(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】内部標準を用いたLC-MSに関与するサンプル中のポリソルベート定量化の方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20240701BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N30/72 C
(21)【出願番号】P 2021549948
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2020055191
(87)【国際公開番号】W WO2020174064
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ギーバル
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/037484(WO,A1)
【文献】特開2017-049024(JP,A)
【文献】特表2015-523556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0142487(US,A1)
【文献】ZHANG et al.,Dual Effect of Histidine on Polysorbate 20 Stability: Mechanistic Studies,Pharmaceutical Research,2018年01月16日,Vol.35/No.33,PP.1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも1つのポリソルベート誘導体を定量化する方法であって、前記方法は、
ジオキソラニリウムイオンのシグナルに基づいて、前記サンプルのLC-MS分析を行うステップと、
前記ポリソルベートの内部標準を用いて内部較正を行うステップと
を含
み、
前記内部標準が、式(I):
【化1】
(式中、
【化2】
は、脂肪酸残基を表し、
ここで、Rは、C3-C24の直鎖状または分岐状の飽和アルキルを表し、
R’は、H、または
【化3】
であり、ここで、R’’は、C3-C24の直鎖状または分岐状の飽和アルキルを表し、
そして
nは1から100の間で構成される)のエトキシル化脂肪酸およびその混合物である、方法。
【請求項2】
前記ポリソルベートがPS20またはPS80である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内部標準が、
【化4】
(式中、nは1から100の間で構成される)
から選択される、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記内部標準が、
【化5】
であり、nが1から100の間で構成される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記LC-MS分析が、シングル四重極質量検出
器を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記LC-MS移動相が、ギ酸の勾配を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記LC-MS移動相が、三成分移動相である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
三成分移動相が、水、アセトニトリルおよびギ酸を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、バイオ医薬製剤である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが、少なくとも1つのタンパク質を含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが、少なくとも1つのモノクローナル抗体を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記ポリソルベートの酸化および/または加水分解を検出するステップも含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法を実施することを含む、サンプル中の少なくとも1つのポリソルベートの分解をモニタリングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ治療剤サンプル中のポリソルベートを定量化する分析方法に関する。PS80のようなポリソルベートは、バイオ治療製剤において最も一般的に用いられる界面活性剤である。
【背景技術】
【0002】
