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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20240701BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240701BHJP
   B24B 1/00 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 631
B24B1/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020103466
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021194741
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐介
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-074018(JP,A)
【文献】特開2009-285806(JP,A)
【文献】特開2010-155297(JP,A)
【文献】特開2002-270676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B7/04
B24B1/00
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被加工物の第1面を研削する際に用いられる被加工物の研削方法であって、
該被加工物の該第1面とは反対側の第2面に樹脂層を形成する樹脂層形成ステップと、
目標とする研削後の該被加工物の厚みの分布である目標厚み分布と、該樹脂層から形成される保護部材が平坦な表面を持つ場合に想定される研削後の該被加工物の厚みの分布である基本厚み分布と、を考慮して、該基本厚み分布が示す該被加工物の厚い領域で厚くなるように決定された保護部材の表面の形状を反転させた形状を持つパッドの表面を該樹脂層の表面に押し当てることにより、該パッドの該表面の形状が転写された表面を持つ保護部材を形成する保護部材形成ステップと、
該保護部材をチャックテーブルの保持面に沿って変形させ、該チャックテーブルの該保持面と該保護部材の該表面との間に隙間ができないように該保護部材の該表面を該チャックテーブルの該保持面で保持する保持ステップと、
該保護部材の該表面が該チャックテーブルの該保持面で保持された状態で、該被加工物の該第1面を研削する研削ステップと、を含むことを特徴とする被加工物の研削方法。
【請求項2】
該基本厚み分布が示す該被加工物の厚い領域で厚くなるように決定された保護部材の表面の形状を反転させた形状とは、該被加工物の外周余剰領域に対応する部分に比べて該被加工物の中央側の領域に対応する部分が該パッドの厚みの方向に沿って外向きに突出した形状である、請求項1に記載の被加工物の研削方法。
【請求項3】
該樹脂層形成ステップでは、熱硬化型の液状の樹脂を該第2面に塗布することにより該樹脂層を形成し、
該保護部材形成ステップでは、加温された該パッドを該樹脂層の該表面に押し当てることにより、該パッドの該表面の形状を該液状の樹脂に転写しながら該液状の樹脂を加温して硬化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被加工物の研削方法。
【請求項4】
該樹脂層形成ステップでは、樹脂製のフィルムを該第2面に貼付することにより該樹脂層を形成し、
該保護部材形成ステップでは、加温された該パッドを該樹脂層の該表面に押し当てることにより、該樹脂製のフィルムを加温して軟化させながら変形させて、該パッドの該表面の形状を該樹脂製のフィルムに転写することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被加工物を研削する際に用いられる被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量なデバイスチップを実現するために、集積回路等のデバイスが表面側に設けられたウェーハを薄く加工する機会が増えている。例えば、ウェーハの表面をチャックテーブルで保持し、研削ホイールと呼ばれる砥石工具とチャックテーブルとをともに回転させ、純水等の液体を供給しながらウェーハの裏面に研削ホイールを押し当てることで、ウェーハを研削して薄くできる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-124690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウェーハのような板状の被加工物を研削すると、チャックテーブルと研削ホイールとの位置の関係によって決まる厚みの分布が被加工物に生じる。そこで、通常は、研削ホイールに対するチャックテーブルの傾き等を変更することで、研削後の被加工物の厚みの分布が調整されている。
【0005】
