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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240701BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 Q
H01L21/68 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020100756
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021197398
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 卓
(72)【発明者】
【氏名】原田 成規
(72)【発明者】
【氏名】滝田 友春
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-210858(JP,A)
【文献】特開2008-187153(JP,A)
【文献】特開2014-207386(JP,A)
【文献】特開2016-157903(JP,A)
【文献】特開2010-245172(JP,A)
【文献】特開2017-73439(JP,A)
【文献】特開2012-156344(JP,A)
【文献】特開2012-59985(JP,A)
【文献】特開2014-93493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域を表面側に備え、該デバイス領域に対応する領域に形成された凹部を裏面側に備え、該デバイス領域及び該凹部を囲む環状の補強部を外周部に備えるウェーハを加工するウェーハの加工方法であって、
該ウェーハの裏面側に粘着テープを該凹部及び該補強部に沿って貼着するテープ貼着ステップと、
第1チャックテーブルによって該凹部の底面を、該粘着テープを介して保持する保持ステップと、
切削ブレードによって該ウェーハを該分割予定ラインに沿って切削することにより、該デバイス領域を複数のデバイスチップに分割するとともに、該補強部の表面側に溝を形成する切削ステップと、
該補強部に外力を付与することにより、該溝を起点として該補強部を該分割予定ラインに沿って複数のチップに分割する分割ステップと、を含むことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
該分割ステップでは、該ウェーハの該補強部に対応する位置に凹凸を有する第2チャックテーブルによって該ウェーハを支持した状態で、該粘着テープを該第2チャックテーブルによって吸引することにより、該粘着テープを該凹凸に沿って配置して該補強部を分割することを特徴とする請求項1記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該保持ステップの実施後、且つ、該分割ステップの実施前に、該切削ブレードによって該デバイス領域の外周部を環状に切削することにより、該デバイス領域と該補強部とを分離する分離ステップを更に含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該分割ステップの実施後に、該補強部に流体を噴射することによって該補強部を除去する補強部除去ステップを更に含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のウェーハの加工方法。
【請求項5】
該流体は、該ウェーハの中心側から外周側に向かって噴射されることを特徴とする請求項4記載のウェーハの加工方法。
【請求項6】
該流体は、気体及び液体を含む混合流体であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のウェーハの加工方法。
【請求項7】
該流体は、液体であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のウェーハの加工方法。
【請求項8】
該切削ステップの実施後、且つ、該分割ステップの実施前に、該補強部に該補強部の径方向に沿って複数のスクライブラインを形成するスクライブライン形成ステップを更に含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造工程では、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域を表面側に備えるウェーハが用いられる。このウェーハを分割予定ラインに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に搭載される。
【0003】
近年では、電子機器の小型化に伴い、デバイスチップの薄型化が求められている。そこで、ウェーハの分割前にウェーハを薄化する加工が実施されることがある。ウェーハの薄化には、ウェーハを保持するチャックテーブルと、複数の研削砥石を有する研削ホイールが装着される研削ユニットとを備える研削装置が用いられる。チャックテーブルによって保持されたウェーハの裏面側に研削砥石を接触させることにより、ウェーハが研削され、薄化される。
【0004】
しかしながら、ウェーハを研削して薄化すると、ウェーハの剛性が低下し、その後の搬送工程でウェーハが破損しやすくなる等、ウェーハの取り扱いが難しくなる。そこで、ウェーハの裏面側のうちデバイス領域と重なる領域のみを研削して薄化する手法が提案されている。この手法を用いると、ウェーハの裏面側の中央部には凹部が形成される一方、ウェーハの外周部は薄化されずに厚い状態に維持され、環状の補強部として残存する。これにより、研削後のウェーハの剛性の低下が抑えられる。