ポリソルベートは、バイオ医薬製剤において一般的に用いられる両親媒性の非イオン性界面活性剤である。その主な役割は、タンパク質およびモノクローナル抗体(mAb)を界面で誘発される凝集から保護することである。PS80のようなポリソルベートは、幅広い物理化学的特性をカバーし、さまざまな脂肪酸を含む、1500を超える分子の不均質な混合物である。PS80は、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンとして定義されるが、その合成方法のため、不均質な混合物であり、エステル化脂肪酸の自己酸化および酵素加水分解の傾向があることも知られている。PS80の不均質性の主な原因は、エステル結合およびそれに関与するいくつかの脂肪酸によるものと考えられる。実際、いくつかの研究では、大量(最大34.1%)のジエステルおよびしばしばより高次のエステルの存在が報告されている(非特許文献1)。この複雑さは、PS80の定量化および分解モニタリングにとって大きな課題となっている。
【0003】
最近の総説(非特許文献2)には、PS80モニタリングのさまざまな方法が記載されている。報告された方法は、大部分が液体クロマトグラフィー(LC)と接続されるさまざまな検出技術に基づいている。記載された方法の中で、PS80を定量化できるものは、すべての種類のPS80分解に対して感知できるわけではない。例えば、ELSDまたはCADを用いた混合モードの液体クロマトグラフィーに基づく方法は、PS80の定量化に適しているが、PS80分解の場合には最も感知できる方法というわけではない。また、質量分析計(MS)に基づく方法は、PS80の特性評価にしばしば用いられるが、PS80の定量化および品質管理(QC)環境でのモニタリングには用いられない。PS80の液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)特性評価における最近の進歩は、ジオキソラニリウムイオンの特徴的なシグナルに基づく(非特許文献3)。報告されたこれらの特徴的なシグナルの使用は、PS80種および特に脂肪酸組成の解釈および同定に有用であると記載された。また、PS80酸化的副生成物の構造解明にも使用された(前出の非特許文献1)。これまで、これらのシグナルはPS80定量化に使用されてこなかった。得られたクロマトグラムからは、相対的なまたは半定量的な情報しか取り出されてこなかった(前出の非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Borisovら Pharm.Biotechnol.2015,104,1005-1018
【文献】Martosら J.Pharm.Sci.2017,106,1722-1735
【文献】Borisovら Anal.Chem.2011,83,3934-3942
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、1回の分析でポリソルベート定量化を可能にする効率的で確固たる方法を提供することが依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目的によれば、本発明は、サンプル中の少なくとも1つのポリソルベート誘導体を定量化する方法であって、前記方法は、
ジオキソラニリウムイオンのシグナルに基づいて、前記サンプルのLC-MS分析を行うステップと、
前記ポリソルベートの内部標準を用いて内部較正を行うステップと
を含む、方法を提供する。
【0007】
内部標準(IS)の使用は、クロマトグラフィーおよび質量分析においてよく知られた手法であるが、ポリソルベート定量化にISを使用することは報告されていなかった。内部標準(IS)を使用することによって、直線性、再現性、正確性およびそれによって定量性が改善された。
【0008】
この方法の一つの重要な特徴は、マトリックス効果の問題を回避するために、内部較正のための内部標準を使用することである。典型的には、この内部標準は、無傷のポリソルベートの代替物として、類似の化学構造を有し、同じインソースフラグメンテーションを受ける。本発明によれば、この方法は、インソース解離によって生成される、特徴的な脂肪酸エステルのジオキソラニリウムイオンに依存する。慎重に選択された内部標準を使用することによって、本方法は、典型的なmAb製剤中のポリソルベートの定量化を可能にする。
【0009】
一実施形態によれば、ポリソルベートは、式(I):
【化1】
(式中、w、x、yおよびzは、同一または異なり、独立して、式(I)のポリエチレングリコール単位の数を表し、0とは異なる)
の化合物の混合物である。
【0010】
一実施形態によれば、w+x+y+z=20であり、ポリソルベートは、特にPS20またはPS80である。
【0011】
一実施形態によれば、上記ポリソルベートは、PS20またはPS80である。PS20およびPS80は、商業的に入手可能である(特に、Seppic-Puteaux、フランス)。
【0012】
