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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】流路形成装置
(51)【国際特許分類】
   F17D 1/04 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
F17D1/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021515787
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020000936
(87)【国際公開番号】W WO2020217601
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019085102
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】安田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】プライス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト ウィリアム ワイリー
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05605179(US,A)
【文献】特開2016-178115(JP,A)
【文献】特開2013-084857(JP,A)
【文献】特開2000-171000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側の面である1つの搭載面に、複数のマスフローコントローラ及び複数の開閉弁を含む複数の流体機器が取り付けられる搭載パネルを備えた流路形成装置であって、
前記搭載パネルは、前記マスフローコントローラ及び前記開閉弁と連通して1本の流路となる枝流路を複数備え、
前記複数の枝流路は、互いに異なる前記マスフローコントローラ及び前記開閉弁に連通しており、
前記各枝流路は、前記流体機器の入口ポート又は出口ポートと接続される複数の接続流路と、前記接続流路に対して連通し、前記流体機器に流体を流通させる流通流路と、を具備し、
前記搭載パネルは、互いに異なる前記枝流路の接続流路と連通し、それぞれの前記枝流路を流れる流体が合流する合流流路をさらに備え、
前記複数の枝流路と前記合流流路が前記搭載パネル内に形成された空洞であり、前記搭載パネル内において前記流通流路と前記合流流路とが立体交差するように形成されていることを特徴とする流路形成装置。
【請求項2】
前記搭載パネルが、アディティブ・マニュファクチャリングによって形成された請求項1記載の流路形成装置。
【請求項3】
前記搭載パネルが、金属3Dプリンタにより形成された請求項2記載の流路形成装置。
【請求項4】
前記複数の枝流路の各流通流路が、所定の配列方向に並んで形成されており、
前記合流流路が、前記配列方向に対して延びるように形成されている請求項1記載の流路形成装置。
【請求項5】
前記合流流路が、前記搭載パネルの外部へ流体を流出させる流出ポートと接続される流出流路に対して連通する請求項1記載の流路形成装置。
【請求項6】
前記搭載パネルが、
内部に形成され、各枝流路を通過した流体が混合される混合容積と、
前記混合容積内に各枝流路を通過した流体が導入される複数の導入口と、
前記混合容積内で混合された流体が当該混合容積内から外部へ導出される1又は複数の導出口と、
各導入口から導入される流体がそれぞれ同時に前記混合容積内に流入可能に構成されている請求項1記載の流路形成装置。
【請求項7】
前記搭載面に対して垂直な方向から見た場合において、各導入口から最も近い各導出口との間を結ぶ仮想直線を引いた場合、各仮想直線は各導出口上を除いてそれぞれが交差しないように混合容積が形成されている請求項6記載の流路形成装置。
【請求項8】
前記搭載パネルを通過した流体が流入可能に構成され、前記マスフローコントローラの校正時に基準として使用される校正用容積が内部に形成された校正用パネルをさらに備えた請求項1記載の流路形成装置。
【請求項9】
