(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】NC工作機械に取り付け可能な画像測定ヘッド装置、および、NC工作機械システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/24 20060101AFI20240701BHJP
B23Q 15/04 20060101ALI20240701BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20240701BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20240701BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B23Q17/24 A
B23Q15/04
G05B19/4155 S
B23Q17/20 A
G01B11/24 K
(21)【出願番号】P 2020130597
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 展也
(72)【発明者】
【氏名】森内 栄介
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-169007(JP,A)
【文献】特開2011-206899(JP,A)
【文献】特開平09-141459(JP,A)
【文献】特開2000-074644(JP,A)
【文献】特開2007-083249(JP,A)
【文献】特開2006-255826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/24
B23Q 15/04
G05B 19/4155
B23Q 17/20
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC工作機械の主軸に取り付けられる画像測定ヘッド装置であって、
当該画像測定ヘッド装置は、
下端に対物レンズを交換可能に着脱できる鏡筒本体部と、
前記鏡筒本体部に取り付けられた照明手段と、
前記鏡筒本体部を正面視したときの左右方向のうちのいずれか一方側に取り付けられた撮像装置と、
上面側に前記主軸に着脱する被チャック部を有するとともに、前記鏡筒本体部を支持する支持フレームと、
前記支持フレームに固定的に取り付けられていて、前記支持フレームの正面側に設けられた把持部と、を備える
ことを特徴とする画像測定ヘッド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像測定ヘッド装置において、
前記照明手段は、落射照明手段を有し、
前記落射照明手段は、前記鏡筒本体部を正面視したときの左右方向のうちのいずれか他方側に取り付けられている
ことを特徴とする画像測定ヘッド装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像測定ヘッド装置において、
前記照明手段は、リング照明手段を有し、
前記リング照明手段は、前記鏡筒本体部の下側寄りであって、前記対物レンズを環囲するように設けられている
ことを特徴とする画像測定ヘッド装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像測定ヘッド装置において、
前記把持部は、
当該画像測定ヘッド装置を正面視したとき、
前記鏡筒本体部の中心線よりも左右方向のうちの前記一方側寄りに配置されている
ことを特徴とする画像測定ヘッド装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像測定ヘッド装置を主軸に取り付けることができるNC工作機械と、
前記NC工作機械を駆動制御するNCコントローラと、
前記画像測定ヘッド装置用の画像測定ソフトウェアを格納している端末装置と、を具備したNC工作機械システムの制御方法であって、
前記撮像装置から画像データが前記端末装置に送られ、
前記端末装置は、前記画像測定ソフトウェアによって画像データに基づいて対象物の形状測定を実行する
ことを特徴とするNC工作機械システムの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のNC工作機械システムの制御方法において、
前記NCコントローラが前記NC工作機械に駆動信号を与えて前記主軸を対象物に対して接離方向に駆動させるとともに、前記主軸の位置情報を前記端末装置に提供し、
前記主軸が対象物に対して接離方向に駆動するときに画像測定ヘッド装置から撮像データが時々刻々と前記端末装置に提供され、
