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特許7511845画像処理装置、画像撮像システム、画像処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像撮像システム、画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/02 20060101AFI20240701BHJP
   A61B 5/242 20210101ALI20240701BHJP
【FI】
A61B6/02 551Z
A61B5/242
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021044354
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022027432
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020131129
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(73)【特許権者】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰士
(72)【発明者】
【氏名】木下 彰
(72)【発明者】
【氏名】高田 真弘
(72)【発明者】
【氏名】川端 茂▲徳▼
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-057664(JP,A)
【文献】特開2019-013724(JP,A)
【文献】特開2018-089104(JP,A)
【文献】特開2019-098156(JP,A)
【文献】特表2018-525041(JP,A)
【文献】特開2018-057843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0051217(US,A1)
【文献】特開2001-170018(JP,A)
【文献】特開2001-061803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
A61B 6/00 - 6/58
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向から撮像された被検体の第1の放射線画像を取得する第1取得部と、
前記第1の方向と交差する第2の方向から撮像された前記被検体の第2の放射線画像を取得する第2取得部と、
前記放射線画像を撮像する装置の位置情報、前記第1の放射線画像および前記第2の放射線画像のうちの一方の画像から得られる前記被検体の特定部位の位置に関する情報に基づいて、前記第1の放射線画像および前記第2の放射線画像のうちの他方の画像を補正する画像補正部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記一方の画像において、前記被検体の磁気発生部位の位置を特定する位置特定部をさらに備え、
前記画像補正部は、
前記被検体の特定部位の位置に関する情報である、前記位置特定部によって特定された前記磁気発生部位の位置に基づいて、前記他方の画像を、前記磁気発生部位の位置に応じたサイズに補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像補正部は、
前記位置特定部によって特定された前記磁気発生部位の位置と前記他方の画像の撮像位置との離間距離に基づいて、前記他方の画像を、前記磁気発生部位の位置に応じたサイズに補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像補正部は、
前記一方の画像および前記他方の画像の双方から、共通に写し出されている身体的特徴点を抽出し、前記被検体の特定部位の位置に関する情報である、前記一方の画像における前記身体的特徴点の位置と、前記他方の画像における前記身体的特徴点の位置との位置関係に基づいて、前記他方の画像を、前記被検体の磁気発生部位の位置に応じたサイズに補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記磁気発生部位の発する磁気を検出する磁気検出装置から、磁気検出データを取得する第3取得部と、
