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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】真空処理装置および真空処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240701BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20240701BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20240701BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01J37/18
C23C14/56 G
C23C16/44 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022569395
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046967
(87)【国際公開番号】W WO2022130535
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田ノ口 亮斗
(72)【発明者】
【氏名】坪内 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】生方 孝男
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-65135(JP,A)
【文献】特開2010-92633(JP,A)
【文献】特開2013-182792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01J 37/18
C23C 14/56
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内外への試料の搬出入に伴って開閉する第1のゲートバルブを有する第1の真空チャンバーと、
前記第1の真空チャンバーに第2のゲートバルブを介して連接される第2の真空チャンバーと、
前記第1の真空チャンバーを真空排気する真空ポンプと、
前記第1の真空チャンバーの内圧を測定する圧力計と、
前記第1の真空チャンバーから前記第2の真空チャンバーへの前記第2のゲートバルブを介した前記試料の搬送を制御するコンピュータシステムと、
を有し、
前記コンピュータシステムは、前記第2のゲートバルブを閉状態に制御した上で第1の時間行われている前記真空ポンプによる前記真空排気を停止し、前記真空排気を停止した状態で前記圧力計を用いて前記第1の真空チャンバーの内圧を測定し、当該測定した内圧が第1の基準値に到達している場合に前記第2のゲートバルブを開状態に制御し、
前記コンピュータシステムは、前記測定した内圧が前記第1の基準値に未達の場合には、前記真空ポンプによる前記真空排気を第2の時間行ったのち停止し、前記真空排気を停止した状態で前記第1の真空チャンバーの内圧を測定するというループ処理を、前記測定した内圧が前記第1の基準値に到達するまで繰り返す、
真空処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の真空処理装置において、
前記第1の真空チャンバーは、ロードロックチャンバーである、
真空処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の真空処理装置において、
前記コンピュータシステムは、前記ループ処理が生じた第1の試料を対象に、前記測定した内圧が前記第1の基準値に到達するまでに要した前記真空排気のトータル時間を計測し、前記第1の試料と同種の試料を対象とする際に、前記第1の時間に前記トータル時間を反映させる、
真空処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の真空処理装置において、
前記コンピュータシステムは、所定の開始時点から、前記第1の真空チャンバーの内圧が前記第1の基準値よりも高い第2の基準値に到達するまでに要する第3の時間を計測し、前記第1の試料と同種の試料である否かを前記第3の時間に基づいて判定する、
真空処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の真空処理装置において、
前記コンピュータシステムは、
第2の試料を対象に、前記真空ポンプによる前記真空排気を、前記トータル時間が反映された前記第1の時間行ったのち停止し、前記真空排気を停止した状態で前記測定した内圧が前記第1の基準値に到達しているか否かを判定し、
前記第2の試料において前記測定した内圧が前記第1の基準値に到達しており、かつ、前記第2の試料と前記第2の試料に続いて処理される第3の試料とで前記第3の時間が同等である場合に、前記第3の試料を前記第2の試料と同種であると判定する、
真空処理装置。
【請求項6】
請求項2記載の真空処理装置において、
前記コンピュータシステムは、ユーザの設定に基づいて前記ループ処理の繰り返し回数の上限を定める、
真空処理装置。
【請求項7】
請求項1記載の真空処理装置において、
前記真空ポンプは、TMP(turbomolecular pump)である、
真空処理装置。
【請求項8】
請求項1記載の真空処理装置において、
記コンピュータシステムは、前記試料の種類に応じて、前記第1の真空チャンバーの内圧を、前記真空排気を停止した状態で測定するか、または、前記真空排気が行われている状態で測定するかを切り替え可能となっている、
真空処理装置。
【請求項9】
請求項1記載の真空処理装置において、
前記真空処理装置は、前記第2の真空チャンバーに搬送された前記試料に荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム装置である、
真空処理装置。
【請求項10】
請求項1記載の真空処理装置において、
前記コンピュータシステムは、前記ループ処理内の前記測定した内圧の変化量又は応答特性に基づいて、前記試料を前記第1の真空チャンバーから前記第2の真空チャンバーへ搬送するように制御する、
真空処理装置。
【請求項11】
装置内外への試料の搬出入に伴って開閉する第1のゲートバルブを有する第1の真空チャンバーと、
前記第1の真空チャンバーに第2のゲートバルブを介して連接される第2の真空チャンバーと、
前記第1の真空チャンバーを真空排気する真空ポンプと、
前記第1の真空チャンバーの内圧を測定する圧力計と、
を有する真空処理装置の真空処理方法であって、
前記第1の真空チャンバーから前記第2の真空チャンバーへの前記第2のゲートバルブを介した前記試料の搬送を制御する際に、前記第2のゲートバルブを閉状態に制御した上で第1の時間行われている前記真空ポンプによる前記真空排気を停止し、前記真空排気を停止した状態で前記圧力計を用いて前記第1の真空チャンバーの内圧を測定し、当該測定した内圧が第1の基準値に到達している場合に前記第2のゲートバルブを開状態に制御し、
