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特許7512556新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子
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  • 特許-新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/14 20060101AFI20240702BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20240702BHJP
   C07D 491/048 20060101ALI20240702BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20240702BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240702BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240702BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C07D405/14 CSP
C07D409/14
C07D491/048
C07D495/04 103
C07D487/04 137
H05B33/14 B
C09K11/06 690
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022507534
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2020015464
(87)【国際公開番号】W WO2021125552
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0172476
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0145518
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スー、サン ドゥク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ミン ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュンハ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ス ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、セウルチャン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、スンヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ドン フーン
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174682(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0007789(KR,A)
【文献】特表2019-513131(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0111387(KR,A)
【文献】特開2009-277790(JP,A)
【文献】国際公開第2021/091259(WO,A1)
【文献】特許第7102679(JP,B2)
【文献】特表2017-513220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 405/14
C07D 409/14
C07D 491/048
C07D 495/04
C07D 487/04
C07D 209/86
H10K 50/10
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物:
化学式1
【化1】
前記化学式1中、
Xはそれぞれ独立して、NまたはCHであり、但し、Xのうちの少なくとも一つはNであり、
Yは、OまたはSであり、
Arはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;またはN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の炭素数5~60のヘテロアリールであり、
、RおよびRはそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;あるいは置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;あるいは置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであるか、または隣接した2つのRが結合して、置換または非置換の炭素数4~60の脂肪族または芳香族環を形成し、
n1、n2、およびn3はそれぞれ独立して、0または1であり、
n4は1~4の整数であり、
但し、少なくとも一つのArは一つ以上の重水素で置換されるか、またはR、R、RまたはRのうちの少なくとも一つは一つ以上の重水素で置換されるか、またはR、R、RおよびRのうちの少なくとも一つが重水素であり、前記化学式1で表される化合物は少なくとも4個以上の重水素で置換される
(ただし、下記の化合物を除き、化学式1において、Xを有する6員環に結合するArは、ジベンゾフラニル基およびジベンゾチオフェニル基を除く。)
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1または化学式1-2で表される、請求項1に記載の化合物:
化学式1-1
【化2】
化学式1-2
【化3】
前記化学式1-1および化学式1-2中、
X、Y、Ar、R、R、R、n1、n2およびn3は請求項1で定義した通りであり、
Aは、隣接した2つの5員環に縮合したベンゼン環であり、
Zは、C(R、O、S、またはN-(R)であり、
はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;または置換または非置換の炭素数6~60のアリールであり、
は、置換または非置換の炭素数6~60のアリールであり、
R'およびR''はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;あるいは置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
m1は1~4の整数であり、
m2は1~6の整数であり、
但し、少なくとも一つのArは、一つ以上の重水素で置換されるか、またはR、R、R、R'およびR''のうちの少なくとも一つが重水素である。
【請求項3】
XはNである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Arは、それぞれ炭素数6~30のアリール;またはN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の炭素数5~30のヘテロアリールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Arはそれぞれフェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、クォーターフェニリル、ナフチル、フェナントレニル、トリフェニレニル、ジメチルフルオレニル、ジフェニルフルオレニル、9,9'-スピロビフルオレニル、ベンゾフルオレニル9-フェニル-9H-カルバゾリル、または重水素置換されたフェニルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Arのうちの少なくとも一つはフェニル、ビフェニリル、または5個の重水素で置換されたフェニルであり、残りのArはフェニル、またはビフェニリルうちのいずれか一つである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
、RおよびRはそれぞれ水素または重水素である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
はそれぞれ水素または重水素である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
隣接した2つのRが互いに結合して1,1'-ジメチル-インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、1-フェニル-インドール、重水素が置換された1,1'-ジメチル-インデン、重水素が置換されたベンゾフラン、重水素が置換されたベンゾチオフェン、または重水素が置換された1-フェニル-インドール環を形成し、残りのRは水素または重水素である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Arのうちの少なくとも一つはフェニル、ビフェニリル、または5個の重水素で置換されたフェニルであり、残りのArはフェニル、またはビフェニリルうちのいずれか一つであり、
