(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】キャリア板の除去方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H01L21/78 P
(21)【出願番号】P 2020124250
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 孝寿
(72)【発明者】
【氏名】大室 喜洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220303(JP,A)
【文献】特開平06-268051(JP,A)
【文献】特表2013-503366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア板の表面に仮接着層を介して設けられたワークピースから該キャリア板を除去するキャリア板の除去方法であって、
該キャリア板の該表面とは反対の裏面側から該キャリア板の外周縁に沿って該キャリア板の外周部を除去するように該キャリア板を加工し、該キャリア板に比べて該ワークピースが側方に突出した段差部を形成する段差部形成工程と、
該段差部形成工程を実施した後、該キャリア板をキャリア板保持ユニットで保持するキャリア板保持工程と、
該段差部形成工程を実施した後、該キャリア板側から該段差部に
外力付与部材を接触させて力を加え、該ワークピースを該キャリア板から離れる方向に移動させることで、該ワークピースから該キャリア板を除去する除去工程と、を含むことを特徴とするキャリア板の除去方法。
【請求項2】
該除去工程では、該段差部に加える該力によって該ワークピースを該キャリア板から離れる方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項3】
該除去工程を実施する前に、該ワークピースをワークピース保持ユニットで保持するワークピース保持工程を更に含むことを特徴とする請求項2に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項4】
該除去工程では、該キャリア板側から該段差部に
該外力付与部材を接触させた状態で、該ワークピース保持ユニットと該外力付与部材とに対して該キャリア板保持ユニットを相対的に移動させることにより該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することを特徴とする請求項3に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項5】
該除去工程では、該ワークピース保持ユニットと該外力付与部材とに対して該キャリア板保持ユニットを相対的に移動させる前に、該キャリア板の外周部を該ワークピースから離れる方向に湾曲させて、該ワークピースから該キャリア板を除去する際の起点となる起点領域を該仮接着層に形成することを特徴とす
る請求項4に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項6】
該除去工程では、該段差部に加える該力によって該ワークピースの外周部を該キャリア板から離れる方向に湾曲させて、該ワークピースから該キャリア板を除去する際の起点となる起点領域を該仮接着層に形成した後に、該ワークピースを該キャリア板から離れる方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項7】
該除去工程を実施する前に、該ワークピースをワークピース保持ユニットで保持するワークピース保持工程を更に含むことを特徴とする請求項6に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項8】
該除去工程では、該ワークピースと該キャリア板との間に流体を吹き付けた後に、又は該ワークピースと該キャリア板との間に流体を吹き付けながら、該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のキャリア板の除去方法。
【請求項9】
該除去工程では、該ワークピースと該キャリア板とを液体中に沈めた状態で、該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することを特徴とする請求項1から請求項8
のいずれかに記載のキャリア板の除去方法。
【請求項10】
該除去工程では、該ワークピースと該キャリア板とを該液体中に沈めた状態で、振動が付与された
該外力付与部材を該段差部に押し当てることにより該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することを特徴とする請求項9に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項11】
該除去工程では、該ワークピースと該キャリア板とを該液体に沈めた状態で、該液体に振動を付与しながら該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することを特徴とする請求項9に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項12】
該液体には、界面活性剤を含ませたことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載のキャリア板の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮接着層を介してキャリア板の表面に設けられたワークピースからキャリア板を除去するキャリア板の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料でなるウェーハの表面を分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインでウェーハを分割することにより得られる。
【0003】
上述のような方法で得られたデバイスチップは、例えば、CSP(Chip Size Package)用のマザー基板に固定され、ワイヤボンディング等の方法でこのマザー基板の端子等に電気的に接続された後に、モールド樹脂で封止される。このように、モールド樹脂によってデバイスチップを封止してパッケージデバイスを形成することで、衝撃、光、熱、水等の外的な要因からデバイスチップを保護できるようになる。