側面又は裏面に形成された流体が流入する複数の流入ポートと、表面に形成され、前記搭載パネルの前記枝流路と接続される複数の接続ポートと、前記流入ポートと前記接続ポートとの間を接続する分配流路と、を具備する分配パネルをさらに備えた請求項8記載の流路形成装置。
【請求項10】
前記搭載パネルと前記校正用パネルとの間に前記分配パネルが設けられ、
前記分配パネルが、複数の前記枝流路を通過した流体を前記校正用パネルの前記校正用容積へと仲介する仲介流路をさらに備えた請求項9記載の流路形成装置。
【請求項11】
前記校正用パネルと隣接させて設けられ、ペルチェ素子を具備する温調パネルをさらに備えた請求項8記載の流路形成装置。
【請求項12】
前記校正用パネルが、前記校正用容積内に当該校正用パネルの表面と裏面との間を接続する複数のブリッジを備えた請求項8記載の流路形成装置。
【請求項13】
前記校正用パネルが、前記校正用容積内に設けられた熱交換フィンを備えた請求項8記載の流路形成装置。
【請求項14】
前記校正用パネルが、複数の校正用容積を備えた請求項8記載の流路形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等に用いられる流路形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、例えば複数種類のガスを所定の流量比率で混合してチャンバ内に供給している。このため、複数種類のガスの流量をそれぞれ個別に制御するために多数の並列なガス供給ラインを備えた流量制御システムが必要となる。
【0003】
各ガス供給ラインは、少なくとも流量を制御可能なマスフローコントローラ等の流体機器を備えている。これらの流体機器が、内部に流路が形成された概略面板状をなすガスパネルと呼ばれる流路形成装置上に設置され、並列なガス供給ラインが形成される(特許文献1参照)。
【0004】
このようなガスパネルを使用することにより、例えば配管によって各流体機器を接続した場合と比較して、流量制御システムをコンパクトに構成できる。
【0005】
ところで、上述したような流量制御システムはさらに設置面積を小さくすることが求められているが、従来の構造では大幅な改善を見込むことが難しくなりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012―229807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、例えば流量制御システムを大幅にコンパクト化することを可能とする流路形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る流路形成装置は、少なくともマスフローコントローラを含む複数の流体機器が取り付けられる表面である搭載面を具備する搭載パネルを備えた流路形成装置であって、前記搭載パネルが、前記流体機器の入口ポート又は出口ポートと接続される複数の接続流路と、複数の前記接続流路に対して連通し、前記流体機器に流体を流通させる流通流路と、を具備する複数の枝流路と、異なる枝流路の接続流路と連通し、それぞれの枝流路を流れる流体が合流する合流流路と、を備え、前記複数の枝流路と前記合流流路が前記搭載パネル内に形成された空洞であり、前記搭載パネル内において前記流通流路と前記合流流路とが立体交差するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、各枝流路において前記流体機器同士に流体を流通させる前記流通流路と、各枝流路を通過した流体が合流する合流流路とが、前記搭載パネル内において立体交差するように形成されているので、従来よりもさらに流路の密集度を高めることができる。
【0010】
したがって、流体制御システムにおいて求められる流量制御機能やその他の機能を実現しつつ、設置面積を小さくすることが可能となる。ひいては流体制御システム全体を従来よりもコンパクトに構成できるようになる。
【0011】
前記搭載パネル内に形成される流通流路及び合流流路についてそれらの延伸方向の端は閉止された状態で最初から形成できるようにして、端部を閉止するために別途溶接を行う必要をなくし、欠陥が生じる可能性を大幅に低減できるようにするには、前記搭載パネルが、アディティブ・マニュファクチャリングによって形成されたものであればよい。
