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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H01L21/78 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020074770
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021174801
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176589(WO,A1)
【文献】特開2016-081990(JP,A)
【文献】特開2013-235917(JP,A)
【文献】特開2015-138951(JP,A)
【文献】特開2018-117037(JP,A)
【文献】特開2012-129404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの加工方法であって、
ウエーハの裏面側からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該外周余剰領域に対応するウエーハの内部に位置づけてレーザー光線をウエーハに照射しウエーハの仕上がり厚みに達しない位置にリング状の改質層を形成する改質層形成工程と、
該改質層形成工程の前または後にウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、
ウエーハの裏面から改質層に対応する領域に切削ブレードを位置づけてウエーハを切削し改質層のすべてを除去すると共に劈開面をウエーハの表面に到達させる改質層除去工程と、
該劈開面を起点として該外周余剰領域のリングを除去するリング除去工程と、
該改質層除去工程および該リング除去工程の後にウエーハの仕上がり厚みに達するまでウエーハの裏面を研削する研削工程と、
を含むウエーハの加工方法。
【請求項2】
該研削工程の後、ウエーハの裏面にダイシングテープを貼着すると共にウエーハを収容する開口部を有するフレームでダイシングテープの外周を支持し、ウエーハの表面から保護部材を除去する移し替え工程と、
ウエーハの分割予定ラインに加工を施してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
を含む請求項1記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハの裏面を研削してウエーハを薄くすると、ウエーハの外周端に形成された面取り部がナイフエッジのように鋭くなり研削中に欠けが生じてクラックがデバイス領域に至りデバイスを損傷させるという問題がある。そこで、本出願人は、ウエーハの裏面を研削する前に、面取り部を有する外周余剰領域にレーザー光線を照射して外周余剰領域を除去する技術を提案した(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-108532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レーザー光線の照射によって生じる変質物がウエーハの外周に残存し、変質物に起因してウエーハの搬送の際にウエーハが破損するという問題がある。
【0006】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、レーザー光線の照射によって生じる変質物がウエーハの外周に残存せず、ウエーハの搬送の際にウエーハが破損することがないウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために以下のウエーハの加工方法を提供する。すなわち、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの加工方法であって、ウエーハの裏面側からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該外周余剰領域に対応するウエーハの内部に位置づけてレーザー光線をウエーハに照射しウエーハの仕上がり厚みに達しない位置にリング状の改質層を形成する改質層形成工程と、該改質層形成工程の前または後にウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、ウエーハの裏面から改質層に対応する領域に切削ブレードを位置づけてウエーハを切削し改質層のすべてを除去すると共に劈開面をウエーハの表面に到達させる改質層除去工程と、該劈開面を起点として該外周余剰領域のリングを除去するリング除去工程と、該改質層除去工程および該リング除去工程の後にウエーハの仕上がり厚みに達するまでウエーハの裏面を研削する研削工程と、を含むウエーハの加工方法を本発明は提供する。
【0008】
