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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】基板接合装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020138588
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034744
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇志
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-228449(JP,A)
【文献】特開2006-080314(JP,A)
【文献】特開2015-211130(JP,A)
【文献】特開2008-062267(JP,A)
【文献】特開2011-091230(JP,A)
【文献】特開2018-014372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップ半導体基板とハンドル基板とを接合して接合基板を製造するための基板接合装置であって、
内部において、前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板とを接合する接合室と、
前記接合室の内部に設けられ、前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板のいずれか一方を保持する第1ホルダと、前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板のいずれか他方を保持する第2ホルダと、を有する基板ホルダと、
前記基板ホルダに保持された前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板の少なくとも一方の接合面に紫外線を照射する紫外線照射装置と、
前記接合室内を真空にする真空装置と、を備え
前記紫外線照射装置は、紫外線ランプを備える第1照射装置と、紫外線ランプを備える第2照射装置を有し、対向して配された前記バンドギャップ半導体基板の接合面と前記ハンドル基板の接合面との間に前記紫外線照射装置が配され、前記バンドギャップ半導体基板、前記第1照射装置、前記第2照射装置、前記ハンドル基板が、直線状に並んで位置した状態で紫外線を照射する装置である、基板接合装置。
【請求項2】
前記基板ホルダに保持された前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板とを加熱するためのヒータをさらに備える、請求項1に記載の基板接合装置。
【請求項3】
前記基板ホルダが、前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板とを静電吸着する吸着機構を有する、請求項1または2に記載の基板接合装置。
【請求項4】
前記基板ホルダにおいて、前記第1ホルダの保持面と、前記第2ホルダの保持面とが互いに対向しており、
前記紫外線照射装置を、前記第1ホルダの保持面と、前記第2ホルダの保持面との間に配置する、基板ホルダ駆動手段と紫外線照射装置駆動手段の少なくとも一方をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板接合装置。
【請求項5】
前記真空装置が、前記第1ホルダと前記第2ホルダとのそれぞれの近傍に設けられたターボ分子ポンプを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板接合装置。
【請求項6】
前記紫外線照射装置が、波長170nm~260nmの紫外線を照射する照射源を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板接合装置。
【請求項7】
前記バンドギャップ半導体基板が単結晶基板であり、前記ハンドル基板が多結晶基板である、請求項1~6のいずれか1項に記載の基板接合装置。
【請求項8】
前記バンドギャップ半導体基板および前記ハンドル基板が、いずれも、炭化ケイ素基板である、請求項1~7のいずれか1項に記載の基板接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素は、ケイ素と炭素で構成される、化合物半導体材料である。炭化ケイ素は、絶縁破壊電界強度がケイ素の10倍で、バンドギャップがケイ素の3倍であり、半導体材料として優れている。さらに、デバイスの作製に必要なp型、n型の制御が広い範囲で可能であることなどから、ケイ素の限界を超えるパワーデバイス用材料として期待されている。
【0003】
また、炭化ケイ素は、より薄い厚さでも高い耐電圧が得られるため、薄く構成することにより、ON抵抗が小さく、低損失の半導体が得られることが特徴である。
【0004】
しかしながら、炭化ケイ素半導体は、従来広く普及しているケイ素半導体と比較して、大面積の炭化ケイ素単結晶基板を得ることが難しく、製造工程も複雑である。これらの理由から、炭化ケイ素半導体は、ケイ素半導体と比較して大量生産が難しく、高価であった。
【0005】
これまでにも、炭化ケイ素半導体のコストを下げるために、様々な工夫が行われてきた。例えば、特許文献1には、炭化ケイ素基板の製造方法であって、少なくとも、マイクロパイプの密度が30個/cm以下の炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板を準備し、前記炭化ケイ素単結晶基板と前記炭化ケイ素多結晶基板とを貼り合わせる(接合する)工程を行い、その後、単結晶基板を薄膜化する工程を行い、多結晶基板上に単結晶層を形成した基板を製造することが記載されている。
【0006】
更に、特許文献1には、単結晶基板と多結晶基板とを貼り合わせる工程の前に、単結晶基板に水素イオン注入を行って水素イオン注入層を形成する工程を行い、単結晶基板と多結晶基板とを貼り合わせる工程の後、単結晶基板を薄膜化する工程の前に、350℃以下の温度で熱処理を行い、単結晶基板を薄膜化する工程を、水素イオン注入層にて機械的に剥離する工程とする炭化ケイ素基板の製造方法が記載されている。