しかしながら、研削ホイールに対するチャックテーブルの傾き等を変更したとしても、研削後の被加工物の厚みの分布は限られた範囲内で調整されるに過ぎない。そのため、被加工物の厚みの分布をより細やかに調整できる新たな被加工物の研削方法が求められていた。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、目標とする厚みの分布が得られるように被加工物を研削できる被加工物の研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、板状の被加工物の第1面を研削する際に用いられる被加工物の研削方法であって、該被加工物の該第1面とは反対側の第2面に樹脂層を形成する樹脂層形成ステップと、目標とする研削後の該被加工物の厚みの分布である目標厚み分布と、該樹脂層から形成される保護部材が平坦な表面を持つ場合に想定される研削後の該被加工物の厚みの分布である基本厚み分布と、を考慮して、該基本厚み分布が示す該被加工物の厚い領域で厚くなるように決定された保護部材の表面の形状を反転させた形状を持つパッドの表面を該樹脂層の表面に押し当てることにより、該パッドの該表面の形状が転写された表面を持つ保護部材を形成する保護部材形成ステップと、該保護部材をチャックテーブルの保持面に沿って変形させ、該チャックテーブルの該保持面と該保護部材の該表面との間に隙間ができないように該保護部材の該表面を該チャックテーブルの該保持面で保持する保持ステップと、該保護部材の該表面が該チャックテーブルの該保持面で保持された状態で、該被加工物の該第1面を研削する研削ステップと、を含む被加工物の研削方法が提供される。該基本厚み分布が示す該被加工物の厚い領域で厚くなるように決定された保護部材の表面の形状を反転させた形状とは、代表的には、該被加工物の外周余剰領域に対応する部分に比べて該被加工物の中央側の領域に対応する部分が該パッドの厚みの方向に沿って外向きに突出した形状である。
【0008】
本発明の一態様において、該樹脂層形成ステップでは、熱硬化型の液状の樹脂を該第2面に塗布することにより該樹脂層を形成し、該保護部材形成ステップでは、加温された該パッドを該樹脂層の該表面に押し当てることにより、該パッドの該表面の形状を該液状の樹脂に転写しながら該液状の樹脂を加温して硬化させることがある。
【0009】
また、本発明の一態様において、該樹脂層形成ステップでは、樹脂製のフィルムを該第2面に貼付することにより該樹脂層を形成し、該保護部材形成ステップでは、加温された該パッドを該樹脂層の該表面に押し当てることにより、該樹脂製のフィルムを加温して軟化させながら変形させて、該パッドの該表面の形状を該樹脂製のフィルムに転写することがある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様にかかる被加工物の研削方法では、被加工物の第2面に樹脂層を形成した後に、目標とする研削後の被加工物の厚みの分布と、樹脂層から形成される保護部材が所定の形状の表面を持つ場合に想定される研削後の被加工物の厚みの分布と、を考慮して決定された形状を持つパッドの表面を樹脂層の表面に押し当てて、パッドの表面の形状が転写された表面を持つ保護部材を形成する。
【0011】
そのため、この保護部材をチャックテーブルの保持面に沿って変形させるように保護部材の表面をチャックテーブルの保持面で保持すると、保護部材の変形に合わせて被加工物が変形する。これにより、所定の形状の表面を持つ保護部材が使用された場合に目標とする厚みの分布が得られない状況でも、目標とする厚みの分布が得られるように被加工物を研削できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態で研削される被加工物の斜視図である。
図2図2は、第1実施形態で樹脂層が形成された被加工物の断面図である。
図3図3は、第1実施形態で被加工物を研削する際に使用される研削装置の構造を示す側面図である。
図4図4は、第1実施形態で保護部材が平坦な表面を持つ場合に想定される研削後の被加工物の厚みの分布を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態でパッドの形状が転写された保護部材が形成される様子を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態で保護部材の表面がチャックテーブルの保持面によって保持された状態を示す側面図である。
図7図7は、第1実施形態で研削された後の被加工物を示す断面図である。
図8図8は、第2実施形態で樹脂層が形成された被加工物の断面図である。
図9図9は、第2実施形態で被加工物を研削する際に使用される研削装置の構造を示す側面図である。
図10図10は、第2実施形態で保護部材が平坦な表面を持つ場合に想定される研削後の被加工物の厚みの分布を示す断面図である。
図11図11は、第2実施形態でパッドの形状が転写された保護部材が形成される様子を示す断面図である。
図12図12は、第2実施形態で研削された後の被加工物を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる被加工物の研削方法で研削される板状の被加工物11を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体を用いて円盤状に形成されたウェーハであり、概ね平坦な表面(第2面)11aと、表面11aとは反対側の裏面(第1面)11bと、を含む。
【0015】
