(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】重合体、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機EL表示装置、有機EL照明及び有機電界発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/02 20060101AFI20240702BHJP
C08L 79/02 20060101ALI20240702BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20240702BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20240702BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240702BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20240702BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240702BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08G73/02
C08L79/02
H10K71/00
H10K71/12
H10K50/15
H10K85/10
H10K50/10
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2022178604
(22)【出願日】2022-11-08
(62)【分割の表示】P 2020506687の分割
【原出願日】2019-03-18
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2018048724
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018083826
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019021417
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 延軍
(72)【発明者】
【氏名】梅基 友和
(72)【発明者】
【氏名】五郎丸 英貴
(72)【発明者】
【氏名】飯田 宏一朗
(72)【発明者】
【氏名】安達 浩二
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/063757(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119203(WO,A1)
【文献】特開2017-045889(JP,A)
【文献】特表2014-503983(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140205(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/110360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73,C08L790
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(13)で表される構造を有する、重合体。
【化1】
(式(13)中、
Ar
31は主鎖と連結する2価の基を表し、
Ar
12は、
アルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい、1,4フェニレン基と2,7フルオレニレン基が複数連結した基を表し、
Ar
13~Ar
15は、それぞれ独立に、水素原子又は
下記置換基群Z及び架橋性基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は下記置換基群Z及び架橋性基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar
16は、重合体の主鎖を構成する構造を表す。)
[置換基群Z]
置換基群Zは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
【請求項2】
前記Ar
16が、
前記置換基群Z及び架橋性基から選ばれる置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、
前記置換基群Z及び架橋性基から選ばれる置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基、又は
前記置換基群Z及び架橋性基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び/若しくは
前記置換基群Z及び架橋性基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重合体を含有する、有機電界発光素子用組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の重合体および有機溶剤を含有する、有機電界発光素子用組成物。
【請求項5】
基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、該有機層の少なくとも1層を、請求項3又は4に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成するステップを含む、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記湿式成膜法で形成する層が、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つである、請求項5に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の重合体を含有する層を含む、有機電界発光素子。
【請求項8】
請求項7に記載の有機電界発光素子を備える、有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載の有機電界発光素子を備える、有機EL照明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体に関し、さらに詳しくは、有機電界発光素子の電荷輸送性材料として有用な重合体、該重合体を含有する有機電界発光素子用組成物、該組成物を用いて形成された層を含む有機電界発光素子、該有機電界発光素子を有する有機EL表示装置及び有機EL照明、並びに有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子における有機層の形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。真空蒸着法は積層化が容易であるため、陽極及び/又は陰極からの電荷注入の改善、励起子の発光層封じ込めが容易であるという利点を有する。一方で、湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、様々な機能をもった複数の材料を混合した塗布液を用いることにより、容易に、様々な機能をもった複数の材料を含有する層を形成できる等の利点がある。
しかしながら、湿式成膜法は積層化が困難であるため、真空蒸着法による素子に比べて駆動安定性に劣り、一部を除いて実用レベルに至っていないのが現状である。
【0003】
そこで、湿式成膜法による積層化を行うために、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーが所望され、またその開発が行われている。例えば、特許文献1~3には、特定の繰り返し単位を有する重合体を含有し、湿式成膜法によって、積層化された有機電界発光素子が開示されている。
【0004】
特許文献4及び5では、重合体の主鎖にフルオレン環またはカルバゾール環と置換基を有さないフェニレン環が結合した構造の正孔注入輸送性材料が開示されている。
【0005】
特許文献6では、トリアリールアミン繰り返し単位を有するポリマーにおいて、主鎖にフルオレン環を含むこが好ましいことが記載されており、さらに、ポリマー主鎖に、置換基を有するフェニレン基を含むことで捻れを生成させてポリマーの3重項エネルギーを増加させることが記載されている。
特許文献7では、アリールアミンポリマー又はオリゴマーの主鎖アミンの窒素原子間に、置換基を有するフェニレン基が連結されている化合物が開示されている。
特許文献8では、重合可能な置換基を有するアリールアミンポリマー又はオリゴマーを含む混合層を正孔輸送層とすることが開示されている。さらに、ポリマー又はオリゴマーを重合することによって層の熱的安定性を改善することができること、および、さらにその上に発光層を塗布する際に重合層が溶解しないことが効果として記載されている。
【0006】
また、特許文献9~12には、アリールアミン構造を有するポリマーの側鎖構造に、カルバゾール構造を有するポリマーが開示されている。特許文献9~11は側鎖構造のカルバゾールが1つのみであること、特許文献9及び12は側鎖構造のカルバゾールが、直接主鎖のアミンの窒素原子に結合していること、特許文献12は側鎖構造のカルバゾールが2つである構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/123269号
【文献】特開2013-045986号公報
【文献】国際公開第2013/191088号
【文献】特開2016-084370号公報
【文献】特開2017-002287号公報
【文献】特表2007-520858号
【文献】特表2013-531658号
【文献】特開2010-034496号
【文献】国際公開第2011/099531号
【文献】国際公開第2016/031639号
【文献】国際公開第2009/110360号
【文献】国際公開第2008/126393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者等の検討により、上記特許文献1~12に開示された技術は、それぞれ以下の課題を有することを見出した。
特許文献1~3に記載のこれらの素子は輝度が低く、駆動寿命が短いという問題点がある。そのため、電荷輸送性材料の電荷注入輸送能や耐久性の向上が求められる。
【0009】
特許文献4及び5に記載の重合体は、主鎖にπ共役系の広がりを有するために励起一重項エネルギー準位(S1)及び励起三重項エネルギー準位(T1)が低く、発光材料、発光励起子からのエネルギー移動による消光が生じ発光効率が低下するという問題点がある。そのため、S1準位およびT1準位が高い電荷輸送性材料が求められる。
【0010】
特許文献6には、主鎖にフルオレン環を含むアリールアミンポリマーとして実施例にF8-TFB(フルオレン+トリフェニルアミン系)が記載されているものの、F8-TFBはフルオレンとアミンの窒素原子間のフェニレンが置換基を有さないためねじれておらず、LUMOがアミンの窒素原子近傍まで広がっているため電子耐久性に劣るという問題がある。
特許文献7で開示されている化合物は、主鎖にフルオレン環またはカルバゾール構造を含まないため、電子耐久性に劣るという問題がある。
特許文献8には、主鎖にフルオレニル基またはカルバゾール基を有するアリールアミンポリマー又はオリゴマーが開示されているが、素子の耐久性は不十分であった。
【0011】
また、特許文献9~12に開示されているポリマーは、2つのカルバゾールが互いの窒素原子間に連結基を介した構造ではないことため、後述するように素子の耐久性が不十分であった。
【0012】
そこで、本発明は、正孔注入輸送能が高く、耐久性の高い重合体及び該重合体を含む有機電界発光素子用組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、輝度が高く、駆動寿命が長い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、フルオレン骨格、カルバゾール骨格またはジヒドロフェナントレン骨格と、置換基を有するフェニレン基と芳香族アミン構造とが連結した特定の繰り返し単位を有する重合体を用いること、または、アルキル基を含むフェニレン基が捻じれて結合した構造と置換基を有するフェニレン基とが連結した特定の繰り返し単位を有する重合体を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、次の[1]~[25]のとおりである。
[1] 下記式(1)で表される繰り返し単位又は式(2)で表される繰り返し単位を有
する、重合体。
【化1】
【化2】
(式(1)中、Ar
1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Xは、-C(R
7)(R
8)-、-N(R
9)-又は-C(R
11)(R
12)-C(R
13)(R
14)-を表し、
R
1及びR
2は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
R
7~R
9及びR
11~R
14は、各々独立に、水素、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
a、bは、各々独立に、0~4の整数であり、a+bは1以上であり、
cは1~3の整数であり、
dは0~4の整数であり、
R
1及びR
2が該繰り返し単位中に複数ある場合は、R
1及びR
2は同一であっても異なっていてもよい。)
(式(2)中、Ar
2は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
R
3及びR
6は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
R
4及びR
5は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表し、
lは0又は1を表し、mは1又は2を表し、nは0又は1を表し、
pは0又は1を表し、qは0又は1を表し、pとqは同時に0となることはない。)
[2] 前記式(1)で表される繰り返し単位を有し、前記Ar
1の少なくとも一つが、置換基を有していてもよい2-フルオレニル基である、[1]に記載の重合体。
[3] 前記式(1)で表される繰り返し単位を有し、前記Ar
1の少なくとも一つが、下記式(10)で表される、[1]又は[2]に記載の重合体。
【化3】
(式(10)中、
Ar
11及びAr
12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar
13~Ar
15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
*は結合位置を表す。)
[4] さらに、下記式(4)で表される繰り返し単位を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の重合体。
【化4】
(式(4)中、
Ar
3は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
Ar
4は、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい該芳香族炭化水素基及び/若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表す。)
[5] 前記Ar
3の少なくとも一つが、下記式(10)で表される、[4]に記載の重合体。
【化5】
(式(10)中、
Ar
11及びAr
12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar
13~Ar
15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、
*は結合位置を表す。)
[6] 前記Ar
3の少なくとも一つが、置換基を有していてもよい2-フルオレニル基である、[4]又は[5]に記載の重合体。
[7] さらに、下記式(5)で表される繰り返し単位を有する、[1]~[6]のいず
れかに記載の重合体。
【化6】
(式(5)中、
i及びjはそれぞれ独立に0~3の整数を表し、
i+jは1以上であり、
kは0又は1を表し、
Xは、-C(R
7)(R
8)-、-N(R
9)-又は-C(R
11)(R
12)-C(R
13)(R
14)-を表し、
R
7~R
9及びR
11~R
14は、各々独立に、水素、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
[8] 前記式(4)におけるAr
4が前記式(5)で表される繰り返し単位であり、kは1であり、
前記式(5)で表される繰り返し単位が、前記式(4)におけるNと連結した、[7]に記載の重合体。
[9] 下記式(14)で表される繰り返し単位を有する、[7]又は[8]に記載の重合体。
【化7】
(式(14)中、Ar
2、R
3、R
4、R
5、R
6、p、q、l、m、n、Ar
3、X、i、j、kはそれぞれ、前記式(2)、式(4)又は式(5)と同様である。)
[10] 前記式(14)において、
Xは-C(CH
3)(CH
3)-、
i=j=k=1、
Ar
2およびAr
3はそれぞれ独立に下記式(15)又は下記式(16)である、[9]に記載の重合体。但し、式(15)及び式(16)は置換基を有していてもよく、*は前記式(14)中のNとの結合を表す。
【化8】
[11] 前記式(15)又は前記式(16)が置換基を有し、該置換基が、置換基群Z及び架橋性基から選ばれる少なくとも1種である、[10]に記載の重合体。
置換基群Z:アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ
基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基;これらの置換基は直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
[12] さらに、下記式(6)で表される繰り返し単位を有する、[1]~[11]のいずれかに記載の重合体。
【化9】
(式(6)中、
tは1~10の整数を表し、
R
15及びR
16は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
R
15及びR
16が複数個存在する場合、該複数のR
15及びR
16は同一であっても異なっていてもよい。)
[13] さらに、下記式(7)で表される繰り返し単位を有する、[1]~[12]のいずれかに記載の重合体。
【化10】
(式(7)中、
Ar
5は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
R
17~R
19は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
f、g、hは、各々独立して、0~4の整数を表し、f+g+hは1以上であり、
eは0~3の整数を表す。)
[14] 前記重合体の末端基が、炭化水素からなる置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である、[1]~[13]のいずれかに記載の重合体。
[15] 前記重合体が、置換基として架橋性基を有する、[1]~[14]のいずれかに記載の重合体。
[16] 前記架橋性基が、芳香族環に縮環したシクロブテン環又は芳香族環に結合したアルケニル基を含む基である、[15]に記載の重合体。
[17] 前記重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000以上であり、且つ、分散度(Mw/Mn)が3.5以下である、[1]~[16]のいずれかに記載の重合体。
[18] [1]~[17]のいずれかに記載の重合体を含有する、有機電界発光素子用組成物。
[19] [1]~[17]のいずれかに記載の重合体及び有機溶剤を含有する、有機電界発光素子用組成物。
[20] 基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、該有機層の少なくとも1層を、[18]又は[19]に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成するステップを含む、有機電界発光素子の製造方法。
[21] 前記湿式成膜法で形成する層が、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つである、[20]に記載の有機電界発光素子の製造方法。
[22] 陽極と陰極の間に正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を含み、前記正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を全て湿式成膜法により形成するものである、[20]又は[21]に記載の有機電界発光素子の製造方法。
[23] [1]~[17]のいずれかに記載の重合体、又は該重合体が架橋性基を有する場合は該重合体が架橋した重合体を含有する層を含む、有機電界発光素子。
[24] [23]に記載の有機電界発光素子を備える、有機EL表示装置。
[25] [23]に記載の有機電界発光素子を備える、有機EL照明。
[26] 側鎖に下記式(11)で表される構造を有する、重合体。
【化11】
(式(11)中、
Ar
31は主鎖と連結する2価の基を表し、
Ar
12は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、
Ar
13~Ar
15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
*は主鎖を構成する原子との結合位置を表す。)
[27] [26]に記載の重合体が、下記式(13)で表される構造を有するものである、重合体。
【化12】
(式(13)中、
Ar
13~Ar
15、Ar
31は式(11)と同様であり、
Ar
16は、重合体の主鎖を構成する構造を表す。)
[28] [26]又は[27]に記載の重合体を含有する、有機電界発光素子用組成物。
[29] [26]又は[27]に記載の重合体および有機溶剤を含有する、有機電界発光素子用組成物。
[30] 基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、該有機層の少なくとも1層を、[28]又は[29]に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成するステップを含む、有機電界発光素子の製造方法。
[31] 前記湿式成膜法で形成する層が、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つである、[30]に記載の有機電界発光素子の製造方法。
[32] [26]又は[27]に記載の重合体を含有する層を含む、有機電界発光素子。
[33] [32]に記載の有機電界発光素子を備える、有機EL表示装置。
[34] [32]に記載の有機電界発光素子を備える、有機EL照明。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、正孔注入輸送能が高く、耐久性の高い重合体及び該重合体を含む有機電界発光素子用組成物を提供することができる。また、輝度が高く、駆動寿命が長い有機電界発光素子を提供することができる。
【0016】
本発明の第一の実施形態に係る主鎖にねじれ構造を有する重合体は、分子の配座変化が抑制された構造であるため、励起子となった際も分子配座の変化によって励起子のエネルギーを熱的に消費することが少ない。すなわち、励起一重項エネルギー準位差(S1)と励起三重項エネルギー準位差(T1)との差が小さい特長が考えられる。
本発明のように、励起子のエネルギー消失が小さいキャリア輸送材料は、エネルギー準位差の変化が小さく、発光層へのキャリア注入がスムーズに行われ、駆動電圧の上昇が抑制され、素子発光効率の点で好ましい。
【0017】
また、2つのカルバゾール環の窒素原子どうしが、2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基で連結した構造を有する場合、2つのカルバゾール環の互いの窒素原子間の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基にLUMOが分布することで、電子や励起子に対する耐久性が向上する傾向にあると考えられる。そのため、本実施形態の重合体を用いた有機電界発光素子の駆動寿命が向上すると考えられる。
【0018】
また、本発明の一態様である重合体を含有する有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜することにより得られる層は、クラック等が抑制され、平坦である。結果、該層を有する本発明の有機電界発光素子は、輝度が高く、駆動寿命が長い。
【0019】
また、本発明の一態様である重合体は、電気化学的安定性に優れる為、該重合体を用いて形成された層を含む素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態である重合体、別の実施形態である、該重合体を含有する
有機電界発光素子用組成物、該組成物を用いて形成された層を含む有機電界発光素子、該有機電界発光素子を有する有機EL表示装置、有機EL照明及び有機電界発光素子の製造方法の実施態様を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
【0022】
<重合体>
本発明の第一実施形態である重合体は、下記式(1)または下記式(2)で表される繰り返し単位を有する。