一実施形態では、上記LC-MS分析には、QDa(登録商標)(Watersから入手可能)などのシングル四重極質量検出器が関与する。QDa質量検出器におけるインソースフラグメンテーションを用いることによって、ポリソルベートからジオキソラニリウムイオンが生成される。QDaは、同じ分析工程において、ポジティブおよびネガティブイオン化モードの両方で複数のシングルイオンレコーディング(SIR)シグナルを並行して行うことができる。これにより、無傷のポリソルベートを定量化すること、特徴的なポリソルベート酸化副生成物を調べること、およびポリソルベートの加水分解の副生成物である遊離オレイン酸を定量化することが可能となる。典型的には、PS80の場合、最低4つのSIRシグナル:無傷のPS80の特異的なイオンである、オレイン酸エステルのジオキソラニリウムイオンのもの、ISのジオキソラニリウムイオンのもの、ネガティブイオン化モードの遊離オレイン酸(PS80加水分解の主要な副生成物)のもの、酸化されたオレイン酸エステルのジオキソラニリウムイオン(酸化されたPS80の主要な副生成物)のものを追跡した。情報目的のために他のシグナルを記録してもよい。
【0013】
一実施形態によれば、この方法では、PS80分解の副生成物:加水分解の場合、オレイン酸(SIRネガティブ m/z 281.3)および酸化の場合、酸化オレイン酸エステル(SIRポジティブ m/z 325.3)に関するSIRシグナルの追跡が可能である。
【0014】
この新しい方法では、1回の分析のみで少なくとも同じレベルの情報を得ることができるため、PS80の分析に費やす時間を減らすことができる。この方法によって集めた情報は、分析物が無傷のPS80または分解されたPS80のマーカーのいずれかに本当に特異的であるため、非常に理解しやすい。
【0015】
したがって、一実施形態によれば、この方法は、上記ポリソルベートの酸化および/または加水分解を検出するステップも含む。既存の方法とは異なり、本方法では、PS80化合物の全体的な濃度を低下させうる分解(酸化または加水分解のいずれか)または吸着が発生した場合でも、製剤中のPS80を定量化することができる。
【0016】
図2(b)は、無傷のPS80の定量化のためのm/z 309.3でのSIRシグナルを示している。一実施形態によれば、方法は、PS80酸化およびPS80加水分解の両方に対して感知できる適切な代替物を使用することによって、無傷のPS80を定量化することができる。モノエステルは分解に対してより感知することができ、ポリソルベート定量化のための代替物として使用されうる。一実施形態によれば、無傷のポリソルベートの上記特定の代替物は、モノエステルであってもよい。PS80の場合、代替物は、
図2(b)のピーク2.1として識別される化合物である。典型的には、実験条件に応じて、このピークは、6から7分の間で構成される保持時間を有し、より具体的には、後述の実験部分の実験条件では、このピークは、6.85から6.95分の間で構成される保持時間を有し、より具体的には約6.9分である。この代替物を使用することで、本方法の使用は、加水分解または酸化による分解の場合における無傷のPS80の定量化にとって適切なものとなる。これまでに発表された方法では、このようなことはできなかった。
【0017】
本明細書に用いる場合、「内部標準」とは、化学分析においてサンプル、ブランクおよび較正標準に一定量添加される化学化合物を指す。次いで、この化合物は、ポリソルベートシグナルと内部標準シグナルの比を、標準サンプルのポリソルベート濃度の関数としてプロットすることによって較正に使用することができる。理想的な場合、サンプル調製の影響が、それぞれの種の量に対して、内部標準からのシグナルと、目的の種からのシグナルとが同じになるようにすべきであるため、内部標準は、一般的にサンプル中のポリソルベートと非常によく似ているが、同一ではない化合物である。使用する内部標準は、一般にポリソルベートのシグナルとほとんどの点で類似しているが、2つのシグナルが装置で容易に区別できるように十分に異なるシグナルを提供する必要がある。
【0018】
内部標準は、典型的には目的の分析物と構造が類似しており、目的の分析物と比較して類似した保持時間を有し、類似したインソースフラグメンテーションを受けなければならない。また、それは、安定していなければならず、サンプル成分と干渉してはならない。
【0019】
一実施形態によれば、内部標準(IS)は、ポリソルベートと類似の物理化学的性質を有するように、1つまたは複数のカルボン酸でエステル化されたポリエチレングリコール鎖を有する選択された化合物であってもよい。典型的に、カルボン酸部分は、ポリソルベート混合物中に存在する脂肪酸とは異なる必要がある。
【0020】
一実施形態によれば、内部標準は、式(I):
【化2】
(式中、
【化3】
は、脂肪酸残基を表し、
ここで、Rは、C3-C24の直鎖状または分岐状飽和アルキルを表し、
R’は、Hまたは
【化4】
であり、ここでR’’は、C3-C24の直鎖状または分岐状飽和アルキルを表し、そして
nは、一般式(I)中のPEG(ポリエチレングリコール)単位の数として定義され、式(I)の化合物は、同一または異なるnが1から100の間で構成される、1つまたはそれ以上の式(I)の化合物の混合物の形態であることが理解される)
のエトキシル化脂肪酸およびその混合物である。
【0021】
一実施形態によれば、nは、1から100の間で構成される整数である。
【0022】
一実施形態によれば、上記内部標準は、
【化5】
