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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240701BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240701BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240701BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/304 601Z
H01L21/78 Q
B23K26/53
B24B7/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020075204
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021174810
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176589(WO,A1)
【文献】特開2016-081990(JP,A)
【文献】特開2013-235917(JP,A)
【文献】特開2020-009864(JP,A)
【文献】特開2007-019461(JP,A)
【文献】特開2015-138951(JP,A)
【文献】特開2018-117037(JP,A)
【文献】特開2012-129404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
B23K 26/53
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの加工方法であって、
ウエーハの裏面からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を外周余剰領域に対応する内部に位置付けて照射しウエーハの仕上がり厚みに達しない改質層をリング状に形成する改質層形成工程と、
該改質層形成工程の前又は後に、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、
該保護部材側をチャックテーブルに保持しウエーハの裏面を研削してリング状に形成された改質層を除去し該改質層を起端とする劈開面を表面に到達させると共に、仕上がり厚みまで研削し、リング状の補強部を外周余剰領域に対応して形成する補強部形成工程と、
ウエーハの裏面に所定の加工を施す裏面加工工程と、
を含み、
該保護部材は、ウエーハの表面側における該デバイス領域と、該リング状の補強部が形成される外周余剰領域とを含む領域に配設され、該補強部形成工程及び該裏面加工工程は、該保護部材が配設された状態で実施されるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該裏面加工工程の後、該補強部形成工程において形成された該劈開面に基づいて該リング状の補強部を除去することに加え、ウエーハの表面から保護部材を除去しウエーハの裏面をダイシングテープに貼着すると共にウエーハを収容する開口部を有するフレームでダイシングテープの外周を支持する移し替え工程と、
ウエーハの分割予定ラインに加工を施してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
を含み構成される請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割されて、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、ウエーハに形成されたデバイス領域に対応する裏面を研削し外周余剰領域に対応する裏面に環状の補強部を形成した後、ウエーハに加工を施し、外周余剰領域に形成された環状の補強部を除去して、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する技術が、本出願人によって提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-019461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1の技術によれば、外周余剰領域に対応する裏面に環状の補強部が形成されていることにより、デバイス領域に対応する裏面側が研削されることで薄化されたウエーハが安定的に支持されて、加工時の取り扱いが良好になる。しかし、補強部が形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するためには、該補強部を切削ブレードで除去する必要があり、該補強部を切削ブレードで除去する際に、該補強部の近傍に位置するデバイスが破損するおそれがあるため、該補強部が形成される領域からデバイス領域の外縁を十分に内側に離して設定する必要があり、そのためにデバイス領域が設定される領域が制限されて生産性が悪い、という問題がある。
【0006】
