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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20240702BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20240702BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240702BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240702BHJP
【FI】
B28B1/30
B29C64/165
B33Y10/00
B33Y70/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020130063
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026529
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鴨田 紀一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 浩輔
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-144870(JP,A)
【文献】特開2018-204105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272561(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30-1/34,
B29C 64/00-64/40,
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともセラミックス材料を含有する一次粒子を用いて立体造形物を造形する方法であって、
前記一次粒子と結着樹脂を含む二次粒子で層を形成する形成工程と、
前記結着樹脂を溶解させる液体を前記形成工程で形成した層に付与する付与工程と、を含み、
前記一次粒子の中心粒径が5μm以下であり、
前記二次粒子は、前記結着樹脂を40質量%以下含み、
前記液体は無機粒子を含有し、
前記無機粒子は、中心粒径が0.05μm以上1μm以下であり、
前記無機粒子は、前記液体中に15質量%以上含有しており、
前記無機粒子は、アルミナ、窒化ケイ素、ムライト、ジルコニア、炭化ケイ素、タングステンカーバイド、および窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項2】
前記一次粒子の中心粒径が0.01μm以上1μm以下である、請求項1に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項3】
前記二次粒子の中心粒径が50μm以下である、請求項1から2のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
【請求項4】
前記付与工程は、前記液体をインクジェット法により付与する、請求項1からのいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
【請求項5】
前記液体を揮発させる揮発工程をさらに含む、請求項1からのいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
【請求項6】
前記液体が酢酸エチルである、請求項1からのいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
【請求項7】
前記結着樹脂がポリビニルブチラールである、請求項1からのいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、複雑で微細な立体造形物を造形するための樹脂粉末として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。しかし、この特許文献1に記載の樹脂粉末を用いて造形しても、高精度かつ高密度なセラミックス焼結体を取得することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高精度かつ高密度なセラミックス焼結体を取得可能な立体造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための手段としての本発明の立体造形物の製造方法は、少なくともセラミックス材料を含有する一次粒子を用いて立体造形物を造形する方法であって、前記一次粒子と結着樹脂を含む二次粒子で層を形成する形成工程と、前記結着樹脂を溶解させる液体を前記形成工程で形成した層に付与する付与工程と、を含み、前記一次粒子の中心粒径が5μm以下であり、前記二次粒子は、前記結着樹脂を40質量%以下含み、前記液体は無機粒子を含有し、前記無機粒子は、中心粒径が0.05μm以上1μm以下であり、前記無機粒子は、前記液体中に15質量%以上含有しており、前記無機粒子は、アルミナ、窒化ケイ素、ムライト、ジルコニア、炭化ケイ素、タングステンカーバイド、および窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種を含む。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、高精度かつ高密度なセラミックス焼結体を取得可能な立体造形物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、立体造形物の製造方法の一例を示す概念図である。
