(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】接着用フィルム付きチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240701BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240701BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/52 E
B23K26/53
(21)【出願番号】P 2020132797
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】上里 昌充
(72)【発明者】
【氏名】川口 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】上妻 沙紀
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-063812(JP,A)
【文献】特開2014-063813(JP,A)
【文献】特開2018-198242(JP,A)
【文献】特開2015-053419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/52
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する複数の分割予定ラインが表面に設定されたワークピースにレーザービームを照射して、該ワークピースの一部が改質されてなる改質層を該分割予定ラインに沿って形成する改質層形成ステップと、
該ワークピースの該表面とは反対の裏面に、該ワークピースの該裏面よりも大きな接着用フィルムを介してエキスパンドシートを貼付する貼付ステップと、
該改質層形成ステップ及び該貼付ステップの後、該接着用フィルムを介して該ワークピースに貼付されていない該エキスパンドシートの外側領域を拡張することにより、該ワークピースを該分割予定ラインで分割することなく、該接着用フィルムを、該ワークピースに貼付されている内側部分及び該ワークピースに貼付されていない外側部分に分割する接着用フィルム分割ステップと、
該接着用フィルム分割ステップの後、該接着用フィルムを介して該ワークピースに貼付されている該エキスパンドシートの内側領域を拡張することにより、該接着用フィルムの該内側部分及び該ワークピースを該分割予定ラインに沿って分割し、それぞれに接着用フィルムが貼付された複数のチップを形成するチップ形成ステップと、を含
み、
該接着用フィルム分割ステップでは、該接着用フィルム及び該エキスパンドシートを介して該ワークピースの該裏面の全体をチャックテーブルで保持しながら、該エキスパンドシートを拡張することにより、該エキスパンドシートの該外側領域を拡張し、
該チップ形成ステップでは、該チャックテーブルによる該ワークピースの保持が解除された状態で、該エキスパンドシートを拡張することにより、該エキスパンドシートの該内側領域を拡張する、接着用フィルム付きチップの製造方法。
【請求項2】
該接着用フィルム分割ステップでは、該エキスパンドシートの該外側領域のみを拡張する請求項
1に記載の接着用フィルム付きチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着用フィルムが貼付された複数のチップを形成する際に用いられる接着用フィルム付きチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、半導体集積回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料でなるウェーハの表面を分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインでウェーハを分割することにより得られる。
【0003】
上述のようなデバイスチップを別のデバイスチップや基板に重ねて固定するために、ダイアタッチフィルム(DAF:Die Attach Film)等と呼ばれる接着用フィルムを各デバイスチップの裏面に設けることがある。例えば、ウェーハの全体を覆うことができる大きさに形成された接着用フィルムを、デバイスチップへと分割される前のウェーハの裏面に貼付し、これをウェーハとともに分割することで、裏面に接着用フィルムを備えた複数のデバイスチップが完成する。
【0004】
