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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】包装用箱及び包装物
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/54 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B65D5/54 Z
B65D5/54 301M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020148065
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042609
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506100990
【氏名又は名称】日本トーカンパッケージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 諒平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康敬
(72)【発明者】
【氏名】辻井 温子
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-195714(JP,U)
【文献】特開2012-076791(JP,A)
【文献】実公昭62-023697(JP,Y2)
【文献】実開昭58-067734(JP,U)
【文献】特表2007-533561(JP,A)
【文献】特開2000-109054(JP,A)
【文献】特開2016-193752(JP,A)
【文献】特開平08-026260(JP,A)
【文献】実開昭59-030829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開封時に引き破り可能な開封部を表面に有し、前記開封部の幅方向両側に対のミシン目が形成された包装用箱であって、
前記対のミシン目が形成される区間は、前記対のミシン目が第1パターンで形成される第1区間と、前記対のミシン目が第2パターンで形成される第2区間とを含み、前記第1パターンと前記第2パターンとでは前記開封部を引き破る際の荷重が異なり、
4方の側面は、前記開封部の延在方向で第1長さを有する第1表面と、前記開封部の延在方向で前記第1長さよりも長い第2長さを有する第2表面とを有し、
前記第1区間は、前記第1表面に設定され、前記第2区間は、前記第1区間の端部から連続する態様で前記第2表面に設定され、
4方の側面は、前記開封部の延在方向で前記第1長さと同じ第3長さを有する第3表面であって、前記第1表面に対向する第3表面を更に有し、
前記第1区間は、前記第2区間の端部から連続する態様で前記第3表面にも設定され、
前記第1表面、前記第2表面、前記第1表面と対になる前記第3表面のうち少なくともいずれか1方の表面は、該表面の4つの角から該表面の略中心に向かった4本の折り目誘導線を有する、包装用箱。
【請求項2】
前記第1パターンは、前記対のミシン目のそれぞれが同じ形態であり、
前記第2パターンは、前記対のミシン目のそれぞれが異なる形態である、請求項1に記載の包装用箱。
【請求項3】
前記第2パターンに係る前記対のミシン目のそれぞれは、前記開封部の延在方向で互いに対してズレを有する、請求項2に記載の包装用箱。
【請求項4】
前記第2パターンに係る前記対のミシン目のそれぞれは、前記開封部の延在方向で一方の終端位置が他方の開始位置と一致する態様で、前記ズレを有する、請求項3に記載の包装用箱。
【請求項5】
前記第1表面における前記対のミシン目の始端、又は前記第3表面における前記対のミシン目の終端は、前記第1表面の端部、又は前記第3表面の端部から離間し、
前記第1表面における前記対のミシン目の始端と前記第1表面の端部との間、又は前記第3表面における前記対のミシン目の終端と前記第3表面の端部との間に、別のミシン目が形成される、請求項1に記載の包装用箱。
【請求項6】
前記対のミシン目は、4方の側面のうちの3方の側面に連続する態様で形成され、
4方の側面のうちの残りの1方の側面には、前記別のミシン目から連続する態様で折返し部が形成される、請求項5に記載の包装用箱。
【請求項7】