【0004】
近年では、ウェーハレベルの再配線技術を用いてデバイスチップの領域外にパッケージ端子を形成するFOWLP(Fan-Out Wafer Level Package)と呼ばれるパッケージ技術が採用され始めている(例えば、特許文献1参照)。また、ウェーハよりサイズの大きいパネル(代表的には、液晶パネルの製造に用いられるガラス基板)のレベルでパッケージデバイスを一括して製造するFOPLP(Fan-Out Panel Level Package)と呼ばれるパッケージ技術も提案されている。
【0005】
FOPLPでは、例えば、仮の基板となるキャリア板の表面に仮接着層を介して配線層(RDL:Redistribution Layer)を形成し、この配線層にデバイスチップを接合する。次に、デバイスチップをモールド樹脂で封止して、パッケージパネルを得る。その後、パッケージパネルを研削等の方法によって薄くした上で、このパッケージパネルを分割することにより、パッケージデバイスが完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したFOPLPでは、例えば、パッケージパネルをパッケージデバイスへと分割した後に、このパッケージデバイスからキャリア板が除去される。具体的には、キャリア板から各パッケージデバイスをピックアップする。ところが、パッケージデバイスのサイズが小さいと、このパッケージデバイスをキャリア板からピックアップするのは難しい。
【0008】
一方で、パッケージパネルをパッケージデバイスへと分割する前に、パッケージパネルからキャリア板を剥離し、除去することも考えられる。しかしながら、仮接着層の接着力はある程度に強いので、パッケージパネルやキャリア板を損傷させることなくキャリア板をパッケージパネルから剥離するのが難しかった。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パッケージパネル等のワークピースからキャリア板を容易に除去できるキャリア板の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、キャリア板の表面に仮接着層を介して設けられたワークピースから該キャリア板を除去するキャリア板の除去方法であって、該キャリア板の該表面とは反対の裏面側から該キャリア板の外周縁に沿って該キャリア板の外周部を除去するように該キャリア板を加工し、該キャリア板に比べて該ワークピースが側方に突出した段差部を形成する段差部形成工程と、該段差部形成工程を実施した後、該キャリア板をキャリア板保持ユニットで保持するキャリア板保持工程と、該段差部形成工程を実施した後、該キャリア板側から該段差部に外力付与部材を接触させて力を加え、該ワークピースを該キャリア板から離れる方向に移動させることで、該ワークピースから該キャリア板を除去する除去工程と、を含むキャリア板の除去方法が提供される。
【0011】
上述した本発明の一態様において、該除去工程では、該段差部に加える該力によって該ワークピースを該キャリア板から離れる方向に移動させることがある。該除去工程を実施する前に、該ワークピースをワークピース保持ユニットで保持するワークピース保持工程を更に含んでも良い。
【0012】
また、該除去工程では、該キャリア板側から該段差部に該外力付与部材を接触させた状態で、該ワークピース保持ユニットと該外力付与部材とに対して該キャリア板保持ユニットを相対的に移動させることにより該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することが好ましい。
【0013】
また、該除去工程では、該ワークピース保持ユニットと該外力付与部材とに対して該キャリア板保持ユニットを相対的に移動させる前に、該キャリア板の外周部を該ワークピースから離れる方向に湾曲させて、該ワークピースから該キャリア板を除去する際の起点となる起点領域を該仮接着層に形成することが好ましい。
【0014】
また、上述した本発明の一態様において、該除去工程では、該段差部に加える該力によって該ワークピースの外周部を該キャリア板から離れる方向に湾曲させて、該ワークピースから該キャリア板を除去する際の起点となる起点領域を該仮接着層に形成した後に、該ワークピースを該キャリア板から離れる方向に移動させることがある。該除去工程を実施する前に、該ワークピースをワークピース保持ユニットで保持するワークピース保持工程を更に含んでも良い。
【0015】
また、上述した本発明の一態様において、該除去工程では、該ワークピースと該キャリア板との間に流体を吹き付けた後に、又は該ワークピースと該キャリア板との間に流体を吹き付けながら、該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することが好ましい。
【0016】
該除去工程では、該ワークピースと該キャリア板とを液体中に沈めた状態で、該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することが好ましい。また、該除去工程では、該ワークピースと該キャリア板とを該液体中に沈めた状態で、振動が付与された該外力付与部材を該段差部に押し当てることにより該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することが好ましい。
【0017】
また、該除去工程では、該ワークピースと該キャリア板とを該液体に沈めた状態で、該液体に振動を付与しながら該段差部に該力を加え、該ワークピースから該キャリア板を除去することが好ましい。該液体には、界面活性剤を含ませても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様にかかるキャリア板の除去方法では、キャリア板の裏面側からキャリア板の外周縁に沿ってキャリア板の外周部を除去するようにキャリア板を加工し、キャリア板に比べてワークピースが側方に突出した段差部を形成するので、キャリア板側から段差部に力を加えることにより、ワークピースからキャリア板を容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(A)は、キャリア板とワークピースとを含む複合基板の構成例を示す断面図であり、
図1(B)は、段差部形成工程で複合基板のワークピース側が保持される様子を示す断面図である。
【
図2】