、RおよびRはそれぞれ水素または重水素であり、
はそれぞれ水素または重水素であるか、または隣接した2つのRが互いに結合して1,1'-ジメチル-インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、1-フェニル-インドール、重水素が置換された1,1'-ジメチル-インデン、重水素が置換されたベンゾフラン、重水素が置換されたベンゾチオフェン、または重水素が置換された1-フェニル-インドール環を形成し、残りのRは水素または重水素であり、
但し、少なくとも一つのArは5個の重水素で置換されたフェニルであるか、またはR、R、RおよびRのうちの少なくとも一つが重水素であるか、または少なくとも一対の隣接した2つのRが互いに結合して重水素が置換されたベンゾフラン、重水素が置換されたベンゾチオフェン、または重水素が置換された1-フェニル-インドール環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
R'およびR''はそれぞれ水素または重水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項12】
はそれぞれメチルまたはフェニルである、請求項2または11に記載の化合物。
【請求項13】
はそれぞれフェニルである、請求項2、11および12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記化学式1で表される化合物は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の化合物:
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【請求項15】
第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機発光素子。
【請求項16】
前記化合物を含む有機物層は発光層である、請求項15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記発光層は、下記化学式2で表される化合物をさらに含む、請求項16に記載の有機発光素子:
化学式2
【化26】
前記化学式2中、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;またはN、OおよびSで構成される群より選択されるヘテロ原子を1個以上含む置換または非置換の炭素数5~60のヘテロアリールであり、
およびRはそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ;ニトロ;アミノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;またはN、OおよびSで構成される群より選択されるヘテロ原子を1個以上含む置換または非置換の炭素数5~60のヘテロアリールであり、
pおよびqはそれぞれ独立して、0~7の整数である。
【請求項18】
ArおよびArはそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、またはジメチルフルオレニルである、請求項17に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記化学式2で表される化合物は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つである、請求項17に記載の有機発光素子:
【化27】
【化28】
【化29】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年12月20日付の韓国特許出願第10-2019-0172476号および2020年11月3日付の韓国特許出願第10-2020-0145518号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れて、多くの研究が進められている。
【0004】
有機発光素子は、一般的に正極と負極および前記正極と負極との間に有機物層を含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるために、それぞれ異なる物質から構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけると、正極からは正孔が、負極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が接した時、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時、光が出るようになる。
【0005】
このような有機発光素子に使用される有機物に対して新たな材料の開発が要求され続けている。
【0006】
一方、最近では工程費用の節減のために既存の蒸着工程の代わりに溶液工程、特にインクジェット工程を利用した有機発光素子が開発されている。草創期にはすべての有機発光素子層を溶液工程でコーティングして有機発光素子を開発しようとしたが、現在の技術では限界があり、順構造形態でHIL、HTL、EMLのみを溶液工程で行い、その後の工程は、既存の蒸着工程を活用するハイブリッド(hybrid)工程が研究中である。
【0007】
そこで、本発明では有機発光素子に用いられ、かつ溶液工程で蒸着可能な新規な有機発光素子の素材を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2000-0051826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記化学式1で表される化合物を提供する:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
Xはそれぞれ独立して、NまたはCHであり、但し、Xのうちの少なくとも一つはNであり、
Yは、OまたはSであり、
Arはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;またはN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の炭素数5~60のヘテロアリールであり、
、RおよびRはそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;あるいは置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;あるいは置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであるか、または隣接した2つのRが結合して炭素数4~60の脂肪族または芳香族環を形成し、
n1、n2、およびn3はそれぞれ独立して、0または1であり、
n4は1~4の整数であり、
但し、少なくとも一つのArは一つ以上の重水素で置換されるか、または少なくとも一つのR、R、RまたはRは一つ以上の重水素で置換されるか、またはR、R、RおよびRのうちの少なくとも一つが重水素である。
【0011】
また、本発明は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上述した化学式1で表される化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として用いられ、有機発光素子において効率の向上、低い駆動電圧および/または寿命特性を向上させることができる。特に、上述した化学式1で表される化合物は、溶液工程に適用することができ、正孔注入、正孔輸送、正孔注入および輸送、発光、電子輸送、または電子注入材料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】基板1、正極2、発光層3、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。
【0015】
本明細書において、
【化2】
または
【化3】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0016】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換または非置換されることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0017】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化4】
【0018】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【0019】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化6】
【0020】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0023】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。また一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。また一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。また一つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。また一つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。また一つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。また一つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化7】
などであってもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種元素としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含むヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0030】
本発明は、前記化学式1で表される化合物を提供する。
【0031】
前記化学式1で表される化合物は少なくとも一つ以上のNを含む6員環に、OまたはSを含む3員ヘテロ環を介してカルバゾール基が結合する構造において、少なくとも一つ以上の重水素が置換することによって、これを使用した有機発光素子の特性を改善することができる。特に、前記化学式1で表される化合物は、複数の芳香族環を連結した多環芳香族コアを使用することで分子の結合力(rigidity)を増加させ、より良好な発光特性を示すことができ、これによって量子効率および寿命を改善することができる。
【0032】
特に、前記化学式1で表される化合物は、電子受容体の役割を果たす含窒素ヘテロ環と電子供与体の役割を果たすカルバゾール誘導体がジベンゾフランあるいはジベンゾチオフェンを介して連結された構造に、少なくとも一つの重水素で置換された構造を有する。さらに、このような含窒素ヘテロ環は、ジベンゾフラン/ジベンゾチオフェンの3位の位置で結合し、この位置はコンジュゲーションが最もよく結合する位置で、電子供与体の役割を果たすカルバゾール誘導体が置換された反対側から含窒素ヘテロ環まで電子が最もよく伝達されるように手助けして化合物のCT(charge-transfer)特性を高めることができる。また、このような構造に重水素が置換することによって振動エネルギーが低くなり、物質の安全性を高め、不安定な三重項状態でもドーパントへのエネルギー伝達に問題が生じないように手助けする役割を果たすことができる。これにより、前記化学式1で表される化合物は、有機発光素子に適用時、低電圧、高効率、および長寿命の側面において優れた特性を有する。
【0033】
具体的には、前記化学式1で表される化合物は、少なくとも4個以上または4個~26個の重水素で置換されたものであり得る。
【0034】
また、前記化学式1中、OまたはSを含む3員ヘテロ環を介して結合するカルバゾール基の具体的な構造により、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1または化学式1-2で表される:
[化学式1-1]
【化8】
[化学式1-2]
【化9】
前記化学式1-1および化学式1-2中、
X、Y、Ar、R、R、R、n1、n2およびn3は化学式1で定義した通りであり、
Aは、隣接した2つの5員環に縮合したベンゼン環であり、
Zは、C(R、O、S、またはN-(R)であり、
はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;または置換または非置換の炭素数6~60のアリールであり、
は、置換または非置換の炭素数6~60のアリールであり、
R'およびR''はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル;置換または非置換の炭素数2~60のアルキニル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;あるいは置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
m1は1~4の整数であり、
m2は1~6の整数であり、
但し、少なくとも一つのArは、一つ以上の重水素で置換されるか、またはR、R、R、R'およびR''のうちの少なくとも一つが重水素である。
【0035】
具体的には、Xは全てNである。
【0036】
具体的には、Arはそれぞれ独立して、炭素数6~30のアリール、または炭素数6~28のアリール、または炭素数6~25のアリールであるか、またはN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の炭素数5~30のヘテロアリール、または炭素数8~20のヘテロアリール、または炭素数12~18のヘテロアリールである。
【0037】
一例として、Arはそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、クォーターフェニリル、ナフチル、フェナントレニル、トリフェニレニル、ジメチルフルオレニル、ジフェニルフルオレニル、9,9'-スピロビフルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、9-フェニル-9H-カルバゾリル、または重水素置換されたフェニルのうちのいずれか一つであり得る。
【0038】
好ましくは、前記化学式1中、Arのうちの少なくとも一つはフェニル、ビフェニリル、または5個の重水素で置換されたフェニルであり、残りのArはフェニル、ビフェニリル、ジベンゾフラニル、またはジベンゾチオフェニルのうちのいずれか一つであり得る。
【0039】
具体的には、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、またはシアノであるか、または置換または非置換の炭素数1~20のアルキル、または炭素数1~12のアルキル、または炭素数1~6のアルキルであるか、または置換または非置換の炭素数1~20のアルコキシ、または炭素数1~12のアルコキシ、または炭素数1~6のアルコキシであるか、または置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル、または炭素数2~12のアルケニル、または炭素数2~6のアルケニルであるか、または置換または非置換の炭素数2~20のアルキニル、または炭素数2~12のアルキニル、または炭素数2~6のアルキニルであるか、
または置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル、または炭素数3~25のシクロアルキル、または炭素数3~20のシクロアルキルであるか、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール、または炭素数6~28のアリール、または炭素数6~25のアリールであるか、またはN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の炭素数5~30のヘテロアリール、または炭素数8~20のヘテロアリール、または炭素数12~18のヘテロアリールであり得る。
【0040】
一例として、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素または重水素であり得る。
【0041】
具体的には、Rはそれぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、またはシアノであるか、または置換または非置換の炭素数1~20のアルキル、または炭素数1~12のアルキル、または炭素数1~6のアルキルであるか、または置換または非置換の炭素数1~20のアルコキシ、または炭素数1~12のアルコキシ、または炭素数1~6のアルコキシであるか、または置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル、または炭素数2~12のアルケニル、または炭素数2~6のアルケニルであるか、または置換または非置換の炭素数2~20のアルキニル、または炭素数2~12のアルキニル、または炭素数2~6のアルキニルであるか、または置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル、または炭素数3~25のシクロアルキル、または炭素数3~20のシクロアルキルであるか、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール、または炭素数6~28のアリール、または炭素数6~25のアリールであるか、またはN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の炭素数5~30のヘテロアリール、または炭素数8~20のヘテロアリール、または炭素数12~18のヘテロアリールであるか、または隣接した2つの置換基が結合して重水素が置換または非置換の炭素数4~30の脂肪族または芳香族環、または重水素が置換または非置換の炭素数4~28の脂肪族または芳香族環、または重水素が置換または非置換の炭素数4~25の脂肪族または芳香族環を形成する。
【0042】
一例として、Rはそれぞれ独立して、水素または重水素であり得る。
【0043】
特に、前記化学式1-1で表される化合物は、隣接したRが互いに結合する場合を除いた、つまり、隣接した2つのRが互いに結合して環を形成しない場合に該当する。
【0044】