【0012】
前記搭載パネル内に空洞を形成することによって前記流通流路と、前記合流流路とを立体交差させるといった複雑な構造を形成しやすく、このような複雑な流路を前記搭載パネル内部に形成しても各枝流路割れ等の欠陥が生じて流体の漏出が発生しにくくできるようにするには、前記搭載パネルが、金属3Dプリンタにより形成されたものであればよい。
【0013】
各流通流路と前記合流流とを前記搭載パネル内において立体交差させる具体的な構成例としては、前記複数の枝流路の各流通流路が、所定の配列方向に並んで形成されており、前記合流流路が、前記配列方向に対して延びるように形成されているものが挙げられる。
【0014】
前記搭載パネル内において複数種類の流体を混合した上で、外部の機器や容積に供給できるようにするには、前記合流流路が、前記搭載パネルの外部へ流体を流出させる流出ポートと接続される流出流路に対して連通するものであればよい。
【0015】
各枝流路を通過した流体が混合されるタイミングを揃えられるようにして、例えば各枝流路を流れる流体の流量制御が過渡応答時でも混合比が一定に保たれやすくするには、前記搭載パネルが、内部に形成され、各枝流路を通過した流体が混合される混合容積と、前記混合容積内に各枝流路を通過した流体を導入される複数の導入口と、前記混合容積内で混合された流体が当該混合容積内から外部へ導出される1又は複数の導出口と、各導入口から導入される流体がそれぞれ同時に前記混合容積内に流入可能に構成されていればよい。
【0016】
各枝流路を通過した流体が前記混合容積内に対してほぼ同時に流入し、混合された状態で外部に導出できるようにするための前記混合容積の具体的な形状としては、前記搭載面に対して垂直な方向から見た場合において、各導入口から最も近い各導出口との間を結ぶ仮想直線を引いた場合、各仮想直線は各導出口上を除いてそれぞれが交差しないように混合容積が形成されているものが挙げられる。
【0017】
例えば前記枝流路に設けられているマスフローコントローラ等について別の機器を用いずに高精度に校正することを可能とする機能を流路形成装置に付加するには、前記搭載パネルを通過した流体が流入可能に構成され、前記マスフローコントローラの校正時に基準として使用される校正用容積が内部に形成された校正用パネルをさらに備えたものであればよい。このようなものであれば、マスフローコントローラはコンパクトに形成したとしても、校正の基準となる校正用容積を大きく設定することができるので、例えば気体の状態方程式等に基づき高精度な校正が可能となる。
【0018】
コンパクトに構成された前記搭載パネルの各枝流路に対してそれぞれ個別に流体供給源から流体を供給できるようにするには、側面又は裏面に形成された流体が流入する複数の流入ポートと、表面に形成され、前記搭載パネルの前記枝流路と接続される複数の接続ポートと、前記流入ポートと前記接続ポートとの間を接続する分配流路と、を具備する分配パネルをさらに備えたものであればよい。このようなものであれば、流体供給源と前記搭載パネルとの間を配管で直接接続しないので、前記流入ポートの設置間隔を広げることができ、配管と接続しやすくできる。
【0019】
前記搭載パネル、前記分配パネル、前記校正用パネルをスタックしたとしても、立体的な流路構成を実現して、流体の流量制御や排出、マスフローコントローラの校正といった複数の機能を実現できるようにするには、前記搭載パネルと前記校正用パネルとの間に前記分配パネルが設けられ、前記分配パネルが、複数の前記枝流路を通過した流体を前記校正用パネルの前記校正用容積へと仲介する仲介流路をさらに備えたものであればよい。
【0020】
マスフローコントローラの校正時において例えば流体の圧力変化に伴う温度変化を小さくして、校正の基準となる理想状態に近づけることができるようにするには、前記校正用パネルと隣接させて設けられ、ペルチェ素子を具備する温調パネルをさらに備えたものであればよい。
【0021】
例えば3Dプリンタにより前記校正用容積を各流路よりも大きな空洞として形成できるようにするには、前記校正用パネルが、前記校正用容積内に当該校正用パネルの表面と裏面との間を接続する複数のブリッジを備えたものであればよい。
【0022】