また、レーザー加工によってウエーハの外周に形成された環状の補強部を除去する場合、ウエーハの外周に改質層、又はデブリが残存して、その改質層、又はデブリが残存した箇所からウエーハが破損する、という問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの外周に改質層やデブリを残存させず、リング状の補強部が形成される領域に近接させてデバイス領域を設定することを可能として生産性を向上させることができるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの加工方法であって、ウエーハの裏面からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を外周余剰領域に対応する内部に位置付けて照射しウエーハの仕上がり厚みに達しない改質層をリング状に形成する改質層形成工程と、該改質層形成工程の前又は後に、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、該保護部材側をチャックテーブルに保持しウエーハの裏面を研削してリング状に形成された改質層を除去し該改質層を起端とする劈開面を表面に到達させると共に、仕上がり厚みまで研削し、リング状の補強部を外周余剰領域に対応して形成する補強部形成工程と、ウエーハの裏面に所定の加工を施す裏面加工工程と、を含み、該保護部材は、ウエーハの表面側における該デバイス領域と、該リング状の補強部が形成される外周余剰領域とを含む領域に配設され、該補強部形成工程及び該裏面加工工程は、該保護部材が配設された状態で実施されるウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
該裏面加工工程の後、該補強部形成工程において形成された該劈開面に基づいて該リング状の補強部を除去することに加え、ウエーハの表面から保護部材を除去しウエーハの裏面をダイシングテープに貼着すると共にウエーハを収容する開口部を有するフレームでダイシングテープの外周を支持する移し替え工程と、ウエーハの分割予定ラインに加工を施してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を含み構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハの裏面からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を外周余剰領域に対応する内部に位置付けて照射しウエーハの仕上がり厚みに達しない改質層をリング状に形成する改質層形成工程と、該改質層形成工程の前又は後に、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、該保護部材側をチャックテーブルに保持しウエーハの裏面を研削してリング状に形成された改質層を除去し該改質層を起端とする劈開面を表面に到達させると共に、仕上がり厚みまで研削し、リング状の補強部を外周余剰領域に対応して形成する補強部形成工程と、ウエーハの裏面に所定の加工を施す裏面加工工程と、を含み、該保護部材は、ウエーハの表面側における該デバイス領域と、該リング状の補強部が形成される外周余剰領域とを含む領域に配設され、該補強部形成工程及び該裏面加工工程は、該保護部材が配設された状態で実施されることにより、ウエーハの外周は劈開面によって囲繞されて分割され、改質層やデブリが残存することがなく、該改質層やデブリからウエーハが破損するという問題が解消する。また、ウエーハの外周が劈開面によって分割されるため、リング状の補強部を形成する領域ギリギリまでデバイス領域を設定することが可能になり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の保護部材配設工程を実施する態様を示す斜視図である。
図2】レーザー加工装置のチャックテーブルにウエーハを保持する態様を示す斜視図である。
図3】(a)改質層形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す改質層形成工程を実施する際の一部拡大断面図である。
図4】(a)補強部形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す改質層形成工程を実施する際の一部拡大断面図である。
図5】移し替え工程を実施すべく、ウエーハを、ダイシングテープを介してフレームに支持させる態様を示す斜視図である。
図6】移し替え工程にて、補強部と保護部材とを除去する態様を示す斜視図である。
図7】分割工程の実施態様を示す斜視図である。
図8】ピックアップ工程の実施態様を示すべく一部を断面で示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法の実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態のウエーハの加工方法により加工されるウエーハ10が示されている。ウエーハ10は、700μmの厚みで形成された円板状の部材であり、表面10aと、裏面10bとを備え、例えば、シリコンから形成されている。ウエーハ10の表面10aには、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画されたデバイス領域16aと、デバイス領域16aを囲繞する外周余剰領域16bとが形成されている。なお、図1では、デバイス領域16aと、外周余剰領域16bとを区分する境界17が2点鎖線で示されているが、境界17は説明の便宜上記載した仮想の線であり、実際のウエーハ10の表面10aに記載されているものではない。
【0014】