図2図2は、立体造形物の製造方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3図3は、立体造形物の製造装置の一例を示す機能ブロック図である。
図4A図4Aは、立体造形物の製造方法の一例を説明するための概略図である(その1)。
図4B図4Bは、立体造形物の製造方法の一例を説明するための概略図である(その2)。
図4C図4Cは、立体造形物の製造方法の一例を説明するための概略図である(その3)。
図4D図4Dは、立体造形物の製造方法の一例を説明するための概略図である(その4)。
図4E図4Eは、立体造形物の製造方法の一例を説明するための概略図である(その5)。
図4F図4Fは、立体造形物の製造方法の一例を説明するための概略図である(その6)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(立体造形物の製造方法および立体造形物の製造装置)
本発明の立体造形物の製造方法は、少なくともセラミックス材料を含有する一次粒子を用いて立体造形物を造形する方法であって、前記一次粒子と結着樹脂を含む二次粒子で層を形成する形成工程と、前記結着樹脂を溶解させる液体を前記形成工程で形成した層に付与する付与工程と、を含み、前記一次粒子の中心粒径が5μm以下であり、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
【0008】
本発明の立体造形物の製造装置は、少なくともセラミックス材料を含有する一次粒子を用いて立体造形物を造形する装置であって、前記一次粒子と結着樹脂を含む二次粒子で層を形成する形成手段と、前記結着樹脂を溶解させる液体を前記形成手段によって形成した層に付与する付与手段と、を有し、前記一次粒子の中心粒径が5μm以下であり、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
【0009】
本発明の立体造形物の製造方法は、本発明の立体造形物の製造装置により好適に実施することができ、形成工程は形成手段により行うことができ、付与工程は付与手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
【0010】
本発明によると、結着樹脂を用いてナノオーダーの小粒径のセラミックス一次粒子を造粒し、二次粒子とし、この二次粒子を用いて粉体層を形成し、この粉体層表面に結着樹脂を溶解させる液体を付与して、二次粒子を一次粒子に戻し、緻密化を促進することにより、高密度なグリーン体を作製することができる。その結果、グリーン体の内部欠陥の発生を抑え、高強度な焼結体を取得できると共に、脱脂や焼結などの熱処理工程での割れや変形を抑制できるため、形状精度の高いセラミックス焼結体を取得することが可能となる。
また、本発明によると、数センチメートル級の厚さを有する形状であっても、変形や割れなどを発生することなく、高密度なセラミックス焼結体を取得することが可能である。
【0011】
ここで、本発明における用語の定義として、以下を用いる。
本発明においては、「立体造形」とは、脱脂工程前のグリーン体を製作するまでの工程を言う。「グリーン体」とは、本発明において、形成工程および付与工程を繰り返すことで形成される、セラミックスと結着樹脂と溶剤から構成される物体のことを示している。「立体造形物」とは、本発明において、主として全工程が終了した部材のことを示しているため、脱脂および焼結が完了している状態を示している。
【0012】
本発明の立体造形物の製造方法は、形成工程と、付与工程とを含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。形成工程および付与工程を所定回数繰り返すことによって、均質かつ高精度なグリーン体を取得することが可能となる。
本発明の立体造形物の製造装置は、形成手段と、付与手段とを有し、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
【0013】
<形成工程および形成手段>
形成工程は、一次粒子と結着樹脂を含む二次粒子で層を形成する工程であり、形成手段により実施される。形成工程は、一次粒子と結着樹脂を少なくとも含む二次粒子を用いて行われ、粉末層を形成する工程であり、「粉末層形成工程」と称することもある。
【0014】
-一次粒子-
本発明における一次粒子の主成分は、セラミックスである。セラミックスとは、無機物を加熱処理し焼き固めた焼結体を意味する。
ここで、主成分とは、一次粒子においてセラミックスを50質量%超含むことを意味し、一次粒子におけるセラミックスの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
セラミックスの原材料としては、例えば、ガラス、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物などが挙げられる。
【0015】
ガラスとしては、例えば、シリカガラス(石英ガラス)、ソーダ石灰シリカガラスなどが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、ジルコニア、アルミナ、ムライト(アルミノケイ酸塩鉱物)などが挙げられる。