前記対のミシン目は、4方の側面のうちの3方の側面に、上下方向の略中央部を横断する態様で形成される、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の包装用箱。
【請求項8】
内容物を収容する容器を収容可能である、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の包装用箱。
【請求項9】
請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の包装用箱と、
前記包装用箱内に収容され、内容物を収容する容器とを含む、包装物。
【請求項10】
前記容器は、上側の方が下側よりも外径が大きいカップ状の形態であり、
前記容器は、一方の上側に他方の下側が載置される態様の積み重ね状態で、2つ収容される、請求項9に記載の包装物。
【請求項11】
2つの前記容器は、その周方向を含む面が、前記対のミシン目の延在方向を含む面と直交する向きで、収容される、請求項10に記載の包装物。
【請求項12】
前記包装用箱の開封後、2つの前記容器のうちの一方は、上面と4方の側面の上側部分とにより形成される凹空間内に収容可能であり、2つの前記容器のうちの他方は、下面と4方の側面の下側部分とにより形成される凹空間内に収容可能であり、
前記上側部分と及び下側部分は、前記開封部で分断される、請求項11に記載の包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用箱及び包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
<背景技術の説明>
従来、開封時に引き破り可能な開封部を表面に有し、開封部の幅方向両側に対のミシン目が形成された包装用箱が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
<特許文献1の説明>
特許文献1には、対のミシン目のそれぞれが同じ形態となるパターンで形成された包装用箱が記載されている。このような包装用箱では、開封時に開封部を引き破るとき、対のミシン目の繋ぎ部分を同時に破ることになるので、開封荷重が大きくなって良好な開封容易性を確保できないおそれがある。特に、包装用箱の撓みやすい部分に特許文献1の開封構造を適用すると、開封部を引き破るとき、開封荷重によって包装用箱が大きく撓むので、開封部を引き破りにくいだけでなく、開封部が途中で破断する虞がある。
【0004】
<特許文献2の説明>
特許文献2には、対のミシン目のそれぞれが開封部の延在方向で互いに対してズレを有するパターンで形成された包装用箱が記載されている。このような包装用箱では、開封時に開封部を引き破るとき、対のミシン目の繋ぎ部分を交互に破ることになるので、特許文献1の包装用箱に比して開封荷重が低減し、開封容易性が向上するという利点がある。
【0005】
<要望される技術-1>
しかしながら、この種の開封構造を適用した包装用箱では、開封荷重と落下強度に相関関係があり、開封荷重を低減させると落下強度も低下してしまうため、開封容易性と落下強度の両立が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平2-40025号公報
【文献】特開2012-76791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
<背景技術の課題>
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要な落下強度を確保しつつ、開封容易性を向上できる包装用箱及び包装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<請求項1の内容>
このような目的を達成するため、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明は、開封時に引き破り可能な開封部を表面に有し、前記開封部の幅方向両側に対のミシン目が形成された包装用箱であって、前記対のミシン目が形成される区間は、前記対のミシン目が第1パターンで形成される第1区間と、前記対のミシン目が第2パターンで形成される第2区間とを含み、前記第1パターンと前記第2パターンとでは前記開封部を引き破る際の荷重が異なるものである。
【0009】
<請求項2の内容>
