IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許7513199トリシクロデカンジメタノール組成物、紫外線硬化性組成物、重合体組成物、及びトリシクロデカンジメタノール組成物の製造方法
<>
  • 特許-トリシクロデカンジメタノール組成物、紫外線硬化性組成物、重合体組成物、及びトリシクロデカンジメタノール組成物の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】トリシクロデカンジメタノール組成物、紫外線硬化性組成物、重合体組成物、及びトリシクロデカンジメタノール組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 31/27 20060101AFI20240702BHJP
   C07C 29/141 20060101ALI20240702BHJP
   C07C 29/80 20060101ALI20240702BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 59/04 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20240702BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240702BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240702BHJP
【FI】
C07C31/27
C07C29/141
C07C29/80
C08F220/20
C08G18/32 012
C08G18/65 011
C08G59/04
C08G63/199
G02B1/14
G02B1/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023515853
(86)(22)【出願日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2023008851
(87)【国際公開番号】W WO2023176641
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2022042785
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西城 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】田島 直登
(72)【発明者】
【氏名】田中 善幸
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/068377(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/013063(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/013064(WO,A2)
【文献】国際公開第2022/265240(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/277347(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 31/27
C07C 29/141
C07C 29/80
C08F 220/20
C08G 18/32
C08G 18/65
C08G 59/04
C08G 63/199
G02B 1/14
G02B 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリシクロデカンジメタノール類を含む組成物であって、
該トリシクロデカンジメタノール類は、一方の鏡像異性体が下記式(I)で示されるキラル化合物A、一方の鏡像異性体が下記式(II)で示されるキラル化合物B、及び一方の鏡像異性体が下記式(III)で示されるキラル化合物Cを含み、
該組成物は、ガスクロマトグラフィーにより検出される、該キラル化合物Cのガスクロマトグラムのピーク面積Xc、及びトリシクロデカンジメタノール類のガスクロマトグラムのピーク面積の合計Xtが、Xc/Xt≧0.35を満たす、トリシクロデカンジメタノール組成物。
【化1】
【請求項2】
ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記キラル化合物Bのガスクロマトグラムのピーク面積Xb及び前記Xcが、Xc/Xb≧1.00を満たす、請求項1に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物。
【請求項3】
ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記キラル化合物Aのガスクロマトグラムのピーク面積Xa、前記キラル化合物Bのガスクロマトグラムのピーク面積Xb及び前記Xcが、Xc/(Xa+Xb)≧0.60を満たす、請求項1に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物。
【請求項4】
ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記キラル化合物Aのガスクロマトグラムのピーク面積Xa及び前記Xtが、Xa/Xt≦0.27を満たす、請求項1に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物。
【請求項5】
ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記キラル化合物Bのガスクロマトグラムのピーク面積Xb及び前記Xtが、Xb/Xt≦0.32を満たす、請求項1に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物に由来する、紫外線硬化性組成物。
【請求項7】
ハードコート材料、防汚コート材料、レジスト材料、インクジェットインク、及び3Dプリンター用材料のいずれかに使用される、請求項6に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物に由来する、重合体組成物。
【請求項9】
ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の重合体組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の紫外線硬化性組成物に由来する、重合体組成物。
【請求項11】
ジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化してトリシクロデカンジカルバルデヒド類を得る工程、該トリシクロデカンジカルバルデヒドの還元反応によりトリシクロデカンジメタノールを含む粗反応液を得る工程、及び該粗反応液を蒸留精製してトリシクロデカンジメタノール組成物を得る工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリシクロデカンジメタノール組成物、紫外線硬化性組成物、重合体組成物、及びトリシクロデカンジメタノール組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形材料分野、電子材料分野及び表示装置用部材の分野では、透明性、耐熱性及び低吸水性の観点から、脂環式の分子構造を有する材料が使用されている。
トリシクロデカンジメタノール(以下、「TCDDM」と略する。)は、脂環式構造を有する二価アルコールである。TCDDMは、触媒存在下、ジシクロペンタジエンに一酸化炭素と水素を作用させるヒドロホルミル化反応でアルデヒド体を得た後、これを水素還元することにより製造される(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
TCDDMは、ポリエステルやポリカーボネート等の成形材料の合成原料として使用されてきた。TCDDMを構成成分として含有するポリマーは、その脂環式構造に由来し、硬度、透明性、耐熱性及び低吸水性において優れた性能が発現することが知られ、成形材料分野、電子材料分野及び表示装置用部材などの分野で使用されている。
TCDDMを原料として合成されるTCDDMのジアクリル酸エステル誘導体、ジメタクリル酸エステル誘導体、ウレタンアクリレートなどの誘導体は、紫外線硬化性組成物として使用されている。
TCDDMを構成成分として含有する紫外線硬化性組成物を用いた硬化物は、表面硬度が高い、ガラス転移温度が高い、耐熱分解性に優れる、現像耐性に優れる等の特徴があり、ハードコート、防汚コート、レジスト等の電子材料及び表示装置用部材に使用されている。
【0004】
ジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化反応させTCDDMを得る方法において、ジシクロペンタジエンのノルボルネン環の二重結合の反応性は5員環二重結合に比べて高い。このため、1個目のホルミル基がノルボルネン環に付加したあと、2個目のホルミル基が5員環の二重結合に付加する(非特許文献1)。その結果、この反応により得られたTCDDMは、5員環においてヒドロキシメチル基の結合位置が異なる3種類の異性体を主成分とするTCDDMの混合物(以下、「TCDDM組成物」という。)であることが知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-132624号公報
【文献】特開2021-520401号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】日立化成テクニカルレポート,NO.51(2008-7),P7~12
【文献】Applied Catalyst,Vol.19,pp259-273(1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載のTCDDM組成物は、調合操作等の取り扱い時に糸曳きし易いため、取り扱い性に劣る。
このため、従来のTCDDM組成物にあっては、ポリマーや紫外線硬化性組成物を製造する原料として取り扱う際、容器や設備に付着して生産性を低下させることのないよう、曳糸性の低減によるハンドリング性向上が要求されていた。
【0008】
TCDDMを原料として合成される紫外線硬化性組成物が使用される分野において、レジスト等の用途では、スクリーン印刷又はフレキ印刷法等を用いて基材上に前記紫外線硬化性組成物を塗布して硬化する方法が用いられており、薄く均一に塗布できること、或いは厚盛に塗布できること、基材上に微細なパターンを高精度に印刷できること等の観点から、紫外線硬化性組成物は高粘度であることが要求されている。
