(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ヒータ部材、加熱装置、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240702BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 510
H05B3/00 310D
(21)【出願番号】P 2020027056
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】杉山 龍平
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167456(JP,A)
【文献】特開2017-191149(JP,A)
【文献】特開2009-244595(JP,A)
【文献】特開2015-197971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
H05B 1/00- 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって発熱する抵抗体を有し基材の表面に複数で形成されたヒートブロックと、
前記抵抗体の電気抵抗よりも小さい電気抵抗を有し前記ヒートブロックの通電経路に形成された抵抗調整部と、
前記ヒートブロックの温度を制御する制御装置で使用するために前記ヒートブロックの温度を検出可能に配設された温度制御用の温度検知部材とを有し、
前記温度検知部材が
、前記基材の長手方向及び短手方向を含む平面において前記抵抗調整部から離間した位置に配設されていることを特徴とするヒータ部材。
【請求項2】
前記抵抗調整部と前記温度検知部材が、前記基材の長手方向で異なる位置に配設されている請求項1のヒータ部材。
【請求項3】
前記抵抗調整部と前記温度検知部材が、前記基材の短手方向で異なる位置に配設されている請求項1又は2のヒータ部材。
【請求項4】
前記抵抗調整部によって前記複数のヒートブロックの発熱密度が均一化される請求項1から3のいずれか1項のヒータ部材。
【請求項5】
前記ヒートブロックの前記抵抗体と前記抵抗調整部のそれぞれが、前記基材の表面に一層のシート状の抵抗パターンとして形成されると共に、前記抵抗体の抵抗パターンと前記抵抗調整部の抵抗パターンが混在して一体化され一層で一定厚のシート状に構成されている請求項1から4のいずれか1項のヒータ部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項の前記ヒータ部材によって被加熱部材が加熱されるように構成されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
可撓性を有するスリーブ状の回転部材と、
前記回転部材の内周に対して前記ヒータ部材の加熱領域が摺接する請求項1から5のいずれか1項の前記ヒータ部材と、
前記回転部材を挟んで前記ヒータ部材と圧接して前記回転部材との間にニップ部を形成する加圧部材とを有し、
前記ニップ部で用紙を挟持搬送する際に前記ヒータ部材の熱を前記用紙に付与することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
給紙装置、画像形成部、転写装置および請求項7の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒータ部材、加熱装置、定着装置および画像形成装置に係り、特に通電によって発熱する抵抗体で構成されたヒートブロックを有するヒータ部材と、当該ヒータ部材を使用した加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で使用される定着装置は種々の型式が知られている。その1つに、低熱容量の薄肉定着ベルトをヒータ部材で直接加熱する型式がある。このヒータ部材はヒータ基材と抵抗発熱体(面状ヒータ)で構成される。定着ベルトの外側には加圧部材としての加圧ローラが配設され、この加圧ローラを定着ベルトを間に挟んでヒータ部材に圧着することで定着ニップを形成する。
【0003】
面状ヒータは導電ペーストを使用してスクリーン印刷によってヒータ基材上に形成される。面状ヒータの抵抗パターンは、ヒータ基材の長手方向に一往復またはワンパスする直列接続のシンプルなものから、蛇行状抵抗パターンを有するヒートブロックをヒータ基材の長手方向に並列接続で複数形成したものがある。後者は複数用紙サイズに対応して所望のヒートブロックのみを通電加熱することで、定着ベルトの端部温度上昇を抑制しつつ生産性(時間当り通紙枚数)を高めることができる。
【0004】
ヒートブロックは、発熱密度の均一化とスクリーン印刷の効率化・低コスト化のため、抵抗パターンの抵抗線を同一の抵抗ペーストにより一定幅、一定厚かつ一定蛇行回数で形成するのが望ましい。さらに、用紙サイズに対応してヒートブロックの分割位置を設定する必要性から、各ヒートブロックの長手方向長さを、最大用紙サイズをブロック数で単純に等分した長さに設定できないという事情がある。
【0005】
このため、通常、中央側の複数のヒートブロックHB1の長手方向長さL1が、両端側のヒートブロックHB2の長手方向長さL2よりも長く設定される(L2<L1)。したがって、ブロック単位の発熱面積では中央側のヒートブロックHB1の方が大きいにも関わらず、ヒートブロックHB1の抵抗値R1がヒートブロックHB2の抵抗値R2より大きくなり(R2<R1)、共通の電圧またはデューティを供給すると両端側の発熱密度が中央側よりもかなり高くなってしまう。中央側と両端側のヒートブロックに異なる電圧またはデューティを供給して発熱密度を均一化する方法もあるが、そうすると電源や制御が複雑化してコストアップになる。
【0006】
