(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ゴム成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20240702BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20240702BHJP
B29C 48/91 20190101ALI20240702BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240702BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/395
B29C48/91
C08L33/04
C08K3/04
(21)【出願番号】P 2021567444
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047694
(87)【国際公開番号】W WO2021132162
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2019239433
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福峯 義雄
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-227749(JP,A)
【文献】特開2002-220505(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188709(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/92
B29C 48/395
B29C 48/91
C08L 33/04
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、架橋剤とを含有するアクリルゴム組成物を、押出成形機を用いて成形することで、ゴム成形体を製造するための方法であって、
前記アクリルゴム組成物中に含まれるカーボンブラックの配合量をC
A[phr]とし、前記カーボンブラックのDBP吸油量をC
D[cc/100g]とし、前記押出成形機のスクリューの直径をS
D[mm]とし、前記押出成形機のスクリュー回転数をS
S[rpm]とし、前記押出成形機のスクリューの総ピッチ数をS
Pとした場合に、下記式(1)および下記式(2)を満たすように、前記押出成形機を用いた、前記アクリルゴム組成物の成形を行うゴム成形体の製造方法。
6.5×10
3≦C
A×C
D≦1.1×10
4 (1)
3.2×10
6≦C
A×S
D×S
S×S
P≦8.0×10
6 (2)
【請求項2】
前記アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位および架橋性単量体単位を含有し、
前記アクリルゴムを構成する単量体単位中における、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が50重量%以上であり、前記架橋性単量体単位の含有量が0.1重量%以上である請求項1に記載のゴム成形体の製造方法。
【請求項3】
前記架橋性単量体単位が、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体の単位である請求項2に記載のゴム成形体の製造方法。
【請求項4】
前記架橋性単量体単位が、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体の単位である請求項3に記載のゴム成形体の製造方法。
【請求項5】
前記カーボンブラックの配合量C
Aが、40~120phrである請求項1~3のいずれかに記載のゴム成形体の製造方法。
【請求項6】
前記押出成形機が、単軸の押出成形機である請求項1~5のいずれかに記載のゴム成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の製造方法により、ゴム成形体を得る工程と、
前記ゴム成形体を架橋する工程とを備えるゴム架橋物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成形体の製造方法に係り、さらに詳しくは、架橋後においても、優れた表面肌を実現できるゴム成形体を高い生産性にて製造可能なゴム成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体や(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などの(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来の単位を主成分とする重合体であり、一般に耐熱性、耐油性および耐オゾン性に優れたゴムとして知られており、架橋剤を配合し、ゴム架橋物とすることで、自動車関連の分野などで広く用いられている。
【0003】
アクリルゴムのゴム架橋物は、たとえば、アクリルゴムを含むゴム成分に、カーボンブラックや架橋剤等の成分を加えたアクリルゴム組成物を押出成形機にて押出成形することで、ゴム成形体とし、得られたゴム成形体を架橋することにより得られる(たとえば、特許文献1参照)。このようなアクリルゴム組成物を押出成形する技術においては、押出加工性を良好なものとし、これにより、表面肌に優れたゴム成形体を製造することが求められている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術など従来の技術においては、表面肌に優れたゴム成形体を高い生産性にて製造することや、架橋後においても、優れた表面肌を維持できるゴム成形体を製造することについて検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、架橋後においても、優れた表面肌を実現できるゴム成形体を高い生産性にて製造可能なゴム成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、架橋剤とを含有するアクリルゴム組成物を、押出成形機を用いて成形する際に、アクリルゴム組成物中に含まれるカーボンブラックの配合量CA、カーボンブラックのDBP吸油量CD、押出成形機のスクリューの直径SD、押出成形機のスクリュー回転数SS、および、押出成形機のスクリューの総ピッチ数SPを、特定の範囲とすることにより、得られるゴム成形体を架橋後においても、優れた表面肌を実現できるものとすることができ、しかも、このようなゴム成形体を高い生産性にて製造可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、アクリルゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、架橋剤とを含有するアクリルゴム組成物を、押出成形機を用いて成形することで、ゴム成形体を製造するための方法であって、
前記アクリルゴム組成物中に含まれるカーボンブラックの配合量をCA[phr]とし、前記カーボンブラックのDBP吸油量をCD[cc/100g]とし、前記押出成形機のスクリューの直径をSD[mm]とし、前記押出成形機のスクリュー回転数をSS[rpm]とし、前記押出成形機のスクリューの総ピッチ数をSPとした場合に、下記式(1)および下記式(2)を満たすように、前記押出成形機を用いた、前記アクリルゴム組成物の成形を行うゴム成形体の製造方法が提供される。
