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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】半導体材料ガス反応装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20240701BHJP
   C01F 7/58 20060101ALI20240701BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20240701BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240701BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C23C16/448
C01F7/58
C01G15/00 D
C01G15/00 B
H01L21/205
H01L21/365
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021201886
(22)【出願日】2021-12-13
(65)【公開番号】P2023087480
(43)【公開日】2023-06-23
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕大
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0105483(US,A1)
【文献】特許第5787324(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/448
C01F 7/58
C01G 15/00
H01L 21/205
H01L 21/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料ガスを生成・供給するための半導体材料ガス反応装置であって、内部空間の下部に固体または液体材料を収納し、内部空間の上部にキャリアガスと原料ガスを混合させた混合ガスを流し、前記固体または液体材料と前記混合ガスとの反応により所望の半導体材料ガスを生成するための複数の反応容器において、
前記複数の反応容器は上下に積層され、各反応容器には、蓋部、底部及び側壁によって規定される内部空間が形成され、
前記各反応容器の側壁内部にガス流路が配設され、
上下に隣接する少なくとも一対の前記反応容器に渡るように、前記側壁内部に原料ガス流路、生成ガス流路および材料ガス流路の少なくとも一つが形成され、
前記反応容器に設けられた側壁又は底面における各種ガス流路の外側に、一つ以上のラビリンス構造を有し、前記ラビリンス構造が上下に隣接する前記反応容器同士を接続する、半導体材料ガス反応装置。
【請求項2】
前記ラビリンス構造は、独立分離可能な前記反応容器を多段に積層させた際に、凸部と凹部が勘合し形成される、請求項1に記載の半導体材料ガス反応装置。
【請求項3】
前記半導体材料ガスがGaN、GaAs、AlN、InN、Ga 化合物半導体成膜に使用される金属塩化物(GaCl、GaCl、AlCl、AlCl、InCl、InCl)である、請求項1又は2に記載の半導体材料ガス反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料ガス反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の半導体デバイスの材料として、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)又は酸化ガリウム(Ga)等のワイドギャップ半導体が盛んに研究されている。また、ヒ化ガリウム(GaAs;ガリウムヒ素)又はリン化インジウム(InP;インジウムりん)を使用した超高効率低損失を実現する太陽電池の研究も行われている。
このような半導体デバイスを製造するための半導体ウェハーの成膜には、主に、有機金属気相成長(MOCVD: Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法が用いられている。MOCVD法では、原料の有機金属が炭素を含むため、一定量(1015cm-3~)の炭素原子が不純物として膜中に混入する。炭素原子濃度がn型不純物よりも高い場合、低濃度n型伝導性制御が困難となるため、炭素を含まない原料を使用することが理想である。
そこで注目されているのが、特許文献1に記載されたハライド気相成長(HVPE: Halide Vapor Phase Epitaxy)法である。HVPE法は、例えば、金属ガリウムと塩素系ガスとを反応させて一塩化ガリウム(GaCl)又は三塩化ガリウム(GaCl)を供給するため、原料に炭素をほとんど含まないというメリットを有する。また、HVPE法で用いる原料、例えば、金属ガリウム及び塩素系ガスは有機金属に比べて安価であることから、HVPE法は、半導体デバイスの製造コストを低減できるというメリットも有する。
【0003】