そこで、ヒータ部材の長手方向の発熱密度を均一化する解決策のひとつとして、通電経路が長い方のヒートブロックの通電経路に、ヒートブロックの抵抗体よりも抵抗値が小さい材料で構成された抵抗調整部を部分的に形成することが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、各ヒートブロックには温度制御用に温度検知部材(サーミスタ)が配設されるが、前述のように抵抗調整部を設けたヒートブロックに温度検知部材を配設する場合、その配設位置によっては検出温度に誤差が生じるおそれがある。すなわち抵抗調整部は低抵抗で発熱密度が小さいので、抵抗調整部に近づけて温度検知部材を配設すると、本来検出すべき温度よりも低い温度が検知される。この低めに検知された温度で温度制御を実施すると、ヒートブロックの温度が狙いの温度よりも高くなり、ホットオフセットや光沢異常等の異常画像発生のリスクが発生する。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、抵抗調整部を有するヒートブロックの温度を誤差が生じないように温度検知部材で検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のヒータ部材は、通電によって発熱する抵抗体を有し基材の表面に複数で形成されたヒートブロックと、前記抵抗体の電気抵抗よりも小さい電気抵抗を有し前記ヒートブロックの通電経路に形成された抵抗調整部と、前記ヒートブロックの温度を検出可能に配設された温度検知部材とを有し、前記温度検知部材が前記抵抗調整部から離間した位置に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抵抗調整部を有するヒートブロックの温度を誤差が生じないように温度検知部材で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
【
図3A】抵抗調整部の上流側にサーミスタを配置したデュアル型ヒータ部材の平面図である。
【
図3B】抵抗調整部の下流側にサーミスタを配置したデュアル型ヒータ部材の平面図である。
【
図4】抵抗調整部にサーミスタを重ねて配置したヒートブロックの平面図である。
【
図5】(a)~(f)は抵抗調整部とサーミスタの複数の配置例を示すヒートブロックの平面図である。
【
図6】抵抗調整部の下流側にサーミスタを配置したシングル型ヒータ部材の平面図である。
【
図7】(a)~(f)は抵抗調整部とサーミスタの複数の配置例を示すヒートブロックの平面図である。
【
図8】ヒートブロックの互いに隣接する端部を傾斜させて短手方向で重ね合わせたデュアル型ヒータ部材の平面図である。
【
図10】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【
図11】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るヒート部材、定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。レーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0013】
なお、各図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0014】
以下の実施形態では「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0015】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0016】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することも意味する。
【0017】
(レーザプリンタの構成)
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。なお、画像形成装置としては、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機などであってもよい。
【0018】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部である4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体103に対して着脱可能に構成され、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0019】
具体的には、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電する帯電装置3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング装置5と、を備える。
【0020】
また、画像形成装置100は、各感光体2の表面を露光し静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体としての用紙Pを供給する給紙装置7と、各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置300と、用紙Pを装置外に排出する排紙装置10と、を備える。
【0021】
転写装置8は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ13と、を有する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。
【0022】
これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0023】
また、画像形成装置100内には、給紙装置7から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路14が形成されている。この用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0024】
次に、