好ましくは、該研削工程の後、ウエーハの裏面にダイシングテープを貼着すると共にウエーハを収容する開口部を有するフレームでダイシングテープの外周を支持し、ウエーハの表面から保護部材を除去する移し替え工程と、ウエーハの分割予定ラインに加工を施してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハの裏面側からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該外周余剰領域に対応するウエーハの内部に位置づけてレーザー光線をウエーハに照射しウエーハの仕上がり厚みに達しない位置にリング状の改質層を形成する改質層形成工程と、該改質層形成工程の前または後にウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、ウエーハの裏面から改質層に対応する領域に切削ブレードを位置づけてウエーハを切削し改質層のすべてを除去すると共に劈開面をウエーハの表面に到達させる改質層除去工程と、該劈開面を起点として該外周余剰領域のリングを除去するリング除去工程と、該改質層除去工程および該リング除去工程の後にウエーハの仕上がり厚みに達するまでウエーハの裏面を研削する研削工程と、を含むので、ウエーハの外周は劈開面で覆われており、レーザー光線の照射によって生じる変質物がウエーハの外周に残存せず、ウエーハの搬送の際にウエーハが破損することがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】保護部材配設工程を実施している状態を示す斜視図。
図2】チャックテーブルにウエーハを保持させる状態を示す斜視図。
図3】改質層形成工程を実施している状態を示す斜視図。
図4】(a)リング状の改質層が形成されたウエーハの斜視図、(b)(a)に示すウエーハの断面図。
図5】(a)改質層除去工程を実施している状態を示す斜視図、(b)改質層が除去されたウエーハの断面図。
図6】リング除去工程を実施している状態を示す斜視図。
図7】(a)研削工程を実施している状態を示す斜視図、(b)研削工程が実施されたウエーハの斜視図。
図8】(a)移し替え工程においてウエーハの裏面にダイシングテープを貼着する状態を示す斜視図、(b)移し替え工程においてウエーハの表面から保護部材を除去した状態を示す斜視図。
図9】ダイシング装置を用いて分割工程を実施している状態を示す斜視図。
図10】レーザー加工装置を用いて分割工程を実施している状態を示す斜視図。
図11】ピックアップ工程を実施している状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のウエーハの加工方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1には、本発明のウエーハの加工方法によって加工が施されるウエーハ2が示されている。厚みが700μm程度である円板状のウエーハ2は、たとえばシリコン等から形成され得る。ウエーハ2の表面2aは、IC、LSI等の複数のデバイス4が格子状の分割予定ライン6によって区画されたデバイス領域8と、デバイス領域8を囲繞する外周余剰領域10とが形成されている。図1では、便宜的にデバイス領域8と外周余剰領域10との境界12を二点鎖線で示しているが、実際には境界12を示す線は存在しない。
【0013】
図示の実施形態のウエーハの加工方法では、図1に示すとおり、まず、ウエーハ2の表面2aに保護部材14を配設する保護部材配設工程を実施する。保護部材14としては、たとえば、ウエーハ2の直径と同一の直径を有する円形の粘着テープを用いることができる。
【0014】
保護部材配設工程を実施した後、ウエーハ2の裏面2b側からウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を外周余剰領域10に対応するウエーハ2の内部に位置づけてレーザー光線をウエーハ2に照射しウエーハ2の仕上がり厚みに達しない位置にリング状の改質層を形成する改質層形成工程を実施する。なお、図示の実施形態では、改質層形成工程の前に保護部材配設工程を実施しているが、改質層形成工程の後に保護部材配設工程を実施してもよい。
【0015】
改質層形成工程は、たとえば図2および図3に一部を示すレーザー加工装置16を用いて実施することができる。レーザー加工装置16は、ウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル18と、チャックテーブル18に吸引保持されたウエーハ2にパルスレーザー光線LBを照射する集光器20と、チャックテーブル18に吸引保持されたウエーハ2を撮像する撮像手段(図示していない。)とを備える。
【0016】
図2に示すとおり、チャックテーブル18の上端には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形の吸着チャック22が配置されている。チャックテーブル18は、吸引手段で吸着チャック22の上面に吸引力を生成し、吸着チャック22の上面に載せられたウエーハ2を吸引保持する。
【0017】