特許文献1には、金属ガリウムと塩素ガスとを反応させて一塩化ガリウムガスを生成する第1工程と、生成した一塩化ガリウムガスと塩素ガスとを反応させて三塩化ガリウムガスを生成する第2工程と、を有する三塩化ガリウムガスの製造方法、及びその三塩化ガリウムガスの製造方法により三塩化ガリウムガスを製造する工程と、少なくとも前記三塩化ガリウムガスとアンモニアガスとを原料ガスとして用い、基体上に、気相成長法により、ガリウムを含む窒化物半導体結晶を成長させる工程と、を有する窒化物半導体結晶の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、石英製の反応容器と、前記反応容器内に配置されているウェハホルダと、第1原料ガスを前記反応容器内に供給する第1原料ガス供給管と、前記第1原料ガスと反応する第2原料ガスを前記反応容器内に供給する第2原料ガス供給管と、第1加熱部と、を備え、前記第1原料ガス供給管および前記第2原料ガス供給管の少なくとも一方のガス供給口の近傍の領域の表面が所定金属で覆われており、前記所定金属は、前記第2原料ガスを触媒効果によって分解可能な金属であり、前記第1加熱部は前記所定金属の表面を800℃以上に加熱する、化合物半導体の気相成長装置が記載されている。また、特許文献2には、前記第1原料ガスとして一塩化ガリウム(GaCl)を含むガスを用い、前記第2原料ガスとしてアンモニア(NH)を含むガスを用いることも記載されている。
【0005】
特許文献3には、内部空間の下部に溶融金属を収容し、前記内部空間の長手方向の一端側の上部に供給された窒素ガス及びアルゴンガスの少なくとも一方であるキャリアガスと原料ガスとを含む混合ガスAを前記長手方向に流しながら、前記原料ガスと前記溶融金属との気液反応によって生成ガスを生成し、前記生成ガスと前記キャリアガスとを含む混合ガスBを前記長手方向の他端側の上部から排出する気液反応チャンバーと、前記気液反応チャンバーの前記内部空間に接する天井面から前記内部空間内に突出し、前記長手方向の一端側の突出角度が鈍角であり、前記長手方向にガスを通過させるスリットを有する突出部材と、を備える気液反応装置が記載されている。また、特許文献3には、前記溶融金属がガリウムであり、前記原料ガスが塩素ガス及び塩化水素ガスの少なくとも一方であり、前記生成ガスが一塩化ガリウムガスであることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5787324号公報
【文献】特開2019-196293号公報
【文献】国際公開第2018/212303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在の技術では、金属塩化物の析出を抑制するため、金属塩化物ガスの生成とウェハー表面での成膜とを同一の反応容器内で実施している。前記反応容器としては、高温に耐える必要があることから、通常、石英製の反応容器が用いられる。しかし、石英製の反応容器は、強度及びコストの点から大型化が難しいため、ウェハーの直径を大きくしたり、同時に成膜するウェハーの枚数を増やしたりすることができない。ワイドギャップ半導体の普及のためには、HVPE法によるエピコストを現在の1/10以下に低減し、Siデバイス並みの低コストにすることが必要である。しかし、現在の小型HVPE装置ではエピコストの低減に限界があり、低コスト化を実現することが困難である。
特許文献2に記載の気相成長装置の反応容器は、ガス導入のための配管(一般的には石英製)が複数接続されている。このため構造が複雑になる、製作コストが高い、破損リスクが高い、といったデメリットがある。
また、特許文献1に記載の窒化物半導体結晶の製造方法を実施するためのHVPE装置は原料となる塩化ガリウムを反応炉内部で生成する内部供給方式である。この内部供給方式は石英反応炉を使用していることから、大口径複数枚対応が困難である。大口径複数枚対応可能な量産型HVPE装置を実現するためには、原料となる金属塩化物を反応炉外部から供給するための材料ガス反応装置(外部供給装置)及び供給技術確立が課題となる。外部供給技術が実現するとMOCVD装置で採用されている大口径複数枚のステンレス反応炉を採用した次世代の量産型HVPE装置が実現可能となる。
【0008】
本発明は、生成された半導体材料ガスの反応容器からのガス漏れ出しを防止し、半導体成膜に必要な半導体材料ガスの安定大量供給を可能にする半導体材料ガス反応装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を含む。
[1] 半導体材料ガスを生成・供給するための半導体材料ガス反応装置であって、内部空間の下部に固体または液体材料を収納し、内部空間の上部にキャリアガスと原料ガスを混合させた混合ガスを流し、前記固体または液体材料と前記混合ガスとの反応により所望の半導体材料ガスを生成するための複数の反応容器において、前記反応容器に設けられた側壁又は底面に、一つ以上のラビリンス構造を有する半導体材料ガス反応装置。
[2] 前記ラビリンス構造は、独立分離可能な前記反応容器を多段に積層させた際に、凸部と凹部が勘合し形成される、[1]に記載の半導体材料ガス反応装置。