【0023】
【0024】
(式(1)中、
Ar1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Xは、-C(R7)(R8)-、-N(R9)-または-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-を表し、
R1及びR2は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
R7~R9及びR11~R14は、各々独立に、水素、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、
a、bは、各々独立に、0~4の整数であり、a+bは1以上であり、
cは1~3の整数であり、
dは0~4の整数であり、
R1及びR2が該繰り返し単位中に複数ある場合は、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよい。)
式(1)で表わされる繰り返し単位を有する本発明の重合体が上記の効果を奏する理由は定かではないが、以下が推定される。
本発明の式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の主鎖に含まれるフルオレン環、カルバゾール環またはジヒドロフェナントレン骨格は、2,7-位の少なくとも一方にフェニレン基が結合する。フルオレン環、カルバゾール環またはまたはジヒドロフェナントレン構造の2,7-位の少なくとも一方にフェニレンが結合することによって、フルオレン、カルバゾール環またはまたはジヒドロフェナントレン構造は電気的により安定となり、フルオレン環またはカルバゾール環の2,7-位の両方にフェニレンが結合することによって、フルオレン環、カルバゾール環またはまたはジヒドロフェナントレン構造は電気的にさらに安定となる。特に、電子耐性が向上し、素子駆動寿命が長くなると考えられる。この時、フェニレン環に置換基を有する場合は、置換基による立体障害のために、隣接するフルオレン環、カルバゾール環又はジヒドロフェナントレン骨格とねじれが無置換の場合と比べて大きくなる。本発明の重合体は、置換基の立体障害によって、π共役系の広がりが阻害された主鎖構造を有するため、励起一重項エネルギー準位(S1)および励起三重項エネルギー準位(T1)が高い性質があり、発光励起子からのエネルギー移動による消光が抑制されるため発光効率に優れる。特に、励起三重項エネルギー準位(T1)が高いため、発光層が励起三重項エネルギー準位(T1)からの発光、すなわち燐光発
光材料を含む場合に、優れた効果が得られる。
また、多環構造であるフルオレン環、カルバゾール環又はジヒドロフェナントレン骨格は、電子受容性が高くLUMOが分布しやすいものの、ねじれ構造により電子や励起子に弱い窒素原子周辺まではLUMOは分布しないために耐久性に優れる。
【0025】
【0026】
(式(2)中、Ar2は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
R3及びR6は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
R4及びR5は各々独立に、置換基を有していてもよい、アルキル基、アルコキシ基又はアラルキル基を表し、
lは0又は1を表し、mは1又は2を表し、nは0又は1を表し、
pは0又は1を表し、qは0又は1を表し、pとqは同時に0となることはない。)
ここで、上記式(2)と下記式(2’)とは、実質的に同一であり、R3とR6は同じ構造で定義されるため、上記式(2)と下記式(2”)とも実質的に同一である。
【0027】
【0028】
式(2)で表わされる繰り返し単位を有する重合体は、主鎖のフェニレン基にアルキル基又はアルコキシ基若しくはアラルキル基を有するため、主鎖のフェニレンどうしが無置換で連結するよりもよりねじれた構造を有する。
主鎖で連結しているフェニレンどうしがより捻じれた構造は、励起一重項エネルギー準位(S1)が高い性質があり、式(1)で表わされる繰り返し単位を有する本発明の重合体を、発光層が隣接する電荷輸送層に用いた場合、隣接する発光材料の励起子からのエネ
ルギー移動による消光が抑制され、発光効率に優れる。
さらに、主鎖で連結しているフェニレンどうしがより捻じれた構造は分子の配座変化しにくい構造であるため、配座変化を伴う励起三重項準位(T1)と励起一重項準位(S1)とのエネルギー差が小さいため、通常、励起一重項準位(S1)より低い励起三重項準位(T1)が励起一重項準位(S1)に近く、エネルギー的に高い順位である。そのため、特に発光層が励起三重項エネルギー準位(T1)からの発光である場合に、より発光材料の励起子のエネルギー移動による消光が抑制され、発光効率に優れる。
また、励起一重項準位(S1)よりも低い励起励起子となった際も分子配座の変化によって励起子のエネルギーを熱的に消費することが少ない。
以下、「式(1)で表される繰り返し単位」及び「式(2)で表される繰り返し単位」について、詳細に説明する。
【0029】
[式(1)で表される繰り返し単位]
(R1、R2)
上記式(1)で表される繰り返し単位中のR1及びR2は、各々独立に、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、重合体の溶解性を維持するために、炭素数が1以上、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、3以下がより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
R1及びR2が該繰り返し単位中に複数ある場合は、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよいが、電荷を均一的に窒素原子の周りに分布することができ、さらに合成も容易であることから、全てのR1とR2は同一の基であることが好ましい。
【0030】
(R7~R9及びR11~R14)
R7~R9及びR11~R14は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。
前記アルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数が1以上、24以下が好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下がより好ましい。また、前記アルキル基は直鎖、分岐又は環状の各構造であってもよい。
前記アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0031】
前記アラルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数5以上、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。
前記アラルキル基として、具体的には、1,1-ジメチル-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ブチル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ヘキシル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-オクチル)-1-フェニルメチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-n-ブチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、5-フェニル-1-n-プロピル基、6-フェニル-1-n-ヘキシル基、6-ナフチル-1-n-ヘキシル基、7-フェニル-1-n-ヘプチル基、8-フェニル-1-n-オクチル基、4-フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0032】
前記芳香族炭化水素基としては特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数が6以上、60以下が好ましく、30以下がより好ましい。
前記芳香族炭化水素基として、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員
環の単環若しくは2~5縮合環の1価の基、またはこれらが複数連結した基等が挙げられる。
電荷輸送性及び耐久性向上の観点から、R7~R8はメチル基または芳香族炭化水素基が好ましく、R7およびR8はメチル基であることがより好ましく、R9はフェニル基であることがより好ましい。
溶解性を向上しつつ電荷輸送性に優れる点では、R3及びR4は炭素数3以上6以下のアルキル基又は炭素数9以上40以下のアラルキル基が好ましい。
【0033】
前記R1、R2のアルキル基、R7~R9及びR11~R14のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基は、前記R7~R9及びR11~R14のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基の好ましい基として挙げた基、又は後述の架橋性基が挙げられる。
前記R1、R2のアルキル基、R7~R9及びR11~R14のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、低電圧化の観点からは、置換基を有さないことが最も好ましい。
また、上記R7~R9及びR11~R14のアルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基は、不溶化の観点からは、置換基として、少なくとも一つの後述の架橋性基を含むことが好ましい。
【0034】
(a、b、c及びd)
前記式(1)で表される繰り返し単位中において、a及びbは各々独立に、0~4の整数であり、a+bは1以上である。さらに、a及びbは、各々2以下であることが好ましく、aとbの両方が1であることがさらに好ましい。
前記式(1)で表される繰り返し単位中において、cは1~3の整数であり、dは0~4の整数である。c及びdは、各々2以下であることが好ましく、cとdは等しいことがさらに好ましく、cとdの両方が1であるか、又はcとdの両方が2であることがさらに好ましい。
前記式(1)で表される繰り返し単位中のcとdの両方が1であるか又はcとdの両方が2であり、且つ、aとbの両方が2又は1である場合、R1とR2は、互いに対称な位置に結合していることが最も好ましい。
ここで、R1とR2とが互いに対称な位置に結合するとは、式(1)におけるフルオレン環またはカルバゾール環に対して、R1とR2の結合位置が対称であることをいう。このとき、主鎖を軸とする180度回転は同一構造とみなす。例えば、式(1a)において、R1aとR2aとが対象、R1bとR2bとが対象であり、式(1a)と式(1b)とは同一構造とみなす。
【0035】
【0036】
(Ar1)
前記式(1)で表される繰り返し単位中において、Ar1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、少なくとも一つは下記式(10)で表される基であることが好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5縮合環の1価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。なお、例えば「ベンゼン環の1価の基」とは、「1価の遊離原子価を有するベンゼン環」、すなわち、フェニル基を意味する。
【0037】
芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましく、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5~6員環の単環若しくは2~4縮合環の1価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。
【0038】
Ar1は、電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が好ましく、中でも置換基を有していてもよいベンゼン環又はフルオレン環の1価の基、すなわち、置換基を有していてもよいフェニル基又はフルオレニル基がより好ましく、置換基を有していてもよいフルオレニル基がさらに好ましく、置換基を有していてもよい2-フルオレニル基が特に好ましい。
【0039】
Ar1の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が有してもよい置換基としては、本重合体の特性を著しく低減させないものであれば、特に制限はない。好ましくは、下記置換基群Z又は後述の架橋性基から選ばれる基が挙げられ、アルキル基、アよいルコキシ基、芳香
族炭化水素基、芳香族複素環基又は後述の架橋性基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
Ar1は、塗布溶媒への溶解性の点から、炭素数1~24のアルキル基で置換されたフルオレニル基が好ましく、特に、炭素数4~12のアルキル基で置換された2-フルオレニル基が好ましい。さらに、2-フルオレニル基の9位にアルキル基が置換された9-アルキル-2-フルオレニル基が好ましく、特に、アルキル基が2置換された9、9-ジアルキル-2-フルオレニル基が好ましい。9位および9’位の少なくとも一方がアルキル基で置換されたフルオレニル基であることにより、溶媒に対する溶解性及びフルオレン環の耐久性が向上する傾向にある。さらに、9位および9’位の両方がアルキル基で置換されたフルオレニル基であることにより、溶媒に対する溶解性及びフルオレン環の耐久性がさらに向上する傾向にある。
また、Ar1は、塗布溶媒への溶解性の点から、スピロビフルオレニル基であることも好ましい。
【0040】
[置換基群Z]
置換基群Zは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
置換基群Zとして、より具体的には、以下の構造が挙げられる。
例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であり、さらに好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基;
例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖又は分岐のアルキニル基;
例えば、メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシ基;
例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24である、アリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基;
例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルコキシカルボニル基;
例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基;
例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上であり、通常36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
例えば、フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常7であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基;
例えば、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2であり、通常24以下、好ましくは12であるアシル基;
例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
例えば、トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基;
例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基;
例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基;
例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基;
例えば、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基;
シアノ基;
例えば、フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基;
例えば、チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。
上記置換基は、直鎖、分岐又は環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
上記の置換基群Zの中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基である。電荷輸送性の観点からは、置換基を有さないことがさらに好ましい。
【0041】
また、上記置換基群Zの各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基(置換基群Z)と同じのもの又は後述の架橋性基が挙げられる。好ましくは、更なる置換基は有さないか、炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアルコキシ基、フェニル基又は後述の架橋性基、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、フェニル基又は後述の架橋性基である。電荷輸送性の観点からは、さらなる置換基を有さないことがより好ましい。
不溶化の観点からは、さらなる置換基として、少なくとも一つの後述の架橋性基を含む式(1)で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、該架橋性基が、Ar1で表される芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基に更に置換していることが好ましい。
【0042】
(他の好ましいAr1)
前記式(1)で表される繰り返し単位におけるAr1の少なくとも一つは、下記式(10)で表される基であることも好ましい。式(10)中の2つのカルバゾール構造において、互いの窒素原子間の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基にLUMOが分布することで、電子や励起子に対する耐久性が向上する傾向にあると考えられる。
【0043】
【0044】
(式(10)中、
Ar11及びAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、
Ar13~Ar15は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
【0045】
(Ar13~Ar15)
Ar13~Ar15は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。Ar13~Ar15が置換基である場合、特に限定はされないが、好ましくは置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。好ましい構造としては、前記Ar1で挙げた基と同様である。
Ar13~Ar15が置換基である場合、各カルバゾールの3位または6位に結合していることが、耐久性向上の観点から好ましい。
Ar13~Ar15は、合成のし易さ及び電荷輸送性の観点からは、水素原子であることが好ましい。
Ar13~Ar15は、耐久性向上及び電荷輸送性の観点からは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがさらに好ましい。
Ar13~Ar15が置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基である場合の置換基としては、前記置換基群Zに挙げられる置換基または後述の架橋性基と同様であり、好ましい置換基も同様であり、それら置換基がさらに有していてもよい置換基も同様である。
また、不溶化の観点からは、置換基として、少なくとも一つの後述の架橋性基を含む式(10)で表される基を含むことが好ましい。
【0046】
(Ar12)
Ar12は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基である。
芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、更に好ましくは炭素数10以上50以下であり、特に好ましくは炭素数12以上40以下である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5縮合環の2価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。これらが複数連結する場合、好ましくは複数連結した2価の芳香族炭化水素基が共役している基である。
芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましく、具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5又は6員環の単環若しくは2~4縮合環の2価の基またはこれらが複数連結した基等が挙げられる。
【0047】
これら芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基は、前記Ar1で挙げた、アルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。置換基の立体効果によってAr12の構造のねじれが生じる場合は、置換基が無い方が好ましく、置換基の立体効果によってAr12の構造のねじれが生じない場合は、置換基を有することが好ましい。
具体的な好ましい構造は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環の2価の基又はこれらが複数連結した基であり、更に好ましくは、ベンゼン環の2価の基又はこれらが複数連結した基であり、特に好ましくは、ベンゼン環が1,4位の2価で連結した1,4フェニレン基、フルオレン環の2,7位の2価で連結した2、7フルオレニ
レン基、又はこれらが複数連結した基であり、最も好ましくは、1,4フェニレン基-2,7フルオレニレン基-1,4フェニレン基-を含む基である。これら好ましい構造において、フェニレン基は連結位置以外に置換基を有さないことが、置換基の立体効果によるAr12のねじれが生じず好ましい。また、フルオレニレン基は、9,9’位に置換基を有している方が、溶解性及びフルオレン構造の耐久性向上の観点から好ましい。
Ar12は上記のような構造であることで、2つのカルバゾール構造の窒素原子間の芳香族炭化水素基が共役した構造となり、LUMOがこの共役した芳香族炭化水素基上に分布しやすくなる。そのため、電子や励起子に弱い主鎖の窒素原子周辺にLUMOが広がりにくいため、耐久性が向上すると考えられる。
また、芳香族複素環基を含む場合、電子吸引性が向上してLUMOが分布しやすいため、電子や励起子に弱い主鎖の窒素原子周辺にLUMOが広がりにくく、耐久性が向上すると考えられる。
【0048】
(Ar11)
Ar11は、式(1)における主鎖のアミンの窒素原子と連結する2価の基である。Ar11は特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基が好ましい。
Ar11の芳香族炭化水素基としては、炭素数が6以上、60以下が好ましく、更に好ましくは炭素数10以上50以下であり、特に好ましくは炭素数12以上40以下である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5縮合環の2価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。
【0049】
Ar11の芳香族複素環基としては、炭素数が3以上、60以下が好ましい。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5又は6員環の単環若しくは2~4縮合環の2価の基またはこれらが複数連結した基が挙げられる。
これら芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基は、Ar1で挙げた、アルキル基、アラルキル基及び芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられ、好ましい範囲は、Ar12と同様である。
【0050】
これら2価の芳香族炭化水素基または2価の芳香族複素環基が複数連結する場合、好ましくは複数連結した2価の芳香族炭化水素基が共役しないように結合した基である。具体的には、1,3フェニレン基、又は置換基を有し置換基の立体効果によって捻じれ構造となる基を含むことが好ましい。このような連結基を含むことにより、Ar12上に分布するLUMOが主鎖に広がりにくくなり、電子や励起子に弱い主鎖の窒素原子周辺にLUMOが分布しにくく、耐久性が向上すると考えられる。
【0051】