【0007】
このような方法により、1つの炭化ケイ素単結晶インゴットからより多くの炭化ケイ素貼り合わせ基板が得られるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-117533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された炭化ケイ素ウェハの製造方法は、水素イオン注入を行って薄いイオン注入層の形成された炭化ケイ素単結晶基板と、炭化ケイ素多結晶基板と、を貼り合わせたのちに加熱して剥離することによって製造されている。
【0010】
炭化ケイ素単結晶基板等のバンドギャップ半導体基板と炭化ケイ素多結晶基板等のハンドル基板との貼り合わせでは、常温接合と呼ばれる方法によって、基板を接合させている。一般的には、まず、高真空雰囲気下で、アルゴン(Ar)イオンや、中性のアルゴン粒子をそれぞれの基板の接合面に照射することにより、基板の接合面にある酸素、水素、ヒドロキシル基(OH基)等の界面終端成分を除去して、表面を活性化させる。その後、活性化された接合面同士を接触させることで、それぞれの基板を接合させる方法である。
【0011】
従来、前述のように、表面活性化処理には、アルゴンイオンや、中性のアルゴン粒子を照射することで実施していた。しかしながら、これらの粒子の照射では、質量を有する粒子が基板の表面にアタックするため、原理的にスパッタリング現象が起きる。このため照射の際には、(1)スパッタではじかれた基板や真空チャンバーから飛び出した粒子が凝集してパーティクルとなること、また、基板や真空チャンバーから飛び出した粒子がチャンバーの壁面に付着したのち剥離してパーティクルとなることによるパーティクルの発生、(2)真空チャンバー内の物質の金属コンタミ(コンタミネーション)の発生の2つの問題が起こりうる。
【0012】
さらに、発生したパーティクルが接合面に挟み込まれることにより、貼り合わせ後の接合面において空隙(ボイド)が発生することがある。また、スパッタリング現象により基板や真空チャンバーより飛び出した粒子によるコンタミは、貼り合わせた基板の不純物として不良原因となりうることが確認されている。このことから、これらの問題を抑制することが、大きな課題となっていた。
【0013】
よって、本発明は、バンドギャップ半導体基板とハンドル基板とを接合する接合基板の製造装置において、ボイドおよびコンタミを低減することができる基板接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の基板接合装置は、バンドギャップ半導体基板とハンドル基板とを接合して接合基板を製造するための基板接合装置であって、内部において、前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板とを接合する接合室と、前記接合室の内部に設けられ、前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板のいずれか一方を保持する第1ホルダと、前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板のいずれか他方を保持する第2ホルダと、を有する基板ホルダと、前記基板ホルダに保持された前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板の少なくとも一方の接合面に紫外線を照射する紫外線照射装置と、前記接合室内を真空にする真空装置と、を備える。
【0015】
本発明の基板接合装置は、前記基板ホルダに保持された前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板とを加熱するためのヒータをさらに備えてもよい。
【0016】
本発明の基板接合装置は、前記基板ホルダが、前記バンドギャップ半導体基板と前記ハンドル基板とを静電吸着する吸着機構を有してもよい。
【0017】
本発明の基板接合装置は、前記基板ホルダにおいて、前記第1ホルダの保持面と、前記第2ホルダの保持面とが互いに対向しており、前記紫外線照射装置を、前記第1ホルダの保持面と、前記第2ホルダの保持面との間に配置する、基板ホルダ駆動手段と紫外線照射装置駆動手段の少なくとも一方をさらに備えてもよい。
【0018】
本発明の基板接合装置は、前記真空装置が、前記第1ホルダと前記第2ホルダとのそれぞれの近傍に設けられたターボ分子ポンプを有してもよい。
【0019】
本発明の基板接合装置は、前記紫外線照射装置が、波長170nm~260nmの紫外線を照射する照射源を有してもよい。
【0020】
本発明の基板接合装置は、前記バンドギャップ半導体基板が単結晶基板であり、前記ハンドル基板が多結晶基板であってもよい。
【0021】
本発明の基板接合装置は、前記バンドギャップ半導体基板および前記ハンドル基板が、いずれも、炭化ケイ素基板であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の基板接合装置であれば、バンドギャップ半導体基板とハンドル基板とを接合する接合基板を製造した場合において、接合基板におけるボイドおよびコンタミを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態にかかる基板接合装置の接合室内を模式的に示す側面図である。
図2図1に示した基板接合装置の接合室内を模式的に示す平面図である。
図3図1に示した基板接合装置において、基板ホルダに基板が保持された状態を模式的に示す側面図である。
図4図1に示した基板接合装置において、基板ホルダに保持された基板に紫外線を照射するときの状態を模式的に示す側面図である。
図5図1に示した基板接合装置において、基板ホルダに保持された基板を接合するときの状態を模式的に示す側面図である。
図6図1に示した基板接合装置において、基板が接合されたあとの状態を模式的に示す側面図である。