前記測定した内圧が前記第1の基準値に未達の場合には、前記真空ポンプによる前記真空排気を第2の時間行ったのち停止し、前記真空排気を停止した状態で前記第1の真空チャンバーの内圧を測定するというループ処理を、前記測定した内圧が前記第1の基準値に到達するまで繰り返す、
真空処理方法。
【請求項12】
請求項11記載の真空処理方法において、
前記第1の真空チャンバーは、ロードロックチャンバーである、
真空処理方法。
【請求項13】
請求項12記載の真空処理方法において、
前記ループ処理が生じた第1の試料を対象に、前記測定した内圧が前記第1の基準値に到達するまでに要した前記真空排気のトータル時間を計測し、前記第1の試料と同種の試料を対象とする際に、前記第1の時間に前記トータル時間を反映させる、
真空処理方法。
【請求項14】
請求項13記載の真空処理方法において、
所定の開始時点から、前記第1の真空チャンバーの内圧が前記第1の基準値よりも高い第2の基準値に到達するまでに要する第3の時間を計測し、前記第1の試料と同種の試料である否かを前記第3の時間に基づいて判定する、
真空処理方法。
【請求項15】
請求項14記載の真空処理方法において、
第2の試料を対象に、前記真空ポンプによる前記真空排気を、前記トータル時間が反映された前記第1の時間行ったのち停止し、前記真空排気を停止した状態で前記測定した内圧が前記第1の基準値に到達しているか否かを判定し、
前記第2の試料において前記測定した内圧が前記第1の基準値に到達しており、かつ、前記第2の試料と前記第2の試料に続いて処理される第3の試料とで前記第3の時間が同等である場合に、前記第3の試料を前記第2の試料と同種であると判定する、
真空処理方法。
【請求項16】
請求項11記載の真空処理方法において、
前記ループ処理内の前記測定した内圧の変化量又は応答特性に基づいて、前記試料を前記第1の真空チャンバーから前記第2の真空チャンバーへ搬送する、
真空処理方法。
【請求項17】
装置内外への試料の搬出入に伴って開閉する第1のゲートバルブを有する第1の真空チャンバーと、
前記第1の真空チャンバーに第2のゲートバルブを介して連接される第2の真空チャンバーと、
前記第1の真空チャンバーを真空バルブを介して真空排気する真空ポンプと、
前記第1の真空チャンバーから前記第2の真空チャンバーへの前記第2のゲートバルブを介した前記試料の搬送を制御するコンピュータシステムと、
を有し、
前記コンピュータシステムは、前記試料が前記第1の真空チャンバー内に滞在している間、前記真空バルブの開閉動作、又は開度の大小調整を繰り返すように制御し、当該制御の期間内の前記第1の真空チャンバーの真空度又は内圧と、所定の閾値との比較結果、或いは、前記制御の期間内の前記第1の真空チャンバーの真空度又は内圧の変化量又は応答特性に基づいて、前記試料を前記第1の真空チャンバーから前記第2の真空チャンバーへ搬送する、
真空処理装置。
【請求項18】
請求項17記載の真空処理装置において、
前記第1の真空チャンバーは、ロードロックチャンバーである、
真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置および真空処理方法に関し、特にガスを放出する半導体ウェハの処理を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイス製造ラインでは、半導体ウェハ(以後、ウェハ)に形成された微細パターンの寸法計測やデバイス上の欠陥を検査するために、走査型電子顕微鏡を応用した装置が使われている。たとえば、半導体デバイスのゲートやコンタクトホールの寸法測定にはCD-SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)が、欠陥検査には欠陥検査SEM等が用いられる。
【0003】
特許文献1には、ガス放出量が異なる各試料に対して、装置のスループットを適切に維持することが可能な荷電粒子ビーム装置が示される。当該荷電粒子ビーム装置は、試料を交換室から試料室へ搬送する際に、交換室での真空排気を完了させるための判定値を、ガス放出量が多い試料と少ない試料とで切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-182792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空処理装置の概要を、真空処理装置の一つであるCD-SEMを例に説明する。CD-SEMは、検査対象であるウェハを装置外から装置内に取り込むロードロックチャンバー(以後、LCと呼ぶ)と、電子ビームをウェハに照射して検査を行うメインチャンバー(以後、SCと呼ぶ)とを連接した構成となっている。電子光学系は、SCに備え付けられており、電子ビームをSC内のウェハに照射する。
【0006】
装置の通常使用状態において、SCの圧力は、電子ビームの照射による測定を行えるようにするため高真空状態に保たれる必要がある。一方でLCの圧力は、ウェハを装置外とSCとの間で搬送する際の前室の役割を担っているため、ウェハの取り込みや、検査を終えたウェハの取り出しの度に大気圧から高真空まで急速に変動する。このため、LCとSCは、それぞれターボ分子ポンプ(TMP(turbomolecular pump))を備えている。
【0007】
加えて、LCは、TMPによる排気とは別に、大気から低真空の範囲の真空引きを担う粗びき用のポンプ(ドライポンプなど)と、LC内を窒素(N)等を用いて大気圧に戻すためのベントデバイスとを備えている。LCとSCのチャンバー容積については、LCが小、SCが大の関係となる。これは、圧力変動の必要性から、LCの容積は小さいことが望ましいためである。
【0008】
次に、CD-SEMでのウェハ搬送と、それに伴う真空排気シーケンスについて説明する。CD-SEMは、LC内部を大気圧にした状態で、LCと装置外との開口部の開閉を司るゲートバルブを開いてウェハをLC内に取り込んだ後に、このゲートバルブを閉める。引き続き、CD-SEMは、LC内にウェハがある状態で、LCをドライポンプで真空排気した後、TMPで高真空になるまで真空排気を行う。
【0009】
そして、CD-SEMは、LC内圧が所定の値に到達した際に、LCとSCとの間のゲートバルブを開いて、あらかじめ高真空状態となっているSCにウェハを搬送する。ウェハは、SCにおいて、電子ビームが照射されることで検査される。その後、ウェハは、装置外に搬出される。この際のシーケンスは、概ね前述した搬入時のシーケンスの逆の手順となる。すなわち、CD-SEMは、SCからLCにウェハを搬送後、LCにウェハがある状態で、ベントデバイスによってLC内を大気圧にする。その後、CD-SEMは、LCと装置外との開口部の開閉を司るゲートバルブを開いてウェハを装置外に取り出す。
