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  • 特許-オートクレーブ内での溶液の冷却方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】オートクレーブ内での溶液の冷却方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/30 20060101AFI20240702BHJP
   B01J 3/00 20060101ALI20240702BHJP
   B01J 3/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C07D311/30
B01J3/00 A
B01J3/04 D
B01J3/04 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023079932
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2021521629の分割
【原出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2023099643
(43)【公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】有福 征宏
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141465(WO,A1)
【文献】特開2014-073455(JP,A)
【文献】国際公開第2008/155890(WO,A1)
【文献】特開2009-102174(JP,A)
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry,2013年,Vol.61, No.48,pp.11840-11847
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 311/30
B01J 3/00
B01J 3/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートクレーブ内で加熱及び加圧された溶液を冷却する方法であって、
圧縮気体を前記オートクレーブ内に導入することで、前記オートクレーブ内の圧力を前記溶液の飽和蒸気圧以上且つ0.75~1MPaの範囲内に維持しながら、前記溶液を冷却する冷却工程を有する、オートクレーブ内での溶液の冷却方法。
【請求項2】
前記冷却工程において、前記圧縮気体を、前記オートクレーブの槽容積の5%/分以上200%/分以下の速度で連続的に又は断続的に前記オートクレーブ内に導入する、請求項1に記載の冷却方法。
【請求項3】
前記圧縮気体が、空気、窒素、酸素及び二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも1種の気体からなる、請求項1又は2に記載の冷却方法。
【請求項4】
導入する前記圧縮気体の圧力を、当該圧縮気体を導入する時点での前記溶液の飽和蒸気圧の100.5%以上300%以下の範囲内とする、請求項1~のいずれか一項に記載の冷却方法。
【請求項5】
前記冷却工程により、前記オートクレーブ内における前記溶液を、当該溶液の常圧下での沸点以下まで冷却する、請求項1~のいずれか一項に記載の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラボノイド配糖体の分解方法、フラボノイドの製造方法、及び、オートクレーブ内での溶液の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラボノイドは、天然に存在する有機化合物群であり、柑橘類及び豆類をはじめとして、様々な植物の花、葉、根、茎、果実、種子等に含まれている。フラボノイドは、種類によって特徴及び作用が異なるが、その多くが強い抗酸化作用を有している。例えば、柑橘類に含まれるフラボノイドであるポリメトキシフラボンは、抗酸化作用、発ガン抑制作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用、メラニン生成抑制作用、血糖値抑制作用等を有することが知られており、医薬品、健康食品、化粧品等の様々な用途への応用が期待されている。
【0003】
柑橘類からフラボノイドを製造する方法としては、例えば、柑橘類の果皮等からエタノール水溶液でフラボノイドを抽出し、抽出されたフラボノイドを溶液中から回収する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-145824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフラボノイドの製造方法では、フラボノイドの収率が低いという問題がある。そのため、フラボノイドの収率を向上できる製造方法の開発が求められている。