【0005】
薄化されたウェーハは、環状の切削ブレードで被加工物を切削する切削装置等を用いて、最終的に複数のデバイスチップに分割される。このときウェーハは、外周部に残存する環状の補強部が除去された後、分割予定ラインに沿って切断される。例えば特許文献1には、ウェーハの外周部を切削ブレードで環状に切削してデバイス領域と補強部(環状凸部)とを分離した後、複数の爪を備える爪アセンブリによって補強部を持ち上げて除去する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-61137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ウェーハの外周部に残存する環状の補強部は、ウェーハの加工プロセスにおいてウェーハから分離され、除去される。しかしながら、補強部がウェーハから分離された直後において、補強部は、薄化されて剛性が低下した状態のウェーハの中央部(デバイス領域)を囲むように、デバイス領域に近接して配置されている。そのため、補強部を除去する際に、誤って補強部がデバイス領域に接触し、デバイス領域が損傷するおそれがある。
【0008】
従って、補強部を適切に除去するためには、補強部がデバイス領域に干渉しないように、補強部を慎重に保持し、且つ、補強部の揺れや位置ずれが生じないように補強部を持ち上げる作業が必要となる。その結果、補強部の除去に用いられる機構(爪アセンブリ等)の構造が複雑化してコストが増大する。また、補強部の除去に要する作業時間が長くなり、加工装置の稼働効率が低下する。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、ウェーハの外周部に残存する補強部を簡易に除去可能なウェーハの加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域を表面側に備え、該デバイス領域に対応する領域に形成された凹部を裏面側に備え、該デバイス領域及び該凹部を囲む環状の補強部を外周部に備えるウェーハを加工するウェーハの加工方法であって、該ウェーハの裏面側に粘着テープを該凹部及び該補強部に沿って貼着するテープ貼着ステップと、第1チャックテーブルによって該凹部の底面を、該粘着テープを介して保持する保持ステップと、切削ブレードによって該ウェーハを該分割予定ラインに沿って切削することにより、該デバイス領域を複数のデバイスチップに分割するとともに、該補強部の表面側に溝を形成する切削ステップと、該補強部に外力を付与することにより、該溝を起点として該補強部を該分割予定ラインに沿って複数のチップに分割する分割ステップと、を含むウェーハの加工方法が提供される。
【0011】
なお、好ましくは、該分割ステップでは、該ウェーハの該補強部に対応する位置に凹凸を有する第2チャックテーブルによって該ウェーハを支持した状態で、該粘着テープを該第2チャックテーブルによって吸引することにより、該粘着テープを該凹凸に沿って配置して該補強部を分割する。また、好ましくは、該ウェーハの加工方法は、該保持ステップの実施後、且つ、該分割ステップの実施前に、該切削ブレードによって該デバイス領域の外周部を環状に切削することにより、該デバイス領域と該補強部とを分離する分離ステップを更に含む。
【0012】
また、好ましくは、該ウェーハの加工方法は、該分割ステップの実施後に、該補強部に流体を噴射することによって該補強部を除去する補強部除去ステップを更に含む。また、好ましくは、該流体は、該ウェーハの中心側から外周側に向かって噴射される。なお、該流体は、気体及び液体を含む混合流体であってもよい。また、該流体は、液体であってもよい。
【0013】
また、好ましくは、該ウェーハの加工方法は、該切削ステップの実施後、且つ、該分割ステップの実施前に、該補強部に該補強部の径方向に沿って複数のスクライブラインを形成するスクライブライン形成ステップを更に含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係るウェーハの加工方法では、切削ステップにおいてデバイス領域が複数のデバイスチップに分割されるとともに、補強部の表面側に溝が形成される。そして、分割ステップにおいて、補強部に外力が付与され、補強部が溝を起点として分割される。その結果、例えば分割された補強部に流体を噴射する等の簡易な方法により、ウェーハから補強部を容易に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)はウェーハの表面側を示す斜視図であり、図1(B)はウェーハの裏面側を示す斜視図である。
図2図2(A)は粘着テープが貼着されたウェーハを示す斜視図であり、図2(B)は粘着テープが貼着されたウェーハを示す断面図である。
図3】切削装置を示す斜視図である。
図4】チャックテーブルによって保持されたウェーハを示す断面図である。
図5図5(A)は第1の方向に沿って切削されるウェーハを示す断面図であり、図5(B)は第2の方向に沿って切削されるウェーハを示す断面図である。
図6】洗浄ユニットを示す斜視図である。
図7図7(A)はチャックテーブル上に配置されたウェーハを示す断面図であり、図7(B)はチャックテーブルによって吸引されたウェーハを示す断面図である。