図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0025】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が
図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0026】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、
図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0027】
この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0028】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置300へと搬送され、定着装置300によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0029】
(レーザプリンタの原理)
図2Aは、本発明の定着装置300を備えた画像形成装置100の一実施形態としてのレーザプリンタの原理図である。画像形成装置100は像担持体2(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置5を有している。また像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置3と、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置4と、像担持体2の下方に配設された転写手段TMと、除電装置等を有する。
【0030】
露光装置6は像担持体2の上方に配設されている。この露光装置6は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからのレーザ光Lbをミラー7aで反射して像担持体2に照射する。
【0031】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置50は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置50は記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60と共にユニット化される。
【0032】
給紙ローラ60の下流側に、分離搬送手段としてのレジストローラ対250が配設されている。用紙給送装置50から給紙された用紙Pをレジストローラ対250で一旦停止させる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0033】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、像担持体2上のトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて転写手段TMの転写ニップNに送り出される。そして、送り出された用紙Pは、転写ニップNにおいて印加されたバイアスによって像担持体2上のトナー像が所望の転写位置に静電的に転写されるようになっている。
【0034】
転写ニップNの下流側に定着装置300が配設されている。定着装置300は後述する発熱体としての後述のヒートブロック331a~331d、332で加熱される定着部材としての定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。
【0035】
(レーザプリンタの作動)
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作を説明する。画像形成装置100の制御部からの給紙信号に対応して給紙ローラ60が回転する。この給紙ローラ60の回転により用紙給送装置50に積載された束状用紙Pの最上位の用紙が分離されて給紙路に送り出される。
【0036】
送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、像担持体2上のトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
【0037】
帯電装置3は、像担持体2の表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光装置6は、画像データに基づいたレーザ光Lbをミラー6aで反射して像担持体2の表面に照射する。
【0038】
レーザ光Lbが照射された像担持体2の表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置4は、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体4aを有し、トナーボトルから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体4aを介して、静電潜像が形成された像担持体2の表面部分に転移させる。
【0039】
トナーが転移した像担持体2は、その表面にトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2上に形成されたトナー画像を転写手段TMで用紙Pに転写する。
【0040】
ドラムクリーニング装置5は、転写行程を経た後の像担持体2の表面に付着している残留トナーをクリーニングブレード5aで除去する。除去された残留トナーは廃トナー収容部に回収される。
【0041】
トナー画像が転写された用紙Pは定着装置300へと搬送される。定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは定着装置300から送り出される。
【0042】
(定着装置)
続いて、定着装置300の構成について説明する。
