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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020134086
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030237
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 智晃
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069405(JP,A)
【文献】特開2015-119126(JP,A)
【文献】特開平10-098271(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150310(WO,A1)
【文献】特開2001-053444(JP,A)
【文献】特開2003-304068(JP,A)
【文献】特開2004-356238(JP,A)
【文献】特開2011-096741(JP,A)
【文献】特開2013-051391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 3/26
H05K 3/42
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半硬化状態の絶縁樹脂層、前記絶縁樹脂層の上面に積層された半硬化状態の保護用樹脂層、及び前記保護用樹脂層の上面に積層されたカバー層を有する絶縁シートを準備する工程と、
配線層が形成された下地層上に、前記絶縁樹脂層が前記下地層側を向くように前記絶縁シートを配置し、前記絶縁樹脂層及び前記保護用樹脂層を硬化させる工程と、
硬化後の前記絶縁樹脂層及び前記保護用樹脂層に前記配線層の上面を露出するビアホールを形成する工程と、
前記カバー層を除去後、所定の溶液を用いて前記ビアホール内の前記絶縁樹脂層及び/又は前記保護用樹脂層の残渣を除去すると共に前記保護用樹脂層を溶解する工程と、を有し、
前記保護用樹脂層は、前記絶縁樹脂層より前記溶液に対する耐性が低く、
前記保護用樹脂層を溶解する工程では、前記保護用樹脂層が全て溶解されて前記絶縁樹脂層の上面が露出する、配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁樹脂層及び前記保護用樹脂層は、熱硬化性樹脂であり、
前記保護用樹脂層は、前記絶縁樹脂層より重合度が低い、請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記保護用樹脂層は、前記絶縁樹脂層より薄い、請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記残渣を除去する工程の後において、前記絶縁樹脂層の上面の粗度は、前記ビアホールの内壁面の粗度よりも小さい、請求項1乃至3の何れか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁樹脂層及び前記保護用樹脂層は、同種の樹脂であり、
前記樹脂の組成及び/又はフィラーの量が異なる、請求項1乃至4の何れか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記カバー層の除去は、前記ビアホールを形成する工程の前、又は前記ビアホールを形成する工程と前記残渣を除去する工程との間に行う、請求項1乃至5の何れか一項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の上に配線層と絶縁層とが相互に形成された多層の配線基板が知られている。従来の多層の配線基板の製造方法では、例えば、基板上に第1配線層を形成し、第1配線層上に絶縁層と保護層を順次形成する。保護層は、PETフィルム、レジスト、金属箔等の後述のデスミア処理で用いる所定の溶液では除去できない材料により形成される。
【0003】
次に、保護層及び絶縁層に、第1配線層に到達するビアホールを形成する。そして、保護層をマスクにしてビアホール内を所定の溶液でデスミア処理し、ビアホール内の樹脂残渣を除去する。そして、デスミア処理の後、保護層を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-010639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の配線基板の製造方法では、デスミア処理後に保護層を除去する工程が別に必要となるため、配線基板の製造工程が煩雑になる。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、配線基板の製造工程の効率化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本配線基板の製造方法は、半硬化状態の絶縁樹脂層、前記絶縁樹脂層の上面に積層された半硬化状態の保護用樹脂層、及び前記保護用樹脂層の上面に積層されたカバー層を有する絶縁シートを準備する工程と、配線層が形成された下地層上に、前記絶縁樹脂層が前記下地層側を向くように前記絶縁シートを配置し、前記絶縁樹脂層及び前記保護用樹脂層を硬化させる工程と、硬化後の前記絶縁樹脂層及び前記保護用樹脂層に前記配線層の上面を露出するビアホールを形成する工程と、前記カバー層を除去後、所定の溶液を用いて前記ビアホール内の前記絶縁樹脂層及び/又は前記保護用樹脂層の残渣を除去すると共に前記保護用樹脂層を溶解する工程と、を有し、前記保護用樹脂層は、前記絶縁樹脂層より前記溶液に対する耐性が低く、前記保護用樹脂層を溶解する工程では、前記保護用樹脂層が全て溶解されて前記絶縁樹脂層の上面が露出する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、配線基板の製造工程の効率化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その1)である。