図8図8(A)は補強部に流体が噴射されるウェーハを示す断面図であり、図8(B)は補強部が除去されるウェーハを示す断面図である。
図9図9(A)は溝形成ユニットを備える切削装置を示す平面図であり、図9(B)は溝形成ユニットを備える切削装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るウェーハの加工方法によって加工することが可能なウェーハの構成例について説明する。図1(A)はウェーハ11の表面側を示す斜視図であり、図1(B)はウェーハ11の裏面側を示す斜視図である。
【0017】
ウェーハ11は、例えばシリコン等の半導体でなる円盤状の基板であり、互いに概ね平行な表面11a及び裏面11bを備える。ウェーハ11は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、分割予定ライン13によって区画された領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のデバイス15が形成されている。
【0018】
ウェーハ11は、複数のデバイス15が形成された略円形のデバイス領域17aと、デバイス領域17aを囲む環状の外周余剰領域17bとを、表面11a側に備える。外周余剰領域17bは、表面11aの外周縁を含む所定の幅(例えば2mm程度)の環状の領域に相当する。図1(A)には、デバイス領域17aと外周余剰領域17bとの境界を二点鎖線で示している。
【0019】
なお、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えばウェーハ11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板であってもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0020】
ウェーハ11を分割予定ライン13に沿って格子状に分割することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。また、分割前のウェーハ11に対して薄化処理を施すことにより、薄型化されたデバイスチップを得ることが可能となる。
【0021】
ウェーハ11の薄化には、例えば研削装置が用いられる。研削装置は、ウェーハ11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)と、ウェーハ11を研削する研削ユニットとを備えており、研削ユニットには複数の研削砥石を有する環状の研削ホイールが装着される。チャックテーブルと研削ホイールとをそれぞれ回転させながら、研削砥石をウェーハ11の裏面11b側に接触させることにより、ウェーハ11の裏面11b側が研削され、ウェーハ11が薄化される。
【0022】
ただし、ウェーハ11の裏面11b側の全体が研削されると、ウェーハ11の全体が薄化されてウェーハ11の剛性が低下し、その後の搬送工程でウェーハ11が破損しやすくなる等、ウェーハ11の取り扱いが難しくなる。そのため、薄化処理(研削加工)は、ウェーハ11の裏面11b側の中央部のみに施されることがある。
【0023】
例えば図1(B)に示すように、ウェーハ11は中央部のみが薄化され、ウェーハ11の裏面11bには円形の凹部(溝)19が形成される。この凹部19は、デバイス領域17aに対応する位置に設けられる。例えば、凹部19の大きさ(直径)はデバイス領域17aの大きさ(直径)と概ね同一に設定され、凹部19はデバイス領域17aと重なる位置に形成される。
【0024】
凹部19は、ウェーハ11の表面11a及び裏面11bと概ね平行な底面19aと、底面19aと概ね垂直で底面19a及びウェーハ11の裏面11bに接続された環状の側面(内壁)19bとを含む。そして、ウェーハ11の外周部には、薄化処理(研削加工)が施されていない領域に相当する補強部(凸部)21が残存している。補強部21は、外周余剰領域17bを含み、デバイス領域17aと凹部19とを囲んでいる。
【0025】
ウェーハ11の中央部のみを薄化すると、ウェーハ11の外周部(補強部21)が厚い状態に維持される。これにより、ウェーハ11の剛性の低下が抑えられ、ウェーハ11の破損等が生じにくくなる。すなわち、補強部21がウェーハ11を補強する補強領域として機能する。
【0026】
次に、ウェーハ11を複数のデバイスチップに分割するためのウェーハの加工方法の具体例について説明する。本実施形態では、まず、ウェーハ11の裏面11b側に粘着テープを貼着する(テープ貼着ステップ)。図2(A)は粘着テープ23が貼着されたウェーハ11を示す斜視図であり、図2(B)は粘着テープ23が貼着されたウェーハ11を示す断面図である。
【0027】
ウェーハ11の裏面11b側には、ウェーハ11の裏面11b側の全体を覆うことが可能な大きさの粘着テープ23が貼着される。例えば、ウェーハ11よりも径の大きい円形の粘着テープ23が、ウェーハ11の裏面11b側を覆うように貼着される。
【0028】
粘着テープ23としては、円形の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含む柔軟なフィルムを用いることができる。例えば、基材はポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなり、粘着層はエポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。また、粘着層には、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の樹脂を用いることもできる。