から選択され、上記のように定義されたnは、1から100の間で構成される。
【0023】
より詳細には、内部標準は、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(以下、PEG-C12と呼ぶ)またはモノミリスチン酸ポリエチレングリコール(以下、PEG-C14と呼ぶ)、さらにより詳細には、
【化6】
(ミリスチン酸ポリエチレングリコール、PEG-C14)である。PEG-C12およびポリ(エチレングリコール)ビス(2-エチルヘキサノエート)は、Sigma-Aldrich(Saint Quentin Fallavier、フランス)から商業的に入手可能であり、PEG-C14は、PEG-C12に存在する成分として使用される。
【0024】
PEG-C12の場合、nは、平均分子量が300から600g/molの間、典型的には約400g/molで構成されるようなものであってもよい。ポリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)の場合、nは、平均分子量が400から700g/molの間、典型的には約650g/molとなるようなものであってもよい。PEG-C14は、PEG-C12から単離してもよいし、またはPEG-C12中に存在する成分としてPEG-C12を介して使用することができる。
【0025】
ポリソルベートモノおよび高次エステルならびに遊離オレイン酸の検出、ならびにポリソルベートおよび遊離オレイン酸の感度は、移動相および/またはコーン電圧の調節によって調整できることがわかった。一実施形態によれば、LC-MS相の移動相は、ギ酸の勾配を含む。典型的には、移動相は、水、アセトニトリルまたはイソプロパノールなどの有機溶媒、およびギ酸または酢酸などの酸を含む三成分移動相である。典型的には、移動相は、水、アセトニトリルおよびギ酸でできており、アセトニトリルおよびギ酸の勾配があり、典型的にギ酸の勾配は0.01~0.1%の範囲である。一般に、溶出相の組成は、水80~90%、アセトニトリル10~20%およびギ酸0.01~0.05%を含む初期組成から、水0~10%、アセトニトリル90~99.9%およびギ酸0.05~0.1%を含む最終組成に向かって変化する(部分的に)。
【0026】
コーン電圧は、インソースフラグメンテーションを誘発しうる。一般的に、コーン電圧は100Vよりも低く、好ましくは70Vよりも低い。典型的に、ポリソルベートおよびオレイン酸に対して異なるコーン電圧(CV)を使用してもよい。例示として、PS80および遊離オレイン酸に関してより高い感度を達成するために、PS80にはCV50、またオレイン酸にはCV15を使用してもよい。
【0027】
一実施形態によれば、本方法は、内部標準をサンプルに添加する初期ステップを含む。また、本方法は、その中に含まれうるタンパク質を沈殿させるためにサンプルを処理するステップを含んでもよい。上記処理は、サンプルへのアセトニトリルの添加、および/または上記サンプルの遠心分離を含んでもよい。
【0028】
一実施形態によれば、上記サンプルはバイオ医薬製剤である。本明細書で用いる場合、バイオ医薬製剤は、タンパク質などの少なくとも1つの生物学的製品を含む医薬組成物である。したがって、上記サンプルは、モノクローナル抗体(mAb)またはそのフラグメント、一本鎖可変フラグメント(scFv)、単一ドメイン抗体(VHH抗体、すなわちナノボディ)、抗体薬物複合体、二重特異性抗体、三重特異性抗体などの、少なくとも1つの治療用タンパク質または生物治療薬または生物学的製剤を含みうる。
【0029】
別の目的によれば、本発明は、また、サンプル中の少なくとも1つのポリソルベートの分解をモニタリングする方法に関する。上記方法は、本発明による上記ポリソルベートを定量化する方法を実施することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】PS80の理論構造および分解経路をまとめた図である。
【
図2】保持時間(分)に対する強度(任意の単位)を示した図である。それは、(a)1-非エステル化種、2-モノエステル、および3-高次エステルとラベル付けされたピークを有するPS80の代表的な総イオン電流(TIC)プロファイル、(b)2.1-POEソルビタンモノオレエート、2.2-POEイソソルビドモノオレエートおよび2.3-POEモノオレエートとラベル付けされたピークを有するオレイン酸種の溶出を示す、m/z 309.3のシングルイオンレコーディング(SIR)ならびに(c)パルミチン酸種の溶出を示すm/z 283.3のSIRを示す。
【
図3】(a)CV50で様々なパーセンテージのギ酸を用いた、および(b)0.1%のギ酸での異なるCVを用いた、ポジティブイオン化モードのオレイン酸エステルのジオキソラニリウムイオンのクロマトグラムを表す。(c)モノエステルおよび高次エステルに関して(b)から抽出したピーク面積をコーン電圧に対してプロットした。
【
図4】(a)CV15で様々なパーセンテージのギ酸を用いた、および(b)0.01%ギ酸での異なるCVを用いた、ネガティブイオン化モードでのオレイン酸のクロマトグラムを示す。