被加工物11は、その直径の方向で中央側のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域と、に分けられている。デバイス領域の表面11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13によって更に複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。各デバイス15は、それぞれが半田ボール等で構成される複数の突起電極(バンプ)15aを有している。本実施形態では、この被加工物11の裏面11bの全体が研削される。
【0016】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体を用いて形成される円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板を被加工物11として用いることもできる。同様に、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。被加工物11には、デバイス15が形成されていなくても良い。
【0017】
本実施形態にかかる被加工物の研削方法では、まず、被加工物11の表面11aに樹脂層を形成する(樹脂層形成ステップ)。図2は、樹脂層17が形成された被加工物11の断面図である。樹脂層17は、例えば、熱硬化型の液状の樹脂を被加工物11の表面11aに塗布することで形成され、後に被加工物11の表面11aを保護する保護部材へと加工される。
【0018】
熱硬化型の液状の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂等が用いられ、液状の樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート、スプレーコート、又はポッティングが用いられる。また、塗布される液状の樹脂の厚み(つまり、樹脂層17の厚み)は、例えば、100μm~500μm程度となるように調整される。なお、液状の樹脂を適切に塗布して樹脂層17を形成できるようであれば、その他の方法が用いられても良い。
【0019】
被加工物11の表面11aに樹脂層17を形成した後には、この樹脂層17を加工し、研削の際に被加工物11の表面11aを保護する保護部材を形成する(保護部材形成ステップ)。具体的には、目標とする研削後の被加工物11の厚みの分布(目標とする厚みの分布、以下、目標厚み分布)に合わせて樹脂層17の表面17aを加工し、被加工物11の研削に適した形状の表面を持つ保護部材を形成する。
【0020】
ここで、板状の被加工物11の裏面11bを研削する従来の研削方法では、一般に、平坦な表面を持つ保護部材によって被加工物11の表面11aが保護されていた。よって、平坦な表面を持つ保護部材を使用して被加工物11を研削する場合に想定される研削後の被加工物11の厚みの分布(基本となる厚みの分布、以下、基本厚み分布)を考慮して、保護部材の表面の形状(樹脂層17の表面17aの形状)を決定すれば、目標厚み分布を持つ被加工物11を得やすくなると考えられる。
【0021】
そこで、本実施形態にかかる被加工物の研削方法では、基本厚み分布と、目標厚み分布と、の双方を考慮して、保護部材の表面の形状(樹脂層17の表面17aの形状)を決定する。すなわち、保護部材の表面の形状(樹脂層17の表面17aの形状)を決定する際に、従来の一般的な方法で被加工物11を研削する場合に被加工物11に生じる厚みの分布を考慮に入れる。
【0022】
基本厚み分布は、例えば、本実施形態で研削される被加工物11と同じ又は類似する被加工物を、本実施形態で使用される研削装置と同じ又は類似する研削装置と、平坦な表面を持つ保護部材と、を使用し、被加工物11を研削する場合と同じ条件で研削することにより取得される。図3は、本実施形態で被加工物11を研削する際に使用される研削装置2の構造を示す側面図である。なお、図3では、説明の便宜上、一部の要素が断面で表されている。
【0023】
研削装置2は、チャックテーブル(保持テーブル)4を備えている。チャックテーブル4は、モーター等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。チャックテーブル4の下方には、移動機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル4は、この移動機構によって水平方向に移動する。
【0024】
チャックテーブル4の上面の一部は、セラミックス等の材料を用いて多孔質状に形成されており、上述した樹脂層17から形成される保護部材19を介して被加工物11を保持する保持面4aとして機能する。保持面4aは、チャックテーブル4の内部に形成された流路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。吸引源の負圧を保持面4aに作用させることで、保護部材19が保持面4aに吸引され、この保護部材19を介して被加工物11の表面11a側がチャックテーブル4に保持される。
【0025】
チャックテーブル4の上方には、研削ユニット6が配置されている。この研削ユニット6は、昇降機構(不図示)に支持されたスピンドルハウジング(不図示)を備えている。スピンドルハウジングには、回転軸となるスピンドル8が回転できる態様で収容されており、スピンドルハウジングから露出するスピンドル8の下端部には、円盤状のマウント10が固定されている。
【0026】