【0029】
粘着テープ23は、ウェーハ11の裏面11b側の輪郭に沿って貼着される。すなわち、粘着テープ23は図2(B)に示すように、凹部19の底面19a及び側面19bと、補強部21の裏面(下面)とに沿って(倣って)貼着される。なお、図2(B)では粘着テープ23が底面19a及び側面19bに密着するように貼着されている例を示しているが、粘着テープ23と底面19aの外周部との間や粘着テープ23と側面19bとの間には、僅かな隙間が存在していてもよい。
【0030】
粘着テープ23の外周部には、SUS(ステンレス鋼)等の金属でなる環状のフレーム25が貼着される。フレーム25の中央部には、ウェーハ11を収容可能な円形の開口25aが設けられている。ウェーハ11は、開口25aの内側に配置された状態で、粘着テープ23を介してフレーム25によって支持される。これにより、ウェーハ11、粘着テープ23、及びフレーム25が一体化したフレームユニット(ワークセット)が構成される。
【0031】
粘着テープ23が貼着されたウェーハ11は、切削装置によって切削される。図3は、切削装置2を示す斜視図である。切削装置2は、ウェーハ11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)4と、チャックテーブル4によって保持されたウェーハ11を切削する切削ユニット12とを備える。
【0032】
チャックテーブル4の上面は、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向)及びY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向)と概ね平行に形成された平坦面であり、ウェーハ11を保持する円形の保持面4a(図4参照)を構成している。また、チャックテーブル4には、チャックテーブル4をX軸方向に沿って移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)と、チャックテーブル4をZ軸方向(鉛直方向、上下方向)に概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)とが連結されている。
【0033】
チャックテーブル4の上方には、ウェーハ11を切削する切削ユニット12が配置されている。切削ユニット12は円筒状のハウジング14を備え、ハウジング14の内部にはY軸方向に沿って配置された円筒状のスピンドル(不図示)が収容されている。スピンドルの先端部(一端部)は、ハウジング14の外部に露出している。
【0034】
スピンドルの先端部には、環状の切削ブレード16が装着される。また、スピンドルの基端部(他端部)には、モータ等の回転駆動源が連結されている。切削ブレード16は、回転駆動源からスピンドルを介して伝達される動力によって、Y軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0035】
切削ブレード16としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、金属等でなる環状の基台と、基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃とが一体となって構成される。ハブブレードの切刃は、ダイヤモンド等でなる砥粒がニッケルめっき層等の結合材によって固定された電鋳砥石によって構成される。また、切削ブレード16として、ワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いてもよい。ワッシャーブレードは、砥粒が金属、セラミックス、樹脂等でなる結合材によって固定された環状の切刃によって構成される。
【0036】
スピンドルの先端部に装着された切削ブレード16は、ハウジング14に固定されたブレードカバー18に覆われる。ブレードカバー18は、純水等の液体(切削液)が供給されるチューブ(不図示)に接続される接続部20と、接続部20に接続され切削ブレード16の両面側(表裏面側)にそれぞれ配置される一対のノズル22とを備える。一対のノズル22にはそれぞれ、切削ブレード16に向かって開口する噴射口(不図示)が形成されている。
【0037】
接続部20に切削液が供給されると、一対のノズル22の噴射口から切削ブレード16の両面(表裏面)に向かって切削液が噴射される。この切削液によって、ウェーハ11及び切削ブレード16が冷却されるとともに、切削加工によって生じた屑(切削屑)が洗い流される。
【0038】
切削ユニット12には、切削ユニット12を移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)が連結されている。この移動機構は、切削ユニット12をY軸方向に沿って移動させるとともに、Z軸方向に沿って昇降させる。
【0039】
切削装置2を用いてウェーハ11を加工する際は、まず、チャックテーブル4によってウェーハ11を保持する(保持ステップ)。図4は、チャックテーブル4によって保持されたウェーハ11を示す断面図である。
【0040】
チャックテーブル4は、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等でなる円柱状の枠体(本体部)6を備える。枠体6の上面6a側には、平面視で円形の凹部(溝)6bが形成されており、凹部6bには円盤状の保持部材8が嵌め込まれている。保持部材8は、ポーラスセラミックス等の多孔質材料でなる部材であり、その内部に保持部材8の上面から下面に連通する空孔(吸引路)を含んでいる。