【
図5】熱ストレスをかけたサンプル(上のクロマトグラム)とストレスをかけていないサンプル(下のクロマトグラム)におけるPS80分解の示差分析の代表的なクロマトグラムを示す。熱ストレスをかけたサンプルでは、PS80オレイン酸亜種が減少している(a-ポジティブ m/z 309.3)。オレイン酸の増加は見られず(b-ネガティブ m/z 281.3)、酸化された副生成物が急激に増加した(c-ポジティブ m/z 325.3)。
【
図6】2つの異なるバッチA(上のクロマトグラム)またはB(下のクロマトグラム)におけるPS80分解の示差分析の代表的なクロマトグラムを示す。バッチAのサンプル(a-ポジティブ m/z 309.3)では、PS80オレイン酸亜種が減少している。オレイン酸の大幅な増加が観察され(b-ネガティブ m/z 281.3)、酸化された副生成物は2つのバッチで差がない(c-ポジティブ m/z 325.3)。
【
図7】PEGビスC8(a)ならびにPEG C12およびPEG C14(b)に関する50μg/mLのPS80サンプル(点線)および内部標準(実線)の309.3 m/zのポジティブイオン化モードのSIRシグナルを示す。
【
図8】PS80サンプル(点線-パネルb)およびPEGビスC8(実線-パネルa)に関するPEGビスC8の171m/zの特異的シグナルにおけるポジティブイオン化モードの抽出イオンクロマトグラムである。内部標準として使用したピークの保持時間(Rt)を示す。
【
図9】PS80サンプル(点線-パネルb)およびPEGビスC8(実線-パネルa)に関するPEG C12の227.3 m/zの特異的なシグナルを示すポジティブイオン化モードの抽出イオンクロマトグラムである。内部標準として使用したピークの保持時間(Rt)を示す。
【
図10】PS80サンプル(点線)およびPEG C14(実線)に関するPEG C14の255.3 m/zの特異的なシグナルにおけるポジティブイオン化モードでのシングルイオン記録を示す。内部標準として使用されたピークの保持時間(Rt)を示す。
【実施例】
【0031】
物質。ポリソルベート80は、Seppic(Puteaux、フランス)から入手した。LC-MSのために、容量フラスコ中でポリソルベート1gを水100mLに溶解して、10g/Lの保存溶液を得、2~8℃で遮光して保存した。アセトニトリルLC-MSグレードは、Fisher Scientific(Illkirch、フランス)から購入した。milliQシステムの精製水を使用した。ギ酸、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(PEG-C12、Mn=±400g/mol)、ビス2エチルヘキサン酸ポリエチレングリコール(PEG-ビスC8、Mn=±650g/mol)およびオレイン酸は、Sigma-Aldrich(Saint Quentin Fallavier、フランス)から購入した。PEG-C12は、内部標準として使用した。PEG-C12の保存溶液は、容量フラスコ中でアセトニトリル100mLに500mgを溶解して、5g/Lの保存溶液を調製した。アセトニトリルで希釈して100μg/mLの希釈標準溶液を調製した。本試験を通して、PEG-C12の1つのバッチのみを使用した。オレイン酸の保存溶液は、容量フラスコ中でアセトニトリル100mLに100mgを溶解して、1g/Lの保存溶液を調製した。較正用の希釈標準溶液は、20mLの容量フラスコ中で、PEG-C12の最終濃度を5μg/mL、PS80の濃度を5から75μg/mLまで変えて、オレイン酸の濃度を1から20μg/mLまで変えて調製した。添加した溶媒は、水/アセトニトリルの混合液(20%/80%)で構成した。
【0032】
LC-MS分析。Waters(Saint Quentin en Yvelines、フランス)のQDa質量検出器を備えたAcquity UPLCシステムにおいて逆相分離を行った。QDaのパラメータは、デフォルトで設定されており、その後、後に詳述するように最適化した。Agilent(Les Ulis、フランス)のzorbax Sb-Aqカラム(100×2.1mm;3.5μm)を、Christiansenら(Pharmazie.2011,66,666-671)の方法に従って、50℃で1mL/分の流速で操作した。移動相AおよびBは、それぞれ水+0.1%ギ酸およびアセトニトリル+0.1%ギ酸とした。分析勾配は以下の通りであった:85%Aおよび15%Bを1分間、続いて6分で60%Bまで直線的に傾斜させ、8分まで保持した後、10分で100%Bまで直線的に傾斜させ、さらに3分間保持した後、13.1分で初期条件まで戻し、さらに3分間保持した。典型的な移動相の勾配は、以下の勾配表に記載されている。
【0033】
【0034】
移動相および勾配などの分析条件は、得られた結果に応じて適合させた。
【0035】