または、他の一例として、前記化学式1中、隣接した2つのRが互いに結合して1,1'-ジメチル-インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、1-フェニル-インドール、重水素が置換された1,1'-ジメチル-インデン、重水素が置換されたベンゾフラン、重水素が置換されたベンゾチオフェン、または重水素が置換された1-フェニル-インドール環を形成し、残りのRは水素または重水素であり得る。
【0045】
特に、前記化学式1-2で表される化合物は、上述したRのうちの隣接した2つのRが結合して重水素が置換または非置換の炭素数4~60の脂肪族または芳香族環を形成するケースに該当する。
【0046】
好ましくは、前記化学式1中、Arのうちの少なくとも一つはフェニル、ビフェニリル、または5個の重水素で置換されたフェニルであり、残りのArはフェニル、ビフェニリル、ジベンゾフラニル、またはジベンゾチオフェニルのうちのいずれか一つであり;R、RおよびRはそれぞれ水素または重水素であり;Rはそれぞれ水素または重水素であるか、または隣接した2つのRが互いに結合して1,1'-ジメチル-インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、1-フェニル-インドール、重水素が置換された1,1'-ジメチル-インデン、重水素が置換されたベンゾフラン、重水素が置換されたベンゾチオフェン、または重水素が置換された1-フェニル-インドール環を形成し、残りのRは水素または重水素であり;但し、少なくとも一つのArは5個の重水素で置換されたフェニルであるか、またはR、R、RおよびRのうちの少なくとも一つが重水素であるか、または少なくとも一対の隣接した2つのRが互いに結合して重水素が置換されたベンゾフラン、重水素が置換されたベンゾチオフェン、または重水素が置換された1-フェニル-インドール環を形成するものであり得る。
【0047】
一方、前記化学式1-2中、R'およびR''はそれぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、またはシアノであるか、または置換または非置換の炭素数1~20のアルキル、または炭素数1~12のアルキル、または炭素数1~6のアルキルであるか、または置換または非置換の炭素数1~20のアルコキシ、または炭素数1~12のアルコキシ、または炭素数1~6のアルコキシであるか、または置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル、または炭素数2~12のアルケニル、または炭素数2~6のアルケニルであるか、または置換または非置換の炭素数2~20のアルキニル、または炭素数2~12のアルキニル、または炭素数2~6のアルキニルであるか、または置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル、または炭素数3~25のシクロアルキル、または炭素数3~20のシクロアルキルであるか、または置換または非置換の炭素数6~30のアリール、または炭素数6~28のアリール、または炭素数6~25のアリールであるか、またはN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む置換または非置換の炭素数5~30のヘテロアリール、または炭素数8~20のヘテロアリール、または炭素数12~18のヘテロアリールであり得る。
【0048】
一例として、R'およびR''はそれぞれ独立して、水素または重水素であり得る。
【0049】
また、前記化学式1-2中、ZはC-(メチル)、C-(フェニル)、O、S、またはN-(フェニル)であり得る。例えば、前記化学式1-2中、Rはそれぞれ独立して、メチルまたはフェニルであり、Rはそれぞれ独立して、フェニルであり得る。
【0050】
一方、前記化学式1で表される化合物は、OまたはSを含む3員ヘテロ環に結合したカルバゾール基で置換されたAr、R、Rが回転によりカルバゾール環の両末端の左右位置を異にした立体異性体(stereo-isomer)を全て含むことができる。
【0051】
前記化学式1で表される化合物の代表的な例は下記の通りである。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0052】
一方、前記化学式1で表される化合物は、有機発光素子に使用時、下記化学式2で表される化合物と共に使用することができる。
[化学式2]
【化32】
前記化学式2中、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;またはN、OおよびSで構成される群より選択されるヘテロ原子を1個以上含む置換または非置換の炭素数5~60のヘテロアリールであり、
およびRはそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;シアノ;ニトロ;アミノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;またはN、OおよびSで構成される群より選択されるヘテロ原子を1個以上含む置換または非置換の炭素数5~60のヘテロアリールであり、
およびはそれぞれ独立して、0~7の整数である。
【0053】
特に、前記化学式2で表される化合物を前記化学式1で表される化合物と共に有機発光素子に使用すると、エキシプレックス(exciplex)を形成する場合も有利で、低電圧、高効率、および長寿命の特性効果がより大きく現れる。
【0054】
具体的には、前記化学式2中、ArおよびArはそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、またはジメチルフルオレニルであり得る。
【0055】
また、RおよびRはそれぞれ水素またはフェニルであり得る。
【0056】
また、およびはそれぞれ0または1である。
【0057】
前記化学式2で表される化合物の代表的な例は下記の通りである。
【化33】
【化34】
【化35】
【0058】
また、前記化学式1で表される化合物と共に前記化学式2で表される化合物を有機発光素子の1層以上の有機物層に使用する場合、前記化学式1で表される化合物と前記化学式2で表される化合物の重量比は20:80~50:50、または35:65~45:55であり、好ましくは40:60である。
【0059】
一方、前記化学式1で表される化合物は、下記反応式1のような製造方法で製造することができる。前記製造方法は、後述する合成例でさらに具体化される。
[反応式1]
【化36】
前記反応式1中、
X、Y、Ar、R、R、R、n1、n2、n3およびn4は前記化学式1で定義した通りであり、
~Xはそれぞれ独立して、ハロゲン基である。
【0060】
特に、前記反応式1中、X~Xは互いに異なり、それぞれフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり得る。
【0061】
前記反応式1は、OまたはSを含む3員ヘテロ環に、少なくとも一つ以上のNを含む6員環と、カルバゾール基を導入する反応である。
【0062】
前記反応式1中、OまたはSを含む3員ヘテロ環に、少なくとも一つ以上のNを含む6員環を導入する反応段階、およびカルバゾール基を導入する反応段階は、それぞれ塩基(base)の存在下でパラジウム触媒(Pd catalyst)を使用するか、または別の遷移金属触媒なしに行うことができる。特に、前記反応式1は、XまたはXのうちのいずれか一つがフッ素の場合、別の触媒なしに塩基の存在下でのみ行うこともできる。
【0063】
一例として、前記塩基成分としては、ナトリウムtert-ブトキシド(sodium tert-butoxide、NaOtBu)、ナトリウムエトキシド(sodium ethoxide、NaOEt)、炭酸カリウム(potassium carbonate、KCO)、重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate、NaHCO)、炭酸セシウム(Cesium carbonate、CsCO)、酢酸ナトリウム(sodium acetate、NaOAc)、酢酸カリウム(potassium acetate、KOAc)、またはトリエチルアミン(triethylamine、EtN)などを使用することができる。好ましくは、前記塩基成分としては、ナトリウムtert-ブトキシド(sodium tert-butoxide、NaOtBu)、酢酸カリウム(potassium acetate、KOAc)、炭酸カリウム(potassium carbonate、KCO)、または炭酸セシウム(Cesium carbonate、CsCO)であり得る。
【0064】