ウェーハのようなワークピースとともに接着用フィルムを分割する際には、例えば、ワークピースにレーザービームを照射して、このワークピースを分割予定ラインに沿って改質する。その後、ワークピースと接着用フィルムとを重ねてエキスパンドシートに貼付した上で、エキスパンドシートを拡張すれば、ワークピースは、改質されて脆くなった領域を起点に破断される。この時、接着用フィルムもワークピースとともに分割予定ラインに沿って破断されることになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、機械的な強度の低い接着用フィルムをワークピースに貼付してエキスパンドシートを拡張すると、接着用フィルムのワークピースからはみ出た部分(つまり、ワークピースに貼付されていない部分)が破断され、その小さな破片が飛び散ってしまうことがある。飛び散った破片がワークピースに付着すると、ワークピースは汚染されてしまう。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワークピースと接着用フィルムとを分割して接着用フィルム付きチップを製造する際に、接着用フィルムの破片が飛び散ることを防止できる接着用フィルム付きチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、互いに交差する複数の分割予定ラインが表面に設定されたワークピースにレーザービームを照射して、該ワークピースの一部が改質されてなる改質層を該分割予定ラインに沿って形成する改質層形成ステップと、該ワークピースの該表面とは反対の裏面に、該ワークピースの該裏面よりも大きな接着用フィルムを介してエキスパンドシートを貼付する貼付ステップと、該改質層形成ステップ及び該貼付ステップの後、該接着用フィルムを介して該ワークピースに貼付されていない該エキスパンドシートの外側領域を拡張することにより、該ワークピースを該分割予定ラインで分割することなく、該接着用フィルムを、該ワークピースに貼付されている内側部分及び該ワークピースに貼付されていない外側部分に分割する接着用フィルム分割ステップと、該接着用フィルム分割ステップの後、該接着用フィルムを介して該ワークピースに貼付されている該エキスパンドシートの内側領域を拡張することにより、該接着用フィルムの該内側部分及び該ワークピースを該分割予定ラインに沿って分割し、それぞれに接着用フィルムが貼付された複数のチップを形成するチップ形成ステップと、を含み、該接着用フィルム分割ステップでは、該接着用フィルム及び該エキスパンドシートを介して該ワークピースの該裏面の全体をチャックテーブルで保持しながら、該エキスパンドシートを拡張することにより、該エキスパンドシートの該外側領域を拡張し、該チップ形成ステップでは、該チャックテーブルによる該ワークピースの保持が解除された状態で、該エキスパンドシートを拡張することにより、該エキスパンドシートの該内側領域を拡張する、接着用フィルム付きチップの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の一態様において、該接着用フィルム分割ステップでは、該エキスパンドシートの該外側領域のみを拡張することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様にかかる接着用フィルム付きチップの製造方法では、エキスパンドシートの外側領域を拡張することにより、ワークピースを分割予定ラインで分割することなく、接着用フィルムを、ワークピースに貼付されている内側部分及びワークピースに貼付されていない外側部分に分割する。そして、その後、エキスパンドシートの内側領域を拡張することにより、接着用フィルムの内側部分及びワークピースを分割予定ラインに沿って分割する。
【0012】
このように、接着用フィルム及びワークピースを分割予定ラインに沿って分割する前に、接着用フィルムを、内側部分と外側部分とに分割することにより、接着用フィルム及びワークピースを分割予定ラインに沿って分割する際に、接着用フィルムの外側部分に局所的な力が加わり難くなる。そのため、接着用フィルムの外側部分が破断され難くなって、その小さな破片が飛び散ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ワークピースの構造を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ワークピースに保護部材が貼付される様子を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ワークピースに改質層が形成される様子を示す側面図である。
【
図4】
図4は、ワークピースに接着用フィルムを介してエキスパンドシートが貼付される様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ワークピースから保護部材が剥離された状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ワークピースが拡張装置に搬入された状態を示す断面図である。
【
図7】
図7(A)は、接着用フィルムが、内側部分と外側部分とに分割される様子を示す断面図であり、
図7(B)は、
図7(A)の領域Aを拡大した断面図である。
【
図8】
図8は、ワークピースと接着用フィルムの内側部分とが分割される様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる接着用フィルム付きチップの製造方法で使用されるワークピース11の構造を模式的に示す斜視図である。ワークピース11は、例えば、シリコン(Si)等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。このワークピース11の表面11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13で複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。