サンプル調製。mAbおよび異なる賦形剤を含むバイオ医薬製剤のサンプルを使用した。PS80の濃度は200μg/mLに保持した。サンプル調製は、アセトニトリルを用いたタンパク質沈殿ステップで構成された。mAb製剤80μLに、内部標準の希釈標準溶液20μLおよびアセトニトリル300μLを加えた。撹拌後、混合物を10℃で10分間1500gの遠心分離にかけた。上澄みを回収し、HPLCバイアルに移した。最終濃度は、PS80約40μg/mLおよび内部標準約5μg/mLである。
【0036】
結果および考察
PS80成分の分離および「インソース」解離による脂肪酸エステルの同定。多くの以前の論文によると、ポリソルベートは、エステル化された種の化学構造およびの濃度において大きな多様性を有する不均質な混合物である。さらに、エステル結合に関与する脂肪酸の性質も異なることがある。EU薬局方によると、オレイン酸およびパルミチン酸(それぞれモノ不飽和および飽和脂肪酸)は、PS80の2つの主要な脂肪酸である。ジオキソラニリウムイオンと称する、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの特徴的な一連の低いm/zイオンを使用して、PS80のエステル化された種を特定した。PS80の典型的なプロファイルは、モノからテトラエステルまでの異なる脂肪酸エステルを示し(
図2a)、シングルイオンレコーディング(SIR)のm/z 309.3および283.3はオレイン酸エステルおよびパルミチン酸エステルの種に特異的である(
図2bおよび2c)。SIRによって得られたクロマトグラムは、クロマトグラフィーの分解能の人工的増加により、解釈および統合することが非常に容易になった。異なるエステル種の同定は、逆相クロマトグラフィーにおけるポリソルベート種の溶出順序に関する引用文献1(前出)に発表された研究に基づく(
図2aおよび2b)。
【0037】
LC-MS方法の開発。QDaは、ESIソースのネガティブおよびポジティブイオン化モードで同時分析を行うことができる。この能力の優位性を得るために、LC-MSの条件を慎重に最適化した。移動相中のギ酸のパーセンテージおよびESIイオン源のコーン電圧(CV)を系統的に評価することで、PS80およびその分解物を高感度で同時に分離することができた。ギ酸パーセンテージ0.01%~0.1%は、オレイン酸モノエステルの検出にほとんど影響しないが、高次エステルの検出には重要であった(
図3a)。コーン電圧を上げると、CV50まではモノエステルおよび高次エステルのピーク面積で表されるシグナルが増加した(
図3bおよび3c)。CV50より上では、シグナルの劇的な喪失が認められた。この現象は、インソースフラグメンテーションによって説明された。上昇したコーン電圧によってインソースフラグメンテーションの増加が誘発され、CV50まではより多くのジオキソラニリウムイオンが生成された。より高いCVでは、激しいインソースフラグメンテーションの結果、シグナルの喪失を説明する2次フラグメントが生成された。
【0038】
オレイン酸のネガティブイオン化モードでの検出には、移動相中に0.01%以下の少ない比率のギ酸が必要であった(
図4a)。オレイン酸のフラグメント化されていない分子イオンの検出には、インソースフラグメンテーションを最小限に抑えるために低いコーン電圧が必要である(
図4b)。モノエステル、オレイン酸および高次エステルの間の溶出の順序により、分析を通してアセトニトリルおよびギ酸のパーセンテージを独立して変化させるために、三成分の移動相の勾配を導入することが可能であった。LC-MS方法は、以下のように実験セクションから適合させた。移動相勾配では、85%A(水)、5%B(アセトニトリル)および10%C(アセトニトリル+0.1%ギ酸)を1分間、その後、6分で40%A、50%Bおよび10%Cまで直線的に傾斜させ、2分間保持した。さらに9分で20%A、70%Bおよび10%Cまでの直線的な傾斜を加えた。9.1分で、18%Aおよび82%Cに切り替えて、ギ酸のパーセンテージを0.1%に高め、10分で、100%Cまで傾斜を継続し、3分間保持した後、13.1分で初期条件に戻した。9分で、移動相BとCの切り替えを行い、移動相中のギ酸のパーセンテージを0.01%から0.1%に変更したが、移動相中のアセトニトリルのパーセンテージは同じ勾配傾斜のままであった。ポジティブイオン化モードのSIRシグナルはCV50で記録したのに対して、ネガティブイオン化モードのSIRシグナルはCV15で記録した。
【0039】
外部較正によるポリソルベートの定量化。以前に公開された方法では、PS80またはPS20は、外部較正曲線を用いて適切な代替物を使用して定量化される。よく知られている例としては、メタノール中での加水分解およびその後のエステル化によりオレイン酸メチルなどの脂肪酸メチルエステルを形成する方法がある。次いで、このオレイン酸メチルをPS80の代替物とみなして、定量化する。ここでは、定量化のための代替物は、ピーク2.1(
図2b)であり、このピークは、PS80の理論構造に近い構造を有するモノオレイン酸POEソルビタンに対応する。このピークに基づいて、水溶液中5~75μg/mLの範囲のPS80濃度を有する7種の濃度レベルの較正曲線を作成した。直線性は,ピーク面積対濃度の重み付けなしの線形回帰(unweighted linear regression)で評価した。直線性は悪く、r