(2)本発明は、上記(1)の構成において、前記第1パターンは、前記対のミシン目のそれぞれが同じ形態であり、前記第2パターンは、前記対のミシン目のそれぞれが異なる形態である。
【0010】
<請求項3の内容>
(3)本発明は、(2)の構成において、前記第2パターンに係る前記対のミシン目のそれぞれは、前記開封部の延在方向で互いに対してズレを有するものである。
【0011】
<請求項4の内容>
(4)本発明は、(3)の構成において、前記第2パターンに係る前記対のミシン目のそれぞれは、前記開封部の延在方向で一方の終端位置が他方の開始位置と一致する態様で、前記ズレを有するものである。
【0012】
<請求項5の内容>
(5)本発明は、(1)~(4)のいずれかの構成において、4方の側面は、前記開封部の延在方向で第1長さを有する第1表面と、前記開封部の延在方向で前記第1長さよりも長い第2長さを有する第2表面とを有し、前記第1区間は、前記第1表面に設定され、前記第2区間は、前記第1区間の端部から連続する態様で前記第2表面に設定されるものである。
【0013】
<請求項6の内容>
(6)本発明は、(5)の構成において、4方の側面は、前記開封部の延在方向で前記第1長さと同じ第3長さを有する第3表面であって、前記第1表面に対向する第3表面を更に有し、前記第1区間は、前記第2区間の端部から連続する態様で前記第3表面にも設定されるものである。
【0014】
<請求項7の内容>
(7)本発明は、(6)の構成において、前記第1表面における前記対のミシン目の始端、又は前記第3表面における前記対のミシン目の終端は、前記第1表面の端部、又は前記第3表面の端部から離間し、前記第1表面における前記対のミシン目の始端と前記第1表面の端部との間、又は前記第3表面における前記対のミシン目の終端と前記第3表面の端部との間に、別のミシン目が形成されるものである。
【0015】
<請求項8の内容>
(8)本発明は、(7)の構成において、前記対のミシン目は、4方の側面のうちの3方の側面に連続する態様で形成され、4方の側面のうちの残りの1方の側面には、前記別のミシン目から連続する態様で折返し部が形成されるものである。
【0016】
<請求項9の内容>
(9)本発明は、(1)~(8)のいずれかの構成において、前記対のミシン目は、4方の側面のうちの3方の側面に、上下方向の略中央部を横断する態様で形成されるものである。
【0017】
<請求項10の内容>
(10)本発明は、(5)~(9)のいずれかの構成において、前記第1表面、前記第2表面、前記第1表面と対になる前記第3表面のうち少なくともいずれか1方の表面には、該表面の4つの角から該表面の略中心に向かった4本の折り目誘導線を有するものである。
【0018】
<請求項11の内容>
(11)本発明は、(1)~(10)のいずれかの構成において、内容物を収容する容器を収容可能である。
【0019】
<請求項12の内容>
(12)本発明は、(1)~(10)のうちのいずれかに記載の包装用箱と、前記包装用箱内に収容され、内容物を収容する容器とを含むものである。
【0020】
<請求項13の内容>
(13)本発明は、(12)の構成において、前記容器は、上側の方が下側よりも外径が大きいカップ状の形態であり、前記容器は、一方の上側に他方の下側が載置される態様の積み重ね状態で、2つ収容されるものである。
【0021】
<請求項14の内容>
(14)本発明は、(13)の構成において、2つの前記容器は、その周方向を含む面が、前記対のミシン目の延在方向を含む面と直交する向きで、収容されるものである。
【0022】
<請求項15の内容>
(15)本発明は、(14)の構成において、前記包装用箱の開封後、2つの前記容器のうちの一方は、上面と4方の側面の上側部分とにより形成される凹空間内に収容可能であり、2つの前記容器のうちの他方は、下面と4方の側面の下側部分とにより形成される凹空間内に収容可能であり、前記上側部分と及び下側部分は、前記開封部で分断されるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、必要な落下強度を確保しつつ、開封容易性を向上できる包装用箱及び包装物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る包装用箱の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る包装用箱の正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る包装用箱の背面図である。