前記磁気検出データに基づいて前記被検体における電流分布を表す電流分布図を生成する電流分布生成部と、
前記電流分布生成部によって生成された前記電流分布図と、前記画像補正部による補正後の前記他方の画像とが重畳された重畳画像を生成する画像重畳部と
をさらに備えることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記磁気発生部位は、前記被検体の脊髄または馬尾神経である
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の方向は、
前記被検体の正面方向または背面方向であり、
前記第2の方向は、
前記被検体の右側面方向または左側面方向である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の放射線画像および前記第2の放射線画像を撮像する少なくとも1つの撮像装置と、
前記第1の放射線画像および前記第2の放射線画像を撮像する際に、前記被検体に放射線を照射する少なくとも1つの光源と、
請求項1から7のいずれか一項に記載の画像処理装置と
を備えることを特徴とする画像撮像システム。
【請求項9】
第1の方向から撮像された被検体の第1の放射線画像を取得する第1取得工程と、
前記第1の方向と交差する第2の方向から撮像された前記被検体の第2の放射線画像を取得する第2取得工程と、
前記放射線画像を撮像する装置の位置情報、前記第1の放射線画像および前記第2の放射線画像のうちの一方の画像から得られる前記被検体の特定部位の位置に関する情報に基づいて、前記第1の放射線画像および前記第2の放射線画像のうちの他方の画像を補正する画像補正工程と
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
第1の方向から撮像された被検体の第1の放射線画像を取得する第1取得部、
前記第1の方向と交差する第2の方向から撮像された前記被検体の第2の放射線画像を取得する第2取得部、および、
前記放射線画像を撮像する装置の位置情報、前記第1の放射線画像および前記第2の放射線画像のうちの一方の画像から得られる前記被検体の特定部位の位置に関する情報に基づいて、前記第1の放射線画像および前記第2の放射線画像のうちの他方の画像を補正する画像補正部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像撮像システム、画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検体に対し、放射線照射部が設けられている方向とは反対方向に、生体磁気検出部と放射線感光体とを設けることにより、被検体の放射線画像の撮像と、被検体の生体磁気の検出との双方を行うことができる生体情報計測装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、放射線感光体によって撮像される放射線画像は、被検体の体外の位置における画像であり、生体磁気検出部によって検出される生体磁気は、被検体の体内の位置における情報であるため、放射線画像に生体磁気データをそのまま重ねあわせることができない。放射線画像に生体磁気データを正しく重ね合わせるためには、放射線画像を、被検体の体内の磁気発生部位の位置に応じて補正する必要があるが、特許文献1に開示されている技術は、このような補正を容易に行うことが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る画像処理装置は、第1の方向から撮像された被検体の第1の放射線画像を取得する第1取得部と、第1の方向と交差する第2の方向から撮像された被検体の第2の放射線画像を取得する第2取得部と、放射線画像を撮像する装置の位置情報、もしくは、第1の放射線画像および第2の放射線画像のうちの一方の画像から得られる被検体の特定部位の位置に関する情報に基づいて、他方の画像を補正する画像補正部とを備える。
【発明の効果】
【0005】
一実施形態によれば、放射線画像を、被検体の体内の特定の部位の位置に応じた補正を、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る画像撮像システムのシステム構成を示す図
図2】一実施形態に係る画像処理装置の機能構成を示す図
図3】一実施形態に係る画像処理装置による処理の手順を示すフローチャート