【0041】
保持部材8は、枠体6の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。そして、保持部材8の上面は、ウェーハ11を吸引する円形の吸引面8aを構成している。枠体6の上面6aと保持部材8の吸引面8aとは概ね同一平面上に配置され、チャックテーブル4の保持面4aを構成している。
【0042】
ウェーハ11は、表面11a側が上方に露出するようにチャックテーブル4上に配置される。なお、チャックテーブル4は、保持面4aでウェーハ11の凹部19の底面19aを保持可能となるように構成されている。具体的には、保持面4aの径は凹部19の径よりも小さく、チャックテーブル4の保持面4a側が凹部19に嵌め込まれる。これにより、凹部19の底面19aが粘着テープ23を介して保持面4aで支持される。
【0043】
また、チャックテーブル4の周囲には、フレーム25を把持して固定する複数のクランプ10が設けられている。ウェーハ11がチャックテーブル4上に配置されると、フレーム25が複数のクランプ10によって固定される。
【0044】
ウェーハ11がチャックテーブル4上に配置された状態で、保持部材8に吸引源の負圧(吸引力)を作用させると、粘着テープ23のうち凹部19の底面19aに貼着された領域が吸引面8aによって吸引される。これにより、凹部19の底面19aが粘着テープ23を介してチャックテーブル4によって吸引保持される。
【0045】
次に、切削ブレード16によってウェーハ11を分割予定ライン13(図3等参照)に沿って切削する(切削ステップ)。切削ステップでは、第1の方向と平行な分割予定ライン13と、第1の方向と交差する第2の方向と平行な分割予定ライン13とに沿って、ウェーハ11を切削する。
【0046】
図5(A)は、第1の方向に沿って切削されるウェーハ11を示す断面図である。まず、チャックテーブル4を回転させ、第1の方向と平行な一の分割予定ライン13の長さ方向をX軸方向に合わせる。また、切削ブレード16が一の分割予定ライン13の延長線上に配置されるように、切削ユニット12のY軸方向における位置を調整する。
【0047】
さらに、切削ブレード16の下端が凹部19の底面19aよりも下方に配置されるように、切削ユニット12の高さを調整する。例えば、切削ブレード16の下端が、凹部19の底面19aに貼着された粘着テープ23の上面よりも下方で、且つ、保持面4a(粘着テープ23の下面)よりも上方に位置付けられる。このときのウェーハ11の表面11aと切削ブレード16の下端との高さの差が、切削ブレード16のウェーハ11への切り込み深さに相当する。
【0048】
そして、切削ブレード16を回転させつつ、チャックテーブル4をX軸方向に沿って移動させる。これにより、チャックテーブル4と切削ブレード16とがX軸方向に沿って相対的に移動し(加工送り)、切削ブレード16が一の分割予定ライン13に沿ってウェーハ11の表面11a側に切り込む。
【0049】
このときの切削ブレード16の切り込み深さは、ウェーハ11の中央部(デバイス領域17a、図3等参照)における厚さよりも大きく、且つ、ウェーハ11の外周部(補強部21)における厚さよりも小さい。そのため、ウェーハ11のデバイス領域17aには、表面11aから底面19aに至る切り口(カーフ)が一の分割予定ライン13に沿って形成される。一方、ウェーハ11の補強部21には、切削ブレード16の切り込み深さに対応する深さの溝11cが一の分割予定ライン13に沿って形成される。
【0050】
その後、切削ブレード16をY軸方向に分割予定ライン13の間隔分移動させ(割り出し送り)、ウェーハ11を他の分割予定ライン13に沿って切削する。この手順を繰り返すことにより、第1の方向と平行な全ての分割予定ライン13に沿ってウェーハ11が切削される。
【0051】
次に、チャックテーブル4を90°回転させ、第2の方向と平行な分割予定ライン13の長さ方向をX軸方向に合わせる。そして、同様の手順により、ウェーハ11を分割予定ライン13に沿って切削する。図5(B)は、第2の方向に沿って切削されるウェーハ11を示す断面図である。
【0052】
全ての分割予定ライン13に沿ってウェーハ11が切削されると、ウェーハ11のデバイス領域17aが分割予定ライン13に沿って分割され、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップ27(図6参照)が得られる。また、補強部21の上面(表面)側には、分割予定ライン13に沿って溝11cが形成される。
【0053】
次に、補強部21に外力を付与することにより、溝11cを起点として補強部21を分割予定ライン13に沿って分割する(分割ステップ)。本実施形態では、粘着テープ23をチャックテーブルによって吸引することにより、補強部21に外力を付与する。
【0054】
図6は、洗浄ユニット30を示す斜視図である。洗浄ユニット30は、切削加工後のウェーハ11を洗浄する機構であり、切削装置2(図3参照)に内蔵されている。そして、洗浄ユニット30は、ウェーハ11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)32と、チャックテーブル32によって保持されたウェーハ11に流体を供給する流体供給ユニット46とを備える。
【0055】