6.5×103≦CA×CD≦1.1×104 (1)
3.2×106≦CA×SD×SS×SP≦8.0×106 (2)
【0009】
本発明のゴム成形体の製造方法において、前記アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位および架橋性単量体単位を含有し、前記アクリルゴムを構成する単量体単位中における、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が50重量%以上であり、前記架橋性単量体単位の含有量が0.1重量%以上であることが好ましい。
本発明のゴム成形体の製造方法において、前記架橋性単量体単位が、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体の単位であることが好ましい。
本発明のゴム成形体の製造方法において、前記架橋性単量体単位が、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体の単位であることが好ましい。
本発明のゴム成形体の製造方法において、前記カーボンブラックの配合量CAが、40~120phrであることが好ましい。
本発明のゴム成形体の製造方法において、前記押出成形機が、単軸の押出成形機であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記いずれかの製造方法により、ゴム成形体を得る工程と、前記ゴム成形体を架橋する工程とを備えるゴム架橋物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、架橋後においても、優れた表面肌を実現できるゴム成形体を高い生産性にて製造可能なゴム成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴム成形体の製造方法に用いる押出成形機を示す概略図である。
【
図2】
図2は、押出成形機の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴム成形体の製造方法は、
アクリルゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、架橋剤とを含有するアクリルゴム組成物を、押出成形機を用いて成形することで、ゴム成形体を製造するための方法であって、
前記アクリルゴム組成物中に含まれるカーボンブラックの配合量をCA[phr]とし、前記カーボンブラックのDBP吸油量をCD[cc/100g]とし、前記押出成形機のスクリューの直径をSD[mm]とし、前記押出成形機のスクリュー回転数をSS[rpm]とし、前記押出成形機のスクリューの総ピッチ数をSPとした場合に、下記式(1)および下記式(2)を満たすように、前記押出成形機を用いた、前記アクリルゴム組成物の成形を行うものである。
6.5×103≦CA×CD≦1.1×104 (1)
3.2×106≦CA×SD×SS×SP≦8.0×106 (2)
【0014】
<アクリルゴム>
まず、本発明の製造方法において用いるアクリルゴムについて説明する。
本発明で用いるアクリルゴムは、分子中に、主成分(アクリルゴムを構成する全単量体単位中、好ましくは50重量%以上有するものを言う。)としての(メタ)アクリル酸エステル単量体〔アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕単位を含有するゴム状の重合体である。
【0015】
本発明で用いるアクリルゴムの主成分である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などを挙げることができる。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数1~12のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステル(炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル)が好ましく、炭素数1~8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステル(炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル)がより好ましく、炭素数2~6のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステル(炭素数2~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル)がさらに好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、およびアクリル酸n-ブチルがより好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2~12のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル)が好ましく、炭素数2~8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル)がより好ましく、炭素数2~6のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(炭素数2~6のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル)がさらに好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルが好ましく、アクリル酸2-エトキシエチル、およびアクリル酸2-メトキシエチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0020】
本発明で用いるアクリルゴムにおいては、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30~100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70~0重量%からなるものを用いることが好ましい。
【0021】
本発明で用いるアクリルゴムを構成する単量体単位中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70~99.9重量%、さらにより好ましくは80~99.5重量%、特に好ましくは90~99重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、および耐油性が低下するおそれがある。
【0022】
本発明で用いるアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位に加えて、必要に応じて、架橋性単量体単位を含有していてもよい。架橋性単量体単位を形成する架橋性単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エポキシ基を有する単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ジエン単量体などが挙げられる。架橋性単量体としては、アクリルゴムのゴム組成物のスコーチ安定性やゴム架橋物の耐熱性、圧縮永久歪み性をより高めることができるという観点より、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エポキシ基を有する単量体、ハロゲン原子を有する単量体が好ましく、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エポキシ基を有する単量体がより好ましく、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体が特に好ましい。