図4】本発明の実施形態に係る包装用箱の右側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る包装用箱の左側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る包装用箱のブランクを示す展開図である。
図7】本発明の実施形態に係る包装用箱の開封途中の状態を示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る包装用箱の開封完了直前の状態を示す斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る包装用箱を開封し、折返し部で折返した状態を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態に係る包装用箱を開封後、トレーとして使用している状態を示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態に係る包装用箱を開封後、玩具として使用している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態の説明-1>
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
【0026】
<包装用箱の構成-1>
図1図5に示す本実施形態の包装用箱1は、図6に示すブランク1Bを組み立てて形成される。ブランク1Bは、板紙を打ち抜いて形成されたものであり、図6に示すように、押罫からなる折線a,b,c,dを介して、糊代パネル11、正面パネル12、右側面パネル13(第1表面)、背面パネル14(第2表面)、左側面パネル15(第3表面)が順次連設されている。正面パネル12の上下辺には、折線e,fを介してそれぞれ天面パネル16(上面)と底面パネル17(下面)が連設され、右側面パネル13の上下辺には、折線g,hを介してそれぞれ折込みフラップ18,19が連設され、背面パネル14の上下辺には、折線i,jを介してそれぞれ天面パネル20(上面)と底面パネル21(下面)が連設され、左側面パネル15の上下辺には、折線k,lを介してそれぞれ折込みフラップ22,23が連設されている。
【0027】
<包装用箱の構成-2>
ブランク1Bは、糊代パネル11の表側に左側面パネル15の裏側を貼り合わせてサック貼り状態とされる。サック貼り状態となったブランク1Bは、複数枚まとめて製函工程へ送られる。
【0028】
<包装用箱の構成-3>
サック貼り状態のブランク1Bから包装用箱1を組み立てる場合は、まず、折り畳んだブランク1Bを角筒状に起こした後、底面側において、折込みフラップ19,23をそれぞれ内側に折り曲げてから、底面パネル17,21を順次折り曲げて貼り合わせる。
【0029】
<包装用箱の構成-4>
このように底面側だけを閉じた状態で天面側の開口から箱内に内容物を入れる。その後、天面側において、折込みフラップ18,22をそれぞれ内側に折り曲げてから、天面パネル16,20を順次折り曲げて貼り合わせる。これにより、図1図5に示す包装用箱1が製函される。製函された本実施形態の包装用箱1は、正面パネル12及び背面パネル14の幅W1(第2長さ)が左右の側面パネル13,15の幅W2(第1長さ、第3長さ)よりも大きい直方体形状を有する。なお、本明細書では、内容物を収容した包装用箱1を包装物と称する。
【0030】
<包装用箱の開封構造-1>
図1図6に示すように、包装用箱1の表面には、開封時に引き破り可能な帯状の開封部24が形成されている。開封部24の幅方向両側には、対のミシン目25が形成されており、開封部24の一端部に形成される摘み部24aを引っ張ると、対のミシン目25が順次引き破られ、包装用箱1が開封される。
【0031】
<包装用箱の開封構造-2>
開封部24及び対のミシン目25は、右側面パネル13、背面パネル14及び左側面パネル15に連続する態様であって、かつ、右側面パネル13、背面パネル14及び左側面パネル15の上下方向の略中央部を横断する態様で形成されている。これにより、開封時には、開封部24の引張力が対のミシン目25に均等に作用し、開封時の表面剥離や、開封部24の破断が発生する可能性を低減できる。
【0032】
<包装用箱の開封構造-3>