[3] 前記半導体材料ガスがGaN、GaAs、AlN、InN、Ga等の化合物半導体成膜に使用される金属塩化物(GaCl、GaCl、AlCl、AlCl、InCl、InCl)である、[1]又は[2]に記載の半導体材料ガス反応装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生成された半導体材料ガスの反応容器からのガス漏れ出しを防止し、半導体成膜に必要な半導体材料ガスの安定大量供給を可能にする半導体材料ガス反応装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体材料ガス反応装置の一例。
図2】半導体材料ガス反応装置の別の一例。
図3】半導体材料ガス反応装置の反応容器の一例。
図4】ラビリンス構造の例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[半導体材料ガス反応装置]
本発明の半導体材料ガス反応装置の一実施形態は、半導体成膜装置の半導体材料ガス生成部に使用する半導体材料ガス反応装置である。半導体成膜装置では、半導体材料ガス生成部で原料ガスを用いて生成した半導体材料ガスを使用して、成膜部で成膜を行う。
【0013】
図1に示す概要断面図を参照しながら、本発明の半導体材料ガス反応装置の一実施形態を詳細に説明する。
図1に示す半導体材料ガス反応装置100は、収納容器13の内部に、第1反応容器1、第2反応容器2、第3反応容器3、第4反応容器4、及び第5反応容器5を、この順に上下に積層した構造である。
第1反応容器1、第2反応容器2、第3反応容器3、第4反応容器4、及び第5反応容器5のそれぞれには、蓋部、底部及び側壁によって規定される内部空間1z、内部空間2z、内部空間3z、内部空間4z、及び内部空間5zが存在する。
第2反応容器2の蓋部は、第1反応容器1の底部で代用してもよい。同様に、第3反応容器3の蓋部は第2反応容器2の底部で代用してもよく、第4反応容器4の蓋部は第3反応容器3の底部で代用してもよく、第5反応容器5の蓋部は第4反応容器4の底部で代用してもよい。このように、一段上の反応容器の底部を一段下の反応容器の蓋部として代用することによって、反応容器の構造をより簡略化できる。この場合、一段上の反応容器の底部と一段下の反応容器の上部とは、内部空間からガスが漏れないように密着することが好ましい。
各反応容器は、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、石英製又はグラファイト製とすることができるが、後述するように反応容器の側壁内部にガス流路を配設するため、グラファイトが好ましい。
【0014】
収納容器13は、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、石英製とすることができる。
収納容器13の外側には、収納容器内の反応容器を加熱するための加熱機構16が設置されている。加熱機構16としては、例えば、マントルヒーターを使用できる。前記マントルヒーターは、金属材料と原料ガスとの反応性を高めるため、800℃以上に加熱できるものが好ましく、1000℃以上に加熱できるものがより好ましい。
【0015】
各反応容器の側壁内部にはガス流路が配設されており、原料ガスG1は、キャリアガスとともに、第1原料ガス流路6を通じて最上段の第1反応容器1の内部空間1zの上部に供給される。原料ガスG1は、また、キャリアガスとともに、第2原料ガス流路7を通じて最下段の第5反応容器5の内部空間5zの上部に供給される。
第1反応容器1に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間1zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第1生成ガス流路9を通じて、第2反応容器2の内部空間2zの上部に供給される。
第2反応容器2に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間2zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第2生成ガス流路10を通じて、第3反応容器3の内部空間3zの上部に供給される。
第3反応容器3に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間3zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第3生成ガス流路11を通じて、第4反応容器4の内部空間4zの上部に供給される。
第4反応容器4に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間4zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第4生成ガス流路12を通じて、第5反応容器5の内部空間5zの上部に供給される。
第5反応容器5に供給された生成ガスG3は、第2原料ガス流路7を通じて内部空間5zの上部に供給される原料ガスG1と反応して、半導体材料ガスG2を生成する。生成した半導体材料ガスG2は、材料ガス流路8を通じて、成膜部に供給される。
【0016】