金属炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、タングステンカーバイドなどが挙げられる。
金属窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。
セラミックスは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、高強度を保持する観点から、ジルコニア、アルミナ、ムライト(アルミノケイ酸塩鉱物)、タングステンカーバイド、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムが好ましい。
【0016】
一次粒子の中心粒径は5μm以下であり、1μm以下が好ましく、500nm以下がさらに好ましい。一次粒子の中心粒径の下限値は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましい。
一次粒子の中心粒径が5μm以下であると、内部欠陥の発生が少ない高密度なグリーン体を作製することができる。
一次粒子の中心粒径は、体積基準の粒度分布に基づく、累積50%体積粒子径と同義であり、例えば、レーザー回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA-300)などを用いて測定することができる。
一次粒子を用い、二次粒子を作製することによって、立体造形用粉末を製造する。一次粒子は小粒径であるため、流動性が低く、ハンドリングしにくいため、二次粒子に加工することによってハンドリングしやすくなる。
【0017】
二次粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結着樹脂を一次粒子と公知の方法に従って混合する方法などが挙げられる。
結着樹脂による一次粒子の造粒方法としては、特に制限はなく、公知の造粒方法の中から適宜選択することができ、例えば、転動流動法、スプレードライ法、撹拌造粒法、ディッピング法、ニーダーコート法などが挙げられる。また、これらの造粒方法は、公知の市販の各種コーティング装置、造粒装置などを用いて実施することができる。
【0018】
立体造形に用いる二次粒子は、結着樹脂を含有する。結着樹脂は、例えば、一次粒子同士の結着に用いられる。
【0019】
-結着樹脂-
二次粒子に含有される結着樹脂は、例えば、一次粒子間の結着、液体滴下時に溶解した後に、再度周囲のセラミックス粒子を結着することなどに寄与する。
結着樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル、マレイン酸、シリコーン、ブチラール、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体のエステル化物、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、α-オレフィン/無水マレイン酸/ビニル基含有モノマー共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン又はその誘導体、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン/ブタジエンゴム、ポリビニルブチラール、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレン/プロピレンゴム等の合成ゴム、ニトロセルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
二次粒子の中心粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が特に好ましい。二次粒子の中心粒径の下限値は100nm以上が好ましく、500nm以上がより好ましく、1μm以上が特に好ましい。
二次粒子の中心粒径は、体積基準の粒度分布に基づく、累積50%体積粒子径と同義であり、例えば、レーザー回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA-300)などを用いて測定することができる。
二次粒子における結着樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、立体造形物のひび割れ、欠陥形成、および変形防止の観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下が特に好ましい。また、結着樹脂の含有量の下限値は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。
なお、二次粒子は、焼結処理等の熱処理などは施してはならない。
【0021】
粉末層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第3607300号公報に記載の選択的レーザー焼結方法に用いられる、公知のカウンター回転機構(カウンターローラ)などを用いる方法、粉末をブラシ、ローラ、ブレード等の部材を用いて薄層に拡げる方法、粉末の表面を、押圧部材により押圧して薄層に拡げる方法、公知の粉末積層造形装置を用いる方法などが挙げられる。
【0022】