図4】被検体の脊髄の左右位置と、第2の放射線画像の撮像位置との位置関係を、模式的に示す図
図5】位置特定部による補正後の第2の放射線画像の一例を示す図
図6】被検体の脊髄の高さ位置と、第1撮像部の高さ位置との位置関係を、模式的に示す図
図7】画像補正部による第1の放射線画像の補正方法の一例を示す図
図8】電流分布生成部によって生成された電流分布図の一例を示す図
図9】画像重畳部によって生成された重畳画像の一例を示す図
図10】画像補正部による第1の放射線画像の補正方法の変形例を説明するための図
図11】画像補正部による第1の放射線画像の補正方法の変形例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0008】
(画像撮像システム10のシステム構成)
図1は、一実施形態に係る画像撮像システム10のシステム構成を示す図である。図1に示す画像撮像システム10は、被検体S(例えば、人体)の撮像対象部位(図1に示す例では、頸部)の放射線画像を撮像することができるシステムである。また、画像撮像システム10は、被検体Sの撮像対象部位における磁気を検出し、その検出結果に基づいて、被検体Sの撮像対象部位における電流分布を表す電流分布図を生成し、当該電流分布図を、放射線画像に重ねて出力することができる。
【0009】
図1に示すように、画像撮像システム10は、第1光源11、第2光源12、第1撮像部13、第2撮像部14、および磁気検出装置15を備える。なお、本実施形態では、便宜上、Y軸方向を高さ方向(被検体Sが仰臥位または伏臥位にあるときの、被検体Sの正面および背面方向)とする。また、本実施形態では、Z軸方向を左右方向(被検体Sが仰臥位または伏臥位にあるときの、被検体Sの横幅方向)とする。さらに、本実施形態では、Y軸およびZ軸の各々と直交する方向(被検体Sの身長方向)をX軸方向とする。
【0010】
第1光源11は、被検体Sの撮像対象部位の上方となる位置に配置されている。第1光源11は、被検体Sの撮像対象部位の上方から、被検体Sの撮像対象部位に向けて放射線(例えば、X線)を照射する。第1光源11としては、例えば、公知の放射線照射装置を用いることができる。
【0011】
第2光源12は、被検体Sの撮像対象部位の側方となる位置に配置されている。第2光源12は、被検体Sの撮像対象部位の側方から、被検体Sの撮像対象部位に向けて放射線(例えば、X線)を照射する。第2光源12としては、例えば、公知の放射線照射装置を用いることができる。
【0012】
第1撮像部13は、被検体Sの撮像対象部位の下方となる位置に、被検体Sを間に挟んで、第1光源11と対向して設けられている。第1撮像部13は、被検体Sの撮像対象部位の下方(「第1の方向」の一例)から、第1光源11から照射されて被検体Sを透過した放射線による、被検体Sの放射線画像を撮像する。すなわち、第1撮像部13は、被検体Sの下方から被検体Sの放射線画像(以下、「第1の放射線画像」と示す)を撮像する。そして、第1撮像部13は、撮像された第1の放射線画像を、画像処理装置100(図2参照)へ出力することができる。
【0013】
第2撮像部14は、被検体Sの撮像対象部位の側方となる位置に、被検体Sの撮像対象部位の側方(「第2の方向」の一例)から、被検体Sを間に挟んで、第2光源12と対向して設けられている。第2撮像部14は、第2光源12から照射されて被検体Sを透過した放射線による、被検体Sの放射線画像を撮像する。すなわち、第2撮像部14は、被検体Sの側方から被検体Sの放射線画像(以下、「第2の放射線画像」と示す)を撮像する。そして、第2撮像部14は、撮像された第2の放射線画像を、画像処理装置100(図2参照)へ出力することができる。
【0014】
なお、本実施形態において、第1撮像部13による撮像方向(第1の方向)および第2撮像部14による撮像方向(第2の方向)は、互いに直交する。但し、これに限らず、第1撮像部13による撮像方向(第1の方向)および第2撮像部14による撮像方向(第2の方向)は、互いに略直交してもよい。すなわち、本実施形態において、第1撮像部13による撮像方向(第1の方向)と第2撮像部14による撮像方向(第2の方向)との「交差」は、互いに略直交することを意味する。なお、略直交とは90°のみでなく90°±10°の誤差を許容することを指す。また、本実施形態では、第1光源11、第1撮像部13、第2光源12、および第2撮像部14が、「放射線画像を撮像する装置」に相当する。
【0015】