図2(A)は、段差部形成工程で複合基板に段差部が形成される様子を示す断面図であり、
図2(B)は、複合基板の外周部の全体に段差部が形成された状態を示す断面図である。
【
図3】
図3(A)は、キャリア板保持工程について示す断面図であり、
図3(B)は、除去工程について示す断面図であり、
図3(C)は、ワークピースからキャリア板が除去された状態を示す断面図である。
【
図4】
図4(A)は、第1変形例の除去工程について示す断面図であり、
図4(B)は、第2変形例の除去工程について示す断面図である。
【
図5】
図5(A)は、第3変形例のキャリア板保持工程及びワークピース保持工程について示す断面図であり、
図5(B)は、第3変形例の除去工程において段差部に外力付与部材を接触させた状態を示す断面図であり、
図5(C)は、第3変形例の除去工程において外力付与部材とワークピース保持ユニットとに対してキャリア板保持ユニットを相対的に上方に移動させる様子を示す断面図である。
【
図6】
図6(A)は、第4変形例の除去工程において段差部に外力付与部材を接触させた状態を示す断面図であり、
図6(B)は、第4変形例の除去工程においてキャリア板からワークピースを剥離する際の起点となる領域が仮接着層に形成される様子を示す断面図であり、
図6(C)は、第4変形例の除去工程においてキャリア板からワークピースが剥離される様子を示す断面図である。
【
図7】
図7(A)は、第5変形例のワークピース保持工程について示す断面図であり、
図7(B)は、第5変形例の除去工程においてキャリア板からワークピースを剥離する際の起点となる領域が仮接着層に形成される様子を示す断面図であり、
図7(C)は、第5変形例の除去工程においてキャリア板からワークピースが剥離される様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の一態様にかかる実施形態について説明する。本実施形態にかかるキャリア板の除去方法は、キャリア板の表面に仮接着層を介して設けられたワークピースからキャリア板を除去する際に用いられ、段差部形成工程(
図1(B)、
図2(A)及び
図2(B)参照)、キャリア板保持工程(
図3(A)参照)及び除去工程(
図3(B)及び
図3(C)参照)を含む。
【0021】
段差部形成工程では、ワークピースが設けられたキャリア板の表面とは反対の裏面側からキャリア板の外周縁に沿ってキャリア板の外周部に切削ブレードを切り込ませ、このキャリア板の外周部を除去することによって、ワークピースとキャリア板とによる段差部を形成する。キャリア板保持工程では、ワークピースの上方にキャリア板が位置付けられた状態で、このキャリア板を上方から保持する。
【0022】
除去工程では、外力付与部材(プッシュ部材)で段差部のワークピース側に下向きの力を加えてワークピースをキャリア板から離れる方向に移動させることで、ワークピースからキャリア板を除去する。以下、本実施形態にかかるキャリア板の除去方法について詳述する。
【0023】
図1(A)は、本実施形態にかかるキャリア板の除去方法で使用される複合基板1の構成例を示す断面図である。複合基板1は、例えば、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の絶縁体材料で形成されたキャリア板3を含んでいる。このキャリア板3は、例えば、概ね平坦な第1面(表面)3aと、第1面3aとは反対側の第2面(裏面)3bとを有し、第1面3a側又は第2面3b側から見た平面視で矩形状に構成されている。キャリア板3の厚みは、例えば、2mm以下、代表的には、1.1mmである。
【0024】
なお、本実施形態では、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の絶縁体材料でなるキャリア板3を用いているが、キャリア板3の材質、形状、構造、大きさ等に特段の制限はない。例えば、半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる板等をキャリア板3として用いることもできる。円盤状の半導体ウェーハ等をキャリア板3としても良い。
【0025】
キャリア板3の第1面3a側には、仮接着層5を介してワークピース7が設けられている。仮接着層5は、例えば、金属膜や絶縁体膜等を重ねることによって第1面3aの概ね全体に形成され、キャリア板3とワークピース7とを接着する機能を持つ。また、仮接着層5は、接着剤として機能する樹脂膜等によって構成されることもある。
【0026】
仮接着層5の厚みは、例えば、20μm以下、代表的には、0.6μm程度である。後述する除去工程でワークピース7からキャリア板3を剥離し、除去する際には、この仮接着層5が、キャリア板3側に密着した第1部分5a(
図3(C)参照)と、ワークピース7側に密着した第2部分5b(
図3(C)参照)とに分離される。
【0027】
ワークピース7は、例えば、パッケージパネルやパッケージウェーハ等とも呼ばれ、仮接着層5に接する配線層(RDL)(不図示)と、配線層に接合された複数のデバイスチップ9と、各デバイスチップ9を封止するモールド樹脂層11とを含む。このワークピース7は、例えば、平面視でキャリア板3と概ね同じ大きさ、形状に構成されている。また、ワークピース7の厚みは、例えば、1.5mm以下、代表的には、0.6mmである。
【0028】
なお、ワークピース7の第1面(表面)7a側は、研削等の方法で加工されても良い。また、ワークピース7内で隣接するデバイスチップ9の間の領域には、分割予定ライン(切断予定ライン)が設定される。任意の分割予定ラインに沿ってワークピース7を切断することで、ワークピース7は、それぞれ1又は複数のデバイスチップ9を含む複数のワークピース片に分割される。
【0029】
全ての分割予定ラインに沿ってワークピース7(又はワークピース片)を切断すれば、各デバイスチップ9に対応する複数のパッケージデバイスが得られる。ただし、ワークピース7の材質、形状、構造、大きさ等に特段の制限はない。例えば、ワークピース7は、主に配線層で構成され、デバイスチップ9やモールド樹脂層11等を含まないこともある。
【0030】
本実施形態にかかるキャリア板の除去方法では、まず、上述した複合基板1の外周部に段差部を形成する段差部形成工程を行う。具体的には、まず、複合基板1のワークピース7側を保持してキャリア板3側を上方に露出させる。
図1(B)は、段差部形成工程で複合基板1のワークピース7側が保持される様子を示す断面図である。なお、