カウンター回転機構(カウンターローラ)、ブラシ乃至ブレード、押圧部材などを用いて、支持体上に二次粒子による粉末層を形成する場合、例えば、外枠(「型」、「中空シリンダー」、「筒状構造体」などと称することがある)内に、外枠の内壁に摺動しながら昇降可能に配置された支持体上に、二次粒子をカウンター回転機構、ブラシ、ブラシ乃至ブレード、押圧部材などを用いて載置して、粉末層を形成する。このとき、支持体として、外枠内を昇降可能なものを用いる場合には、支持体を外枠の上端開口部よりも少しだけ(粉末による層の厚み分だけ)下方の位置に配し、支持体上に粉末を載置させることが好ましい。
【0023】
また、粉末層を形成するには、公知の粉末積層造形装置を用いて自動的にかつ簡便に行うこともできる。粉末積層造形装置は、一般に、二次粒子を積層するためのリコーターと、二次粒子を支持体上に供給するための可動式供給槽と、二次粒子からなる層を形成して、積層するための可動式成形槽とを備える。この粉末積層造形装置においては、供給槽を上昇させるか、成形槽を下降させるか、又はその両方によって、供給槽の表面を成形槽の表面よりもわずかに上昇させることができる。そのため、この粉末積層造形装置は、供給槽側からリコーターを用いて、二次粒子を層状にして粉末層を形成することができ、リコーターを繰り返し移動させることにより、粉末層を積層させることができる。
【0024】
粉末層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一層当たりの平均厚みは、10μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上100μm以下がより好ましい。
【0025】
<付与工程および付与手段>
付与工程は、結着樹脂を溶解させる液体を形成工程で形成した層に付与する工程であり、付与手段によって実施される。
付与工程では、二次粒子に含まれる結着樹脂を溶解させ二次粒子を一次粒子にすることにより、二次粒子間に形成される空隙を一次粒子が充填する。その結果、液体を付与した領域が結着樹脂により固定化されると共に、二次粒子の形状が崩れることにより液体を付与した領域が均質化され、液体を付与した領域が空隙や未固化領域を少なくすることができる。また、液体を付与した領域の端部は、二次粒子由来の平面方向の凹凸を低減することができ、精度の高い造形が可能になる。
【0026】
付与工程としては、二次粒子が含有する結着樹脂を溶解させる液体を、所定の領域に付与する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
液体を所定の領域に付与する方法としては、例えば、ディスペンサ方式、スプレー方式、インクジェット方式などが挙げられる。
これらの中でも、ディスペンサ方式は、液滴の定量性に優れるが、塗布面積が狭くなる。スプレー方式は、簡便に微細な吐出物を形成でき、塗布面積が広く、塗布性に優れるが、液滴の定量性が悪く、スプレー流による二次粒子の飛散が発生する。
このため、インクジェット方式が特に好ましい。インクジェット方式は、スプレー方式に比べ、液滴の定量性が良く、ディスペンサ方式に比べ、塗布面積が広くできる利点があり、複雑な立体形状を精度良くかつ効率よく形成し得る点で好ましい。
インクジェット法による場合、付与手段は、インクジェット法により液体を所定の領域付与可能なノズルを有する。なお、ノズルとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるノズル(吐出ヘッド)を好適に使用することができ、また、インクジェットプリンターを付与手段として好適に使用することができる。なお、インクジェットプリンターとしては、例えば、株式会社リコー製のSG7100などが好適に挙げられる。インクジェットプリンターは、ヘッド部から一度に滴下できる液体の量が多く、塗布面積が広いため、塗布の高速化を図ることができる点で好ましい。
【0027】
<<液体>>
液体としては、二次粒子の結着樹脂を溶解することができる液体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
液体は、溶媒を含有し、樹脂、無機粒子を含有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
【0028】
-溶媒-
溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、炭素数2以上7以下のアルコール、炭素数3以上8以下のケトン、環状エーテル、ポリエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
炭素数2以上7以下のアルコールとしては、例えば、エチルアルコール、イソプロパノール、n-ブタノールなどが挙げられる。
炭素数3以上8以下のケトンとしては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどが挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
ポリエーテルとしては、例えば、ジメトキシエタノール、ジメトキシジエチレングリコールなどが挙げられる。
【0030】
液体における溶媒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、液体が樹脂を含有する場合、液体における溶媒の含有量としては、60質量%以上95質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下がより好ましい。
液体が樹脂を含有しない場合、液体における溶媒の含有量としては、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下がより好ましい。