例えば気体の状態方程式に基づいて流量の校正を行う場合に、前記校正用容積内に存在するガスの温度を均一化して正確な校正を実現できるようにするには、前記校正用パネルが、前記校正用容積内に設けられた熱交換フィンを備えたものであればよい。
【0023】
前記校正用パネルが、複数の校正用容積を備えたものであれば、複数の枝流路からそれぞれに異なる種類のガスを供給し、各ガスの圧縮率の違いから流量算出時に用いられるガス種による補正係数を割り出す事が可能となる。また、各ガスの温度変化の違いからガスの比熱等に関するパラメータ同定や補正を行えるようになる。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明に係る流路形成装置によれば、前記枝流路の流通流路と、前記流通流路を通過した各流体が合流する前記合流流路とが前記搭載パネル内において立体交差するように形成されているので、従来よりも単位面積当たりの流路の集積度を高められる。この結果、例えば流体制御システム全体をさらにコンパクト化したり、流量や圧力制御以外の機能を付与したりすることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る流路形成装置を用いた流体制御システムを示す模式図。
図2】第1実施形態に係る流路形成装置の搭載パネル内の流路構成を示す模式図。
図3】第1実施形態に係る流路形成装置の搭載パネルを示す模式図。
図4】第1実施形態に係る流路形成装置の分配パネルを示す模式図。
図5】第1実施形態に係る流路形成装置の校正パネルを示す模式図。
図6】第1実施形態に係る流路形成装置の搭載パネル中における流量制御ブロックの構成を示す模式的平面図。
図7】第1実施形態に係る流路形成装置の搭載パネル中における流量制御ブロック及び内部の流路構造の構成を示す模式的断面図。
図8】第1実施形態に係る流路形成装置の搭載パネル中における流量制御ブロックの模式的断面斜視図。
図9】本発明の第2実施形態に係る流路形成装置の校正用パネルを示す模式図。
図10】第2実施形態に係る流路形成装置の温調パネルを示す模式図。
【符号の説明】
【0026】
200・・・流体制御システム
100・・・流路形成装置
P1 ・・・搭載パネル
L ・・・枝流路
L1 ・・・接続流路
L2 ・・・流通流路
C ・・・合流流路
D ・・・流出流路
B ・・・流体制御ブロック
MV ・・・混合用容積
P2 ・・・分配パネル
P3 ・・・校正用パネル
CAV・・・校正用容積
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1実施形態に係る流路形成装置100について各図を参照しながら説明する。第1実施形態の流路形成装置100であるガスパネル装置は、例えば半導体製造プロセスにおいて各種ガスを所定の割合で混合した混合ガスをチャンバに対して供給する流体制御システム200の一部をなすものである。具体的には流体制御システム200は、各種類のガスの流量をそれぞれ個別に設定される設定流量と一致するようにマスフローコントローラMで制御し、流量が制御された各ガスを混合して所望の混合比が実現された混合ガスを生成する。さらに、流体制御システム200は、複数の出力ポートから所定の流量比率で混合ガスを分配して外部へと出力する。
【0028】
個別のガスの流量制御に関する機能、各ガスを混合する機能、混合ガスを所定の流量比率で分配する機能を実現するために図1に示すように流体制御システム200は、流路を切り替える切換弁、各ガスの流量を制御するマスフローコントローラM、及び、複数の出力ポートから分配される混合ガスの流量比率を制御する流量比率制御装置FS等の流体機器を備えている。また各流体機器は、概略パネル状をなすガスパネル装置上に設けられることにより、各流体機器間の流路が接続され、上述したような機能が実現される。
【0029】
図1に示すように流路形成装置100は、4枚の同形状のパネルがスタックされた4層構造となっている。最上層である第1層は表面である搭載面に各流体機器が搭載される搭載パネルP1であり、その内部には各流体機器を接続する流路、あるいは、他の層のパネルやガスを排気するためのベントと接続される流路が空洞として形成されている。第2層は、混合前の各ガスが流入する流入ポートGIを備え、各ガスを搭載パネルP1の裏面側から接続ポートCPを介して搭載パネルP1に流入させる分配パネルP2である。第3層は例えばマスフローコントローラMの校正を行う際の基準となる校正用容積CAVが形成された校正用パネルP3である。最下層である第4層は各流体機器の制御等を司る制御ボードP4である。