前記端末装置は、前記撮像データを対応する前記主軸の位置情報と紐付けて記憶しておき、
前記端末装置は、記憶した撮像データのうちからフォーカスが合った撮像データを特定し、
前記端末装置は、フォーカスが合った前記撮像データと紐付けられた前記主軸の位置情報を前記NCコントローラにフィードバックし、
前記NCコントローラは、前記端末装置からフィードバックされた前記主軸の位置に前記主軸を移動させるように前記NC工作機械に駆動指令を与える
ことを特徴とするNC工作機械システムの制御方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のNC工作機械システムの制御方法において、
前記主軸に所定の加工工具を取り付けた状態で、対象物の表面において予め指定された加工指定座標値に中心点または中心線が合うように所定の幾何学的対称図形を加工し、
前記主軸に前記画像測定ヘッド装置を取り付けた状態で、画像測定により前記所定の幾何学的対称図形の中心点または中心線の座標値を画像測定座標値として求め、
前記加工指定座標値と前記画像測定座標値とのズレにより、前記所定の加工工具に対する前記画像測定ヘッド装置のオフセット量を求める
ことを特徴とするNC工作機械システムの制御方法。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかに記載のNC工作機械システムの制御方法において、
前記主軸に所定の加工工具を取り付けた状態で、対象物の表面において予め指定された加工指定間隔で二以上の所定の幾何学的図形を加工し、
前記主軸に前記画像測定ヘッド装置を取り付けた状態で、画像測定により前記所定の幾何学的図形の間隔を画像測定間隔として求め、
前記加工指定間隔と前記画像測定間隔とのズレにより、前記NC工作機械の駆動誤差を校正する校正値または校正式を求める
ことを特徴とするNC工作機械システムの制御方法。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれかに記載のNC工作機械システムの制御方法において、
前記主軸に所定の加工工具を取り付けた状態で、対象物に設計値に基づいた加工を行ない、
前記主軸に前記画像測定ヘッド装置を取り付けた状態で、画像測定により前記対象物の加工された箇所を画像測定し、
画像測定の結果を前記設計値と対比してズレを特定し、前記ズレ分を加工する加工指令を求め、
前記NCコントローラは、前記端末装置からフィードバックされた前記ズレ分を加工する加工指令に従って前記NC工作機械に駆動指令を与える
ことを特徴とするNC工作機械システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNC工作機械に取り付け可能な画像測定ヘッド装置、および、NC工作機械システムの制御方法に関する。具体的には、加工工具に代えてNC工作機械の主軸に取り付け可能な画像測定ヘッド装置および画像測定ソフトウェアとNC工作機械との連携制御動作に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械で対象物(ワーク)を加工する途中あるいは加工後に加工精度を検査する必要がある。通常、工作機械からワークを一度取り外し、測定機にワークをセットして形状測定等を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5843531
【文献】特開2002-254275
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工中にワークを測定(検査)するにあたってワークを測定機にセットしたり外したりする段替えは大変な手間がかかっており、製品の製造効率を低下させる一因となる。また、測定(検査)の結果として追加の加工を行なうとしても、再度ワークを工作機械にセットするときに完全に同じ位置にセットできるわけではないので、どうしても加工誤差が残ってしまう。
【0005】
これまでにも機上測定を可能にするための提案は種々なされてきたが、接触式の測定プローブでは近年の微細加工の検査に対応できなくなってきているという問題がある。
非接触式の観察装置を工作機械の主軸に交換可能に取り付ける構成も提案されている。しかし、実際の計測は、ユーザ(オペレータ)が顕微鏡の視野中でスケールの目盛を読んだり、移動ステージや主軸を移動させながらカウンタを読んだりするマニュアル作業であり、測定効率および測定精度が向上しなかった。また、移動ステージや主軸の駆動軸のカウンタを読む場合、測定の精度は工作機械の精度(工作機械の駆動軸の精度)が上限となり、結局、加工精度以上の精度でワークの加工精度を検証することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像測定ヘッド装置は、