液体における水の含有量は、少ない方が好ましい。液体における水の含有量は、45質量%未満が好ましく、5質量%未満が好ましい。
【0031】
-樹脂-
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル、マレイン酸、シリコーン、ブチラール、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体、α-オレフィン/無水マレイン酸共重合体のエステル化物、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、α-オレフィン/無水マレイン酸/ビニル基含有モノマー共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン又はその誘導体、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン/ブタジエンゴム、ポリビニルブチラール、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレン/プロピレンゴム等の合成ゴム、ニトロセルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂としては、親水性の低い有機又は有機金属の高分子化合物であってもよい。
【0032】
液体における樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液体の粘性を所定の範囲に制御する観点から、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0033】
-無機粒子-
液体は、ノズルに詰まることのない中心粒径の無機粒子を含有することが好ましい。液体が無機粒子を含有することによって、液体が、粉末層の所定の領域に付与された際に、無機粒子が、所定の領域における粉末の隙間に配置される。その結果、得られる立体造形物の密度が向上する。
【0034】
無機粒子の材質は、セラミックスの原材料の材質と同じ材質であることが好ましく、ジルコニア、アルミナ、ムライト(アルミノケイ酸塩鉱物)、タングステンカーバイド、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムがより好ましい。
【0035】
無機粒子の中心粒径としては、セラミックスの原材料の中心粒径よりも小さければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm以上0.5μm以下が好ましい。
無機粒子の中心粒径は、体積基準の粒度分布に基づく、累積50%体積粒子径と同義であり、例えば、レーザー回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA-300)などを用いて測定することができる。
無機粒子の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液体の全量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。無機粒子の含有量の上限値は、60質量%以下が好ましく。50質量%以下がより好ましい。
【0036】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0037】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱処理工程などが挙げられる。熱処理工程には、乾燥、脱脂、焼結などが挙げられる。
材料に合わせて熱処理を実施することが可能であるが、造形したグリーン体は、一般に形状に特徴を有するため、その崩壊を防ぐために加圧手段は用いないことが多い。特に、焼結においては、焼結密度向上のために加圧焼結(ホットプレス)を行うことが多いが、本発明においては、それは用いずに、基本的に常圧焼結を前提としている。
本発明では、セラミックスである立体造形物を製造する方法において、立体造形物の原材料を一時的に結着させた後に立体造形物を得ている。この場合、例えば、結着に樹脂を用いた場合でも、結着に用いる樹脂は少量でよいため、焼結後の体積収縮が少ない。その結果、大きな構造部材を造形する際にも、焼結時の割れを防ぐことができるため、例えば構造部材として実用可能な寸法のモデルを造形できる。
【0038】
形成工程と付与工程を繰り返すことで形成されるグリーン体は、粉体中に埋没した状態で立体造形が終了する。
その時点でのグリーン体は、溶媒を多く含有しているため、強度が低くハンドリング性が悪いため、乾燥が必要となる。
乾燥は、形成工程と付与工程の後、赤外線ヒーターなどを用いてレイヤーごとに施すこともできる。
乾燥方法としては、特に制限はなく、公知のいかなる方法も用いることができるが、溶剤の種類に応じて割れや変形の起こらない方法を選択する必要があり、例えば、溶媒としてエタノールを用いた場合であれば50℃で24時間乾燥を施すことが好ましい。
【0039】
脱脂方法としては、特に制限はなく、周知のいかなる方法も用いることができ、例えば、カオリンを一次粒子として用いた場合には、窒素置換環境下、500℃で3時間の熱処理を施すことで好適に脱脂できるが、これに限定されるものではない。
【0040】