前記パラジウム触媒としては、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(tris(dibenzylideneacetone)-dipalladium(0)、Pd(dba))、ビス(トリ-(tert-ブチル)ホスフィン)パラジウム(0)(bis(tri-(tert-butyl)phosphine)palladium(0)、BTP、Pd(t-BuP))、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(bis(dibenzylideneacetone)palladium(0))、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))または酢酸パラジウム(II)(palladium(II)acetate、Pd(OAc))などを使用することができる。好ましくは、前記パラジウム触媒としては、ビス(トリ-(tert-ブチル)ホスフィン)パラジウム(0)(bis(tri-(tert-butyl)phosphine)palladium(0)、BTP、Pd(t-BuP))、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(bis(dibenzylideneacetone)palladium(0))、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))であり得る。
【0065】
また、前記パラジウム触媒は、トリシクロヘキシルホスフィン(tricyclohexylphosphine)、トリ-tert-ブチルホスフィン(tri-tert-butylphosphine、P(tBu))またはトリフェニルホスフィン(triphenylphosphine、P(Ph))などのリガンド化合物と共に使用することもできる。例えば、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)などのパラジウム触媒をトリシクロヘキシルホスフィンなどのリガンド化合物と共に使用することができる。
【0066】
具体的には、前記反応式1は、OまたはSを含む3員ヘテロ環に前記少なくとも一つ以上のNを含む6員環と前記カルバゾール基を導入する順序により、下記反応式1-1または反応式1-2のような方法で行うことができる。
[反応式1-1]
【化37】
[反応式1-2]
【化38】
前記反応式1-1および反応式1-2中、X、Y、Ar、R、R、R、n1、n2、n3、n4およびX~Xは前記反応式1で定義した通りである。
【0067】
前記反応式1-1は、OまたはSを含む3員ヘテロ環に、まず、カルバゾール基を導入した後、少なくとも一つ以上のNを含む6員環を導入する反応である。
【0068】
具体的には、前記反応式1-1はハロゲン基であるX、Xを含むOまたはSを含む3員ヘテロ環式化合物に塩基(base)の存在下でパラジウム触媒(Pd catalyst)を使用してX位置にカルバゾール基を導入し、その後、塩基(base)およびパラジウム触媒(Pd catalyst)存在下でビス(ピナコラート)ジボロン(bis(pinacolato)diboron)を反応させた後、塩基(base)の存在下でパラジウム触媒(Pd catalyst)を使用して残ったX位置に少なくとも一つ以上のNを含む6員環を導入することで行われる。特に、前記反応式1-1中、Xは塩素であり、Xは臭素である。
【0069】
また、前記反応式1-2は、OまたはSを含む3員ヘテロ環に、まず、少なくとも一つ以上のNを含む6員環を導入した後、カルバゾール基を導入する反応である。
【0070】
具体的には、前記反応式1-2は、ハロゲン基であるX、Xを含むOまたはSを含む3員ヘテロ環式化合物に塩基(base)およびパラジウム触媒(Pd catalyst)存在下でビス(ピナコラート)ジボロン(bis(pinacolato)diboron)を反応させた後、塩基(base)の存在下でパラジウム触媒(Pd catalyst)を使用してX位置に少なくとも一つ以上のNを含む6員環をまず導入し、その後、塩基(base)の存在下でパラジウム触媒(Pd catalyst)を使用するか、または別の遷移金属触媒を使用せず、X位置にカルバゾール基を導入することで行われる。特に、前記反応式1-2中、Xは臭素であり、Xは塩素であり得、またはXは塩素であり、Xはフッ素であり得る。
【0071】
また、前記化学式1で表される化合物の製造方法は、前記反応式1で使用される各反応物や生成物に含まれている水素または置換基を他の置換基に変換する付加反応または置換反応を行う段階をさらに含む。一例として、前記化学式1で表される多環構造を構成する少なくとも一つ以上のNを含む6員環、OまたはSを含む3員ヘテロ環、およびカルバゾール基に含まれている水素のうちの少なくとも一つ以上を重水素で置換するか、またはハロゲンなどをアリールまたはヘテロアリールなどで置換する反応段階をさらに含む。
【0072】
このような重水素またはアリール、ヘテロアリールなどの置換基付加反応または置換反応は、前記反応式1に使用される各反応物に対してまたは各反応物の生成段階で個別に行うか、前記反応式1の各段階で生成される中間生成物に対して追加段階で行うか、前記反応式1により得られる最終生成物に対して追加段階で行うことができる。具体的な反応条件および方法は後述する合成例でさらに具体化される。
【0073】
一例として、前記化学式1に含まれている水素のうちの少なくとも一つ以上を重水素で置換する反応は、酸化白金(IV)(PtO、platinum(IV)oxide)などの白金触媒存在下で重水(DO、deuterium oxide)などを使用して行われる。また、アリールまたはヘテロアリールなどの置換基付加反応は、塩基(base)の存在下でパラジウム触媒(Pd catalyst)などを使用することで行われ、このような塩基成分およびパラジウム触媒の種類などは上述した通りである。
【0074】
また、前記反応式1による製造方法において、OまたはSを含む3員ヘテロ環に、少なくとも一つ以上のNを含む6員環と、カルバゾール基を導入する反応または追加的な置換基付加反応または置換反応のためのそれぞれの反応基は当業界で公知のものによって変更可能である。前記製造方法は、後述する製造例でさらに具体化される。
【0075】
一方、本発明は、前記化学式1で表される化合物を含む有機発光素子を提供する。一例として、本発明は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【0076】
本発明の有機発光素子の有機物層は単層構造であってもよく、2層以上の有機物層が積層された多層構造であってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有する。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少ない数の有機層を含んでもよい。
【0077】
また、前記有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入と輸送を同時に行う層を含むことができ、前記正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入と輸送を同時に行う層は、前記化学式1で表される化合物を含む。
【0078】
また、前記有機物層は発光層を含み、前記発光層は、前記化学式1で表される化合物を含む。
【0079】
また、前記有機物層は電子輸送層または電子注入層を含み、前記電子輸送層または電子注入層は、前記化学式1で表される化合物を含む。
【0080】
また、前記電子輸送層、電子注入層、または電子輸送および電子注入を同時に行う層は、前記化学式1で表される化合物を含む。
【0081】
また、前記有機物層は、発光層および電子輸送層を含み、前記電子輸送層は、前記化学式1で表される化合物を含む。
【0082】
一方、本発明に係る有機発光素子は、前記化学式1で表される化合物と共に前記化学式2で表される化合物をさらに含む。一例として、本発明に係る有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含み、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1で表される化合物と共に前記化学式2で表される化合物をさらに含む。
また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、正極、1層以上の有機物層、および負極が順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であり得る。また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、負極、1層以上の有機物層、および正極が順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であり得る。例えば、本発明の一実施形態による有機発光素子の構造を図1および図2に示す。
【0083】
図1は、基板1、正極2、発光層3、および負極4からなる有機発光素子の例を示した図である。この構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記発光層に含まれ得る。
【0084】
図2は、基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8、および負極4からなる有機発光素子の例を示した図である。この構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層のうちの1層以上に含まれる。具体的には、前記化学式1で表される化合物は前記発光層に含まれ、例えば、発光層のドーパント材料として含まれる。
【0085】
本発明に係る有機発光素子は、前記有機物層のうちの1層以上が前記化学式1で表される化合物または前記化学式1で表される化合物と共に前記化学式2で表される化合物を含むことを除いては、当該技術分野において公知の材料と方法で製造することができる。また、前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質で形成される。