ハードコートや防汚コート等、インクジェット印刷などの用途では、コーター方式、スプレー方式、ディスペンサー方式で基材上に前記紫外線硬化性組成物を塗布して硬化する方法が用いられ、紫外線硬化性組成物を精度よく定量吐出する観点から、紫外線硬化性組成物には高粘度であることが要求されている。
【0009】
しかしながら、従来のTCDDMを原料として合成される紫外線硬化性組成物は、TCDDMのアルコール部位をエステル結合などへと変換したことにより粘度が大幅に低下してしまう。高粘度化のために粘度向上剤を配合すると、紫外線硬化性組成物に本来要求される性能が損なわれる。
【0010】
本発明は、曳糸性が低減され、取り扱い性に優れたTCDDM組成物を提供することを課題とする。
本発明はまた、高粘度の紫外線硬化性組成物を得ることができるTCDDM組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ヒドロキシメチル基の結合位置が異なる3種類の異性体を主成分とするTCDDMの混合物において、異性体比率を適切に制御することが有効であることを見出した。より具体的には、3種類の異性体のうちの1成分が極めて結晶性の高い構造を有しており、この成分比率が所定値以上となるように製造することで、TCDDM組成物としての結晶性を調節し、糸曳きの起こりづらい、取り扱い性に優れたTCDDM組成物を得ることができるとの知見を得た。更には、結晶性の高い構造を多く含むTCDDM組成物を原料とすることにより、分子構造の配向性を向上させ、高粘度な紫外線硬化性組成物を得ることができるとの知見を得た。
【0012】
本発明は以下を要旨とする。
【0013】
[1] トリシクロデカンジメタノール類を含む組成物であって、 該トリシクロデカンジメタノール類は、一方の鏡像異性体が下記式(I)で示されるキラル化合物A、一方の鏡像異性体が下記式(II)で示されるキラル化合物B、及び一方の鏡像異性体が下記式(III)で示されるキラル化合物Cを含み、 該組成物は、ガスクロマトグラフィーにより検出される、該キラル化合物Cのガスクロマトグラムのピーク面積Xc、及びトリシクロデカンジメタノール類のガスクロマトグラムのピーク面積の合計Xtが、Xc/Xt≧0.35を満たす、トリシクロデカンジメタノール組成物。
【0014】
【化1】
【0015】
[2] ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記キラル化合物Bのガスクロマトグラムのピーク面積Xb及び前記Xcが、Xc/Xb≧1.00を満たす、[1]に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物。
【0016】
[3] ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記キラル化合物Aのガスクロマトグラムのピーク面積Xa、前記キラル化合物Bのガスクロマトグラムのピーク面積Xb及び前記Xcが、Xc/(Xa+Xb)≧0.60を満たす、[1]又は[2]に記載のトリシクロデカンジメタノール組成物。
【0017】
[4] ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記キラル化合物Aのガスクロマトグラムのピーク面積Xa及び前記Xtが、Xa/Xt≦0.27を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載のトリシクロデカンジメタノール組成物。
【0018】
[5] ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記キラル化合物Bのガスクロマトグラムのピーク面積Xb及び前記Xtが、Xb/Xt≦0.32を満たす、[1]~[4]のいずれかに記載のトリシクロデカンジメタノール組成物。
【0019】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載のトリシクロデカンジメタノール組成物に由来する、紫外線硬化性組成物。
【0020】
[7] ハードコート材料、防汚コート材料、レジスト材料、インクジェットインク、及び3Dプリンター用材料のいずれかに使用される、[6]に記載の紫外線硬化性組成物。
【0021】
[8] [1]~[5]のいずれかに記載のトリシクロデカンジメタノール組成物、若しくは、[6]又は[7]に記載の紫外線硬化性組成物に由来する、重合体組成物。
【0022】
[9] ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[8]に記載の重合体組成物。
【0023】
[10] ジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化してトリシクロデカンジカルバルデヒド類を得る工程、該トリシクロデカンジカルバルデヒドの還元反応によりトリシクロデカンジメタノールを含む粗反応液を得る工程、及び該粗反応液を蒸留精製してトリシクロデカンジメタノール組成物を得る工程を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のトリシクロデカンジメタノール組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、結晶性が高く、且つ、取り扱い性に優れたTCDDM組成物を提供することができる。より具体的には、本発明のTCDDM組成物は、異性体比率を適切に選択することにより優れた結晶性を有する。その結果、TCDDM組成物を取り扱う際の糸曳きを低減し、生産効率を向上させることができる。