【0010】
近年、製造プロセスの影響などにより、ガスを放出するウェハが増加している。これらは、アウトガスウェハと呼ばれる。特に、DRAM等のメモリ用ウェハではガスの放出量が増大する傾向にある。このため、ガスの放出量が増大傾向にある次世代アウトガスウェハに対しても対応可能なCD-SEMが求められている。
【0011】
そこで、特許文献1の荷電粒子ビーム装置を用いることが考えられる。特許文献1のシーケンスでは、前述したCD-SEMのシーケンスにおいて、LCからSCへの搬送タイミングを定めるLC内の真空度を、通常ウェハとアウトガスウェハとで切り替えている。具体的には、アウトガスウェハの際には、通常ウェハと比較して、当該LC内の真空度が高真空(低圧)に設定される。
【0012】
特許文献1の方式を用いると、アウトガスウェハからのガス放出がLC内で枯渇した場合には、SCに搬送された後のガス放出を抑制できる。しかし、特許文献1の方式では、アウトガスウェハからのガス放出がLC内で継続している場合であっても、TMPの真空排気能力によって、アウトガスウェハに対して設定された高真空(低圧)のLC内圧に到達することがある。この場合、アウトガスウェハは、SCに搬送された後もガス放出を続けることになる。その結果、SCの真空度が悪化し、装置の性能が低下する恐れがある。
【0013】
そこで、本開示の目的の一つは、2個の真空チャンバー間で試料を搬送する際に、搬送先の真空チャンバーにおける真空度の悪化を抑制することが可能な真空処理装置および真空処理方法を提供することにある。
【0014】
本開示の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の真空処理装置は、第1の真空チャンバーと、第1の真空チャンバーにバルブを介して連接される第2の真空チャンバーと、第1の真空チャンバーを真空排気する真空ポンプと、第1の真空チャンバーの内圧を測定する圧力計と、コンピュータシステムと、を有する。コンピュータシステムは、第1の真空チャンバーから第2の真空チャンバーへのバルブを介した試料の搬送を制御する。この際に、コンピュータシステムは、バルブを閉状態に制御した上で第1の時間行われている真空ポンプによる真空排気を停止し、真空排気を停止した状態で圧力計を用いて第1の真空チャンバーの内圧を測定し、当該測定した内圧が第1の基準値に到達している場合にバルブを開状態に制御する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、2個の真空チャンバー間で試料を搬送する際に、搬送先の真空チャンバーにおける真空度の悪化を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1による真空処理装置の構成例を示す概略図である。
図2図1の真空処理装置において、比較例となる制御装置が実行する制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。
図3図2の制御シーケンスの詳細を説明するための補足図である。
図4図2の制御シーケンスの詳細を説明するための補足図である。
図5図2の制御シーケンスの詳細を説明するための補足図である。
図6図2の制御シーケンスの詳細を説明するための補足図である。
図7図2の制御シーケンスの詳細を説明するための補足図である。
図8図1の真空処理装置において、比較例となる制御装置が実行する図2とは異なる制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。
図9図1の真空処理装置において、実施の形態1の制御装置が実行する制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。
図10図1の真空処理装置において、TMPによる真空排気を停止した後のLCの真空度遷移の一例を示す図である。
図11A図1の真空処理装置において、実施の形態2の制御装置が実行する制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。
図11B図11Aに続くフローチャートである。
図11C図11Bに続くフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して実施の形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号又は対応する番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施の形態を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0019】
実施の形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0020】
(実施の形態1)
《真空処理装置の構成》
図1は、実施の形態1による真空処理装置の構成例を示す概略図である。明細書では、真空処理装置が半導体検査装置の一つである荷電粒子ビーム装置である場合を例とし、特に、CD-SEMである場合を例とする。ただし、真空処理装置は、半導体検査装置に限らず、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、スパッタ装置等の半導体製造装置であってもよい。また、半導体検査装置は、例えば、明視野顕微鏡、分光分析装置、光学測定装置、光学検査装置等であってもよい。
【0021】
図1に示す真空処理装置10は、装置本体20と、制御装置30とを備える。まず、装置本体20に関して説明する。装置本体20は、真空チャンバーであるLC102およびSC101を備える。SC101は、LC102にLC-SC間ゲートバルブ510を介して連接される。LC102は、検査対象であるウェハ(すなわち試料)600を装置外から装置内に出し入れする際の前室としての役割を担う。SC101は、ウェハ600の検査が行われる検査室としての役割を担う。なお、SC101内における破線105は、SC101の内部を示すために便宜的に設けた切り欠きである。
【0022】
SC101は、ウェハ600を静電気力等によって保持する保持機構201と、SC101内で保持機構201を複数の方向に駆動する機能をもつ多軸ステージ200と、荷電粒子ビーム(代表的には電子ビーム)を発する電子光学系(荷電粒子光学系)300とを備える。SC101内でウェハ600を検査する際、多軸ステージ200は、保持機構201で保持されたウェハ600を電子光学系300に対して位置決めする。そして、この位置決めされた状態で、電子光学系300は、電子ビームをウェハ600に照射する。
【0023】