2は0.977であった。残差は二次的な挙動を示し、直線性の悪さを説明していた。各較正レベルの6回の反復注入で評価された再現性は悪く、ピーク面積のRSD%は22%より上であった。これらの悪い結果は、「インソース」フラグメンテーションにおける競合のためであり、QDaのESIソース、シングル四重極におけるこのフラグメンテーションが十分に制御されてなかったからであると推定された。
【0040】
外部較正と内部較正との比較。この課題を克服するため、外部較正の代わりに内部較正を行うために、内部標準(IS)を使用した。定量化の目的でLC-MSにおいて最も一般的に使用される内部標準は、重水素化化合物である。PS80混合物の不均質性を考慮して、このアプローチは考えなかった。類似の化学構造を有しており、そのため類似のインソースフラグメンテーション経路を有する化合物として、モノミリスチン酸ポリエチレングリコール(PEG-C14)、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(PEG-C12)、およびビス2エチルヘキサン酸ポリエチレングリコール(PEG-ビスC8)を選択した。PEG-C12およびPEG-ビスC8は、商業的に入手可能である(Sigma-Aldrich/Merck)。PEG-C14は、標準的な化学物質製造業者からは購入できなかったが、PEG-C12の不純物として見出された。このPEG-C14は、C14飽和脂肪酸でエステル化されたPEGでできているので、それを同じフラグメンテーションにかけると、ポジティブイオン化モードでm/z 255.3で特徴的なジオキソラニリウムイオンが形成された。PS80とPEG-C14/PEG-C12/PEGビスC8との干渉を、それを内部標準として使用する前に確認した。PS80からのシグナルはPEG-C14/PEG-C12/PEGビスC8のシグナルと干渉せず、その逆も同様であった。PEG-C14/PEG-C12/PEGビスC8およびPS80代替物ピークの保持時間が近かったため、それらは、インソースフラグメンテーション中に同じ競合を受けた。PEG-C14/PEG-C12/PEGビスC8のシグナルがPS80のシグナルと干渉しないことは、
図7に示されている。
【0041】
PS80からのシグナルがPEG-C14/PEG-C12/PEGビスC8のシグナルと干渉しないこと、およびPEG-C14/PEG-C12/PEGビスC8からの目的のピークの保持時間は、
図8~10に示されている。
【0042】
比較のために、外部較正と同じ実験セットで内部較正を評価した。直線性は、濃度に対するISを超えるPS80代替物ピークのピーク面積比の重み付けなし線形回帰により評価した。直線性は、r2が0.999より大きく良好であった。残差は多少ランダムに分布し、相対的バイアスは10%より下に保持された。各較正レベルを6回反復注入によって評価された再現性は、すべての較正レベルにおいてピーク面積比のRSD%が6%より下となり、再び良好であった。表2では、これらの外部および内部較正の再現性に関する結果を、モノミリスチン酸ポリエチレングリコール(PEG-C14)、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(PEG-C12)、ビス2エチルヘキサン酸ポリエチレングリコール(PEG-ビスC8)と比較している。これらのIS間の比較は、直線性(r2)および再現性(RSD%)に基づく。
【0043】
【0044】
これらのデータに基づいて、PEG-C12、PEG-C14、PEGビスC8などの内部較正は、外部較正よりも高い再現性を示すことが示された。これらの内部標準は、類似した再現性の挙動を示す。
【0045】
オレイン酸の定量化。PS80加水分解の主要な副生成物として、オレイン酸は、追跡すべきパラメータである。引用文献2に報告されているようないくつかの方法は、PS20またはPS80の加水分解によって放出される、オレイン酸を含む遊離脂肪酸を定量化するために開発された。
【0046】
QDaの特徴により、遊離オレイン酸のSIRシグナル(ネガティブイオン化モードでm/z 281.3)を、無傷のおよび酸化されたPS80のSIRシグナルとともに同じ分析工程で記録した。オレイン酸は、PS80の較正レベルに加えて、1μg/mLから20μg/mLまでの6つの較正レベルを用いた外部較正によって定量化した。例えば、20μg/mLのPS80の典型的な較正レベルには、5μg/mLの内部標準および5μg/mLのオレイン酸も含まれていた。直線性は、濃度に対するピーク面積の重み付けなしの線形回帰で評価した。直線性は、r2が0.997より大きく、残差がランダムに分布しており、良好であった。再現性は、PS80のものと同様の方法で評価した。RSD%値は6.0~13.1%で、2μg/mLの濃度で最大値が認められた。RSD%値は予想よりも高かったが、この情報は調査の場合にのみ使用されるため、このアッセイは満足のいくものであるとみなした。この高い値は、移動相の組成により、ネガティブイオン化モードのベースラインノイズが高いためではないかと推測された。実際、開発時にはPS80オレイン酸エステル種の検出に向けて妥協がなされた。