NC工作機械の主軸に取り付けられる画像測定ヘッド装置であって、
当該画像測定ヘッド装置は、
下端に対物レンズを交換可能に着脱できる鏡筒本体部と、
前記鏡筒本体部に取り付けられた照明手段と、
前記鏡筒本体部を正面視したときの左右方向のうちのいずれか一方側に取り付けられた撮像装置と、
上面側に前記主軸に着脱する被チャック部を有するとともに、前記鏡筒本体部を支持する支持フレームと、
前記支持フレームの正面側に設けられた把持部と、を備える
ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態では、
前記照明手段は、落射照明手段を有し、
前記落射照明手段は、前記鏡筒本体部を正面視したときの左右方向のうちのいずれか他方側に取り付けられている
ことが好ましい。
【0008】
本発明の一実施形態では、
前記照明手段は、リング照明手段を有し、
前記リング照明手段は、前記鏡筒本体部の下側寄りであって、前記対物レンズを環囲するように設けられている
ことが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態では、
前記把持部は、
当該画像測定ヘッド装置を正面視したとき、
前記鏡筒本体部の中心線よりも左右方向のうちの前記一方側寄りに配置されている
ことが好ましい。
【0010】
本発明のNC工作機械システムの制御方法は、
前記画像測定ヘッド装置を主軸に取り付けることができるNC工作機械と、
前記NC工作機械を駆動制御するNCコントローラと、
前記画像測定ヘッド装置用の画像測定ソフトウェアを格納している端末装置と、を具備したNC工作機械システムの制御方法であって、
前記撮像装置から画像データが前記端末装置に送られ、
前記端末装置は、前記画像測定ソフトウェアによって画像データに基づいて対象物の形状測定を実行する
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記NCコントローラが前記NC工作機械に駆動信号を与えて前記主軸を対象物に対して接離方向に駆動させるとともに、前記主軸の位置情報を前記端末装置に提供し、
前記主軸が対象物に対して接離方向に駆動するときに画像測定ヘッド装置から撮像データが時々刻々と前記端末装置に提供され、
前記端末装置は、前記撮像データを対応する前記主軸の位置情報と紐付けて記憶しておき、
前記端末装置は、記憶した撮像データのうちからフォーカスが合った撮像データを特定し、
前記端末装置は、フォーカスが合った前記撮像データと紐付けられた前記主軸の位置情報を前記NCコントローラにフィードバックし、
前記NCコントローラは、前記端末装置からフィードバックされた前記主軸の位置に前記主軸を移動させるように前記NC工作機械に駆動指令を与える
ことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、
前記主軸に所定の加工工具を取り付けた状態で、対象物の表面において予め指定された加工指定座標値に中心点または中心線が合うように所定の幾何学的対称図形を加工し、
前記主軸に前記画像測定ヘッド装置を取り付けた状態で、画像測定により前記所定の幾何学的対称図形の中心点または中心線の座標値を画像測定座標値として求め、
前記加工指定座標値と前記画像測定座標値とのズレにより、前記所定の加工工具に対する前記画像測定ヘッド装置のオフセット量を求める
ことが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態では、
前記主軸に所定の加工工具を取り付けた状態で、対象物の表面において予め指定された加工指定間隔で二以上の所定の幾何学的図形を加工し、
前記主軸に前記画像測定ヘッド装置を取り付けた状態で、画像測定により前記所定の幾何学的図形の間隔を画像測定間隔として求め、
前記加工指定間隔と前記画像測定間隔とのズレにより、前記NC工作機械の駆動誤差を校正する校正値または校正式を求める
ことが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態では、
前記主軸に所定の加工工具を取り付けた状態で、対象物に設計値に基づいた加工を行ない、
前記主軸に前記画像測定ヘッド装置を取り付けた状態で、画像測定により前記対象物の加工された箇所を画像測定し、
画像測定の結果を前記設計値と対比してズレを特定し、前記ズレ分を加工する加工指令を求め、