また、本実施形態の上記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体において、Ar1、R1、R2、Xが複数ある場合は、各々同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、重合体が、式(1)で表される繰り返し単位が同一構造である繰り返し単位を複数含むことである。この場合、同一構造の繰り返し単位を複数含むことで、繰り返し単位のHOMO、LUMOが同一となるため、特定の浅い準位に電荷が集中してトラップとなる
ことが無く、電荷輸送性に優れ、耐久性も向上すると考えられる。
【0052】
(X)
前記式(1)におけるXは、電荷輸送時の安定性が高いことから、-C(R7)(R8)-又は-N(R9)-であることが好ましく、-C(R7)(R8)-であることがより好ましい。
【0053】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、下記式のいずれかで示される繰り返し単位であることが特に好ましい。
【0054】
【0055】
上記式において、R1及びR2は同一であり、且つ、R1とR2は互いに対称な位置に結合している。
【0056】
[式(1)で表される繰り返し単位の主鎖の具体例]
式(1)中の窒素原子を除いた主鎖構造は特に限定されないが、例えば以下のような構造が挙げられる。
【0057】
【0058】
【0059】
[式(1)で表される繰り返し単位の含有量]
本実施形態の重合体において、式(1)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、重合体中に通常10モル%以上含まれ、30モル%以上含まれることが好ましく、40モル%以上含まれることがより好ましく、50モル%以上含まれることがさらに好ましい。本発明の重合体は、繰り返し単位が、式(1)で表される繰り返し単位のみから構成されていてもよいが、有機電界発光素子とした場合の諸性能をバランスさせる目的
から、式(1)とは別の繰り返し単位を有していてもよく、その場合、重合体中の式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、通常、99モル%以下、好ましくは95モル%以下である。
【0060】
[末端基]
本実施形態において、末端基とは、重合体の重合終了時に用いたエンドキャップ剤によって形成された、重合体の末端部の構造のことを指す。本実施形態の重合体において、式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の末端基は炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、電荷輸送性の観点から、炭素数1以上60以下が好ましく、1以上40以下がより好ましく、1以上30以下がさらに好ましい。
好ましくは、
例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えば、ビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基;
例えば、エチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖又は分岐のアルキニル基;
例えば、フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基;
が挙げられる。
これら炭化水素基はさらに置換基を有していてもよく、さらに有していてもよい置換基はアルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましく、これらさらに有していてもよい置換基が複数ある場合は互いに結合して環を形成していてもよい。
末端基は、好ましくは、電荷輸送性および耐久性の観点から、アルキル基又は芳香族炭化水素基であり、更に好ましくは芳香族炭化水素基である。
【0061】
[式(2)で表される繰り返し単位]
(R3、R6)
上記式(2)で表される繰り返し単位中のR3、R6は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、該アルキル基の構造は前記R1、R2と同様のものが挙げられ、有していてもよい置換基及び好ましい構造も同様のものが挙げられる。
【0062】
(R4およびR5)
式(2)のR4及びR5は各々独立に、置換基を有していてもよい、アルキル基、アルコキシ基又はアラルキル基を表す。
前記アルキル基は直鎖、分岐又は環状の何れの構造であってもよく、特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数が1以上、24以下が好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下がより好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0063】
前記アルコキシ基は特に限定されず、アルコキシ基(-OR)のR基は、直鎖、分岐又は環状のいずれの構造であってもよく、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数が1以上、24以下が好ましく、12以下が好ましい。
具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、ヘキシロキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0064】
前記アラルキル基は特に限定されないが、重合体の溶解性を向上できる傾向にあるため、炭素数5以上、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。
具体的には、1,1-ジメチル-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ブチル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-ヘキシル)-1-フェニルメチル基、1,1-ジ(n-オクチル)-1-フェニルメチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-n-ブチル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、5-フェニル-1-n-プロピル基、6-フェニル-1-n-ヘキシル基、6-ナフチル-1-n-ヘキシル基、7-フェニル-1-n-ヘプチル基、8-フェニル-1-n-オクチル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0065】
(l、m及びn)
lは0又は1を表し、nは0又は1を表す。
l及びnは各々独立であり、l+nは1又は2が好ましく、2がより好ましい。上記範囲であることで、本発明の重合体の溶解性を高くし、該重合体を含有する有機電界発光素子用組成物の析出も抑制できる傾向にある。
mは1又は2を表し、本発明の有機電界発光素子を低電圧で駆動でき、正孔注入や輸送能、耐久性も向上する傾向にあることから、1であることがより好ましい。
【0066】
(p及びq)
pは0又は1を表し、qは0又は1を表し、l=n=1の場合、pとqは同時に0となることはない。pとqが同時に0とならないことで、本発明の重合体の溶解性を高くし、該重合体を含有する有機電界発光素子用組成物の析出も抑制できる傾向にある。
【0067】
(Ar2)
前記式(2)で表される繰り返し単位中において、Ar2は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、重合体中に含まれる複数のAr2は同じであっても異なっていてもよい。置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基の構造は、前記Ar1の場合と同様のものが挙げられ、有していてもよい置換基及び好ましい構造も同様のものが挙げられる。
また、Ar2は、塗布溶媒への溶解性の点から、スピロビフルオレニル基であることも好ましい。
特に、Ar2は、式(15)で表わされる基または式(16)で表わされる基が好ましい。
【0068】
【化21】
式(15)及び式(16)中、*は、式(2)中のNとの結合を表す。
【0069】
不溶化の観点からは、さらなる置換基として、少なくとも一つの後述の架橋性基を含む式(2)で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、該架橋性基が、Ar2で表される芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有していてもよい置換基に更に置換していることが好ましい。
【0070】
[式(10)で表される基(ビスカルバゾール構造を有する基)]
前記Ar1同様に、Ar2の少なくとも一つが、前記式(10)で表される基であることも好ましい。Ar2の少なくとも一つが、前記式(10)で表される基である場合の式(10)の好ましい構造および有していてもよい置換基は、前記Ar1の少なくとも一つが前記式(10)で表される基である場合と同様である。
【0071】
[式(2)で表される繰り返し単位の主鎖の具体例]
式(2)で表される繰り返し単位のN原子を除いた主鎖構造は特に限定されないが、例えば以下のような構造が挙げられる。
【0072】
【0073】
【0074】
[式(2)で表される繰り返し単位の含有量]
本実施形態の重合体において、式(2)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、通常重合体中に10モル%以上含まれ、30モル%以上含まれることが好ましく、40モル%以上含まれることがさらに好ましく、50モル%以上含まれることが特に
好ましい。本実施形態の重合体は、繰り返し単位が、式(2)で表される繰り返し単位のみから構成されていてもよいが、有機電界発光素子とした場合の諸性能をバランスさせる目的から、式(2)とは別の繰り返し単位を有していてもよく、その場合、重合体中の式(2)で表される繰り返し単位の含有量は、通常、99モル%以下、好ましくは95モル%以下である。
【0075】
[末端基]
本実施形態の重合体において、式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体の末端基は、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の末端基と同様に、炭化水素基であることが好ましい。好ましい炭化水素基および有してよい置換基も、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の末端基と同様である。
【0076】
以下、本実施形態の、式(1)又は式(2)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位等について説明する。
【0077】
[別の繰り返し単位]
本実施形態の重合体は、式(1)又は式(2)で表される繰り返し単位とは別の繰り返し単位を、さらに含んでいてもよい。
別の繰り返し単位としては、電荷輸送性及び耐久性の点で、式(4)で表される繰り返し単位が好ましい。なお、ここで、下記式(4)で表される繰り返し単位は、上記式(1)又は式(2)で表される繰り返し単位中の一部の構造部分と一致しうるが、ここでは、あくまでも、式(1)又は式(2)で表される繰り返し単位以外の構造であることを意味する。
【0078】
【0079】
(式(4)中、
Ar3は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar4は、置換基を有していてもよい二価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい二価の芳香族複素環基、又は該置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び/若しくは置換基を有していてもよい芳香族複素環基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した二価の基を表す。)
【0080】
(Ar3及びAr4)
Ar3及びAr4における芳香族炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、Ar3は式(1)のAr1又は式(2)のAr2と同様の基、Ar4は式(1)のAr1又は式(2)のAr2と同様の基であって2価である基が挙げられる。また、有していてもよい置換基は前記置換基群Zまたは後述の架橋性基と同様の基が好ましく、さらに有していてよい置換基も前記置換基群Zと同様である。
また、電荷輸送性、耐久性の他、陽極側からの正孔注入に優れる点で、Ar4は下記式(5)で表わされる基であることが好ましい。
【0081】
[別の好ましい主鎖(式(5))]
本実施形態の重合体は、電荷輸送性、耐久性の他、陽極側からの正孔注入に優れる点で、下記式(5)で表される基を有することが好ましい。
【0082】
【0083】
(式(5)中、
i及びjは、各々独立に、0~3の整数を表し、i+jは1以上であり、
kは、0又は1の整数を表す。
Xは、前記式(1)で表わされる繰り返し単位におけるXと同様であり、-C(R7)(R8)-、-N(R9)-又は-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-を表し、
R7~R9及びR11~R14は、前記式(1)で表わされる繰り返し単位におけるXを構成するR7~R9及びR11~R14と同様であり、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、好ましい構造および有してよい置換基も同様である。また、式(5)のXと式(1)のXとは同じであっても異なってもよい。
【0084】
(i、j及びk)
式(5)において、電子耐久性に優れる点で、i+jは2が好ましく、3が更に好ましい。
また、iは1以上であることが好ましく、このフェニレン基を介して、前記式(4)におけるNと結合していることが好ましい。また、iとjの両方が1であるか、iとjの両方が2以上であることがさらに好ましい。
重合体の溶媒への溶解性が優れる点で、kは1であることがより好ましい。
【0085】
(連結基)
本実施形態に係る重合体は、下記式(6)で表される繰り返し単位を有することも好ましい。
特に、前記式(4)において、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が、連結基を介して複数個連結したものである場合の連結基としては、具体的には、例えば、-O-基、-C(=O)-基、及び水素原子が置換されていてもよい-CH2-基から選ばれる基を任意の順番で1~30個、好ましくは1~5個、更に好ましくは1~3個連結してなる二価の連結基等が挙げられる。
中でも、発光層への正孔注入に優れる点で、式(4)中のAr4が、下記式(6)で表される連結基を介して複数個連結された、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であることが好ましい。
【0086】
【0087】
(式(6)中、
tは1~10の整数を表し、
R15及びR16は、各々独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基を表す。
R15及びR16が複数個存在する場合、同じであっても異なっていてもよい。)
【0088】
(R15及びR16)
R15及びR16におけるアルキル基は、前記R1、R2、R3及びR6で挙げたアルキル基と同様の基であり、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、前記Ar1及びAr2で挙げた芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基と同様の基である。また、これらの基が有していてもよい置換基は、前記置換基群Z又は後述の架橋性基と同様の基が好ましく、さらに有していてよい置換基も前記置換基群Zと同様である。
【0089】
[別の繰り返し単位(2)]
本実施形態の重合体が含んでいてもよい別の繰り返し単位としては、下記式(7)で示される繰り返し単位であることが好ましい。式(7)で示される繰り返し単位は、芳香環のねじれにより、励起一重項エネルギー準位及び励起三重項エネルギー準位が高くなる傾向にある。また、芳香環のねじれの立体障害によって、重合体の溶媒への溶解性が優れると共に、湿式成膜法で形成し加熱処理された塗膜は溶媒への不溶性に優れる傾向にある。
【0090】
【0091】
(式(7)中、
Ar5は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
R17~R19は、各々独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
f、g、hは、各々独立して、0~4の整数を表し、f+g+hは1以上であり、
eは0~3の整数を表す。)
【0092】
(Ar5及びR17~R19)
Ar5及びR17~R19における芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、各々独立に
、前記Ar1及びAr2で挙げたものと同様の基である、また、これらの基が有していてもよい置換基は、前記置換基群Z又は後述の架橋性基と同様の基が好ましい。
R17~R19におけるアルキル基及びアラルキル基は、前記R7で挙げたものと同様の基が好ましく、さらに有していてもよい置換基も前記R7と同様の基が好ましい。
R17~R19におけるアルコキシ基は、前記置換基群Zで挙げたアルコキシ基が好ましく、さらに有していてもよい置換基も前記置換基群Zと同様である。
【0093】
(f、g、h)
f、g、hは、各々独立して、0~4の整数を表し、f+g+hは1以上である。
f+hは1以上であることが好ましく、
f+hは1以上、且つ、f、g及びhは2以下であることがより好ましく、
f+hは1以上、且つ、f、hは1以下であることがさらに好ましく、
f、hはいずれも1であることが最も好ましい。
f及びhがいずれも1である場合、R17とR19は互いに対称な位置に結合していることが好ましい。
また、R17とR19とは同一であることが好ましく、
gは2であることがより好ましい。
gが2である場合、2つのR18は互いにパラ位に結合していることが最も好ましく、
gが2である場合、2つのR18は同一であることが最も好ましい。
ここで、R17とR19が互いに対称な位置に結合するとは、下記の結合位置のことを言う。ただし、表記上、主鎖を軸とする180度回転は同一構造とみなす。
【0094】
【0095】
なお、本実施形態の重合体が式(7)で表される繰り返し単位を含む場合、式(1)で表される繰り返し単位と(7)で表される繰り返し単位との割合は、((7)で表される繰り返し単位のモル数)/(式(1)で表される繰り返し単位のモル数)が、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.9以上がよりさらに好ましく、1.0以上が特に好ましい。また、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
【0096】
また、前記式(4)で表される繰り返し単位は、下記式(8)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0097】
【0098】
前記式(8)で表される繰り返し単位の場合、g=0または2であることが好ましい。g=2の場合、結合位置は2位と5位である。g=0の場合、すなわちR18による立体障害が無い場合、及びg=2であり結合位置は2位と5位である場合、すなわち立体障害が2つのR18が結合するベンゼン環の対角位置となる場合は、R17とR19とが互いに対称な位置に結合することが可能である。
【0099】
また、前記式(8)で表される繰り返し単位は、e=3である下記式(9)で示される繰り返し単位であることがさらに好ましい。
【0100】
【0101】
前記式(9)で表される繰り返し単位の場合、g=0または2であることが好ましい。g=2の場合、結合位置は2位と5位である。g=0の場合、すなわちR18による立体障害が無い場合、及びg=2であり結合位置は2位と5位である場合、すなわち、立体障害が2つのR18が結合するベンゼン環の対角位置となる場合は、R17とR19とが互いに対称な位置に結合することが可能である。
【0102】
[好ましい繰り返し単位の組み合わせ]
本発明の重合体の繰り返し単位の組み合わせは特に限定されないが、式(1)で表される繰り返し単位及び式(4)のAr4が式(5)である繰り返し単位とを含む、下記式(12)で表される繰り返し単位を有することが、電荷輸送性向上および耐久性向上の観点から好ましい。
【0103】
【0104】
式(12)中、
Ar1、Ar3、X、R1、R2、a、b、c、d、i、j及びkは、式(1)、式(4)及び式(5)におけるものと各々同様である。
好ましい構造、範囲等も、式(1)、式(4)及び式(5)におけるものと同様である。
更に好ましくは、c=d=i=j及びk=1である。
【0105】
式(12)において、置換基を有するフェニレンに近いフルオレン環、カルバゾール環、またはジヒドロフェナントレン骨格をA、置換基を有さないフェニレンに近いフルオレン環、カルバゾール環、またはジヒドロフェナントレン骨格をBとしたとき、アミンと共役していない結合を有するAはアミンと共役していないため、LUMOが分布しにくく耐久性が向上する傾向にある。さらに、アミンと共役しているBはより共役が広いため、正孔輸送性が向上し、かつ安定となる傾向にある。
また、さらに好ましくは、AのX及びBのXが-C(R7)(R8)-であるか、AのXおよびBのXが、-N(R9)-であるか、又はAのX及びBのXが-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-である。このとき、AとBのR7、R8、R9、R11、R12、R13及びR14は、同一であっても異なっていてもよい。
AのX及びBのXが-C(R7)(R8)-であるか、AのXおよびBのXが、-N(R9)-であるか、又はAのX及びBのXが-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-であることによって、重合体中に含まれる繰り返しの基本骨格が同じであることから、電荷のトラップとなるような準位が形成されにくく、電荷輸送性に優れ、かつ耐久性に優れると考えらえる。
さらに好ましくはAとBとが同一であることであり、よりさらに好ましくはA及びBのXが、-C(R3)(R4)-であり、特に好ましくはAのXとBのXが-C(R3)(R4)-であり、且つ同一となる場合である。
【0106】
式(12)で表される繰り返し単位の構造は特に限定されないが、例えば以下のような構造が挙げられる。
【0107】
【0108】
式(1)のAr1が式(10)で表わされる場合、すなわち、式(12)で表わされる繰り返し単位のAr1が式(10)で表わされる繰り返し単位及び式(4)のAr4が式(5)である繰り返し単位を含む繰り返し単位として、特に限定されないが、例えば以下のような構造が挙げられる。
【0109】
【0110】
[式(2)と式(4)とが連結した繰り返し単位]
本実施形態の重合体の繰り返し単位の組み合わせは特に限定されないが、式(2)で表される繰り返し単位と式(4)のAr4が式(5)である繰り返し単位とが連結した、下記式(14)で表される繰り返し単位を有することが、電荷輸送性向上および耐久性向上
の観点から好ましい。また、本実施形態の重合体が式(5)で表される繰り返し単位を含む場合、式(2)で表される繰り返し単位と(5)で表される繰り返し単位との割合は、((5)で表される繰り返し単位のモル数)/(式(2)で表される繰り返し単位のモル数)が、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.9以上がよりさらに好ましく、1.0以上が特に好ましい。また、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
【0111】
【0112】
式(14)中、
Ar2、Ar3、X、R3、R4、R5、R6、p、q、i、j、k、l、m及びnは、式(2)、式(4)及び式(5)におけるものと各々同様である。
好ましい構造、範囲等も、式(2)、式(4)及び式(5)におけるものと同様である。
更に好ましくは、l=n=j=i及びk=1である。
【0113】
式(14)において、ねじれ構造の置換基を有するフェニレンに近い置換基を有さないフェニレン、または置換基を有するフェニレンと連結した構造をC、置換基を有さないフェニレンに近いフルオレン環、カルバゾール環、またはジヒドロフェナントレン骨格をDとしたとき、アミンと共役していない結合を有するCはアミンと共役していないため、LUMOが分布しにくく耐久性が向上する傾向にある。さらに、アミンと共役しているDはより共役が広いため、正孔輸送性が向上し、かつ安定となる傾向にある。
また、さらに好ましくは、DのXが-C(R7)(R8)-であるか、DのXが、-N(R9)-であるか、又はDのXがまたは-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-である。このとき、Dの、R7、R8、R9、R11、R12、R13及びR14は、同一であっても異なっていてもよい。
DのXが-C(R7)(R8)-であるか、DのXが-NR9-であるか、又はDのXが-C(R11)(R12)-C(R13)(R14)-であることによって、重合体中に含まれる繰り返しの基本骨格が同じであることから、電荷のトラップとなるような準位が形成されにくく、電荷輸送性に優れ、かつ耐久性に優れると考えらえる。
【0114】
好ましくは、Ar2及びAr3は、それぞれ独立して、下記式(15)または式(16)である。
【0115】
【0116】