このように電子ビームを用いた検査を行うため、SC101の内圧は高真空状態に保たれる必要がある。一方、LC102は、ウェハ600を装置外からSC101へ搬送する際の前室の役割を担っている。このため、LC102の内圧は、ウェハ600の取り込みや、検査を終えたウェハ600の取り出しの度に大気圧から高真空の範囲で変動する。そこで、LC102とSC101は、内部を高真空状態にするための真空ポンプであるTMP401A,401Bをそれぞれ備える。
【0024】
加えて、LC102は、TMP401Aによる排気とは別に、大気から低真空の範囲の真空排気を担う真空ポンプであるドライポンプ400Aと、LC内を大気圧に戻すための窒素(N)等を噴出するベントデバイス104とを備える。なお、ドライポンプ400Bは、TMP401A,401Bの補助ポンプとして機能する。配管402Bは、ドライポンプ400BとTMP401Bとの間、および、ドライポンプ400BとTMP401Aと間を接続するように配置される。
【0025】
配管402Aは、ドライポンプ400AとLC102との間を配管バルブ530を介して接続する。圧力計103は、LC102の内圧を測定する。なお、明細書では、LC102の真空度を取得する方式の一つとして、LC102の内圧を測定するが、LC102の真空度を取得できるものであれば、他の方式を用いてもよい。装置内外間ゲートバルブ500は、LC102と装置外と間の開口部に設けられる。LC-SC間ゲートバルブ510は、LC102とSC101と間の開口部に設けられる。TMPバルブ520は、真空バルブであり、LC102とTMP401Aと間の開口部に設けられる。
【0026】
ここで、LC102は、圧力を早く変動させるために容積を可能な限り小さくしている。このため、前述したLC102とSC101の二つの真空チャンバーについて比較をすると、LC102の容積はSC101と比較して非常に小さい。このように、LC102の容積を小さくして圧力を早く変動させることで、ウェハ検査のタクトタイムを短くすることが可能になる。
【0027】
続いて、制御装置30に関して説明する。制御装置30は、例えば、プロセッサおよびメモリを備えたコンピュータシステムによって実現される。具体的には、制御装置30は、例えば、プロセッサおよびメモリ等を含む各種部品が実装された配線基板(言い換えれば制御基板)等であってよい。制御装置30は、メモリに格納された制御プログラムをプロセッサが実行することで装置本体20を制御する。その制御の一つとして、制御装置30は、LC102からSC101へのLC-SC間ゲートバルブ510を介したウェハ600の搬送を制御する。
【0028】
《真空処理装置の動作(比較例)》
ここで、本開示の理解を容易にするため、図2図7を用いて、通常のウェハを対象とした装置外からSC101までの搬送と、それに伴う真空排気の一般的な制御シーケンスについて、順を追って説明する。図2は、図1の真空処理装置において、比較例となる制御装置が実行する制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。図3図7は、図2の制御シーケンスの詳細を説明するための補足図である。
【0029】
図3には、図1のステップS100の処理手順が示され、ウェハ600を外部から取り込む前の準備段階が示される。まず、ステップS100の前段階で、LC102に面する4つのバルブである、装置内外間ゲートバルブ500、LC-SC間ゲートバルブ510、TMPバルブ520および配管バルブ530の弁体540は、全て閉状態CLに制御されている。
【0030】
このようにしてLC102を密閉した状態で、比較例の制御装置は、ベントデバイス104を制御することで、LC102内を窒素(N)によって大気圧にする(ステップS100)。なお、LC102の内圧は、圧力計103で測定されている。また、2つの配管402A,402Bは、図1に示したドライポンプ400A,400Bにそれぞれ接続されている。
【0031】
図4には、図1のステップS101,S102の処理手順が示され、ウェハ600をLC102に取り込んだ状態が示される。比較例の制御装置は、図3の状態に続いて、閉状態CLの装置内外間ゲートバルブ500を開状態OPに制御する(ステップS101)。そして、比較例の制御装置は、図示しない装置内外搬送デバイスを用いて、開状態OPの装置内外間ゲートバルブ500からウェハ600を搬入し、LC102内の図示しないウェハ保持部に置く(ステップS102)。
【0032】
図5には、図1のステップS103,S104の処理手順が示され、LC102を大気状態から真空引きする手順が示される。TMP401Aは大気状態からの真空排気ができないため、大気状態から低真空状態に至るまではTMP401Aでの排気を開始する前に、あらかじめ図1のドライポンプ400Aなどで真空排気を行う必要がある。そこで、図5に示されるように、比較例の制御装置は、図4の状態に続いて、開状態OPの装置内外間ゲートバルブ500を閉状態CLに制御する(ステップS103)。その後、比較例の制御装置は、閉状態CLの配管バルブ530を開状態OPに制御することで、LC102の真空排気を行う(ステップS104)。
【0033】
図6には、図1のステップS105~S107の処理手順が示され、LC102を低真空から高真空の範囲に真空排気する手順が示される。図5の状態を継続すると、LC102の内圧は、TMP排気開始圧力である第一LC内真空度(基準値)RV1に到達する。比較例の制御装置は、圧力計103を用いて当該第一LC内真空度RV1に到達したことを検知した場合(ステップS105)、開状態OPの配管バルブ530を閉状態CLに制御する(ステップS106)。その後、比較例の制御装置は、閉状態CLのTMPバルブ520を開状態OPに制御する(ステップS107)。これにより、TMP401AによるLC102の真空排気が開始される。
【0034】
図7には、図1のステップS108~S110の処理手順が示され、ウェハ600をLC102からSC101へ搬送する手順が示される。図6の状態の後、LC102の内圧は、第一LC内真空度(基準値)RV1よりも低圧である(すなわち高真空である)第二LC内真空度(基準値)RV2に到達する。
【0035】
比較例の制御装置は、圧力計103を用いて第二LC内真空度RV2への到達を検知した場合(ステップS108)、閉状態CLのLC-SC間ゲートバルブ510を開状態OPに制御する(ステップS109)。その後、比較例の制御装置は、図示しないLC-SC間搬送デバイスを用いて、ウェハ600を、開状態OPのLC-SC間ゲートバルブ510を介してSC101に搬送する(ステップS110)。この際に、SC101は、あらかじめ高真空状態になっている。なお、ウェハ600の搬送後、比較例の制御装置は、開状態OPのLC-SC間ゲートバルブ510を閉状態CLに制御する。
【0036】
以上のような制御シーケンスは、通常のウェハ600を対象とする場合には適用可能である。ただし、ウェハ種は多様であり、例えば、製造プロセスの影響などでウェハ自身がガスを放出するものがある。これらはアウトガスウェハと呼ばれる。アウトガスウェハを対象とする場合、特許文献1の場合と同様に、例えば、図8に示されるような制御シーケンスを用いることが考えられる。