チャックテーブル32の上面は、ウェーハ11を保持する円形の保持面を構成している。また、チャックテーブル32には、チャックテーブル32を鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0056】
チャックテーブル32は、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等でなる円柱状の枠体(本体部)34を備える。枠体34の上面34a側には、平面視で円形の凹部(溝)34bが形成されており、凹部34bには円盤状の保持部材36が嵌め込まれている。保持部材36は、ポーラスセラミックス等の多孔質材料でなる部材であり、その内部に保持部材36の上面から下面に連通する空孔(吸引路)を含んでいる。
【0057】
保持部材36の上面は、ウェーハ11を吸引保持する円形の吸引面36aを構成している。また、枠体34の上面34aと保持部材36の吸引面36aとは、概ね同一平面上に配置されている。
【0058】
チャックテーブル32のうちウェーハ11の補強部21に対応する位置には、凹凸が設けられている。例えば、枠体6は、ウェーハ11がチャックテーブル32上に配置された際に上面6aが補強部21と重なるように形成される。また、枠体6の上面6a側には、上面6aから上方に突出する複数の凸部(突起)38が設けられている。なお、図6では直方体状に形成された凸部38を示しているが、凸部38の形状に制限はない。
【0059】
複数の凸部38は、枠体6の周方向に沿って概ね等間隔に配列されている。そして、枠体6の上面6aと凸部38とによって、周期的な凹凸を有する環状の領域が構成される。
【0060】
さらに、枠体6の上面6a側には、上面6aで開口する環状の溝40a,40bが設けられている。例えば溝40a,40bは、複数の凸部38の両側(枠体6の半径方向における外側と内側)に同心円状に形成される。また、溝40aと溝40bとは、枠体6の半径方向に沿って形成された複数の溝40cを介して互いに連結されている。
【0061】
保持部材36は、枠体34の内部に設けられた流路(不図示)及びバルブ42aを介して、吸引源44に接続されている。また、溝40a,40b,40cは、枠体34の内部に設けられた流路(不図示)及びバルブ42bを介して、吸引源44に接続されている。吸引源44は、エジェクタ等によって構成される。
【0062】
ウェーハ11は、補強部21が枠体34の上面34aと重なるように、チャックテーブル32上に配置される。これにより、ウェーハ11の補強部21が粘着テープ23を介して複数の凸部38によって支持される。
【0063】
図7(A)は、チャックテーブル32上に配置されたウェーハ11を示す断面図である。なお、図7(A)では説明の便宜上、ウェーハ11、粘着テープ23、フレーム25、チャックテーブル32の断面における形状のみを図示している。ウェーハ11がチャックテーブル32上に配置された状態でバルブ42a,42bを開くと、保持部材36及び溝40a,40bに吸引源44の負圧が作用し、ウェーハ11が粘着テープ23を介してチャックテーブル32によって吸引保持される。
【0064】
図7(B)は、チャックテーブル32によって吸引されたウェーハ11を示す断面図である。粘着テープ23のうちウェーハ11の凹部19の内側に貼着されている領域は、保持部材36によって吸引されて凹部19から剥離され、吸引面36aに接触する。また、粘着テープ23のうち補強部21に貼着されている領域は、溝40a,40bによって吸引されて補強部21から剥離され、枠体34の上面34aに接触する。
【0065】
ここで、図6に示すように、枠体34の上面34a側には、複数の凸部38によって周期的な凹凸が環状に形成されている。そのため、溝40a,40bに負圧を作用させると、粘着テープ23のうち補強部21に貼着されている領域は、枠体34の上面34a及び凸部38に沿って変形し、波打った状態となる。そして、補強部21のうち凸部38に支持されていない領域が、粘着テープ23によって枠体34の上面34a側に引っ張られ、隣接する凸部38の間に入り込むように移動する。その結果、補強部21にせん断応力が作用する。すなわち、粘着テープ23をチャックテーブル32によって吸引することにより、補強部21に外力が付与される。
【0066】
補強部21に外力が付与されると、補強部21に形成されている溝11cから亀裂が発生し、補強部21の厚さ方向に進展する。これにより、補強部21が分割予定ライン13に沿って破断する。すなわち、溝11cが補強部21の分割の起点として機能し、環状の補強部21が分割予定ライン13に沿って複数のチップに分割される。
【0067】
なお、分割ステップでは、必ずしも全ての溝11cに沿って補強部21が分割される必要はない。すなわち、後述の補強部除去ステップにおいて補強部21が適切に除去されるように、補強部21が所定のサイズ以下の複数のチップに分割されればよい。
【0068】
また、図6では、チャックテーブル32の凹凸が枠体34の上面34aと凸部38によって構成される例について説明したが、凹凸の形成方法に制限はない。例えば、枠体34の上面34a側に複数の凹部(溝)を設けることによって凹凸を形成してもよい。
【0069】
さらに、補強部21に外力を付与する方法は、チャックテーブル32による粘着テープ23の吸引に限られない。例えば、ウェーハ11を所定のチャックテーブルによって保持した状態で、補強部21に押圧部材を押し付けることによって補強部21に外力を付与してもよい。また、粘着テープ23としてエキスパンドテープ(外力の付与によって拡張可能なテープ)を用い、エキスパンドテープを引っ張って拡張することにより補強部21に外力を付与してもよい。