対のミシン目25が形成される区間には、対のミシン目25が第1パターンAで形成される第1区間と、対のミシン目25が第2パターンBで形成される第2区間とが含まれており、第1パターンAと第2パターンBとでは、開封部24を引き破る際の荷重(以下、適宜開封荷重という。)が異なる。
【0033】
<包装用箱の開封構造-4>
第1パターンAは、対のミシン目25のそれぞれが同じ形態である。具体的に説明すると、本実施形態のミシン目25は、開封部24の延在方向に沿う主破断部25aと、主破断部25aの一端(開封上流側)から斜め内側に延在する傾斜部25bとを有し、第1パターンAでは、対のミシン目25が開封部24を挟んで対称に形成されている。つまり、第1パターンAの区間は、開封時に開封部24を引き破るとき、対のミシン目25間の繋ぎ部分25cを同時に破ることになるので、開封荷重が大きい。
【0034】
<包装用箱の開封構造-5>
一方、第2パターンBは、対のミシン目25のそれぞれが異なる形態である。例えば、第2パターンBに係る対のミシン目25のそれぞれは、開封部24の延在方向で互いに対してズレを有する。つまり、第2パターンBの区間は、開封時に開封部24を引き破るとき、対のミシン目25間の繋ぎ部分25cを交互に破ることになるので、開封荷重が小さい。ただし、開封荷重と落下強度には相関関係があるため、第2パターンBの区間は、第1パターンAの区間に比べて落下強度が低下する可能性がある。
【0035】
<包装用箱の開封構造-6>
また、第2パターンBに係る対のミシン目25のそれぞれは、開封部24の延在方向で一方の終端位置が他方の開始位置と一致する態様でズレを有することが好ましい。このようにすると、開封時に開封部24を引き破るとき、対のミシン目25の繋ぎ部分25cを同時に破る区間を確実に無くし、開封荷重を更に小さくできる。
【0036】
<包装用箱の開封構造-7>
本実施形態の包装用箱1では、右側面パネル13、背面パネル14及び左側面パネル15に連続する態様で対のミシン目25を形成するにあたり、右側面パネル13及び左側面パネル15には、対のミシン目25を第1パターンAで形成し、背面パネル14には、対のミシン目25を第2パターンBで形成している。
【0037】
<包装用箱の開封構造-8>
すなわち、幅W2が狭く、撓みにくい右側面パネル13及び左側面パネル15では、開封荷重がある程度大きくても開封容易性にあまり影響しないので、対のミシン目25を第1パターンAで形成することで、落下強度の低下を回避している。
【0038】
<包装用箱の開封構造-9>
一方、幅W1が広く、撓みやすい背面パネル14では、開封部24を引き破りにくいだけでなく、表面剥離が発生したり、開封部24が途中で破断する虞があるので、対のミシン目25を第2パターンBで形成することで、開封荷重を低減している。
【0039】
<包装用箱の開封構造-10>
このような包装用箱1の開封構造によれば、必要な落下強度を確保しつつ、開封容易性を向上させることが可能になる。つまり、すべての開封区間において対のミシン目25を第1パターンAとした場合に比べて開封容易性を向上させることができるとともに、すべての開封区間において対のミシン目25を第2パターンBとした場合に比べて落下強度を向上させることができる。
【0040】
<包装用箱の折返し構造-1>
図1図2及び図6に示すように、正面パネル12の上下方向中央部には、押罫やミシン目による折返し部26が左右方向に沿って形成されている。このような折返し部26によれば、開封部24を引き破って開封した後、折返し部26を起点として折り返すことにより、内容物を容易に取り出せるだけでなく、後述するトレーや玩具として使用することが可能になる(図9図11参照)。
【0041】
<包装用箱の折返し構造-2>
図4及び図6に示すように、開封部24の摘み部24aは、右側面パネル13の端部ではなく、端部から離間した位置に形成されている。摘み部24aの周りには、ミシン目27が形成されており、開封時には、摘み部24aをミシン目27に沿って右側面パネル13から切り離すことができる。
【0042】
<包装用箱の折返し構造-3>
また、右側面パネル13には、ミシン目27から正面パネル12側に延在し、ミシン目27と折返し部26を連続させる形態でミシン目28が形成されている。このようなミシン目28によれば、開封後に右側面パネル13を上下に分断できるので、内容物の取り出しが容易になるだけでなく、折返し部26を起点とする包装用箱1の折り返しが容易になる。
【0043】
<包装用箱の折返し構造-4>