【0006】
例えば柑橘類の果皮には、フラボノイドの他に、それよりも多量のフラボノイド配糖体が含まれているが、これをフラボノイドとして回収できれば、フラボノイドの収率を向上させることが可能である。フラボノイド配糖体をフラボノイドに分解する方法としては、フラボノイド配糖体を塩酸等の酸と反応させる方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、使用した酸が残存して製品中に混入するおそれがあると共に、酸とフラボノイドとの副反応生成物が生じる恐れがあるという問題がある。酸及び副生成物等の不純物を除去する方法としては、分解生成物中のフラボノイドを液体クロマトグラフィーにより分離・精製する方法が挙げられるが、高コストであり且つ生産効率が悪いという問題がある。そのため、酸を用いない新たなフラボノイド配糖体の分解方法が求められている。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、酸を用いなくてもフラボノイド配糖体を効率的にフラボノイドに分解でき、フラボノイドの収率を向上できるフラボノイド配糖体の分解方法、及び、フラボノイドの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、上述した本発明のフラボノイド配糖体の分解方法、及び、フラボノイドの製造方法では、オートクレーブを使用する。ここで、オートクレーブは、例えば、化学工業では加圧・加熱反応、並びに、超臨界及び亜臨界溶液反応等の特殊な化学反応を行う目的で、医学及び生化学では病原体等を死滅させるための滅菌処理を行う目的で、工学では炭素繊維強化プラスチック等の複合材の成形、及び、人工スレート等のコンクリートの養生などの目的で、それぞれ使用されている。このようにオートクレーブは、様々な分野でそれぞれ目的に応じて使用されている。
【0009】
特に、近年、オートクレーブによる超臨界水溶液及び亜臨界水溶液等での化学反応が研究されており、その研究例としては、例えばダイオキシン等の有害化学物質の分解に関する研究が挙げられる(例えば、Materia Japan、第39巻、第4号(2000年)参照)。
【0010】
しかしながら、オートクレーブを工業的に使用する際、その処理容積が大きくなるとオートクレーブ槽の熱容量が大きくなるため、オートクレーブ処理温度への昇温時間及び処理終了後のオートクレーブ処理対象物の槽からの取り出しのための冷却時間が非常に長時間になる問題がある。一般的にオートクレーブの冷却は、槽内の高圧蒸気を排気し、槽の熱伝導と槽内の溶液の沸騰によって行われるが、超臨界及び亜臨界溶液のオートクレーブ処理では、常圧における溶液の沸点を大きく超える温度で処理するため、処理後の冷却時に圧力を減圧した際、溶液が激しく沸騰して飛び散り、槽内を汚染すると共に収率が大幅に低下するという問題が生じる。この問題は、水蒸気の排気を行わず、槽内を溶液の飽和蒸気圧で維持することで沸騰を抑え、自然冷却することで対策可能であるが、冷却時間が槽内を減圧して冷却する場合の数十倍必要となるため、経済的に大きな問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、オートクレーブを用いて処理された溶液を冷却する際に、収率の低下を抑制し且つ冷却時間を大幅に短縮できる、オートクレーブ内での溶液の冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、フラボノイド配糖体を含む原料液をオートクレーブ内で水熱処理することで、上記フラボノイド配糖体をフラボノイドに分解する水熱処理工程と、上記原料液が水熱処理されて得られた溶液を冷却する冷却工程と、を有し、上記冷却工程において、圧縮気体を上記オートクレーブ内に導入することで、上記オートクレーブ内の圧力を上記溶液の飽和蒸気圧以上に維持しながら、上記溶液を冷却する、フラボノイド配糖体の分解方法を提供する。
【0013】
上記方法によれば、酸を用いることなく、水熱処理によりフラボノイド配糖体を効率的にフラボノイドに分解することができる。また、この方法を用いることで、フラボノイドを低コストで効率的に製造することが可能となる。
【0014】
また、本発明者らは、水熱処理によりフラボノイド配糖体を分解する方法において、水熱処理後の溶液の冷却及び減圧時に溶液が突沸して飛散する現象が生じることを見出した。この溶液の飛散が、フラボノイドの収率が低下する原因の一つとなっている。この問題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、圧縮気体をオートクレーブ内に導入し、オートクレーブ内の圧力を溶液の飽和蒸気圧以上に維持しながら冷却を行うことで、フラボノイドの収率を大きく向上できることを見出した。この方法で溶液の冷却を行うことで、溶液の突沸及び飛散を十分に抑制することができ、フラボノイドの収率を大きく向上させることができる。また、自然冷却する場合と比較して、冷却時間を大幅に短縮することができる。なお、本明細書において、溶液の飽和蒸気圧とは、その時々での溶液の飽和蒸気圧を意味する。冷却工程において、溶液の温度は時間の経過により徐々に低下するため、溶液の飽和蒸気圧も時間の経過により徐々に低下することとなる。