図1(B)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0031】
この段差部形成工程は、
図1(B)等に示す切削装置2を用いて行われる。切削装置2は、複合基板1を保持するためのチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属材料でなる円筒状の枠体6と、多孔質材料でなり枠体6の上部に配置される保持板8とを含む。
【0032】
保持板8の上面は、複合基板1のワークピース7側を吸引し、保持するための保持面8aとなっている。この保持板8の下面側は、枠体6の内部に設けられた流路6aやバルブ10等を介して吸引源12に接続されている。そのため、バルブ10を開けば、吸引源12の負圧を保持面8aに作用させることができる。
【0033】
チャックテーブル4(枠体6)は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、この回転駆動源が生じる力によって、上述した保持面8aに対して概ね垂直な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル4(枠体6)は、加工送り機構(不図示)によって支持されており、上述した保持面8aに対して概ね平行な加工送り方向に移動する。
【0034】
複合基板1のワークピース7側を保持してキャリア板3側を上方に露出させる際には、
図1(B)に示すように、例えば、ワークピース7の第1面7aをチャックテーブル4の保持面8aに接触させる。そして、バルブ10を開いて、吸引源12の負圧を保持面8aに作用させる。これにより、複合基板1のワークピース7側がチャックテーブル4によって保持され、キャリア板3側が上方に露出する。
【0035】
複合基板1のワークピース7側を保持してキャリア板3側を上方に露出させた後には、このキャリア板3の外周縁に沿ってキャリア板3を加工し、複合基板1に段差部を形成する。
図2(A)は、段差部形成工程で複合基板1に段差部1aが形成される様子を示す断面図である。なお、
図2(A)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0036】
図2(A)に示すように、チャックテーブル4の上方には、切削ユニット14が配置されている。切削ユニット14は、保持面8aに対して概ね平行な回転軸となるスピンドル16を備えている。スピンドル16の一端側には、結合材に砥粒が分散されてなる環状の切削ブレード18が装着されている。
【0037】
スピンドル16の他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル16の一端側に装着された切削ブレード18は、この回転駆動源が生じる力によって回転する。切削ユニット14は、例えば、昇降機構(不図示)と割り出し送り機構(不図示)とによって支持されており、保持面8aに対して概ね垂直な鉛直方向と、鉛直方向及び加工送り方向に対して概ね垂直な割り出し送り方向とに移動する。
【0038】
複合基板1に段差部1aを形成する際には、まず、複合基板1を保持したチャックテーブル4を回転させて、加工(除去)の対象となるキャリア板3の外周縁の一部(平面視で矩形の一辺に相当する部分)を、加工送り方向に対して概ね平行にする。次に、チャックテーブル4と切削ユニット14とを相対的に移動させて、上述した外周縁の一部の延長線上方に切削ブレード18を位置付ける。
【0039】
また、切削ブレード18の下端を、キャリア板3の第1面3aより低く、仮接着層5とワークピース7との界面より僅かに高い位置に位置付ける。その後、切削ブレード18を回転させながら、チャックテーブル4を加工送り方向に移動させる。これにより、
図2(A)に示すように、第2面3b側からキャリア板3の外周縁の一部に沿って切削ブレード18を切り込ませ、この外周縁の一部を含むキャリア板3の外周部の一部を除去できる。
【0040】
本実施形態では、上述のように、キャリア板3の第1面3aに達する深さまで切削ブレード18を切り込ませている。そのため、複合基板1の外周部の一部には、加工後のキャリア板3の外周部3cに比べてワークピースの外周部7bが側方(第1面3a又は第2面3bに対して平行な方向において外向き)に突出した階段状の段差部1aが形成される。
【0041】
キャリア板3(外周部)と切削ブレード18との重なりの幅(すなわち、キャリア板3の除去される外周部の幅、又はワークピース7の外周部7bの突出量)は、力の付与に適した大きさの段差部1aが得られる範囲に設定される。現実的な切削ブレード18の幅等を考慮すると、この重なりの幅は、例えば、0.2mm以上5mm以下に設定されることが好ましい。
【0042】
上述のような手順でキャリア板3の外周部の一部を除去して複合基板1の外周部の一部に段差部1aを形成した後には、同様の手順でキャリア板3の外周部の他の一部を除去して複合基板1の外周部の他の一部にも段差部1aを形成する。キャリア板3の外周部の全体が除去され、複合基板1の外周部の全体に段差部1aが形成されると、段差部形成工程は終了する。
図2(B)は、複合基板1の外周部の全体に段差部1aが形成された状態を示す断面図である。
【0043】
なお、本実施形態では、
図2(B)に示すように、複合基板1の外周部の全体に段差部1aを形成しているが、段差部1aは、少なくとも複合基板1の外周部の任意の一部に形成されていれば良い。この場合、段差部1aの形状(キャリア板3側から見た形状)等も任意に設定され得る。また、複合基板を構成するキャリア板やワークピースが平面視で円形(すなわち、円盤状)の場合には、例えば、切削ブレード18をキャリア板の外周部に切り込ませながらチャックテーブル4を回転させることで、複合基板に段差部を形成できる。もちろん、この場合にも、キャリア板の外周部の任意の一部だけを切り欠くようにして段差部を形成しても良い。
【0044】
段差部形成工程の後には、複合基板1のキャリア板3側を保持するキャリア板保持工程を行う。
図3(A)は、キャリア板保持工程について示す断面図である。キャリア板保持工程は、
図3(A)等に示す剥離装置22を用いて行われる。剥離装置22は、複合基板1のキャリア板3側を上方から保持するためのキャリア板保持ユニット24を備えている。
【0045】