【0030】
まず第1層の搭載パネルP1に対して各流体機器が搭載されることにより形成される流体回路構造について模式的な流体回路図を示す図2、及び、流体機器を外した状態の搭載パネルP1を模式的に示す図3を参照しながら説明する。図2及び図3に示すように搭載パネルP1内の概略左側半分には、流体回路として見た場合に各ガスが並列に流れる枝流路Lと、枝流路Lを流れたガスが合流する合流流路C1、C2、C3とが形成されている。図2及び図3に示すように搭載パネルP1の左側は、例えば4本の枝流路Lを1組として形成された4つの流体制御ブロックBからなり、これらの流体制御ブロックB上に開閉弁V及びマスフローコントローラMが枝流路Lと連通するように搭載される。各枝流路Lを流れるガスはそれぞれの枝流路Lに設けられたマスフローコントローラMにより混合比率に応じた流量に制御される。チャンバへの混合ガス供給時には、各枝流路Lを通過したそれぞれのガスは、各流体制御ブロックBにおいて4種類のガスが第3合流流路C3で合流した後で混合容積MV内へと流入する。この混合容積MV内で4つの流体制御ブロックBからそれぞれ流入したガスが混合された後、混合ガスは搭載パネルP1の右側に配置され、混合容積MVの下流側に連通している流量比率制御装置FSに流入する。流量比率制御装置FSは、4つの並列な流路にそれぞれ設けられたマスフローコントローラM2からなり、各流路に対して予め定められた目標流量比率に応じて混合ガスを分流する。
【0031】
混合容積MVに対しては、各流体制御ブロックB内の枝流路Lを通過したガスがほぼ同時に流入するように構成されている。すなわち、図3に示すように搭載面に対して垂直な方向から見た場合において、混合容積MVは各枝流路Lを通過したガスが混合容積MV内に導入される複数の導入口MIと、流量比率制御装置FSを構成するとマスフローコントローラM2とそれぞれ接続され、混合ガスが導出される各導出口MOとが、開口している。各導入口MIから最も近い各導出口MOとの間を結ぶ仮想直線を引いた場合、各仮想直線は各導出口MO上を除いてそれぞれが交差しないように混合容積MVは形成されている。言い換えると、複数の導入口MIはそれぞれ、混合容積MV内におけるガスの流れの始点となるように配置されている。従来のように各導入口MIがガスの流れに対して順番が規定されるような配置とはなっていない。
【0032】
図2に示す流量比率制御装置FSはチャンバにおいて混合ガスが導入される場所ごとに必要な流量を実現するものであり、設定されている目標流量比率に応じて混合容積MV内から流出する混合ガスの流量を分流する。なお、所定の目標流量比率で分流する制御については既存のものを使用することができ、例えば流量比率制御装置FSを構成する1つのマスフローコントローラM2では所定の圧力に一定に保つように制御するとともに、他のマスフローコントローラM2では各マスフローコントローラM2で測定される混合ガスのトータル流量に対して設定されている流量比率に応じた流量を目標流量として流量フィードバック制御を行うようにすればよい。
【0033】
次に搭載パネルP1の各部の詳細について説明する。
【0034】
図2図3、及び、流体制御ブロックBの詳細を示す図4、枝流路L及び合流流路Cの詳細を示す図5及び図6に示すように、1つの枝流路Lに注目すると、枝流路Lは搭載パネルP1内に分断されて形成されており、開閉弁V又はマスフローコントローラMが搭載面に取り付けられることによって1本の流路をなすように構成されている。また、枝流路Lは搭載パネルP1の裏面側に形成された供給ポートを介して分配パネルP2からガスが供給される1つの始点と、3つの終点と、を備えており、開閉弁Vの切り替えによりいずれかの終点からガスが出力される。以降の説明では、各終点については枝流路Lにおいて上流側にあるものから第1終点、第2終点、第3終点とも呼ぶ。また、各終点に対応させて設けられた各開閉弁Vについても第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第3開閉弁V3とも呼ぶ。