【0037】
図8は、図1の真空処理装置において、比較例となる制御装置が実行する図2とは異なる制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。図8では、図2と比較して、ステップS102がステップS202に、ステップS108がステップS208にそれぞれ置き換えられている。ステップS202では、通常のウェハではなくアウトガスウェハ(試料)がLC102に搬入される。ステップS208では、高真空な第二LC内真空度(基準値)RV2aに到達したことが検知される。
【0038】
このように、図8の特徴は、LC102からSC101への搬送タイミングを定めるための第二LC内真空度に到達したことの検知を、図2の第二LC内真空度RV2よりも高真空(低圧)である第二LC内真空度RV2aで行う点にある。これは、アウトガスウェハがLC102内にあるときにガスを枯渇させることで、SC101に搬送された後のガス放出を抑制する一つの方法である。なお、第二LC内真空度RV2,RV2aは、TMPの真空排気能力に基づく圧力レンジ内の値となる。
【0039】
ここで、図2のステップS108における検知と、図8のステップS208における検知は、共に、ステップS107でTMPバルブ520が開状態OPに制御されたままで行われる。このため、TMP401Aによる真空排気と並行して、LC内真空度の検知が行われることになる。なお、後の説明の都合上、図2図8で共通する、ステップS100,S101を共通フローA(ステップS1000)と呼び、ステップS103~S107を共通フローB(ステップS1001)と呼ぶ。
【0040】
《真空処理装置の動作(実施の形態1)》
一方、近年では、アウトガスウェハについて、ガスが枯渇しにくいものが増えてきている。そのような次世代アウトガスウェハを図8に示した方法で処理すると、TMP401Aによる真空排気と並行して真空度の確認が行われるため、ステップS208において、ガス放出と真空排気とが平衡した状態で高真空な第二LC内真空度RV2aに到達することがある。この場合、ガスが枯渇していないため、次世代アウトガスウェハはSC101に搬送された後もガス放出を続け、高真空を保つべきSC101の真空度が悪化することになる。
【0041】
SC101の真空度の悪化は、例えば、検査対象である次世代アウトガスウェハに有機物質を電子ビームで焼き付けてしまう、コンタミネーションと呼ばれる不具合を招き、場合によっては電子ビームの照射ができない事態を招き得る。また、SC101は、LC102より非常に容積が大きいため、真空度が悪化すると回復に長い時間がかかる。そこで、以下に示す実施の形態1の方式を用いることが有益となる。
【0042】
図9は、図1の真空処理装置において、実施の形態1の制御装置が実行する制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。図9において、実施の形態1の制御装置30は、まず、ステップS1000で共通フローAを実行した後、次世代アウトガスウェハ(試料)をLC102に搬入する(ステップS302)。続いて、制御装置30は、ステップS1001で共通フローBを実行する。
【0043】
続いて、制御装置30は、圧力計103を用いて高真空な第二LC内真空度RV2aへの到達を検知した場合、すなわち、LC102の内圧が第二LC内真空度RV2a以下の場合(ステップS208)、開状態OPのTMPバルブ520を閉状態CLに制御する(ステップS303)。これにより、制御装置30は、TMP401AによるLC102の真空排気を停止する。この真空排気を停止した状態で、制御装置30は、ウエイト時間TAだけウエイトする(ステップS304)。
【0044】
その後、制御装置30は、圧力計103を用いてLC102の内圧を測定し、当該測定した内圧が第三LC内真空度(基準値)RV3に到達しているか否か、すなわち第三LC内真空度RV3以下か否かを判定する(ステップS305)。ここで、制御装置30は、測定した内圧が第三LC内真空度RV3に到達している場合、ガスが枯渇しているとみなし、ステップS109へ移行する。そして、ステップS109において、制御装置30は、閉状態CLのLC-SC間ゲートバルブ510を開状態OPに制御し、ステップS310において、次世代アウトガスウェハをLC-SC間ゲートバルブ510を介してSC101に搬送する。
【0045】
一方、制御装置30は、ステップS305で、測定した内圧が第三LC内真空度RV3に未達の場合、すなわち第三LC内真空度RV3よりも高い場合、ガスが枯渇していないとみなし、閉状態CLのTMPバルブ520を開状態OPに制御することで真空排気を再開する(ステップS306)。その後、制御装置30は、当該真空排気をウエイト時間TB行ったのち(ステップS307)、ステップS303に戻る。
【0046】
以上のように、制御装置30は、LC-SC間ゲートバルブ510を閉状態CLに制御した上で、第二LC内真空度RV2aに到達するまでの時間行われているTMP401Aによる真空排気をステップS303で停止し、この停止状態でLC102の内圧をステップS305で測定する。そして、制御装置30は、当該測定した内圧が第三LC内真空度RV3に到達している場合に、閉状態CLのLC-SC間ゲートバルブ510を開状態OPに制御する(ステップS109)。
【0047】
一方、制御装置30は、ステップS305で測定した内圧が第三LC内真空度RV3に未達の場合には、TMP401Aによる真空排気をウエイト時間TB行ったのち停止する(ステップS307,S303)。そして、制御装置30は、同様にして、真空排気を停止した状態でLC102の内圧を測定するというループ処理(ステップS303~S307)を、測定した内圧が第三LC内真空度RV3に到達するまで繰り返す。
【0048】
ここで、ユーザは、ステップS304でのウエイト時間TAとステップS307でのウエイト時間TBを任意の値に設定することができる。さらに、ユーザは、第三LC内真空度RV3を任意の値に設定することができる。ただし、これらの値は、ステップS305での判定が正確に行えるように適切に定められる必要がある。この点について、以下に説明を行う。
【0049】
図10は、図1の真空処理装置において、TMPによる真空排気を停止した後のLCの真空度遷移の一例を示す図である。次世代アウトガスウェハのガスが枯渇している場合には、枯渇した場合のプロットG100に示されるように、LC102の内圧は、第二LC内真空度RV2aからゆっくりと悪化する。一方、ガスが枯渇していない場合には、枯渇していない場合のプロットG101に示されるように、LC102の内圧は、第二LC内真空度RV2aから急激に悪化する。このように、TMP401Aによる真空排気を停止することで、ガスの枯渇有無で、真空度遷移の特性に明確な差が生じる。
【0050】