【0015】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハをワークピース11としているが、ワークピース11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板をワークピース11として用いることもできる。同様に、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。ワークピース11には、デバイス15が形成されていなくても良い。
【0016】
本実施形態にかかる接着用フィルム付きチップの製造方法では、まず、このワークピース11の表面11aに保護部材を貼付する(保護部材貼付ステップ)。
図2は、ワークピース11に保護部材21が貼付される様子を示す斜視図である。保護部材21は、例えば、ワークピース11と概ね同等の径を持つ円形のテープ(フィルム)、樹脂製の基板、ワークピース11と同種又は異種のウェーハ等であり、その表面21a側には、ワークピース11に対して接着力を示す糊層が設けられている。
【0017】
そのため、
図2に示すように、保護部材21の表面21a側をワークピース11の表面11aに密着させることで、保護部材21は、ワークピース11の表面11aに貼付される。このように、ワークピース11の表面11aに保護部材21を貼付することにより、ワークピース11に加わる衝撃を緩和して、表面11a側のデバイス15等を保護できるようになる。なお、デバイス15等を保護部材21で保護する必要がないようであれば、ワークピース11に保護部材21を貼付しなくても良い。
【0018】
ワークピース11の表面11aに保護部材21を貼付した後には、このワークピース11にレーザービームを照射して、ワークピース11の一部が改質されてなる改質層を分割予定ライン13に沿って形成する(改質層形成ステップ)。
図3は、ワークピース11に改質層17が形成される様子を示す側面図である。なお、
図3では、一部の要素が断面で表されている。ワークピース11に改質層17を形成する際には、例えば、
図3に示すレーザー加工装置2が使用される。
【0019】
レーザー加工装置2は、ワークピース11より大きな円盤状のチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4の上面の一部は、ワークピース11に貼付された保護部材21の表面21aとは反対側の裏面21bを吸引し、保持する保持面4aとなる。保持面4aには、チャックテーブル4の内部に設けられた流路等を介して吸引源(不図示)が接続されている。そのため、保持面4aに保護部材21を接触させて、保持面4aに吸引源の負圧を作用させれば、ワークピース11は、保護部材21を介してチャックテーブル4に吸引される。
【0020】
チャックテーブル4は、モーター等の回転駆動源(不図示)に連結されており、この回転駆動源が生じる力により、上述した保持面4aに対して概ね垂直な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル4は、移動機構(不図示)に支持されており、この移動機構により、上述した保持面4aに対して概ね平行な加工送り方向と、保持面4aに対して概ね平行で加工送り方向に対して概ね垂直な割り出し送り方向と、に移動する。
【0021】
チャックテーブル4の上方には、レーザー加工ユニット6が配置されている。レーザー加工ユニット6は、レーザー発振器(不図示)でパルス発振されたレーザービーム8が所定の高さの位置に集光されるように、レーザービーム8を下方に照射する。レーザー発振器は、ワークピース11を透過する波長(吸収され難い波長)のレーザービーム8をパルス発振できるように構成されている。
【0022】
ワークピース11に改質層17を形成する際には、まず、ワークピース11に貼付されている保護部材21の裏面21bをチャックテーブル4の保持面4aに接触させる。そして、この保持面4aに吸引源の負圧を作用させる。これにより、保護部材21は、チャックテーブル4に吸引される。つまり、ワークピース11は、表面11aとは反対側の裏面11bが上方に露出した状態で保護部材21を介してチャックテーブル4に保持される。
【0023】
次に、チャックテーブル4によって保持されたワークピース11において加工の対象となる分割予定ライン13と、レーザー加工装置2の加工送り方向と、が平行になるようにチャックテーブル4の向きを調整する。そして、加工の対象となる分割予定ライン13の延長線の上方にレーザー加工ユニット6の位置を合わせるように、チャックテーブル4の位置を調整する。
【0024】
その後、レーザー加工ユニット6からワークピース11の裏面11bに向けてレーザービーム8を照射しながら、