【0070】
次に、複数のチップに分割された補強部21を除去する(補強部除去ステップ)。補強部除去ステップでは、補強部21の分割によって形成された各チップを粘着テープ23から剥離して除去する。これにより、粘着テープ23に複数のデバイスチップ27のみが貼着された状態となる。
【0071】
補強部21の除去には、例えば流体供給ユニット46(図6参照)が用いられる。流体供給ユニット46は、流体を噴射するノズル48と、ノズル48を旋回させるアーム50とを備えている。
【0072】
図8(A)は、補強部21に流体52が噴射されるウェーハ11を示す断面図である。補強部除去ステップでは、まず、ノズル48を旋回させて、補強部21の内側の領域と重なる位置に配置する。そして、ノズル48から補強部21に向かって流体52を噴射する。これにより、補強部21のチップが流体52によって吹き飛ばされて粘着テープ23から剥離され、除去される。
【0073】
図8(B)は、補強部21が除去されるウェーハ11を示す断面図である。流体52の噴射によって補強部21を除去する場合には、流体52をウェーハ11の中心側(補強部21の内側)からウェーハ11の外周側(補強部21の外側)に向かって噴射することが好ましい。この場合、補強部21のチップは補強部21の半径方向外側に飛散する。これにより、補強部21のチップがデバイスチップ27側に飛散してデバイスチップ27を傷つけることを防止できる。例えば、ノズル48を鉛直方向に対して傾斜させることにより(図8(A)及び図8(B)参照)、流体52の噴射方向が調整される。
【0074】
そして、ノズル48から流体52を噴射しつつチャックテーブル32を回転させる。これにより、流体52が補強部21の全体に噴射され、補強部21のチップが粘着テープ23から順次剥離、除去される。
【0075】
ここで、仮に補強部21が分割されずに連続した環状の状態のままである場合、補強部21を適切に除去するためには、補強部21を慎重に保持し、補強部21の揺れや位置ずれが生じないように補強部21を持ち上げる作業が必要となる。そのため、補強部21の除去を行うための精密な搬送機構等が必要となり、補強部21の除去に要する作業時間も長くなる。一方、本実施形態では分割ステップにおいて環状の補強部21が複数のチップに分割されるため、補強部除去ステップにおいて各チップに適度な外力を付与するのみで補強部21を極めて簡易に除去できる。
【0076】
なお、補強部21に噴射される流体52に制限はない。例えば、流体52として加圧された純水等の液体(高圧液体)が噴射される。また、流体52として、液体(純水等)と気体(エアー等)とを含む混合流体を用いることもできる。
【0077】
また、補強部21に流体を噴射する際には、複数のデバイスチップ27を保護膜で被覆してもよい。例えば、チャックテーブル32の上方からウェーハ11に向かって純水を供給し、複数のデバイスチップ27を水膜で覆ってもよい。これにより、万が一補強部21のチップがデバイスチップ27側に飛散した場合にも、デバイスチップ27が損傷しにくくなる。この場合には、チャックテーブル32によって保持されたウェーハ11に保護膜形成用の液体(純水等)を供給するノズルを、洗浄ユニット30に搭載してもよい。
【0078】
また、上記では洗浄ユニット30に設けられたチャックテーブル32を用いて分割ステップ及び補強部除去ステップを実施する場合について説明したが、洗浄ユニット30とは別途準備された他のチャックテーブルを用いることもできる。また、分割ステップと補強部除去ステップとで個別のチャックテーブルを用いてもよい。
【0079】
以上の通り、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、切削ステップにおいてデバイス領域17aが複数のデバイスチップ27に分割されるとともに、補強部21の表面側に溝11cが形成される。そして、分割ステップにおいて、補強部21に外力が付与され、補強部21が溝11cを起点として分割される。その結果、例えば分割された補強部21に流体52を噴射する等の簡易な方法により、ウェーハ11から補強部21を容易に除去することが可能となる。
【0080】
なお、上記のウェーハの加工方法では、保持ステップ(図4参照)の実施後、且つ、分割ステップ(図7(A)及び図7(B)参照)の実施前に、デバイス領域17aと補強部21とを分離してもよい(分離ステップ)。例えば分離ステップは、切削ステップ(図5(A)及び図5(B)参照)の実施前又は実施後に、図3に示す切削装置2を用いて実施される。
【0081】
具体的には、まず、チャックテーブル4によってウェーハ11が保持された状態で(図4参照)、切削ブレード16がウェーハ11のデバイス領域17a(薄化された領域)の外周部の直上に配置されるように、チャックテーブル4及び切削ユニット12の位置を調整する。そして、切削ブレード16を回転させながら切削ユニット12を下降させ、切削ブレード16をデバイス領域17aの外周部の一部に切り込ませる。このときの切削ユニット12の下降量は、切削ブレード16の下端が凹部19の底面19aに貼着されている粘着テープ23に達するように設定される。
【0082】
次に、切削ブレード16がウェーハ11に切り込んだ状態で、切削ブレード16を回転させたままチャックテーブル4を1回転させる。これにより、ウェーハ11がデバイス領域17aの外周部に沿って環状に切削され、切断される。その結果、ウェーハ11から補強部21が切り落とされ、デバイス領域17aと補強部21とが分離される。