図9のステップS304でのウエイト時間TAは、例えば、TMPバルブ520の実際の開閉動作に要する時間に定められる。具体例として、ウエイト時間TAは、例えば数秒等に設定される。図10には、このようなウエイト時間TAが示される。ウエイト時間TAを経過した時点では、枯渇した場合のプロットG100と枯渇していない場合のプロットG101には、明確な圧力差が生じている。このため、図9のステップS305での第三LC内真空度RV3を、例えば、図10に示されるように、第二LC内真空度RV2aを基準として所定の量だけ高い値に設定することで、図9のステップS305での判定を正確に行うことが可能になる。
【0051】
また、図9のステップS307での再度の真空排気時間となるウエイト時間TBは、例えば、次世代アウトガスウェハの種類等に応じて適宜定められる。通常、ウエイト時間TBは、ウエイト時間TAよりも十分に長い時間となり、例えば、数十秒以上等となり得る。このように、ウエイト時間TA,TBおよび第三LC内真空度RV3を適切に設定することで、様々な種類の次世代アウトガスウェハに対して、ガスの枯渇有無を正確に判定することが可能になる。なお、第三LC内真空度RV3は、装置の機差を考慮して装置毎に設定されることが望ましく、また、経時変化を考慮して定期的に更新されることが望ましい。
【0052】
《各種変形例》
図9のステップS303~S307において、制御装置30は、TMPバルブ520の開閉動作を繰り返し行った。ただし、制御装置30は、TMPバルブ520の開閉動作の代わりに、開度の大小調整を繰り返し行ってもよい。また、ステップS303~S307において、制御装置30は、LC102の真空度が第三LC内真空度RV3に到達するまでループ処理を行った。言い換えれば、制御装置30は、LC102の真空度と所定の閾値との比較結果に基づいて、ステップS109への移行可否を判定した。ただし、制御装置30は、当該ループ処理の期間内のLC102の真空度の変化量又は応答特性に基づいて、ステップS109への移行可否を判定してもよい。
【0053】
すなわち、図9のフローは、ステップS109へ移行するまでの期間で、TMPバルブ520の開状態を保つものではなく、TMPバルブ520の開閉動作または開度の大小調整を繰り返すようなものであればよい。これにより、制御装置30は、特に、TMPバルブ520を閉状態にした際、または、開度を小調整にした際のLC102の真空度を反映させた上で、ステップS109への移行可否を判定することができる。
【0054】
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1の方式を用いることで、2個の真空チャンバー間で試料を搬送する際に、搬送先の真空チャンバーにおける真空度の悪化を抑制することが可能になる。その結果、装置の性能を高めることができる。具体的には、例えば、搬送先の真空チャンバーにおけるコンタミネーションの発生を抑制でき、SC101内で試料を高精度に検査することが可能なる。また、容量が大きい搬送先の真空チャンバーにおいて、真空度を回復させるためのウエイト時間が不要となり、装置のスループットを向上させることが可能になる。
【0055】
(実施の形態2)
《真空処理装置の動作(実施の形態2)》
実施の形態1において、図9のステップS307におけるウエイト時間TBを過剰に短くすると、ガスが枯渇するまでにTMPバルブ520の開閉を数多く繰り返すことになる。この場合、TMPバルブ520は、動作回数が増えることで寿命を迎えるまでの期間が短くなり得る。さらに、ガスの枯渇判定の度に、TMP401AによるLC102の真空排気が止まるために、ガス枯渇までに要する時間が増大し、結果として、装置のスループットが低下し得る。一方で、ウエイト時間TBを過剰に長くすると、再度の真空排気時間が過剰となり、この場合も、装置のスループットが低下し得る。そこで、以下の方式を用いることが有益となる。
【0056】
図11Aは、図1の真空処理装置において、実施の形態2の制御装置が実行する制御シーケンスの一例を示すフローチャートである。図11Bは、図11Aに続くフローチャートであり、図11Cは、図11Bに続くフローチャートである。例えば、同じ製造プロセスで製造されたアウトガスウェハは、同様の特徴を持つことが多く、ガス枯渇に要する真空排気時間も同様の傾向(所要時間)となることが多い。実施の形態2の方式は、ある種類のウェハに対してガス枯渇に要した真空排気時間を計測しておき、それと同種のウェハを処理する際に、例えば、図9のステップS208とステップS303との間に、当該計測した真空排気時間を反映したウエイトを挿入するような方式である。
【0057】
まず、図11A図11Bおよび図11Cの概要について説明する。制御装置30は、真空排気のループ処理が生じた次世代アウトガスウェハ(試料)を対象に、図11BのステップS305で内圧を測定しながら、当該内圧が第三LC内真空度(基準値)RV3に到達するまでに要した真空排気のトータル時間を、図11BのステップS412を参照して計測する。そして、制御装置30は、当該計測した次世代アウトガスウェハと同種のウェハを対象とする際に(図11BのステップS411)、図11BのステップS416でウエイトを挿入することで、ループ処理が生じる前の1回目の真空排気時間に当該計測したトータル時間を反映させる。
【0058】
また、制御装置30は、ステップS411において同種のウェハか否かを判定する際の条件の一つとして、図11AのステップS401で到達所要時間T2を計測する。到達所要時間T2は、例えば、所定の開始時点から、LC102の内圧が第二LC内真空度(基準値)RV2aに到達するまでに要する時間である。所定の開始時点は、代表的には、図8のステップS107におけるTMPバルブ520を開いた時点であるが、これに限らず、ステップS107よりも前のいずれかのステップの時点であってもよい。制御装置30は、図11BのステップS411において、到達所要時間T2が同等であるウェハを同種のウェハと判定する。
【0059】
さらに、制御装置30は、図11BのステップS416におけるウエイトを経由したウェハを対象とする際も、真空排気を停止した状態で測定した内圧が第三LC内真空度RV3に到達しているか否かを図11BのステップS305で判定する。そして、制御装置30は、当該ウェハにおいて測定した内圧が第三LC内真空度RV3に到達しており、かつ、当該ウェハを前回ウェハとした場合に、前回ウェハとそれに続いて処理される今回ウェハとで図11AのステップS401における到達所要時間T2が同等であるか否か判定する。制御装置30は、到達所要時間T2が同等である場合には、図11AのステップS411において、今回ウェハを前回ウェハと同種であると判定する。
【0060】