図2Bに示すように、本実施形態に係る定着装置300は、定着部材としての無端状のベルト部材から成る定着ベルト310と、定着ベルト310の外周面に接触してニップ部Nを形成する対向部材としての加圧ローラ320と、定着ベルト310を加熱するヒータ部材330を有する。ヒータ部材330はヒータホルダ344で保持され、ヒータホルダ344は補強部材としてのステー350で長手方向に渡って補強されている。
【0043】
定着ベルト310は可撓性を有するスリーブ状の回転部材で構成され、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。
【0044】
基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト310の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト310の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0045】
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の表面に形成された弾性層322と、弾性層322の外側に形成された離型層323とで構成されている。弾性層322はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層322の表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層323を形成するのが望ましい。
【0046】
ヒータ部材330は、定着ベルト310の幅方向に渡って長手状に設けられ、定着ベルト310の内周面に接触するように配置されている。ヒータ部材330は、定着ベルト310に対して非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、ヒータ部材330を定着ベルト310に対して直接接触させる方が定着ベルト310への熱伝達効率がよくなる。
【0047】
また、ヒータ部材330を定着ベルト310の外周面に接触させることもできるが、定着ベルト310の外周面がヒータ部材330との接触により傷付くと定着品質が低下する虞があるため、ヒータ部材330は定着ベルト310の内周面に接触している方がよい。
【0048】
ヒータ部材330は、基材層330aと、基材層330aのニップ部N側に順次積層される、第1絶縁層330b、発熱部330cを有する導体層330d、第2絶縁層330eと、基材層330aの反対側に積層された第3絶縁層330fと、で構成されている。
【0049】
前記基材層330aはセラミックで構成することができる。セラミックは線膨張係数がガラスに近いため、絶縁層330b、330e、330fにガラスを使う場合に熱膨張時の基材層330aと絶縁層330b、330e、330fとの間のズレによって導体層330dに剪断力が加わり難いメリットがある。また、セラミックの熱伝導率はステンレス等の金属よりも高いので基材層330aを介して定着ベルト310に熱伝導させるのに有利である。
【0050】
ヒータホルダ344及びステー350は、定着ベルト310の内周側に配置されている。ステー350は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置300の両側壁部に支持されている。ステー350によってヒータホルダ344のヒータ部材330側とは反対側の面が支持されていることで、ヒータ部材330及びヒータホルダ344は加圧ローラ320の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれ、定着ベルト310と加圧ローラ320との間にニップ部Nが形成される。
【0051】
ヒータホルダ344は、ヒータ部材330の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ344をLCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ部材330からヒータホルダ344への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト310を加熱することが可能である。
【0052】
加圧ローラ320と定着ベルト310は、付勢部材としてのバネによって互いに圧接されている。これにより、定着ベルト310と加圧ローラ320との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ320は、画像形成装置本体103に設けられた駆動手段から駆動力が伝達されて回転駆動する駆動ローラとして機能する。
【0053】
一方、定着ベルト310は、加圧ローラ320の回転に伴って従動回転するように構成されている。回転時、定着ベルト310はヒータ部材330に対して摺動する。定着ベルト310の摺動性を高めるために、ヒータ部材330と定着ベルト310との間にオイルやグリースなどの潤滑剤を介在させてもよい。
【0054】
印刷動作が開始されると、加圧ローラ320が回転駆動され、定着ベルト310が従動回転を開始する。また、ヒータ部材330に電力が供給されることで、定着ベルト310が加熱される。そして、定着ベルト310の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2Bに示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト310と加圧ローラ320との間(ニップ部N)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。
【0055】
(ヒータ部材)
図3Aに示すように、ヒータ部材330は中央側4個のヒートブロック331a~331dと両端側2個のヒートブロック332の計6個のヒートブロックを有する。各ヒートブロック331a~331d、332は、一定幅、一定厚かつ一定蛇行回数の抵抗パターンでヒータ基材360の表面に形成され、後述する電極部333~335に対して給電線351~355で並列に接続される。