磁気検出装置15は、被検体Sの撮像対象部位の下方となる位置、且つ、第1撮像部13の下方に設けられており、被検体Sの撮像対象部位における磁気を検出する。磁気検出装置15は、磁気センサ15Aを有している。磁気センサ15Aは、水平方向に配列された複数の磁気検出素子(図示省略)を有して構成されている。磁気センサ15Aは、複数の磁気検出素子の各々によって、被検体Sの撮像対象部位における、水平方向の複数の位置の各々の磁気を検出する。そして、磁気検出装置15は、磁気センサ15Aによって検出された、被検体Sの撮像対象部位における複数の位置の各々の磁気検出値を表す磁気検出データを、画像処理装置100(図2参照)へ出力することができる。磁気センサ15Aとしては、例えば、SQUID(Superconducting QUantum Interference Device)、OPAM(Optically Pumped Atomic Magnetometer)等が用いられる。なお、本実施形態では、被検体Sの撮像対象部位における磁気発生部位は脊髄S1である。よって、本実施形態では、磁気検出装置15は、被検体Sの撮像対象部位(例えば、頚部)において脊髄または馬尾神経S1の発する磁気を検出する。
【0016】
なお、図1に示すように、被検体Sは、第1光源11と第1撮像部13との間、且つ、第2光源12と第2撮像部14との間に、撮像対象部位が配置される。また、被検体Sは、図1に示すように、横たわった状態を容易に維持できるように、必要に応じて、架台等に載置される。
【0017】
(画像処理装置100の機能構成)
図2は、一実施形態に係る画像処理装置100の機能構成を示す図である。図2に示すように、画像撮像システム10は、画像処理装置100をさらに備える。
【0018】
図2に示すように、画像処理装置100は、第1取得部101、第2取得部102、位置特定部103、画像補正部104、第3取得部105、電流分布生成部106、画像重畳部107、および出力部108を備える。
【0019】
第1取得部101は、第1撮像部13によって撮像された第1の放射線画像(すなわち、下方からの被検体Sの放射線画像)を取得する。
【0020】
第2取得部102は、第2撮像部14によって撮像された第2の放射線画像(すなわち、側方からの被検体Sの放射線画像)を取得する。
【0021】
位置特定部103は、第2取得部102によって取得された第2の放射線画像に基づいて、第1の放射線画像の撮像位置(すなわち、第1撮像部13による撮像位置)に対する、被検体Sにおける磁気の発生位置(「被検体の特定部位の位置に関する情報」の一例)を特定する。本実施形態では、位置特定部103は、第1の放射線画像の撮像位置(すなわち、第1撮像部13の高さ位置H1)を基準とする、被検体Sの脊髄S1の高さ位置H2までの高さr2を特定する(図4参照)。
【0022】
画像補正部104は、位置特定部103によって特定された、被検体Sの脊髄S1の高さ位置H2までの高さr2に基づいて、第1取得部101によって取得された第1の放射線画像を補正する。具体的には、画像補正部104は、第1の放射線画像のサイズが、位置特定部103によって特定された被検体Sの脊髄S1の高さ位置H2におけるサイズとなるように、第1の放射線画像を縮小する。すなわち、「画像補正部による画像の補正」は、放射線画像を縮小することを意味する。但し、その縮小方法は如何なる方法であってもよく、例えば、図7に例示するように、画像の画素毎に、縮小係数による縮小後の位置を算出するようにしてもよい。この際、各画素に適用する縮小係数は、互いに同一であってもよく、各々異なっていてもよい。
【0023】
第3取得部105は、磁気検出装置15から出力された磁気検出データ(すなわち、被検体Sにおける複数の位置の各々の磁気検出値)を取得する。
【0024】
電流分布生成部106は、第3取得部105によって取得された磁気検出データに基づいて、被検体Sの撮像対象部位における電流分布を表す電流分布図を生成する。
【0025】
画像重畳部107は、電流分布生成部106によって生成された電流分布図と、画像補正部104による補正後の第1の放射線画像とが重畳された重畳画像を生成する。
【0026】
出力部108は、画像重畳部107によって生成された重畳画像を出力する。例えば、出力部108は、重畳画像をディスプレイに表示させる。但し、これに限らず、出力部108は、重畳画像をその他の出力方法(例えば、メモリ出力、外部送信等)によって出力してもよい。