さらに、本発明のTCDDM組成物を原料として合成される紫外線硬化性組成物は、紫外線硬化性組成物に本来要求される性能を損なうことなく、高粘度に制御できるので、塗工安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施例3で得られたTCDDM組成物のガスクロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0027】
特に断らない限り、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0028】
<TCDDM組成物>
本発明のTCDDM組成物は、トリシクロデカンジメタノール類を含む組成物である。
前記トリシクロデカンジメタノール類は、一方の鏡像異性体が下記式(I)で示されるキラル化合物Aと、一方の鏡像異性体が下記式(II)で示されるキラル化合物Bと、一方の鏡像異性体が下記式(III)で示されるキラル化合物Cとの混合物である。
前記キラル化合物A、キラル化合物B、及びキラル化合物Cは、下記一般式(I)~(III)で示されるように、ノルボルナン環の6員環部に1個のヒドロキシメチル基(CHOH基)を有し、5員環部に他の1個のヒドロキシメチル基を有する。
【0029】
【化2】
【0030】
より具体的には、本発明における前記トリシクロデカンジメタノール類は、下記式(I)で示される化合物とこの化合物の鏡像異性体である下記式(IA)で示される化合物とからなるキラル化合物A、下記式(II)で示される化合物とこの化合物の鏡像異性体である下記式(IIA)で示される化合物とからなるキラル化合物B、及び、下記式(III)で示される化合物とこの化合物の鏡像異性体である下記式(IIIA)で示される化合物とからなるキラル化合物Cを含む。
【0031】
【化3】
【0032】
このように、本発明におけるキラル化合物A、キラル化合物B、及びキラル化合物Cは、鏡像異性体(光学異性体ともいう。)としてR体とS体が存在するが、その違いは特に問わず、両方を含むものとする。
また、本発明におけるキラル化合物A、キラル化合物B、及びキラル化合物Cは、2つのヒドロキシメチル基がノルボルナン環の橋頭位と同じ側に結合するか、反対の側に結合するかによって立体異性体が存在するが、それぞれ式(I)~(III)又は式(IA)~(IIIA)で示されるように、ノルボルナン環の橋頭位と同じ側にヒドロキシメチル基が結合したものを示す。更に、トリシクロデカン骨格にはendo体とexo体が存在するが、本発明におけるキラル化合物A、キラル化合物B、及びキラル化合物Cは、endo体のみを示す。
橋頭位と反対の側にヒドロキシメチル基が結合したもの、及びトリシクロデカン骨格がexo体である化合物は、その他の成分としてトリシクロデカンジメタノール類中に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよいが、「トリシクロデカンジメタノール類のガスクロマトグラムのピーク面積の合計Xt」は、これらの化合物のピーク面積を含むものとする。
以下において、「キラル化合物A」、「キラル化合物B」、「キラル化合物C」を、それぞれ単に「化合物A」、「化合物B」、「化合物C」と称す場合がある。
【0033】
本発明のTCDDM組成物において、ガスクロマトグラフィーにより検出される、キラル化合物Cのガスクロマトグラムのピーク面積Xc、及びトリシクロデカンジメタノール類のガスクロマトグラムのピーク面積の合計Xtから算出される、Xc/Xtの下限は、組成物の取り扱い性の観点から、Xc/Xt≧0.35である。この割合は、Xc/Xt≧0.38であることが好ましく、Xc/Xt≧0.42であることがより好ましい。一方、前記Xc/Xの上限は、特に限定されるものではないが、組成物の取り扱い性を良好に維持できる観点から、通常は、Xc/Xt≦0.55であることが好ましく、Xc/Xt≦0.50であることがより好ましい。
【0034】
前記Xc/Xtの値を制御する手段は、特に制限されるものではなく、この分野の当業者であれば、周知技術に従って製造条件を適宜最適化することで制御できる。例えば、ヒドロホルミル化の反応条件や、得られたTCDDM組成物を蒸留精製するときの蒸留条件等を最適化して、前記Xc/Xtの値を制御することができる。
【0035】
本発明のTCDDM組成物において、ガスクロマトグラフィーにより検出される、化合物Bのガスクロマトグラムのピーク面積Xb及び前記Xcから算出される、Xc/Xbの下限は、組成物の取り扱い性の観点から、Xc/Xb≧1.00であることが好ましく、Xc/Xb≧1.25であることがより好ましく、Xc/Xb≧1.50であることがさらに好ましい。一方、前記Xc/Xbの上限は、特に限定されるものではないが、組成物の取り扱い性を良好に維持できる観点から、通常は、Xc/Xb≦3.0であることが好ましく、Xc/Xb≦2.0であることがより好ましい。