【0056】
ヒートブロック331a~331d、332の互いに隣接する端部は、短手方向にストレートの形状とされている。このためブロック間には短手方向に延びる小さな隙間があるが、ヒートブロック331a~331d、332の基材360に熱伝導性のよい均熱部材を設けることで、定着ベルト310における温度ムラを解消することができる。
【0057】
ヒータ部材330の一端部に2つの電極部333、334が形成され、他端部に1つの電極部335が形成されている。電極部333は導電線336によって中央側ヒートブロック331a~331dの短手方向一端(
図3Aで上端)に接続され、当該中央側ヒートブロック331a~331dの短手方向他端(
図3Aで下端)に導電線341によって反対側の電極部335が接続されている。
【0058】
一方、両端側ヒートブロック332の一端(
図3Aで上端)は導電線339、340によって左側の電極334に接続され、両端側ヒートブロック332の他端(
図3Aで下端)が前記導電線341を経由して電極335に接続されている。
【0059】
電極部333は、給電線354、スイッチSW1および給電線355、352によって電源PWに接続されている。電極部334は、給電線351、スイッチSW2、給電線352によって電源PWに接続されている。反対側の電極部335は、給電線353によって電源PWに接続されている。
【0060】
スイッチSW1とスイッチSW2は並列に配置され、中央側のヒートブロック331と両端側のヒートブロック332を独立してON―OFF切替可能に構成されている。すなわち、ヒータ部材330は中央側と両端側のヒートブロックを独立制御可能なデュアル型ヒータ部材として構成されている。
【0061】
ヒートブロック331a~331d、332の蛇行状の抵抗パターンは、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材層331に塗工し、その後、当該基材層331を焼成することによって形成することができる。抵抗パターンの材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。
【0062】
導電線336、339、340、341は、ヒートブロック331a~331d、332の抵抗パターンよりも小さい抵抗値の導体で構成されている。導電線336、339、340、341や電極部333~335の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができ、このような材料をスクリーン印刷するなどによって導電線336、339、340、341や電極部333~335が形成されている。
【0063】
中央側ヒートブロック331a~331dと両端側ヒートブロック332の境目(分割位置)は、用紙サイズに対応して設定される。すなわち、例えばA4紙(幅210mm)を縦方向搬送する場合に対応して中央側ヒートブロック331a~331dが配設され、例えばA3紙(幅297mm)を縦方向搬送する場合に対応して中央側ヒートブロック331a~331dと両端側ヒートブロック332が配設される。
【0064】
詳しくは、ヒータ部材330の長手方向中央部を基準としてA4紙(幅210mm)を縦方向搬送する場合に対応して、4個の中央側ヒートブロック331a~331dが配設される。各ヒートブロック331a~331dの長さは、例えば51mmとすることができる(51mm×4=214mm>210mm)。
【0065】
また、ヒータ部材330の長手方向中央部を基準としてA3紙(幅297mm)を縦方向搬送する場合に対応して、中央側ヒートブロック331a~331dと両端側ヒートブロック332が配設される。両端側ヒートブロック332の長さは、例えば42mmとすることができる。(42mm×2+214mm=298mm>297mm)。
【0066】
ヒートブロック331a~331d、332を並列接続する場合、1つのブロック当たりの抵抗値(発熱量)はブロック数分だけ掛け算で高くしないといけない。例えば総抵抗10Ωを
図3Aのように6ブロックで実現する場合、1つのヒートブロックの抵抗値は60Ωとなる。このようにヒートブロックを高抵抗にするために、抵抗パターンを蛇行状にして通電距離を長くするのである。
【0067】
前述したように、用紙サイズに対応してヒートブロックの分割位置を設定する都合で中央側と両端側でヒートブロックの長さが異なると、同じ蛇行状態(一定幅、一定厚かつ一定蛇行回数)の抵抗パターンで各ヒートブロック331a~331d、332を構成した場合、中央側ヒートブロック331a~331dの抵抗値が両端側ヒートブロック332の抵抗値よりも大きくなる。
【0068】
そうすると、共通の交流電源から中央側と両端側のヒートブロックに同じデューティで電流を供給すると、中央側ヒートブロック331a~331dの発熱密度が両端側ヒートブロック332の発熱密度よりも小さくなる。このように中央側と両端側で発熱密度が相違すると、定着ベルト310の温度ムラが発生して印刷品質が低下する。
【0069】
そこで本発明の実施形態に係るヒータ部材330は、相対的に抵抗値が大きい中央側ヒートブロック331a~331dの抵抗値を下げるため、中央側ヒートブロック331a~331dに
図3Aのようにそれぞれ抵抗調整部338を設けることにした。この抵抗調整部338は、ヒートブロック331a~331dの抵抗パターンを構成する抵抗体よりも小さい電気抵抗を有する導電体で構成される。抵抗調整部338ないし導電体の材料としては、例えば銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができる。
【0070】