【0023】
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、およびα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いることにより、アクリルゴムを、カルボキシル基を架橋点として持つカルボキシル基含有アクリルゴムとすることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、耐圧縮永久歪み性をより高めることができる。
【0024】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、特に限定されないが、炭素数3~12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、およびケイ皮酸などが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、特に限定されないが、炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸が好ましく、その具体例としては、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;などが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、特に限定されないが、炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~12のアルカノールとのモノエステルが好ましく、炭素数4~6のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数2~8のアルカノールとのモノエステルがより好ましく、炭素数4のブテンジオン酸と炭素数2~6のアルカノールとのモノエステルがさらに好ましい。α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルが好ましく、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、または脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルがより好ましく、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがさらに好ましく、フマル酸モノn-ブチルが特に好ましい。これらのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0026】
エポキシ基を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有エーテル;などが挙げられる。
【0027】
ハロゲン原子を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、およびハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。なお、ハロゲン原子を有する単量体としては、ハロゲン原子として、塩素原子を含有するものであることが好ましい。
【0028】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルの具体例としては、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、およびクロロ酢酸アリルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、および(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、および(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。
【0029】
ハロゲン含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、および3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和ケトンの具体例としては、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、および2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。
ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、およびp-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0030】
ハロゲン含有不飽和アミドの具体例としては、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
ハロアセチル基含有不飽和単量体の具体例としては、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
【0031】
ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、およびピペリレンなどの共役ジエン単量体;エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの非共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸2-ジシクロペンタジエニルエチルなどの(メタ)アクリル酸とアルケノールとのエステル;などが挙げられる。
【0032】
本発明で用いるアクリルゴムを構成する単量体単位中における、架橋性単量体単位の含有量は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.01~20重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%、さらにより好ましくは0.5~5重量%、特に好ましくは1~3重量%である。架橋性単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の機械的特性や耐熱性を良好なものとしながら、耐圧縮永久歪み性をより適切に高めることができる。
【0033】
また、本発明で用いるアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、および必要に応じて用いられる架橋性単量体単位に加えて、これらと共重合可能な他の単量体の単位を有していてもよい。このような共重合可能な他の単量体としては、特に限定されないが、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリルアミド系単量体、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。