前記NCコントローラは、前記端末装置からフィードバックされた前記ズレ分を加工する加工指令に従って前記NC工作機械に駆動指令を与える
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】画像測定ソフトウェアによって提供されるGUI画面の一例である。
【
図4】フォーカスサーチによってフォーカス合わせをする様子を説明するための説明図である。
【
図5】加工工具と画像測定ヘッド装置とのオフセットを例示する図である。
【
図6】間隔をあけた二本の線状の溝を画像測定する様子を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、NC工作機械システムの全体構成である。
本実施形態のNC工作機械システム100は、加工工具に代えて主軸に画像測定ヘッド装置を取り付けている。
NC工作機械システム100は、NC工作機械200と、NCコントローラ300と、画像測定ヘッド装置400と、画像測定用端末装置500(以下、端末装置500)と、光源コントローラ600と、を備えている。
【0017】
NC工作機械200は、ステージ210と、主軸220と、ステージ210と主軸220とを3次元的に相対移動させる駆動機構(不図示)と、を有する。
ステージ210は、加工対象物を載置またはチャックして保持するものであって、例えば
図1に記載のXYZ座標軸のX軸方向およびY軸方向に移動可能である。
主軸220は、ステージ210の上方においてステージ210に対して高さ方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。X軸、Y軸、Z軸方向の各駆動機構には、ガイドレール、スライダ、モータの組み合わせからなる送り機構とともにスライダの変位(位置)を検出するエンコーダ(位置検出手段)が設けられている。
【0018】
主軸220の先端(下端)にはチャック装置が設けられており、放電加工用の放電ワイヤ電極装置や切削用のバイトなどの加工工具201を交換可能に取り付けられるようになっている。さらに、主軸220のチャック装置には、加工工具201に代えて、画像測定ヘッド装置400を取り付けられるようになっている。
図1中では、主軸220に画像測定ヘッド装置400を取り付けた状態を例示している。
【0019】
NCコントローラ300は、NC工作機械200を駆動制御するコントローラである。
NCコントローラ300は、所定の加工制御プログラムに従い、NC工作機械200の駆動機構の駆動制御および加工工具(例えば放電ワイヤ電極装置)の制御(電圧制御)を行なう。NCコントローラ300は、NC工作機械200の各軸の送り機構に向けて駆動制御信号を与える。また、NCコントローラ300は、各軸のエンコーダから位置検出信号を受信して、必要に応じてフィードバック制御を行なう。
【0020】
画像測定ヘッド装置400は、機上測定のために、加工工具201に代えて主軸220に取り付けられるものである。
図2は、画像測定ヘッド装置400の外観図である。
画像測定ヘッド装置400は、支持フレーム410と、把持部420と、鏡筒本体部430と、撮像装置440と、照明手段450と、を有する。
【0021】
支持フレーム410は、上面側に主軸220のチャック装置にホールドされる被チャック部411を有している。
支持フレーム410は、側面視で逆L字形の部材である。支持フレーム410は、上面側を構成する天板部412と、天板部412からL字状に屈曲して正面側を構成する正面板部413と、を有する。天板部412の上面側に被チャック部411が設けられている。正面板部413は、その背面側において鏡筒本体部430を固定的に保持している。
【0022】
把持部420は、側面視で逆L字形の部材であって、支持フレーム410の正面板部413に固定的に取り付けられている。
把持部420の逆L字を側面視したときの横棒を構成する部材を上辺部421とし、上辺部421からL字状に屈曲して垂下する縦棒部分を握り部422とする。
支持フレーム410の正面板部413を正面からみたとき、正面板部413の左寄りで上側のコーナー部付近に上辺部421が固定されている。加工工具201と画像測定ヘッド装置400とを交換するときなど、ユーザ(オペレータ)が画像測定ヘッド装置400を持ち上げる際には、握り部422を手で掴む。把持部420は、画像測定ヘッド装置400を持ったとき、左右で重量のバランスがとれるように正面板部413の左寄りに取り付けられている。
【0023】
鏡筒本体部430は、円筒形状であって、下端部に対物レンズ431を交換可能に取り付けられるようになっている。
鏡筒本体部430には、撮像装置440と、照明手段450と、が取り付けられている。