【0086】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、第1電極、有機物層、および第2電極を順次積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)などのPVD(physical Vapor Deposition)方法を用いて、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として用いられる物質を蒸着させて製造することができる。この方法以外にも、基板上に、負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を作ることができる
【0087】
また、前記化学式1で表される化合物は、有機発光素子の製造時に真空蒸着法のみならず、溶液塗布法によって形成される。特に、前記化学式1で表される化合物は、溶液塗布法に使用される溶媒に対する溶解度に優れて、溶液塗布法を適用することが容易である。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらにのみ限定されるものではない。
【0088】
そこで本発明は、前記化学式1で表される化合物および溶媒を含むコーティング組成物を提供する。
【0089】
前記溶媒は、本発明に係る化合物を溶解または分散させることができる溶媒であれば特に限定されず、一例として、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;ブチルベンゾエート、メチル-2-メトキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;テトラリン;3-phenoxy-tolueneなどの溶媒が挙げられる。また、上述した溶媒を1種単独でまたは2種以上の溶媒を混合して使用することができる。
【0090】
また、前記コーティング組成物の粘度は1cP~10cPが好ましく、上記の範囲でコーティングが容易である。また、前記コーティング組成物内の本発明に係る化合物の濃度は0.1wt/v%~20wt/v%であることが好ましい。
【0091】
また、本発明は、上述したコーティング組成物を使用して機能層を形成する方法を提供する。具体的には、本発明に係る上述したコーティング組成物を溶液工程でコーティングする段階、および前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理する段階を含む。
【0092】
前記熱処理段階で熱処理温度は150~230℃が好ましい。また、前記熱処理時間は1分~3時間であり、より好ましくは10分~1時間である。また、前記熱処理は、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0093】
一例として、前記第1電極は正極であり、前記第2電極は負極であるか、または、前記第1電極は負極であり、前記第2電極は正極である。
【0094】
前記正極物質としては、通常有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。前記正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:AlまたはSNO:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性化合物などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0095】
前記負極物質としては、通常有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。前記負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛などの金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0096】
前記正孔注入層は電極から正孔を注入する層で、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、正極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0097】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層で、正孔輸送物質としては、正極や正孔注入層から正孔輸送を受けて発光層に移し得る物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0098】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔および電子の輸送をそれぞれ受けて結合させることにより可視光線領域の光を発し得る物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては、8-ヒドロキシ-キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10-ヒドロキシベンゾキノリン-金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系化合物;ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0099】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料は、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0100】
ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換または非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換または非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物で、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミノ基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換または非置換される。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。好ましくは、前記ドーパント材料としては、本発明に係る前記化学式1で表される化合物を使用する。また、前記ドーパント材料として、前記化学式1で表される化合物と共に前記化学式2で表される化合物をさらに使用することができる。
【0101】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層で、電子輸送物質としては、負極から電子注入をよく受けて発光層に移し得る物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq(tris(8-hydroxyquinolino)aluminum)を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術により使用されているような、任意の所望するカソード(cathode)物質と共に使用可能である。特に、適切なカソード(cathode)物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体的には、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム、およびサマリウムであり、各場合、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0102】
前記電子注入層は電極から電子を注入する層で、電子を輸送する能力を有し、負極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物、および含窒素5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0103】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラート)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0104】
本発明に係る有機発光素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であり得る。
【0105】
また、前記化学式1で表される化合物は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスターに含まれ得る。
【0106】
以下、前記化学式1で表される化合物およびこれを含む有機発光素子の製造を実施例により具体的に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0107】
[合成例]
合成例1:化合物1の合成
段階1)化合物1-1の合成
【化39】