図7図1に示した基板接合装置において、接合基板を搬送するときの状態を模式的に示す側面図である。
図8図1に示した基板接合装置の変形例を模式的に示す側面図である。
図9図9(A)はボイドが発生した接合基板を模式的に示す平面図であり、図9(B)は接合基板をチップ状に切断して評価する方法を模式的に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[基板接合装置]
本発明の一実施形態にかかる基板接合装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態の基板接合装置は、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを積層することにより、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとが積層した接合基板Wを得る、接合基板Wの製造に適用することができる。
【0026】
また、本実施形態の基板接合装置を用いた接合基板Wの製造には、バンドギャップ半導体基板Sとして単結晶基板を用いて、ハンドル基板Pとして多結晶基板を用いることができる。また、バンドギャップ半導体基板Sおよびハンドル基板Pが、いずれも、炭化ケイ素(SiC)基板、シリコン(Si)基板、および、窒化ガリウム(GaN)基板のいずれかである、接合基板Wを製造する場合に、好適に適用することができる。
【0027】
具体的には、例えば、接合基板Wとして炭化ケイ素基板を得る場合には、バンドギャップ半導体基板Sとして炭化ケイ素単結晶基板を用いて、ハンドル基板Pとして炭化ケイ素多結晶基板を用いることができる。
【0028】
バンドギャップ半導体基板Sとして用いる炭化ケイ素単結晶基板は、例えば、昇華法により作成した炭化ケイ素のバルク単結晶から加工して得た、4H-SiC単結晶基板や、化学的気相蒸着法により単結晶ウェハにエピタキシャル成長させて得た4H-SiC単結晶基板を用いることができる。なお、バンドギャップ半導体基板Sとして用いる炭化ケイ素単結晶基板は、窒素やアルミニウム等のドーパントを含んでいてもよい。
【0029】
また、ハンドル基板Pとして用いる炭化ケイ素多結晶基板は、例えば、化学的気相蒸着法により炭化ケイ素多結晶を成膜して得た3C-SiC多結晶基板を用いることができる。
【0030】
バンドギャップ半導体基板S、ハンドル基板Pの形状としては、例えば円形の平行平板状とすることができる。また、バンドギャップ半導体基板S、ハンドル基板Pの厚さは、特に限定されず、例えば、それぞれ200μm~500μm程度とすることができる。
【0031】
本実施形態の基板接合装置100は、接合室10と、基板ホルダ20と、ヒータ30と、搬送ロボット40と、紫外線照射装置50と、吸着機構60と、真空装置70と、加圧手段(不図示)と、を備える。図1に示すように、基板ホルダ20、ヒータ30、搬送ロボット40、紫外線照射装置50、吸着機構60、真空装置70、加圧手段は接合室10内に設けられている。また、基板接合装置100の接合室10内の各装置は、ステンレスを用いて形成されている。なお、本実施形態において図1の矢印A方向は上下方向であり、基板接合装置100においてバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとは上下に対向して保持されるが、矢印A方向は上下に限定されない。例えば、矢印A方向が水平方向(左右方向)であってもよい。
【0032】
図1図3図7は、基板接合装置100の接合室内を模式的に示す側面図であり、図2は、上方向から見た基板接合装置100の接合室内を模式的に示す平面図である。また、図3図6において、第1搬送台41、第2搬送台43、第1アーム42の一部、および、第2アーム44の一部、真空装置70の図示は省略されている。
【0033】
接合室10は、その内部において、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを接合する場である。
【0034】
基板ホルダ20は、接合室10の内部に設けられ、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを保持するものである。基板ホルダ20は、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pのいずれか一方を保持する第1ホルダ21と、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pのいずれか他方を保持する第2ホルダ22と、を有する。バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとのどちらを第1ホルダ21に保持するかは特に限定されないが、バンドギャップ半導体基板Sに対して塵等の付着が抑制されることがより求められることから、以下の説明においては、第1ホルダ21にバンドギャップ半導体基板Sを保持させるものとして説明する。
【0035】
第1ホルダ21は、バンドギャップ半導体基板Sを保持する第1保持部211と、第1保持部211を図1の矢印Aに沿って移動させる移動手段である第1アーム212と、を有する。第2ホルダ22は、第2保持部221を有する。
【0036】
また、第1保持部211と、第2保持部221の内部には、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを保持するための吸着機構60と、保持されたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを加熱するヒータ30と、が設けられている。
【0037】
また、第1保持部211と第2保持部221とは、第1保持部211の保持面211aと第2保持部221の保持面221aとが互いに対向するように設けられている。これにより、基板ホルダ20は、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1が互いに対向するように保持することができる。
【0038】