図3に示すように、チャックテーブル4を加工送り方向に移動させる。つまり、ワークピース11の裏面11b側から、分割予定ライン13に沿ってワークピース11にレーザービーム8を照射する。なお、レーザービーム8の集光点の高さは、ワークピース11の内部にレーザービーム8が集光されるように、レーザー加工ユニット6で調整される。
【0025】
これにより、ワークピース11のレーザービーム8の集光点及びその近傍の領域を多光子吸収によって改質し、加工の対象である分割予定ライン13に沿って改質層17を形成できる。対象の分割予定ライン13に沿って改質層17を形成した後には、同様の手順で他の全ての分割予定ライン13に沿って改質層17を形成する。
【0026】
なお、本実施形態では、ワークピース11の裏面11b側からレーザービーム8を照射して、分割予定ライン13に沿う改質層17を形成しているが、ワークピース11の表面11a側からレーザービーム8を照射して、分割予定ライン13に沿う改質層17を形成することもできる。
【0027】
ワークピース11に改質層17を形成した後には、ワークピース11の裏面11bに接着用フィルムを介してエキスパンドシートを貼付する(貼付ステップ)。
図4は、ワークピース11に接着用フィルム23を介してエキスパンドシート25が貼付される様子を示す斜視図である。
【0028】
ワークピース11の裏面11bに貼付される接着用フィルム23は、代表的には、ダイアタッチフィルム(DAF:Die Attach Film)等と呼ばれるフィルム状の接着剤であり、
図4に示すように、ワークピース11の裏面11bよりも直径が大きな円形に構成されている。この接着用フィルム23は、例えば、熱や光によって硬化する樹脂等を用いて形成され、ワークピース11を分割して得られるチップを任意の対象に固定する機能を持つ。
【0029】
接着用フィルム23を介してワークピース11の裏面11bに貼付されるエキスパンドシート25は、力が加えられると伸びる樹脂製のフィルムであり、例えば、接着用フィルム23よりも更に直径の大きな円形に構成される。このエキスパンドシート25の外周部分には、ワークピース11や接着用フィルム23を収容できる大きさの開口を備えた環状のフレーム27が固定される。
【0030】
本実施形態では、ワークピース11の裏面11bに対して接着用フィルム23が接触するように、接着用フィルム23とエキスパンドシート25とを重ねてワークピース11に貼付する。これにより、ワークピース11は、接着用フィルム23とエキスパンドシート25と、を介してフレーム27に支持された状態になる。
【0031】
ワークピース11の裏面11bに接着用フィルム23及びエキスパンドシート25を貼付した後には、表面11a側の保護部材21をワークピース11から剥離する。
図5は、ワークピース11から保護部材21が剥離された状態を示す斜視図である。もちろん、ワークピース11に保護部材21が貼付されていない場合には、このような処理は省略される。
【0032】
なお、本実施形態では、ワークピース11に改質層17を形成してから、接着用フィルム23を介してワークピース11にエキスパンドシート25を貼付しているが、接着用フィルム23を介してワークピース11にエキスパンドシート25を貼付してから、ワークピース11に改質層17を形成することもできる。
【0033】
ワークピース11に改質層17を形成し、接着用フィルム23を介してエキスパンドシート25を貼付した後には、この接着用フィルム23を、ワークピース11に貼付されている内側部分と、ワークピース11に貼付されていない外側部分と、に分割する(接着用フィルム分割ステップ)。
図6は、接着用フィルム23を分割する際に用いられる拡張装置12にワークピース11が搬入された状態を示す断面図である。
【0034】
図6に示すように、拡張装置12は、昇降機構14を備えている。昇降機構14は、代表的には、基台(不図示)に固定されたシリンダケース16と、シリンダケース16に下端側を挿入されるピストンロッド18と、を含むエアシリンダである。ピストンロッド18の上端部には、円盤状のチャックテーブル20の下面が固定されている。このチャックテーブル20の外周の直径は、ワークピース11の直径よりも大きく、フレーム27の開口の直径よりも小さい。
【0035】
チャックテーブル20は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属を用いて形成された円盤状の枠体22を含む。枠体22の上面側には、円形の開口を上端に持つ凹部22aが形成されている。この凹部22aには、セラミックス等を用いて多孔質の円盤状に形成された保持板24が固定されている。また、枠体22の上面側の外周縁には、枠体22の上面に対して概ね平行な回転軸の周りに回転できる構造のローラー26が固定されている。
【0036】
保持板24の上面は、ワークピース11の裏面11bと概ね同じ形状及び大きさに形成されており、エキスパンドシート25及び接着用フィルム23を介してワークピース11を保持する保持面24aとなる。この保持板24の下面側は、枠体22の内部に設けられた流路等を介して吸引源(不図示)に接続されている。そのため、保持面24aにエキスパンドシート25を接触させて、保持面24aに吸引源の負圧を作用させれば、ワークピース11は、エキスパンドシート25及び接着用フィルム23を介してチャックテーブル20に吸引される。