窒素雰囲気で2-bromo-7-chlorodibenzo[b,d]furan(15g、53.3mmol)と9H-carbazole(9.8g、58.6mmol)をtoluene 300mLに入れて、攪拌および還流した。その後、sodium tert-butoxide(7.7g、79.9mmol)、bis(tri-tert-butylphosphine)palladium(0)(0.8g、1.6mmol)を投入した。2時間反応後、常温に冷却し、クロロホルムと水を利用して有機層を分離した後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物1-1を15.7g製造した(収率80%、MS:[M+H]=369)。
【0108】
段階2)化合物1-2の合成
【化40】
窒素雰囲気で化合物1-1(15g、40.8mmol)とbis(pinacolato)diboron(11.4g、44.9mmol)を1,4-dioxane300mLに還流させて攪拌した。その後、potassium acetate(6g、61.2mmol)を投入して十分に攪拌した後、bis(dibenzylideneacetone)palladium(0)(0.7g、1.2mmol)およびtricyclohexylphosphine(0.7g、2.4mmol)を投入した。7時間反応して常温に冷却し、クロロホルムと水を利用して有機層を分離した後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物1-2を12.7g製造した(収率68%、MS:[M+H]=460)。
【0109】
段階3)化合物1の合成
【化41】
窒素雰囲気で化合物1-2(15g、32.7mmol)と2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazine(9.8g、35.9mmol)をTHF300mLに入れて、攪拌および還流した。その後、炭酸カリウム(18.1g、130.6mmol)を水54mLに溶かして投入して十分に攪拌した後、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)(1.1g、1mmol)を投入した。11時間反応後、常温に冷却し、有機層と水層を分離後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、昇華精製により化合物1を6.7g製造した(収率36%、MS:[M+H]=571)。
【0110】
合成例2:化合物2の合成
【化42】
合成例1で、9H-carbazoleを7,7-dimethyl-5,7-dihydroindeno[2,1-b]carbazoleに、2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazineを2-chloro-4,6-bis(phenyl-d5)-1,3,5-triazineに変更して使用したことを除いては、化合物1の製造方法と同様の方法で化合物2を製造した(MS:[M+H]=692)。
【0111】
合成例3:化合物3の合成
段階1)化合物3-1の合成
【化43】
窒素雰囲気で7-bromo-2,4-dichlorodibenzo[b,d]furan(15g、47.5mmol)とbis(pinacolato)diboron(13.3g、52.2mmol)を1,4-dioxane 300mLに還流させて攪拌した。その後、potassium acetate(7g、71.2mmol)を投入して十分に攪拌した後、bis(dibenzylideneacetone)palladium(0)(0.8g、1.4mmol)およびtricyclohexylphosphine(0.8g、2.8mmol)を投入した。7時間反応して常温に冷却し、クロロホルムと水を利用して有機層を分離した後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3-1を12.4g製造した(収率72%、MS:[M+H]=364)。
【0112】
段階2)化合物3-2の合成
【化44】
窒素雰囲気で化合物3-1(15g、41.3mmol)と2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazine(12.4g、45.4mmol)をTHF300mLに入れて、攪拌および還流した。その後、炭酸カリウム(22.8g、165.3mmol)を水69mLに溶かして投入して十分に攪拌した後、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)(1.4g、1.2mmol)を投入した。11時間反応後、常温に冷却し、有機層と水層を分離後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3-2を12.9g製造した(収率66%、MS:[M+H]=474)。
【0113】
段階3)化合物3-3の合成
【化45】
窒素雰囲気で化合物3-2(15g、31.7mmol)と9H-carbazole(5.8g、34.9mmol)をtoluene 300mLに入れて、攪拌および還流した。その後、sodium tert-butoxide(4.6g、47.5mmol)、bis(tri-tert-butylphosphine)palladium(0)(0.5g、1mmol)を投入した。4時間反応後、常温に冷却し、クロロホルムと水を利用して有機層を分離した後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3-3を14.9g製造した(収率78%、MS:[M+H]=605)。
【0114】
段階4)化合物3の合成
【化46】
窒素雰囲気で化合物3-3(15g、24.8mmol)とphenylboronic acid(3.3g、27.3mmol)をTHF300mLに入れて、攪拌および還流した。その後、炭酸カリウム(13.7g、99.3mmol)を水41mLに溶かして投入して十分に攪拌した後、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)(0.9g、0.7mmol)を投入した。11時間反応後、常温に冷却し、有機層と水層を分離後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、昇華精製により化合物3を7.7g製造した(収率48%、MS:[M+H]=647)。
【0115】
合成例4:化合物4の合成
段階1)化合物4-1の合成
【化47】
窒素雰囲気で3-chloro-6-fluorodibenzo[b,d]furan(15g、68mmol)とbis(pinacolato)diboron(19g、74.8mmol)を1,4-dioxane 300mLに還流させて攪拌した。その後、potassium acetate(10g、102mmol)を投入して十分に攪拌した後、bis(dibenzylideneacetone)palladium(0)(1.2g、2mmol)およびtricyclohexylphosphine(1.1g、4.1mmol)を投入した。6時間反応して常温に冷却し、クロロホルムと水を利用して有機層を分離した後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物4-1を12.7g製造した(収率60%、MS:[M+H]=313)。
【0116】
段階2)化合物4-2の合成
【化48】
窒素雰囲気で化合物4-1(15g、48.1mmol)と2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazine(14.4g、52.9mmol)をTHF300mLに入れて、攪拌および還流した。その後、炭酸カリウム(26.6g、192.2mmol)を水80mLに溶かして投入して十分に攪拌した後、tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)(1.7g、1.4mmol)を投入した。10時間反応後、常温に冷却し、有機層と水層を分離後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物4-2を13.8g製造した(収率68%、MS:[M+H]=423)。
【0117】
段階3)化合物4の合成
【化49】
窒素雰囲気で化合物4-2(20g、47.3mmol)と12H-benzo[4,5]thieno[2,3-a]carbazole(14.2g、52.1mmol)をDMF400mLに入れて還流させて攪拌した。その後、炭酸セシウム(46.3g、142mmol)を投入して攪拌した。3時間反応後、常温に冷却し、クロロホルムと水を利用して有機層を分離した後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌した後、ろ過して濾液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、昇華精製により化合物4を14.4g製造した(収率45%、MS:[M+H]=677)。
【0118】
合成例5:化合物5の合成
【化50】
合成例4の段階3で、12H-benzo[4,5]thieno[2,3-a]carbazoleを11H-benzofuro[3,2-b]carbazoleに変更して使用したことを除いては、化合物4の製造方法と同様の方法で化合物5を製造した(MS:[M+H]=661)。