【0034】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0035】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジn-ブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1~18のもの;フマル酸ジメチル、フマル酸ジn-ブチルなどのフマル酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1~18のもの;マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4~16のもの;フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4~16のもの;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn-ブチルなどのイタコン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1~18のもの:イタコン酸ジシクロヘキシルなどのイタコン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4~16のもの;などが挙げられる。
その他のオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
共重合可能な他の単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。本発明で用いるアクリルゴムを構成する単量体単位中における、これら共重合可能な他の単量体の単位の含有量は、好ましくは49.9重量%以下であり、より好ましくは29.9重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、さらにより好ましくは9重量%以下、特に好ましくは4.5重量%以下である。
【0037】
また、本発明で用いるアクリルゴムは、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、10~150の範囲であり、好ましくは20~100の範囲、より好ましくは25~70の範囲である。ムーニー粘度を上記範囲とすることにより、アクリルゴムの加工性と強度特性を高度にバランスさせることができる。
【0038】
本発明で用いるアクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-5℃以下、さらに好ましくは-10℃以下である。また、ガラス転移温度(Tg)の下限は、特に限定されないが、好ましくは-80℃以上、好ましくは-60℃以上、より好ましくは-40℃以上である。ガラス転移温度(Tg)を上記範囲とすることにより、アクリルゴムを、耐熱性、および耐寒性のバランスにより優れたものとすることができる。
【0039】
本発明で用いるアクリルゴムは、上記した単量体を、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などの公知の方法を採用して共重合(ラジカル重合)することにより製造することができる。これらの重合方法のなかでも、乳化重合が好ましく、乳化重合に際しては、アクリルゴムの製造を容易にする観点から、重合を低温(100℃以下)、かつ、常圧で行うことが好ましい。また、乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤に加えて、通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0040】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステルナトリウムなどの高級燐酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;などを挙げることができる。乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.5~5重量部である。
【0041】
重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などを用いることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.001~1.0重量部である。
【0042】
なお、重合開始剤としての有機過酸化物および無機過酸化物は、還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することが好ましい。組み合わせて用いる還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸(塩);エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸(塩);糖類;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸(塩);ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸(塩);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、重合開始剤100重量部に対して、好ましくは0.0003~0.1重量部である。
【0043】
また、アクリルゴムの製造に際しては、乳化剤、重合開始剤に加えて、アクリルゴムの製造において通常用いられる重合副資材、たとえば、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0044】
<アクリルゴム組成物>
次いで、本発明の製造方法において用いるアクリルゴム組成物について説明する。
本発明の製造方法において用いるアクリルゴム組成物は、アクリルゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、架橋剤とを含有する。
【0045】
ゴム成分中における、アクリルゴムの含有割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらにより好ましくは90重量%以上、特に好ましくは100重量%(すなわち、ゴム成分として、実質的にアクリルゴムのみからなるものを用いた態様)である。
【0046】
ゴム成分を構成するアクリルゴム以外のゴムとしては、特に限定されないが、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどが挙げられる。
【0047】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらのなかでも、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、MAF、FEFなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
また、本発明においては、アクリルゴム組成物中に配合するカーボンブラックの配合量をCA[phr]とし、カーボンブラックのDBP吸油量をCD[cc/100g]とした場合に、これらが、下記式(1)を満たす条件とする。
6.5×103≦CA×CD≦1.1×104 (1)
【0049】