【0036】
前記Xc/Xbの値を制御する手段は、特に制限されるものではなく、この分野の当業者であれば、周知技術に従って製造条件を適宜最適化することで制御できる。例えば、ヒドロホルミル化の反応条件や、得られたTCDDM組成物を蒸留精製するときの蒸留条件等を最適化して、前記Xc/Xbの値を制御することができる。
【0037】
本発明のTCDDM組成物において、ガスクロマトグラフィーにより検出される、化合物Aのガスクロマトグラムのピーク面積Xa、前記Xb及び前記Xcから算出される、Xc/(Xa+Xb)の下限は、組成物の取り扱い性の観点から、Xc/(Xa+Xb)≧0.60であることが好ましく、Xc/(Xa+Xb)≧0.70であることがより好ましく、Xc/(Xa+Xb)≧0.80であることがさらに好ましい。一方、前記Xc/(Xa+Xb)の上限は、特に限定されるものではないが、組成物の取り扱い性を良好に維持できる観点から、通常は、Xc/(Xa+Xb)≦1.10であることが好ましく、Xc/(Xa+Xb)≦1.00であることがより好ましい。
【0038】
前記Xc/(Xa+Xb)の値を制御する手段は、特に制限されるものではなく、この分野の当業者であれば、周知技術に従って製造条件を適宜最適化することで制御できる。
例えば、ヒドロホルミル化の反応条件や、得られたTCDDM組成物を蒸留精製するときの蒸留条件等を最適化して、前記Xc/(Xa+Xb)の値を制御することができる。
【0039】
本発明のTCDDM組成物において、前記Xa及び前記Xtから算出される、Xa/Xtの上限は、組成物の取り扱い性の観点から、Xa/Xt≦0.27であることが好ましく、Xa/Xt≦0.23であることがより好ましい。一方、前記Xa/Xtの下限は、特に限定されるものではないが、組成物の取り扱い性を良好に維持できる観点から、通常は、Xa/Xt≧0.18であることが好ましく、Xa/Xt≧0.20であることがより好ましい。
【0040】
前記Xa/Xtの値を制御する手段は、特に制限されるものではなく、この分野の当業者であれば、周知技術に従って製造条件を適宜最適化することで制御できる。例えば、ヒドロホルミル化の反応条件や、得られたTCDDM組成物を蒸留精製するときの蒸留条件等を最適化して、前記Xa/Xtの値を制御することができる。
【0041】
本発明のTCDDM組成物において、前記Xb及び前記Xtから算出される、Xb/Xtの上限は、組成物の取り扱い性の観点から、Xb/Xt≦0.32であることが好ましく、Xb/Xt≦0.30であることがより好ましく、Xb/Xt≦0.28であることがさらに好ましい。一方、前記Xb/Xtの下限は、特に限定されるものではないが、組成物の取り扱い性を良好に維持できる観点から、通常は、Xb/Xt≧0.22であることが好ましく、Xb/Xt≧0.24であることがより好ましい。
【0042】
前記Xb/Xtの値を制御する手段は、特に制限されるものではなく、この分野の当業者であれば、周知技術に従って製造条件を適宜最適化することで制御できる。例えば、ヒドロホルミル化の反応条件や、得られたTCDDM組成物を蒸留精製するときの蒸留条件等を最適化して、前記Xb/Xtの値を制御することができる。
【0043】
本発明におけるTCDDM組成物の純度は、前述のXc/Xt値等を満たすものであれば特に制限されず、精製などにより純度を高めたものであってもよく、TCDDM以外の不純物を含むものであってもよい。
【0044】
本発明のTCDDM組成物において、トリシクロデカンジメタノール類の含有割合の下限は、特に制限されないが、組成物の取り扱い性の観点から、該TCDDM組成物の総質量100質量%に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。一方、前記合計含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、高いほど好ましく、該組成物の総質量に対して、100質量%であってもよい。
【0045】
本発明のTCDDM組成物において、キラル化合物A、キラル化合物B及びキラル化合物Cの合計含有割合の下限は、特に限定されないが、組成物の取り扱い性の観点から、該組成物の総質量100質量%に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。一方、前記合計含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、高いほど好ましく、該組成物の総質量に対して、100質量%であってもよい。
【0046】
<TCDDM組成物の製造方法>
上述したTCDDM組成物を製造する方法は、特に限定されるものではないが、一実施形態として、本発明のTCDDM組成物の製造方法を用いることができる。
【0047】
本発明のTCDDM組成物の製造方法は、ジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化してトリシクロデカンジカルバルデヒド類を得る工程、該トリシクロデカンジカルバルデヒドの還元反応によりトリシクロデカンジメタノールを含む粗反応液を得る工程、及び該粗反応液を蒸留精製してトリシクロデカンジメタノール組成物を得る工程を含む、製造方法である。
【0048】