【0035】
枝流路Lは、搭載パネルP1の厚み方向であるZ軸方向に対して延び、流体機器の入口ポートPI又は出口ポートPOと接続される複数の接続流路L1と、搭載パネルP1の面板部に沿うともに流体制御ブロックBの長手方向であるX軸方向に対して延びる流通流路L2と、からなる。ここで、流通流路L2は接続流路L1に対して連通し、流体機器に対してガスを流通させる流路である。枝流路Lの各終点については全て開閉弁Vと接続される接続流路L1の終端で形成される。
【0036】
合流流路Cは、第1実施形態では各終点に設けられているため制御ブロック内において3本存在する。以下の説明では第1終点、第2終点、第3終点のそれぞれに設けられている合流流路Cをそれぞれ対応させて第1合流流路C1、第2合流流路C2、第3合流流路C3とも呼ぶ。各合流流路Cは、接続流路L1のうち開閉弁Vの出口ポートPOと接続されているものと連通する。具体的には4本の接続流路L1の終点と接続されるように合流流路CはY軸方向に延びるように形成されている。また、図5(b)の横断面に示すように、合流流路Cは、搭載パネルP1の裏面に形成された流出ポートと連通する流出流路Dとも連通している。この流出流路Dも接続流路L1と同様にZ軸方向に延びるように形成される。したがって、4つの接続流路L1から流入したガスは合流流路Cで合流した後に流出流路Dから搭載パネルP1の外部へと流出する。
【0037】
次に流体制御ブロックBの構造の特徴について詳述する。
【0038】
この流体制御ブロックBにおいて少なくとも内部に空洞により流路が形成されている部分は3Dプリンタにより形成されている。例えば使用されるガスに対して耐性のある金属粒子の粉末を用いて一体成型することで内部の流路が形成されている。枝流路LにおいてX軸方向に延びる流通流路L2と、Y軸方向に延びる合流流路Cは、図5の断面図に示すようにそれぞれ搭載パネルP1内において立体交差するように形成されている。また、流通流路L2の両端部、及び、合流流路Cの両端部はそれぞれ搭載パネルP1の面板部には開口しておらず、両端が閉鎖された状態で形成されている。このような両端が閉鎖された直線状の空洞が搭載パネルP1内において立体交差するように設けられているので、流体制御ブロックB内での流路の集積度を向上させ、複雑な構造を実現することができる。また、金属3Dプリンタで流体制御ブロックBは形成されているので、各流路を形成する空洞の周囲にヒビ等の欠陥は生じにくく、ガス漏れ等が発生しにくい。例えば金属ブロックをドリル加工等の切削加工を行った後に開口部を溶接するなどして流通流路L2と合流流路Cを立体交差させた構造を形成したとしても、工数がかかるだけでなく、溶接部分におけるクラックの発生により、ガス漏れ等の可能性が残る。このようなものに比べて金属3Dプリンタであれば前述した問題がそもそも生じにくくすることができる。また、流路が形成されておらず、ほぼ中実の金属の塊として形成される流体制御ブロックBの中央部分については切削加工等で作成しておき、金属3Dプリンタで形成された部分に対してボルト等で固定される。このように複雑な流路が形成される部分のみを金属3Dプリンタで形成するようにしているので、製造コストを低減することができる。
【0039】
次に金属3Dでプリンタにより形成された枝流路L及び合流流路Cを立体交差させて形成することにより可能となる流路の機能について説明する。
【0040】
第1開閉弁V1を開放し、第2開閉弁V2及び第3開閉弁V3を閉止した場合には、第1合流流路C1から搭載パネルP1の外部へとガスを流出させることができる。この際、ガスはマスフローコントローラMを経由しない。また、第2開閉弁V2を開放し、第1開閉弁V1及び第3開閉弁V3を閉止した場合には、第2合流流路C2から搭載パネルP1の外側へとガスを流出させることができる。この際、ガスはマスフローコントローラMを経由しているので流量制御がされた状態となる。
【0041】