マウント10の下面には、マウント10と概ね同じ直径の環状の研削ホイール(砥石工具)12が装着されている。研削ホイール12は、アルミニウムやステンレス鋼等の金属で形成された環状のホイール基台14を備えている。ホイール基台14の下面には、ダイヤモンド等の砥粒を樹脂等の結合剤で固定することにより得られる複数の研削砥石16が環状に配列されている。
【0027】
スピンドル8の上端側(基端側)には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、研削ホイール12は、この回転駆動源が発生する力によって、鉛直方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。研削ユニット6の内部又は近傍には、純水等の研削液を被加工物11等に対して供給するためのノズル(不図示)が設けられている。
【0028】
研削装置2を用いて被加工物11の裏面11bを研削する際には、まず、チャックテーブル4の保持面4aに保護部材19の表面19aを接触させて、吸引源の負圧を作用させる。なお、図3では、平坦な表面19aを持つ仮想的な保護部材19が示されている。これにより、被加工物11は、保護部材19を介してチャックテーブル4に保持される。被加工物11をチャックテーブル4で保持した後には、このチャックテーブル4を研削ユニット6の下方に移動させる。
【0029】
そして、図3に示すように、チャックテーブル4と研削ホイール12とをそれぞれ回転させて、被加工物11の裏面11b側に研削液を供給しながらスピンドルハウジング(スピンドル8、研削ホイール12)を下降させる。スピンドルハウジングの下降の速度は、被加工物11の裏面11bに対して研削砥石16が適切な圧力で押し当てられる範囲に調整される。これにより、裏面11bを研削して被加工物11を薄くできる。
【0030】
図4は、保護部材19が平坦な表面19aを持つ場合に想定される研削後の被加工物11の厚みの分布(基厚み分布)を示す断面図である。本実施形態の被加工物11のデバイス領域の表面11a側には、上述のように、複数の突起電極15aが配置されている。一方で、被加工物11の外周余剰領域の表面11a側には、突起電極15aが配置されてない。
【0031】
そのため、被加工物11の裏面11bを研削する際に、被加工物11の表面11a側をチャックテーブル4の保持面4aで保持すると、研削砥石16から加わる下向きの圧力によって、被加工物11の外周余剰領域が下方に沈み込む。そして、その結果、デバイス領域に比べて外周余剰領域が研削され難くなり、図4に示すように、研削後の被加工物11の外周余剰領域は、デバイス領域に比べて厚くなる。
【0032】
このように、保護部材19が平坦な表面19aを持つと仮定した場合には、「被加工物11のデバイス領域に比べて外周余剰領域が厚い」という図4に示すような厚みの分布が得られる。つまり、「被加工物11のデバイス領域に比べて外周余剰領域が厚い」という基厚み分布が得られる。一方で、目標とする研削後の被加工物11の厚みの分布(目標厚み分布)は、任意に設定される。本実施形態では、「研削後の被加工物11の厚みが被加工物11の全体で一定」という目標厚み分布が設定される。
【0033】
保護部材19の表面19aの形状(樹脂層17の表面17aの形状)は、このようにして得られる基本厚み分布と目標厚み分布との双方を考慮して決定される。すなわち、「被加工物11の全体で厚みが一定」という目標厚み分布を達成できるように、「外周余剰領域が研削され難くデバイス領域より厚くなりやすい」という研削の傾向を考慮に入れて、保護部材19の表面19aの形状(樹脂層17の表面17aの形状)を決定する。
【0034】
具体的には、基本厚み分布が示す被加工物11の厚い領域(研削後に被加工物11が相対的に厚くなると想定される領域)で保護部材19が厚くなり、基本厚み分布が示す被加工物11の薄い領域(研削後に被加工物11が相対的に薄くなると想定される領域)で保護部材19が薄くなるように、保護部材19の表面19aの形状(樹脂層17の表面17aの形状)が決定される。
【0035】
そして、決定された保護部材19の表面19aの形状(樹脂層17の表面17aの形状)に合わせて、樹脂層17を実際に加工し、所望の形状の表面19aを持つ保護部材19を形成する。本実施形態では、所望する表面19aの形状を反転させて得られる形状の表面を持つパッドを樹脂層17に押し当て、パッドの表面の形状を樹脂層17の表面17aに転写することで、所望の形状の表面19aを持つ保護部材19を形成する。
【0036】
図5は、パッド22の形状が転写された保護部材19が形成される様子を示す側面図である。パッド22は、例えば、被加工物11よりも僅かに直径の大きい円盤状に形成されており、図5に示すように、樹脂層17の表面17aに押し当てられる表面22aを含んでいる。パッド22の表面22aは、例えば、所望する保護部材19の表面19aの形状を保護部材19の厚みの方向に反転させて得られる形状に構成されている。
【0037】
すなわち、パッド22の表面22aは、被加工物11の外周余剰領域に対応する部分に比べて、被加工物11のデバイス領域に対応する部分がパッド22の厚みの方向に沿って外向きに突出した形状を備えている。このようなパッド22の表面22aを液状の樹脂によって構成される樹脂層17の表面17aに適切な力で押し当てることで、樹脂層17の表面17aには、パッド22の表面22aの形状が転写される。
【0038】