一方、左側面パネル15は、図5及び図6に示すように、対のミシン目25が略両端まで形成されているので、開封後は上下に分断されるが、左側面パネル15の正面パネル12側の端部の裏側には、糊代パネル11が残るので、折返し部26を起点とする包装用箱1の折り返しを阻害する可能性がある。本実施形態では、図6に示すように、折返し部26に連続するミシン目29を糊代パネル11に形成することで、開封後に糊代パネル11を上下に分断可能としている。
【0044】
<包装用箱の開封手順-1>
図1に示す包装用箱1から内容物を取り出す際は、図7及び図8に示すように、開封部24を引き破る。開封部24を引き破るには、まず、右側面パネル13に形成される開封部24の摘み部24aをミシン目27に沿って右側面パネル13から切り離した後、摘み部24aを指で把持して引っ張る。開封部24の摘み部24aを引っ張ると、まず、右側面パネル13に第1パターンAで形成された対のミシン目25が引き破られる。ここで、右側面パネル13は、幅W2が狭く、撓みにくいため、第1パターンAで形成された開封荷重が大きい対のミシン目25であっても、容易に引き破ることができる。
【0045】
<包装用箱の開封手順-2>
右側面パネル13に形成される対のミシン目25を引き破った後、さらに、開封部24を引っ張ると、背面パネル14に第2パターンBで形成された対のミシン目25が引き破られる。ここで、背面パネル14は、幅W1が広く、撓みやすいが、第2パターンBで形成された対のミシン目25は開封荷重が小さいので、容易に引き破ることができる。
【0046】
<包装用箱の開封手順-3>
背面パネル14に形成される対のミシン目25を引き破った後、さらに、開封部24を引っ張ると、左側面パネル15に第1パターンAで形成された対のミシン目25が引き破られる。ここで、左側面パネル15は、幅W2が狭く、撓みにくいため、第1パターンAで形成された開封荷重が大きい対のミシン目25であっても、容易に引き破ることができる。
【0047】
<包装用箱の開封手順-4>
すべての対のミシン目25を引き破ると、開封部24が包装用箱1から分離される。その後、ミシン目28,29に沿って切断すると、図9に示すように、折返し部26を起点とする包装用箱1の折り返しが可能になり、内容物を容易に取り出すことが可能になる。ちなみに、本実施形態の内容物は、ベビーフードであり、容器50に収容された状態で包装用箱1に2つ収容される。具体的に説明すると、容器50は、上側の方が下側よりも外径が大きいカップ状の形態であり、一方の上側に他方の下側が載置される態様の積み重ね状態で、包装用箱1に2つ収容される。このとき、2つの容器50は、その周方向を含む面が、対のミシン目25の延在方向を含む面と直交する向きで、包装用箱1に収容されることが好ましい。このようにすると、2つの容器50を収容した包装用箱1が落下した際、対のミシン目25を破る方向に作用する衝撃を軽減し、落下時における包装用箱1の損傷を軽減できる。
【0048】
<包装用箱の開封後の使用形態-1>
包装用箱1は、開封後、上側部分1Uと下側部分1Dとに分断され、折返し部26を起点として折返すことができるので、図10に示すように、2つの容器50のうちの一方が、上側部分1Uに形成される凹空間S1内に収容可能で、他方が、下側部分1Dに形成される凹空間S2内に収容可能なトレーとして使用することができる。
【0049】
<包装用箱の開封後の使用形態-2>
右側面パネル13(第1表面)、背面パネル14(第2表面)、第1表面と対になる左側面パネル15(第3表面)のうち少なくともいずれか1方の表面は、該表面の4つの角31から該表面の略中心33に向かった4本の折り目誘導線32を有してもよい。この折り目誘導線32は、対のミシン目25と、折り目・ミシン目交点34と交差してもよく、また交差せずに折り目起点30で終わってもよい。これにより、包装用箱1をトレーとして使用して容器50を収容したとき、2つの容器50の縁が接触するようなときであっても、折り目起点30または折り目・ミシン目交点34が包装用箱1外側に膨らむことで接触した2つの容器50の縁同士が折返し部26側で押し上げて浮いた状態になることなく、2つの容器50が平らな状態を保ったままトレー内に収容することができる。
【0050】
<包装用箱の開封後の使用形態-3>
また、包装用箱1は、開封後の上側部分1Uと下側部分1Dを折返し部26を支点として互いに回動可能なので、図11に示すように、凹空間S1と凹空間S2に指を入れて、上側部分1Uと下側部分1Dを回動操作すれば、パペットのように口を開閉操作する玩具として使用することができる。