図2】本実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その2)である。
図3】本実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その3)である。
図4】本実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
本実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。図1図4は、本実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図である。まず、図1(a)に示す工程では、基板10の一方の面に所定パターンの配線層20を形成する。ここでは、配線層20が形成される下地層として基板10(例えば、ガラスエポキシ樹脂等)を例示するが、下地層は基板10上に形成された絶縁層等であってもよい。又、基板10はリジットタイプであってもよいし、フレキシブルタイプであってもよい。配線層20の形成方法としては、後述するセミアディティブ法等の各種配線形成方法を採用できる。配線層20の材料としては、例えば、銅等を使用できる。
【0012】
次に、図1(b)に示す工程では、絶縁シート300を準備し、配線層20を被覆するように基板10の一方の面に絶縁シート300を配置する。絶縁シート300は、配線基板が備える絶縁層の形成に使用されるものであり、半硬化状態の絶縁樹脂層30、絶縁樹脂層30の上面に積層された半硬化状態の保護用樹脂層31、及び保護用樹脂層31の上面に積層されたカバー層32を有している。絶縁シート300は、絶縁樹脂層30が下地層である基板10側を向くように基板10上に配置される。なお、絶縁樹脂層30の下層にもカバー層32と同様のカバー層を設けてもよい。この場合は、絶縁シート300を基板10の一方の面に配置する前に、絶縁樹脂層30の下層のカバー層を除去する。
【0013】
絶縁樹脂層30の厚さは、例えば、20μm~45μm程度である。保護用樹脂層31の厚さは、絶縁樹脂層30の厚さよりも薄く、例えば、5μm~15μm程度である。カバー層32の厚さは、例えば、30μm~40μm程度である。保護用樹脂層31が絶縁樹脂層30より薄いことで、表面粗度のコントロールの点で有利となる。
【0014】
絶縁樹脂層30の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を使用できる。保護用樹脂層31の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を使用できる。絶縁樹脂層30や保護用樹脂層31は、シリカ等のフィラーを含有してもよい。カバー層32の材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を使用できる。カバー層32は、保護用樹脂層31から容易に剥離できるように保護用樹脂層31に仮接着されている。
【0015】
絶縁樹脂層30及び保護用樹脂層31は、硬化後に、デスミア工程で使用される所定の溶液(デスミア液)に対する保護用樹脂層31の耐性が、デスミア液に対する絶縁樹脂層30の耐性よりも低くなるように、各々の材料が選定されている。なお、デスミア工程とは、絶縁樹脂層30及び/又は保護用樹脂層31の残渣を除去する工程である。保護用樹脂層31のデスミア液に対する耐性を、絶縁樹脂層30のデスミア液に対する耐性よりも低くするには、保護用樹脂層31の材料として、絶縁樹脂層30よりも重合度の低い材料を選定すればよい。
【0016】
絶縁樹脂層30と保護用樹脂層31は、同種の樹脂を用いてもよいし、異種の樹脂を用いてもよいが、エッチングレートの観点から、同種の樹脂を用いることが好ましい。絶縁樹脂層30と保護用樹脂層31に同種の樹脂を用いる場合には、樹脂の組成やフィラーの量を変えることで重合度を調整できる。例えば、絶縁樹脂層30と保護用樹脂層31にエポキシ系の樹脂を用い、エポキシ系樹脂の組成やフィラーの量を変えることで重合度を調整できる。
【0017】
次に、図1(c)に示す工程では、絶縁樹脂層30及び保護用樹脂層31を熱処理して硬化させる。絶縁樹脂層30及び保護用樹脂層31を基板10側に押圧しながら熱処理して硬化させてもよい。これにより、前述のように、保護用樹脂層31のデスミア液に対する耐性が、絶縁樹脂層30のデスミア液に対する耐性よりも低くなる。
【0018】
次に、図2(a)に示す工程では、絶縁樹脂層30、保護用樹脂層31、及びカバー層32を貫通し、配線層20の上面を露出するビアホール30xを形成する。ビアホール30xは、例えば、カバー層32の上面側に開口されている開口部の径が配線層20の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部となる。ビアホール30xは、例えば、炭酸ガスレーザ等を用いたレーザ加工法により形成できる。ビアホール30xは、ドリル加工法や異方性ドライエッチング法(RIE等)により形成してもよい。
【0019】