キャリア板保持ユニット24の下部には、キャリア板3の第2面3bと同程度の大きさを持つ保持面24aが形成されている。この保持面24aには、流路(不図示)やバルブ(不図示)等を介して吸引源(不図示)が接続されている。そのため、バルブを開けば、吸引源の負圧を保持面24aに作用させることができる。また、キャリア板保持ユニット24は、昇降機構(不図示)によって支持されており、鉛直方向に移動する。
【0046】
キャリア板保持工程では、
図3(A)に示すように、例えば、ワークピース7の上方にキャリア板3が位置付けられた状態で、キャリア板3の第2面3bにキャリア板保持ユニット24の保持面24aを接触させる。そして、バルブを開き、吸引源の負圧を保持面24aに作用させる。これにより、複合基板1のキャリア板3側が上方からキャリア板保持ユニット24により保持される。
【0047】
キャリア板保持工程の後には、ワークピース7からキャリア板3を除去する除去工程を行う。
図3(B)は、除去工程について示す断面図であり、
図3(C)は、ワークピース7からキャリア板3が除去された状態を示す断面図である。この除去工程は、引き続き剥離装置22を用いて行われる。
【0048】
図3(B)に示すように、キャリア板保持ユニット24の側方には、このキャリア板保持ユニット24によって保持される複合基板1の段差部1aに相当する位置に、先端が下を向いた棒状の外力付与部材(プッシュ部材)26が配置されている。外力付与部材26は、例えば、キャリア板保持ユニット24を移動させる昇降機構とは別の昇降機構(不図示)によって支持されており、キャリア板保持ユニット24から独立して鉛直方向に移動する。
【0049】
除去工程では、まず、キャリア板保持ユニット24と外力付与部材26とをともに上方に移動させて、キャリア板保持ユニット24に保持されている複合基板1を持ち上げる。すなわち、ワークピース7の第1面7a側を下方に露出させる。次に、キャリア板保持ユニット24の位置を保ったまま外力付与部材26を下方に移動させ、外力付与部材26の先端(下端)を段差部1aのワークピース7側の部分(ワークピース7の外周部7b)に上方から接触させる。これにより、外力付与部材26から複合基板1の段差部1aに下向きの力が加えられる。
【0050】
上述のように、複合基板1のキャリア板3側は、キャリア板保持ユニット24により上方から保持されている。そのため、外力付与部材26から段差部1aのワークピース7側の部分に下向きの力が加えられると、ワークピース7は、仮接着層5を境にキャリア板3から剥離され落下する。すなわち、ワークピース7は、キャリア板3から離れる方向に移動する。キャリア板3からワークピース7の全体が分離され、キャリア板3がワークピース7から除去されると、除去工程は終了する。
【0051】
以上のように、本実施形態にかかるキャリア板の除去方法では、キャリア板3の第2面(裏面)3b側からキャリア板3の外周縁に沿ってキャリア板3の外周部を除去するようにキャリア板3を加工し、キャリア板3に比べてワークピース7が側方に突出した段差部1aを形成するので、キャリア板3を上方からキャリア板保持ユニット24で保持した状態で、段差部1aに下向きの力を加えることにより、ワークピース7からキャリア板3を容易に除去できる。
【0052】
また、本実施形態にかかるキャリア板の除去方法では、キャリア板3側だけを加工すれば良いので、ワークピース7側を加工することなく、ワークピース7からキャリア板3を除去できる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態の外力付与部材26は、キャリア板保持ユニット24から独立して鉛直方向に移動できるように構成されているが、この外力付与部材26は、少なくともキャリア板保持ユニット24に対して相対的に移動できれば良い。
【0054】
例えば、外力付与部材26を剥離装置22の筐体(不図示)等に固定し、キャリア板保持ユニット24のみを移動させることで、キャリア板保持ユニット24に対して外力付与部材26を相対的に移動させても良い。また、上述した実施形態では、1個の外力付与部材26を使用しているが、複数の外力付与部材26を使用することもできる。
【0055】
また、上述した実施形態では、キャリア板3の第2面(裏面)3b側からキャリア板3の外周縁に沿ってキャリア板3に切削ブレード18を切り込ませることで、キャリア板3の外周部を除去して複合基板1に段差部1aを形成しているが、例えば、キャリア板3の第2面3b側からキャリア板3の外周縁に沿ってキャリア板3にレーザービームを照射することで、キャリア板3の外周部を除去して複合基板1に段差部1aを形成しても良い。
【0056】
この場合には、切削装置2(切削ユニット14)の代わりに、例えば、キャリア板3に吸収される波長のレーザービームを照射できるレーザー加工装置(レーザー加工ユニット)を使用し、キャリア板3をレーザービームでアブレーション加工すると良い。また、例えば、キャリア板3を透過する波長のレーザービームを照射できるレーザー加工装置(レーザー加工ユニット)を使用し、キャリア板3をレーザービームで改質しても良い。キャリア板3をレーザービームで改質した後に、改質された領域に力を加えて、この領域を除去することで、段差部を形成することができる。
【0057】
また、上述した実施形態では、ワークピース7の外周部7bを除去することなく複合基板1に段差部1aを形成しているが、加工の精度によっては、キャリア板3の外周部を除去する際に、ワークピース7の外周部7bが除去されてしまうこともある。そのため、ワークピース7の品質に問題がないようであれば、段差部1aが得られる範囲で、ワークピース7の外周部7bが除去されても良い。
【0058】
また、除去工程においてキャリア板3を除去する際に、キャリア板3とワークピース7との間(仮接着層5に相当する領域)に流体を吹き付けることもできる。
図4(A)は、第1変形例の除去工程について示す断面図である。
図4(A)に示すように、この第1変形例で使用される剥離装置22のキャリア板保持ユニット24の側方には、ノズル32が配置されている。ノズル32には、流路(不図示)やバルブ(不図示)等を介して流体34の供給源(不図示)が接続されている。
【0059】
このノズル32から、キャリア板3とワークピース7との間に流体34を吹き付けた後に、又は、キャリア板3とワークピース7との間に流体34を吹き付けながら、外力付与部材26で段差部1aに下向きの力を加えることで、キャリア板3からワークピース7をより容易に剥離できる。キャリア板3とワークピース7との間に吹き付ける流体34としては、例えば、エアーや水等を用いることができる。ただし、流体34の種類等に特段の制限はない。