第1合流流路C1及び第2合流流路C2に接続されている流出流路Dは例えば第2層である分配パネルP2内に形成された内部流路を通って外部のベント等に接続されている。このため、チャンバへの混合ガスの供給側終わった際等に枝流路Lに残っているガスを排気することができる。この結果、流量制御開始時における指令値に対する立ち上がり性能や、流量制御終了時における指令値に対する立ち下がり性能を従来よりも改善することが可能となる。したがって、半導体の製造誤差の原因となる余分なガスをチャンバ内に供給しないようにできる。
【0042】
第3開閉弁V3を開放し、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉止した場合には、第3合流路から搭載パネルP1から外部へガスを流出させることができる。この場合は、マスフローコントローラMで流量制御されたガスを分配パネルP2内の内部流路を経由して再び搭載パネルP1内に戻し、混合容積MV内へと流入させることができる。すなわち、この状態はチャンバへの混合ガス供給時に使用される。
【0043】
次に第2層の分配パネルP2について図7を参照しながら説明する。
【0044】
分配パネルP2は、主に長尺側の側面に形成されたガスが流入する複数の流入ポートGIと、表面に形成され、搭載パネルP1の枝流路Lと接続される複数の接続ポートCPと、を備えたものである。接続ポートCPは、Y軸方向に沿って一列に並べて設けられているため、流入ポートGIと接続ポートCPとの間を接続する分配流路CLは斜め形成されている。また、この分配パネルP2内には搭載パネルP1内を通過し、流量制御されたガスを第3層の校正用パネルP3に対して供給するバイパス流路等その他の流路も形成されている。
【0045】
次に第3層の校正用パネルP3について図8を参照しながら説明する。
【0046】
校正用パネルP3は、マスフローコントローラMや流量比率制御装置FSにおいて測定されている流量を校正するために用いられるものであり、例えば既知のビルドアップ法等を実施するために用いられる既知の容積を備えた校正用容積CAVが内部に形成されたものである。すなわち、搭載パネルP1内において図示しない開閉弁Vを切り替えることによりマスフローコントローラM又はFSを通過したガスが校正用容積CAV内へと導入される。校正用容積CAV内にガスが導入されることにより生じる圧力上昇や、校正用容積CAV内にガスを所定圧力となるまで充填し、その後流出させることにより生じる圧力降下に基づいて流量の検定、校正を行うことができる。具体的には、気体の状態方程式について両辺を時間微分すると、流量が圧力の時間微分と温度、校正用容積CAVから算出できることがわかる。このようにして算出される流量を基準として、測定されている流量との差を比較し、測定されている流量に問題がないかどうかを検定したり、そのズレを併せて校正したりすることができる。
【0047】
また、校正用容積CAVは例えば2つ形成されており、それぞれに異なる種類のガスを導入することで、圧力変化の違いから各ガスの比熱等の物性パラメータを同定することができる。したがって、初めて使用するガス等であっても、得られた物性パラメータに基づいて測定流量の補正を行うといったことができる。
【0048】
このように構成された第1実施形態の流路形成装置100によれば、金属3Dプリンタを用いて枝流路Lの流通流路L2と、合流流路Cとを立体交差させるといった複雑な形状に形成しているので、この流路形成装置100に対して各流体機器を搭載するだけで、以下のような複数の機能を実現することができる。
【0049】
まず、チャンバへの供給する混合ガスを所望の混合比で混合した混合ガスを生成する機能を実現できる。また、生成された混合ガスについてそれぞれを所望の流量比率で分配することができる。さらに、マスフローコントローラMや流量比率制御装置FSにおいて測定される流量の検定や校正も行うことができる。
【0050】
したがって、第1実施形態の流路形成装置100によればコンパクト化を実現しながら各主機能を集約することが可能となる。
【0051】
また、校正時の基準となる校正用容積CAVが流路形成装置100内に設けられているので、マスフローコントローラM内の流路の容積を基準とするよりも校正用容積CAVを大きくすることができる。したがって、流量のベリファイヤのように検定用のタンクを準備しなくても精度よく校正を行えるようになる。
【0052】
次に第2実施形態の流路形成装置100について図9及び図10を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0053】