次に、図11A図11Bおよび図11Cの詳細について説明する。図11Aにおいては、図9の場合と同様に、ステップS1000、ステップS302およびステップS1001を経て、LC102の内圧が第二LC内真空度RV2aに到達する(ステップS208)。この際に、制御装置30は、所定の開始時点から第二LC内真空度RV2aに到達するまでに要した到達所要時間T2を計測する(ステップS401)。一般的に、次世代アウトガスウェハから放出されるガス量が多いほど、到達所要時間T2は長くなり、ウェハが同種であれば、到達所要時間T2も同等となる。
【0061】
続くステップS402では、制御装置30は、前回ウェハと今回ウェハとで到達所要時間T2が同等か否かを判定する。到達所要時間T2が同等の場合、制御装置30は、同等T2の連続発生回数SNt2を更新する(ステップS403)。例えば、連続発生回数SNt2は、連続するn枚のウェハで到達所要時間T2が同等の場合にはnとなる。
【0062】
一方、ステップS402で到達所要時間T2が同等でない場合、制御装置30は、全初期化を行う(ステップS404)。具体的には、制御装置30は、ステップS403での連続発生回数SNt2や、後述する図11CのステップS425での連続発生回数SNlpを0に戻し、後述する図11BのステップS414でのウエイト時間TCの設定を無しに変更する。また、制御装置30は、後述するフラグFLC,FLLを共に0にする。
【0063】
図11AのステップS403またはステップS404ののち、制御装置30は、図11Bに示されるように、フロー内の経路を判別するためのフラグFLC,FLLを共に0に定める(ステップS410)。続いて、制御装置30は、今回ウェハが前回ウェハと同種であるか否かを判定する(ステップS411)。この判定条件に関しては後述する。前回ウェハと同種でない場合、制御装置30は、図9の場合と同様に、TMPバルブ520を閉状態CLに制御し(ステップS303a)、ウエイト時間TAのウエイトを経て(ステップS304a)、第三LC内真空度RV3に到達したか否かを判定する(ステップS305)。
【0064】
ステップS305で第三LC内真空度RV3に未達の場合、制御装置30は、図9の場合と同様に、TMPバルブ520を開状態OPに制御することで(ステップS306)、ウエイト時間TBで、再度、LC102の真空排気を行う(ステップS307)。その後、制御装置30は、ステップS412,S413の処理を経てステップS303aに戻り、図9の場合と同様に、第三LC内真空度RV3に到達するまでループ処理を繰り返したのち、図11CのステップS420へ移行する。
【0065】
このループ処理の際に、制御装置30は、ステップS412において、ループ回数Nlpを更新する(ステップS412)。ループ回数Nlpは、ループ処理に伴いステップS307でのウエイトがm回実行された場合にはmとなる。また、制御装置30は、ステップS413において、フラグFLLを1に変更する(ステップS413)。フラグFLLは、ループ処理が実行されたことを表す。
【0066】
一方、ステップS411で今回ウェハが前回ウェハと同種である場合、制御装置30は、ウエイト時間TCの設定が有るか否かを判定する(ステップS414)。制御装置30は、ウエイト時間TCの設定が有る場合には、当該ウエイト時間TCの分だけ現在の真空排気をそのまま延長して行う(ステップS416)。ステップS414でウエイト時間TCの設定が無い場合、制御装置30は、例えば、ステップS307でのウエイト時間TBにステップS412で得られたループ回数Nlpを乗算することでウエイト時間TCを設定し(ステップS415)、ステップS416へ移行する。この際のループ回数Nlpは、前回ウェハに対して実行された回数を表す。
【0067】
その後、制御装置30は、図9の場合と同様に、TMPバルブ520を閉状態CLに制御し(ステップS303b)、ウエイト時間TAのウエイトを経て(ステップS304b)、第三LC内真空度RV3に到達したか否かを判定する(ステップS305)。また、ステップS416において現在の真空排気を延長した際には、制御装置は、その旨を表すフラグFLCを1に変更する(ステップS417)。
【0068】
続いて、図11CのステップS420,S421,S422において、制御装置30は、フラグFLC,FLLの状態を判定する。まず、FLC=0&FLL=1の場合、すなわち、現在の真空排気が延長されずに、ループ処理に伴う真空排気の断続処理が行われた場合、制御装置30は、図11BのステップS412で更新された最終的なループ回数Nlpを記憶する(ステップS423)。
【0069】
そして、制御装置30は、今回ウェハに対して記憶したループ回数Nlpと、前回ウェハに対して既に記憶されているループ回数Nlpとが一致するか否かを判定する(ステップS424)。ステップS424でループ回数Nlpが一致する場合には、同一Nlpの連続発生回数SNlpを更新する(ステップS425)。例えば、連続発生回数SNlpは、連続するn枚のウェハでループ回数Nlpが一致する場合にはnとなる。一方、ステップS424でループ回数Nlpが不一致である場合、制御装置30は、図11AのステップS404の場合と同様に全初期化を行う(ステップS426)。
【0070】
すなわち、このフローチャートの例では、例えば、1枚目~j枚目(jは2以上の整数)のウェハにおいて、図11AのステップS401における到達所要時間T2が同等であり、かつ、図11Bにおけるループ回数Nlpが一致する場合に、当該j枚のウェハを同種とみなし、j+1枚目のウェハも同種の可能性が高いと判定される。そして、j+1枚目のウェハにおいても、当該j枚のウェハと到達所要時間T2が同等である場合に、当該j+1枚目のウェハが同種と判定され、図11BにおけるステップS416の経路が選択される。
【0071】
このため、制御装置30は、図11BのステップS411において、例えば、同等T2の連続発生回数SNt2がj+1(jは2以上の整数)であり、かつ、同一Nlpの連続発生回数SNlpがjのような場合に、今回ウェハを前回ウェハと同種であると判定する。この際に、jの最小値、すなわち、連続発生回数が何回以上の場合にその次のウェハを同種の可能性が高いと判定するかについては、ユーザによって任意に定められる。
【0072】
また、到達所要時間T2が連続的に同等である状態が途切れた際には、図11AのステップS404で全初期化が行われる。同様に、ループ回数Nlpが連続的に一致している状態が途切れた際には、図11CのステップS424を経てステップS426で全初期化が行われる。このいずれかで全初期化が行われると、前述した1枚目のウェハの状態に戻ることになる。
【0073】
図11CのステップS420,S421,S422に戻り、FLC=1&FLL=1の場合、すなわち、現在の真空排気が延長されたにも関わらず、ループ処理に伴う真空排気の断続処理が行われた場合、制御装置30は、ステップS426で全初期化を行う。一方、FLC=1&FLL=0の場合、すなわち、現在の真空排気が延長され、ループ処理に伴う真空排気の断続処理が行われなかった場合、制御装置30は、ステップS424の条件を満たしたものとみなし、ステップS425で同一Nlpの連続発生回数SNlpを更新する。これによって、制御装置30は、現在の真空排気が延長された場合であっても、図11BのステップS411において、連続発生回数SNt2,SNlpに基づく正しい判定を行うことが可能になる。