撮像装置440は、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサであり、画像測定ヘッド装置400を正面側からみたとき、鏡筒本体部430の左側に取り付けられている。鏡筒本体部430の内部では、対物レンズ431を通過してきた光を撮像装置440に向けて反射するように光路を折り曲げる反射ミラー等の光学素子が内設されている。
【0024】
照明手段450は、落射照明手段460と、リング照明手段470と、を有する。
落射照明手段460は、全体的に円柱状であって、画像測定ヘッド装置400を正面側からみたとき、鏡筒本体部430の右側に設けられている。(左右を逆にして、正面視で、落射照明手段460が鏡筒本体部430の左側にあって、撮像装置440が鏡筒本体部430の右側にあってももちろんよい。)
落射照明手段460は、光源と反射ミラーとを有し、鉛直下向きに照射された光源からの光を反射ミラーで反射させて鏡筒本体部430の内部の光路に導く。さらに、鏡筒本体部430の内部には、ビームスプリッタ等の光学素子が設けられ、落射照明光を対物レンズ431の光軸と同軸にして対象物に照射するようになっている。
【0025】
リング照明手段470は、リング照明部471と、リング照明保持部472と、を有する。
リング照明部471は、対物レンズ431の周囲を環囲するように鏡筒本体部430の下方に配置され、照明光を対象物に向けて照射する。リング照明保持部472は、側面視でL字形の部材であって、L字の下側板をリング照明支持板473とし、リング照明支持板473からL字に屈曲して鉛直に延在する鉛直板をリング照明取付板474とする。リング照明支持板473がリング照明部471を支持している。リング照明支持板473と鏡筒本体部430の下端面との間には指を入れて対物レンズ431を回すためのギャップGがある。そして、リング照明取付板474は、鏡筒本体部430の背面側に固定されている。
【0026】
なお、照明手段450としては、落射照明手段460およびリング照明手段470の両方を備えていてもよいし、どちらか一方だけでもよい。あるいは、照明手段450としては、落射照明手段460やリング照明手段470ではない他の照明手段を採用してもよい。
【0027】
画像測定用端末装置500(端末装置500)は、CPU、ROM、RAMを有するいわゆる小型コンピュータ(例えば、ノートパソコンでもよい)であって、記憶装置に画像測定用の制御プログラムが組み込まれている。(画像測定用の制御プログラムは、画像測定パートプログラムや画像測定ソフトウェアとも呼称される。)
図3は、画像測定ソフトウェアによって提供されるGUI画面の一例である。
【0028】
画像測定ヘッド装置400から画像データが端末装置500に送られる。
取得された画像データに対し各種演算処理(画像解析)を行なって対象物の形状測定を行なう技術自体は本出願人によっても開示されている既知の技術である。対象物の形状測定としては、エッジ検出、円測定(真円度、直径、中心検出)、真直度、二点間あるいは二直線間距離、などの計測が例として挙げられる。
【0029】
1つの視野(画像データ)内において画像測定によって求められる形状測定(形状解析)の精度は、NC工作機械200のエンコーダの精度ではなく、画像測定ヘッド装置400の光学素子(対物レンズ431やイメージセンサ)の精度に依存する。また、画像測定ソフトウェアによって画像データからエッジ検出や円測定等の形状解析を行なうことにより、ユーザ(オペレータ)ごとの技量の差に関係なく高精度な計測結果が得られる。したがって、工作機械の精度(工作機械の駆動軸の精度)やユーザの技量に制約されず、ワークの加工精度を高い精度で検証することができるようになる。
【0030】
また、対物レンズ431の焦点距離は既知であることから、対象物の表面にフォーカスが合うように横方向に走査するときの主軸220の高さ変化から対象物の表面形状(等高線マップ、コンターマップ、高さプロファイル)を得ることもできる。
フォーカスが合っているかどうかの判定は、画像測定ソフトウェアによる画像解析によって可能であり、例えばコントラスト法などがある。もっとも単純には、ユーザ(オペレータ)がマニュアル操作でNCコントローラ300経由でNC工作機械200の主軸220を上下動させてフォーカス合わせを行なってもよい。
【0031】
光源コントローラ600は、落射照明手段460およびリング照明手段470の光源(LED)に電源(電圧)を供給する。
光源コントローラ600は、端末装置500からの光量調整指令に基づいて、光源(LED)に与える電圧を調整し、対象物を照射する光の光量(または色)を調整する。光量調整指令は、端末装置500のGUI画面上でユーザ(オペレータ)が光量調整の操作を行なってもよいし(