【0037】
昇降機構14の周囲には、それぞれ柱状に構成された4組の支持構造28が昇降機構14を囲むように配置されている。支持構造28は、代表的には、基台(不図示)に固定されたシリンダケース30と、シリンダケース30に下端側を挿入されるピストンロッド32と、を含むエアシリンダである。
【0038】
各支持構造28のピストンロッド32の上端部には、フレーム27を支持できる支持テーブル34が固定されている。支持テーブル34の中央部分には、チャックテーブル20よりも直径の大きい円形の開口34aが形成されており、チャックテーブル20は、この開口34aの内側に配置される。
【0039】
支持テーブル34の上方には、この支持テーブル34によって支持されるフレーム27に上方から接触してフレーム27を固定できる固定プレート36が配置されている。固定プレート36の中央部分には、支持テーブル34の開口34aに対応する形状及び大きさの開口36aが形成されている。そのため、固定プレート36によってフレーム27が支持テーブル34に固定されると、ワークピース11、接着用フィルム23、及びエキスパンドシート25の一部は、この開口36aから上方に露出する。
【0040】
接着用フィルム23を分割する際には、まず、チャックテーブル20と支持テーブル34とを基準の位置(基準位置)よりも低い位置(退避位置)に位置付け、エキスパンドシート25の上方にワークピース11が配置されるようにフレーム27を支持テーブル34に載せる。より具体的には、接着用フィルム23及びエキスパンドシート25を介してフレーム27に支持されたワークピース11が、チャックテーブル20の保持面24aの直上に位置付けられるように、フレーム27を支持テーブル34に載せる。
【0041】
次に、チャックテーブル20と支持テーブル34とを基準の位置まで上昇させて、支持テーブル34の上面と固定プレート36の下面とでフレーム27を挟み込む。その結果、フレーム27が支持テーブル34に固定される。なお、チャックテーブル20と支持テーブル34とをともに基準の位置に位置付けると、チャックテーブル20の上面の高さと支持テーブル34の上面の高さとは概ね等しくなる。
【0042】
よって、
図6に示すように、チャックテーブル20の保持面24aには、エキスパンドシート25が接触する。その後、吸引源の負圧を保持面24aに作用させて、エキスパンドシート25を吸引する。これにより、接着用フィルム23及びエキスパンドシート25を介してワークピース11の裏面11bの全体がチャックテーブル20によって保持される。
【0043】
チャックテーブル20によってワークピース11を保持した後には、支持テーブル34の位置を変えずに、チャックテーブル20を基準の位置よりも高い第1位置(第1拡張位置)に移動させる。つまり、接着用フィルム23及びエキスパンドシート25を介してワークピース11の裏面11bの全体をチャックテーブル20によって保持しながら、このチャックテーブル20を基準の位置よりも高い位置に移動させる。
【0044】
これにより、エキスパンドシート25が下方からチャックテーブル20によって突き上げられた状態になり、エキスパンドシート25のチャックテーブル20に保持されていない領域が拡張される。すなわち、接着用フィルム23を介してワークピース11に貼付されていないエキスパンドシート25の外側領域が、径方向(放射状)に拡張される。一方で、接着用フィルム23を介してワークピース11に貼付され、チャックテーブル20によって保持された状態にあるエキスパンドシート25の内側領域は、殆ど拡張されない。
【0045】
そのため、接着用フィルム23は、エキスパンドシート25の内側領域と、エキスパンドシート25の外側領域と、の境界に沿って分割される。
図7(A)は、接着用フィルム23が、ワークピース11に貼付されている内側部分31と、ワークピース11に貼付されていない外側部分33と、に分割される様子を示す断面図であり、
図7(B)は、
図7(A)の領域Aを拡大した断面図である。
【0046】
図7(A)及び
図7(B)に示すように、接着用フィルム23は、エキスパンドシート25の外側領域の拡張に伴い形成される環状の亀裂23aに沿って、内側部分31と、外側部分33と、に分割される。この時、ワークピース11には、エキスパンドシート25の外側領域の拡張に伴う力が殆ど付与されない。そのため、ワークピース11が分割予定ライン13で分割されることはない。
【0047】
また、ワークピース11とともに接着用フィルム23の全体を分割する場合のように、分割予定ライン13に沿って接着用フィルム23に生じる亀裂によって、接着用フィルム23の外側部分33が破断され、小さな破片が発生することもない。本実施形態では、環状の外側部分33の全体が一体の状態で内側部分31から分離される。
【0048】