【0015】
上記冷却工程において、上記オートクレーブ内の圧力は、上記溶液の飽和蒸気圧の100.5%以上300%以下の範囲内に維持してもよい。オートクレーブ内の圧力を溶液の飽和蒸気圧の100.5%以上とすることで、オートクレーブの槽内の圧力が不均一になった場合でも、溶液の突沸を十分に抑制することができる。また、オートクレーブ内の圧力を溶液の飽和蒸気圧の300%以下とする場合、オートクレーブの槽の耐圧性能を必要以上に高める必要が生じないため、装置コストを抑えることができ、経済的である。
【0016】
上記冷却工程において、上記圧縮気体は、上記オートクレーブの槽容積の5%/分以上200%/分以下の速度で連続的に又は断続的に上記オートクレーブ内に導入してもよい。オートクレーブの槽内は、自然冷却に加えて、導入した圧縮気体により冷却され、槽内が冷却されることで溶液も冷却されるため、圧縮気体の導入速度を槽容積の5%/分以上とすることで、自然冷却のみの場合と比較して、溶液の冷却速度を大幅に向上させることができる。また、圧縮気体の導入速度を槽容積の200%/分以下とすることで、槽内の風速が大きくなり過ぎて溶液を入れた容器が動いて転倒したり、風により容器内の溶液が吹き飛ばされるといった問題が生じることを防ぐことができる。なお、圧縮気体の導入は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0017】
上記圧縮気体は、空気、窒素、酸素及び二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも1種の気体からなるものであってもよい。オートクレーブ内において加熱及び加圧処理した直後の溶液は、化学反応が未だ継続している場合があるため、その反応に適した気体を使用することが好ましい。一般的には空気が使用できるが、溶液が酸化されやすく且つ酸化を防ぎたい場合には、窒素又は二酸化炭素を使用することが好ましく、酸化反応等を維持したい場合には、酸素を使用することもできる。
【0018】
導入する上記圧縮気体の圧力は、当該圧縮気体を導入する時点での上記溶液の飽和蒸気圧の100.5%以上300%以下の範囲内としてもよい。これにより、オートクレーブ内の圧力を溶液の飽和蒸気圧の100.5%以上300%以下の範囲内に調整し易く、それによる上述した効果を得ることができる。
【0019】
上記冷却工程により、上記オートクレーブ内における上記溶液は、当該溶液の常圧下での沸点以下まで冷却してもよい。溶液を、その常圧下での沸点以下まで冷却することで、オートクレーブから溶液を取り出す際に溶液が突沸することを防ぐことができる。
【0020】
上記水熱処理は、上記オートクレーブ内に外部から水蒸気を供給することで行われてもよい。水蒸気を外部から供給することで、オートクレーブ内を短時間で昇温昇圧することができ、水熱処理環境を容易に形成及び維持することができる。
【0021】
上記水熱処理工程において、上記オートクレーブ内の圧力が0.2~1.6MPaであり、温度が120~200℃であってもよい。上記圧力及び温度の範囲で水熱処理を行うことで、フラボノイド配糖体をより効率的にフラボノイドに分解することができ、フラボノイドの収率をより向上させることができる。
【0022】
上記分解方法において、上記フラボノイド配糖体はスダチチン配糖体及び/又はデメトキシスダチチン配糖体を含んでいてもよい。上記分解方法によれば、スダチチン配糖体及びデメトキシスダチチン配糖体を特に効率的に分解することができる。
【0023】
本発明はまた、上記本発明の分解方法によりフラボノイド配糖体を分解する分解工程と、上記分解工程で得られた分解生成物からフラボノイドを抽出する抽出工程と、を含む、フラボノイドの製造方法を提供する。かかる製造方法によれば、フラボノイドを高い収率で、低コスト且つ効率的に製造することができる。
【0024】
本発明はまた、オートクレーブ内で加熱及び加圧された溶液を冷却する方法であって、圧縮気体を上記オートクレーブ内に導入することで、上記オートクレーブ内の圧力を上記溶液の飽和蒸気圧以上に維持しながら、上記溶液を冷却する冷却工程を有する、オートクレーブ内での溶液の冷却方法を提供する。
【0025】