図3中の符号510は光量調整用のGUIである)、端末装置500の画像測定ソフトウェアが対象物に応じて自動調光するようにしてもよい。
【0032】
(動作例1:フォーカス制御)
加工対象物の加工中にNC工作機械200で機上測定を実行するため、加工工具201を画像測定ヘッド装置400に交換する。
現状、この交換自体は、ユーザ(オペレータ)によるマニュアル作業で行なわれることを想定しているが、自動交換するようにすることもできる。
機上測定によって得られる形状データに基づいて、加工対象物のOK/NG判定や、削り残し部分の特定と追加加工の指令が行なわれる。
以下、画像測定をNC工作機械200の機上で実行するために必要な画像測定用の端末装置500とNCコントローラ300(NC工作機械200)との連携動作について説明する。
【0033】
動作例1として、まずフォーカス制御について説明する。
通常の画像測定機であれば、画像データに基づいたオートフォーカス機能が組み込まれている。
これに対し、本実施形態のようにNC工作機械200の主軸220に画像測定ヘッド装置400が取り付けられている構成にあっては、画像測定ソフトウェアにより画像データのフォーカスがズレていることを検知した場合、端末装置500からNC工作機械200への連携指令によって主軸220を上下させてフォーカス合わせを実行する必要がある。
【0034】
まず、画像測定ヘッド装置400から端末装置500に画像データが提供される。
端末装置500に組み込まれた画像測定ソフトウェアは、提供された画像データの合焦度(フォーカスが合っているかズレているか)を評価する。例えば、コントラスト法が例として挙げられる。画像測定ソフトウェアにより画像データのフォーカスズレが検知された場合、端末装置500はNCコントローラ300にフォーカス合わせのためのフォーカスサーチ指令を与える。
【0035】
図4は、フォーカスサーチによってフォーカス合わせをする様子を説明するための説明図である。
フォーカスサーチ指令を受けた場合、NCコントローラ300は、NC工作機械200に対し、主軸220をZ方向に所定距離だけ上下動させる駆動信号を与える。NCコントローラ300は、NC工作機械200の主軸220を上下往復させるときの主軸220の高さ位置を端末装置500に時々刻々提供する。また、主軸220が上下動するのと並行して、画像測定ヘッド装置400の撮像装置440で取得された画像データが時々刻々端末装置500に提供される。このとき、主軸220の高さ位置のサンプリングタイミングと、画像測定ヘッド装置400の撮像タイミングと、を合わせおく(同期しておく)とよい。そして、端末装置500は、撮像装置440で取得された画像データを記憶するとき、その画像データが撮像されたときの主軸220の高さ位置情報を紐付けて記憶しておく。
【0036】
端末装置500は、記憶した撮像データのうちからフォーカスが合った撮像データを特定する。そして、端末装置500は、フォーカスが合った撮像データに紐付けられた主軸220の位置情報をNCコントローラ300にフィードバックする。NCコントローラ300は、端末装置500からフィードバックされた主軸220の位置に主軸220を移動させるようにNC工作機械200に駆動指令を与える。この連携動作により、自動のフォーカス合わせが可能になる。
【0037】
(動作例2:オフセット校正)
加工工具201を画像測定ヘッド装置400に交換したとき、加工工具201の中心と画像測定ヘッド装置400の軸(光軸)とは一致していることが好ましいのはもちろんである。
ただし実際には加工工具201の中心と画像測定ヘッド装置400の軸(光軸)とにズレがあってオフセットしてしまっている可能性はある。そこで、加工工具201の中心と画像測定ヘッド装置400の軸(光軸)との横方向(X軸方向、Y軸方向)のオフセットを求めておく。
【0038】
主軸220に所定の加工工具201を取り付けた状態で、予め指定された加工指定座標値に中心点が合うように所定の幾何学的対称図形を加工する。幾何学的対称図形として、中心がある図形としては、円や正方形が例として挙げられるが、もちろん正方形以外の正多角形でもよい。次に、加工工具201を取り外して、主軸220に画像測定ヘッド装置400を取り付ける。そして、画像測定により幾何学的対称図形の中心点の座標値を画像測定座標値C1として求める。
【0039】
このとき、フォーカス合わせのために主軸220を上下方向(Z軸方向)に駆動する必要があるかもしれないが、主軸220を横方向(X軸方向、Y軸方向)には動かさない。あるいは、工具交換の際に主軸220を所定の位置まで移動させる必要がある場合には、前記所定の幾何学的対称図形を加工したときの主軸220の位置(X、Y)を記憶しておいて、その位置に戻るようにする。(通常は、加工指定座標値の直上に戻る。)