焼結方法としては、特に制限はなく、周知の方法をも用いることができるが、本発明の効果を最大化する点から、常圧下での焼結を行うことが好ましい。雰囲気および熱処理温度、熱処理時間は、材料によって調整される必要があり、例えば、アルミナを一次粒子として用いた場合には、アルゴン雰囲気下、1,550℃で3時間の熱処理が好適である。熱処理温度を高めることで、密度を高めることが可能であるが、代わりに粗大粒子が形成することにより強度が低下する、変形が生じるなどのデメリットもあるので、条件の最適化が必要である。
焼結方法としては、例えば、黒鉛型の場合には、例えば、パルス通電加熱等による通電焼結方式を好適に使用できるが、これに限定されるものではない。
【0041】
(立体造形物)
本発明の立体造形物は、本発明の立体造形物の製造方法、又は本発明の立体造形物の製造装置により製造される。
【0042】
立体造形物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネル、各種部品、日用品、試作品などに好適に使用できる。
【0043】
ここで図面を用いて、本発明の立体造形物の製造方法、および立体造形物の製造装置の一例を説明する。
【0044】
図1は、立体造形物の製造に関する概念図である。
図1は、立体造形物の製造装置100と、コンピューター103とが図示されている。立体造形物の製造装置100は、造形部101と、後処理部102とを有する。
立体造形物の製造においては、コンピューター103から造形部101に、立体造形物の3Dデータが送られ、造形部101では、3Dデータに基づいて造形が行われる。その後、後処理部102において、熱処理などの後処理が施されて立体造形物が完成する。
【0045】
立体造形物の製造方法、および立体造形物の製造装置の一例について説明する。
図2は、立体造形物の製造方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図3図4A図4Fを参照して、図2の本発明の立体造形物の製造方法における処理の流れについて説明する。
図3は、立体造形物の製造装置の一例を示す機能ブロック図である。
図3の立体造形物の製造装置100は、造形部101と、後処理部102とを有する。造形部101は、形成手段1と付与手段2とを有する。後処理部102は、熱処理手段3を有する。
図4A図4Fは、立体造形物の製造方法の一例を説明するための概略図である。
【0046】
ステップS1では、使用者が、立体造形物の製造装置100に対して、繰返回数を入力すると、処理をS2に移行する。
【0047】
ステップS2では、使用者が、立体造形物の製造装置100に対して、k=0を入力すると、処理をS3に移行する。
【0048】
ステップS3では、立体造形物の製造装置100が、形成工程を行うと、処理をS4に移行する。
形成工程を行う前に、セラミックス材料を含有する一次粒子と結着樹脂とを用い二次粒子を造粒する(図4A参照)。
形成工程においては、セラミックス材料を含有する一次粒子と結着樹脂を含む二次粒子で粉末層を形成する。形成工程は、例えば、形成手段を用いて行うことができる。
形成手段としては、例えば、図4Bに示すように、二次粒子51を貯留する供給側粉末貯留槽52と、粉末層を形成するための造形側粉末貯留槽54と、均し機構55とを有する。供給側粉末貯留槽52は、昇降可能なステージ50を有する。造形側粉末貯留槽54は、昇降可能なステージ53を有する。均し機構55としてのローラが、供給側粉末貯留槽52から造形側粉末貯留槽54に移動することで、供給側粉末貯留槽52内の二次粒子51が、造形側粉末貯留槽54に移動し、ステージ53上に二次粒子51からなる粉末層56が形成される(図4C参照)。
【0049】
ステップS4では、立体造形物の製造装置100が、付与工程を行うと、処理をS5に移行する。
付与工程では、結着樹脂を溶解させる液体を形成工程で形成した粉末層に付与し、二次粒子に含まれる結着樹脂を溶解させ二次粒子を一次粒子にする。付与工程は、例えば、付与手段を用いて行う。付与手段としては、例えば、図4Dに示すように、インクジェットヘッド57である。インクジェットヘッド57を用いて、粉末層56の所定の領域に結着樹脂を溶解させる液体58を付与する。すると、図4Eに示すように、二次粒子に含まれる結着樹脂を溶解させ二次粒子を一次粒子にすることにより、二次粒子間に形成される空隙を一次粒子が充填する。その結果、液体を付与した領域が結着樹脂により固定化されると共に、二次粒子の形状が崩れることにより液体を付与した領域が均質化され、液体を付与した領域が空隙や未固化領域を少なくすることができる。
【0050】
ステップS5では、k+1=kとすると、処理をS6に移行する。
【0051】
ステップS6では、kが繰返回数よりも小さいと処理をS3に移行し、kが繰返回数以上となると、処理をS7に移行する。
形成工程、および付与工程を、所望の積層数になるまで繰り返す。そうすることで、ステージ53上に、積層構造が得られる。これを乾燥することによって、図4Fに示すようなグリーン体59が得られる。
【0052】
ステップS7では、立体造形物の製造装置100が、熱処理工程を行うと、本処理を完了する。熱処理工程では、乾燥したグリーン体を加熱する。熱処理工程は、例えば、熱処理手段3を用いて行う。熱処理手段3としては、例えば、加熱装置などが挙げられる。熱処理工程では、例えば、樹脂の分解除去と、グリーン体の焼結とを一括して行うことができる。
以上により、セラミックスの原材料が焼結した焼結体が得られる。
【実施例
【0053】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1~14)
図2に示すフローチャート、および図4A図4Fに示す立体造形物の製造方法に従って、立体造形物を製造した。