上記方法によれば、オートクレーブ内で加熱及び加圧された溶液を冷却する際に、溶液が突沸して飛散することがないため、収率の低下を抑制することができると共に、冷却時間を大幅に短縮することができる。これは、圧縮気体をオートクレーブ内に導入し、オートクレーブ内の圧力を溶液の飽和蒸気圧以上に維持しながら冷却を行うためである。圧縮気体の導入により、オートクレーブ内の圧力の維持と短時間での冷却を同時に実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、オートクレーブを用いることで、酸を用いなくてもフラボノイド配糖体を効率的にフラボノイドに分解でき、フラボノイドの収率を向上できるフラボノイド配糖体の分解方法、及び、フラボノイドの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、オートクレーブを用いて処理された溶液を冷却する際に、収率の低下を抑制し且つ冷却時間を大幅に短縮できる、オートクレーブ内での溶液の冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態のフラボノイド配糖体の分解方法及びオートクレーブ内での溶液の冷却方法に用いるオートクレーブの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
(フラボノイド配糖体の分解方法及びオートクレーブ内での溶液の冷却方法)
本実施形態に係るフラボノイド配糖体の分解方法は、フラボノイド配糖体を含む原料液をオートクレーブ内で水熱処理することで、上記フラボノイド配糖体をフラボノイドに分解する水熱処理工程と、上記原料液が水熱処理されて得られた溶液を冷却する冷却工程と、を有し、上記冷却工程において、圧縮気体を上記オートクレーブ内に導入することで、上記オートクレーブ内の圧力を上記溶液の飽和蒸気圧以上に維持しながら、上記溶液を冷却する方法である。
【0031】
フラボノイド配糖体は、フラボノイドと糖とがグリコシド結合により結合した構造を有する親水性の化合物である。フラボノイド配糖体の元となるフラボノイドは、フェニルクロマン骨格を基本構造とする芳香族化合物であり、フラボン類、フラボノール類、フラバノン類、フラバノノール類、イソフラボン類、アントシアニン類、フラバノール類、カルコン類、オーロン類等が挙げられる。これらの中でも、フラボノイドは、フラボン類であるポリメトキシフラボンであってもよい。
【0032】
ポリメトキシフラボンとしては、スダチチン、デメトキシスダチチン、ノビレチン、タンゲレチン、ペンタメトキシフラボン、テトラメトキシフラボン、ヘプタメトキシフラボン等が挙げられる。これらの中でも、ポリメトキシフラボンは、スダチチン、又は、デメトキシスダチチンであってもよい。
【0033】
フラボノイド配糖体の元となる糖としては特に限定されず、上述したフラボノイドとグリコシド結合により結合して配糖体を形成することができる公知の糖が挙げられる。
【0034】
水熱処理に供する原料液は、フラボノイド配糖体を含む原料を水に溶解又は分散させたものである。なお、原料は、フラボノイド配糖体以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、フラボノイド、水溶性食物繊維、難溶性食物繊維、糖類等が挙げられる。また、原料液は水以外の溶媒を含んでいてもよい。水以外の溶媒としては、アルコールが挙げられる。
【0035】
原料におけるフラボノイド配糖体の含有量は、原料の固形分全量を基準として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.25~30質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることが更に好ましい。原料がフラボノイドを更に含む場合、フラボノイド配糖体の含有量は、フラボノイドの含有量1質量部に対して、0.25質量部以上であることが好ましく、0.5~100質量部であることがより好ましく、5~50質量部であることが更に好ましい。
【0036】
原料液中の原料の濃度は、原料液全量を基準として、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることが更に好ましい。原料の濃度が1質量%以上であると、分解生成物の収量が増えるため、一度の分解処理で得られるフラボノイドの量が増加する傾向があり、30質量%以下であると、フラボノイド配糖体の分解をより確実に且つ効率的に行うことができる傾向がある。
【0037】
原料として具体的には、植物及び海草の花、葉、根、茎、果実、種子等を用いることができる。特に果皮はポリメトキシフラボン、及びそれらの配糖体を多く含有するため、柑橘果実の搾汁残渣を好適に用いることができる。また、原料は、柑橘類から得られた乾燥粉末であってもよく、柑橘類の果皮から得られた乾燥粉末であってもよい。柑橘類としては、スダチ、温州みかん、ポンカン、シークワサー等が挙げられる。柑橘類は、スダチチン及びデメトキシスダチチン等のポリメトキシフラボン、及びそれらの配糖体を多く含有するスダチであってもよい。