なお、本実施形態では、樹脂層17に使用される液状の樹脂が硬化する程度の温度に予め加温されたパッド22の表面22aを、樹脂層17の表面17aに押し当てる。これにより、パッド22の表面22aの形状を樹脂層17(すなわち、液状の樹脂)に転写しながら、樹脂層17を構成する液状の樹脂を加温して硬化させ、パッド22の表面22aの形状が転写された表面19aを持つ保護部材19を短い時間で形成できる。
【0039】
ただし、液状の樹脂を加温して硬化させる具体的な方法に制限はない。例えば、パッド22の表面22aを樹脂層17の表面17aに押し当てた後に、被加工物11やパッド22を加温して液状の樹脂を硬化させても良い。また、パッド22の表面22aを樹脂層17の表面17aに押し当てる前に液状の樹脂を半硬化させて、パッド22の表面22aを樹脂層17の表面17aに押し当てた後に樹脂層17を完全に硬化させても良い。
【0040】
パッド22の表面22aの形状が転写された表面19aを持つ保護部材19を形成した後には、研削装置2が備えるチャックテーブル4の保持面4aに沿って保護部材19を変形させるように、保護部材19の表面19aをチャックテーブル4の保持面4aで保持する(保持ステップ)。図6は、保護部材19の表面19aがチャックテーブル4の保持面4aによって保持された状態を示す側面図である。なお、図6では、説明の便宜上、一部の要素が断面で表されている。
【0041】
具体的には、まず、チャックテーブル4の保持面4aに保護部材19の表面19aを接触させて、吸引源の負圧を作用させる。このとき、チャックテーブル4の保持面4aと保護部材19の表面19aとの間に隙間ができないように、被加工物11(保護部材19)に対して下向き(保持面4aへと向かう向き)の力を加えて、表面19aの全体を保持面4aに押し当てるようにしても良い。
【0042】
吸引源の負圧が保持面4aに作用し、表面19aの全体が保持面4aに吸引されると、保護部材19は、この保持面4aに沿って変形する。その結果、被加工物11も、保護部材19の変形に合わせて変形する。上述のように、本実施形態では、パッド22の表面22aの形状を保護部材19の表面19aに転写することで、被加工物11のデバイス領域に対応する部分に比べて被加工物11の外周余剰領域に対応する部分が厚い保護部材19を得ている。
【0043】
よって、表面19aの全体を保持面4aに密着させるように保護部材19を変形させると、被加工物11の裏面11bには、保護部材19の厚みの分布に対応した凹凸が発生する。例えば、相対的に保護部材19が厚い被加工物11の外周余剰領域では、相対的に保護部材19が薄い被加工物11のデバイス領域に比べて、被加工物11の裏面11bと保持面4aとの距離が遠くなる。そのため、保護部材19が平坦な表面19aを持つ場合に比べて、被加工物11の外周余剰領域に対応する部分が研削されやすくなる。
【0044】
保護部材19の表面19aをチャックテーブル4の保持面4aで保持した後には、その状態(つまり、保護部材19の表面19aがチャックテーブル4の保持面4aによって保持された状態)を保ったまま、被加工物11の裏面11bを研削する(研削ステップ)。図7は、研削された後の被加工物11を示す断面図である。なお、図7では、研削された後にチャックテーブル4から取り外された状態の被加工物11が示されている。
【0045】
具体的には、保護部材19を介して被加工物11を保持したチャックテーブル4を研削ユニット6の下方に移動させるとともに、チャックテーブル4と研削ホイール12とをそれぞれ回転させて、被加工物11の裏面11b側に研削液を供給しながらスピンドルハウジング(スピンドル8、研削ホイール12)を下降させる。スピンドルハウジングの下降の速度は、被加工物11の裏面11bに対して研削砥石16が適切な圧力で押し当てられる範囲に調整される。これにより、裏面11bを研削して被加工物11を薄くできる。
【0046】
上述のように、本実施形態では、パッド22の表面22aの形状が転写された表面19aを持つ保護部材19を保持面4aに沿って変形させることで、平坦な表面19aを持つ保護部材19が使用される場合に比べて、被加工物11の外周余剰領域に対応する部分が研削されやすくなっている。これにより、「被加工物11の全体で厚みが一定」という目標厚み分布を持つ、図7に示すような被加工物11が得られる。
【0047】
なお、本実施形態では、実際に研削される被加工物11と同じ又は類似する被加工物11を、本実施形態で使用される研削装置と同じ又は類似する研削装置と、平坦な表面を持つ保護部材と、を使用し、被加工物11を研削する場合と同じ条件で研削することにより基本厚み分布が取得されることを説明したが、基本厚み分布は、他の方法により取得されても良い。例えば、計算機を用いるシミュレーションや、オペレーターの経験等から、基本厚み分布を算出することもできる。
【0048】
また、本実施形態では、熱硬化型の液状の樹脂を被加工物11の表面(第2面)11aに塗布することにより樹脂層17を形成しているが、他の方法で樹脂層17を形成しても良い。例えば、樹脂製のフィルムを被加工物11の表面11aに貼付することにより樹脂層17を形成することもできる。
【0049】
この場合には、樹脂製のフィルムとして、例えば、ポリオレフィン等を用いて形成され、100μm~500μm程度の厚みを持つものが用いられる。また、この場合には、樹脂層17を構成する樹脂製のフィルムを軟化させることができる程度に加温されたパッド22を樹脂層17の表面17aに押し当てることにより、樹脂層17(つまり、樹脂製のフィルム)を加温して軟化させながら変形させて、パッド22の表面22aの形状を樹脂層17に転写すると良い。