ヒータ30は、基板ホルダ20に保持されたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを加熱するものである。ヒータ30は、基板ホルダ20の第1保持部211に設けられた第1ヒータ31と、第2保持部221に設けられた第2ヒータ32と、を有する。ヒータ30が設けられていることにより、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを接合する工程においてバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを加熱して、接合強度を高めることができる。
【0039】
搬送ロボット40は、接合室10内において、バンドギャップ半導体基板S、ハンドル基板P、接合基板Wを搬送するものである。
【0040】
搬送ロボット40は、バンドギャップ半導体基板Sを保持して搬送する第1搬送台41と、第1搬送台41を移動させる第1アーム42と、ハンドル基板Pを保持して搬送する第2搬送台43と、第2搬送台43を移動させる第2アーム44と、第1アーム42および第2アーム44が回転する軸となるアーム軸部45と、を有する。
【0041】
第1搬送台41と第2搬送台43には、吸着機構60が設けられており、第1搬送台41の上面である吸着面41aと第2搬送台43の下面である吸着面43aとにバンドギャップ半導体基板S、ハンドル基板P、接合基板Wを吸着して搬送することができる。
【0042】
また、図2に示すように、第1アーム42と第2アーム44は、アーム軸部45を中心として回転移動することができる。すなわち、第1アーム42は、矢印Bに沿って動き、第1搬送台41に吸着して保持したバンドギャップ半導体基板S、接合基板Wを搬送することができる。また、第2アーム44は、矢印Cに沿って動き、第2搬送台43に吸着して保持したハンドル基板Pを搬送することができる。
【0043】
紫外線照射装置50は、基板ホルダ20に保持されたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1に紫外線を照射するものである。なお、紫外線照射装置50は、基板ホルダ20に保持されたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの少なくとも一方の接合面S1、P1に紫外線を照射するものであってもよいが、基板の接合面をより確実に活性化するために、本実施形態のように、基板ホルダ20に保持されたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1の両方に向かって紫外線を照射するように構成されていることが好ましい。
【0044】
紫外線照射装置50は、バンドギャップ半導体基板Sを照射するために上方に紫外線を照射する第1照射装置51と、ハンドル基板Pを照射するために下方に紫外線を照射する第2照射装置52と、第1照射装置51および第2照射装置52を図1の矢印D方向に移動するアーム53と、を有する。図1に示すように、第1照射装置51と第2照射装置52は上下に一体となっている。
【0045】
また、第1照射装置51は、上方のみ開放している枠体511と、枠体511に収められた紫外線ランプ512と、を有する。第2照射装置52は、下方のみ開放している枠体521と枠体521に収められた紫外線ランプ522と、を有する。枠体511、521は、開放された上下方向以外には紫外線が照射されないように構成されている。これにより、基板ホルダ20に保持された基板に対して、紫外線を効率よく照射することができる。
【0046】
紫外線ランプ512と紫外線ランプ522は、波長10nm~280nmの紫外線を照射する照射源を用いることができ、特に入手しやすい、波長170nm~260nmの紫外線を照射する照射源を好適に用いることができる。本実施形態においては、図1図2に示すように、紫外線ランプ512と紫外線ランプ522は、それぞれ、5本の円柱形のXeエキシマランプにより構成されており、5本のランプは幅方向に並んで設けられている。なお、紫外線照射源は所望の紫外線の波長に合わせて種々変更することができ、Xeエキシマランプ(172nm)に限定されず、例えば、低圧水銀ランプ(254nm、185nm)等を用いることができる。
【0047】
アーム53(紫外線照射装置駆動手段)は、図1の矢印D方向に収縮可能に構成されており、これにより、第1照射装置51および第2照射装置52を図1の矢印D方向に移動させて、第1照射装置51および第2照射装置52を、第1保持部211の保持面211aと第2保持部221の保持面221aとの間に挿入することができる。すなわち、紫外線照射装置50は、第1照射装置51および第2照射装置52を、アーム53(紫外線照射装置駆動手段)により、基板ホルダ20に対向して保持されたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1間配置することができる。また、これにより、接合面S1、P1に対して、第1照射装置51および第2照射装置52の紫外線照射方向が垂直となる。
【0048】
紫外線照射装置50が基板ホルダ20に対向して保持されたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1間に挿入することができることから、接合面S1、P1に対して、第1照射装置51および第2照射装置52の紫外線照射方向を垂直にすることができ、斜め方向から紫外線を照射する場合に比べて、接合面S1、P1の全体に紫外線を均一に照射することができる。接合面S1、P1に紫外線を均一に照射することにより、紫外線を斜め方向に照射する場合に比べて、接合面S1、P1の全体を活性化することができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、紫外線照射装置50のアーム53(紫外線照射装置駆動手段)により、第1照射装置51、第2照射装置52が移動する態様であるが、基板接合装置が基板ホルダ駆動手段を備えて、紫外線照射装置が基板同士の間に位置するように、基板ホルダが移動する態様であってもよい。また、基板接合装置が基板ホルダ駆動手段と紫外線照射装置駆動手段の両方を備えて、紫外線照射装置が基板同士の間に位置するように、基板ホルダと紫外線照射装置とが互いに近づいて移動する態様であってもよい。