【0038】
水熱処理は、原料液をオートクレーブ内に封入し、密閉したまま100℃を超える温度で加熱することで行うことができる。上記原料液がオートクレーブ内で加熱されることで、オートクレーブ内が加熱及び加圧環境となり、水熱処理(水熱合成)が行われる。水熱処理は、原料液を撹拌しながら行ってもよい。また、水熱処理は、オートクレーブ内に外部から水蒸気を供給して行ってもよい。例えば高温高圧の飽和水蒸気をオートクレーブ内に供給することで、オートクレーブ内が加熱及び加圧環境となり、水熱処理(水熱合成)が行われる。オートクレーブとしては特に限定されず、縦型又は横型のいずれであってもよい。縦型オートクレーブを用いる場合、その槽内に原料液を直接充填してもよく、原料液を原料容器に入れて台の上に載置してもよい。原料液を原料容器に入れる場合、原料液とは別に、オートクレーブの槽内に水を入れてもよい。一方、横型オートクレーブを用いる場合は、例えば以下の方法で水熱処理を行うことができる。
【0039】
図1は、上記分解方法で用いるオートクレーブ(水平循環型オートクレーブ)の一例を示す模式断面図である。図1に示すオートクレーブ100では、一端に密閉可能な扉(密閉扉)1を備えた円筒状の圧力容器(槽)2内に、両端が開放された円筒状のマッフル炉3が配置されており、圧力容器2の内壁とマッフル炉3の外壁との間に風路4が形成されている。また、マッフル炉3の一端は、クーラー6、ヒーター5及び風路9を介して循環ファン8に接続されている。循環ファン8は、圧力容器2の密閉扉1とは反対側の端部の外部に配置されたモーター7の回転軸に取り付けられている。
【0040】
マッフル炉3の内部には、可動台12が配置されており、当該可動台12上に、原料液10が充填された原料容器11が載置される。圧力容器2には、水蒸気を供給するためのボイラー13がバルブ14を備えた配管を介して接続されている。また、圧力容器2には、内部の圧力を調整するために圧力計15及び圧力弁16を備えた配管が接続されている。
【0041】
原料容器11としては、水熱処理時の温度及び圧力に耐えられると共に、原料液10への不純物の混入が少ないものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス、チタン及びその合金等の金属、ガラス、又は、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂などからなるタンク状、ボトル状、カップ状、トレイ状、又は、ドラム状等の容器を用いることができる。また、原料容器11は、少なくとも容器内表面を、ホーロー、ポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性、耐圧性のある化学的に安定な材料でコーティングしてもよい。
【0042】
水熱処理工程において、ボイラー13から圧力容器2内に供給された水蒸気は、図1中の矢印に沿ってオートクレーブ100内を循環する。すなわち、水蒸気は、循環ファン8により風路4に送り出されて密閉扉1に向かった後、マッフル炉3内に流入し、原料容器11の周囲を流れ、クーラー6、ヒーター5及び風路9を通って循環ファン8に吸引され、再び風路4に送り出される。水蒸気の供給量は、オートクレーブ100内が所定の温度及び圧力となるように、バルブ14の操作により調整される。なお、オートクレーブ100内の温度は、ヒーター5及びクーラー6により調整可能してもよい。また、オートクレーブ100内の圧力は、圧力弁16の開閉により調整してもよい。上記操作により、オートクレーブ100内が加熱及び加圧環境となり、水熱処理(水熱合成)が行われる。
【0043】
水熱処理の反応条件は特に限定されないが、例えば、110~300℃で0.5~20時間とすることができる。反応温度は、120~200℃であることが好ましく、120~190℃であることがより好ましく、140~185℃であることが更に好ましい。反応温度が110℃以上であると、水熱反応がより良好に発生しやすい傾向があり、300℃以下であると、原料及びフラボノイドの炭化が進行しにくく、収率がより向上する傾向がある。反応時間は、0.5~20時間であることが好ましく、1~10時間であることがより好ましい。反応時間が0.5時間以上であると、反応がより進みやすくなる傾向があり、20時間以下であると、反応の進行とコストとのバランスがとりやすくなる傾向がある。
【0044】
水熱処理時のオートクレーブ内の圧力は、上記反応温度に対応する飽和蒸気圧又はそれ以上であればよいが、装置の耐圧性の観点から、使用する最大温度における飽和蒸気圧の3倍以下であってもよく、2倍以下であってもよい。ボイラーからオートクレーブ内に水蒸気を供給する場合、上述した反応温度の飽和水蒸気を供給することが好ましい。水熱処理時のオートクレーブ内の圧力は、例えば、0.2~1.6MPaとすることができる。
【0045】