【0050】
以上のように、本実施形態にかかる被加工物の研削方法では、被加工物11の表面(第2面)11aに樹脂層17を形成した後に、目標とする研削後の被加工物11の厚みの分布と、樹脂層17から形成される保護部材19が平坦な表面19aを持つ場合に想定される研削後の被加工物11の厚みの分布と、を考慮して決定された形状を持つパッド22の表面22aを樹脂層17の表面17aに押し当てて、パッド22の表面22aの形状が転写された表面19aを持つ保護部材19を形成する。
【0051】
そのため、この保護部材19をチャックテーブル4の保持面4aに沿って変形させるように保護部材19の表面19aをチャックテーブル4の保持面4aで保持すると、保護部材19の変形に合わせて被加工物11が変形する。これにより、平坦な表面19aを持つ保護部材19が使用された場合に目標とする厚みの分布が得られない状況でも、目標とする厚みの分布が得られるように被加工物11を研削できるようになる。
【0052】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の被加工物11を異なる態様で研削する場合について説明する。なお、本実施形態にかかる被加工物の研削方法と、第1実施形態にかかる被加工物の研削方法とでは、共通する部分も多い。よって、以下では、主に相違点について説明する。
【0053】
図8は、本実施形態で樹脂層27が形成された被加工物21の断面図である。図8に示すように、本実施形態にかかる被加工物の研削方法で研削される板状の被加工物21の基本的な構造は、第1実施形態にかかる被加工物11の基本的な構造と同じである。すなわち、被加工物21は、例えば、シリコン等の半導体を用いて円盤状に形成されたウェーハであり、概ね平坦な表面(第2面)21aと、表面21aとは反対側の裏面(第1面)21bと、を含む。
【0054】
被加工物21は、その直径の方向で中央側のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域と、に分けられている。デバイス領域の表面11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)23によって更に複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス25が形成されている。なお、本実施形態の被加工物21では、各デバイス25に突起電極(バンプ)が設けられていない。本実施形態では、この被加工物21の裏面21bの一部(デバイス領域に相当する部分)のみが研削される。
【0055】
なお、本実施形態でも、被加工物21の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板を被加工物21として用いることもできる。同様に、デバイス25の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。被加工物21には、デバイス25が形成されていなくても良い。
【0056】
本実施形態にかかる被加工物の研削方法では、まず、被加工物21の表面21aに樹脂層27を形成する(樹脂層形成ステップ)。樹脂層27は、例えば、被加工物21の表面21aに樹脂製のフィルムを貼付することで形成され、後に被加工物21の表面21aを保護する保護部材へと加工される。樹脂製のフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン等の樹脂を用いて形成され、100μm~500μm程度の厚みを持つものが用いられる。
【0057】
被加工物21の表面21aに樹脂層27を形成した後には、この樹脂層27を加工し、研削の際に被加工物21の表面21aを保護する保護部材を形成する(保護部材形成ステップ)。本実施形態でも、基本厚み分布と、目標厚み分布と、の双方を考慮して決定される保護部材の表面の形状(樹脂層27の表面27aの形状)に合わせて、樹脂層27を加工する。
【0058】
基本厚み分布は、例えば、本実施形態で研削される被加工物21と同じ又は類似する被加工物を、本実施形態で使用される研削装置と同じ又は類似する研削装置と、平坦な表面を持つ保護部材と、を使用し、被加工物21を研削する場合と同じ条件で研削することにより取得される。図9は、本実施形態で被加工物21を研削する際に使用される研削装置32の構造を示す側面図である。なお、図9では、説明の便宜上、一部の要素が断面で表されている。
【0059】
研削装置32の基本的な構造は、研削装置2と同じである。すなわち、研削装置32は、上面の一部が保持面34aとして機能するチャックテーブル(保持テーブル)34を備えている。チャックテーブル34の上方には、研削ユニット36が配置されている。研削ユニット36は、昇降機構(不図示)に支持されたスピンドルハウジング(不図示)を備えている。
【0060】
スピンドルハウジングには、回転軸となるスピンドル38が回転できる態様で収容されており、スピンドルハウジングから露出するスピンドル38の下端部には、被加工物21の直径よりも小さい直径を持つ円盤状のマウント40が固定されている。マウント40の下面には、マウント40と概ね同じ直径の環状の研削ホイール(砥石工具)42が装着されている。
【0061】