チャックテーブル18は、吸着チャック22の径方向中心を通って上下方向に延びる軸線を回転中心として回転自在に構成されていると共に、図2に矢印Xで示すX軸方向と、X軸方向に直交するY軸方向(図2に矢印Yで示す方向)とのそれぞれに進退自在に構成されている。なお、X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0018】
集光器20は、レーザー加工装置16のレーザー光線発振器(図示していない。)が発振したパルスレーザー光線LBを集光する集光レンズ(図示していない。)を有する。レーザー加工装置16の撮像手段は、可視光線により被加工物を撮像する通常の撮像素子(CCD)と、被加工物に赤外線を照射する赤外線照射手段と、赤外線照射手段により照射された赤外線を捕らえる光学系と、光学系が捕らえた赤外線に対応する電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)とを含む(いずれも図示していない。)。
【0019】
改質層形成工程では、図2に示すとおり、まず、ウエーハ2の裏面2bを上に向けて、チャックテーブル18の上面でウエーハ2を吸引保持する。この際は、ウエーハ2の径方向中心と吸着チャック22の径方向中心(チャックテーブル18の回転中心)とを整合させる。
【0020】
次いで、レーザー加工装置16の撮像手段で上方からウエーハ2を撮像し、撮像手段で撮像したウエーハ2の画像に基づいて、ウエーハ2の裏面2b側からウエーハ2に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBの集光点を外周余剰領域10に対応するウエーハ2の内部に位置づける。また、ウエーハ2の仕上がり厚み(たとえばウエーハ2の表面2aから50μm程度)に達しない位置に集光点の上下方向位置を調整する。
【0021】
なお、撮像手段でウエーハ2を撮像する際には、ウエーハ2の裏面2bが上を向き、デバイス4や分割予定ライン6が形成されている表面2aは下を向いているが、上述のとおり、撮像手段は、赤外線照射手段と、赤外線を捕らえる光学系と、赤外線に対応する電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)とを含むので、ウエーハ2の裏面2bから透かして表面2aのデバイス4や分割予定ライン6を撮像することができる。これによって、ウエーハ2の裏面2b側から外周余剰領域10に対応するウエーハ2の内部にパルスレーザー光線LBの集光点を位置づけることができる。
【0022】
次いで、図3に示すとおり、所定の回転速度でチャックテーブル18を回転させることにより、外周余剰領域10に沿ってパルスレーザー光線LBの集光点をウエーハ2に対して相対的に移動させながら、パルスレーザー光線LBを集光器20からウエーハ2に照射する。これによって、図4(a)および図4(b)に示すとおり、外周余剰領域10に対応するウエーハ2の内部であって、ウエーハ2の仕上がり厚みに達しない位置に強度が小さいリング状の改質層24を外周余剰領域10に沿って形成することができる。
【0023】
このようなリング状改質層形成工程は、たとえば以下の条件で行うことができる。
パルスレーザー光線の波長 :1342nm
繰り返し周波数 :60kHz
平均出力 :1.6W
チャックテーブルの回転速度:0.5回転/秒
【0024】
改質層形成工程を実施した後、ウエーハ2の裏面2bから改質層24に対応する領域に切削ブレードを位置づけてウエーハ2を切削し改質層24を除去すると共に劈開面をウエーハ2の表面2aに到達させる改質層除去工程を実施する。
【0025】
改質層除去工程は、たとえば図5(a)に一部を示すダイシング装置26を用いて実施することができる。ダイシング装置26は、ウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル28と、チャックテーブル28に吸引保持されたウエーハ2を切削する切削手段30とを備える。
【0026】
上面においてウエーハ2を吸引保持する円形のチャックテーブル28は、チャックテーブル28の径方向中心を通って上下方向に延びる軸線を回転中心として回転自在に構成されていると共に、X軸方向に移動自在に構成されている。切削手段30は、Y軸方向を軸心として回転自在に構成されたスピンドル32と、スピンドル32の先端に固定された環状の切削ブレード34とを含む。
【0027】
図5(a)を参照して説明を続けると、改質層除去工程では、まず、ウエーハ2の裏面2bを上に向けて、チャックテーブル28の上面でウエーハ2を吸引保持する。この際は、ウエーハ2の径方向中心とチャックテーブル28の回転中心とを整合させる。
【0028】
次いで、改質層24の上方に切削ブレード34を位置づけ、高速回転させた切削ブレード34の刃先をウエーハ2の裏面2bからウエーハ2の仕上がり厚みに達しない位置まで切り込ませると共に、所定の回転速度でチャックテーブル28を回転させる。これによって、図5(b)に示すとおり、改質層24に対応する領域において、ウエーハ2の裏面2bからウエーハ2の仕上がり厚みに達しない位置まで切削溝36を形成し、改質層24を除去することができる。このようにして改質層24を除去するので、パルスレーザー光線LBの照射によって生じる変質物はウエーハ2の外周に残存しない。