【0050】
吸着機構60は、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを静電吸着するものであり、これにより、基板を保持することができる。吸着機構60は、基板ホルダ20の第1保持部211、第2保持部221と、搬送ロボット40の第1搬送台41、第2搬送台43とに設けられている。
【0051】
基板を静電吸着する吸着機構60が設けられていることにより、基板をより確実に保持して、基板の搬送や基板の接合を行うことができる。
【0052】
なお、吸着機構60は、基板を下面側に保持する第1保持部211および第2搬送台43のみに設けられていてもよい。本実施形態のように、第1搬送台41、第2保持部221にも吸着機構60が設けられていることにより、より確実に基板を保持することができる。
【0053】
真空装置70は、接合室10内を真空にするものである。また、真空装置70は、基板ホルダ20の第1ホルダ21と第2ホルダ22の近傍に設けられたターボ分子ポンプ71、72を有する。すなわち、ターボ分子ポンプ71、72は、基板ホルダ20に保持されたバンドギャップ半導体基板Sおよびハンドル基板Pのそれぞれの近傍に設けられている。
【0054】
ここで、例えば、バンドギャップ半導体基板Sおよびハンドル基板Pが、いずれも、炭化ケイ素基板である接合基板Wを製造する場合には、接合室10内においてシリコン基板等を接合する場合よりも高い真空度が求められる場合がある。このような場合においても、真空装置70が基板ホルダ20の第1ホルダ21と第2ホルダ22の近傍に設けられたターボ分子ポンプ71、72を有することにより、基板の活性化および接合する場の周辺をより確実に高真空にすることができる。
【0055】
加圧手段は、接合室10内を所定圧力に加圧するものである。加圧方式としては、特に限定されず、例えば、油圧式等を用いることができる。第1ホルダ21に保持されたバンドギャップ半導体基板Sと第2ホルダ22に保持されたハンドル基板Pとを重ねた状態で加圧することにより、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pを接合することができる。
【0056】
本実施形態の基板接合装置を用いることにより、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1の活性化と、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合を1つの装置で行うことができる。すなわち、接合面S1、P1の活性化処理から接合までの間の時間を短くすることができ、接合面S1、P1の活性化状態をより確実に維持したまま接合することができる。
【0057】
[接合基板の製造方法]
次に、基板接合装置の動作とともに、接合基板の製造方法を説明する。以下に説明する接合基板の製造方法は、本実施形態の基板接合装置100を用いた接合基板の製造方法の一例であり、問題のない範囲で種々の条件等を変更することができる。
【0058】
本実施形態の基板接合装置を用いた接合基板の製造方法において、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1、および、ハンドル基板Pの接合面P1に、真空下においての紫外線を照射して活性化する、活性化処理工程と、活性化処理工程の後に、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1と、ハンドル基板Pの接合面P1とを重ねて接合する、接合工程と、を行うことにより、接合基板Wを製造することができる。
【0059】
なお、活性化処理工程において、紫外線の波長は10nm~280nmの波長であることが好ましく、真空は真空度1×10-4Pa以下であることが好ましい。
【0060】
すなわち、活性化処理工程においては、従来行われてきたAr等の質量を有する粒子の照射をしないことが好ましく、質量を有する粒子の照射に替えて、紫外線を照射することによりバンドギャップ半導体基板Sの接合面S1とハンドル基板Pの接合面P1の活性化が行われる。
【0061】
また、活性化処理工程に供する前に、予め、バンドギャップ半導体基板S、ハンドル基板Pの接合面S1、P1の鏡面研磨および洗浄を行っておくことが好ましい。
【0062】
(活性化処理工程)
次に、活性化処理工程について詳細に説明する。
【0063】
活性化処理工程は、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1、および、ハンドル基板Pの接合面P1の少なくとも一方に、真空下において10nm~280nm、すなわち、VUV(10nm~200nm)からUV-C(200~280nm)の波長範囲の紫外線を照射して活性化する工程である。
【0064】
ここで、接合面S1、P1の活性化とは、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1にある酸素、水素、ヒドロキシル基(OH基)等の界面終端成分、酸化膜を除去して、ダングリングボンドを形成することを指す。
【0065】
また、活性化処理工程における紫外線の波長は、10nm~280nmの範囲において照射源となるランプが入手しやすい170nm~260nmとすることができる。紫外線の波長が260nmよりも大きい場合には、エネルギー量が小さく、表面の活性化を促すために十分なエネルギーを接合面S1、P1に与えることができない場合がある。
【0066】
活性化処理工程において、紫外線を照射する活性化処理時間は、接合面S1、P1に十分なエネルギーを付与することができる時間であればよい。エネルギー量は紫外線の強度と照射時間との積であることから、照射に必要な時間は、照射する紫外線の強度から算出することができる。具体的には、照射する紫外線の強度が例えば5mW/cmである場合には、2分程度以上とすることができる。
【0067】