第2実施形態の流路形成装置100は、第3層の校正用パネルP3が例えば金属3Dプリンタにより形成されるものである。また、第4層に校正用パネルP3を温調するペルチェ素子TCを具備する温調パネルが設けられる。
【0054】
図9に示すように第2実施形態の校正用パネルP3は、ほぼ全体が中空となるように形成されている。このような大きな内部空洞を形成するために、この校正用パネルP3は校正用容積CAV内に校正用パネルP3の表面と裏面との間を接続する複数のブリッジBLを備えている。
【0055】
また、校正用パネルP3は校正用容積CAV内に設けられた温度センサTSと、温度センサTSの周囲に設けられた熱交換フィンFと、さらに備えている。このようにして校正時に必要となるガスの温度を正確に取得できるようにしている。また、校正用容積CAV内には搭載パネルP1から流出し、分配パネルP2を通過してベントへと至る排出流路VNLの一部が形成されている。この排出流路VNLは校正用容積CAV内においてL字状に形成されている。このような空洞とL字配管について溶接等を用いずに金属3Dプリンタで一体形成しているので、密閉性と集約性を両立させることができる。
【0056】
温調パネルには、概略平行四辺形状の板状のペルチェ素子TCが複数、校正用容積CAVに対応する部分をほぼ覆うように敷き詰められている。
【0057】
このような第2実施形態の流路形成装置100であれば、校正用容積CAVをさらに大きく形成することができ、また校正時におけるガスの温度を一定に保ちやすいので、校正精度をさらに高めることができる。
【0058】
その他の実施形態について説明する。
【0059】
第1実施形態の流路形成装置では、各パネルを積層していたがそれぞれのパネルを平面的に並べて同様の機能を実現してもよい。また、各パネルを積層する順番についてはは限定されない。各パネルの機能を実現できるものであれば、どのような順番であっても構わない。
【0060】
搭載パネル内に形成される流通流路と合流流路の立体交差の態様については、第1実施形態において示したものに限られない。例えば流通流路に対して合流流路が斜めに立体交差するものであってもよいし、それぞれの流路がねじれの位置に配置されるものであってもよい。
【0061】
各合流流路を通過したガスについては、第1実施形態に示したように接続されているベントから排気されるものに限られず、例えば校正用パネル内に導入されるようにして校正に用いることができるようにしてもよい。また、各開閉弁の切り替えによる流路の切り替え先は用途に応じて様々なものに設定することができる。
【0062】
搭載パネルについてはその一部分のみを金属3Dプリンタで形成してもよいし、全体を金属3Dプリンタで形成してもよい。また、搭載パネルは前記実施形態において説明した金属3Dプリンタを用いた方法以外のアディティブ・マニュファクチャリング(積層造形法)によって形成されてもよい。例えば流体制御ブロックを厚み方向に対して流路の機能ごとにシート状に複数層に分割し、製造されたシートの上にさらに別の流路構造をアディティブ・マニュファクチャリングによって積層して形成してもよい。加えて、搭載パネルを形成する金属3Dプリンタによる積層造形法としては、金属粒子の素材粉末を層状に敷き詰めてレーザ光により直接焼結させる粉末焼結式積層法が挙げられる。また、インクジェット方式でバインダを含んだ素材粉末をすでに形成された部品に対して噴射して、構造を加えていくようにしてもよい。また、本発明に係る流路形成装置はガスの制御だけでなく、液体の制御にも用いることができる。
【0063】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行ったり、各実施形態の一部同士を組み合わせたりしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明であれば、従来よりも単位面積当たりの流路の集積度を高め、例えば流体制御システム全体をさらにコンパクト化したり、流量や圧力制御以外の機能を付与したりすることが容易な流路形成装置を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10