抵抗調整部338を中央側ヒートブロック331a~331dに部分的に設けることで、ヒートブロック331a~331dの電流経路が抵抗調整部338の部分で短絡されて、ヒートブロック331a~331dの実質的通電経路長を低減し抵抗値を低減することができる。そして、抵抗調整部338の幅、長さ又は厚さを、中央側ヒートブロック331a~331dと両端側ヒートブロック332の発熱密度[W/mm2]の比率に対応して形成する。
【0071】
或いは、抵抗調整部338の幅、長さ又は厚さを、中央側ヒートブロック331a~331dと両端側ヒートブロック332の電気抵抗、通電経路長または発熱面積(mm2)の比率に対応して形成する。こうすることで、中央側と両端側のヒートブロック331a~331d、332の抵抗値の大きさを調整し発熱密度を均一化することができる。
【0072】
なお、中央側ヒートブロック331a~331dの抵抗値を低減する代わりに両端側ヒートブロック332の抵抗パターンの断面を細くして抵抗値を増大することで発熱密度を均一化することも考えられる。しかし、そうすると、スクリーン印刷の都合上抵抗値のばらつきが大きくなってしまい、また局所的な発熱密度の上昇の影響で経時での寿命影響がある。したがって前述のように抵抗調整部338による発熱密度均一化が実用的である。
【0073】
抵抗調整部338の形成方法は複数の方法が可能である。すなわち、
1)蛇行状抵抗パターンを部分的に切り欠くと共にパターンの欠けた部分に抵抗調整部338を埋め込むように形成する方法(前述した
図3Aの方法)
2)ヒートブロック331a~331dの蛇行状抵抗パターンの上に抵抗調整部338を部分的に上書き形成する方法
3)基材上に予め抵抗調整部338を部分的に形成してからヒートブロック331a~331dの蛇行状抵抗パターンを上書き形成する方法
4)蛇行状抵抗パターンに所定のドーパントを部分的にイオン注入する方法などが可能である。
【0074】
ヒートブロック331a~331dとヒートブロック332には、温度検知部材としての接触式サーミスタTH1~TH6が配設されている。すなわち中央側ヒートブロック331a~331dにサーミスタTH1~TH4がそれぞれ配設され、端部側ヒートブロック332にサーミスタTH5、TH6がそれぞれ配設されている。接触式サーミスタTH1~TH6は、例えばヒータ基材360の裏側に配設することができる。
【0075】
また、中央側の1つのヒートブロック331cと端部側の1つのヒートブロック332にサーモスタットS1、S2が配設されている。サーモスタットS1、S2は、サーミスタTH1~TH6の故障、制御装置のトライアックの短絡、CPUの故障などでヒータ部材330が異常発熱し、過昇温に至るのを防止する電流遮断部材(安全素子)である。サーモスタットS1、S2は、例えばヒータ基材360の裏側に配設することができる。
【0076】
サーミスタTH1~TH6の配設位置は、通常は各ヒートブロックの発熱領域の中央が望ましい。しかし、本実施形態ではヒートブロックの中央に近い位置に抵抗調整部338を形成している。
【0077】
抵抗調整部338は低抵抗で発熱密度が小さいので、抵抗調整部338に近づけて温度検知部材を配設すると、本来検出すべき温度よりも低い温度が検知される。低めに検知された温度で温度制御を実施すると、ヒートブロックの温度が狙いの温度よりも高くなってしまい、ホットオフセットや光沢異常等の異常画像発生のリスクが発生する。
【0078】
そこで抵抗調整部338から離間してサーミスタTH1~TH4を配設する。
図3Aでは抵抗調整部338が上流側から2段目の蛇行パターンに形成されているので、サーミスタTH1~TH4を上流側の1段目の長手方向中央に配設している。これにより抵抗調整部338による影響がサーミスタTH1~TH4に及ぶのを防止することができる。
【0079】
これとは反対に、
図3Bのように、抵抗調整部338の下流側にサーミスタTH1~TH4を配設することもできる。
図3BではサーミスタTH1~TH4を最下流側すなわち上流側から4段目の蛇行パターンの長手方向中央に配設している。抵抗調整部338とサーミスタTH1~TH4の間に蛇行パターンの2段分の間隔があるので、抵抗調整部338による影響がサーミスタTH1~TH4に及びにくい。
【0080】
両端側のヒートブロック332のサーミスタTH5、TH6は、サーミスタTH1~TH4の配設位置の長手方向延長線上に配設する。これにより短手方向で同じ位置的条件でサーミスタTH1~TH6からの温度情報が得られるので、当該温度情報に基づいた制御装置の制御で定着ベルトの温度ムラ発生を抑制することができる。
【0081】
図4のように抵抗調整部338に重ねてサーミスタTH4を配設すると、本来検出すべき温度よりも低い温度が検知され、この低めに検知された温度で温度制御が実施されることになる。そうすると、ヒートブロックの温度が狙いの温度よりも高くなり、ホットオフセットや光沢異常等の異常画像発生のリスクが発生してしまう。
【0082】
抵抗調整部338やサーミスタTH1~TH4の配置は前述した
図3A、
図3Bに限られない。例えば
図5(a)~(f)のように、抵抗調整部338とサーミスタTHを配置することもできる。
【0083】
図5(a)~(f)は、中央側ヒートブロック331a~331dを代表するヒートブロック331dと、両端側ヒートブロック332を示す。
図5(a)は抵抗調整部338を用紙搬送方向最下流側に形成し、サーミスタTH4を上流側から2段目の中央に配置している。抵抗調整部338を用紙搬送方向の最下流側に寄せて配線することで、サーミスタTH1~TH4周辺は発熱密度が高くなり、ヒータ部材330を適切な温度で温度制御可能となる。
【0084】
図5の場合も、両端側のヒートブロック332のサーミスタTH6(TH5)は、サーミスタTH1~TH4の配設位置の長手方向延長線上に配設する。これにより短手方向で同じ位置的条件でサーミスタTH1~TH6からの温度情報が得られるので、当該温度情報に基づいた制御装置の制御で定着ベルトの温度ムラ発生を抑制することができる。
【0085】