なお、チャックテーブル20の移動の距離(つまり、基準位置と第1拡張位置との距離)や、移動の速度等に大きな制限はない。例えば、移動の距離を3mm~7mm、代表的には、5mmに設定し、移動の速度を5mm/s~15mm/s、代表的には、10mm/sに設定することで、接着用フィルム23を、ワークピース11に貼付されている内側部分31と、ワークピース11に貼付されていない外側部分33と、に分割できる。
【0049】
接着用フィルム23を、内側部分31と外側部分33とに分割した後には、エキスパンドシート25の内側領域を拡張し、接着用フィルム23の内側部分31とワークピース11とを分割予定ライン13に沿って分割することで、それぞれに接着用フィルムが貼付された状態の複数のチップを形成する(チップ形成ステップ)。
図8は、接着用フィルム23の内側部分31とワークピース11とが分割される様子を示す断面図である。
【0050】
接着用フィルム23の内側部分31とワークピース11との分割には、引き続き拡張装置12が使用される。具体的には、例えば、チャックテーブル20を基準の位置に位置付け、保持面24aへの負圧の供給を遮断する。つまり、チャックテーブル20によるワークピース11の保持を解除する。そして、この状態で、支持テーブル34の位置を変えずに、チャックテーブル20を基準の位置や第1位置よりも高い第2位置(第2拡張位置)に移動させる。
【0051】
これにより、エキスパンドシート25が下方からチャックテーブル20によって突き上げられた状態になり、エキスパンドシート25の全体が拡張される。つまり、ここでは、エキスパンドシート25の内側領域も径方向(放射状)に拡張される。その結果、ワークピース11が分割予定ライン13で分割されて、
図8に示すように、複数のチップ35が得られる。同時に、接着用フィルム23の内側部分31が分割予定ライン13に沿って分割されて、各チップ35に貼付された状態の複数の接着用フィルム37が得られる。
【0052】
なお、チャックテーブル20の移動の距離(つまり、基準位置と第2拡張位置との距離)や、移動の速度等に大きな制限はない。例えば、移動の距離を9mm~15mm、代表的には、12mmに設定し、移動の速度を100mm/s~300mm/s、代表的には、200mm/sに設定することで、接着用フィルム23の内側部分31と、ワークピース11と、を分割予定ライン13に沿って分割できる。
【0053】
以上のように、本実施形態にかかる接着用フィルム付きチップの製造方法では、エキスパンドシート25の外側領域を拡張することにより、ワークピース11を分割予定ライン13で分割することなく、接着用フィルム23を、ワークピース11に貼付されている内側部分31及びワークピース11に貼付されていない外側部分33に分割する。そして、その後、エキスパンドシート25の内側領域を拡張することにより、接着用フィルム23の内側部分31及びワークピース11を分割予定ライン13に沿って分割する。
【0054】
このように、接着用フィルム23及びワークピース11を分割予定ライン13に沿って分割する前に、接着用フィルム23を、内側部分31と外側部分33とに分割することにより、接着用フィルム23及びワークピース11を分割予定ライン13に沿って分割する際に、接着用フィルム23の外側部分33に局所的な力が加わり難くなる。そのため、接着用フィルム23の外側部分33が破断され難くなって、その小さな破片が飛び散ることを防止できる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、環状のフレーム27が固定された状態でエキスパンドシート25を拡張しているが、エキスパンドシート25を拡張した後に環状のフレーム27を固定することもできる。
【0056】
また、接着用フィルム23を、ワークピース11に貼付されている内側部分31と、ワークピース11に貼付されていない外側部分33と、に分割する際には、任意の固定機構によってエキスパンドシート25の内側領域を更に固定し、エキスパンドシート25の外側領域のみを拡張するようにしても良い。
【0057】
その他、上述した実施形態や変形例等にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0058】
11 :ワークピース
11a :表面
11b :裏面
13 :分割予定ライン(ストリート)
15 :デバイス
17 :改質層
21 :保護部材
21a :表面
21b :裏面
23 :接着用フィルム
23a :亀裂
25 :エキスパンドシート
27 :フレーム
31 :内側部分
33 :外側部分
35 :チップ
37 :接着用フィルム
2 :レーザー加工装置
4 :チャックテーブル
4a :保持面
6 :レーザー加工ユニット
8 :レーザービーム
12 :拡張装置
14 :昇降機構
16 :シリンダケース
18 :ピストンロッド
20 :チャックテーブル
22 :枠体
22a :凹部
24 :保持板
24a :保持面
26 :ローラー
28 :支持構造
30 :シリンダケース
32 :ピストンロッド
34 :支持テーブル
34a :開口
36 :固定プレート
36a :開口