本発明によれば、カーボンブラックの配合量CAと、カーボンブラックのDBP吸油量CDとを上記式(1)を満たすものとし、かつ、後述するように、アクリルゴム組成物を用いて、押出成形機によりゴム成形体を製造する際における、カーボンブラックの配合量CAと、押出成形機のスクリューの直径SD、押出成形機のスクリュー回転数SS、および、押出成形機のスクリューの総ピッチ数SPとを、後述する式(2)を満たすものとすることで、架橋後においても、優れた表面肌を実現できるゴム成形体を高い生産性にて製造可能なものとすることができるものである。
【0050】
カーボンブラックの配合量CAと、カーボンブラックのDBP吸油量CDとは、上記式(1)を満たせばよいが、下記式(3)を満たすことが好ましく、下記式(4)を満たすことがより好ましい。「CA×CD」の値が小さすぎると、得られるゴム成形体およびゴム架橋物の表面肌が悪化してしまい、「CA×CD」の値が大きすぎると、アクリルゴム成形体の生産性が低下してしまう。
6.5×103≦CA×CD≦1.0×104 (3)
6.5×103≦CA×CD≦9.0×103 (4)
【0051】
カーボンブラックの配合量CA[phr;per hundred rubber]は、アクリルゴム組成物中に含まれる、アクリルゴムを含むゴム成分100重量部に対する配合量(単位は、「重量部」)であり、カーボンブラックのDBP吸油量CDとの関係で、上記式(1)を満たすものであればよいが、好ましくは40~120phrであり、より好ましくは45~100phr、さらに好ましくは50~80phrである。
【0052】
また、カーボンブラックのDBP吸油量CD[cc/100g]は、カーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)の量(単位は、「cc」)であり、JIS K6221に基づいて測定される。カーボンブラックのDBP吸油量CDは、カーボンブラックの配合量CAとの関係で、上記式(1)を満たすものであればよいが、好ましくは50~200cc/100gであり、より好ましくは70~180cc/100g、さらに好ましくは80~160cc/100g、特に好ましくは95~140cc/100gである。
【0053】
架橋剤としては、特に限定されないが、たとえば、ジアミン化合物などの多価アミン化合物、およびその炭酸塩;硫黄;硫黄供与体;トリアジンチオール化合物;多価エポキシ化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;有機過酸化物;ジチオカルバミン酸金属塩;多価カルボン酸;四級オニウム塩;イミダゾール化合物;イソシアヌル酸化合物;などの従来公知の架橋剤を用いることができる。これらの架橋剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。架橋剤としては、架橋性単量体単位の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
【0054】
これらのなかでも、本発明で用いるアクリルゴムが、架橋性単量体単位としてのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を有する場合には、架橋剤として、多価アミン化合物、およびその炭酸塩を用いることが好ましい。
【0055】
多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、炭素数4~30の多価アミン化合物、およびその炭酸塩が好ましい。このような多価アミン化合物、およびその炭酸塩の例としては、脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩、ならびに芳香族多価アミン化合物などが挙げられる。
【0056】
脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、たとえば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、およびN,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが好ましい。
【0057】
芳香族多価アミン化合物としては、特に限定されないが、たとえば、4,4’-メチレンジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、および1,3,5-ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
【0058】
本発明で用いるアクリルゴム組成物中における、架橋剤の含有量は、アクリルゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.001~20重量部、より好ましくは0.1~10重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部、特に好ましくは0.2~4重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、ゴム弾性を充分なものとしながら、ゴム架橋物としての機械的強度を優れたものとすることができる。
【0059】
また、アクリルゴム組成物は、さらに架橋促進剤を含有していることが好ましい。架橋促進剤としては、特に限定されないが、アクリルゴムが、架橋性基としてのカルボキシル基を有するものであり、かつ、架橋剤が多価アミン化合物、またはその炭酸塩である場合には、グアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、脂肪族一価二級アミン化合物、および脂肪族一価三級アミン化合物などを用いることができる。これらのなかでも、グアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物、および脂肪族一価二級アミン化合物が好ましく、グアニジン化合物およびジアザビシクロアルケン化合物が特に好ましい。これらの塩基性架橋促進剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0060】
グアニジン化合物の具体例としては、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジンなどが挙げられる。ジアザビシクロアルケン化合物の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ-7-セン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノ-5-ネンなどが挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩の具体例としては、テトラn-ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn-ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。第三級ホスフィン化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィンなどが挙げられる。
【0061】
脂肪族一価二級アミン化合物は、アンモニアの水素原子の二つを脂肪族炭化水素基で置換した化合物である。水素原子と置換する脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1~30のものである。脂肪族一価二級アミン化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジセチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、およびジオクタデシルアミンなどが挙げられる。