式(14)で表される構造は特に限定されないが、例えば以下のような構造が挙げられる。
【0117】
【0118】
式(2)のAr2が式(10)で表わされる繰り返し単位及び式(4)のAr4が式(5)である繰り返し単位を含む繰り返し単位として、特に限定されないが、例えば以下の
ような構造が挙げられる。
【0119】
【0120】
<本発明の第二実施形態の重合体>
(側鎖に式(11)で表される構造を有する重合体)
本発明の第二実施形態である重合体として、側鎖に下記式(11)で表される構造を有
するものが挙げられる。式(11)で表される構造は、2つのカルバゾール構造の互いの窒素原子間の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基にLUMOが分布することで、電子や励起子に対する耐久性が向上するものと考えられる。
以上の作用のため、本実施形態の重合体は発光層の陽極側に隣接する層に用いた場合に高い効果を得ることができる。
【0121】
【0122】
(式(11)中、
Ar31は主鎖と連結する2価の基を表し、
Ar12は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、
Ar13~Ar15は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。
*は主鎖を構成する原子との結合位置を表す。)
【0123】
Ar31は主鎖と連結する2価の基を表す。特に限定されないが、好ましくは式(10)のAr11と同じであり、好ましい範囲、有していてもよい置換基等も同じである。Ar12~Ar15は、式(10)のAr12~Ar15と同じであり、好ましい範囲、有していてもよい置換基等も同じである。
【0124】
上記側鎖に式(11)で表される構造を有する重合体は、下記式(13)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【0125】
【0126】
(式(13)中、
Ar
12
~Ar15、Ar31は式(10)と同様であり、
Ar16は、重合体の主鎖を構成する構造を表す。)
【0127】
(Ar16)
Ar16は好ましくは前記式(4)のAr4と同様であり、さらに好ましくはAr4のさらに好ましい構造である式(5)と同様である。
【0128】
<その他>
以下、第一実施形態及び第二実施形態に共通する好ましい実施形態等について説明する。
[可溶性基]
本発明の第一実施形態及び第二実施形態の重合体は、溶媒への可溶性発現のため可溶性基を有することが好ましい。本発明における可溶性基は、炭素数3以上24以下、好ましくは炭素数12以下の、直鎖又は分岐のアルキル基またはアルキレン基を有する基である。これらの中でも好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、またはアラルキル基であり、例えば、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等である。より好ましくはn-ヘキシル基又はn-オクチル基である。可溶性基は置換基を有していてもよい。
【0129】
(可溶性基の数)
本実施形態の重合体が有する可溶性基は、湿式成膜法に利用可能な重合体溶液を得やすくなる点では、多い方が好ましい。一方で、成膜した層の上に湿式成膜法で他の層を形成した際に層が溶媒に溶解してしまうことによる膜厚減少が少ない点では、少ない方が好ましい。
【0130】
本実施形態の重合体が有する可溶性基の数は、重合体の1gあたりのモル数で表すことができる。
本実施形態の重合体が有する可溶性基の数を、重合体の1gあたりのモル数で表した場合、重合体1gあたり、通常4.0ミリモル以下、好ましくは3.0ミリモル以下、さらに好ましくは2.0ミリモル以下であり、また通常0.1ミリモル以上、好ましくは0.5ミリモル以上である。
可溶性基の数が上記範囲内であると、重合体が溶媒に溶解しやすく、湿式成膜法に適した重合体を含む組成物が得られ易い。また、可溶性基密度が適度であるため、加熱溶媒乾燥後の有機溶媒に対する難溶性が十分であるため、湿式成膜法での多層積層構造が形成可能となる。
【0131】
ここで、重合体の1gあたりの可溶性基の数は、重合体からその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出することができる。
例えば、後述の実施例1-1で合成した重合体1の場合で説明すると、重合体1において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均650であり、また可溶性基は、1繰り返し単位当たり平均1個である。これを単純比例により計算すると、分子量1gあたりの可溶性基の数は、1.54ミリモルと算出される。
【0132】
【0133】
[架橋性基]
本発明の第一実施形態及び第二実施形態の重合体は、架橋性基を有していてもよい。本実施形態の重合体における架橋性基は、式(1)で表される繰り返し単位中に存在していても良く、式(1)で表される繰り返し単位とは別の繰り返し単位中に存在していてもよい。特に、側鎖であるAr1に架橋性基を有することが、架橋反応が進行しやすいため好ましい。
架橋性基を有することで、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(難溶化反応)の前後で、有機溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。
【0134】
架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、該架橋性基の近傍に位置する他の分子を構成している基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。この場合、反応する基は架橋性基と同一の基でも異なった基でもよい。
架橋性基としては、芳香族環に縮環したシクロブテン環、芳香族環に結合したアルケニル基を含む基が好ましく、更に好ましくは下記架橋性基群Tから選ばれる基である。
架橋性基は、前記各構造が有する置換基にさらに置換していることが好ましい。
【0135】
(架橋性基群T)
架橋性基群Tは、以下に示す構造である。
【0136】
【0137】
上記架橋性基群Tにおいて、R21~R23は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。R24~R26は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。xは1~4の整数、yは1~5の整数、zは1~7の整数を表す。
xが2以上のとき、複数のR24は同じであっても異なっていてもよく、隣接するR2
4同士が結合して環を形成してもよい。
yが2以上のとき、複数のR25は同じであっても異なっていてもよく、隣接するR25同士が結合して環を形成してもよい。
zが2以上のとき、複数のR26は同じであっても異なっていてもよい。
Ar21、Ar22は置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0138】
R21~R26のアルキル基としては、炭素数が8以下、好ましくは6以下である直鎖又は分岐の鎖状アルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等である。より好ましくは、メチル基又はエチル基である。R21~R26の炭素数が8以下、好ましくは6以下であることで、架橋反応を立体的に阻害することもなく、膜の不溶化が起こりやすい傾向にある。
【0139】
R24~R26のアルコキシ基としては、炭素数が8以下、好ましくは6以下である直鎖又は分岐の鎖状アルコキシ基が挙げられる、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、2-プロポキシ基、n-ブトキシ基等である。より好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。R24~R26の炭素数が8以下、好ましくは6以下であれば、架橋反応を立体的に阻害することもなく、膜の不溶化が起こりやすい傾向にある。
【0140】
また、Ar21及びAr22の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環等の6員環の単環又は2~5縮合環が挙げられる。特に1個の遊離原子価を有するベンゼン環が好ましい。
Ar22は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を2以上結合させた基であってもよい。このような基としては、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられ、4,4’-ビフェニレン基が好ましい。
Ar21、Ar22が有していてもよい置換基は前述の置換基群Zと同様である。
【0141】
架橋性基として、シンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、1価の遊離原子価を有するベンゾシクロブテン環、1価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環等の環化付加反応する基が、素子の電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
また、架橋性基の中でも、架橋後の構造が特に安定な点で、1価の遊離原子価を有する芳香族環に縮環したシクロブテン環、1価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環を含む基が好ましく、中でもベンゾシクロブテン環または1価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環が更に好ましく、架橋反応温度が低い点で1価の遊離原子価を有する1,2-ジヒドロシクロブタ〔a〕ナフタレン環が特に好ましい。
【0142】
(架橋性基の数)
本実施形態の重合体が有する架橋性基は、架橋することにより十分に不溶化し、その上に湿式成膜法で他の層を形成しやすくなる点では、多い方が好ましい。一方で、形成された層にクラックが生じ難く、未反応架橋性基が残りにくく、有機電界発光素子が長寿命になりやすい点では、架橋性基は少ないことが好ましい。
【0143】
本実施形態の重合体における、1つのポリマー鎖の中に存在する架橋性基は、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上であり、また好ましくは200個以下、より好ましくは100個以下である。
また、本実施形態の重合体が有する架橋性基の数は、重合体の分子量1000あたりの数で表すことができる。
本実施形態の重合体が有する架橋性基の数を、重合体の分子量1000あたりの数で表
した場合、分子量1000あたり、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0個以下であり、また通常0.01個以上、好ましくは0.05個以上である。
架橋性基の数が上記範囲内であると、クラック等が起き難く、平坦な膜が得られ易い。また、架橋密度が適度であるため、架橋反応後の層内に残る未反応の架橋性基が少なく、得られる素子の寿命に影響し難い。
さらに、架橋反応後の、有機溶媒に対する難溶性が十分であるため、湿式成膜法での多層積層構造が形成しやすい。
【0144】
ここで、重合体の分子量1000あたりの架橋性基の数は、重合体からその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出することができる。
例えば、後述の実施例で合成した重合体3の場合で説明すると、重合体3において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均868であり、また架橋性基は、1繰り返し単位当たり0.114個である。これを単純比例により計算すると、分子量1000あたりの架橋性基の数は、0.132個と算出される。
【0145】
【0146】
また、例えば、後述の実施例で合成した重合体13の場合で説明すると、重合体13において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均966.45であり、また架橋性基は、1繰り返し単位当たり0.145個である。これを単純比例により計算すると、分子量1000あたりの架橋性基の数は、0.15個と算出される。
【0147】
【0148】
また、本発明の第一実施形態及び第二実施形態の重合体は架橋基を有さないことも好ましい。架橋基を有さない本実施形態の重合体を用いて作製された有機電界発光素子は、長寿命化するという傾向がある。
本実施形態の重合体は湿式成膜法にて成膜することにより不溶化する。すなわち、本発明の重合体を溶媒に溶解させて溶液を調製し、溶液を基板上に塗布し、溶媒を除去して乾燥し、加熱して焼成することにより、不溶化する。そのため、本実施形態の重合体を用いて正孔輸送層を湿式成膜法にて形成した場合、該正孔輸送層に接する発光層を続けて湿式成膜して積層塗布成膜することが可能である。このとき、発光層に接する正孔輸送層が架橋基を有さない本実施形態の重合体で形成されている場合、未反応の架橋基が存在しないため、素子を通電駆動しているときに未反応の架橋基が意図せぬ反応を起こして材料が劣化することが無い。そのため、素子の駆動寿命が長寿命化すると考えられる。
【0149】
さらに、架橋基を有さない本実施形態の重合体は、架橋基を有さない本実施形態以外の重合体とともに用いた場合においても、溶媒に対して不溶である薄膜を得ることが可能である。そのため、正孔輸送層の設計の範囲が広がり、所望の正孔輸送層を得やすくなる。架橋基を有さない本実施形態の重合体と架橋基を有さない本発明以外の重合体をともに用いる場合、両者をともに溶媒に溶解させて溶液を調製し、溶液を基板上に塗布し、溶媒を除去して乾燥し、加熱して焼成することにより薄膜を形成する。
架橋基を有さない本実施形態の重合体と架橋基を有さない本実施形態以外の重合体とを用いて形成された膜中の、架橋基を有さない本発明の重合体の含有量は、10重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは25重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは70重量%以上である。架橋基を有さない本発明以外の重合体を混合する効果を得るためには、架橋基を有さない本発明の重合体の含有量は、95重量%以下、好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。この範囲とすることで、得られた膜が不溶化しやすく、得られた素子の特性が向上する傾向にある。
【0150】
[重合体の分子量]
本発明の式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体の重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、通常2,500以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、特に好ましくは30,000以上である。
【0151】
重合体の重量平均分子量が上記上限値以下であることで、溶媒に対する溶解性が得られ、成膜性に優れる傾向にある。また、重合体の重量平均分子量が上記下限値以上であることで、重合体のガラス転移温度、融点及び気化温度の低下が抑制され、耐熱性が向上する場合がある。加えて、架橋反応後の塗膜の有機溶媒に対する不溶性が十分である場合がある。
【0152】
また、本発明の式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体における数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、通常2,000以上、好ましくは4,000以上、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。
【0153】
さらに、本発明の式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体における分散度(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。尚、分散度は値が小さい程よいため、下限値は理想的には1である。該重合体の分散度が、上記上限値以下であると、精製が容易で、また溶媒に対する溶解性や電荷輸送能が良好である。
【0154】
本発明の式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体の重量平均分子量(Mw)は
、好ましくは10000以上であり、より好ましくは20000以上であり、さらに好ましくは40000以上である。また、好ましくは2000000以下であり、より好ましくは1000000以下である。
重量平均分子量が上記上限値以下であることで、不純物の高分子量化が抑制され、容易に精製ができる傾向にある。また、重量平均分子量が上記下限値以上であることで、ガラス転移温度、融点、気化温度などの低下が抑制され、耐熱性が向上する傾向にある。
【0155】
また、式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000000以下であり、より好ましくは800000以下であり、さらに好ましくは500000以下である。また、好ましくは5000以上であり、より好ましくは10000以上、さらに好ましくは20000以上である。
さらに、本発明の式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3以下であり、より好ましくは2.4以下であり、より好ましくは2.1以下であり、さらに好ましくは2以下である。また、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.1以上であり、さらに好ましくは1.2以上である。上記上限値以下であることで、精製が容易となり、溶媒に対する溶解性の低下抑制や、電荷輸送能の低下抑制ができる傾向にある。
【0156】
通常、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量及び数平均分子量が算出される。
【0157】
[具体例]
本発明の式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体の具体例を以下に示すが、本発明の重合体はこれらに限定されるものではない。なお、化学式中の数字は繰返し単位のモル比を表す。
これらの重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体等のいずれでもよく、単量体の配列順序には限定されない。
【0158】
【0159】
本発明の式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体及び、本発明の式(2)で表される繰り返し単位のAr2が式(10)で表わされる構造を有する重合体の具体例を以下に示すが、本発明の重合体はこれらに限定されるものではない。下記重合体中のn及びn’は繰り返し数を表す。なお、化学式中の数字は繰返し単位のモル比を表す。
これらの重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体等のいずれでもよく、単量体の配列順序は限定されない。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
[重合体の製造方法]
本実施形態の重合体の製造方法は特には制限されず、本発明の重合体が得られる限り任意である。例えば、Suzuki反応による重合方法、Grignard反応による重合方法、Yamamoto反応による重合方法、Ullmann反応による重合方法、Buchwald-Hartwig反応による重合方法等などによって製造できる。
【0164】
Ullmann反応による重合方法及びBuchwald-Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、式(1a)で表されるジハロゲン化アリール(XはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を表す。)と式(2b)で表される1級アミノアリールとを反応させることにより、本発明の式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体が合成される。
【0165】
【0166】
上記式中、Yはハロゲン原子を表し、Ar1、R1、R2、Xは前記式(1)と同義である。
【0167】
また、Ullmann反応による重合方法及びBuchwald-Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、式(2a)で表されるジハロゲン化アリール(XはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を表す。)と式(2b)で表される1級アミノアリールとを反応させることにより、本実施形態の式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体が合成される。
【化49】
【0168】
上記式中、R3、R4、R5、R6及び、Ar2は前記式(2)と同義である。
【0169】
なお、上記の重合方法において、通常、N-アリール結合を形成する反応は、例えば炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。
【0170】
<有機電界発光素子材料>
本発明の一実施形態である重合体は、有機電界発光素子材料として特に好適に用いるこ
とができる。つまり、上記の重合体は有機電界発光素子材料として用いることが好ましい。
本発明の一実施形態である重合体は通常、有機電界発素子における陽極と発光層の間に含まれる。すなわち、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する材料、つまり電荷輸送性材料として用いることが好ましい。
【0171】
電荷輸送性材料として用いる場合、上記の重合体を1種類含有するものであってもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含有するものであってもよい。
【0172】
上記の重合体を用いて有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する場合、正孔注入層又は正孔輸送層中の上記の重合体の含有量は、通常1質量%以上100質量%以下、好ましくは5質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上100質量%以下である。上記の範囲であると、正孔注入層又は正孔輸送層の電荷輸送性が向上し、駆動電圧が低減し、駆動安定性が向上するため好ましい。
【0173】
上記の重合体が、前記正孔注入層又は正孔輸送層中で100質量%でない場合に、正孔注入層又は正孔輸送層を構成する成分としては後述する正孔輸送性化合物等が挙げられる。
また、有機電界発光素子を簡便に製造することができることから、上記の重合体は、湿式成膜法で形成される有機層に用いることが好ましい。
【0174】
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の一実施形態である有機電界発光素子用組成物は、上記の重合体を含有するものである。なお、本実施形態の有機電界発光素子用組成物は、上記の重合体を1種類含有するものであってもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含有するものであってもよい。
【0175】
[重合体の含有量]
本実施形態の有機電界発光素子用組成物中の上記の重合体の含有量は、通常0.01質量%以上70質量%以下、好ましくは0.1質量%以上60質量%、さらに好ましくは0.5質量%以上50質量%以下である。
上記範囲内であると、形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
本実施形態の有機電界発光素子用組成物は、上記の重合体以外に溶媒等を含むことができる。
【0176】
[溶媒]
本実施形態の有機電界発光素子用組成物は、通常、溶媒を含有する。この溶媒は、本発明の重合体を溶解するものが好ましい。具体的には、上記の重合体を、室温で通常0.05質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上溶解する溶媒が好適である。
【0177】
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒;1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族
エステル系溶媒;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等のエステル系溶媒;等の有機溶媒、その他、後述の正孔注入層形成用組成物や正孔輸送層形成用組成物に用いられる有機溶媒が挙げられる。
【0178】
なお、溶媒は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
中でも、本実施形態の有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒としては、20℃における表面張力が、通常40dyn/cm未満、好ましくは36dyn/cm以下、より好ましくは33dyn/cm以下である溶媒が好ましい。
【0179】