図5(b)は抵抗調整部338を用紙搬送方向最上流側に形成し、サーミスタTH4を下流側から2段目に配置している。抵抗調整部338とサーミスタTH4の間に距離があるので、サーミスタTH4周辺は発熱密度が高くなり、ヒータ部材330を適切な温度で温度制御可能となる。
【0086】
図5(c)は抵抗調整部338を3つに分けて分散形成している。すなわち、第1抵抗調整部338aと第2抵抗調整部338bを下流側から2段目の両端に形成し、第3抵抗調整部338cを、これら抵抗調整部338a、338bと短手方向で重ならないように、最下流側の中央に形成している。
【0087】
そしてサーミスタTH4を上流側から2段目の中央に配置している。このように3つの抵抗調整部338a~338cを分散形成することで、ヒートブロック331dの発熱領域内での発熱密度を均一化することができる。
【0088】
図5(d)は抵抗調整部338を3つに分けて分散形成し、第1抵抗調整部338aと第2抵抗調整部338bを用紙搬送方向最下流側の両端に形成し、第3抵抗調整部338cを最上流側の中央に形成している。そしてサーミスタTH4を上流側から3段目の長手方向中央に配置している。
【0089】
図5(e)は抵抗調整部338を5つに分けて分散形成している。すなわち、第1抵抗調整部338aを最上流の左端、第2抵抗調整部338bと第3抵抗調整部338cを上流側から2段目でサーミスタTH4を左右から挟むように形成する。そして第4抵抗調整部338dを上流側から3段目の右端、第5抵抗調整部338eを最下流側の長手方向中央に形成している。
【0090】
図5(f)は同じく抵抗調整部338を5つに分けて分散形成し、第1抵抗調整部338aを最上流の長手方向中央、第2抵抗調整部338bを上流側から2段目の右端に形成する。そして第3抵抗調整部338cと第4抵抗調整部338dを上流側から3段目でサーミスタTH4を左右から挟むように形成し、第5抵抗調整部338eを最下流側の左端に形成している。
【0091】
(シングル型ヒータ)
以上説明した実施形態は、デュアル型ヒータ部材であるが、
図6はシングル型ヒータ部材330の例である。このヒータ部材330は2つの電極部339a、339bを有し、電極部339a、339bに接続された給電線351~353で電源PWから電流を供給する。
【0092】
給電線351、352の間にスイッチSWが配設され、スイッチSWのON・OFFによって電源PWからの全ヒートブロックに対する電流を一括して供給・遮断する。このシングル型ヒータ部材330にも、
図3Bと同様に抵抗調整部338、サーミスタTH1~TH6、サーモスタットS1、S2が配設されている。
【0093】
シングル型ヒータ部材330でも、
図6(b)のように、抵抗調整部338に重ねるようにしてサーミスタTHを配置すると、本来検出すべき温度よりも低い温度が検知され、ホットオフセットや光沢異常等の異常画像発生のリスクが発生してしまう。したがって
図6(a)のようにサーミスタTH1~TH4を抵抗調整部338から離間して配置する。
【0094】
シングル型ヒータ部材330の抵抗調整部338やサーミスタTH1~TH4の配置は前述した
図6(a)に限られない。例えば
図7(a)~(f)のように、抵抗調整部338とサーミスタTHを配置することもできる。
【0095】
図7(a)~(f)は、中央側ヒートブロック331a~331dを代表するヒートブロック331aを示す。
図7(a)は抵抗調整部338を用紙搬送方向最下流側に形成し、サーミスタTH1を上流側から2段目の右端に配置している。
図7(b)は抵抗調整部338を用紙搬送方向最上流側に形成し、サーミスタTH1を下流側から2段目の右端に配置している。
【0096】
図7(c)は抵抗調整部338を2つに分けて分散形成している。すなわち、第1抵抗調整部338aを下流側から2段目の長手方向中央から左側に形成し、第2抵抗調整部338bを最下流の長手方向中央から右側に形成している。
【0097】
そしてサーミスタTH1を上流側から2段目の右端に配置している。このように3つの抵抗調整部338a、338bを2つに分散形成することで、ヒートブロック331aの発熱領域内での発熱密度を均一化することができる。
【0098】
図7(d)も抵抗調整部338を2つに分けて分散形成し、第1抵抗調整部338aを最上流の右端に形成し、第2抵抗調整部338bを最下流の左側に形成している。そしてサーミスタTH1を上流側から3段目の右端に配置している。
【0099】
図7(e)は抵抗調整部338を4つに分けて分散形成している。すなわち、第1抵抗調整部338aを最上流の左端、第2抵抗調整部338bを上流側から2段目の中央寄りの左側、第3抵抗調整部338cを上流側から3段目の中央寄りの右側、第4抵抗調整部338dを最下流側の右端に形成している。そしてサーミスタTH1を上流側から2段目の右端に配置している。
【0100】
図7(f)は同じく抵抗調整部338を4つに分けて分散形成し、第1抵抗調整部338aを最上流の右端、第2抵抗調整部338bを上流側から2段目の中央寄りの右側、第3抵抗調整部338cを上流側から3段目の中央寄りの左側、第4抵抗調整部338dを最下流側の左端に形成している。そしてサーミスタTH1を上流側から3段目の右端に配置している。
【0101】
図8は、ヒートブロック331a~331d、332の互いに隣接する端部を、同じ傾斜で短手方向で重ね合わせたものである。これによりヒートブロック331a~331d、332相互間の短手方向での隙間をなくし、定着ベルト310における温度ムラを解消する。その他は、
図3Aと同様である。
【0102】
(定着装置の変形例)
本発明は、上述の定着装置のほか、
図9~
図11に示すような定着装置にも適用可能である。以下、
図9~
図11に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0103】
まず、