【0062】
脂肪族一価三級アミン化合物は、アンモニアの三つの水素原子全てを脂肪族炭化水素基で置換した化合物である。水素原子と置換する脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1~30のものである。脂肪族一価三級アミン化合物の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、およびトリドデシルアミンなどが挙げられる。
【0063】
アクリルゴム組成物中における、架橋促進剤の含有量は、アクリルゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部であり、より好ましくは0.5~7.5重量部、さらに好ましくは1~5重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の引張強度および耐圧縮永久歪み性をより向上させることができる。
【0064】
また、アクリルゴム組成物には、必要に応じて老化防止剤を配合してもよい。老化防止剤としては、特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;2-メルカプトベンズイミダゾールなどのイミダゾール系老化防止剤;6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの中でも、アミン系老化防止剤が好ましい。
【0065】
老化防止剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。アクリルゴム組成物中にける、老化防止剤の含有量は、特に限定されないが、アクリルゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.01~15重量部、より好ましくは0.05~10重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部である。
【0066】
また、本発明の製造方法で用いるアクリルゴム組成物は、上記各成分以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、たとえば、シリカなどの補強性充填剤;炭酸カルシウムやクレーなどの非補強性充填材;光安定剤;スコーチ防止剤;可塑剤;加工助剤;粘着剤;滑剤;潤滑剤;難燃剤;防黴剤;帯電防止剤;着色剤;などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0067】
本発明のアクリルゴム組成物は、上述したアクリルゴムを含むゴム成分に、カーボンブラック、架橋剤、およびその他必要に応じて用いられる各種配合剤を配合し、オープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどで混合、混練し、次いで、混練ロールを用いて、さらに混練することなどにより調製される。
【0068】
各成分の配合順序は、特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応や分解しやすい成分である架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合することが好ましい。
【0069】
<ゴム成形体の製造方法>
本発明のゴム成形体の製造方法は、
アクリルゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、架橋剤とを含有するアクリルゴム組成物を、押出成形機を用いて成形することで、ゴム成形体を製造するための方法であって、
前記アクリルゴム組成物中に含まれるカーボンブラックの配合量をCA[phr]とし、前記カーボンブラックのDBP吸油量をCD[cc/100g]とし、前記押出成形機のスクリューの直径をSD[mm]とし、前記押出成形機のスクリュー回転数をSS[rpm]とし、前記押出成形機のスクリューの総ピッチ数をSPとした場合に、下記式(1)および下記式(2)を満たすように、前記押出成形機を用いた、前記アクリルゴム組成物の成形を行うものである。
6.5×103≦CA×CD≦1.1×104 (1)
3.2×106≦CA×SD×SS×SP≦8.0×106 (2)
【0070】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴム成形体の製造方法に用いる押出成形機を示す概略図である。以下においては、本発明のゴム成形体の製造方法に用いる押出成形機として、
図1に示す一実施形態に係る押出成形機を使用する場合を例示して、アクリルゴム組成物を押出成形して、ゴム成形体を得る方法について説明する。
【0071】
図1に示すように、一実施形態に係る押出成形機1は、駆動ユニット2、および分割された11個のバレルブロック31~41で構成される単一のバレル3を有する。また、バレル3の内部には、
図2に示すスクリュー6が配置されており、バレル3を構成するバレルブロックのうち、最も下流側に位置するバレルブロック41の下流側には、バレル3内で混錬されたアクリルゴム組成物を、所定の形状に成形するためのダイ5が接続され、所定の形状を有するゴム成形体を押出すことができる。ダイ5には、押し出されたゴム成形体を所定のサイズにカットするためのカッターが備えられていてもよい。なお、
図1には、バレル3として、11個のバレルブロック31~41からなる構成を例示したが、バレルブロックの数は、特に限定されるものではなく、
図1に示す態様よりも多いものとしてもよいし、また、少ないものとしてもよい。
【0072】
図2は、押出成形機1の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。バレル3の内部には、
図2に示すようなスクリュー6が一本配置されている。すなわち、押出成形機1は、単軸の押出成形機である。スクリュー6の基端には、これを駆動するために、駆動ユニット2(
図1参照)に格納されたモータなどの駆動手段が接続されており、これによりスクリュー6は回転駆動自在に保持される。スクリュー6の形状は、特に限定されないが、たとえば、フルフライト型の2条スクリューなどが挙げられる。
【0073】
本発明のゴム成形体の製造方法においては、このような押出成形機1に、アクリルゴム組成物を投入し、投入されたアクリルゴム組成物を、バレル3内で、スクリュー6の回転によるせん断力により混練しつつ、下流側に送り、ダイ5より、所定の形状を有するゴム成形体として押すことできる。
【0074】
そして、本発明のゴム成形体の製造方法においては、このような押出成形機1を用いた押出成形を行う際において、押出成形機1のスクリュー6の直径をSD[mm]とし、押出成形機1のスクリュー6の回転数をSS[rpm]とし、押出成形機1のスクリュー6の総ピッチ数をSPとした場合に、これらと、アクリルゴム組成物中に含まれるカーボンブラックの配合量CA[phr]との関係を、下記式(2)を満たすものとする。
3.2×106≦CA×SD×SS×SP≦8.0×106 (2)
【0075】
本発明においては、上述したように、カーボンブラックの配合量CAと、カーボンブラックのDBP吸油量CDとを上述した式(1)を満たすものとし、かつ、アクリルゴム組成物を用いて、押出成形機1によりゴム成形体を製造する際における、カーボンブラックの配合量CAと、押出成形機1のスクリュー6の直径SD、押出成形機1のスクリュー6の回転数SS、および、押出成形機1のスクリュー6の総ピッチ数SPとを、上記式(2)を満たすものとすることで、架橋後においても、優れた表面肌を実現できるゴム成形体を高い生産性にて製造可能なものとすることができるものである。