本実施形態の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により塗膜を形成し、上記の重合体を架橋させて有機層を形成する場合、溶媒と下地の親和性が高いことが好ましい。これは、膜質の均一性が有機電界発光素子の発光の均一性及び安定性に大きく影響するためである。従って、湿式成膜法に用いる有機電界発光素子用組成物には、よりレベリング性が高く均一な塗膜を形成しうるように表面張力が低いことが求められる。そこで前記のような低い表面張力を有する溶媒を使用することにより、上記の重合体を含有する均一な層を形成することができ、ひいては均一な架橋層を形成することができることから、好ましい。
【0180】
低表面張力の溶媒の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、アニソール等のエーテル系溶媒、トリフルオロメトキシアニソール、ペンタフルオロメトキシベンゼン、3-(トリフルオロメチル)アニソール、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等が挙げられる。
【0181】
また一方で、本実施形態の有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒としては、25℃における蒸気圧が、通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下であり、通常0.1mmHg以上であるものが好ましい。このような溶媒を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適で、上記の重合体の性質に適した有機電界発光素子用組成物を調製することができる。
このような溶媒の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が挙げられる。
【0182】
ところで、水分は有機電界発光素子の性能劣化を引き起こす可能性があり、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性がある。そこで、湿式成膜中に残留する水分をできる限り低減するために、前記の溶媒の中でも、25℃における水の溶解度が1質量%以下であるものが好ましく、0.1質量%以下である溶媒がより好ましい。
【0183】
本実施形態の有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒の含有量は、通常10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。溶媒の含有量が上記下限以上であることにより、形成される層の平坦さ及び均一さを良好にすることができる。
【0184】
[電子受容性化合物]
本実施形態の有機電界発光素子用組成物は、低抵抗化する点で、さらに電子受容性化合物を含有することが好ましい。特に、本実施形態の有機電界発光素子用組成物を正孔注入層を形成するために用いる場合には、該組成物は電子受容性化合物を含有することが好ましい。
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、本発明の重合体から一電子受容する能力を
有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
【0185】
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、及び、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。
【0186】
具体的には、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号)、(国際公開第2017/164268号);塩化鉄(III)(特開平11-251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003-31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体及びヨウ素等が挙げられる。
【0187】
本実施形態の有機電界発光素子用組成物は、上記のような電子受容性化合物の1種を単独で含んでいてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で含んでいてもよい。
【0188】
本実施形態の有機電界発光素子用組成物が電子受容性化合物を含む場合、本発明の有機電界発光素子用組成物の電子受容性化合物の含有量は、通常0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。また、有機電界発光素子用組成物中の本発明の重合体に対する電子受容性化合物の割合は、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0189】
有機電界発光素子用組成物中の電子受容性化合物の含有量が上記下限以上であると重合体から電子受容体が電子を受容し、形成した有機層が低抵抗化するため好ましく、上記上限以下であると形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
【0190】
[カチオンラジカル化合物]
本実施形態の有機電界発光素子用組成物は、更にカチオンラジカル化合物を含有していてもよい。
カチオンラジカル化合物としては、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンとからなるイオン化合物が好ましい。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
【0191】
また、カチオンラジカルとしては、後述の正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であることが好ましい。正孔輸送性化合物として好ましい化合物から一電子取り除いた化学種であることが、非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、及び溶解性等の点から好適である。
【0192】
ここで、カチオンラジカル化合物は、後述の正孔輸送性化合物と前述の電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンとからなるカチオンイオン化
合物が生成する。
【0193】
本実施形態の有機電界発光素子用組成物がカチオンラジカル化合物を含む場合、有機電界発光素子用組成物のカチオンラジカル化合物の含有量は、通常0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上であり、通常40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。カチオンラジカル化合物の含有量が下限以上であると形成した有機層が低抵抗化するため好ましく、上限以下であると形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
【0194】
なお、本実施形態の有機電界発光素子用組成物には、上記の成分以外に、後述の正孔注入層形成用組成物や正孔輸送層形成用組成物に含まれる成分を、後述の含有量で含有していてもよい。
【0195】
<発光層材料>
本発明の一実施形態である重合体を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する電荷輸送性材料として用いた有機電界発光素子において、発光層は発光材料とホスト材料とを含む。
発光材料は燐光発光材料または蛍光発光材料を用いることができる。
【0196】
<燐光発光層>
本発明の一実施形態である重合体を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する電荷輸送性材料として用いた有機電界発光素子において、発光層が燐光発光層である場合、燐光発光材料としては以下の材料が好ましい。
【0197】
<燐光発光材料>
燐光発光材料とは、励起三重項状態から発光を示す材料をいう。例えば、Ir、Pt、Euなどを有する金属錯体化合物がその代表例であり、材料の構造として、金属錯体を含むものが好ましい。
【0198】
金属錯体の中でも、三重項状態を経由して発光する燐光発光性有機金属錯体として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7~11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。このような燐光発光材料としては、式(201)で表わされる化合物、または式(205)で表わされる化合物が好ましく、より好ましくは式(201)で表わされる化合物である。
【0199】
【0200】
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造または置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
R201、R202は各々独立に式(202)で表わされる構造であり、“*”は環A1及び/または環A2と結合することを表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよく、R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、または置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A201に結合する置換基どうし、環A2に結合する置換基どうし、または環A1に結合する置換基と環A2に結合する置換基どうしは、互いに結合して環を形成してもよい。
B201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201およびB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、または、B201およびB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
i1、i2はそれぞれ独立に、0以上12以下の整数を表す。
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
jは、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
k1、k2はそれぞれ独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数である。
mは1~3の整数である。
【0201】
特に断りのない場合、置換基としては、次の置換基群Z’から選ばれる基が好ましい。<置換基群Z’>
・アルキル基、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~12
のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基。
・アルコキシ基、好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基。
・アリールオキシ基、好ましくは炭素数6~20のアリールオキシ基、より好ましくは炭素数6~14のアリールオキシ基、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールオキシ基、特に好ましくは炭素数6のアリールオキシ基。
・ヘテロアリールオキシ基、好ましくは炭素数3~20のヘテロアリールオキシ基、より好ましくは炭素数3~12のヘテロアリールオキシ基。
・アルキルアミノ基、好ましくは炭素数1~20のアルキルアミノ基、より好ましくは炭素数1~12のアルキルアミノ基。
・アリールアミノ基、好ましくは炭素数6~36のアリールアミノ基、より好ましくは炭素数6~24のアリールアミノ基。
・アラルキル基、好ましくは炭素数7~40のアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のアラルキル基、さらに好ましくは炭素数7~12のアラルキル基。
・ヘテロアラルキル基、好ましくは炭素数7~40のヘテロアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のヘテロアラルキル基、
・アルケニル基、好ましくは炭素数2~20のアルケニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基、特に好ましくは炭素数2~6のアルケニル基。
・アルキニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルキニル基。
・アリール基、好ましくは炭素数6~30のアリール基、より好ましくは炭素数6~24のアリール基、さらに好ましくは炭素数6~18のアリール基、特に好ましくは炭素数6~14のアリール基。
・ヘテロアリール基、好ましくは炭素数3~30のヘテロアリール基、より好ましくは炭素数3~24のヘテロアリール基、さらに好ましくは炭素数3~18のヘテロアリール基、特に好ましくは炭素数3~14のヘテロアリール基。
・アルキルシリル基、好ましくはアルキル基の炭素数が1~20であるアルキルシリル基、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~12であるアルキルシリル基。
・アリールシリル基、好ましくはアリール基の炭素数が6~20であるアリールシリル基、より好ましくはアリール基の炭素数が6~14であるアリールシリル基。
・アルキルカルボニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキルカルボニル基。
・アリールカルボニル基、好ましくは炭素数7~20のアリールカルボニル基。
以上の基は一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられているか、若しくは1つ以上の水素原子が重水素原子で置き換えらえられていてもよい。
特に断りのない限り、アリールは芳香族炭化水素であり、ヘテロアリールは芳香族複素環である。
・水素原子、重水素原子、フッ素原子、シアノ基、または、-SF5。
【0202】
(置換基群Z’の中の好ましい基)
これら置換基群Z’のうち、
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、およびこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、または、-SF5であり、
より好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、およびこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、または、-SF5であり、
さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、
アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基であり、
特に好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、
最も好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。
【0203】
(Z’に置換する置換基)
これら置換基群Zにはさらに置換基群Zから選ばれる置換基を置換基として有していてもよい。有していてもよい置換基の好ましい基、より好ましい基、さらに好ましい基、特に好ましい基、最も好ましい基は置換基群Zの中の好ましい基と同様である。
【0204】
<環A1>
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造または置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。(芳香族炭化水素環)
(芳香族炭化水素)
環A1の芳香族炭化水素としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素であり、
具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましい。
(芳香族複素環)
環A1の芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環が好ましく、さらに好ましくは、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環である。
環A1としてより好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、特に好ましくはベンゼン環またはフルオレン環であり、最も好ましくはベンゼン環である。
【0205】
<環A2>
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
(芳香族複素環)
環A2の芳香族複素環としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、
具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環が挙げられ、
さらに好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、
より好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、
最も好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環である。
【0206】
環A1と環A2の好ましい組合せとしては、(環A1-環A2)と表記すると、
(ベンゼン環-ピリジン環)、(ベンゼン環-キノリン環)、(ベンゼン環-キノキサリン環)、(ベンゼン環-キナゾリン環)、(ベンゼン環-イミダゾール環)、(ベンゼン環-ベンゾチアゾール環)である。
【0207】
(環A1、環A2の置換基)
環A1、環A2が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Z’から選ばれる1種または複数種の置換基である。
【0208】
(Ar201~Ar203)
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、または置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
【0209】
(Ar201、Ar202、Ar203の芳香族炭化水素環)
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造である場合、
芳香族炭化水素構造としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環であり、
具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましく、
より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環が好ましく、
最も好ましくはベンゼン環である。
【0210】
(フルオレンの9、9’位)
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいフルオレン環である場合、フルオレン環の9位および9’位は、置換基を有するかまたは隣接する構造と結合していることが好ましい。
【0211】
(o-、m-フェニレン)
Ar201、Ar202のいずれかが置換基を有していてもよいベンゼン環である場合、少なくとも一つのベンゼン環がオルト位またはメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましく、少なくとも一つのベンゼン環がメタ位で隣接する構造と結合していることがより好ましい。
【0212】
(Ar201、Ar202、Ar203の芳香族複素環)
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族複素環構造である場合、
芳香族複素環構造としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、または硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、
具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環が挙げられ、
さらに好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
【0213】
(カルバゾール環のN位)
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいカルバゾール環である場合、カルバゾール環のN位は、置換基を有するかまたは隣接する構造と結合していることが好ましい。
【0214】
(脂肪族炭化水素)
Ar202が置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造である場合、直鎖、分岐鎖、または環状構造を有する脂肪族炭化水素構造であり、
好ましくは炭素数が1以上24以下であり、
さらに好ましくは炭素数が1以上12以下であり、
より好ましくは炭素数が1以上8以下である。
【0215】
(i1、i2(フェニレン、アラルキル、アルキル)の好ましい範囲)
i1は0~12の整数を表し、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。この範囲であることにより、溶解性向上、電荷輸送性向上が見込まれる。
i2は0~12の整数を表し、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。この範囲であることにより、溶解性向上、電荷輸送性向上が見込まれる。
(i3(末端)の好ましい範囲)
i3は好ましくは0~5の整数を表し、さらに好ましくは0~2、より好ましくは0または1である。
(j(フェニレンの先の置換基)の好ましい範囲)
jは好ましくは0~2の整数を表し、さらに好ましくは0または1である。
(k1,k2(環A1、A2の置換基)の好ましい範囲)
k1、k2は好ましくは0~3の整数を表し、さらに好ましくは1~3であり、より好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
【0216】
(Ar201、Ar202、Ar203の好ましい置換基)
Ar201、Ar202、Ar203が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Zから選ばれる1種または複数種の置換基であり、好ましい基も前記置換基群Zの通りであるが、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、であり、最も好ましくは無置換(水素原子)である。
【0217】
(式(201)の好ましい構造)
前記式(202)であらわされる構造のなかでも、以下の構造を有する材料が好ましい。(フェニレン連結式)
ベンゼン環が連結した基を有する構造。すなわち、
Ar201がベンゼン環構造、i1が1~6、少なくとも一つの前記ベンゼン環がオルト位またはメタ位で隣接する構造と結合している。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
((フェニレン)-アラルキル(アルキル))
・環A1または環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造、すなわち、
Ar201が芳香族炭化水素構造または芳香族複素環構造、i1が1~6、
Ar202が脂肪族炭化水素構造、i2が1~12、好ましくは3~8、
Ar203がベンゼン環構造、i3が0または1。
好ましくは、Ar201は前記芳香族炭化水素構造であり、さらに好ましくはベンゼン環が1~5連結した構造であり、より好ましくはベンゼン環1つである。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
(デンドロン)
・環A1または環A2に、デンドロンが結合した構造。例えば、
Ar201、Ar202がベンゼン環構造、Ar203がビフェニルまたはターフェニル構造、
i1、i2が1~6、i3が2、jが2。
この構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0218】
(B201-L200-B202)
B201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201およびB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子または窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、または、B201およびB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
B201-L200-B202であらわされる構造のうち、好ましくは下記式(203)または(204)で表される構造である。
【0219】
【0220】
式(203)中、R211、R212、R213は置換基を表す。
【0221】
【0222】
式(204)中、環B3は、置換基を有していてもよい、窒素原子を含む芳香族複素環構造を表す。
環B3は好ましくはピリジン環である。
【0223】
式(201)で表わされる燐光発光材料としては特に限定はされないが、具体的には以下の構造が挙げられる。