【0051】
<実施形態の効果-1>
以上、説明した実施形態の効果について述べる。
実施形態の包装用箱1は、開封時に引き破り可能な開封部24を表面に有し、開封部24の幅方向両側に対のミシン目25が形成されたものであって、対のミシン目25が形成される区間は、対のミシン目25が第1パターンAで形成される第1区間と、対のミシン目25が第2パターンBで形成される第2区間とを含み、第1パターンAと第2パターンBとでは開封部24を引き破る際の荷重が異なるので、表面の撓みやすさなどに応じて対のミシン目25のパターンを選択することにより、必要な落下強度を確保しつつ、開封容易性を向上させることが可能になる。
【0052】
<実施形態の効果-2>
また、第1パターンAは、対のミシン目25のそれぞれが同じ形態であり、第2パターンBは、対のミシン目25のそれぞれが異なる形態としているので、形態の異同に基づいて開封荷重を変更できる。
【0053】
<実施形態の効果-3>
また、第2パターンBに係る対のミシン目25のそれぞれは、開封部24の延在方向で互いに対してズレを有するので、開封時に開封部24を引き破るとき、対のミシン目25の繋ぎ部分25cを交互に破ることになり、開封荷重を低減できる。
【0054】
<実施形態の効果-4>
また、第2パターンBに係る対のミシン目25のそれぞれは、開封部24の延在方向で一方の終端位置が他方の開始位置と一致する態様でズレを有するので、開封時に開封部24を引き破るとき、対のミシン目25の繋ぎ部分25cを同時に破る区間を確実に無くし、開封荷重を更に小さくできる。
【0055】
<実施形態の効果-5>
また、包装用箱1は、開封部24の延在方向で第1長さ(幅W2)を有する右側面パネル13及び左側面パネル15と、開封部24の延在方向で第1長さ(幅W2)よりも長い第2長さ(幅W1)を有する正面パネル12及び背面パネル14とを有し、幅狭で撓みにくい右側面パネル13及び左側面パネル15には、対のミシン目25が第1パターンAで形成され、幅広で撓みやすい背面パネル14には、対のミシン目25が第2パターンBで形成されるので、必要な落下強度を確保しつつ、開封容易性を向上できる。
【0056】
<実施形態の効果-6>
また、右側面パネル13における対のミシン目25の始端は、右側面パネル13の端部から離間し、右側面パネル13における対のミシン目25の始端と右側面パネル13の端部との間は、別のミシン目28が形成されるので、開封後に右側面パネル13を上下に分断し、内容物の取り出しが容易になる。
【0057】
<実施形態の効果-7>
また、対のミシン目25は、右側面パネル13、背面パネル14及び左側面パネル15に連続する態様で形成され、正面パネル12には、別のミシン目28から連続する態様で折返し部26が形成されるので、開封部24を引き破って開封した後、折返し部26を起点として折り返すことにより、内容物を容易に取り出すことができる。
【0058】
<実施形態の効果-8>
また、対のミシン目25は、右側面パネル13、背面パネル14及び左側面パネル15の上下方向の略中央部を横断する態様で形成されているので、開封時には、開封部24の引張力が対のミシン目25に均等に作用し、開封時の表面剥離や、開封部24の破断が発生する可能性を低減できる。
【0059】
<実施形態の効果-9>
包装用箱1は、右側面パネル13(第1表面)、背面パネル14(第2表面)、第1表面と対になる左側面パネル15(第3表面)のうち少なくともいずれか1方の表面は、該表面の4つの角から該表面の略中心33に向かった4本の折り目誘導線を有するものであって、折り目誘導線32は対のミシン目25にかかる落下の衝撃を吸収するため、必要な落下強度を確保することが可能になる。
【0060】
<実施形態の効果-10>
また、包装用箱1には、上側の方が下側よりも外径が大きいカップ状の容器50を、一方の上側に他方の下側が載置される態様の積み重ね状態で2つ収容することができる。
【0061】
<実施形態の効果-11>
また、2つの容器50は、その周方向を含む面が、対のミシン目25の延在方向を含む面と直交する向きで収容されるので、2つの容器50を収容した包装用箱1が落下した際、対のミシン目25を破る方向に作用する衝撃を軽減し、落下時における包装用箱1の損傷を軽減できる。
【0062】
<実施形態の効果-12>