【0076】
カーボンブラックの配合量CAと、押出成形機1のスクリュー6の直径SD、押出成形機1のスクリュー6の回転数SS、および、押出成形機1のスクリュー6の総ピッチ数SPとは、上記式(2)を満たせばよいが、下記式(5)を満たすことが好ましく、下記式(6)を満たすことがより好ましい。「CA×SD×SS×SP」の値が小さすぎると、生産性が低下してしまい、一方、「CA×SD×SS×SP」の値が大きすぎると、得られるゴム架橋物とした場合における表面肌が悪化してしまう。
4.5×106≦CA×SD×SS×SP≦7.6×106 (5)
5.0×106≦CA×SD×SS×SP≦7.1×106 (6)
【0077】
押出成形機1のスクリュー6の直径SDは、押出成形機1のスクリュー6の外径(スクリュー6のネジ形状の溝の部分と山の部分とのうち、山の部分の直径)であり、「CA×SD×SS×SP」の値が上記式(2)を満たすものであればよいが、好ましくは20~200mm、より好ましくは30~150mm、さらに好ましくは50~100mm、特に好ましくは65~85mmである。
【0078】
押出成形機1のスクリュー6の回転数SSは、アクリルゴム組成物を押出成形する際のスクリュー6の回転数であり、好ましくは5~60rpm、より好ましくは10~50rpm、さらに好ましくは15~45rpmである。
【0079】
また、押出成形機1のスクリュー6の総ピッチ数SPは、スクリュー6を構成する山の部分の総数であり、好ましくは10~50、より好ましくは15~45、さらに好ましくは20~40、特に好ましくは27~37である。なお、たとえば、押出成形機1のスクリュー6の総ピッチ数SPが32である場合には、スクリュー6の長手方向において、スクリュー6の山の部分の総数が32ということとなる。
【0080】
なお、押出成形機1により押出成形を行う際のその他の条件としては、特に限定されないが、たとえば、スクリュー6の長さSLは、好ましくは400~3000mm、より好ましくは700~2500mm、さらに好ましくは1000~2000mm、特に好ましくは1050~1350mmである。また、スクリュー6の溝深さは、特に限定されないが、好ましくは4~12mm、より好ましくは5~11mm、さらに好ましくは6~10mmである。
【0081】
また、押出成形機1により押出成形を行う際における、スクリュー6の温度は、特に限定されないが、好ましくは50~110℃、より好ましくは60~100℃、さらに好ましくは70~100℃であり、バレル3を構成するシリンダーの温度は、好ましくは50~110℃、より好ましくは60~100℃、さらに好ましくは70~100℃である。さらに、ダイ5の温度は、好ましくは60~120℃、より好ましくは70~110℃、さらに好ましくは80~110℃である。
【0082】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られるゴム成形体を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られるゴム成形体を、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。架橋温度は、通常、130~220℃、好ましくは150~190℃であり、架橋時間は、通常、2分~10時間、好ましくは3分~5時間である。加熱方法としては、オーブン加熱、蒸気加熱、マイクロ波加熱、および熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。たとえば、ゴム成形体が、ホース形状のものである場合には、ホース形状のゴム成形体の内側にマンドレルを挿入し、マンドレルを挿入した状態で加熱することで、ゴム架橋物とすることができる。
【0083】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、本発明のゴム架橋物は、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1~48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【0084】
そして、このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、たとえば、エンジンオイルホース、ATFホース、ブレーキホース等のオイルホース、ターボエアーホース、ミッションコントロールホース、排気ホース等のエアー系ホース、ラジエターホース、ヒーターホース、エアコンホースなどの各種ホース類に好適に用いられる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0086】
<アクリルゴムの単量体組成>
アクリルゴム中に含まれる各単量体単位の組成については、1H-NMR測定により確認し、アクリルゴム中のカルボキシル基の含有量は、アクリルゴムをアセトンに溶解し、水酸化カリウム溶液で電位差滴定を行うことにより算出した。
【0087】
<ムーニー粘度(ML1+4,100℃)>
JIS K6300の未架橋ゴム物理試験法のムーニー粘度試験に従って、測定温度100℃におけるアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)を測定した。
【0088】
<ゴム成形体およびゴム架橋物の表面肌>
ゴム成形体およびゴム架橋物の表面肌を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:表面が、平滑であり、かつ、光沢がある。
△:表面に、凹凸および小皺のいずれも観測されないが、光沢がない。
×:表面に、凹凸または小皺が観測された。
【0089】
<押出成形における押出量>
アクリルゴム組成物を用いて押出成形した際における、20秒当たりの押出重量(g/20秒)を押出量として測定した。押出量の値が大きいほど生産性に優れていると判断できる。なお、押出量は、比較例2の値を100とした場合における相対値で示した。
【0090】
<ゴム成形体の排出温度>
アクリルゴム組成物を用いて押出成形した際に、ダイ5から排出されたゴム成形体の温度を、接触式の温度計にて測定した。
【0091】
<製造例1>
(アクリルゴムの製造)
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、アクリル酸エチル64部、アクリル酸n-ブチル34.6部を仕込み、減圧脱気および窒素置換を3度行って酸素を十分に除去した後、フマル酸モノn-ブチル1.4部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.006部を加えて、常圧下、温度20℃で乳化重合を開始し、5時間反応させ、重合転化率約90%に達するまで重合した。そして、得られた乳化重合液を、塩化カルシウム溶液で凝固させ、水洗し、乾燥させることによりアクリルゴムを得た。得られたアクリルゴムの重合体組成は、アクリル酸エチル単位64.0重量%、アクリル酸n-ブチル単位34.6重量%、およびフマル酸モノn-ブチル単位1.4重量%であった。また、得られたアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、33であった。