この際、ヒドロホルミル化によりホルミル基を導入する工程において、異性体が生じるため、キラル化合物A、キラル化合物B、キラル化合物Cのそれぞれ前駆体となるトリシクロデカンジカルバルデヒド類が混合物として得られる。その後、水素化の工程により、キラル化合物A、キラル化合物B、キラル化合物Cがそれぞれ得られる。
【0049】
本発明のキラル化合物A、キラル化合物B、キラル化合物Cの比率を制御する手法としては、特に制限されないが、ヒドロホルミル化の反応条件を調整することで制御してもよく、加熱などの手法を用いて異性化させてもよく、製造したTCDDM組成物を蒸留精製することで比率を調整してもよい。
【0050】
<ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応>
ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化の方法には特に制限はなく、常法に従って行うことができる。
例えば、特開2001-10999号公報に記載の方法に従って、炭化水素化合物からなるヒドロホルミル化反応溶媒中、ロジウム化合物及び有機リン化合物からなる触媒の共存下に、水素と一酸化炭素を用いて、下記反応式(IV)の通り、ジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化してトリシクロデカンジカルバルデヒドを製造することができる。
【0051】
【化4】
【0052】
このヒドロホルミル化工程で使用されるロジウム化合物は有機リン化合物と錯体を形成し、水素と一酸化炭素の存在下でヒドロホルミル化活性を示すものであればその前駆体の形態によらない。すなわち、Rh(acac)(CO)、Rh、Rh(CO)12、Rh(CO)16、Rh(NOなどの触媒前駆体物質を有機リン化合物と共に反応混合物中に導入し、反応容器内で触媒活性を持つロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体を形成させてもよいし、あらかじめロジウム金属ヒドリドカルボニルリン錯体触媒を調製してそれを反応容器内に導入してもよい。
【0053】
本発明の好ましい具体例では、Rh(acac)(CO)をロジウム前駆体物質として使用して溶媒の存在下に有機リン化合物と反応させた後、過剰の遊離有機リン化合物と共に反応器に導入し、触媒活性を持つロジウム-有機リン錯体触媒とする。
【0054】
ロジウム化合物とヒドロホルミル化反応の触媒を形成する有機リン化合物としてはホスファイト及びホスフィンが挙げられる。
【0055】
このうち、ホスファイトとしては、ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応に有効であることから、一般式P(-OR)(-OR)(-OR)(式中、R、R及びRはそれぞれ置換されていてもよいアリール基又はアルキル基を表す。)で示される化合物が好ましい。R、R及びRの具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、メトキシ基などで置換されていてもよいフェニル基及びナフチル基などのアリール基;メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの脂肪族アルキル基;メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの低級アルキル基で置換されていてもよいシクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式アルキル基等が挙げられる。
【0056】
好適なホスファイトの具体例としては、トリス(2-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3-メトキシ-6-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2-t-ブチルフェニル)(t-ブチル)ホスファイトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのホスファイトは単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0057】
ホスフィンとしては、特に立体障害の大きいアルキルホスフィンがジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応に有効である。その代表例としてはトリシクロプロピルホスフィン、トリシクロブチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘプチルホスフィン、トリシクロオクチルホスフィンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのホスフィンは単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0058】
有機リン化合物の使用量は、ヒドロホルミル化反応液中において有機リン化合物がロジウム金属に対し1~400モル倍の範囲、好ましくは3~200モル倍の範囲で存在すれば、十分なヒドロホルミル化反応速度でトリシクロデカンジカルバルデヒドを得ることができる。
【0059】
ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応は、溶媒を用いずに実施することも可能であるが、反応に不活性な有機溶媒を用いるとより好適に実施できる。
【0060】
後述の通り、ヒドロホルミル化反応終了後、トリシクロデカンジカルバルデヒドを含有する反応生成液をアルコールと接触させ、触媒成分をジヒドロホルミル化反応溶媒層に残したまま、トリシクロデカンジカルバルデヒドをアルコールからなる抽出溶媒層に抽出し、層分離を行う。そのためヒドロホルミル化反応溶媒はアルコールと層分離するものが好ましい。このような溶媒としては芳香族炭化水素化合物、脂肪族炭化水素化合物、脂環式炭化水素化合物が挙げられる。
【0061】
芳香属炭化水素化合物としては、ベンゼン及びトルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメンなどのメチルベンゼン類、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼンなどのエチルベンゼン類、イソプロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼンなどのプロピルベンゼン類、またこれら以外の各種アルキルベンゼン類も好適に使用できる。
【0062】
脂肪族炭化水素化合物としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ドデカン、デカンが例示され、標準温度及び圧力で液体であればこれらに限定されない。
【0063】
脂環式炭化水素化合物としてはシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカン、デカリン、メチルシクロヘキサンなどが好適に使用される。
【0064】
これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0065】
溶媒は、反応液中のジシクロペンタジエンの濃度が10~95質量%、特に30~90質量%程度となるように用いることが、反応効率の観点から好ましい。
【0066】
ロジウム触媒の使用量は、原料のジシクロペンタジエンに対して、ロジウム金属として通常10~5000重量ppmであり、より好ましくは50~2000重量ppmである。ロジウムを50ppm以上で用いる場合には、触媒の回収が必要になる。
【0067】
ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化反応の温度及び圧力は、通常40~160℃、好ましくは80~140℃の反応温度、通常1~15MPaの反応圧力である。温度が40℃より低い場合はヒドロホルミル化の反応速度が遅く、160℃より高い場合は反応液中におけるジシクロペンタジエンやヒドロホルミル化反応生成物からの副反応が進行しアルデヒドの収率が低下する。圧力が1MPaより低い場合はヒドロホルミル化の反応速度が遅く、15MPaより高い場合は高圧の反応装置を使用するため装置費用が高くなる。
【0068】
反応に用いる水素/一酸化炭素混合ガスにおける水素と一酸化炭素のモル比は導入ガス組成(水素/一酸化炭素)として0.2~5.0の範囲から選ぶことができる。水素/一酸化炭素混合ガスがこの範囲を外れるとヒドロホルミル化反応の反応活性あるいはアルデヒド選択率が低下する。
【0069】
ヒドロホルミル化の反応方式としては、ロジウム-有機リン錯体触媒、溶媒、及び水素/一酸化炭素混合ガスの存在する反応器へ、原料のジシクロペンタジエン単独で、又はジシクロペンタジエンと溶媒との混合溶液として供給しながら行う連続フィード方式が採用される。この方法を用いると、反応器中でジシクロペンタジエンが熱分解してヒドロホルミル化反応を阻害するシクロペンタジエンの生成を低減でき、良好な反応速度と収率を維持できる。ジシクロペンタジエンの流動性を保持するため前述の溶媒で希釈し、これらが解重合しシクロペンタジエンを生成しない温度で反応器に供給することが好ましい。
【0070】
<トリシクロデカンジカルバルデヒドの抽出>
ヒドロホルミル化反応終了後、反応生成液をそのまま、又は、ヒドロホルミル化反応溶媒として反応で使用した炭化水素化合物もしくは他の炭化水素化合物で希釈した後、アルコールと接触させて、触媒成分をヒドロホルミル化反応溶媒層に残したまま、生成物であるトリシクロデカンジカルバルデヒドをアルコールに抽出し、層分離を行う。
【0071】
アルコールとしては炭素数1~3の第1級アルコールや炭素数2~6の多価アルコールが挙げられる。
第1級アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノールが挙げられる。
炭素数2~6の多価アルコールとしてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ペンタンジオールの各異性体、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが使用される。
この中で、メタノールやエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールが比較的沸点が低く、価格も安く、液体として取扱もしやすいので好適に使用される。これらの抽出溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0072】