上記条件で水熱処理を行うことで、フラボノイド配糖体をフラボノイドに(より具体的にはフラボノイドと糖に)、効率的に分解することができる。
【0046】
次に、上述した方法で水熱処理工程を行った後、原料液が水熱処理されて得られた溶液を冷却する冷却工程を行う。冷却工程では、圧縮気体をオートクレーブ内に導入することで、オートクレーブ内の圧力を、その時々での溶液の飽和蒸気圧以上に維持しながら、溶液を冷却する。より具体的には、図1に示すように、コンプレッサー17からオートクレーブ100の圧力容器2内(槽内)に圧縮気体を導入する。導入された圧縮空気は、図1中の矢印に沿ってオートクレーブ100内を循環する。また、オートクレーブ100内の圧力は、コンプレッサー17による圧縮空気の圧力の調整、及び、バルブ18の操作による圧縮空気の導入速度の調整により、その時々での溶液の飽和蒸気圧以上に維持されることとなる。
【0047】
冷却工程におけるオートクレーブ内の圧力は、溶液のその時々での飽和蒸気圧の100.5%以上、300%以下とすることが好ましい。オートクレーブ内の圧力を溶液の飽和蒸気圧の100.5%以上とすることで、オートクレーブの槽内の圧力が不均一になった場合でも、溶液の突沸を十分に抑制することができる。また、オートクレーブ内の圧力を溶液の飽和蒸気圧の300%以下とする場合、オートクレーブの槽の耐圧性能を必要以上に高める必要が生じないため、装置コストを抑えることができ、経済的である。同様の観点から、オートクレーブ内の圧力は、その時々での溶液の飽和蒸気圧の200%以下であってもよく、150%以下であってもよい。
【0048】
冷却工程における圧縮気体のオートクレーブ槽内への導入速度は、オートクレーブの槽容積の5%/分以上であることが好ましく、上限については特に制約はないが、圧縮気体の導入速度が高いほど冷却速度は速くなるのに対して、供給能力の高いコンプレッサーが必要となり装置価格が高額となるため、冷却速度と金額によって圧縮気体の導入速度を適宜選定できる。圧縮気体の導入速度を槽容積の5%/分以上とすることで、自然冷却のみの場合と比較して、溶液の冷却速度を大幅に向上させることができる。同様の観点から、圧縮気体の導入速度は、槽容積の50%/分以上であってもよく、100%/分以上であってもよい。また、圧縮気体の導入速度は、槽容積の200%/分以下であってもよい。圧縮気体の導入速度を槽容積の200%/分以下とすることで、槽内の風速が大きくなり過ぎて溶液を入れた容器が動いて転倒したり、風により容器内の溶液が吹き飛ばされるといった問題が生じることを防ぐことができる。同様の観点から、圧縮気体の導入速度は、槽容積の150%/分以下であってもよく、120%/分以下であってもよい。
【0049】
圧縮気体の導入は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。また、オートクレーブ内の圧力を調整するために、オートクレーブ内の気体の排出を行ってもよい。オートクレーブ内の気体の排出も、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。圧縮気体の導入と、オートクレーブ内の気体の排出とは、同時に行ってもよく、時間的に分けて行ってもよい。例えば、圧縮気体の導入を連続的に行いながら、オートクレーブ内の気体の排出を断続的に行い、オートクレーブ内の圧力を所定の範囲内に維持してもよい。このような方法によりオートクレーブ内で圧縮気体をフローさせることで、溶液の温度を効率的に低下させることができる。
【0050】
導入する圧縮気体の圧力は、当該圧縮気体を導入する時点での溶液の飽和蒸気圧の100.5%以上300%以下の範囲内としてもよい。これにより、オートクレーブ内の圧力を溶液の飽和蒸気圧の100.5%以上300%以下の範囲内に調整し易く、それによる上述した効果を得ることができる。同様の観点から、導入する圧縮気体の圧力は、当該圧縮気体を導入する時点での溶液の飽和蒸気圧の110%以上200%以下であってもよく、120%以上150%以下であってもよい。
【0051】
圧縮気体の種類は特に限定されないが、水熱処理工程の終了直後は溶液の化学反応が未だ継続している場合があるため、その反応に適した気体を使用することが好ましい。圧縮気体は、空気、窒素、酸素及び二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも1種の気体からなるものであってもよい。圧縮気体としては、一般的には空気が使用できるが、溶液が酸化されやすく且つ酸化を防ぎたい場合には、窒素又は二酸化炭素を使用することが好ましく、酸化反応等を維持したい場合には酸素を使用することもできる。
【0052】