画像データの画面内において、画像測定座標値C1を求めたとき、例えば
図5に例示のように、加工指定座標値C0との間にズレがあれば、それは加工工具201と画像測定ヘッド装置400とのオフセットである。このオフセットをX軸方向、Y軸方向で求めて、オフセット校正量として記憶しておく。
【0040】
オフセットとして、中心ズレの他、座標軸の傾斜(チルト)も校正する場合、次のようにする。
主軸220に所定の加工工具201を取り付けた状態で、予め指定された加工指定座標値に中心線が合うように所定の幾何学的対称図形を加工する。例えば、対称線がX軸(あるいはY軸)に平行になるように幾何学的対称図形を加工する。幾何学的対称図形として、線対称な図形としては、長方形、二等辺三角形、楕円などが挙げられるだろう。このあと、加工工具201を取り外して、主軸220に画像測定ヘッド装置400を取り付け、画像測定によって幾何学的対称図形の中心線(画像測定座標値)を求める。画像測定で求めた幾何学的対称図形の中心線と画像測定ソフトウェアが認識している座標軸(X軸、Y軸)との間に傾き(チルト)があれば、その傾斜角をオフセット校正量として記憶しておく。
【0041】
画像測定ソフトウェアによって加工対象物のOK/NG判定や、削り残し部分の追加加工の指令を行なう場合、上記オフセット分を補正するようにする。
【0042】
(動作例3:工作機械の駆動誤差補正)
NC工作機械200の駆動軸(X軸、Y軸)にはエンコーダが設けられ、主軸220の位置はエンコーダによって計測される。ただし、NC工作機械200のエンコーダにも誤差はある。そこで、NC工作機械200のエンコーダの誤差を画像測定の精度で補正することを考える。
【0043】
主軸220に所定の加工工具201を取り付けた状態で、対象物の表面において予め指定された加工指定間隔で二以上の所定の幾何学的図形を加工する。このとき、加工指定間隔は、画像測定ヘッド装置400の対物レンズ431の1つの視野内に収まる範囲とする。(対物レンズ431の倍率にもよるが、例えば1mm以下。)
図6の例では、間隔をあけた二本の線状の溝を加工し、近い側のエッジ同士の間隔が加工指定間隔であるとする。
【0044】
加工工具201を取り外して、主軸220に画像測定ヘッド装置400を取り付けた状態で、画像測定により二本の溝のエッジ検出を行なう。そして、エッジ同士の間隔D1を求める。(求めたエッジ同士の間隔を画像測定間隔とする。)そして、加工指定間隔D0と画像測定間隔D1とのズレにより、NC工作機械200の駆動誤差を校正する校正値または校正式を求める。
【0045】
1つの視野内において画像測定によって求められる線間距離は、NC工作機械200のエンコーダの精度ではなく、画像測定ヘッド装置400の光学素子(対物レンズ431やイメージセンサ)の精度に依存する。そして、画像測定における1つの視野内の測定値の校正は、所定のゲージ等の測定によって簡易に校正され得る。したがって、簡易かつ高精度に校正された画像測定の精度でNC工作機械200の駆動誤差を校正することができる。
【0046】
(動作例4:追加加工指令)
端末装置500に加工対象物の設計値を登録しておき、画像測定で得られる形状データに基づいて、加工対象物のOK/NG判定を行なう。さらに、端末装置500からNCコントローラ300に自動的に削り残し部分の特定と追加加工の指令を行なうようにするとよい。画像測定ヘッド装置400を取り外して、主軸220に加工工具201を取り付けた後、NCコントローラ300は、端末装置500からフィードバックされた追加加工指令に従ってNC工作機械200に駆動指令を与えて、加工対象物に追加加工を加える。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
100…NC工作機械システム、
200…NC工作機械、
201…加工工具
210…ステージ、220…主軸、
300…NCコントローラ、
400…画像測定ヘッド装置、
410…支持フレーム、411…被チャック部、412…天板部、413…正面板部、
420…把持部、421…上辺部、422…握り部、
430…鏡筒本体部、431…対物レンズ、
440…撮像装置、
450…照明手段、
460…落射照明手段、470…リング照明手段、471…リング照明部、472…リング照明保持部、473…リング照明支持板、474…リング照明取付板、
500…画像測定用端末装置、510…調光用GUI、
600…光源コントローラ。