【0060】
また、除去工程においてキャリア板3を除去する際に、キャリア板3とワークピース7とを液体に沈めても良い。
図4(B)は、第2変形例の除去工程について示す断面図である。
図4(B)に示すように、この第2変形例で使用される剥離装置22のキャリア板保持ユニット24の下方には、キャリア板3とワークピース7とを収容できる大きさの槽42が配置されている。槽42内には、水等の液体44がためられる。
【0061】
槽42内の液体44にキャリア板3とワークピース7とを沈めた状態で、外力付与部材26によって段差部1aに下向きの力を加え、キャリア板3からワークピース7を剥離すると、剥離されたワークピース7は液体44中を落下する。その結果、ワークピース7を空気中で落下させる場合に比べて落下に伴う衝撃が小さくなり、ワークピース7の破損や、剥離装置22の振動等を防止できる。
【0062】
なお、この液体44には界面活性剤を含ませても良い。液体44に含ませる界面活性剤としては、仮接着層5に侵入し易いアニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤等を用いることができる。このように、仮接着層5に侵入し易い界面活性剤を液体44に含ませることで、界面活性剤が侵入した領域から仮接着層5が分離し易くなって、キャリア板3からワークピース7をより容易に剥離できる。
【0063】
また、第2変形例では、キャリア板3とワークピース7とを液体44に沈めた後、外力付与部材26で段差部1aに下向きの力を加える際に、この外力付与部材26に超音波等の振動を付与しても良い。具体的には、超音波等の振動を外力付与部材26に付与しながら、この外力付与部材26で段差部1aに下向きの力を加える。この場合には、外力付与部材26から伝わる振動の作用により、キャリア板3からワークピース7をより容易に剥離できるようになる。
【0064】
同様に、キャリア板3とワークピース7とを液体44に沈めた後、外力付与部材26で段差部1aに下向きの力を加える際に、液体44に超音波等の振動を付与しても良い。具体的には、超音波等の振動を液体44に付与しながら、外力付与部材26で段差部1aに下向きの力を加える。この場合には、液体44から伝わる振動の作用により、キャリア板3からワークピース7をより容易に剥離できるようになる。
【0065】
また、キャリア板保持工程を実施した後、除去工程を実施する前に、複合基板1のワークピース7側をワークピース保持ユニットで保持するワークピース保持工程を実施しても良い。
図5(A)は、第3変形例のキャリア板保持工程及びワークピース保持工程について示す断面図であり、
図5(B)は、第3変形例の除去工程において段差部1aに外力付与部材26を接触させた状態を示す断面図であり、
図5(C)は、第3変形例の除去工程において外力付与部材26とワークピース保持ユニット(支持テーブル)52とに対してキャリア板保持ユニット24を相対的に上方に移動させる様子を示す断面図である。
【0066】
第3変形例では、
図5(A)に示すように、キャリア板保持工程において複合基板1のキャリア板3側を上方からキャリア板保持ユニット24で保持し、その後、ワークピース保持ユニット52の保持面(上面)52aでワークピース7を保持(支持)するワークピース保持工程を行う。具体的には、複合基板1を保持したキャリア板保持ユニット24の下方にワークピース保持ユニット52を位置付けた上で、キャリア板保持ユニット24を下降させ、ワークピース7の第1面7aをワークピース保持ユニット52の保持面52aに接触させる。
【0067】
その後の除去工程では、
図5(B)に示すように、キャリア板3側から段差部1aに外力付与部材26を接触させた状態で、
図5(C)に示すように、外力付与部材26とワークピース保持ユニット52とに対してキャリア板保持ユニット24を相対的に上方に移動させる。これにより、段差部1aに下向きの力を加えてキャリア板3からワークピース7を剥離し、ワークピース7からキャリア板3を除去できる。
【0068】
この第3変形例では、ワークピース保持ユニット52によってワークピース7が下方から保持されているので、キャリア板3からワークピース7を剥離しても、剥離されたワークピース7が重力によって落下することはない。つまり、落下に伴う衝撃がゼロになるので、ワークピース7の破損や、剥離装置22の振動等をより確実に防止できる。
【0069】
また、本発明にかかるキャリア板の除去方法は、上述した剥離装置22とは異なる構造の剥離装置を用いて実施されても良い。
図6(A)は、剥離装置22とは異なる構造の剥離装置を用いて実施される第4変形例の除去工程において段差部1aに外力付与部材26を接触させた状態を示す断面図である。
図6(B)は、第4変形例の除去工程においてキャリア板3からワークピース7を剥離する際の起点となる領域(起点領域)5cが仮接着層5に形成される様子を示す断面図であり、
図6(C)は、第4変形例の除去工程においてキャリア板3からワークピース7が剥離される様子を示す断面図である。
【0070】
第4変形例にかかるキャリア板の除去方法の基本的な手順は、第3変形例にかかるキャリア板の除去方法と同様である。すなわち、第4変形例も、段差部形成工程と、キャリア板保持工程と、除去工程と、に加え、ワークピース保持工程を含む。ただし、この第4変形例では、剥離装置22とは異なる構造の剥離装置62が使用される。以下では、剥離装置22と剥離装置62とで共通する構成要素に同じ符号を付し、主に相違する構成要素について説明する。
【0071】
図6(A)等に示すように、第4変形例にかかる剥離装置62は、ベースプレート(キャリア板保持ユニット)64を備えている。ベースプレート64の下部には、キャリア板3の第2面3bと同程度の大きさを持つ基準面64aが形成されている。この基準面64aは、例えば、内側の領域に比べて外側の領域が上方に位置するように湾曲している。つまり、基準面64aは、下に凸の曲面によって構成されている。
【0072】
基準面64aの中央の領域には、第1流路64bや第1バルブ(不図示)等を介して、吸引源(不図示)が接続されている。また、基準面64aの外側の領域には、第2流路64cや第2バルブ(不図示)等を介して、吸引源が接続されている。基準面64aの外周部には、基準面64aの概ね全体を囲む環状の密閉部材66が配置されている。密閉部材66は、例えば、所定の弾力を示すゴム等の材料で構成されるOリングであり、気密の保持に適している。