図9に示す定着装置300は、定着ベルト310に対して加圧ローラ320側とは反対側に、押圧ローラ370が配置されており、この押圧ローラ370とヒータ部材330とによって定着ベルト310を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ320側では、定着ベルト310の内周にニップ形成部材380が配置されている。ニップ形成部材380は、ステー350によって支持されており、ニップ形成部材380と加圧ローラ320とによって定着ベルト310を挟んでニップ部Nを形成している。
【0104】
次に、
図10に示す定着装置300では、前述の押圧ローラ370が省略されており、定着ベルト310とヒータ部材330との周方向接触長さを確保するために、ヒータ部材330が定着ベルト310の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図9に示す定着装置300と同じ構成である。
【0105】
最後に、
図11に示す定着装置300では、定着ベルト310のほかに加圧ベルト390が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とを分けて構成している。すなわち、加圧ローラ320に対して定着ベルト310側とは反対側に、ニップ形成部材380とステー381とを配置し、これらニップ形成部材380とステー381を内包するように加圧ベルト390を回転可能に配置している。
【0106】
そして、加圧ベルト390と加圧ローラ320との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱及び加圧して画像を定着する。その他は、
図2Bに示す定着装置300と同じ構成である。
【0107】
(本発明のその他の特徴)
以上本発明について説明したが、本発明の特徴は特許請求の範囲に記載するほか以下の特徴1~6のように記述することもできる。
[特徴1]
温度検知部材が配設された複数のヒートブロックに対して、ヒータ基材の短手方向における同じ位置で抵抗調整部が形成されているヒータ部材。
[特徴2]
温度検知部材が配設された複数のヒートブロックに対して、発熱密度が同じ位置に抵抗調整部が形成されているヒータ部材。
[特徴3]
温度検知部材が配設された複数のヒートブロックにおいて、温度検知部材の用紙搬送方向上流側に抵抗調整部が形成されているヒータ部材。
[特徴4]
温度検知部材が配設された複数のヒートブロックにおいて、温度検知部材の用紙搬送方向下流側に抵抗調整部が形成されているヒータ部材。
[特徴5]
温度検知部材が配設された複数のヒートブロックにおいて、温度検知部材の用紙搬送方向上流側と下流側に抵抗調整部が形成されているヒータ部材。
[特徴6]
温度検知部材が配設された複数のヒートブロックにおいて、ヒータ基材の短手方向等間隔に分散して抵抗調整部が形成されているヒータ部材。
【0108】
以上、種々の定着装置の構成について説明したが、本発明に係るヒータ部材で使用する温度検知部材は接触式サーミスタに限定されるものではなく、他の温度センサを使用してもよい。またヒータ部材は薄肉定着ベルトを直接加熱する型式の定着装置の他、ヒータ部材を内周に配設したヒートローラ型式の定着装置にも適用可能である。また本発明に係るヒータ部材は、定着装置にのみ適用されるものではない。例えば、本発明に係るヒータ部材は、用紙に塗布されたインクを乾燥させるために、インクジェット方式の画像形成装置に搭載される乾燥装置や、インクジェットプリントヘッドのヒータにも適用可能である。
【0109】
また、前記実施形態では中央のヒートブロックの長手方向長さL1の方を両端ヒートブロックの長手方向長さL2よりも長く設定したが(L2<L1)、ヒートブロックの数や長さを変更することでこの大小関係を反対にすることも可能であり(L2>L1)、その場合は両端ヒートブロックの方に抵抗調整部を形成する。そして両端ヒートブロックの抵抗調整部と重ならないように温度検知部材を配設する。
【0110】
さらに、本発明に係るヒータ部材は、ベルト部材によって用紙などのシートを搬送しながら、そのシートの表面に被覆部材としてのフィルムを熱圧着する被覆装置(ラミネータ)にも適用可能である。また、本発明に係るヒータ部材は、ベルト部材を加熱するベルト加熱装置に限らず、ベルト部材を備えていない加熱装置にも適用可能である。また前記ヒータ部材の抵抗パターンは、蛇行状の他に櫛歯状、渦巻状等の任意の形状で形成可能である。
【符号の説明】
【0111】
1Y,1M,1C,1Bk:作像ユニット 2:感光体(像担持体)
3:帯電装置 4:現像装置
4:中央側 4a:現像剤担持体
5:クリーニング装置 5:ドラムクリーニング装置
5a:クリーニングブレード 6:露光装置
6a:ミラー 7:給紙装置
7a:ミラー 8:転写装置
10:排紙装置 11:中間転写ベルト
12:一次転写ローラ 13:二次転写ローラ
14:用紙搬送路 15:タイミングローラ
50:用紙給送装置 60:給紙ローラ
100:画像形成装置 103:画像形成装置本体
250:レジストローラ対 300:定着装置
310:定着ベルト 320:加圧ローラ
321:鉄製芯金 321:芯金
322:弾性層 323:離型層
330:ヒータ部材 330a:基材層
330b:第1絶縁層 330c:発熱部
330d:導体層 330e:第2絶縁層
330f:第3絶縁層 331a~331d:中央側ヒートブロック
332:両端側ヒートブロック 333~335:電極部
336、339、340、341:導電線 337b:両端側ヒートブロック
338:抵抗調整部 338a~338e:抵抗調整部
339a、339b:電極部 350:ステー
351~355:給電線 360:ヒータ基材
370:押圧ローラ 380:ニップ形成部材
381:ステー 390:加圧ベルト
Lb:レーザ光 N:転写ニップ
N:ニップ部 N1:加熱ニップ(第1ニップ部)
N2:定着ニップ(第2ニップ部) P:用紙
PW:電源 S1、S2:サーモスタット
SW、SW1、SW2:スイッチ TH1~TH6:サーミスタ
TM:転写手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】