また、包装用箱1は、開封後、上側部分1Uと下側部分1Dとに分断され、折返し部26を起点として折返すことができるので、2つの容器50のうちの一方が、上側部分1Uに形成される凹空間S1内に収容可能で、他方が、下側部分1Dに形成される凹空間S2内に収容可能なトレーとして使用することができる。
【0063】
<実施形態の効果-13>
また、背面パネル14に折り目誘導線32を有する場合、包装用箱1をトレーとして使用する際にカップ状の容器50の外径が包装用箱1の上側部分1Uおよび下側部分1Dの寸法より大きくても、折り目誘導線32に沿って背面パネル14を外側に変形させることでカップ状の容器50をトレー内に収容することができる。
【実施例
【0064】
<実施例の説明-A1>
本発明の発明者らは、包装用箱に折り目誘導線が形成されていない第1サンプルと、右側面パネル(第1表面)と左側面パネル(第3表面)の表面に、該表面の4つの角から該表面の略中心に向かった対のミシン目から3mm離れた折り目起点30で終わる、折り目誘導線が形成されている第2サンプルを用意し、落下の比較試験を行った。
【0065】
<実施例の説明-A2>
室温で包装用箱を75cmおよび90cmの高さから折線cが衝撃を受けるようにして、75cmおよび90cmの高さでの第1サンプルおよび第2サンプルをそれぞれn=3で対ミシン目が破れるまで連続して落下させた。
【0066】
<実施例の説明-A3>
75cmの高さから落下させた場合、第1サンプルでは2回目の落下でn=3のうち2つは対のミシン目が破れ、残りの1つは3回目で破れたのに対し、第2サンプルは2回目の落下でn=3のうち1つが破れ、残りの2つのうち1つは3回目で破れ、さらに残りの1つは4回目で破れた。
【0067】
<実施例の説明-A4>
また、90cmの高さから落下させた場合、第1サンプルは1回目の落下でn=3のうち1つは対のミシン目が破れ、残りの2つは2回目で破れたのに対し、第2サンプルは1回目の落下でn=3のうち破れたものは1つもなく、2回目で2つが破れ、残りの1つは3回目で破れた。
【0068】
<実施例の説明-B1>
本発明の発明者らは、対のミシン目が開封部を挟んで対称に形成されている第3サンプルと、対のミシン目のそれぞれが開封部の延在方向で互いに対してズレを有する第4サンプルを用意し、開封荷重(ミシン目強度)の比較試験を行った。第4サンプルのミシン目のズレ幅は3mmとした。
【0069】
<実施例の説明-B2>
引張試験機で開封部の摘み部を摘み、垂直方向に30mm引っ張り上げ、ミシン目強度を測定した。引張速度は、50mm/minとした。
【0070】
<実施例の説明-B3>
試験の結果、第3サンプルでは、最大引張荷重の平均が8.97Nであったのに対し、第4サンプルでは、最大引張荷重の平均が8.17Nであり、第4サンプルの方が第3サンプルよりも開封荷重が低減されることが確認できた。
【0071】
<実施例の説明-B4>
また、開封開始時における最大引張荷重は、第3サンプルが8.77Nであるのに対し、第4サンプルが6.27Nであり、第4サンプルの方が開封開始時の開封荷重が大幅に低減されることがわかった。
【0072】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、上記実施形態では、対のミシン目25を開封部24の延在方向で互いに対してずらすことで、開封荷重を低減させているが、対のミシン目25の長さ(開封部24の延在方向の長さ)を長くしたり、繋ぎ部分25cの長さを短くしたりすることで、開封荷重を低減させてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 包装用箱
1B ブランク
1U 上側部分
S1 凹空間
1D 下側部分
S2 凹空間
11 糊代パネル
12 正面パネル
13 右側面パネル
14 背面パネル
15 左側面パネル
16 天面パネル
17 底面パネル
18 折込みフラップ
19 折込みフラップ
20 天面パネル
21 底面パネル
22 折込みフラップ
23 折込みフラップ
24 開封部
24a 摘み部
25 対のミシン目
25a 主破断部
25b 傾斜部
25c 繋ぎ部分
26 折返し部
27 ミシン目
28 ミシン目
29 ミシン目
30 折り目起点
31 角
32 折り目誘導線
33 表面略中心
34 折り目・ミシン目交点
50 容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11