次に、図2(b)に示す工程では、図2(a)に示すカバー層32を除去(剥離)して保護用樹脂層31の上面を露出させる。なお、図2(a)の工程の前にカバー層32を除去して保護用樹脂層31の上面を露出させてもよい。すなわち、カバー層32の除去は、ビアホール30xを形成する工程の前、又はビアホール30xを形成する工程と後述の樹脂残渣を除去する工程との間に行えばよい。
【0020】
図2(c)に拡大して示すように、絶縁樹脂層30、保護用樹脂層31、及びカバー層32を貫通し、配線層20の上面を露出するビアホール30xを形成すると、ビアホール30x内に露出する配線層20の上面に樹脂残渣500(絶縁樹脂層30及び/又は保護用樹脂層31の残渣)が生じる場合がある。そこで、次の工程で、デスミア処理を行い、樹脂残渣500を除去する。
【0021】
図3(a)及び図3(b)は、デスミア処理の様子を時系列で示している。デスミア処理は、過マンガン酸系溶液(好適な例としては、過マンガン酸カリウム溶液)等を用いたウェットエッチングにより行うが、まず、図3(a)に示すように、デスミア処理により樹脂残渣500が少しずつ除去される。このとき、硬化後の保護用樹脂層31は、徐々に溶解されて薄くなっていく。又、ビアホール30xの内壁面は、デスミア処理により粗化されて粗化面となる。
【0022】
引き続きデスミア処理を行うと、図3(b)に示すように、樹脂残渣500が完全に除去される。このとき、硬化後の保護用樹脂層31は全て溶解され、硬化後の絶縁樹脂層30の上面が露出している。又、ビアホール30xの内壁面は、デスミア処理により更に粗化されて図3(a)よりも粗度が大きくなっている。一方、絶縁樹脂層30の上面はデスミア処理の途中までは保護用樹脂層31に被覆されていたため、絶縁樹脂層30の上面のデスミア処理は保護用樹脂層31が完全に溶解した時点から開始される。すなわち、絶縁樹脂層30の上面は、ビアホール30xの内壁面に比べてデスミア液に触れている時間が少なくなる。その結果、デスミア工程の後において、絶縁樹脂層30の上面の粗度は、ビアホール30xの内壁面の粗度よりも小さくなる。例えば、ビアホール30xの側壁の表面粗さRaは100~600nm程度に設定でき、絶縁樹脂層30の上面の表面粗さRaは10~200nm程度に設定できる。
【0023】
デスミア処理の後、配線層40を形成する。ここでは、一例としてセミアディティブ法により配線層40を形成する方法について説明する。図4(a)に示すように、まず、ビアホール30xの内壁面及び絶縁樹脂層30の上面に、銅等からなるシード層41を形成する。シード層41は、例えば、無電解めっき法又はスパッタ法によって形成される。
【0024】
前述したように、絶縁樹脂層30の上面は適度に粗化されているので(表面粗さRa:10~500nm)、シード層41はアンカー効果によって絶縁樹脂層30の上面に十分な密着性をもって形成される。
【0025】
次に、図4(b)に示す工程では、配線層40が配置される部分に開口部350xが設けられためっきレジスト350をシード層41の上に形成する。めっきレジスト350は、例えば、ドライフィルムレジストを貼着するか、又は液状レジストを塗布した後に、フォトリソグラフィ(露光及び現像)によってパターン化されて形成される。
【0026】
次に、図4(c)に示す工程では、シード層41をめっき給電経路に利用する電解めっき法により、ビアホール30x内からめっきレジスト350の開口部350xにかけて銅等からなる金属めっき層42を形成する。その後、めっきレジスト350を除去し、シード層41を露出させる。
【0027】
次に、図4(d)に示す工程では、金属めっき層42をマスクにしてシード層41の不要部分をエッチングする。これにより、シード層41上に金属めっき層42が積層された配線層40が形成される。配線層20を形成する工程から配線層40を形成する一連の工程を繰り返すことにより、n層(nは2以上の整数)の多層配線層を任意に形成可能である。
【0028】
このように、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、絶縁樹脂層30上に保護用樹脂層31を設けることで、一回のデスミア処理において、ビアホール30x内の樹脂残渣500の除去に要する時間と、絶縁樹脂層30の上面の粗化に供する時間を調節可能となる。その結果、樹脂残渣500の除去に要する時間にかかわらず、絶縁樹脂層30の上面を所望の粗度にできる。絶縁樹脂層30の上面を所望の粗度にすることで、例えば、配線層40との密着性を向上できる。又、絶縁樹脂層30の上面の粗度を低減して平滑度を向上することで、絶縁樹脂層30の上面に微細配線(高密度の配線パターン)の形成が可能となる。又、保護用樹脂層31はデスミア処理の工程で完全に溶解するため、デスミア処理後に保護用樹脂層31を除去する工程を別に設ける必要がないため、配線基板の製造工程を効率化できる。
【0029】
又、樹脂残渣500の除去に十分な時間をかけられるため、ビアホール30x内の樹脂残渣500を完全に除去できる。その結果、樹脂残渣500が残存することで生じる接続不良や、配線層40を形成する工程での無電解銅めっきの析出不良によるシード層41の断線の発生を回避できる。
【0030】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 基板
20、40 配線層
30 絶縁樹脂層
30x ビアホール
31 保護用樹脂層
32 カバー層
41 シード層
42 金属めっき層
300 絶縁シート
350 めっきレジスト
500 樹脂残渣
図1
図2
図3
図4