【0027】
上記した画像処理装置100の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記した画像処理装置100の各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0028】
(画像処理装置100による処理の手順)
図3は、一実施形態に係る画像処理装置100による処理の手順を示すフローチャートである。
【0029】
まず、第2取得部102が、第2撮像部14によって撮像された第2の放射線画像(すなわち、側方からの被検体Sの放射線画像)を取得する(ステップS301)。
【0030】
次に、位置特定部103が、ステップS301で取得された第2の放射線画像に基づいて、第1撮像部13の高さ位置H1を基準とする、被検体Sの脊髄S1の高さ位置H2まで高さr2を特定する(ステップS302)。具体的には、例えば、出力部108から表示部(図示せず)に第2の放射線画像を出力して、作業者が画面上で脊髄S1位置を指示する(位置特定する)か、もしくは、位置特定部103での機械学習または外部の機械学習により脊髄S1を判定し、その判定結果を利用することにより、高さr2を特定する。
【0031】
次に、第1取得部101が、第1撮像部13によって撮像された第1の放射線画像(すなわち、下方からの被検体Sの放射線画像)を取得する(ステップS303)。
【0032】
次に、画像補正部104が、ステップS302で特定された被検体Sの脊髄S1の高さ位置H2までの高さr2に基づいて、ステップS303で取得された第1の放射線画像のサイズを補正する(ステップS304)。具体的には、画像補正部104は、第1の放射線画像のサイズが、高さ位置H2におけるサイズとなるように、第1光源11と第1撮像部13との距離Lと距離(L―r2)との比率に基づいて、第1の放射線画像を縮小する。
【0033】
次に、第3取得部105が、磁気検出装置15から出力された磁気検出データ(すなわち、被検体Sにおける複数の位置の各々の磁気検出値)を取得する(ステップS305)。
【0034】
次に、電流分布生成部106が、ステップS305で取得された磁気検出データに基づいて、被検体Sの撮像対象部位における電流分布を表す電流分布図を生成する(ステップS306)。
【0035】
次に、画像重畳部107が、ステップS306で生成された電流分布図と、ステップS304による補正後の第1の放射線画像とが重畳された重畳画像を生成する(ステップS307)。そして、出力部108が、ステップS307で生成された重畳画像を出力する(ステップS308)。その後、画像処理装置100は、図3に示す一連の処理を終了する。
【0036】
なお、上記手順では、第2の放射線画像を先に取得するようにしているが、これに限らず、第1の放射線画像を先に取得してもよい。但し、本実施形態では、第2の放射線画像から被検体Sの脊髄S1の高さ位置H2を特定するため、第2の放射線画像を先に取得することが好ましい。加えて、第1の放射線画像と第2の放射線画像は、被検体の動きによる位置ズレ防止の観点からは、ほぼ同時取得がさらに好ましい。
【0037】
また、被検体Sの位置ずれ防止の観点から、画像撮像システム10は、光源と撮像部の組を2組具備することが望ましい。但し、これに限らず、例えば、画像撮像システム10は、光源と撮像部の組を1組具備してもよい。この場合、画像撮像システム10は、当該1組の光源および撮像部を第1光源11および第1撮像部13として用いて、第1の放射線画像を撮像および取得し(ステップS303)、当該1組の光源および撮像部を移動させることにより、当該1組の光源および撮像部を第2光源12および第2撮像部14として用いて、第2の放射線画像を撮像および取得してもよい(ステップS301)。
【0038】
また、光源の位置ずれ防止の観点から、画像撮像システム10は、2つの光源を具備し、固定ないしは位置再現性が保たれた状態にあることが望ましい。但し、これに限らず、例えば、画像撮像システム10は、1つの光源を具備してもよい。この場合、画像撮像システム10は、当該1つの光源を第1光源11として用いて被検体Sに放射線を照射することにより、第1の放射線画像を撮像および取得し(ステップS303)、当該1つの光源を移動させて、当該1つの光源を第2光源12として用いて被検体Sに放射線を照射することにより、第2の放射線画像を撮像および取得してもよい(ステップS301)。