【0083】
上記の分離ステップを実施すると、その後の分割ステップの実施時に、補強部21の上部からデバイスチップ27側に突出する突起部(図7(A)及び図7(B)参照)が残存せず、又は突起部が短くなる。これにより、分割ステップで粘着テープ23を吸引した際に、粘着テープ23に引っ張られた突起部が折れてデバイスチップ27側に飛散することを防止できる。
【0084】
また、上記のウェーハの加工方法では、切削ステップ(図5(A)及び図5(B)参照)の実施後、且つ、分割ステップ(図7(A)及び図7(B)参照)の実施前に、補強部21に複数のスクライブライン(溝)を形成してもよい(スクライブライン形成ステップ)。
【0085】
スクライブライン形成ステップは、例えば溝形成ユニット(スクライブライン形成ユニット)60が搭載された切削装置2を用いて実施される。図9(A)は溝形成ユニット60を備える切削装置2を示す平面図であり、図9(B)は溝形成ユニット60を備える切削装置2を示す断面図である。なお、図9(B)には切削ステップの実施後のウェーハ11も図示している。
【0086】
例えば溝形成ユニット60は、切削ユニット12のハウジング14の側面に装着される。具体的には、溝形成ユニット60は、ハウジング14の側面に固定される固定部材62を備える。固定部材62は、平面視でL字状に形成され、ハウジング14とX軸方向において隣接するように配置される。
【0087】
固定部材62の下面側には、ウェーハ11にスクライブライン(溝)を形成するカッター64と、ウェーハ11を押圧する押圧部材66とが固定されている。カッター64と押圧部材66とは、Y軸方向において隣接するように配置されている。
【0088】
カッター64は、下端部に切り刃64aを備える。切り刃64aとしては、例えばダイヤモンドカッターが用いられる。また、押圧部材66は、金属、樹脂等でなる円筒状の部材である。押圧部材66の下面は曲面状に形成されており、ウェーハ11を押圧する押圧面66aを構成している。
【0089】
スクライブライン形成ステップでは、まず、溝形成ユニット60を移動させ、カッター64の切り刃64aを補強部21の表面側に接触させる。なお、溝形成ユニット60の移動は、切削ユニット12に連結された移動機構(不図示)によって制御される。そして、切り刃64aが補強部21に接触した状態で、溝形成ユニット60をY軸方向に沿って移動させる。これにより、補強部21の表面側に線状のスクライブラインが補強部21の径方向に沿って形成される。
【0090】
次に、チャックテーブル4を所定の角度分回転させ、同様に補強部21にスクライブラインを形成する。この手順を繰り返すことにより、補強部21の径方向に沿って複数のスクライブラインが形成される。
【0091】
スクライブラインは、補強部21に形成された溝11c(図6参照)とともに、ウェーハ11の分割起点として機能する。すなわち、スクライブラインを形成すると、分割ステップ(図7(A)及び図7(B)参照)において補強部21に亀裂が生じやすくなり、補強部21の分割がアシストされる。これにより、補強部21を複数のチップに確実に分割することが可能となる。
【0092】
また、補強部21にスクライブラインを形成した後、押圧部材66を補強部21に押し付けることによって補強部21を分割してもよい。具体的には、カッター64によって補強部21にスクライブラインを形成した後、押圧部材66をY軸方向に沿って移動させて補強部21の直上に位置付け、補強部21に向かって下降させる。これにより、押圧面66aが補強部21に接触して補強部21を下方に押し付ける。その結果、補強部21に外力が付与され、補強部21がスクライブライン及び溝11c(図6参照)を起点として分割される。
【0093】
そして、チャックテーブル4を所定の角度ずつ回転させ、スクライブラインの形成と補強部21による補強部21の押圧とを繰り返す。すなわち、スクライブライン形成ステップと分割ステップとを交互に複数回実施する。これにより、補強部21が周方向に沿って順次破断し、最終的に補強部21が複数のチップに分割される。
【0094】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0095】
11 ウェーハ
11a 表面
11b 裏面
11c 溝
13 分割予定ライン(ストリート)
15 デバイス
17a デバイス領域
17b 外周余剰領域
19 凹部(溝)
19a 底面
19b 側面(内壁)
21 補強部(凸部)
23 粘着テープ
25 フレーム
25a 開口
27 デバイスチップ
2 切削装置
4 チャックテーブル(保持テーブル)
4a 保持面
6 枠体(本体部)
6a 上面
6b 凹部(溝)
8 保持部材
8a 吸引面
10 クランプ
12 切削ユニット
14 ハウジング
16 切削ブレード
18 ブレードカバー
20 接続部
22 ノズル
30 洗浄ユニット
32 チャックテーブル(保持テーブル)
34 枠体(本体部)
34a 上面
34b 凹部(溝)
36 保持部材
36a 吸引面
38 凸部(突起)
40a,40b,40c 溝
42a,42b バルブ
44 吸引源
46 流体供給ユニット
48 ノズル
50 アーム
52 流体
60 溝形成ユニット(スクライブライン形成ユニット)
62 固定部材
64 カッター
64a 切り刃
66 押圧部材
66a 押圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9