【0055】
粉末としては、下記の表1に示す材料を用い、以下のようにして調製したものを用いた。
<一次粒子および二次粒子の調製>
まず、表1に示す、所定の中心粒径の原料粒子(一次粒子;カオリン、酸化チタン、又はアルミナの微粒子)と、結着樹脂(ポリビニルブチラール(PVB))を共に溶媒(エタノール)中で混合して十分に分散させ、スラリーを調製した。
次に、得られたスラリーを、噴霧造粒機および乾燥焼結炉等を用いて液滴状に造粒し、乾燥させた。そして、必要に応じて分級することで、表1に示す中心粒径の二次粒子とした。
次に、二次粒子に対して焼結を行った。二次粒子は、微細な一次粒子が互いに結合して間隙を持った三次元的構造を有しており、略球形状の二次粒子を構成している。なお、これらのサンプルにおける一次粒子の大きさは、原料粒子の中心粒径等に対応して様々に異なっている。
なお、一次粒子および二次粒子の中心粒径は、以下のようにして、測定した。結果を表1に示した。
【0056】
-一次粒子および二次粒子の中心粒径の測定-
一次粒子および二次粒子の中心粒径は、それぞれの粒子をレーザー回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作所製、LA-300)を用いて測定した、体積基準の粒度分布に基づく累積50%粒子径(D50)である。
【0057】
<結着樹脂を溶解させる液体>
主溶媒として酢酸エチルを用い、分散剤としてサンノプコ社製のSNディスパーサント 5468を用い、必要に応じて表2に示す無機粒子を添加し、これらを24時間撹拌したものを用いた。
【0058】
<造形>
造形は、バインダージェット造形装置(Desktopmetal社製)を用い、一部溶剤対応を施した簡易試作機を用いて行った。
積層間隔は100μmとした。造形モデルは、10mm×10mm×10mmの立方体とした。所望の領域に結着樹脂を溶解させる液体を付与した。なお、液体の付与量は、600dpiとした。
【0059】
<脱脂および焼結>
脱脂および焼結は電気炉を用い、5℃/分間で1,100℃~1,500℃の各所定温度まで昇温し、それぞれ2時間保持し、炉冷する条件で行った。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1および表2中の各材料の詳細については、以下のとおりである。
【0063】
-一次粒子-
*カオリン1:林化成株式会社製 HYDRITE r、中心粒径(D50)=5μm
*カオリン2:林化成株式会社製 Hydrite SB 100、中心粒径(D50)=1μm
*カオリン3:林化成株式会社製 Eckalite 1、中心粒径(D50)=500nm
*酸化チタン1:石原産業株式会社製 ST-01、中心粒径(D50)=10nm
*酸化チタン2:石原産業株式会社製 STシリーズ特注品、中心粒径(D50)=50nm
*アルミナ1:住友化学株式会社製 AAシリーズ、中心粒径(D50)=5μm
*アルミナ2:住友化学株式会社製 AAシリーズ、中心粒径(D50)=500nm
【0064】
-結着樹脂-
*PVB(ポリビニルブチラール、積水化学工業株式会社製、エスレックB)
*アクリル樹脂(大成ファインケミカル株式会社製、アクリルポリオール)
【0065】
-無機粒子-
*ムライト1:共立マテリアル株式会社製 KMシリーズ特注品、中心粒径(D50)=1μm
*ムライト2:共立マテリアル株式会社製 KMシリーズ特注品、中心粒径(D50)=500nm
*アルミナA:住友化学株式会社製 AKPシリーズ、中心粒径(D50)=1μm
*アルミナB:住友化学株式会社製 AKPシリーズ、中心粒径(D50)=50nm
【0066】
(比較例1~6)
表3に示すように、市販されているセラミックス材料(アルミナ又はカオリン)に、結着樹脂としてポリビニルアルコール(PVA)を添加した液体(純水)を繰り返し塗布することで造形する、一般的なバインダージェット方式を用いて造形を行った。
結着樹脂としてポリビニルアルコール(PVA)を添加した液体(純水)には、必要に応じて表3に示すように無機粒子を添加した。
なお、比較例1~6は、セラミックス材料として市販品を使用したので二次粒子は形成されていない(一次粒子)。
【0067】
【表3】
【0068】
表3中の各材料の詳細については、以下の通りである。
【0069】
-粉末(一次粒子)-
*アルミナ1:住友化学株式会社製 AAシリーズ、中心粒径(D50)=5μm
*アルミナ3:住友化学株式会社製 AAシリーズ、中心粒径(D50)=50μm
*アルミナ4:住友化学株式会社製 AAシリーズ、中心粒径(D50)=20μm
*アルミナ5:住友化学株式会社製 AAシリーズ、中心粒径(D50)=1μm
*カオリン4:林化成株式会社製 Hydrite SB 100Sを自社にて造粒したもの、中心粒径(D50)=20μm
【0070】
-結着樹脂-
*PVA:積水化学工業株式会社製 セルボール
【0071】
-無機粒子-
*アルミナB:住友化学株式会社製 AKPシリーズ、中心粒径(D50)=50nm
【0072】
次に、得られた各立体造形物について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表4に示した。
【0073】
<脱脂および焼結後の立体造形物の状態評価>
脱脂および焼結工程において、得られた各立体造形物に異常変形や割れ等が生じないか否かを観察し、下記の基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:ゆがみなどの異常変形がない