【0029】
また、改質層24が形成されたウエーハ2を切削ブレード34で切削すると改質層24からクラックがウエーハ2の厚み方向に進展するため、クラックから形成される劈開面38が切削溝36の底面からウエーハ2の表面2aに到達することになる。したがって、ウエーハ2からは外周余剰領域10に対応するリング40が分割される。なお、切削溝36の底面からウエーハ2の表面2aまでの寸法は、ウエーハ2の仕上がり厚みよりも厚く、たとえば60μm程度でよい。
【0030】
改質層除去工程を実施した後、図6に示すとおり、劈開面38を起点として外周余剰領域10のリング40を除去するリング除去工程を実施する。
【0031】
リング除去工程を実施した後、ウエーハ2の仕上がり厚みに達するまでウエーハ2の裏面2bを研削する研削工程を実施する。研削工程は、たとえば図7(a)に一部を示す研削装置42を用いて実施することができる。研削装置42は、ウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル44と、チャックテーブル44に吸引保持されたウエーハ2を研削する研削手段46とを備える。
【0032】
上面においてウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル44は上下方向に延びる軸線を中心として回転自在に構成されている。研削手段46は、上下方向に延びる回転可能なスピンドル48と、スピンドル48の下端に固定されたホイールマウント50とを含む。ホイールマウント50の下面にはボルト52によって環状の研削ホイール54が固定され、研削ホイール54の下面の外周縁部には、周方向に間隔をおいて環状に配置された複数の研削砥石56が固定されている。
【0033】
図7(a)を参照して説明を続けると、研削工程では、まず、ウエーハ2の裏面2bを上に向けて、チャックテーブル44の上面でウエーハ2を吸引保持する。次いで、上方からみて反時計回りにチャックテーブル44を回転させると共に、上方からみて反時計回りにスピンドル48を回転させる。次いで、スピンドル48を下降させてウエーハ2の裏面2bに研削砥石56を接触させた後、所定の研削送り速度でスピンドル48を下降させる。これによって、図7(b)に示すとおり、ウエーハ2の裏面2bを研削してウエーハ2の仕上がり厚み(たとえば50μm程度)に形成して、ウエーハ2の裏面2bを平坦にすることができる。また、仕上がり厚みに形成されたウエーハ2の外周は劈開面38で覆われる。
【0034】
図示の実施形態では、研削工程を実施した後、ウエーハ2の裏面2bにダイシングテープを貼着すると共にウエーハ2を収容する開口部を有するフレームでダイシングテープの外周を支持し、ウエーハ2の表面2aから保護部材14を除去する移し替え工程を実施する。
【0035】
図8(a)および図8(b)を参照して説明すると、図示の実施形態のダイシングテープ58の外周は、ウエーハ2を収容する開口部60aを有する環状のフレーム60に支持されている。図8(a)に示すとおり、移し替え工程では、まず、フレーム60に支持されたダイシングテープ58をウエーハ2の裏面2bに貼着する。次いで、図8(b)に示すとおり、ウエーハ2の表面2aから保護部材14を剥離する。
【0036】
移し替え工程を実施した後、ウエーハ2の分割予定ライン6に加工を施してウエーハ2を個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施する。分割工程は、上述のダイシング装置26を用いて実施することができる。
【0037】
図9を参照して説明すると、分割工程では、まず、ウエーハ2の表面2aを上に向けて、ダイシング装置26のチャックテーブル28(図9においては図示を省略する。)の上面でウエーハ2を吸引保持する。次いで、分割予定ライン6をX軸方向に整合させると共に分割予定ライン6と切削ブレード34との位置合わせを行う。次いで、X軸方向に整合させた分割予定ライン6に、高速回転させた切削ブレード34の刃先を表面2aから切り込ませると共に、切削手段30に対してチャックテーブル28を相対的にX軸方向に加工送りすることによって、分割予定ライン6に沿って分割溝62を形成する分割溝形成加工を施す。
【0038】
そして、分割予定ライン6のY軸方向の間隔の分だけ、チャックテーブル28に対して切削ブレード34を相対的にY軸方向に割り出し送りする割り出し送りと、上記分割溝形成加工とを繰り返し、X軸方向に整合させた分割予定ライン6のすべてに沿って分割溝62を形成する。また、チャックテーブル28を90度回転させた上で、割り出し送りしながら分割溝形成加工を繰り返し、先に分割溝62を形成した分割予定ライン6と直交する分割予定ライン6のすべてに沿って分割溝62を形成する。このようにして分割工程を実施し、分割予定ライン6に沿ってウエーハ2を個々のデバイス4ごとのデバイスチップに分割する。