つまり、研削ホイール42の直径は、被加工物21の直径よりも小さい。研削ホイール42は、アルミニウムやステンレス鋼等の金属で形成された環状のホイール基台44を備えている。ホイール基台44の下面には、ダイヤモンド等の砥粒を樹脂等の結合剤で固定することにより得られる複数の研削砥石46が環状に配列されている。
【0062】
研削装置32を用いて被加工物21の裏面21bを研削する際には、まず、上述した樹脂層27から形成される保護部材29の表面29aをチャックテーブル34の保持面34aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。なお、図9では、平坦な表面29aを持つ仮想的な保護部材29が示されている。これにより、被加工物21は、保護部材29を介してチャックテーブル34に保持される。被加工物21をチャックテーブル34で保持した後には、このチャックテーブル34を研削ユニット36の下方に移動させる。
【0063】
具体的には、被加工物21のデバイス領域に相当する部分の上方に研削ホイール42が位置づけられるようにチャックテーブル34を移動させる。そして、図9に示すように、チャックテーブル34と研削ホイール42とをそれぞれ回転させて、被加工物21の裏面21b側に研削液を供給しながらスピンドルハウジング(スピンドル38、研削ホイール42)を下降させる。
【0064】
図10は、保護部材29が平坦な表面29aを持つ場合に想定される研削後の被加工物21の厚みの分布(基厚み分布)を示す断面図である。図10に示すように、本実施形態では、被加工物21の裏面21bの一部(デバイス領域に相当する部分)のみが研削され、裏面21bの他の一部(外周余剰領域に相当する部分)は研削されない。
【0065】
そのため、裏面21bの被研削領域に研削砥石46を満遍なく接触させて、被研削領域の全体を均等に研削することが難しい。例えば、被研削領域の中央側の部分と外側の部分とが研削されやすくなり、被研削領域には、図4に示すような同心円状のパターンを持つ凹凸が発生してしまう。
【0066】
このように、保護部材29が平坦な表面29aを持つと仮定した場合には、図10に示すような「被研削領域の同心円状のパターンを持つ凹凸」を表す厚みの分布が得られる。一方で、目標とする研削後の被加工物21の厚みの分布(目標厚み分布)は、任意に設定される。本実施形態では、「研削後の被加工物21の厚みが被研削領域の全体で一定」という目標厚み分布が設定される。
【0067】
保護部材29の表面29aの形状(樹脂層27の表面27aの形状)は、このようにして得られる基本厚み分布と目標厚み分布との双方を考慮して決定される。具体的には、基本厚み分布が示す被加工物21の厚い領域(研削後に被加工物21が相対的に厚くなると想定される領域)で保護部材29が厚くなり、基本厚み分布が示す被加工物21の薄い領域(研削後に被加工物21が相対的に薄くなると想定される領域)で保護部材29が薄くなるように、保護部材29の表面29aの形状(樹脂層27の表面27aの形状)が決定される。
【0068】
そして、決定された保護部材29の表面29aの形状(樹脂層27の表面27aの形状)に合わせて、樹脂層27を実際に加工し、所望の形状の表面29aを持つ保護部材29を形成する。本実施形態でも、所望する表面29aの形状を反転させて得られる形状の表面を持つパッドを樹脂層27に押し当て、パッドの表面の形状を樹脂層27の表面27aに転写することで、所望の形状の表面29aを持つ保護部材29を形成する。
【0069】
図11は、パッド52の形状が転写された保護部材29が形成される様子を示す断面図である。パッド52は、例えば、被加工物21よりも僅かに直径の大きい円盤状に形成されており、図11に示すように、樹脂層27の表面27aに押し当てられる表面52aを含んでいる。パッド52の表面52aは、例えば、所望する保護部材29の表面29aの形状を保護部材29の厚みの方向に反転させて得られる形状に構成されている。
【0070】
例えば、樹脂層27を構成する樹脂製のフィルムを軟化させることができる程度に加温されたパッド22を樹脂層27の表面27aに押し当てることにより、樹脂層27(つまり、樹脂製のフィルム)を加温して軟化させながら変形させて、パッド22の表面22aの形状を樹脂層27に転写することができる。
【0071】
ただし、樹脂製のフィルムを軟化させてパッド22の表面22aの形状を転写する具体的な方法に制限はない。例えば、パッド52の表面52aを樹脂層27の表面27aに押し当てた状態で(押し当てた後に)、被加工物21やパッド52を加温して樹脂製のフィルムを軟化させても良い。また、パッド52の表面52aを樹脂層27の表面27aに押し当てる前に樹脂製のフィルムを軟化させても良い。
【0072】
パッド52の表面52aの形状が転写された表面29aを持つ保護部材29を形成した後には、研削装置32が備えるチャックテーブル34の保持面34aに沿って保護部材29を変形させるように、保護部材29の表面29aをチャックテーブル34の保持面34aで保持する(保持ステップ)。具体的な手順は、第1実施形態と同じで良い。
【0073】
吸引源の負圧が保持面34aに作用し、表面29aの全体が保持面34aに吸引されると、保護部材29は、この保持面34aに沿って変形する。その結果、被加工物21も、保護部材29の変形に合わせて変形する。具体的には、被加工物21の裏面21bに、保護部材29の厚みの分布に対応した凹凸が発生する。
【0074】