第1原料ガス流路6は、第1反応容器1と、第2反応容器2と、第3反応容器3と、第4反応容器4と、第5反応容器5とを、この順に上下に積層することによって、第1反応容器1の側壁内部の原料ガス流路と、第2反応容器2の側壁内部の原料ガス流路と、第3反応容器3の側壁内部の原料ガス流路と、第4反応容器4の側壁内部の原料ガス流路と、第5反応容器5の側壁内部の原料ガス流路とが接続されることで形成される。
【0017】
第1生成ガス流路9、第2生成ガス流路10、第3生成ガス流路11、及び第4生成ガス流路12は、それぞれ、第1反応容器1と第2反応容器2、第2反応容器2と第3反応容器3、第3反応容器3と第4反応容器4、及び第4反応容器4と第5反応容器5を上下に積層することによって、形成される。
【0018】
第1反応容器1の上部には断熱材14が配置され、第5反応容器5の下部には断熱材15が配置されている。断熱材14(15)は、反応容器からの放熱を低減し、金属材料Mと原料ガスG1との反応性が低下しないようにする。
前記断熱材としては、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、アルミナ繊維、発砲石英又は真空断熱ガラスを用いることができ、低コストであることから、アルミナ繊維を用いることが好ましい。
【0019】
第1反応容器1、第2反応容器2、第3反応容器3、及び第4反応容器4のそれぞれの内部空間1z、内部空間2z、内部空間3z、及び内部空間4zの下部には、金属材料Mが収容されている。
金属材料Mは固体金属及び液体金属からなる群から選択される少なくとも1種であり、具体的には、例えば、ガリウム、アルミニウム及びインジウムが挙げられる。金属材料Mとしては、ガリウムが好ましい。
【0020】
原料ガスG1としては、例えば、ハロゲンガス及びハロゲン化水素ガスが挙げられる。原料ガスG1としては、塩素ガス又は塩化水素ガスが好ましく、塩素ガスがより好ましい。
原料ガスG1と混合するキャリアガスとしては、例えば、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスが挙げられる。前記キャリアガスとしては、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、窒素ガス又はアルゴンガスがより好ましく、空気(大気)から容易に製造でき、安価であることから、窒素ガスがさらに好ましい。
【0021】
図2は、図1に示す半導体材料ガス反応装置100の別の例である。
図2に示す半導体材料ガス反応装置100’は、収納容器13の内部に、第5反応容器5’、第4反応容器4’、第3反応容器3’、第2反応容器2’、及び第1反応容器1を、この順に上下に積層した構造である。
図1に示す半導体材料ガス反応装置100と同様、図2に示す半導体材料ガス反応装置100’においても、各反応容器の内部には内部空間が存在する。すなわち、第1反応容器1’、第2反応容器2’、第3反応容器3’、第4反応容器4’、及び第5反応容器5’のそれぞれには、蓋部、底部及び側壁によって規定される内部空間1’z、内部空間2’z、内部空間3’z、内部空間4’z、及び内部空間5’zが存在する。
第4反応容器4’の蓋部は、第5反応容器5’の底部で代用してもよい。同様に、第3反応容器3’の蓋部は第4反応容器4’の底部で代用してもよく、第2反応容器2’の蓋部は第3反応容器3’の底部で代用してもよく、第1反応容器1’の蓋部は第2反応容器2’の底部で代用してもよい。このように、一段上の反応容器の底部を一段下の反応容器の蓋部として代用することによって、反応容器の構造をより簡略化できる。この場合、一段上の反応容器の底部と一段下の反応容器の上部とは、内部空間からガスが漏れないように密着することが好ましい。
各反応容器は、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、石英製又はグラファイト製とすることができるが、後述するように反応容器の側壁内部にガス流路を配設するため、グラファイトが好ましい。
【0022】
収納容器13’は、上述した半導体材料ガス反応装置100における収納容器13と同様である。
加熱機構16’は、上述した半導体材料ガス反応装置100における加熱機構16と同様である。
【0023】
上述した半導体材料ガス反応装置100と同様、半導体材料ガス反応装置100’においても、各反応容器の側壁内部にはガス流路が配設されている。原料ガスG1は、キャリアガスとともに、第1原料ガス流路6’を通じて最下段の第1反応容器1’の内部空間1’zの上部に供給される。原料ガスG1は、また、キャリアガスとともに、第2原料ガス流路7’を通じて最上段の第5反応容器5’の内部空間5’zの上部に供給される。
第1反応容器1’に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間1’zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第1生成ガス流路9’を通じて、第2反応容器2’の内部空間2’zの上部に供給される。