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
(式(205)中、M2は金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92~R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。)
式(205)中、M2は金属を表す。具体例としては、周期表第7~11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金または金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
【0231】
また、式(205)において、R92およびR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0232】
更に、Tが炭素原子の場合、R94およびR95は、それぞれ独立に、R92およびR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は該Tに直接結合するR94またはR95は存在しない。また、R92~R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記の置換基とすることができる。 更に、R92~R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0233】
(分子量)
燐光発光材料の分子量は、好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。また、本発明における燐光発光材料の分子量は、通常800以上、好ましくは1000以上、更に好ましくは1200以上である。この分子量範囲であることによって、燐光発光材料どうしが凝集せず電荷輸送材料と均一に混合し、発光効率の高い発光層を得ることができると考えられる。
燐光発光材料の分子量は、Tgや融点、分解温度等が高く、燐光発光材料及び形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーション等に起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇等が起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、燐光発光材料の分子量は、有機化合物の精製が容易である点で
は小さいことが好ましい。
【0234】
(ホスト材料)
本発明の重合体を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する電荷輸送性材料として用いた有機電界発光素子において、発光層が燐光発光材料である場合、ホスト材料としては以下の材料が好ましい。
<ホスト材料>
発光層のホスト材料は、電荷輸送性に優れる骨格を有する材料であり、電子輸送性材料、正孔輸送性材料および電子と正孔の両方を輸送可能な両極性材料から選ばれることが好ましい。
【0235】
(電荷輸送性に優れる骨格)
電荷輸送性に優れる骨格としては、具体的には、芳香族構造、芳香族アミン構造、トリアリールアミン構造、ジベンゾフラン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、フタロシアニン構造、ポルフィリン構造、チオフェン構造、ベンジルフェニル構造、フルオレン構造、キナクリドン構造、トリフェニレン構造、カルバゾール構造、ピレン構造、アントラセン構造、フェナントロリン構造、キノリン構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造、オキサジアゾール構造又はイミダゾール構造等が挙げられる。
【0236】
(電子輸送性材料)
電子輸送性材料としては、電子輸送性に優れ構造が比較的安定な材料である観点から、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造を有する化合物がより好ましく、ピリミジン構造、トリアジン構造を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0237】
(正孔輸送性材料)
正孔輸送性材料は、正孔輸送性に優れた構造を有する化合物であり、前記電荷輸送性に優れた中心骨格の中でも、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、トリアリールアミン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造又はピレン構造が正孔輸送性に優れた構造として好ましく、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造又はトリアリールアミン構造がさらに好ましい。
【0238】
(3環以上の縮合環構造)
発光層のホスト材料は、3環以上の縮合環構造を有することが好ましく、3環以上の縮合環構造を2以上有する化合物または5環以上の縮合環を少なくとも1つ有する化合物であることがさらに好ましい。これらの化合物であることで、分子の剛直性が増し、熱に応答する分子運動の程度を抑制する効果が得られ易くなる。さらに、3環以上の縮合環及び5環以上の縮合環は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有することが電荷輸送性及び材料の耐久性の点で好ましい。
3環以上の縮合環構造としては、具体的には、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、クリセン構造、ナフタセン構造、トリフェニレン構造、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、インデノフルオレン構造、インドロフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造等が挙げられる。電荷輸送性ならびに溶解性の観点から、フェナントレン構造、フルオレン構造、インデノフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造及びジベンゾチオフェン構造からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、電荷に対する耐久性の観点からカルバゾール構造又はインドロカルバゾール構造がさらに好ましい。
【0239】
(トリアジン_ピリミジン)
本発明においては、有機電界発光素子の電荷に対する耐久性の観点から、発光層のホス
ト材料の内、少なくとも一つはピリミジン骨格又はトリアジン骨格を有する材料であることが好ましい。
(分子量範囲)
発光層のホスト材料は、可撓性に優れる観点では高分子材料であることが好ましい。可撓性に優れる材料を用いて形成された発光層は、フレキシブル基板上に形成された有機電界発光素子の発光層として好ましい。発光層に含まれるホスト材料が高分子材料である場合、重量平均分子量は、好ましくは5,000以上1,000,000以下、さらに好ましくは10,000以上、500,000以下、より好ましくは10,000以上100,000以下である。
また、発光層のホスト材料は、合成および精製のしやすさ、電子輸送性能および正孔輸送性能の設計のしやすさ、溶媒に溶解した時の粘度調整のしやすさの観点から、低分子であることが好ましい。発光層に含まれるホスト材料が低分子材料である場合、分子量は、5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
【0240】
(青蛍光発光層)
本発明の重合体を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する電荷輸送性材料として用いた有機電界発光素子において、発光層が蛍光発光材料である場合、下記の青蛍光発光材料であることが好ましい。
【0241】
(青蛍光発光材料)
青蛍光発光層用発光材料としては特に限定されないが、下記式(211)が好ましい。
【0242】
【0243】
上記式(211)において、
Ar241は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素縮合環構造を表し、
Ar242、Ar243は各々独立に置換基を有していてもよいアルキル基、芳香族炭化水素基またはこれらが結合した基を表す。
n41は1~4である。
【0244】
Ar241は好ましくは炭素数10~30の芳香族炭化水素縮合環構造を表し、
具体的な構造としては、ナフタレン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナトレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレン等があげられる。
さらに好ましくは炭素数12~20の芳香族炭化水素縮合環構造であり、
具体的な構造としては、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナトレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレンがあげられる。
より好ましくは炭素数16~18の芳香族炭化水素縮合環構造であり、
具体的な構造としては、フルオランテン、ピレン、クリセンがあげられる。
n41は1~4であり、好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、最も好ましくは2である。
【0245】
(Ar241、Ar242、Ar243の置換基)
Ar241、Ar242、Ar243が有していてもよい置換基は、前記置換基群Zから選ばれる基が好ましく、より好ましくは置換基群Zに含まれる、炭化水素基であり、さらに好ましくは置換基群Zとして好ましい基の中の炭化水素基である。
【0246】
(青蛍光発光層用ホスト材料)
本発明の重合体を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する電荷輸送性材料として用いた有機電界発光素子において、発光層が燐光発光材料である場合、ホスト材料としては以下の材料が好ましい。
青蛍光発光層用ホスト材料としては特に限定されないが、下記式(212)が好ましい。
【0247】
【0248】
上記式(212)において、
R241、R242はそれぞれ独立に式(213)で表わされる構造であり、
R243は置換基を表し、R243は複数ある場合同一であっても異なっていてもよく、n43は0~8である。
【0249】
【0250】
Ar244、Ar245はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、または置換基を有していてもよい複素芳香環構造を表し、
Ar244、Ar245はそれぞれ、複数存在する場合、同一であっても異なっていてもよく、
n44は1~5、n45は0~5である。
【0251】
Ar244は好ましくは、
置換基を有していてもよい、炭素数6~30の単環または縮合環である芳香族炭化水素構造であり、
より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~12の単環または縮合環である芳香族炭化水素構造である。
Arr245は好ましくは、
置換基を有していてもよい、炭素数6~30の単環または縮合環である芳香族炭化水素構造、または、
置換基を有していてもよい、炭素数6~30の縮合環である芳香族複素環構造であり、
より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~12の単環または縮合環である芳香族炭化水素構造、または、
置換基を有していてもよい、炭素数12の縮合環である芳香族複素環構造である。
n44は、好ましくは1~3であり、より好ましくは1または2であり、
n45は、好ましくは0~3であり、より好ましくは0~2である。
【0252】
(R243、Ar244、Ar245の置換基)
置換基であるR243および、Ar244、Ar245が有していてもよい置換基は、前記置換基群Zから選ばれる基が好ましく、より好ましくは置換基群Zに含まれる、炭化水素基であり、さらに好ましくは置換基群Zとして好ましい基の中の炭化水素基である。
【0253】
(分子量)
青蛍光発光層用発光材料およびホスト材料の分子量は5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下であり、通常300以上、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。
【0254】
<有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極と、該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層が、本発明の重合体を含む本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された層を含むことを特徴とする。
【0255】
本発明の有機電界発光素子において、湿式成膜法により形成された層は、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方であることが好ましく、特に、この有機層が正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を備え、これら正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成された層であることが好ましい。
【0256】
本発明において湿式成膜法とは、成膜方法、即ち、塗布方法として、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の湿式で成膜させる方法を採用し、この塗布膜を乾燥させて膜形成を行う方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法等が好ましい。
【0257】
本発明の有機電界発光素子の構造の一例として、
図1に有機電界発光素子10の構造例の模式図(断面)を示す。
図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
以下、本発明の有機電界発光素子の層構成及びその一般的形成方法等の実施の形態の一例を、
図1を参照して説明する。
【0258】
[基板]
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものであり、通常、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。これらのうち、ガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。基板は、外気による有機電界発光素子の劣化が起こり難いことからガスバリア性の高い材質とするのが好ましい。このため、特に合成樹脂製の基板等のようにガスバリア性の低い材質を用いる場合は、基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸
化膜等を設けてガスバリア性を上げるのが好ましい。
【0259】
[陽極]
陽極2は、発光層5側の層に正孔を注入する機能を担う。
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック及びポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0260】
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式法により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより形成することもできる。また、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0261】
陽極2は、通常、単層構造であるが、適宜、積層構造としてもよい。陽極2が積層構造である場合、1層目の陽極上に異なる導電材料を積層してもよい。
【0262】
陽極2の厚みは、必要とされる透明性と材質等に応じて決めればよい。特に高い透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率が60%以上となる厚みが好ましく、80%以上となる厚みが更に好ましい。陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下とするのが好ましい。一方、透明性が不要な場合は、陽極2の厚みは必要な強度等に応じて任意に厚みとすればよく、この場合、陽極2は基板と同一の厚みでもよい。
【0263】
陽極2の表面に他の層を成膜する場合は、成膜前に、紫外線/オゾン、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ等の処理を施すことにより、陽極2上の不純物を除去すると共に、そのイオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させておくことが好ましい。
【0264】
[正孔注入層]
陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層は、通常、正孔注入輸送層又は正孔輸送層と呼ばれる。そして、陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層が2層以上ある場合に、より陽極側に近い方の層を正孔注入層3と呼ぶことがある。正孔注入層3は、陽極2から発光層5側に正孔を輸送する機能を強化する点で、形成することが好ましい。正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層3は、陽極2上に形成される。
【0265】
正孔注入層3の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
【0266】
正孔注入層の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。成膜性が優れる点では、湿式成膜法により形成することが好ましい。
【0267】
正孔注入層3は、正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがより好ましい。更には、正孔注入層中にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことが特に好ましい。
【0268】
以下に、一般的な正孔注入層の形成方法について説明するが、本実施形態の有機電界発光素子において、正孔注入層は、本発明の一実施形態である上記の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成されることが好ましい。
【0269】
[正孔輸送性化合物]
正孔注入層形成用組成物は、通常、正孔注入層3となる正孔輸送性化合物を含有する。また、湿式成膜法の場合は、通常、更に溶媒も含有する。正孔注入層形成用組成物は、正孔輸送性が高く、注入された正孔を効率よく輸送できるのが好ましい。このため、正孔移動度が大きく、トラップとなる不純物が製造時や使用時等に発生し難いことが好ましい。また、安定性に優れ、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対する透明性が高いことが好ましい。特に、正孔注入層が発光層と接する場合は、発光層からの発光を消光しないものや発光層とエキサイプレックスを形成して、発光効率を低下させないものが好ましい。
【0270】
正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から、4.5eV~6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、キナクリドン系化合物等が挙げられる。
【0271】
上述の例示化合物のうち、非晶質性及び可視光透過性の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
【0272】
芳香族三級アミン化合物の種類は、特に制限されないが、表面平滑化効果により均一な発光を得やすい点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)を用いることが好ましい。
【0273】
正孔注入層3には、正孔輸送性化合物の酸化により、正孔注入層の導電率を向上させることができるため、前述の電子受容性化合物や、前述のカチオンラジカル化合物を含有していることが好ましい。
【0274】
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)することによっても生成する。
【0275】
ここでいう酸化重合は、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、又は、電気化学的に酸化するものである。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
【0276】
[湿式成膜法による正孔注入層の形成]
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層となる材料を可溶な溶媒(正孔注入層用溶媒)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥させることにより形成する。
【0277】
正孔注入層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点では、低い方が好ましく、また、一方、正孔注入層に欠陥が生じ難い点では、高い方が好ましい。具体的には、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのが更に好ましく、0.5質量%以上であるのが特に好ましく、また、一方、70質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのが更に好ましく、50質量%以下であるのが特に好ましい。
【0278】
溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。
【0279】
エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル及び1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。
【0280】
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
【0281】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3-イソプロピルビフェニル、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0282】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
これらの他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
【0283】
正孔注入層3の湿式成膜法による形成は、通常、正孔注入層形成用組成物を調製後に、これを、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより行われる。
正孔注入層3は、通常、成膜後に、加熱や減圧乾燥等により塗布膜を乾燥させる。
【0284】
[真空蒸着法による正孔注入層の形成]
真空蒸着法により正孔注入層3を形成する場合には、通常、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種類又は2種類以上を真空容器内に設置された坩堝に入れ(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々を別々の坩堝に入れ)、真空容器内を真空ポンプで10-4Pa程度まで排気した後、坩堝を加熱して(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々の坩堝を加熱して)、坩堝内の材料の蒸発量を制御しながら蒸発させ(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々独立に蒸発量を制御しながら蒸発させ)、坩堝に向き合って置かれた基板上の陽極上に正孔注入層を形成する。なお、2種類以上の材料を用いる場合は、それらの混合物を坩堝に入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
【0285】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10-6Torr(0.13×10-4Pa)以上、9.0×10-6Torr(12.0×10-4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の
効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上、50℃以下で行われる。
なお、正孔注入層3は、後述の正孔輸送層4と同様に架橋されていてもよい。
【0286】
[正孔輸送層]
正孔輸送層4は、陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層である。正孔輸送層4は、本発明の有機電界発光素子では、必須の層では無いが、陽極2から発光層5に正孔を輸送する機能を強化する点では、この層を形成することが好ましい。正孔輸送層4を形成する場合、通常、正孔輸送層4は、陽極2と発光層5の間に形成される。また、上述の正孔注入層3がある場合は、正孔注入層3と発光層5の間に形成される。