また、冷却時に槽内に導入した冷却水配管、シャワー、クーラー等を併用することで、冷却時間を更に短縮することができる。また、原料容器の開口部には、外部からの不純物の混入を防ぐ観点から、蓋体を配置してもよい。蓋体を配置する場合には、原料容器と蓋体との間に隙間を設けること等により、原料容器を密閉しないように配置する必要がある。蓋体を配置することで、例えば、シャワーにより冷却水等を噴出させて槽内を冷却する場合に、原料容器内に冷却水が混入することを防ぐことができる。
【0053】
上記冷却工程後のオートクレーブ内における溶液の温度は特に限定されないが、オートクレーブ内における溶液は、当該溶液の常圧下での沸点以下まで冷却してもよい。溶液を、その常圧下での沸点以下まで冷却することで、オートクレーブから溶液を取り出す際に溶液が突沸することを防ぐことができる。
【0054】
冷却工程においては、溶液の温度の低下に合わせてオートクレーブ内の圧力を徐々に低下させてもよいし、一定の圧力を維持したまま溶液を冷却した後、オートクレーブ内を急速に減圧してもよい。
【0055】
冷却工程後の溶液は、オートクレーブから取り出した後、自然冷却により常温まで冷却することができる。これにより、フラボノイド配糖体の分解生成物(配糖体分解物)を得ることができる。
【0056】
上述した冷却工程における冷却方法は、フラボノイド配糖体の分解方法に限らず、オートクレーブ内で加熱及び加圧された溶液を冷却するための冷却方法として、広く適用することができる。例えば、上記冷却方法は、一般的なエーテルやエステル加水分解反応にも適応可能である。
【0057】
(フラボノイドの製造方法)
本実施形態に係るフラボノイドの製造方法は、フラボノイド配糖体を分解する分解工程と、分解工程で得られた分解生成物からフラボノイドを抽出する抽出工程と、を含む。分解工程は、上述した本実施形態に係るフラボノイド配糖体の分解方法によりフラボノイド配糖体を分解する工程である。
【0058】
抽出工程では、分解工程で得られた分解生成物からフラボノイドを抽出する。分解生成物には、フラボノイドの他に、糖、分解させずに残ったフラボノイド配糖体、水溶性及び難溶性セルロース並びにその分解物等が含まれている。ここで、フラボノイドは疎水性であるのに対し、糖、フラボノイド配糖体、水溶性セルロース及びその分解物は親水性である。そのため、水熱処理後の水溶液に不溶な成分にはフラボノイドが高濃度で含まれており、水熱処理後に水溶液と不溶分とを分離することで、フラボノイドを濃縮することができる。また、更に水不溶分を、フラボノイドを溶解する溶媒、例えばエタノール、酢酸エチル、ヘキサン、トルエン等、及び、それらの混合溶媒に溶解し、不溶物をろ過等により除去することで、フラボノイドを更に抽出・精製することができる。その後、ろ液を乾燥させることにより、高濃度フラボノイドを得ることができる。
【0059】
上記方法により、フラボノイドを高い収率で効率的に製造することができる。本実施形態の製造方法で製造されるフラボノイドは、ポリメトキシフラボンであってもよく、スダチチン及び/又はデメトキシスダチチンであってもよい。本実施形態の製造方法は、ポリメトキシフラボン、特にスダチチン及びデメトキシスダチチンの製造に好適であり、その収率を大きく向上させることができる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1に示したオートクレーブ100は、一つの循環ファン8を備えるものであるが、複数の循環ファンを備えるオートクレーブを用いてもよい。例えばマッフル炉3内の複数箇所に循環ファンを設置した場合、マッフル炉3内の温度を均一にしやすく、複数の原料液を収容した場合であっても、各原料液の温度が均一になりやすい。また、図1に示したオートクレーブ100は、クーラー6及びヒーター5を備えているが、それらの一方又は両方を備えていなくてもよい。
【0061】
また、本実施形態に係るフラボノイド配糖体の分解方法及びオートクレーブ内での溶液の冷却方法は、上述した冷却工程の前に、オートクレーブ内を自然冷却する自然冷却工程を有していてもよい。自然冷却工程を有する場合、例えば、処理直後の溶液の飽和蒸気圧に満たない圧縮能力のコンプレッサーを利用できる範囲まで自然冷却し、その後高圧冷却を行うことで、冷却時間を短縮することができる。自然冷却工程は、水熱処理工程(オートクレーブ内における加熱及び加圧処理)を終了した直後から10分間以上行ってもよく、10~60分間行ってもよい。自然冷却工程は、溶液の温度が、水熱処理工程(オートクレーブ内における加熱及び加圧処理)を終了した直後の溶液の温度の95%以下となるまで行ってもよく、70~95%となるまで行ってもよい。
【実施例
【0062】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