第2反応容器2’に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間2’zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第2生成ガス流路10’を通じて、第3反応容器3’の内部空間3’zの上部に供給される。
第3反応容器3’に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間3’zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第3生成ガス流路11’を通じて、第4反応容器4’の内部空間4’zの上部に供給される。
第4反応容器4’に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間4’zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第4生成ガス流路12’を通じて、第5反応容器5’の内部空間5’zの上部に供給される。
第5反応容器5’に供給された生成ガスG3は、第2原料ガス流路7’を通じて内部空間5’zの上部に供給される原料ガスG1と反応して、半導体材料ガスG2を生成する。生成した半導体材料ガスG2は、材料ガス流路8’を通じて、成膜部に供給される。
【0024】
第2原料ガス流路7’は、第5反応容器5’と、第4反応容器4’と、第3反応容器3’と、第2反応容器2’と、第1反応容器1’とを、この順に上下に積層することによって、第5反応容器5’の側壁内部の原料ガス流路と、第4反応容器4’の側壁内部の原料ガス流路と、第3反応容器3’の側壁内部の原料ガス流路と、第2反応容器2’の側壁内部の原料ガス流路と、第1反応容器1’の側壁内部の原料ガス流路とが接続されることで形成される。
【0025】
第1生成ガス流路9’、第2生成ガス流路10’、第3生成ガス流路11’、及び第4生成ガス流路12’は、それぞれ、第2反応容器2’と第1反応容器1’、第3反応容器3’と第2反応容器2’、第4反応容器4’と第3反応容器3’、及び第5反応容器5’と第4反応容器4’を上下に積層することによって、形成される。
【0026】
第5反応容器5’の上部には断熱材14’が配置され、第1反応容器1’の下部には断熱材15’が配置されている。断熱材14’(15’)は、反応容器からの放熱を低減し、金属材料Mと原料ガスG1との反応性が低下しないようにする。
断熱材14’(15’)は、上述した半導体材料ガス反応装置100における断熱材14(15)と同様である。
【0027】
内部空間1’z、内部空間2’z、内部空間3’z、及び内部空間4’zの下部には、金属材料Mが収容されている。
金属材料Mは、上述した半導体材料ガス反応装置100における金属材料Mと同様である。
【0028】
原料ガスG1及びキャリアガスは、それぞれ、上述した半導体材料ガス反応装置100における原料ガスG1及びキャリアガスと同様である。
【0029】
金属材料Mと原料ガスとの反応効率を高めるために、金属材料Mを収容する反応容器の内部空間には、突出部材を有することが好ましい。突出部材には、ガスの循環流を形成する機能がある。
金属材料Mと原料ガスG1が反応して生成ガスG3が生成されると、生成ガスG3は原料ガスよりも比重が大きいため、金属材料Mの表面に滞留しやすい。生成ガスG3が金属材料Mの表面に滞留すると、金属材料Mと原料ガスG1との反応が阻害され、反応効率が低下して未反応の原料ガスG1が増加する。
本発明の半導体材料ガス反応装置では、各反応容器の形状を直径が略同一の円筒形として、内部空間に突出部材を設けることが好ましい。
図3は、第1反応容器1に突出部材21を設けた例である。内部空間1zにおいて、突出部材21は、半径方向に向けて放射状に突出する。突出部材21は、第1反応容器1と独立及び分離されており、第1反応容器1に設けられたガイドに沿って上下に動かすことができ、着脱自在である。
突出部材21には、図3に示すように、円周方向に原料ガスG1及び金属材料Mを通過させることが可能な開口部21bが垂直部21aに設けられている。突出部材21の上部は垂直部21aと鈍角をなすように曲がり部21cが設けられている。
開口部21bの大きさは、原料ガスG1及び金属材料Mを通過させることが可能な大きさ及び位置であれば特に限定されないが、大きさは、垂直部21aの半径方向の長さの2~50%、高さ方向の長さの5~90%が好ましい。
曲がり部21cは、垂直部21aと110~160°の角度をなすことが好ましい。
突出部材21を構成する材料の比重は、金属材料Mよりも比重が小さいものが好ましい。金属材料Mが液体金属である場合、突出部材21が金属材料Mに僅かに浮遊するため、反応容器の蓋部の内側に突出部材21の上辺が接触して隙間を塞ぐ。これにより、原料ガスG1は効率よく開口部21bを通り、金属材料Mと反応する。突出部材を構成する材料としては、耐熱性が高く、多くの場合金属材料Mよりも比重が小さいことから、石英又はグラファイトが好ましい。突出部材と反応容器とを同じ材料、例えば、グラファイトで構成してもよい。
【0030】