【0287】
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、一方、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0288】
正孔輸送層4の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。成膜性が優れる点では、湿式成膜法により形成することが好ましい。
【0289】
以下に一般的な正孔輸送層の形成方法について説明するが、本実施形態の有機電界発光素子において、正孔輸送層は、上記有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成されることが好ましい。
【0290】
正孔輸送層4は、通常、正孔輸送性化合物を含有する。正孔輸送層4に含まれる正孔輸送性化合物としては、本発明の重合体または本発明の重合体が架橋性基を有する場合は本発明の重合体が架橋した重合体が好ましい。さらに、本発明の重合体の他に、前記正孔輸送性化合物、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニルで代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5-234681号公報)、4,4’,4’’-トリス(1-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72-74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2’,7,7’-テトラキス-(ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4’-N,N’-ジカルバゾールビフェニル等のカルバゾール誘導体等が好ましいものとして挙げられる。また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7-53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等を含んでもよい。
【0291】
[湿式成膜法による正孔輸送層の形成]
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、通常、上述の正孔注入層を湿式成膜法で形成する場合と同様にして、正孔注入層形成用組成物の代わりに正孔輸送層形成用組成物を用いて形成させる。
【0292】
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、通常、正孔輸送層形成用組成物は、更に溶媒を含有する。正孔輸送層形成用組成物に用いる溶媒は、上述の正孔注入層形成用組成物で用いる溶媒と同様の溶媒を使用することができる。
正孔輸送層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度は、正孔注入層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度と同様の範囲とすることができる。
正孔輸送層の湿式成膜法による形成は、前述の正孔注入層成膜法と同様に行うことができる。
【0293】
[真空蒸着法による正孔輸送層の形成]
真空蒸着法で正孔輸送層を形成する場合についても、通常、上述の正孔注入層を真空蒸着法で形成する場合と同様にして、正孔注入層形成用組成物の代わりに正孔輸送層形成用組成物を用いて形成させることができる。蒸着時の真空度、蒸着速度及び温度等の成膜条件などは、前記正孔注入層の真空蒸着時と同様の条件で成膜することができる。
【0294】
[発光層]
発光層5は、一対の電極間に電界が与えられた時に、陽極2から注入される正孔と陰極9から注入される電子が再結合することにより励起され、発光する機能を担う層である。発光層5は、陽極2と陰極9の間に形成される層であり、発光層は、陽極の上に正孔注入層がある場合は、正孔注入層と陰極の間に形成され、陽極の上に正孔輸送層がある場合は、正孔輸送層と陰極の間に形成される。
【0295】
発光層5の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜に欠陥が生じ難い点では厚い方が好ましく、また、一方、薄い方が低駆動電圧としやすい点で好ましい。このため、3nm以上であるのが好ましく、5nm以上であるのが更に好ましく、また、一方、通常200nm以下であるのが好ましく、100nm以下であるのが更に好ましい。
【0296】
発光層5は、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、ホスト材料とを含有する。
本発明の有機電界発光素子における好ましい発光材料とホスト材料は前記の通りである。
【0297】
[湿式成膜法による発光層の形成]
発光層の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよいが、成膜性に優れることから、湿式成膜法が好ましく、スピンコート法及びインクジェット法が更に好ましい。特に、上記の有機電界発光素子用組成物を用いて、発光層の下層となる正孔注入層又は正孔輸送層を形成すると、湿式成膜法による積層化が容易であるため、湿式成膜法を採用することが好ましい。湿式成膜法により発光層を形成する場合は、通常、上述の正孔注入層を湿式成膜法で形成する場合と同様にして、正孔注入層形成用組成物の代わりに、発光層となる材料を可溶な溶媒(発光層用溶媒)と混合して調製した発光層形成用組成物を用いて形成する。
【0298】
溶媒としては、例えば、正孔注入層の形成について挙げたエーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒の他、アルカン系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、脂環族アルコール系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒及び脂環族ケトン系溶媒等が挙げられる。以下に溶媒の具体例を挙げるが、本発明の効果を損なわない限り、これらに限定されるものではない。
【0299】
例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル系溶媒;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル系溶媒;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、3-イロプロピルビフェニル、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、
シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;n-デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール系溶媒;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール系溶媒;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン系溶媒;シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン系溶媒等が挙げられる。これらのうち、アルカン系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒が特に好ましい。
【0300】
[正孔阻止層]
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
【0301】
このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メチル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-(2-メチル-8-キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11-242996号公報)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10-79297号公報)等が挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
【0302】
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上であり、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0303】
[電子輸送層]
電子輸送層7は素子の電流効率をさらに向上させることを目的として、発光層5と電子注入層8との間に設けられる。
電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し、注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
【0304】
電子輸送層に用いる電子輸送性化合物としては、具体的には、例えば、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体(特開昭59-194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3-ヒドロキシフラボン金属錯体、5-ヒドロキシフラ
ボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6-207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5-331459号公報)、2-t-ブチル-9,10-N,N’-ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
電子輸送層7の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0305】
電子輸送層7は、前記と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により正孔阻止層6上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0306】
[電子注入層]
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率よく、電子輸送層7又は発光層5へ注入する役割を果たす。
電子注入を効率よく行うには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
【0307】
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10-270171号公報、特開2002-100478号公報、特開2002-100482号公報等に記載)ことも、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。
【0308】
電子注入層8の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層8は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層5又はその上の正孔阻止層6や電子輸送層7上に積層することにより形成される。
湿式成膜法の場合の詳細は、前述の発光層の場合と同様である。
正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層を電子輸送材料とリチウム錯体共ドープの操作で一層にする場合にもある。
【0309】
[陰極]
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たす。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なう上では、仕事関数の低い金属を用いることが好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属又はそれらの合金等が用いられる。具体例としては、例えば、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、アルミニウム-リチウム合金等の低仕事関数の合金電極等が挙げられる。
【0310】
素子の安定性の点では、陰極の上に、仕事関数が高く、大気に対して安定な金属層を積層して、低仕事関数の金属からなる陰極を保護することが好ましい。積層する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。
【0311】
[その他の層]
本発明の有機電界発光素子は、本発明の効果を著しく損なわなければ、更に他の層を有していてもよい。すなわち、陽極と陰極との間に、上述の他の任意の層を有していてもよい。
【0312】
[その他の素子構成]
本発明の有機電界発光素子は、上述の説明とは逆の構造、即ち、基板上に陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に積層することも可能である。
本発明の有機電界発光素子を有機電界発光装置に適用する場合は、単一の有機電界発光素子として用いても、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成にして用いても、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構成にして用いてもよい。
【0313】
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置(有機電界発光素子表示装置)は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
【0314】
<有機EL照明>
本発明の有機EL照明(有機電界発光素子照明)は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例】
【0315】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
【0316】
<中間体の合成>
[化合物5の合成]
【0317】
【0318】
1Lフラスコにトルエンを270ml、エタノールを135ml、化合物4(富士フイルム和光純薬社製)を20.0g(44.8mmol)、1-ブロモ-4-ヨードベンゼンを50.72g(179.3mmol)、りん酸カリウム水溶液(2M、すなわち2モル/リットル濃度)191mlを入れた溶液を真空脱気後に窒素置換した。窒素気流下に加熱し、30分間攪拌した。その後ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.63g(0.90mmol)を加え、6時間還流した。反応液に水を入れ、トルエンで抽出し、MgSO4および活性白土で処理した。トルエン溶液を加熱還流し
たのち不溶物をろ過し、再結晶して無色固体の化合物5を得た(収量14.2g、収率60.2%)。
【0319】
[化合物7の合成]
【0320】
【0321】
化合物4に代えて化合物6(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は化合物5の合成と同様の方法で、化合物7を合成した。
【0322】
[化合物9の合成]
【0323】
【0324】
化合物4に代えて化合物8(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は化合物5の合成と同様の方法で、化合物9を合成した。
【0325】
【0326】
5-ブロモ-2-ヨードトルエンに代えて1-ブロモ-4-ヨードベンゼンを用いた以外は化合物5の合成と同様の方法で、化合物10を合成した。
【0327】
[化合物11の合成]
【0328】
【0329】
窒素気流下、300mlのフラスコに100mlのジメチルスルホキシド、化合物7(5.0g、7.43mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(5.66g、22.29mmol)、酢酸カリウム(4.4g、44.58mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。
その後、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン〔PdCl2(dppf)CH2Cl2〕(0.60g、0.74mmol)を加え、85℃で3時間反応を行った。反応液を減圧濾過し、濾液をトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=95/5)により精製し、化合物11(4.5g)を得た。
【0330】
[化合物12の合成]
【0331】
【0332】
化合物4に代えて化合物11を用いた以外は化合物10の合成と同様の方法で、化合物12を合成した。
【0333】
[化合物13の合成]
【0334】
【0335】
化合物7に代えて化合物9を用いた以外は化合物11の合成と同様の方法で、化合物1
3を合成した。
【0336】
[化合物14の合成]
【0337】
【0338】
化合物4に代えて化合物13を用いた以外は化合物10の合成と同様の方法で、化合物14を合成した。
【0339】
[化合物16の合成]
【0340】
【0341】
化合物4に代えて化合物6(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は化合物10の合成と同様の方法で、化合物16を合成した。
【0342】
[化合物17の合成]
【0343】
【0344】
化合物7に代えて化合物16を用いた以外は化合物11の合成と同様の方法で、化合物17を合成した。
【0345】
[化合物18の合成]
【0346】
【0347】
化合物4に代えて化合物17を用いた以外は化合物10の合成と同様の方法で、化合物18を合成した。
【0348】
[化合物22の合成]
【0349】
【化73】
窒素気流中、東京化成工業株式会社製の2-ブロモ-7-ヨード-フルオレン(25.3g、68.19mmol)、東京化成工業株式会社製の1-ブロモヘキサン(33.8g、204.57mmol)、ジメチルスルホキシド(560ml)、テトラブチルアンモニウムブロミド(5.5g)に水酸化ナトリウム13.6gの22ml水溶液をゆっくり滴下、その後55℃で3時間反応した。室温まで放冷した後、純水(400ml)をゆっくり加え、15分間撹拌後、塩化メチレン(400ml)を加え、分液し、水層を塩化メチレン(200ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/塩化メチレン=850/150)で精製することにより、無色固体の化合物22(30.8g)を得た。
【0350】
[化合物23の合成]
【0351】
【0352】
窒素気流下、化合物22(17.8g、33.0mmol)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニルボロン酸(9.5g、33.0mmol)、リン酸カリウム(21.0g、99.0mmol)、トルエン(100ml)、エタノール(50ml)及び水(50ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.12g、0.17mm
ol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=80/20)により精製し、化合物23(18.4g、収率85.2%)を得た。
【0353】
[化合物24の合成]
【0354】
【0355】
窒素気流下、300mlのフラスコに100mlのジメチルスルホキシド、化合物23(18.2g、27.8mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(10.6g、41.7mmol)、酢酸カリウム(8.2g、83.4mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。その後、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン〔PdCl2(dppf)CH2Cl2〕(2.3g、2.78mmol)を加え、85℃で4.5時間反応を行った。
反応液を減圧濾過し、濾液をトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=90/10)により精製し、化合物24(17.7g、収率90.7%)を得た。
【0356】
[化合物25の合成]
【0357】
【0358】
次いで、化合物24(5.3g、7.49mmol)、3-ブロモ-9-(4-ヨードフェニル)-9H-カルバゾール(3.3g、7.34mmol)、リン酸カリウム(4.2g、19.82mmol)、トルエン(30ml)、エタノール(15ml)及び水(10ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.052g、0.073mmol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=75/25)により精製し、化合物25(4.8g、収率76.0%)を得た。
【0359】
[化合物27の合成]
【0360】
【0361】
次いで、化合物25(4.6g、5.13mmol)、化合物26(2.2g、6.67mmol)、炭酸カリウム(2.1g、15.4mmol)、及びトルエン(24ml)、エタノール(8ml)、水(8ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して60℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.18g、0.154mmol)を加え、85℃で3.5時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=60/40)により精製し、化合物27(3.9g、収率74.9%)を得た。
【0362】
[化合物28の合成]
【0363】
【0364】
窒素気流下、300mlのフラスコに40mlのテトラヒドロフラン、40mlのエタノール、化合物27(3.9g、3.84mmol)、パラジウム/炭素(10%、約55%水湿品、0.29g)を入れ、52℃で10分間攪拌した。その後、ヒトラジン一水和物(1.3g)を滴下し、この温度で5時間反応した。
反応液を水湿のセライトで減圧濾過し、濾液を濃縮し、エタノールで再結晶により精製し、化合物28(3.3g、収率87.2%)を得た。
【0365】
[化合物33の合成]
【化79】
窒素気流下、500mlのフラスコに200mlのジメチルスルホキシド、化合物29(15.5g、38.34mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(24.3g、95.81mmol)、酢酸カリウム(22.6g、230.0mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。その後1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン〔PdCl
2(dppf)CH
2Cl
2〕(3.1g、3.83mmol)を加え、85℃で3時間反応を行った。反応液を減圧濾過し、濾液をトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=95/5)により精製し、化合物30(9.2g、収率48%)を得た。
【0366】
【0367】
次いで、化合物30(6.1g、12.24mmol)、1-ブロモ-4-ヨードベンゼン(13.85g、48.96mmol)、リン酸カリウム(15.6g、73.44mmol)、及びトルエン(80ml)、エタノール(40ml)、水(37ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.17g、0.25mmol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=98/2)により精製し、化合物31(5.2g、収率76.3%)を得た。
【0368】
【化81】
窒素気流下、300mlのフラスコに100mlのジメチルスルホキシド、化合物31(5.2g、9.35mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(7.1g、28.04
mmol)、酢酸カリウム(5.5g、56.1mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。その後1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン〔PdCl
2(dppf)CH
2Cl
2〕(0.77g、0.94mmol)を加え、85℃で3時間反応を行った。反応液を減圧濾過し、濾液をトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=95/5)により精製し、化合物32(5.1g、収率85%)を得た。
【0369】
【化82】
次いで、化合物32(5.1g、7.84mmol)、2-ヨード-5-ブロモトルエン(9.3g、31.36mmol)、リン酸カリウム(10.0g、47.04mmol)、及びトルエン(50ml)、エタノール(25ml)、水(23ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.11g、0.16mmol)を加え、65℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=98/2)により精製し、化合物33(4.8g、収率83.1%)を得た。