【0074】
ステップS425またはステップS426の処理ののち、制御装置30は、図9の場合と同様に、LC-SC間ゲートバルブ510を開状態OPに制御する(ステップS109)。そして、制御装置30は、次世代アウトガスウェハを、当該LC-SC間ゲートバルブ510を介してSC101に搬送する(ステップS310)。
【0075】
なお、図11AのステップS402において、到達所要時間T2を同等とみなす範囲は、ユーザによって任意に設定可能である。また、図9の場合と同様に、図11BのステップS307でのウエイト時間TBもユーザによって任意に設定可能である。このようなユーザ設定によって、ユーザの意図を反映したフローチャートを構築することが可能になる。例えば、若干、過剰な真空排気時間が生じ得るが、可能の限りステップS416の経路を選択させたいような場合、ユーザは、到達所要時間T2を同等とみなす範囲をある程度広く設定し、ウエイト時間TBを長めに設定すればよい。
【0076】
また、ここでは、図11CのステップS424において、ループ回数Nlpの一致/不一致を判定したが、場合によっては、この判定条件に例えば±1程度の誤差許容範囲を設けてもよい。これは、ウエイト時間TBの長さによっては、また、ウエイト時間TB内のどの時点でガスが枯渇するかによっては、同種のウェハであってもループ回数Nlpに誤差が生じる可能性があるためである。また、同様の理由で、図11BのステップS411での判定条件である同一Nlpの連続発生回数SNlpに±1程度の誤差許容範囲を設けてもよい。
【0077】
《各種変形例》
図示は省略するが、例えば、図11CのステップS310の後に、SC101内の真空度の変化によってガスの枯渇有無を追加で判定するような分岐を設けてもよい。そして、当該分岐において、ガスの放出が続いていると判定される場合には、ステップS404,S426と同様に全初期化を行えばよい。
【0078】
また、例えば、ガスの放出が極端に長く継続するような場合、装置に何らかの異常が生じている可能性がある。そこで、制御装置30は、ユーザの設定に基づいて前述したループ処理の繰り返し回数の上限を定めてもよい。具体的には、例えば、図11BのステップS412のあとに、ループ回数Nlpがユーザによって定めれた上限値に到達したか否かを判定する分岐を追加すればよい。当該分岐において、ループ回数Nlpが上限値に到達した場合、その旨をユーザに通知するか、あるいは、装置動作を強制的に終了してもよい。この際に、制御装置30は、ユーザからの命令に応じて、装置動作を強制的に終了してもよい。
【0079】
さらに、図11A図11Bおよび図11Cでは、ウェハの種別が不明である場合を前提として、図11BのステップS411で今回ウェハが前回ウェハと同種か否かを判定した。ただし、制御装置30は、例えば、予めウェハ識別子が入力されること等でウェハの種別が予め判明している場合には、例えば、到達所要時間T2の同等性等を判定することなく、図11BのステップS416側の経路を選択してもよい。この際のウエイト時間TCは、過去に同種のウェハに対して計測された真空排気のトータル時間を反映して定められる。
【0080】
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2の方式を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られることに加えて、TMPバルブ520の開閉回数を減らすことが可能になる。その結果、例えば、装置寿命の延伸や、装置スループットの向上等が実現可能になる。
【0081】
(実施の形態3)
《真空処理装置の動作(実施の形態3)》
制御装置30は、ウェハ(試料)の種類に応じて、図2図8図9(または図11A図11Bおよび図11C)の制御シーケンスを使い分けてもよい。すなわち、制御装置30は、ウェハの種類に応じて、LC102の内圧を、真空排気を停止した状態で測定するか、または、真空排気が行われている状態で測定するかを切り替えてもよい。
【0082】
具体的には、制御装置30は、例えば、図11AのステップS208,S401の場合と同様に、所定の開始時点から図2のステップS108で用いた第二LC内真空度RV2に到達するまでの時間(T3と呼ぶ)を計測する。そして、制御装置30は、時間T3と、予め定めた比較時間Tc1,Tc2(Tc1<Tc2)とを比較する。
【0083】
比較結果がT3≦Tc1の場合、制御装置30は、図2のステップS109以降の処理を実行する。比較結果がTc1<T3≦Tc2の場合、制御装置30は、図8のステップS208における高真空な第二LC内真空度RV2aに到達するまで待ったあとに、図8のステップS109以降の処理を実行する。比較結果がTc2<T3の場合、制御装置30は、図9のステップS208における高真空な第二LC内真空度RV2aに到達するまで待ったあとに、図9のステップS303以降の処理を実行する。
【0084】
なお、このような方式を用いる場合、制御装置30は、例えば、ユーザの要求に応じて、前述した3個の制御シーケンスのいずれか1個に固定してもよく、3個中のいずれか2個の範囲で自動切換えを行ってもよい。また、実施の形態2でも述べたように、予めウェハの種類が判明している場合、制御装置30は、当該ウェハの種類に応じて、時間T3を計測することなく3個の制御シーケンスのいずれかを自動選択してもよい。
【0085】
《実施の形態3の主要な効果》
以上、実施の形態3の方式を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られることに加えて、例えば、装置スループットの向上や、装置寿命の延伸等が実現可能になる。具体的には、通常のウェハを対象とする場合、高真空な第二LC内真空度RV2aに到達するまで待つ必要がない。また、ガスが枯渇し難いアウトガスウェハではなく、ガスが枯渇し易いアアウトガスウェハを対象とする場合、TMPバルブ520の開閉回数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0086】
10:真空処理装置、20:装置本体、30:制御装置、101:SC(真空チャンバー)、102:LC(真空チャンバー)、103:圧力計、300:電子光学系、401A,401B:TMP、510:LC-SC間ゲートバルブ、520:TMPバルブ、600:ウェハ、CL:閉状態、Nlp:ループ回数、OP:開状態、RV1:第一LC内真空度(基準値)、RV2,RV2a:第二LC内真空度(基準値)、RV3:第三LC内真空度(基準値)、TA,TB,TC:ウエイト時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C