△:目視では分かりにくいが、測長などの計測によりゆがみ等の変形が生じている
×:目視で明確な変形、割れが発生している。
【0074】
<算術平均表面粗さRa>
得られた各立体造形物の精度を評価する指標として、立体造形物の表面粗さを測定した。表面粗さは、それぞれの立体造形物の表面に対して、JIS B0601:2001に準拠して算術平均表面粗さRaを求め、下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎:算術平均表面粗さRaが30μm以下
〇:算術平均表面粗さRaが30μmより大きく80μm以下
△:算術平均表面粗さRaが80μmより大きく100μm以下
×:算術平均表面粗さRaが100μmより大きい
【0075】
<気孔率>
得られた各立体造形物の仕上がりを評価する指標として、立体造形物の気孔率を測定した。気孔率の測定には、天秤を利用したアルキメデス法を用いた。具体的には、固体の重量を大気中で測定(A)した後、置換液(水)の中で重量を測定(B)し、次式、[(B)-(A)]/(A)×100、から気孔率を算出し、以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:気孔率が1%以下
〇:気孔率が1%より大きく10%以下
△:気孔率が10%より大きく20%以下
×:気孔率が20%より大きい
【0076】
【表4】
*表4中の比較例6の算術平均表面粗さ「-」、気孔率「-」は、測定不能であることを示す。
【0077】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 少なくともセラミックス材料を含有する一次粒子を用いて立体造形物を造形する方法であって、
前記一次粒子と結着樹脂を含む二次粒子で層を形成する形成工程と、
前記結着樹脂を溶解させる液体を前記形成工程で形成した層に付与する付与工程と、を含み、
前記一次粒子の中心粒径が5μm以下であることを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<2> 前記一次粒子の中心粒径が0.01μm以上1μm以下である、前記<1>に記載の立体造形物の製造方法である。
<3> 前記液体は無機粒子を含有する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<4> 前記無機粒子は、中心粒径が0.05μm以上0.5μm以下である、前記<3>に記載の立体造形物の製造方法である。
<5> 前記無機粒子は、前記液体中に20質量%以上含有している、前記<3>から<4>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<6> 前記一次粒子又は前記無機粒子は、アルミナ、窒化ケイ素、ムライト、ジルコニア、炭化ケイ素、タングステンカーバイド、および窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種を含む、前記<3>から<5>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<7> 前記二次粒子の中心粒径が50μm以下である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<8> 前記二次粒子は、前記結着樹脂を40質量%以下含む、前記<7>に記載の立体造形物の製造方法である。
<9> 前記付与工程は、前記液体をインクジェット法により付与する、前記<1>から<8>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<10> 前記液体を揮発させる揮発工程をさらに含む、前記<1>から<9>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<11> 少なくともセラミックス材料を含有する一次粒子を用いて立体造形物を造形する装置であって、
前記一次粒子と結着樹脂を含む二次粒子で層を形成する形成手段と、
前記結着樹脂を溶解させる液体を前記形成手段によって形成した層に付与する付与手段と、
を有し、
前記一次粒子の中心粒径が5μm以下であることを特徴とする立体造形物の製造装置である。
<12> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法、および前記<11>に記載の立体造形物の製造装置のいずれかにより得られることを特徴とする立体造形物である。
【0078】
前記<1>から<10>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法、前記<11>に記載の立体造形物の製造装置、および前記<12>に記載の立体造形物によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0079】
51 二次粒子
52 供給側粉末貯留槽
53 ステージ
54 造形側粉末貯留槽
55 均し機構(ローラ)
56 粉末層
57 インクジェットヘッド
58 結着樹脂を溶解させる液体
59 グリーン体
100 立体造形物の製造装置
101 造形部
102 後処理部
103 コンピューター
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【文献】特許第6520182号公報
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F