【0370】
<実施例1-1>
[重合体1の合成]
以下の反応式に従い、重合体1を合成した。
【0371】
【0372】
化合物7(2.00g、3.0mmol)、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(1.24g、6.00mmol)、tert-ブトキシナトリウム(2.20g、22.9mmol)、トルエン(60g)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。別のフラスコに仕込んだトリス(ジベンジリデンアセト
ン)ジパラジウム錯体(0.054g、0.059mmol)のトルエン3.1g溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(0.13g、0.48mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.0時間、加熱還流反応を行った。各モノマーが消失したことを確認し、化合物5(1.440g、2.71mmol)を添加した。1時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.467g、2.97mmol)を添加し、2時間加熱還流した。反応液を放冷し、トルエン50ml添加してエタノール/水(200ml/40ml)溶液に滴下し、粗ポリマーを得た。
【0373】
この粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンで再沈殿させ、析出したポリマーをトルエンに再溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、重合体1を得た(1.1g)。得られた重合体1の分子量、分散度は次の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=55540
数平均分子量(Mn)=38040
分散度(Mw/Mn)=1.46
【0374】
<実施例1-2>
[重合体3の合成]
以下の反応式に従い、重合体1と同様の方法で重合体3を合成した。
【0375】
【0376】
重量平均分子量(Mw)=41900
数平均分子量(Mn)=31500
分散度(Mw/Mn)=1.33
【0377】
<実施例1-3>
[重合体4の合成]
以下の反応式に従い、重合体1と同様の方法で重合体4を合成した。
【0378】
【0379】
重量平均分子量(Mw)=41300
数平均分子量(Mn)=28650
分散度(Mw/Mn)=1.44
【0380】
<実施例1-4>
[重合体5の合成]
以下の反応式に従い、重合体1と同様の方法で重合体5を合成した。
【0381】
【0382】
重量平均分子量(Mw)=38380
数平均分子量(Mn)=26840
分散度(Mw/Mn)=1.43
【0383】
<実施例1-5>
[重合体6の合成]
以下の反応式に従い、重合体1と同様の方法で重合体6を合成した。
【0384】
【0385】
重量平均分子量(Mw)=74160
数平均分子量(Mn)=50100
分散度(Mw/Mn)=1.48
【0386】
<比較例1-1>
[重合体10の合成]
以下の反応式に従い、重合体1と同様の方法で比較対象の重合体10を合成した。
【0387】
【0388】
重量平均分子量(Mw)=51300
数平均分子量(Mn)=35380
(Mw/Mn)=1.45
【0389】
<比較例1-2>
[重合体11の合成]
以下の反応式に従い、重合体1と同様の方法で比較対象の重合体11を合成した。
【0390】
【0391】
重量平均分子量(Mw)=39840
数平均分子量(Mn)=30180
(Mw/Mn)=1.32
【0392】
<比較例1-3>
[重合体12の合成]
以下の反応式に従い、重合体1と同様の方法で比較対象の重合体12を合成した。
【0393】
【0394】
<実施例1-6>
[重合体7の合成]
【0395】
【0396】
化合物5(1.5g、2.8mmol)、2-アミノ-9,9-ジヘキシルフルオレン(0.59g、1.7mmol)、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(0.59g、2.8mmol)、化合物28(1.11g、1.1mmol)、tert-ブトキシナトリウム(2.09g、21.7mmol)及びトルエン(24g、27.7ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A1)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.052g、0.06mmol)のトルエン3.3ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.12g、0.5mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B1)。
窒素気流中、溶液A1に溶液B1を添加し、1.0時間、加熱還流反応を行った。化合物5が消失したことを確認し、化合物10(1.30g、2.6mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.44g、2.8mmol)を添加し、2時間加熱還流反応を行った。反応液を放冷し、トルエン40mlを添加して、エタノール/水(500ml/90ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体1を得た(1.7g)。得られた重合体7の分子量等は以下の通りであった。
【0397】
重量平均分子量(Mw)=40000
数平均分子量(Mn)=29600
分散度(Mw/Mn)=1.35
【0398】
【0399】
化合物33(1.35g、1.8mmol)、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(0.767g、3.7mmol)、及びtert-ブトキシナトリウム(1.36g、14.1mmol)、トルエン(41ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.034g、0.04mmol)のトルエン5ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.078g、0.30mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.0時間、加熱還流反応を行った。化合物33が消失したことを確認し、化合物10(0.892g、1.77mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.2g、1.3mmol)を添加し、2時間加熱還流反応を行った。反応液を放冷し、トルエン40ml添加してエタノール/水(500ml/90ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体8を得た(0.8g)。得られた重合体1の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=61500
数平均分子量(Mn)=48000
分散度(Mw/Mn)=1.28
【0400】
【0401】
化合物33(0.9g、1.2mmol)、化合物34(0.81g、2.4mmol)、及びtert-ブトキシナトリウム(0.91g、9.4mmol)、トルエン(27ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.022g、0.02mmol)のトルエン5ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.052g、0.20mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.0時間、加熱還流反応を行った。化合物33が消失したことを確認し、化合物10(0.558g、1.1mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.36g、2.3mmol)を添加し、2時間加熱還流反応を行った。反応液を放冷し、トルエン26ml添加してエタノール/水(400ml/90ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体9を得た(0.3g)。得られた重合体1の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=81300
数平均分子量(Mn)=63000
分散度(Mw/Mn)=1.29
【0402】
<実施例1-9>
(重合体13の合成)
【0403】
【0404】
化合物33(1.2g、1.6mmol)、化合物35(0.179g、0.5mmol)、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(0.447g、2.1mmol)、化合物28(0.641g、0.7mmol)、tert-ブトキシナトリウム(1.21g、12.6mmol)及びトルエン(21.6g、25ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A1)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.0298g、0.03mmol)のトルエン5.0ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.069g、0.3mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B1)。
窒素気流中、溶液A1に溶液B1を添加し、1.0時間、加熱還流下で反応を行ったした。化合物33が消失したことを確認し、化合物33(0.954g、1.29mmol)を添加した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.26g、1.7mmol)を添加し、2時間加熱還流下で反応を行った。反応液を放冷し、トルエン41mlを添加して、エタノール/水(235ml/30ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体13を得た(1.7g)。得られた重合体13の分子
量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=42300
数平均分子量(Mn)=29375
分散度(Mw/Mn)=1.44
【0405】
<実施例1-10>
(重合体14の合成)
【0406】
【0407】
化合物33(1.4g、1.9mmol)、化合物35(0.183g、0.5mmol)、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(0.535g、2.6mmol)、化合物28(0.748g、0.8mmol)、tert-ブトキシナトリウム(1.41g、14.7mmol)及びトルエン(25.2g、29ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A1)。
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.0348g、0.04mmol)のトルエン6.0ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(Amphos)(0.081g、0.3mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B1)。
窒素気流中、溶液A1に溶液B1を添加し、1.0時間、加熱還流下で反応を行った。化合物33が消失したことを確認し、化合物33(1.21g、1.6mmol)を添加
した。2時間加熱還流後、ブロモベンゼン(0.21g、1.3mmol)を添加し、2時間加熱還流下で反応を行った。反応液を放冷し、トルエン80mlを添加して、エタノール/水(380ml/35ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体14を得た(1.4g)。得られた重合体14の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=37500
数平均分子量(Mn)=28625
分散度(Mw/Mn)=1.31
【0408】
[重合体の励起一重項エネルギー準位(S1)および励起三重項エネルギー準位(T1)の測定]
各重合体を2-メチルテトラヒドロフランに溶解させて濃度1質量%溶液を調製した。この溶液試料を蛍光分光光度計(日立 蛍光分光光度計F-4500)で励起波長350nm、液体窒素による冷却条件下で蛍光発光スペクトルおよびリン光発光スペクトルを測定した。得られた蛍光発光スペクトル、リン光発光スペクトルにおいて最も短波長側にある発光ピークのピークトップ波長からS1準位、T1準位を得た。
測定結果を表1に示す。
【0409】
【0410】
実施例1-1~1-6の重合体は、比較例1-1~1-3の重合体よりも高いS1、T1エネルギー準位を有しており、有機電界発光素子において各々の発光励起子から重合体へのエネルギー移動による消光が生じにくいことが示された。
【0411】
[不溶化実験]
実施例の重合体を用いて、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸ブチルに対する不溶化実験を行った。重合体1、3~7、8及び9をアニソールにそれぞれ溶解し塗布組成物を調製した。塗布組成物を用いてスライドガラス基板上でスピンコートにより110nm~130nmの膜を作製した。さらに、該膜を230℃、30分間熱処理した。その後、室温でそれぞれの膜の厚みを測定した。
さらに、それぞれの膜をシクロヘキシルベンゼンまたは安息香酸ブチルでリンス処理した。リンス処理は、溶媒130μlを塗布膜上に滴下して90秒静置した後、基板をスピ
ンして実施した。リンス処理した膜をスライドガラス基板ごと加熱処理し、スライドガラス基板上の残留膜の膜厚を測定した。リンス処理前後の膜厚の比率(不溶化率)を表2に示した。
【0412】
【0413】
表2に示された通り、加熱処理後の重合体1、3~7、8及び9の有機膜は、シクロヘキシルベンゼンや安息香酸ブチルに溶解せず、湿式成膜可能であることが示された。
【0414】
<溶解度試験>
上記合成された重合体8について、室温(25℃)でのトルエンに対する溶解度試験を行った。その結果、重合体8の、室温(25℃)でのトルエンに対する溶解度は、5質量%以上であった。
【0415】
(実施例2-1)
以下に説明する要領で、
図1に示す構造を有する有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を70nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成し、ITO基板を得た。
パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
まず、下記の構造式(P-1)を有する電荷輸送性高分子化合物100質量部と、(A1)の構造を有する電子受容性化合物を10重量部秤量し、安息香酸ブチルに溶解させ、3.0wt%の溶液を調製した。
この溶液を、大気中で上記基板上にスピンコートし、大気中クリーンオーブン240℃、60分で乾燥させ、膜厚60nmの均一な薄膜を形成し、正孔注入層3とした。
次に、重合体8を有する電荷輸送性高分子化合物100質量部を、シクロヘキシルベンゼンに溶解させ、2.5wt%の溶液を調製した。
この溶液を、上記正孔注入層を塗布成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで230℃、60分間乾燥させ、膜厚20nmの均一な薄膜を形成し、正孔輸送層4とした。
【0416】
【0417】
【0418】
引続き、発光層5を形成するにあたり、下記の構造式で表される化合物(RH-1)を65質量部、下記の構造式で表される化合物(RH-2)を35質量部、および下記の構造式で表される化合物(RD-1)を20質量部秤量し、シクロヘキシルベンゼンに溶解させ7.2wt%の溶液を調製した。
この溶液を、上記正孔輸送層を塗布成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで130℃、20分間乾燥させ、膜厚80nmの均一な薄膜を形成し、発光層5とした。
【0419】
【0420】
ここで、発光層5までを成膜した基板を、真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が1.3×10-4Pa以下になるまで排気した後、下記の構造式で表される化合物(ET-1)を40質量部、下記の構造式で表される化合物(liq)を60質量部の比率で共蒸着法により発光層5上に蒸着を行い、電子輸送層6を成膜した。蒸着時の真空度は1.3×10-4Pa、蒸着速度は1.6~1.8Å/秒の範囲で制御し、膜厚は30nmとした。
【0421】
【0422】
ここで、電子輸送層6までの蒸着を行った基板を一度取り出し、別の蒸着装置に設置し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように基板に密着させて、装置内の真空度が2.3×10-4Pa以下になるまで排気を行った。
次に、陰極7としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度1.0~4.9Å/秒の範囲で制御し、膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。蒸着時の真空度は2.6×10-4Paであった。
引き続き、有機電界発光素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂30Y-437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子を作製した。
【0423】
(比較例2-1)
重合体8の代わりに、下記P-2で示される比較重合体1を用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
【0424】
【0425】
<有機電界発光素子の電流-電圧特性の評価>
実施例2-1および比較例2-1で得られた有機電界発光素子の電圧特性および駆動寿命の評価を行った結果を表3に示す。電圧は、輝度1000cd/m2で点灯させたときの電圧を測定し、比較例2-1の電圧を基準として実施例2-1の素子の電圧と比較例5の素子の電圧との差を求め、相対電圧[V]とした。駆動寿命は、50mA/cm2で定電流駆動させ、初期輝度3000cd/m2で換算したときの5%減衰寿命(LT95)(hr)を測定し、比較例2-1のLT95(hr)を基準として1とした場合の相対値(以下「相対寿命」と称す)を求めた。
【0426】
【0427】
表3に示すが如く、本発明の重合体を用いて形成した有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、駆動寿命が長いことが分かる。
【0428】
(実施例2-2)
重合体8から重合体7に変えて電荷輸送層まで実施例2-1と同様に電界発光素子の作
製を行い、引続き、発光層5を形成するにあたり、化合物(RH-1)を55質量部、化合物(RH-2)を45質量部、および化合物(RD-1)を20質量部秤量し、シクロヘキシルベンゼンに溶解させ7.2wt%の溶液を調製した。
この溶液を、上記正孔輸送層を塗布成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで130℃、20分間乾燥させ、膜厚80nmの均一な薄膜を形成し、発光層5とした。次に実施例2-1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0429】
(比較例2-2)
【0430】
【0431】
重合体1からP-3に変えたこと以外は実施例2-2と同じように電界発光素子を作製した。
実施例2-2および比較例2-2で得られた有機電界発光素子の外部量子効率および駆動寿命の評価を行った。このとき、比較例2-2を基準とした。電圧は、輝度1000cd/m2で点灯させたときの電圧を測定し、比較例2-2の電圧を基準として実施例2-2の素子の電圧と比較例2-2の素子の電圧との差を求め、相対電圧[V]とした。外部量子効率は、輝度1000cd/m2で点灯させたときの値を測定し、比較例2-2の外部量子効率を1とした場合の比を相対値として求めた。駆動寿命は、40mA/cm2で定電流駆動させ、初期輝度1000cd/m2で換算したときの5%減衰寿命(LT95)(hr)を測定し、比較例5のLT95(hr)を基準として1とした場合の相対値(以下「相対寿命」と称す)を求めた。結果を表4に示す。
【0432】
【0433】
表4に示すが如く、本発明の重合体を用いて形成した有機電界発光素子は、電圧が低く、外部量子効率が高く、寿命が長いことが分かる。
【0434】
(実施例2-3)
正孔輸送層4を形成するまで実施例2-2と同様に有機電界発光素子の作製を行った。下記の構造式で表される化合物(H-1)を100質量部、下記の構造式で表される化合物(BD-1)を10質量部秤量し、シクロヘキシルベンゼンに溶解させ3.9wt%の溶液を調製した。
この溶液を、上記正孔輸送層を塗布成膜した基板上に窒素グローブボックス中でスピンコートし、窒素グローブボックス中のホットプレートで130℃、20分間乾燥させ、膜厚40nmの均一な薄膜を形成し、発光層5とした。次に、実施例2-1と同様に電界発
光素子を作製した。
【0435】
【0436】
(実施例2-4)
重合体1から重合体7に変えたこと以外は実施例2-3と同じように電界発光素子を作製した。
【0437】
(比較例2-3)
重合体1からP-3に変えたこと以外は実施例2-3と同じように電界発光素子を作製した。
実施例2-1、比較例2-1同様に、実施例2-3、実施例2-4および比較例2-3で得られた有機電界発光素子の電圧および外部量子効率の評価を行った。このとき、比較例2-3を基準とした。駆動寿命は、15mA/cm2で定電流駆動させ、初期輝度1000cd/m2で換算したときの5%減衰寿命(LT95)(hr)を測定し、比較例2-3のLT95(hr)を基準として1とした場合の相対値(以下「相対寿命」と称す)を求めた。結果を表5に示す。
【0438】
【0439】
表5に示すが如く、本発明の重合体を用いて形成した有機電界発光素子は、電圧が低くなる傾向にあり、外部量子効率が高く、寿命が長いことが分かる。
【0440】
<実施例3-1>
本発明の重合体および溶媒からなる組成物を用いて、膜を以下の方法で作製した。
ガラス基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
重合体1の構造を有する高分子化合物をアニソールに溶解させ、3.75wt%の溶液を調製した。
この溶液を、上記ガラス基板上に大気下グローブボックス中でスピンコートし、クリーンブース中のホットプレートで230℃、30分間乾燥させて製膜した。
[膜の不溶化評価]
得られた膜の膜厚を、KLA-Tencor社製触針式プロファイラにて測定した。続いて該薄膜に、シクロヘキシルベンゼン(CHB)130μlを滴下し、そのまま90秒間静置した後、スピンコーターで基板をスピンし、CHBを除去した。その後、ホットプレートで130℃20分間乾燥した。この処理を施した薄膜のCHB滴下部分の膜厚を再度測定した。
CHB滴下前の膜厚をT1、CHB滴下処理後の膜厚をT2とし、下記式のとおり不溶化率を定めた。
T2/T1*100=(不溶化率)
膜の不溶化率を表6に示す。
【0441】
<実施例3-2>
重合体8の構造を有する高分子化合物をアニソールに溶解させ、3.75wt%の溶液を調製し、実施例3-1と同様に製膜した後、不溶化率を求めた。膜の不溶化率を表6に示す。
【0442】
<比較例3-1>
下記式P-4構造を有する高分子化合物をアニソールに溶解させ、3.75wt%の溶液を調製し、実施例3-1と同様に製膜した後、不溶化率を求めた。膜の不溶化率を表6に示す。
【0443】
【0444】
<実施例3-3>
重合体1の構造を有する高分子化合物75重量部と、式(P-4)の構造を有する高分子化合物25重量部とを秤量し、重合体1:(P-4)=75:25とし、アニソールに溶解させ、3.75wt%の溶液を調製し、実施例3-1と同様に製膜した後、不溶化率を求めた。膜の不溶化率を表6に示す。
【0445】
<実施例3-4>
重合体1を重合体8に変えた以外は実施例3-3と同様にして溶液調製し、製膜した後、不溶化率を求めた。膜の不溶化率を表6に示す。
【0446】
表6に示す通り、本発明の重合体を用いて形成した薄膜は、本発明の重合体が架橋基を有していなくとも溶剤に対して不溶化していることがわかる。さらに、架橋基を有さず単体では薄膜が不溶化しない重合体であっても、架橋基を有さない本発明の重合体と混合することで、不溶化している。このことは、湿式法での有機電界発光素子の作製において、用いる化合物の範囲を広げる上で有用である。
【0447】
【産業上の利用可能性】
【0448】
本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や、面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0449】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
8 有機電界発光素子