。
0以上~5未満 : ◎(大変良好)
5以上~10未満 : ○(良好)
10以上~20未満 : △(使用可能)
20以上 : ×(不良)
【0105】
(トナー飛散)
リコー社製Pro C9100(リコー製デジタルカラー複写機・プリンター複合機)に実施例及び比較例の現像剤1~21と、それらの補給用現像剤を用いて、画像面積率40%で100万枚のランニング後に現像剤担持体下部に溜まったトナーの量を吸引、回収し、トナー質量を測定した。評価基準を以下に示す。
0mg以上~ 50mg未満 : ◎(大変良好)
50mg以上~100mg未満 : ○(良好)
100mg以上~250mg未満 : △(使用可能)
250mg以上 : ×(不良)
画像評価の結果を表2に示す。
【0106】
【符号の説明】
【0107】
1a 電極
1b 電極
2 容器
3 キャリア
10 プロセスカートリッジ
11 感光体
12 帯電装置
13 現像装置
14 クリーニング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】
【文献】特開2010-230836号公報
【文献】特開2011-209678号公報
【文献】特開2016-212254号公報
【文献】特開2017-167387号公報