本実施形態の半導体材料ガス反応装置100の反応容器におけるラビリンス構造の例を図4に示す。例として金属Gaと塩素ガスの直接反応からGaClを生成する場合を考える。上段の反応容器には金属Gaが充填されており、金属Gaの表面には塩素ガス(または塩化水素ガス)とキャリアガスとなる窒素または水素が導入される。800℃以上の温度で金属Gaと塩素ガスを反応させることでGaClを生成する。GaClは下段の反応容器(金属Gaは無い)へ輸送され、さらに塩素ガスを追加することでGaCl+Cl→GaClの反応が起こる。これらGaClやGaClが反応容器から漏れ出すと、反応容器外の低温部で凝縮・液化する。またGaClは低温において分解しGaドロップレットが析出するため、固体の金属Gaが反応容器外に堆積することになり好ましくない。
本実施形態反応容器の外周保持部に1つ以上のラビリンス構造31を設けることで、反応容器内のGaClガスまたはGaClガスが反応容器外へ漏れ出すことを抑制できる。ラビリンス構造31は反応容器を多段式に積層した際に勘合することにより形成される。ラビリンス構造のサイズは高さが0.5mm以上、幅が0.5mm以上であることが好ましく、高さが2mm以上、幅が2mm以上あることがより好ましい。ラビリンス構造を用いずに上下に積層された接続部分を溶接し、完全一体型構造にする反応容器の製作方法もあるが、一体型構造だと破損時に反応容器全体を交換しなければならず、交換コストがかかる。また反応容器内部が汚れた場合、反応容器内部を洗浄することが困難となる。そこで反応容器を独立分離させることで、容易に反応容器の交換・洗浄が可能となる。ただしこの場合、反応容器同士の接続部分のガス漏れ対策を施すことが重要となり、本発明のラビリンス構造を採用することで、ガス漏れを防止することが可能となる。結果的に、独立分離された多段式反応容器が実現される。ラビリンス構造により生成されたGaClまたはGaClを効率良く反応容器やGaCl排出管へ導入し、かつ石英管内部を汚染させずに成膜反応炉まで供給することが可能となる。
【0031】
図1に示す半導体材料ガス反応装置100の使用方法を、金属材料Mとしてガリウムを使用し、原料ガスG1として塩素ガスを使用する場合について、説明する。図2に示す半導体材料ガス反応装置100’の使用方法も同様である。
ガリウムと塩素ガスは2段階の反応により三塩化ガリウムを生成する。
2Ga + Cl(g) → 2GaCl(g)
GaCl + Cl(g) → GaCl(g)
まず、ガリウムを収容した最上段の第1反応容器に過剰に塩素ガスを導入する。
1段階目のガリウムと塩素ガスの反応により一塩化ガリウム(GaCl)が生成され、GaCl及び未反応Clはガリウムが収容された下段の第2反応容器へ流れ込む。第2反応容器2にはガリウムが収容されているため、上段から流れてきた未反応Clはガリウムと反応し、一塩化ガリウム(GaCl)が生成される。最終的には最下段の第5反応容器5に大量の一塩化ガリウム(GaCl)が流れ込む。そして最下段の第5反応容器に塩素ガスを添加することで、2段階目の一塩化ガリウムと塩素ガスの反応が起こり、三塩化ガリウム(GaCl)が生成される。本発明の半導体材料ガス反応装置では、ガリウムが収容されている反応容器内で、1段階目の反応(GaCl生成)が起こり、ガリウムが収容されていない反応容器内で2段階目の反応(GaCl生成)を起こす2段階反応方式が採用されている。
本発明の半導体材料ガス反応装置は、反応容器を複数積層することによって、フットプリントを小さくすることができ、さらに金属材料Mの表面積を容易に稼ぐことができるため、半導体材料ガスG2の大量生成を見込むことができる。
生成した半導体材料ガスG2は、成膜部に移送され、ウェハーの成膜に使用される。
【0032】
[作用効果]
本発明を用いて、反応容器同士が接する面にラビリンス構造を設けることで、生成された半導体材料ガスが反応容器から外へ漏れ出し、反応容器を外側から保護している石英管内を汚染することを防止できる。結果として、所望の半導体材料ガスを安定的に成膜反応炉へ供給することが可能となる。また半導体材料ガス反応装置で使用する石英管の内壁や上下のSUSフランジ等に対するGaClの堆積を防止することで、これら石英部材やSUS部材のメンテ頻度、交換頻度を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1,1’…第1反応容器、1a…蓋部、1b…底部、1c…側壁、1z,1’z…内部空間、2,2’…第2反応容器、2z,2’z…内部空間、3,3’…第3反応容器、3z,3’z…内部空間、4,4’…第4反応容器、4z,4’z…内部空間、5,5’…第5反応容器、5z,5’z…内部空間、6,6’…第1原料ガス流路、7,7’…第2原料ガス流路、8,8’…材料ガス流路、9,9’…第1生成ガス流路、10,10’…第2生成ガス流路、11,11’…第3生成ガス流路、12,12’…第4生成ガス流路、13,13’…収納容器、14,14’,15,15’…断熱材、16,16’…加熱機構、21…突出部材、21a…垂直部、21b…開口部、21c…曲がり部、31…ラビリンス構造、100,100’…半導体材料ガス反応装置、101…半導体材料ガス生成部、201…成膜部、300…半導体成膜装置、G1…原料ガス、G2…半導体材料ガス、G3…生成ガス、M…金属材料
図1
図2
図3
図4