保護部材29の表面29aをチャックテーブル34の保持面34aで保持した後には、その状態(つまり、保護部材29の表面29aがチャックテーブル34の保持面34aによって保持された状態)を保ったまま、被加工物21の裏面21bを研削する(研削ステップ)。図12は、研削された後の被加工物21を示す断面図である。なお、図12では、研削された後にチャックテーブル34から取り外された状態の被加工物21が示されている。
【0075】
例えば、被加工物21のデバイス領域に相当する部分の上方に研削ホイール42が位置づけられるようにチャックテーブル34を移動させるとともに、チャックテーブル34と研削ホイール42とをそれぞれ回転させて、被加工物21の裏面21b側に研削液を供給しながらスピンドルハウジング(スピンドル38、研削ホイール42)を下降させる。
【0076】
スピンドルハウジングの下降の速度は、被加工物21の裏面21bに対して研削砥石46が適切な圧力で押し当てられる範囲に調整される。これにより、被加工物21のデバイス領域に相当する部分の裏面11bを研削して、被加工物11のデバイス領域に相当する部分を薄くできる。
【0077】
本実施形態でも、パッド52の表面52aの形状が転写された表面29aを持つ保護部材29を保持面34aに沿って変形させることで、被加工物21を適切に変形させているので、「研削後の被加工物21の厚みが被研削領域の全体で一定」という目標厚み分布を持つ、図12に示すような被加工物21が得られる。
【0078】
なお、本実施形態でも、計算機を用いるシミュレーションや、オペレーターの経験等から、基本厚み分布を算出することができる。また、第1実施形態のように、熱硬化型の液状の樹脂を被加工物21の表面(第2面)21aに塗布することにより樹脂層27を形成しても良い。
【0079】
以上のように、本実施形態にかかる被加工物の研削方法でも、被加工物21の表面(第2面)21aに樹脂層27を形成した後に、目標とする研削後の被加工物21の厚みの分布と、樹脂層27から形成される保護部材29が平坦な表面29aを持つ場合に想定される研削後の被加工物21の厚みの分布と、を考慮して決定された形状を持つパッド52の表面52aを樹脂層27の表面27aに押し当てて、パッド52の表面52aの形状が転写された表面29aを持つ保護部材29を形成する。
【0080】
そのため、この保護部材29をチャックテーブル34の保持面34aに沿って変形させるように保護部材29の表面29aをチャックテーブル34の保持面34aで保持すると、保護部材29の変形に合わせて被加工物21が変形する。これにより、平坦な表面29aを持つ保護部材29が使用された場合に目標とする厚みの分布が得られない状況でも、目標とする厚みの分布が得られるように被加工物21を研削できるようになる。
【0081】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態で使用される熱硬化型の液状の樹脂の代わりに、光硬化型の液状の樹脂等を使用することもできる。同様に、上述した実施形態で使用される樹脂製のフィルムの代わりに、半硬化した状態のフィルム(完全に硬化していないフィルム)を用いることもできる。
【0082】
また、上述した実施形態では、被加工物よりも僅かに直径の大きい円盤状のパッドが使用されているが、このパッドは、少なくとも、樹脂層の表面に対応する形状及び大きさに構成されていれば良い。例えば、矩形状の表面(第2面)を持つ被加工物に矩形状の表面を持つ樹脂層を形成して被加工物の裏面(第1面)を研削する場合には、樹脂層の表面より僅かに大きい矩形状の表面を持つパッドを使用することもできる。
【0083】
また、上述した実施形態では、保護部材が平坦な表面を持つ場合に想定される研削後の被加工物の厚みの分布に基づいて、保護部材の表面の形状(樹脂層の表面の形状)を決定しているが、保護部材が所定の形状(任意の形状)の表面を持つ場合に想定される研削後の被加工物の厚みの分布に基づいて、同様に、保護部材の表面の形状を決定することもできる。なお、この場合には、保護部材の表面の形状を決定する際に、所定の形状の表面を持つ保護部材の厚みの分布を併せて考慮することが望ましい。
【0084】
その他、上述した実施形態及び変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0085】
11 :被加工物
11a :表面(第2面)
11b :裏面(第1面)
13 :分割予定ライン(ストリート)
15 :デバイス
15a :突起電極
17 :樹脂層
17a :表面
19 :保護部材
19a :表面
21 :被加工物
21a :表面(第2面)
21b :裏面(第1面)
23 :分割予定ライン(ストリート)
25 :デバイス
27 :樹脂層
27a :表面
29 :保護部材
29a :表面
2 :研削装置
4 :チャックテーブル(保持テーブル)
4a :保持面
6 :研削ユニット
8 :スピンドル
10 :マウント
12 :研削ホイール
14 :ホイール基台
16 :研削砥石
22 :パッド
22a :表面
32 :研削装置
34 :チャックテーブル(保持テーブル)
34a :保持面
36 :研削ユニット
38 :スピンドル
40 :マウント
42 :研削ホイール
44 :ホイール基台
46 :研削砥石
52 :パッド
52a :表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12