【0039】
分割工程においては、上述のレーザー加工装置16を用いて、分割予定ライン6に沿ってパルスレーザー光線LBを照射し、ウエーハ2を個々のデバイスチップに分割してもよい。レーザー加工装置16を用いる場合は、図10に示すとおり、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBの集光点を分割予定ライン6の内部に位置づけてパルスレーザー光線LBをウエーハ2に照射し、分割予定ライン6に沿ってウエーハ2の内部に格子状に改質層63を形成した後、ダイシングテープ58を拡張することによりウエーハ2に外力を付与して、ウエーハ2を個々のデバイスチップに分割することができる。
【0040】
分割工程を実施するためのレーザー加工装置は、上述のレーザー加工装置16に限定されず、ウエーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハ2の表面2aに位置づけてレーザー光線をウエーハ2に照射し、アブレーション加工によって分割予定ライン6に沿って格子状に加工溝を形成するタイプのレーザー加工装置であってもよい。あるいは、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ライン6に位置づけてレーザー光線をウエーハ2に照射し、ウエーハ2の厚み方向に延びる細孔と細孔を囲繞する非晶質とを有するシールドトンネルを分割予定ライン6に沿って格子状に形成するタイプのレーザー加工装置を分割工程に用いることもできる。
【0041】
分割工程を実施した後、ダイシングテープ58からデバイスチップをピックアップするピックアップ工程を実施する。ピックアップ工程は、たとえば図11に一部を示すピックアップ装置64を用いて実施することができる。ピックアップ装置64は、ダイシングテープ58を拡張して、隣接するデバイスチップ同士の間隔を拡張する拡張手段66と、デバイスチップを吸着して搬送するピックアップコレット68とを備える。
【0042】
図11に示すとおり、拡張手段66は、円筒状の拡張ドラム70と、拡張ドラム70の周囲に配置された複数のエアシリンダ72と、エアシリンダ72のそれぞれの上端に連結された環状の保持部材74と、保持部材74の外周縁部に周方向に間隔をおいて配置された複数のクランプ76とを含む。
【0043】
各エアシリンダ72は、保持部材74の上面が拡張ドラム70の上端とほぼ同じ高さの基準位置と、保持部材74の上面が拡張ドラム70の上端よりも下方に位置する拡張位置との間で、拡張ドラム70に対して相対的に保持部材74を昇降させる。なお、図11には、保持部材74が基準位置に位置する場合における拡張ドラム70を実線で示し、保持部材74が拡張位置に位置する場合の拡張ドラム70を二点鎖線で示している。
【0044】
ピックアップコレット68は、水平方向および上下方向に移動自在に構成されている。ピックアップコレット68には吸引手段が接続されており、ピックアップコレット68の先端下面でデバイスチップを吸着する。
【0045】
図11を参照して説明を続けると、ピックアップ工程では、まず、個々のデバイスチップ78に分割されたウエーハ2を上に向けて、基準位置に位置する保持部材74の上面にフレーム60を載せる。次いで、複数のクランプ76でフレーム60を固定する。次いで、保持部材74を拡張位置に下降させることにより、ダイシングテープ58に放射状張力を作用させる。そうすると、図11に二点鎖線で示すとおり、ダイシングテープ58に貼着されているデバイスチップ78同士の間隔が拡張する。
【0046】
次いで、ピックアップ対象のデバイスチップ78の上方にピックアップコレット68を位置づける。次いで、ピックアップコレット68を下降させ、ピックアップコレット68の先端下面でデバイスチップ78の上面を吸着する。次いで、ピックアップコレット68を上昇させ、デバイスチップ78をダイシングテープ58から剥離しピックアップする。次いで、ピックアップしたデバイスチップ78をトレー等の所定の搬送位置に搬送する。そして、このようなピックアップ作業を全てのデバイスチップ78に対して順次行う。
【0047】
以上のとおりであり、図示の実施形態のウエーハの加工方法によれば、ウエーハ2の外周が劈開面38で覆われ、レーザー光線LBの照射によって生じる変質物がウエーハ2の外周に残存しないので、ウエーハ2の搬送の際にウエーハ2が破損することがない。
【符号の説明】
【0048】
2:ウエーハ
2a:ウエーハの表面
2b:ウエーハの裏面
4:デバイス
6:分割予定ライン
8:デバイス領域
10:外周余剰領域
14:保護部材
24:改質層
38:劈開面
40:外周余剰領域のリング
58:ダイシングテープ
60:フレーム
60a:フレームの開口部
78:デバイスチップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11