また、活性化処理工程において、真空度は、1×10-4Pa(N/m)以下の真空とし、さらに好ましくは、1×10-6Pa以下の超高真空(JIS Z 8126-1)とすることができる。活性化処理工程における真空度が低い場合は、紫外線を照射したのちの活性面(接合面S1、P1)の活性量が低くなることがあり、接合工程において十分な接合強度を得ることができないことがある。
【0068】
本実施形態の基板接合装置100を用いた活性化処理工程は以下の手順により行う。
【0069】
活性化処理工程に先立ち、接合室10内部を真空装置70により所定の真空度(例えば、5×10-6Pa)まで真空引きしておき、その真空状態を維持しておく。
【0070】
まず、基板ホルダ20にバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pを保持させる。はじめに、第1搬送台41の上面の吸着面41aにバンドギャップ半導体基板Sを載置して静電吸着により保持させ、第2搬送台43の下面の吸着面43aにハンドル基板Pを静電吸着により保持させる。このとき、第1搬送台41と第2搬送台43は、図2の位置(初期状態の位置)にある。
【0071】
その後、第1アーム42を図2の矢印B方向に沿って基板ホルダ20側に移動させ、第2アーム44を図2の矢印C方向に沿って基板ホルダ20側に移動させる。これにより、バンドギャップ半導体基板Sが基板ホルダ20の第1保持部211の直下に移動し、ハンドル基板Pが基板ホルダ20の第2保持部221の直上に移動する。
【0072】
さらに、第1搬送台41と第2搬送台43の吸着機構60の静電吸着から、基板ホルダ20の第1保持部211と第2保持部221の吸着機構60の静電吸着に切り替えて、バンドギャップ半導体基板Sを第1保持部211に静電吸着させ、ハンドル基板Pを第2保持部221に静電吸着させて保持する。このとき、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1が対向している(図3)。その後、第1搬送台41と第2搬送台43とを先ほどとは逆方向に移動させることにより初期位置まで退避させる。
【0073】
次に、図4に示すように、紫外線照射装置50のアーム53を伸ばして第1照射装置51および第2照射装置52を矢印D1方向に沿って移動させて、基板ホルダ20に対向して保持されたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pの接合面S1、P1間に挿入する。このとき、バンドギャップ半導体基板S、第1照射装置51、第2照射装置52、ハンドル基板Pは、上下方向に直線状に並んで位置している。
【0074】
さらに、紫外線ランプ512,522により、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1、ハンドル基板Pの接合面P1に紫外線を所定の強度(例えば、172nmの紫外線を10mW/cm)、所定時間(例えば、2分間)照射する(図4)。以上により、接合面S1、P1が活性化して、活性化処理工程が終了する。
【0075】
なお、上記の説明においては、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1とハンドル基板Pの接合面P1の両方に紫外線を照射する例を示したが、紫外線の照射は、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1およびハンドル基板Pの接合面P1の少なくとも一方に行えばよい。
【0076】
(接合工程)
次に、接合工程について説明する。
【0077】
接合工程は、活性化処理工程の後に、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1と、ハンドル基板Pの接合面P1とを接合して、接合基板Wを得る工程である。以下に説明する接合工程において、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1、および、ハンドル基板Pの接合面P1は、活性化処理工程において紫外線が照射された面である。
【0078】
なお、接合面S1、P1の活性化状態が維持されている間に、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを接合することが好ましく、活性化処理工程と接合工程との間の時間は、数秒~1分以内程度とすることが好ましい。
【0079】
また、接合工程における、バンドギャップ半導体基板Sおよびハンドル基板の温度は、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとの種類や組み合わせによって最適の条件は異なるが、例えば、200℃~400℃程度とすることができる。
【0080】
接合工程におけるバンドギャップ半導体基板Sおよびハンドル基板の温度が、200℃より低温等の低すぎる場合には、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとの十分な接合強度を得ることができず、ボイドの発生の低減が十分でないことがある。接合工程におけるバンドギャップ半導体基板Sおよびハンドル基板の温度が、400℃より高温等の高すぎる場合には、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとの間にひずみが入ることがあり、接合工程後の冷却時に、いずれか一方あるいは両方の基板が割れることがある。
【0081】
また、接合工程において、加圧手段を用いてバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとに加える圧力は、50kgf~500kgf(0.49kN~4.90kN)とすることができる。
【0082】
また、接合工程における接合室10内の真空度は、活性化処理工程と同様の条件とすることができる。
【0083】
また、接合工程における処理時間は、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとが十分に接合されれば特に限定されず、例えば、10秒~5分とすることができる。