【0073】
ベースプレート64の基準面64a側には、柔軟性のある可撓性プレート(キャリア板保持ユニット)68が配置されている。可撓性プレート68は、外部から力が加わっていない状態で概ね平坦なフレーム70を含む。フレーム70の下面側には、凹部70aが形成されており、この凹部70aには、多孔質状のプレート72が固定されている。
【0074】
可撓性プレート68は、フレーム70の上面の中央の領域が、基準面64aの中央の領域に接触し、フレーム70の上面の外周部が、密閉部材66に接触するように、ベースプレート64に接続されている。つまり、可撓性プレート68に外部から力が加わっていない状態では、
図6(A)に示すように、基準面64aの外側の領域と、フレーム70の上面の外周部と、の間に隙間が形成される。
【0075】
フレーム70の上面の中央の領域には、第1流路64bに接続される貫通穴70bが形成されている。そのため、第1バルブを開けば、第1流路64b及び貫通穴70bを通じて吸引源の負圧をプレート72の下面72aに作用させることができる。一方で、第2バルブを開くと、基準面64aの外側の領域と、フレーム70の上面の外周部と、の隙間(密閉部材66で囲まれた空間)に存在する空気は、第2流路64cを通じて排気される。その結果、基準面64aの外側の領域とフレーム70の上面の外周部との隙間が減圧されて、密閉部材66が変形し、可撓性プレート68は、基準面64aに沿って湾曲する。
【0076】
第4変形例では、
図6(A)に示すように、複合基板1のキャリア板3側を保持するキャリア板保持工程の後に、ワークピース保持ユニット52の保持面52aでワークピース7を保持するワークピース保持工程を行う。キャリア板保持工程では、可撓性プレート68の下面72aをキャリア板3の第2面3bに接触させる。そして、第1バルブを開き、吸引源の負圧を下面72aに作用させる。これにより、複合基板1のキャリア板3側が、上方から、ベースプレート64及び可撓性プレート68により保持される。
【0077】
ワークピース保持工程では、例えば、複合基板1を保持したベースプレート64及び可撓性プレート68の下方にワークピース保持ユニット52を位置付けた上で、ベースプレート64及び可撓性プレート68を下降させ、ワークピース7の第1面7aをワークピース保持ユニット52の保持面52aに接触させる。
【0078】
その後の除去工程では、
図6(B)に示すように、まず、キャリア板3側から段差部1aに外力付与部材26を接触させた状態で、第1バルブを開き、基準面64aの外側の領域とフレーム70の上面の外周部との隙間を減圧する。これにより、可撓性プレート68は、複合基板1のキャリア板3側を保持した状態で、基準面64aに沿って湾曲する。つまり、キャリア板3の外周部3cには、キャリア板3側を湾曲させる上向きの力が作用する。
【0079】
一方で、段差部1aのワークピース7側(外周部7b)には、外力付与部材26が接触しており、ワークピース7は、キャリア板3のように湾曲することがない。その結果、
図6(C)に示すように、キャリア板3の外周部3cをワークピース7から離れる方向に湾曲させて、仮接着層5の端部を、キャリア板3側の第1部分5aとワークピース7側の第2部分5bとに分離できる。仮接着層5の端部の第1部分5aと第2部分5bとに分離された領域5cは、ワークピース7からキャリア板3を剥離する際の起点となる。
【0080】
領域5cが形成された後には、
図6(C)に示すように、外力付与部材26とワークピース保持ユニット52とに対してベースプレート64及び可撓性プレート68を相対的に上方に移動させる。これにより、段差部1aに下向きの力を加えて、領域5cを起点にキャリア板3からワークピース7を剥離し、ワークピース7からキャリア板3を除去できる。
【0081】
この第4変形例では、ワークピース保持ユニット52によってワークピース7が下方から保持されているので、キャリア板3からワークピース7を剥離しても、剥離されたワークピース7が重力によって落下することはない。つまり、落下に伴う衝撃がゼロになるので、ワークピース7の破損や、剥離装置22の振動等をより確実に防止できる。
【0082】
また、第4変形例では、キャリア板3の外周部3cをワークピース7から離れる方向に湾曲させて、ワークピース7からキャリア板3を除去する際の起点となる領域(起点領域)5cを仮接着層5に形成するので、キャリア板3からワークピース7を小さな力で簡単に剥離できる。
【0083】
更に、上述した実施形態及び各変形例では、複合基板1のキャリア板3側を上方からキャリア板保持ユニットで保持し、又は、複合基板1のワークピース7側を下方からワークピース保持ユニットで保持する態様について説明したが、実施形態及び各変形例で示される方向(例えば、上下)の関係は、入れ替えられることがある。
【0084】
具体的には、例えば、複合基板1のキャリア板3側を下方からキャリア板保持ユニットで保持し、又は、複合基板1のワークピース7側を上方からワークピース保持ユニットで保持することもできる。なお、この場合には、外力付与部材を下方から段差部1aに接触させることになる。
【0085】
図7(A)は、第5変形例のワークピース保持工程について示す断面図である。
図7(B)は、第5変形例の除去工程においてキャリア板3からワークピース7を剥離する際の起点となる領域(起点領域)5cが仮接着層5に形成される様子を示す断面図であり、
図7(C)は、第5変形例の除去工程においてキャリア板3からワークピース7が剥離される様子を示す断面図である。
【0086】
第5変形例にかかるキャリア板の除去方法では、段差部形成工程を実施した後に、ワークピース保持工程を実施する。また、ワークピース保持工程を実施した後に、キャリア板保持工程と除去工程とを実施する。なお、この第5変形例では、除去工程の実施中に、キャリア板保持工程が実施される。
【0087】
図7(A)等に示すように、第5変形例では、剥離装置22や剥離装置62とは異なる構造の剥離装置82が使用される。剥離装置82は、複合基板1のワークピース7側を上方から保持するためのワークピース保持ユニット84を備えている。ワークピース保持ユニット84の下部には、ワークピース7の第1面7aに比べて小さな保持面84aが形成されている。
【0088】