【0047】
製剤化されたmAbサンプルへの適用。この方法を、異なるmAbの特性および賦形剤を有するが、各回200μg/mLのPS80を有するさまざまなmAb製剤の場合に適用した。
【0048】
5mg/mLで製剤化されたmAb1を、方法の正確性だけでなく、サンプル調製の再現性を評価するために使用した。3日連続で3回の調製および分析を行い、9回のPS80濃度の測定を行った。全体の平均値は182μg/mLでRSD値3.1%であった。これらの結果は、古典的な混合モードのLC-CAD分析を用いた以前の測定と一致しており、6回の測定において平均値188μg/mLでRSD1.2%が見出された。
【0049】
20mg/mLで製剤化されたmAb2を、40℃で2週間の熱ストレス条件にかけた。その結果、PS80含有量が198から25μg/mL未満へと大幅な減少を示した。記録された他のシグナルからさらなる情報を得た。パルミチン酸エステル種のクロマトグラムでは、ストレスをかけたサンプルとかけてないサンプルとの間に違いは見られず、これは酸化の場合によく見られるオレイン酸エステル種のみが分解の影響を受けていることを示している。遊離オレイン酸の痕跡は見出されず、分解経路として加水分解が排除される。SIRシグナルm/z 325.3(ポジティブイオン化モード)は、ストレスをかけたサンプルとかけてないサンプルとで大きな違いが見られた(
図5)。m/z 325.3のイオンは、エポキシ-ステアリン酸またはヒドロキシ-オレイン酸で修飾されたポリソルベートのいずれかとして、PS80酸化の特徴的な副生成物として記載された。ここでは、1回の分析で3つの異なるクロマトグラムが記録されて、この分解したサンプルにおけるPS80の全体像が得られ、PS80の減少が酸化によるものであると明確に結論づけることができた。
【0050】
50mg/mLで製剤化されたmAb3は、もう1つの実施例であった。異なるバッチのサンプルを、分析前にほぼ1カ月間、5℃で保管した。その結果、バッチAとバッチBとの間のPS80含有量が異なり、200μg/mLではなく、それぞれ100μg/mLおよび190μg/mLであることがわかった。このことは、
図6aにおいて、PS80定量化のための代替物のピーク2.1から判断して説明される。酸化したPS80のSIRシグナルは、各バッチ間で差を示しておらず、これは、mAb2で観察された強度と比較して、PS80の酸化副生成物が増加していないことを意味する。問題のあるバッチAでは、約25μg/mLの濃度で溶液中の遊離オレイン酸が見出された。バッチBでは、微量のオレイン酸しか見出されなかった(
図6)。遊離オレイン酸の存在は、PS80加水分解の証拠である。この分析から得られたすべての情報から、PS80の分解は加水分解によるものだと結論づけられた。高次エステルには影響がなかったので、この加水分解は酵素由来であると推測された。
【0051】
結論。PS80はバイオ治療製剤に広く使用されている。近年、製剤中でのポリソルベートの安定性およびタンパク質の凝集に対するその保護的役割を維持する能力について懸念が高まっていた。PS80の含有量を測定し、その分解をモニターする効率的な方法が、過去数年にわたって報告された(非特許文献2、前出)。その中でも、LC-MSに基づく方法は、特徴的なおよび半定量的な情報に関して有望な結果を示した。クロマトグラムを大幅に簡素化し、PS80のサブクラスをより容易に特定するために、「インソース」CIDに続いて、脂肪酸エステルのジオキソラニリウムイオンの特徴的なシグナルを使用した。記載された以前の研究では、その方法が定量的であることについては検証されていなかった。本研究では、同じ方法論を適用し、シングル四重極質量検出器を用いてQCレベルで定量化のために使用することを目的とした。残念ながら、定量化のための最初の結果は、Borisov(前出)の結論を裏付けるものであった。この課題は、化学的性質が類似した内部標準を慎重に選択することによって克服された。ギ酸勾配により、PS80エステルサブクラスから遊離脂肪酸まで、すべての目的化合物をポジティブおよびネガティブイオン化モードでより高感度かつ同時に検出できることが示された。
【0052】
この方法は、PS80モニタリングの様々なケース、特にPS80の分解に特有の特徴を有するものの2つのケースにうまく適用された。この2つのケースでは、たった1回の16分間の分析を用いて、PS80分解の根本原因が特定された。この方法がなければ、同じ目標を達成するために3~4種類の異なる方法:PS80定量化(混合モードLC-CAD)のための方法に加えてPS80プロファイリング(逆相CAD)のための方法と共に特徴的な副生成物(酸化したPS80および遊離オレイン酸)を特定するための別の方法が必要となったであろう。ここで提示された方法は、これまで必要とされてきた広範な分析ツールボックスを効率的に置き換えることができる。
【0053】
本方法の目的は、PS80の正確な安定性を示す測定値を提供するだけでなく、PS80分解の根本原因を明確に特定するために貴重な情報を提供することである。