【0092】
<実施例1>
(アクリルゴム組成物の調製)
バンバリーミキサーを用いて、製造例1で得られたアクリルゴム100部に、HAFカーボンブラック(商品名「シースト3」、東海カーボン社製、DBP吸油量:101cc/100g)65部、可塑剤(商品名「アデカサイザーRS735」、アデカ社製)5部、ステアリン酸2部、エステル系ワックス(商品名「グレッグG-8205」、大日本インキ化学工業社製、滑剤)1部、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラックCD」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)2部、および第1級アルキルアミン(商品名「リポミン18D」、ライオンスペシャリティケミカルズ社製)1部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移した。これに、架橋剤としてヘキサメチレンジアミンカーバメート(商品名「Diak#1」、デュポンダウエラストマー社製、脂肪族多価アミン化合物)0.5部、および架橋促進剤として1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-エン(DBU)(商品名「RHENOGRAN XLA-60」、RheinChemie社製、DBU60%(ジンクジアルキルジホスフェート塩になっている部分を含む))2部を配合し、混練することにより、アクリルゴム組成物を得た。
【0093】
次いで、上記にて得られたアクリルゴム組成物について、
図1に示す単軸の押出成形機1(商品名「EMR-V75D16」、EM技研社製)を用いて押出成形を行うことで、ホース状のゴム成形体を連続的に生産した。なお、押出成形の条件は、下記の通りとした。
カーボンブラックの配合量C
A:65phr
カーボンブラックのDBP吸油量C
D:101cc/100g
押出成形機1のスクリュー6の直径S
D:75mm
押出成形機1のスクリュー6の回転数S
S:30rpm
押出成形機1のスクリュー6の総ピッチ数をS
P:32
押出成形機1のスクリュー6の形状:フルフライト型の2条スクリュー
押出成形機1のスクリュー6の溝深さ:7.5mm
押出成形機1のスクリュー6のフライトピッチ:75mm
押出成形機1のスクリュー6の長さS
L:1200mm
押出成形機1のスクリュー6の温度:80℃
押出成形機1のバレル3を構成するシリンダーの温度:80℃
押出成形機1のダイ5の温度:90℃
ダイ5のダイス径:33mm
ダイ5のニップル径:30mm
そして、押出成形時の押出量および得られたホース状のゴム成形体の表面肌を上記した方法にしたがって、評価した。結果を表1に示す。
【0094】
次いで、得られたホース状のゴム成形体を、長さ50mmに切断し、切断したホース状のゴム成形体の内面側に、30mmφのSUS製の金属棒(マンドレル)を差し込み、SUS製の金属棒を差し込んだ状態で、170℃のオーブン中で、1時間加熱することで、ホース状のゴム架橋物を得た。そして、得られたゴム架橋物について、ゴム架橋物の表面肌を上記した方法にしたがって、評価した。結果を表1に示す。
【0095】
<実施例2,3>
HAFカーボンブラックの配合量CAおよび押出成形機1のスクリュー6の回転数SSのうち一方を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
<比較例1~6>
HAFカーボンブラックの配合量CAおよび押出成形機1のスクリュー6の回転数SSのうち一方あるいは両方を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
【0098】
<実施例4>
HAFカーボンブラック65部に代えて、MAFカーボンブラック(商品名「シースト116」、東海カーボン社製、DBP吸油量:135cc/100g)50部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0099】
<実施例5~8>
MAFカーボンブラックの配合量CAおよび押出成形機1のスクリュー6の回転数SSのうち一方あるいは両方を表2に示すように変更した以外は、実施例4と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
<比較例7~12>
MAFカーボンブラックの配合量CAおよび押出成形機1のスクリュー6の回転数SSのうち一方あるいは両方を表2に示すように変更した以外は、実施例4と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0101】
【0102】
<実施例9>
HAFカーボンブラック65部に代えて、FEFカーボンブラック(商品名「シーストSO」、東海カーボン社製、DBP吸油量:115cc/100g)65部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0103】
<実施例10,11>
FEFカーボンブラックの配合量CAおよび押出成形機1のスクリュー6の回転数SSのうち一方あるいは両方を表3に示すように変更した以外は、実施例9と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0104】
<比較例13~18>
FEFカーボンブラックの配合量CAおよび押出成形機1のスクリュー6の回転数SSのうち一方あるいは両方を表3に示すように変更した以外は、実施例9と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0105】
【0106】
<比較例19>
HAFカーボンブラック65部に代えて、SRFカーボンブラック(商品名「シーストS」、東海カーボン社製、DBP吸油量:68cc/100g)50部を使用するととともに、押出成形機1のスクリュー6の回転数SSを15rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0107】
<比較例20~27>
SRFカーボンブラックの配合量CAおよび押出成形機1のスクリュー6の回転数SSのうち一方あるいは両方を表4に示すように変更した以外は、比較例19と同様にして、ゴム成形体およびゴム架橋物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0108】
【0109】
表1~表4に示すように、アクリルゴム組成物について、押出成形機を用いて押出成形する際に、「6.5×103≦CA×CD≦1.1×104」の条件、および「3.2×106≦CA×SD×SS×SP≦8.0×106」の条件を満たすように、押出成形を行った場合には、得られるゴム成形体およびゴム架橋物のいずれも、表面肌に優れたものとなり、また、押出成形時の押出量も多く、生産性に優れるものであった(実施例1~11)。
一方、アクリルゴム組成物について、押出成形機を用いて押出成形する際に、「6.5×103≦CA×CD≦1.1×104」の条件、および「3.2×106≦CA×SD×SS×SP≦8.0×106」の条件のうち、いずれか一方、あるいは両方を満たさない場合には、得られるゴム成形体およびゴム架橋物のいずれか一方、または両方が、表面肌に劣るものとなる結果となったり、あるいは、押出成形時の押出量が少なく、生産性に劣るものとなる結果となった(比較例1~27)。
【符号の説明】
【0110】
1… 押出機
2… 駆動ユニット
3… バレル
31~41… バレルブロック
5… ダイ
6… スクリュー