【0039】
また、撮像部の位置ずれ防止の観点から、画像撮像システム10は、2つの撮像部を具備し、固定ないしは位置再現性が保たれた状態にあることが望ましい。但し、これに限らず、例えば、画像撮像システム10は、1つの撮像部を具備してもよい。この場合、画像撮像システム10は、当該1つの撮像部を第1撮像部13として用いて、第1の放射線画像を撮像および取得し(ステップS303)、当該1つの撮像部を移動させて、当該1つの撮像部を第2撮像部14として用いて、第2の放射線画像を撮像および取得してもよい(ステップS301)。
【0040】
上記手順では光源および撮像部のどちらかが2つの装置を具備していることを前提としているが、上記手順を組み合わせて、1つの光源および1つの撮像部を用いて、それぞれを移動させながら第1の放射線画像および第2の放射線画像を撮像および取得してもよい。
【0041】
(位置特定部103による脊髄S1の高さ位置H2までの高さr2の特定方法)
図4は、被検体Sの脊髄S1の左右位置P1と、第2の放射線画像の撮像位置P2との位置関係を、模式的に示す図である。図5は、位置特定部103による補正後の第2の放射線画像の一例を示す図である。
【0042】
図4に示すように、被検体Sにおける脊髄S1の左右位置P1は、被検体Sの左右方向における中心位置である。一方、第2撮像部14による第2の放射線画像の撮像位置P2は、第2光源12から見て、脊髄S1の左右位置P1よりも遠い位置にある。
【0043】
図4に示すように、第2光源12が点光源であるため、第2光源12による放射線の照射範囲は、第2光源12から離間するにつれて徐々に広くなる。このため、撮像位置P2において第2撮像部14によって撮像される第2の放射線画像のサイズは、脊髄S1の左右位置P1におけるサイズよりも大きくなる。
【0044】
そこで、まず、位置特定部103は、脊髄S1の左右位置P1を特定する。例えば、脊髄S1の左右方向における中心にある棘突起が、ベッド上の左右方向における所定の位置に設けられた直線状のマーカーと重なるように、被検体Sを架台上に配置する。これにより、脊髄S1の左右位置P1は、ベッド上の左右方向における所定の位置となるから、位置特定部103は、脊髄S1の左右位置P1を容易に特定することができる。また、例えば、脊髄S1の棘突起にマーカーコイルを貼り付けてから、被検体Sを架台上に配置してもよい。この場合、位置特定部103は、マーカーコイルの位置情報に基づいて、脊髄S1の左右位置P1を容易に特定することができる。
【0045】
次に、位置特定部103は、第2撮像部14によって撮像された第2の放射線画像のサイズが、特定された脊髄S1の左右位置P1におけるサイズとなるように、脊髄S1の左右位置P1と撮像位置P2との離間距離r1に応じた縮小率で、第2の放射線画像を縮小する補正を行う。具体的には、位置特定部103は、第2光源12の位置と撮像位置P2との位置関係の情報(「放射線画像を撮像する装置の位置情報」に相当する)を予め記憶(若しくは入力)しておき、脊髄S1の左右位置P1の情報とを基に、第2の放射線画像に適用すべき縮小率を、容易に算出することができる。
【0046】
次に、位置特定部103は、補正後の第2の放射線画像における、脊髄S1の高さ位置H2を特定する。例えば、位置特定部103は、補正後の第2の放射線画像をディスプレイに表示させて、当該補正後の第2の放射線画像における脊髄S1の高さ位置H2を、作業者に指定させる。
【0047】
そして、位置特定部103は、特定された補正後の第2の放射線画像における脊髄S1の高さ位置H2に基づいて、高さ位置H1を基準とする高さ位置H2までの高さr2を算出する。
【0048】
ここで、補正後の第2の放射線画像における1画素のサイズは、当該第2の放射線画像の補正に適用された縮小率に応じて、補正前の第2の放射線画像における1画素のサイズよりも小さくなる。
【0049】
例えば、補正前の第2の放射線画像における1画素のサイズが「0.15mm」であり、第2の放射線画像の補正に適用された縮小率が「80%」である場合、補正後の第2の放射線画像における1画素のサイズは、「0.12mm」となる。
【0050】
そして、位置特定部103は、補正前の第2の放射線画像における1画素のサイズに、補正後の第2の放射線画像における高さ位置H1から高さ位置H2までの画素数を乗じることにより、高さ位置H1を基準とする高さ位置H2までの高さr2を算出することができる。