保持面84aには、流路(不図示)やバルブ(不図示)等を介して吸引源(不図示)が接続されている。そのため、バルブを開けば、吸引源の負圧を保持面84aに作用させることができる。また、ワークピース保持ユニット84は、昇降機構(不図示)によって支持されており、鉛直方向に移動する。
【0089】
ワークピース保持ユニット84の下方には、キャリア板保持ユニット86が配置されている。キャリア板保持ユニット86の上部には、キャリア板3の第2面3bと同程度の大きさを持つ保持面86aが形成されている。保持面86aには、流路(不図示)やバルブ(不図示)等を介して吸引源(不図示)が接続されている。そのため、バルブを開けば、吸引源の負圧を保持面86aに作用させることができる。
【0090】
キャリア板保持ユニット86の側方には、このキャリア板保持ユニット86によって保持される複合基板1の段差部1aに相当する位置に、先端が上を向いた棒状の外力付与部材(プッシュ部材)88が配置されている。外力付与部材88は、例えば、剥離装置22の筐体(不図示)やキャリア板保持ユニット86等に固定されている。そのため、キャリア板保持ユニット86と外力付与部材88との位置の関係は、変化しない。
【0091】
また、この外力付与部材88の先端(上端)の高さは、キャリア板保持ユニット86の保持面86aに対してキャリア板3を接触させる際に、段差部1aを構成するワークピース7の外周部7bを上向きに押し上げることができるように調整されている。すなわち、キャリア板保持ユニット86の保持面86aと外力付与部材88の先端との高さの差は、キャリア板3の厚みと仮接着層5の厚みとの和よりも大きくなっている。
【0092】
ワークピース保持工程では、
図7(A)に示すように、例えば、キャリア板3の上方にワークピース7が位置付けられた状態で、ワークピース7の第1面7aにワークピース保持ユニット84の保持面84aを接触させる。そして、バルブを開き、吸引源の負圧を保持面84aに作用させる。これにより、複合基板1のワークピース7側が上方からワークピース保持ユニット84により保持される。
【0093】
ワークピース保持工程の後には、キャリア板保持ユニット86でキャリア板3を保持するキャリア板保持工程と、ワークピース7からキャリア板3を除去する除去工程と、を行う。具体的には、例えば、
図7(B)に示すように、複合基板1のワークピース7側を保持したワークピース保持ユニット84を下降させて、キャリア板3の第2面3bをキャリア板保持ユニット86の保持面86aに接触させる。
【0094】
上述のように、キャリア板保持ユニット86の保持面86aと外力付与部材88の先端との高さの差は、キャリア板3の厚みと仮接着層5の厚みとの和よりも大きい。よって、ワークピース保持ユニット84を下降させると、キャリア板3の第2面3bがキャリア板保持ユニット86の保持面86aに接触する前に、外力付与部材88の先端は、段差部1a(外周部7b)に接触する。
【0095】
そのため、この状態からワークピース保持ユニット84を更に下降させると、外力付与部材88から段差部1a(外周部7b)に上向きの力が加わることになる。その結果、
図7(B)に示すように、ワークピース7の外周部7bをキャリア板3から離れる方向に湾曲させて、仮接着層5の端部を、キャリア板3側の第1部分5a(
図7(C)参照)とワークピース7側の第2部分5b(
図7(C)参照)とに分離できる。仮接着層5の端部の第1部分5aと第2部分5bとに分離された領域5cは、ワークピース7からキャリア板3を剥離する際の剥離の起点となる。
【0096】
領域5cが形成された後には、
図7(B)に示すように、キャリア板3の第2面3bが保持面86aに接触した状態で、この保持面86aに吸引源の負圧を作用させ、複合基板1のキャリア板3側をキャリア板保持ユニット86に保持させる。その後、
図7(C)に示すように、ワークピース保持ユニット84を上昇させる。これにより、ワークピース7は、領域5cを起点にキャリア板3から剥離される。つまり、ワークピース7をキャリア板3から離れる方向に移動させて、ワークピース7からキャリア板3を除去できる。
【0097】
この第5変形例では、ワークピース7の外周部7bをキャリア板3から離れる方向に湾曲させて、ワークピース7からキャリア板3を除去する際の起点となる領域(起点領域)5cを仮接着層5に形成するので、キャリア板3からワークピース7を小さな力で簡単に剥離できる。
【0098】
上述した実施形態及び各変形例は、任意に組み合わせることができる。例えば、第2変形例に対して、更に第1変形例を組み合わせても良い。この場合には、キャリア板3とワークピース7とを液体44に沈めた後、キャリア板3とワークピース7との間(仮接着層5に相当する領域)に流体を吹き付けることになる。つまり、キャリア板3とワークピース7との間に流体34を吹き付けた後に、又は、キャリア板3とワークピース7との間に流体34を吹き付けながら、外力付与部材26で段差部1aに下向きの力を加えることで、キャリア板3からワークピース7を剥離する。
【0099】
その他、上述した実施形態及び変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0100】
1 :複合基板
1a :段差部
3 :キャリア板
3a :第1面(表面)
3b :第2面(裏面)
3c :外周部
5 :仮接着層
5a :第1部分
5b :第2部分
5c :領域(起点領域)
7 :ワークピース
7a :第1面(表面)
7b :外周部
9 :デバイスチップ
11 :モールド樹脂層
2 :切削装置
4 :チャックテーブル
6 :枠体
6a :流路
8 :保持板
8a :保持面
10 :バルブ
12 :吸引源
14 :切削ユニット
16 :スピンドル
18 :切削ブレード
22 :剥離装置
24 :キャリア板保持ユニット
24a :保持面
26 :外力付与部材(プッシュ部材)
32 :ノズル
34 :流体
42 :槽
44 :液体
52 :ワークピース保持ユニット(支持テーブル)
52a :保持面(上面)
62 :剥離装置
64 :ベースプレート(キャリア板保持ユニット)
64a :基準面
64b :第1流路
64c :第2流路
66 :密閉部材
68 :可撓性プレート(キャリア板保持ユニット)
70 :フレーム
70a :凹部
70b :貫通穴
72 :プレート
72a :下面
82 :剥離装置
84 :ワークピース保持ユニット
84a :保持面
86 :キャリア板保持ユニット
86a :保持面
88 :外力付与部材(プッシュ部材)