本実施形態のウエーハの加工方法を実施するに際し、図1に示すような保護部材20を用意する。保護部材20は、例えば、ウエーハ10と同一の直径を備える円形の粘着テープである。このような保護部材20を用意したならば、ウエーハ10の表面10aに貼着する(保護部材配設工程)。
【0015】
次いで、図2に示すように、ウエーハ10をレーザー加工装置30(一部のみ示している)に搬送し、ウエーハ10の裏面10b側を上方に、保護部材20側を下方に向けて、ウエーハ10の中心をチャックテーブル32の中心に位置付けてチャックテーブル32の保持面32a上に載置する。チェックテーブル32は、図示しない回転駆動手段を備えており、チャックテーブル32を回転させることができる。保持面32aは、平坦面であり、通気性を備えた素材で形成され、チャックテーブル32の内部を介して図示しない吸引源に接続されている。該吸引源を作動して、保持面32a上に載置されたウエーハ10を吸引保持する。
【0016】
次いで、チャックテーブル32を図示しないアライメント手段の直下に位置付けてアライメント工程を実施してウエーハ10を検出し、ウエーハ10のレーザー加工位置を検出し、その位置情報を、レーザー加工装置30の図示しない制御手段に記憶する。次いで、該位置情報に基づいて、図3(a)に示すように、レーザー光線照射手段34の集光器36の直下に、ウエーハ10を位置付ける。レーザー光線照射手段34は、レーザー光線LBを照射する手段であり、レーザー光線LBを照射する位置は、外周余剰領域16bに対応する位置であって、デバイス領域16aと外周余剰領域16bとを区分する境界17よりも外側の位置である。
【0017】
レーザー光線LBの集光点の深さ位置は、上記した外周余剰領域16bに対応する位置の内部であって、裏面10b側からみてウエーハ10の仕上がり厚みに達しない改質層100をリング状に形成する位置である(図3(b)を参照)。なお、本実施形態におけるウエーハ10の仕上がり厚みは30μm程度で設定されていることから、改質層100は、デバイス12が形成された表面10aから30μm以上上方に形成される。このようにして、ウエーハ10の外周余剰領域16bに対応する位置を、レーザー光線照射手段34の集光器36の直下に位置付け、レーザー光線照射手段34を作動してレーザー光線LBを照射し、チャックテーブル32を矢印R1で示す方向に回転させて、外周余剰領域16bに対応する位置の内部の全周にわたり、図3(b)に示す改質層100を形成する。以上により、改質層形成工程が完了する。
【0018】
なお、上記した改質層形成工程において実施されるレーザー加工条件は、例えば、以下に示すように設定される。
波長 :1342nm
繰り返し周波数 :60kHz
平均出力 :1.6W
チャックテーブル回転数 :0.5回転/秒
【0019】
上記したように改質層形成工程を実施したならば、図4(a)に示す研削装置40(一部のみ示している)に搬送し、ウエーハ10の裏面10bを研削してリング状に形成された改質層100を除去し改質層100を起端として形成される劈開面をウエーハ10の表面10aに到達させて仕上がり厚みまで研削すると共に、リング状の補強部を外周余剰領域16bに対応して形成する補強部形成工程を実施する。なお、上記した実施形態では、保護部材配設工程を、改質層形成工程を実施する前に実施したが、本発明はこれに限定されず、改質層形成工程を実施した後、以下に説明する補強部形成工程を実施するまでの間に実施するようにしてもよい。補強部形成工程について、図4を参照しながら、以下に、より具体的に説明する。
【0020】
図4(a)に示すように、研削装置40は、ウエーハ10を吸引保持するチャックテーブル41と、チャックテーブル41に保持されたウエーハ10を研削する研削手段42とを備える。チャックテーブル41は、チャックテーブル41を矢印R2で示す方向に所定の回転数で回転させる回転駆動手段(図示は省略する)を備えている。また、チャックテーブル41は、通気性を有する素材により形成された保持面(図示は省略する)を備え、該保持面は、図示しない吸引源に接続されている。
【0021】
研削手段42は、スピンドルハウジング43と、回転自在にスピンドルハウジング43に保持されたスピンドル44と、スピンドル44を所定の回転数で回転させるスピンドル用モータ(図示は省略する)と、スピンドル44の下端に固定された円板状の研削ホイール46と、研削ホイール46の下面の外周縁部に環状に均等間隔で複数配設された研削砥石48と、を備えている。該スピンドル用モータを作動させることにより、矢印R3で示す方向にスピンドル44を回転させて研削ホイール46を回転させることができる。なお、研削ホイール46の直径は、ウエーハ10の半径と略一致するように設定されている。
【0022】
補強部形成工程を実施するに際し、ウエーハ10の保護部材20側を下方に向け、チャックテーブル41の中心にウエーハ10の中心を位置付けて載置して吸引保持させる。次いで、環状に配設された研削砥石48がウエーハ10の中心を通過するように、且つウエーハ10の外周よりも径方向内側に研削砥石48の外側の端部が位置するように、研削砥石48に対するウエーハ10の位置を設定する。このとき、研削砥石48の外側の端部の位置は、外周余剰領域16bに対応する位置であって、改質層100が形成された位置よりも僅かに外側に位置付けられる。
【0023】
次いで、チャックテーブル41を所定の回転数(例えば300rpm)で、矢印R2で示す方向に回転させると共に、研削手段42のスピンドル44を、所定の回転数(例えば6000rpm)で、矢印R3で示す方向に回転させる。次いで、図示していない研削手段42の昇降手段を作動して研削ホイール46を下降させ、ウエーハ10の裏面10bに研削砥石48を接触させる。その後、所定の研削送り速度(例えば1μm/秒)で研削ホイール46を研削送りする。