スダチチン含有量1000質量ppm、配糖体由来スダチチン含有量9000質量ppmであるスダチ果皮エキス粉(池田薬草株式会社製)を超純水に5質量%となるように溶解/分散させ、スダチ果皮エキス水分散液を作製した。この水分散液を15Lステンレスタンク(日東金属工業株式会社製、容器深さ:27cm)及び1Lポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ボトル(アズワン株式会社製、商品名:ビッグボーイ広口1000ml、容器深さ20cm)に表1に示す所定量投入した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示したサンプル1~3を、槽容積2mの熱風循環式オートクレーブ(株式会社芦田製作所製)に収容し、180℃で1時間、スダチ果皮エキス水分散液を配糖体分解処理した。分解処理は、ボイラーからオートクレーブの槽(圧力容器)内に180℃の飽和水蒸気を供給し、槽内圧力が180℃の水の飽和水蒸気圧である1MPaになるように水蒸気の供給量及び圧力弁を調整しながら行った。
【0066】
分解処理後、槽内圧力1MPa(槽内温度180℃、溶液温度180℃)を自然冷却にて10分冷却し、0.73MPa(槽内温度165℃、溶液温度165℃)になった時点で、装置に装着したコンプレッサーを用いて、圧力1MPaの圧縮空気を槽内にバルブを開いて導入した。圧縮空気の導入速度は、槽容積の7.5%/分とした。圧縮空気の導入を開始した後、槽内圧力が1MPaを超えた時点で、排気弁を開いて槽内の気体を排出し、槽内圧力が0.75MPa付近になった時点で排気弁を閉じた。上記手順により、槽内圧力が約0.75~1MPaの範囲内に維持されるように、圧縮空気を槽内に連続的に導入しながら槽内の気体の排出を断続的に行うことで、槽内及び溶液温度を100℃まで冷却した。冷却に要した時間は1時間であった。冷却後、圧縮空気の導入を止め、オートクレーブの密閉扉を開けてサンプル1~3を取り出し、容器内の溶液を常温(25℃)まで自然冷却した。
【0067】
次に、各容器内の溶液及び固形分を目開き0.2μmの親水化PTFE製メンブレンフィルター(メルク-ミリポア社製、商品名:Omnipore 0.2μm JG)を用いて、ダイアフラムポンプを用いて減圧濾過した。分離された溶液には分解された配糖体由来の糖が溶解しており、固形物には分解したスダチチンが高濃度で含まれているため、得られた固形物を200ccのガラス製ビーカに入れて、オーブンで120℃にて5時間乾燥して、粉末状の配糖体分解物を得た。次いで配糖体分解物をエタノールに分散させて5質量%分散液になるよう調整し、還流下60℃で1時間処理して、エタノールにスダチチンを抽出した。その後、分散液を、目開き0.2μmの親水化PTFE製メンブレンフィルター(メルク-ミリポア社製、商品名:Omnipore 0.2μm JG)を用いて、ダイアフラムポンプを用いて減圧濾過し、スダチチン溶解液を得た。スダチチン溶解液を60℃加温下でダイアフラムポンプを用いて真空乾燥し、粉末状のスダチチン濃縮粉末を得た。
【0068】
(比較例1)
分解処理後、自然冷却等を行うことなく、直ちに圧力弁を全開にして減圧を行ったこと以外は実施例1と同様にして配糖体分解物及びスダチチン濃縮粉末を得た。減圧速度は180kPa/分であった。
【0069】
<評価方法>
(スダチチン濃縮粉末のスダチチン濃度測定)
各実施例及び比較例で得られたスダチチン濃縮粉末のスダチチン濃度は、以下の方法で測定した。まず、スダチチン濃縮粉末0.1gを希釈倍率500となるようにエタノールに溶解/分散させ、孔径0.1μmのPTFEフィルターでろ過して、エタノール溶液を得た。このエタノール溶液について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により成分分析を行った。標準物質に市販のスダチチン標準精製試料を用いて検量線を作成し、それを用いてスダチチン濃縮粉末のスダチチン濃度を概算した。HPLC装置には、日立ハイテク製「クロムマスター」を用いた。結果を表2に示す。
【0070】
(スダチチンの収率の算出)
スダチチン濃縮粉末の質量及びスダチチン濃度から、スダチチンの収率を求めた。収率は、分解処理前のサンプル中のスダチチン及び配糖体由来スダチチンの質量の合計に対する、得られたスダチチン濃縮粉末に含まれるスダチチンの質量の割合を示す。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
分解処理後、自然冷却等を行うことなく、直ちに圧力弁を全開にして減圧した比較例1では、全てのサンプルでスダチチンの収率が50質量%未満と低いものであった。また、減圧時に容器からサンプルが飛散していることが確認された。これに対し、実施例1では、比較例1と比較して、容器からのサンプルの飛散がほとんどなく、収率が大きく向上したことが確認された。
【符号の説明】
【0073】
1…密閉扉、2…圧力容器、3…マッフル炉、4…風路、5…ヒーター、6…クーラー、7…モーター、8…循環ファン、9…風路、10…原料液、11…原料容器、12…可動台、13…ボイラー、14…バルブ、15…圧力計、16…圧力弁、17…コンプレッサー、18…バルブ。
図1