【0084】
本実施形態の基板接合装置100を用いた接合工程は以下の手順により行う。
【0085】
図5に示すように、紫外線照射装置50のアーム53を縮めて、第1照射装置51および第2照射装置52を矢印D1方向に沿って移動させて、紫外線照射装置50を退避させる。そして、基板ホルダ20の第1アーム212を伸ばして、図5の矢印A1方向に沿って、接合面S1、P1が接触して重なる位置まで、第1保持部211に保持されたバンドギャップ半導体基板Sを移動させる。
【0086】
ここで、活性化処理工程において、バンドギャップ半導体基板S、第1照射装置51、第2照射装置52、ハンドル基板Pが、上下方向に一直線上に並んでいたことから、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pを重ねる移動を必要最低限の時間および距離で行うことができ、活性化処理工程と接合工程との間の時間を短くするとともに、活性化した接合面S1、P1に塵等が付着することを抑制することができる。
【0087】
接合面S1、P1が接触して重なる位置までバンドギャップ半導体基板Sを移動させたのち、さらに、第1ヒータ31、第2ヒータ32によりバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを加熱する。基板の加熱とともに、重ねたバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pを、加圧手段により接合室10内部を所定圧力(例えば、100kgf(0.98kN))に加圧して、所定時間(例えば、3分間)保持することにより、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pを接合する。これにより、接合基板Wが形成される。
【0088】
次に、形成された接合基板Wを回収する。第2保持部221の吸着機構60の静電吸着のみを切り、第1保持部211に接合基板Wを静電吸着により保持させたのち、図6に示すように、第1アーム212を縮めて第1保持部211を図6の矢印A1方向に沿って初期位置に戻す。次に、図7に示すように、第1アーム42を図2の矢印B方向に沿って基板ホルダ20側に動かして、基板ホルダ20の第1保持部211の直下まで第1搬送台41を移動させる。そして、第1保持部211の吸着機構60から第1搬送台41の吸着機構60に切り替えて、接合基板Wを第1搬送台41に保持させる。最後に、第1アーム42を先ほどとは反対方向に動かして第1搬送台41を初期位置に戻して接合基板Wを回収する。以上により、接合基板Wの製造が完了する。
【0089】
(従来の接合基板の製造方法、製造装置との比較)
従来の接合基板の製造方法、製造装置においては、接合面を活性化するために、アルゴン(Ar)イオンや、中性のアルゴン粒子をそれぞれの基板の接合面に照射することにより、基板の接合面にある酸素、水素、ヒドロキシル基(OH基)等の界面終端成分を除去して、表面を活性化させていた。
【0090】
しかしながら、アルゴンイオンやアルゴン粒子の照射は質量を有する粒子によるアタックであり、原理的にスパッタリング現象が起きることから、(1)スパッタではじかれた粒子に由来するパーティクルの発生、(2)真空チャンバー内の物質の金属コンタミの発生が問題となっていた。また、質量を有する粒子による貼り合わせ面におけるスパッタリング現象により、接合面が不均一な凹凸面となり、これが原因となって貼り合わせ後の接合面において空隙(ボイド、例えば、図9(A)の接合基板700におけるボイドV)の原因となる。また、スパッタリング現象により基板や真空チャンバーより飛び出した粒子によるコンタミは接合基板における不良の原因となっていた。
【0091】
なお、接合基板に発生したボイドは、光学顕微鏡、または、レーザー顕微鏡等を用いて観察することができる。
【0092】
本発明者らは、バンドギャップ半導体基板とハンドル基板の接合面に紫外線を照射することによって接合面を活性化することで、アルゴン粒子等のスパッタ粒子によるパーティクルや金属コンタミを生じさせずに、活性化した接合面が得られることを見出した。
【0093】
本実施形態の基板接合装置であれば、アルゴン等の質量を有する粒子を用いることなく、バンドギャップ半導体基板Sの接合面S1とハンドル基板Pの接合面P1を活性化することができることから、ボイドおよびコンタミを低減した、接合基板Wを得ることができる。
【0094】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、前述した実施形態の変形等も本発明に含まれる。
【0095】
例えば、図8に示す基板接合装置100Aは、第1搬送台41と第2搬送台43の移動方向が、前述した実施形態の基板接合装置100とは異なるものである。すなわち、搬送ロボット40Aは、第1搬送台41と、第1アーム42Aと、第2搬送台43と、第2アーム44Aと、アーム支持部45Aとを有する。図8に示す変形例においては、第1アーム42Aは矢印E方向に伸縮し、第2アームは矢印F方向に伸縮することにより、第1搬送台41および第2搬送台43を移動させることができる。このように、第1搬送台と第2搬送台の移動方法は、前述した実施形態や本変形例に限定されるものではなく、搬送ロボットと基板ホルダとの間で基板を移動させることができるものであれば、どのような構成でもよい。
【0096】
また、前述した実施形態においては、バンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを1枚ずつ処理する装置について説明したが、複数枚のバンドギャップ半導体基板Sとハンドル基板Pとを扱う基板ホルダや搬送ロボットを用いることにより、複数枚の基板を一度の製造バッチにより処理してもよい。
【0097】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例
【0098】
以下、本発明の実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されることはない。