【0024】
上記したように、研削砥石48の外側の端部は改質層100が形成された位置よりも外側に位置付けられており、上記した研削加工を進めることにより改質層100が研削され、これと同時に、改質層100が形成された位置を起点として、デバイス12が形成された表面10a側に、劈開面10dが伸長する。このようにしてウエーハ10の裏面10bを仕上がり厚み(30μm)まで研削を進める結果、図4(b)に示すように、改質層100は完全に除去され、且つ改質層100が形成されていた位置から伸長した劈開面10dが表面10a側に到達し、連続する劈開面10dによって環状の分割線が形成される。そして、デバイス領域16aに対応する領域を含む裏面10bが薄化されると共に、外周余剰領域16bに対応する位置に環状の凸形状をなす補強部10cが形成される。なお、補強部10cの幅は、仕上がり厚みまで薄化されたウエーハ10を安定的に扱うことができる幅(例えば2~3mm程度)に設定される。以上により補強部形成工程が完了する。
【0025】
次いで、補強部10cが形成されたウエーハ10を裏面加工装置(図示は省略する)に搬送し、ウエーハ10の裏面10bの薄化された領域に対し、所定の加工を施す裏面加工工程を実施する。該裏面加工装置は、例えば、補強部形成工程で加工が施されてウエーハ10の裏面10bの薄化された領域に対して、電極等を形成する金属膜11(図5を参照)を被覆する装置である。該裏面加工装置にウエーハ10を搬送する際には、デバイス領域16aに対応する領域が30μmまで薄化されているにも関わらず、リング状の補強部10cが形成されていることにより、ウエーハ10を撓ませることなく安定的に取り扱うことができ、ウエーハ10に対して裏面加工工程を施すのが容易になる。そして、上記したような改質層形成工程、保護部材配設工程、補強部形成工程、裏面加工工程を含むウエーハの加工方法が実施される結果、ウエーハ10のデバイス領域16aと外周余剰領域16bとが劈開面10dによってリング状に分割されることになるから、デバイス領域16aを、リング状の劈開面10dが形成される領域ギリギリまで設定することが可能になり、デバイス領域16aにより多くのデバイス12を設定することができることから生産性が向上する。
【0026】
上記したウエーハの加工方法を実施した後、すなわち、裏面加工工程を実施した後、必要に応じて、該補強部形成工程において形成された劈開面10dに基づいてリング状の補強部10cを除去してウエーハ10を個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施するようにしてもよい。以下に、図5に加え、図6-8を参照しながら、分割工程について説明する。
【0027】
分割工程を実施するに際し、まず、図5に示すように、ウエーハ10を収容可能な大きさの開口部Faを備えた環状のフレームFと、ダイシングテープTとを用意する。ダイシングテープTは、円形でありその直径は開口部Faよりも大きく、ダイシングテープTの外周縁は、フレームFの裏面に貼着されている。図5に示すように、ウエーハ10を反転し、金属膜11が形成された裏面10b側を下方に向けて、フレームFの開口部Faの中央に位置付け、ダイシングテープTに貼着し、ダイシングテープTを介してウエーハ10をフレームFに支持させる。
【0028】
図5に示すウエーハ10から理解されるように、ウエーハ10の表面10a側には劈開面10dが到達しており、裏面10b側が薄化されたデバイス領域16aと補強部10cが形成された領域とはすでに分割されている。これを利用して、図6に示すように、デバイス領域16aを上方から押さえ付けてウエーハ10の裏面10bをダイシングテープTの中央に貼着しつつ、保護部材20と、リング状の補強部10cとを劈開面10dに基づいてウエーハ10から除去する。以上により、補強部10cが除去されたウエーハ10がダイシングテープTに貼着されると共に、フレームFでダイシングテープTの外周が支持されて、ウエーハ10が、保護部材20から、ダイシングテープTに移し替えられる(移し替え工程)。
【0029】
次いで、ダイシングテープTに移し替えられフレームFで保持されたウエーハ10に分割工程を施すべく、図7に示す切削装置50に搬送する。切削装置50は、ウエーハ10を吸引保持するチャックテーブル(図示は省略する)と、該チャックテーブルに吸引保持されたウエーハ10を切削する切削手段52とを備える。該チャックテーブルは、回転自在に構成され、図中矢印Xで示す方向にチャックテーブルを加工送りする移動手段(図示は省略する)を備えている。また、切削手段52は、図中矢印Yで示すY軸方向に配設され保持されたスピンドル54と、スピンドル54の先端に保持された環状の切削ブレード56とを備え、切削ブレード56をY軸方向で割り出し送りするY軸移動手段(図示は省略する)を備えている。スピンドル54は、図示を省略するスピンドルモータにより回転駆動される。
【0030】