【0051】
例えば、補正後の第2の放射線画像における1画素のサイズが「0.12mm」であり、補正後の第2の放射線画像における高さ位置H1から高さ位置H2までの画素数が「650pix」である場合、位置特定部103は、高さ位置H1を基準とする高さ位置H2までの高さr2を、「78mm」と算出することができる。
【0052】
なお、高さ位置H1は、第2光源12と第2撮像部14との位置関係により、第2の放射線画像に写らないことがある。この場合、第2の放射線画像内に必ず写り込む位置に、高さ位置H1との位置関係が既知である放射線マーカーを設置し、これに基づいて高さ位置H1の位置を割り出すことが望ましい。
【0053】
(画像補正部104による第1の放射線画像の補正方法)
図6は、被検体Sの脊髄S1の高さ位置H2と、第1撮像部13の高さ位置H1との位置関係を、模式的に示す図である。
【0054】
図6に示すように、被検体Sにおける脊髄S1の高さ位置H2は、被検体Sの体内にある。一方、第1撮像部13による第1の放射線画像の高さ位置H1は、被検体Sの体外にあり、第1光源11から見て、脊髄S1の高さ位置H2よりも遠い位置にある。
【0055】
図6に示すように、第1光源11が点光源であるため、第1光源11による放射線の照射範囲は、第1光源11から離間するにつれて徐々に広くなる。このため、高さ位置H1において第1撮像部13によって撮像される第1の放射線画像のサイズは、脊髄S1の高さ位置H2におけるサイズよりも大きくなる。そこで、画像補正部104は、第1の放射線画像のサイズが、脊髄S1の高さ位置H2におけるサイズとなるように、当該第1の放射線画像を補正する。
【0056】
図7は、画像補正部104による第1の放射線画像の補正方法の一例を示す図である。
図7では、説明のため、高さ位置H2における被検体Sの脊髄S1を、n個の黒点の集合として表している。また、図7では、第1光源11から被検体Sに照射された放射線により、高さ位置H1において第1撮像部13によって撮像される第1の放射線画像S'を、同様にn個の黒点の集合として表している。また、図7では、第1光源11からの放射線の照射方向をY軸とし、Y軸と直交する方向をX軸と定義する。
【0057】
ここで、第1の放射線画像S'のうちの一の黒点x'について着目すると、当該一の黒点x'において、第1光源11から照射される放射線と、第1撮像部13とが成す角θは、θ=arctan(R/(x'-x))と表すことができる。但し、Rは、第1光源11から第1撮像部13までの既知の距離であり、xは、第1光源11のX軸における位置である。よって、被検体Sにおける黒点xと、第1の放射線画像S'における黒点x'との関係は(x-x')tanθ=r2であり、変形して、x=r2/tanθ+x'と求めることができる。但し、r2は、既に位置特定部103によって特定されている、高さ位置H1を基準とする高さ位置H2までの高さである。
【0058】
画像補正部104は、第1の放射線画像S'を構成する複数の画素の各々について、同様に被検体Sの高さ位置H2における位置を求めることにより、第1の放射線画像S'を、被検体Sの高さ位置H2に応じたサイズに補正することができる。
【0059】
(電流分布図の一例)
図8は、電流分布生成部106によって生成された電流分布図の一例を示す図である。
図8に示す電流分布図800A,800B,800C,800Dは、被検体Sの撮像対象部位(本例では、腰部)における神経活動電流の電流分布の時間遷移を表すものであり、電流分布生成部106によって、磁気検出装置15から出力された磁気検出データに基づいて、生成されたものである。なお、図8では、電流分布図800A,800B,800C,800Dの各々に対し、被検体S(特に、本例では、腓骨頭部における腓骨神経)に対して電気刺激が与えられたタイミングからの経過時間(10.400ms,11.400ms,12.400ms,13.400ms)が示されている。電流分布図800A,800B,800C,800Dの各々においては、電流の分布が等電流線図で示されており、線が密な個所は電流が強く、線が疎な箇所は電流が弱い。また、矢印は、各位置における電流の向きを示している。
【0060】
(重畳画像の一例)