【0119】
合成例6:化合物6の合成
段階1)化合物6-1の合成
【化51】
合成例4で、2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazineを2-chloro-4,6-diphenyl-1,3,5-triazineに、12H-benzo[4,5]thieno[2,3-a]carbazoleを9H-carbazoleに変更して使用したことを除いては、化合物4の製造方法と同様の方法で化合物6-1を製造した(MS:[M+H]=566)。
【0120】
段階2)化合物6の合成
【化52】
シェーカーチューブに化合物6-1(10g、17.7mmol)、PtO(1.2g、5.3mmol)、DO 89mLを入れた後、チューブを密封し、250℃、600psiで12時間加熱した。反応が終了するとクロロホルムを入れて、反応液を分液漏斗に移して抽出した。抽出液をMgSOで乾燥、濃縮し、試料をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、昇華精製により化合物6を4.6g製造した(収率44%、MS:[M+H]=590)。
【0121】
合成例7:化合物7の合成
【化53】
合成例4で、3-chloro-6-fluorodibenzo[b,d]furanを7-chloro-1-fluorodibenzo[b,d]furanに、2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazineを2-chloro-4,6-bis(phenyl-d5)-1,3,5-triazineに、12H-benzo[4,5]thieno[2,3-a]carbazoleを9H-carbazoleに変更して使用したことを除いては、化合物4の製造方法と同様の方法で化合物7を製造した(MS:[M+H]=576)。
【0122】
合成例8:化合物8の合成
【化54】
合成例4で、3-chloro-6-fluorodibenzo[b,d]furanを7-chloro-1-fluorodibenzo[b,d]furanに、2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazineを2-chloro-4,6-diphenyl-1,3,5-triazineに、12H-benzo[4,5]thieno[2,3-a]carbazoleを4-(phenyl-d5)-9H-carbazoleに変更して使用したことを除いては、化合物4の製造方法と同様の方法で化合物8を製造した(MS:[M+H]=647)。
【0123】
合成例9:化合物9の合成
【化55】
合成例4で、3-chloro-6-fluorodibenzo[b,d]furanを3-chloro-6-fluorodibenzo[b,d]thiopheneに、2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazineを2-chloro-4-(dibenzo[b,d]furan-3-yl)-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazineに、12H-benzo[4,5]thieno[2,3-a]carbazoleを9H-carbazoleに変更して使用したことを除いては、化合物4の製造方法と同様の方法で化合物9を製造した(MS:[M+H]=677)。
【0124】
合成例10:化合物10の合成
【化56】
合成例1で、9H-carbazoleを9H-carbazole-1,3,4,5,6,8-d6に、2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazineを2-chloro-4,6-diphenyl-1,3,5-triazineに変更して使用したことを除いては、化合物1の製造方法と同様の方法で化合物10を製造した(MS:[M+H]=572)。
【0125】
合成例11:化合物11の合成
【化57】
合成例4で、2-chloro-4-phenyl-6-(phenyl-d5)-1,3,5-triazineを2-([1,1'-biphenyl]-3-yl)-4-chloro-6-phenyl-1,3,5-triazineに、12H-benzo[4,5]thieno[2,3-a]carbazoleを9H-carbazole-1,2,3,4,5,6,7,8-dに変更して使用したことを除いては、化合物4の製造方法と同様の方法で化合物11を製造した(MS:[M+H]=650)。
【0126】
[実験例]
実施例1
ITO(indium tin oxide)が1,400Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を使用し、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルタ(Filter)で2次ろ過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールの溶剤で超音波洗浄をし、乾燥させた後、プラズマ洗浄機に輸送させた。また、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着機に基板を輸送させた。
【0127】
こうして準備されたITO透明電極上に、下記HT-A化合物と下記PD化合物を95:5の重量比で100Åの厚さに熱真空蒸着し、次いで下記HT-A化合物のみを1150Åの厚さに蒸着して正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層上に、下記HT-B化合物を450Åの厚さに熱真空蒸着して電子阻止層を形成した。前記電子阻止層上に、上記で製造した化合物1と下記GD化合物を85:15の重量比で400Åの厚さに真空蒸着して発光層を形成した。前記発光層上に、下記ET-A化合物を50Åの厚さに真空蒸着して正孔阻止層を形成した。前記正孔阻止層上に、下記ET-B化合物と下記Liq化合物を2:1の重量比で250Åの厚さに熱真空蒸着し、次いで、LiFとマグネシウムを1:1の重量比で30Åの厚さに真空蒸着して、電子輸送および注入層を形成した。前記電子注入層上にマグネシウムと銀を1:4の重量比で160Åの厚さに蒸着して負極を形成して、有機発光素子を製造した。
【化58】
【0128】
上記の過程で、有機物の蒸着速度は0.4~0.7Å/secを維持し、負極のフッ化リチウムは0.3Å/sec、銀とマグネシウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10-7~5×10-6torrを維持して、有機発光素子を製作した。
【0129】
実施例2~実施例11
化合物1の代わりに下記表1に記載された化合物を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0130】
実施例12~実施例16
化合物1の代わりに下記表1に記載された化合物を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。下記表1において、各化合物の比率は重量比を意味し、化合物PGH-1とPGH-2はそれぞれ下記の通りである。
【化59】
【0131】
比較例1~比較例5
化合物1の代わりに下記表1に記載された化合物を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。下記表1において、化合物GH-A、GH-B、GH-C、GH-D、およびGH-Eはそれぞれ下記の通りである。
【化60】
【0132】
比較例6および比較例7
化合物1の代わりに下記表1に記載された化合物を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。下記表1において、各化合物の比率は重量比を意味し、化合物GH-A、GH-D、PGH-1、およびPGH-2は先に説明した通りである。
【0133】
前記実施例および比較例で製造した有機発光素子を110℃のオーブンで30分間保管して熱処理した後、電流を印加して電圧、効率、寿命(T95)を測定し、その結果を下記表1に示す。この時、電圧および効率は10mA/cmの電流密度を印加して測定した。また、下記表1のT95は、電流密度20mA/cmで初期輝度が95%に低下するまで測定した時間を意味する。
【0134】
【表1】
【0135】
上記表1を参照すると、本発明に係る少なくとも一つ以上のNを含む6員環に、OまたはSを含む3員ヘテロ環を介してカルバゾール基が結合する構造で少なくとも一つ以上の重水素で置換された特定の多環構造化合物1~11を有機発光素子のホストに適用時、比較例での化合物に比べて低電圧、高効率、および長寿命の特性により優れていることが分かった。
【0136】
特に、このような特性は、実施例12~実施例16でのように、前記化学式2で表される化合物の一種であるPGH-1およびPGH-2の化合物を共にホストとして使用してエキシプレックス(exciplex)を形成する場合にも有利で、低電圧、高効率、および長寿命の特性効果がより大きく現れることを確認することができた。
【符号の説明】
【0137】
1:基板
2:正極
3:発光層
4:負極
5:正孔注入層
6:正孔輸送層
7:発光層
8:電子輸送層
図1
図2