分割工程を実施するに際し、まず、ウエーハ10の表面10aを上方に向けて切削装置50のチャックテーブルに載置して吸引保持し、ウエーハ10の所定の分割予定ラン14をX軸方向に整合させると共に、切削ブレード56との位置合わせを実施する。次いで、X軸方向に整合させた分割予定ライン14に高速回転させた切削ブレード56を位置付けて、表面10a側から切り込ませると共に、チャックテーブルをX軸方向に加工送りして分割溝110を形成する。さらに、分割溝110を形成した分割予定ライン14にY軸方向で隣接し、分割溝110が形成されていない分割予定ライン14上に切削手段52の切削ブレード56を割り出し送りして、上記と同様にして分割溝110を形成する切削加工を実施する。これらを繰り返すことにより、X軸方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って分割溝110を形成する。次いで、チャックテーブルを90度回転し、先に分割溝110を形成した方向と直交する方向をX軸方向に整合させ、上記した切削加工を新たにX軸方向に整合させたすべての分割予定ライン14に対して実施し、ウエーハ10に形成されたすべての分割予定ライン14に沿って分割溝110を形成する。このようにして分割工程を実施して分割予定ラン14に沿ってウエーハ10をデバイス12ごとのデバイスチップに分割する(分割工程)。
【0031】
上記したように分割工程を実施した後、必要に応じて、図8に示すようにダイシングテープTからデバイスチップ12’をピンクアップするピックアップ工程を実施してもよい。ピックアップ工程は、たとえば、図8に示すピックアップ装置60を用いて実施することができる。ピックアップ装置60は、デバイスチップ12’を吸着して搬送するピックアップコレット62と、ダイシングテープTを拡張して、隣接するデバイスチップ12’同士の間隔を拡張する拡張手段64と、を備える。
【0032】
図8に示すとおり、拡張手段64は、円筒状の拡張ドラム64aと、拡張ドラム64aに隣接し、周方向に間隔をおいて上方に延びる複数のエアシリンダ64bと、エアシリンダ64bのそれぞれの上端に連結された環状の保持部材64cと、保持部材64cの外周縁部に周方向に間隔をおいて配置された複数のクランプ64dとを含む。拡張ドラム64aの内径はウエーハ10の直径よりも大きく、拡張ドラム64aの外径はフレームFの内径Faよりも小さい。また、保持部材64cは、フレームFに対応しており、保持部材64cの平坦な上面にフレームFが載せられるようになっている。
【0033】
図8に示すように、複数のエアシリンダ64bは、保持部材64cの上面が拡張ドラム64aの上端とほぼ同じ高さの基準位置(実線で示す)と、保持部材64cの上面が拡張ドラム64aの上端よりも下方に位置する拡張位置(二点鎖線で示す)との間で、拡張ドラム64aに対して相対的に保持部材64cを昇降させるようになっている。
【0034】
図8に示すピックアップコレット64は、水平方向および上下方向に移動自在に構成されている。また、ピックアップコレット64には吸引手段(図示は省略する)が接続されており、ピックアップコレット64の先端下面でデバイスチップ12’を吸着するようになっている。
【0035】
図8を参照して説明を続けると、ピックアップ工程では、まず、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10を上に向けて、基準位置に位置する保持部材64cの上面にフレームFを載せる。次いで、複数のクランプ74dでリングフレーム16を固定する。次いで、保持部材74cを拡張位置に下降させることによって、ダイシングテープTに放射状の張力が作用する。そうすると、図8に二点鎖線で示すとおり、ダイシングテープTに貼着されているデバイスチップ12’同士の間隔が拡張する。
【0036】
次いで、ピックアップ対象のデバイスチップ12’の上方にピックアップコレット64を位置付けて下降させ、ピックアップコレット72の先端下面でデバイスチップ12’の上面を吸着する。次いで、ピックアップコレット72を上昇させ、デバイスチップ12’をダイシングテープTから剥離しピックアップする。次いで、ピックアップしたデバイスチップ12’を図示しないトレー等に搬送するか、又は次工程の所定の搬送位置に搬送する。そして、このようなピックアップ作業をすべてのデバイスチップ12’に対して順次行い、ピックアップ工程が完了する。
【0037】
上記した実施形態によれば、ウエーハ10の外周は劈開面10dによって囲繞されて分割されるため、改質層やデブリが残存することがなく、該改質層やデブリからウエーハ10が破損するという問題が解消する。また、ウエーハ10の外周が劈開面10dによって分割されるため、リング状の補強部10cを形成する領域ギリギリまでデバイス領域16aを設定することが可能になり、生産性が向上する。
【符号の説明】
【0038】
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
10c:補強部
10d:劈開面
12:デバイス
14:分割予定ライン
16a:デバイス領域
16b:外周余剰領域
17:境界
20:保護部材(粘着テープ)
30:レーザー加工装置
32:チャックテーブル
34:レーザー光線照射手段
36:集光器
40:研削装置
41:チャックテーブル
42:研削手段
43:スピンドルハウジング
44:スピンドル
46:研削ホイール
48:研削砥石
50:切削装置
52:切削手段
54:スピンドル
56:切削ブレード
60:ピックアップ装置
62:ピックアップコレット
64:拡張手段
100:改質層
110:分割溝
F:フレーム
T:ダイシングテープ
LB:レーザー光線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8