【0099】
本実施例においては、バンドギャップ半導体基板として炭化ケイ素単結晶基板を用いて、ハンドル基板として炭化ケイ素多結晶基板を用いて、炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板とが接合した、炭化ケイ素接合基板を製造した。また、製造装置として、前述した実施形態の基板接合装置100を用いた。基板接合装置100は、紫外線ランプ512、紫外線ランプ522として、Xeエキシマランプを備える。
【0100】
[実施例1]
(炭化ケイ素接合基板の製造)
炭化ケイ素単結晶基板として、昇華法によって作製された、直径寸法が4インチの4H-SiC単結晶基板を用いた。また、炭化ケイ素多結晶基板として、化学的気相蒸着法により炭化ケイ素多結晶を成膜して得た、直径寸法が4インチの3C-SiC多結晶基板を用いた。
【0101】
まず、活性化処理工程の前に、炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板の接合面について、鏡面研磨加工および洗浄を行った。次に、活性化処理工程として、鏡面研磨加工、洗浄した炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板の接合面に、Arイオン、Ar粒子は照射せずに、紫外線を照射した。
【0102】
すなわち、基板ホルダ20に炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板を保持させて、接合室10内を真空度が5×10-6Pa以下の超高真空雰囲気とした。さらに、Xeエキシマランプ(紫外線ランプ512、紫外線ランプ522)により、炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板の接合面に、波長172nmの紫外線を10mW/cmの強度で2分間、照射した。
【0103】
次に、接合工程を行った。炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板とを、活性化された接合面同士が接触するように重ねて、活性化処理工程と同じ真空条件のまま、接合室10内を300℃として、炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板とを重ねたものに100kgf(0.98kN)の圧力を加えて、3分間保持した。以上により、炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板との接合基板を得た。さらに、接合室10内を常温まで温度を下げたのち、接合室10内を大気圧まで復圧して、接合基板を取り出して、接合基板の評価を行った。
【0104】
(炭化ケイ素接合基板の評価)
得られた接合基板の評価を行った。評価は、ボイドの有無の確認、コンタミの有無の確認、および、接合強度の確認とした。
【0105】
ボイドの有無の確認は、光学顕微鏡を用いて顕微鏡観察を行い、得られた接合基板にボイドが発生したか否かを確認した。接合基板にボイドが発生している場合、図9に示す接合基板700のように、点状のボイドVを確認することができる。
【0106】
また、接合基板を蛍光X線解析に供することにより、接合基板に不純物が含まれているか否かを確認して、コンタミの有無を評価した。蛍光X線解析装置として、NANOHUNTERII(リガク製)を用いた。
【0107】
また、接合強度は、得られた接合基板を5mm角のチップ状に切断して、炭化ケイ素単結晶基板と炭化ケイ素多結晶基板との剥離の有無を確認して、剥離が270個中3個以下である場合には接合強度が十分であり、5個より多い場合には接合強度が不十分であると評価した。
【0108】
なお、接合基板の接合強度が十分であっても、図9(B)に示す接合基板800のように接合基板にボイドVが発生している場合、ボイドVが含まれないチップ(例えば、図9(B)のチップ810)は良品であるが、ボイドVが含まれるチップ(例えば、図9(B)のチップ820、830、840)は後工程に用いると不良の原因となり得る。よって、ボイドVが含まれるチップが多いほど歩留まりが低いと評価することができる。
【0109】
接合基板を評価した結果、ボイドの発生は確認されず、また、金属不純物の測定においても検収限界以下であり、コンタミは確認されなかった。また、接合基板を270個の5mm角のチップ状に切断したところ、剥離は確認されず、接合強度は十分であると判断した。
【0110】
[実施例2]
実施例2として、基板接合装置100のXeエキシマランプを基板に対して斜め方向から照射すること以外は実施例1と同様にして、接合基板の製造および接合基板の評価を行った。得られた接合基板を評価した結果、ボイドの発生は確認されず、また、金属不純物の測定においては検収限界以下であり、コンタミは確認されなかった。また、接合基板を5mm角のチップ状に切断したところ、剥離は270個中1個のチップにのみ確認された。以上により、接合強度は十分であるが、紫外線を基板に対して垂直方向に照射することにより、より接合強度を高くすることかできることが示された。
【0111】
本発明の例示的態様である基板接合装置100を用いた実施例1、実施例2において、Ar等の質量を有する粒子の照射を行わずに、バンドギャップ半導体基板とハンドル基板の接合面に紫外線照射することで、接合面の活性化を行うことにより、アルゴン粒子等のスパッタ粒子によるパーティクルや金属コンタミを生じさせずに、接合基板におけるボイドおよびコンタミを低減した、接合基板が得られることが示された。
【符号の説明】
【0112】
100 基板接合装置
10 接合室
20 基板ホルダ
30 ヒータ
40 搬送ロボット
50 紫外線照射装置
53 アーム(紫外線照射装置駆動手段)
60 吸着機構
70 真空装置
71、72 ターボ分子ポンプ
S バンドギャップ半導体基板
S1 バンドギャップ半導体基板の接合面
P ハンドル基板
P1 ハンドル基板の接合面
W 接合基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9