図9は、画像重畳部107によって生成された重畳画像の一例を示す図である。図9に示す重畳画像900A,900B,900C,900Dは、それぞれ、画像重畳部107により、画像補正部104による補正後の第1の放射線画像(被検体Sの撮像対象部位(本例では、腰部)の放射線画像)に対し、図8に示す電流分布図800A,800B,800C,800Dを重畳することによって生成されたものである。これにより、各重畳画像900A~900Dは、第1の放射線画像によって表される被検体Sの脊椎S1の像と、電流分布図800A~800Dによって表される脊椎S1の周辺における電流分布との双方が、表されたものとなっている。なお、図9に示す例では、理解を容易にするために、重畳画像900Aに対して、第1の放射線画像に写し出されている脊椎S1の輪郭を、強調して示している。
【0061】
ここで、各重畳画像900A~900Dに用いられる第1の放射線画像は、画像補正部104によって、被検体Sの脊椎S1の高さ位置H2におけるサイズに補正されたものである。一方、各重畳画像900A~900Dに用いられる電流分布図800A~800Dも、電流分布生成部106によって、脊椎S1の高さ位置H2におけるサイズで生成されたものである。
【0062】
すなわち、各重畳画像900A~900Dは、第1の放射線画像と電流分布図800A~800Dとが、いずれも、同一の高さ位置(高さ位置H2)に対応するサイズを有するものである。よって、各重畳画像900A~900Dは、第1の放射線画像によって表される被検体Sの脊椎S1の像と、電流分布図800A~800Dによって表される脊椎S1の周辺における電流分布との双方が、高い位置精度で表されたものとなっている。
【0063】
(画像補正方法の変形例)
図10および図11は、画像補正部104による第1の放射線画像の補正方法の変形例を説明するための図である。図10は、第2の放射線画像に写し出されている身体的特徴点を表している。図11は、第1の放射線画像に写し出されている身体的特徴点を表している。なお、図10および図11に示す例では、理解を容易にするために、第1の放射線画像および第2の放射線画像に写し出されている脊椎S1の輪郭を、強調して示している。なお、図10および図11に示す例では、図11に示す第1の放射線画像の撮像範囲が、図10に示す第2の放射線画像の撮像範囲よりも広められている。
【0064】
図10および図11に示す例では、画像補正部104によって抽出される特徴点として、脊椎S1における椎弓根S2の下端部と、棘突起の上端S3Uと、棘突起の下端S3Lとを用いている。但し、図10および図11に示す例では、椎弓根S2の下端部に「×」記号を付している。
【0065】
画像補正部104は、第1光源11と第1撮像部13との位置関係が不明である場合、図10および図11に示すように、「被検体の特定部位の位置に関する情報」の他の一例として、第1の放射線画像および第2の放射線画像の各々から共通の身体的特徴点を抽出し、第1の放射線画像における身体的特徴点の位置と、第2の放射線画像における身体的特徴点の位置との位置関係(例えば、複数の身体的特徴点の間隔の比率)に基づいて、第1の放射線画像のサイズを補正しても良い。
【0066】
なお、画像補正部104は、第1の放射線画像および第2の放射線画像の各々について、被検体Sの身長方向(X軸方向)における複数の身体的特徴点の位置を抽出することができるため、これら複数の身体的特徴点から求まる補正係数により、第1の放射線画像における被検体Sの身長方向(X軸方向)の補正を行うことができる。一方、画像補正部104は、第2の放射線画像については、被検体Sの横幅方向(Z軸方向)における複数の身体的特徴点の位置を抽出することができないため、第1の放射線画像の上下方向の補正に用いた補正係数と同じ補正係数により、第1の放射線画像における被検体Sの横幅方向(Z軸方向)の補正を行っても良い。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 画像撮像システム
11 第1光源
12 第2光源
13 第1撮像部
14 第2撮像部
15 磁気検出装置
100 画像処理装置
101 第1取得部
102 第2取得部
103 位置特定部
104 画像補正部
105 第3取得部
106 電流分布生成部
107 画像重畳部
108 出力部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【文献】特許第6513798号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11