アルコールに水を共存させて抽出を行ってもよい。水の添加によりアルデヒドや触媒成分が各層へ分配し易くなる。
【0073】
ヒドロホルミル化反応に使用される反応溶媒と抽出溶媒は効果的な層分離を実現するため密度に差があるほうが好ましい。トリシクロデカンジカルバルデヒドを含むヒドロホルミル化反応溶媒と抽出溶媒の組合わせでひとつの好適な例は、反応溶媒としてのメチルシクロヘキサンと抽出溶媒としてのエチレングリコール、反応溶媒としてのメチルシクロヘキサンと抽出溶媒としてのメタノール、及び水との組合わせである。
【0074】
ヒドロホルミル化反応溶媒と抽出溶媒との間のトリシクロデカンジカルバルデヒドの分配は平衡である。それに対して、触媒成分であるロジウムと有機リン化合物は実質的にヒドロホルミル化反応溶媒にのみ存在し抽出溶媒中には分析限界以下しか存在しない。
用いる抽出溶媒と反応生成液との体積比率は、トリシクロデカンジカルバルデヒドの抽出溶媒に対する溶解度、抽出すべきトリシクロデカンジカルバルデヒドの量によって決まる。例えば、分離すべきトリシクロデカンジカルバルデヒドが抽出溶媒に対し高い溶解度を示し、反応生成液に低濃度で存在する場合には、低い体積比率(抽出溶媒/反応生成液)の抽出溶媒の使用でトリシクロデカンジカルバルデヒドの実用的抽出が可能である。
生成物の濃度が高いほど、反応生成液からトリシクロデカンジカルバルデヒドを抽出するための体積比率(抽出溶媒/反応生成液)は高くなる。
トリシクロデカンジカルバルデヒドが抽出溶液に比較的低い溶解度を示す場合は、体積比率(抽出溶媒/反応生成液)は10:1~1:10の範囲で変動し得る。また、少ない抽出溶媒使用量でトリシクロデカンジカルバルデヒドの抽出量を多くするため、抽出溶媒を分け、数回の抽出操作を行うことが有効である。また、最終段階の抽出操作では、メチルシクロヘキサン等のヒドロホルミル化反応溶媒を反応生成液に対して5~20質量%程度添加してもよく、ヒドロホルミル化反応溶媒の添加で触媒の除去率を向上させることができる。
【0075】
抽出操作を行う温度は特に制限はないが、ヒドロホルミル化反応温度以下で実施するのが実用的である。ヒドロホルミル化反応器に反応後、抽出溶媒を添加し抽出操作を実施してもよいし、ヒドロホルミル化反応器からヒドロホルミル化反応生成液を抜出し、抽出槽で操作を実施してもよい。ヒドロホルミル化反応器に直接抽出溶媒を添加し抽出操作を実施し、触媒成分をヒドロホルミル化反応器にそのまま保持して次のヒドロホルミル化反応を実施することもできる。ヒドロホルミル化反応生成液を抜出し、抽出槽で操作を実施する場合は、触媒を含有する炭化水素化合物の反応溶媒層はヒドロホルミル化反応器に戻され、再度反応に使用される。本プロセスは、バッチプロセスでも連続プロセスでも実施可能である。
【0076】
上記のような抽出操作では、トリシクロデカンジカルバルデヒド10~90質量%、抽出溶媒10~90質量%のトリシクロデカンジカルバルデヒド含有溶液を得ることができる。反応溶媒を添加した場合はトリシクロデカンジカルバルデヒド5~90質量%、抽出溶媒5~90質量%、反応溶媒5~90質量%のトリシクロデカンジカルバルデヒド含有溶液を得ることができる。
抽出溶媒のアルコールは、ヒドロホルミル化生成物であるトリシクロデカンジカルバルデヒドの一部と反応してトリシクロデカンジカルバルデヒドをアセタール化したアセタール化合物を生成する。
トリシクロデカンジカルバルデヒド中のアセタール化合物の含有率は、通常0.1~50質量%程度であり、更に1~25質量%程度である。
【0077】
<水素化還元反応>
上記の抽出操作により得られたトリシクロデカンジカルバルデヒドを含む抽出液(トリシクロデカンジカルバルデヒド含有溶液)は、次いで、水素化触媒、好ましくは、ルテニウム(Ru)触媒の存在下に水素化還元を行い、下記反応式(V)の通り、TCDDMを製造する。
【0078】
この水素化還元反応は、水及びRu触媒の存在下で行うことにより、トリシクロデカンジカルバルデヒドの水素化反応中にアセタール化合物を速やかにトリシクロデカンジカルバルデヒドに変換し、アセタール化合物から変換したトリシクロデカンジカルバルデヒドを水素化することでTCDDMを高収率で製造することができ、好ましい。
【0079】
【化5】
【0080】
水素化還元反応において存在する水は、水素化還元反応液中のアセタール化合物量以上であって、反応液が相分離しない量であることが好ましく、反応液全体に対して含水率が2質量%以上、好ましくは2~30質量%、更に好ましくは5~25質量%、特に10~20質量%とすることが好ましい。含水率が前記範囲である場合、水と反応溶媒とが層分離することなく、また、水素化反応系に水を存在させることによる前述の効果を有効に得ることができる。この水の添加は、ヒドロホルミル化反応生成液からの触媒成分とトリシクロデカンジカルバルデヒドの分離を行う抽出工程で行ってもよいし、水素化還元反応直前に反応系に水を添加してもよい。
【0081】
反応形態としては、攪拌式反応器に触媒をスラリーとして仕込み、回分式で反応を実施し、反応後触媒を沈降ろ過し生成液と分離する方法や、成形された触媒を管型反応器に仕込み、生成液と水素ガスを触媒上に流す灌液型反応が適時採用される。使用される触媒量は工業的に有利な生産性でTCDDMを製造できれば特に制限はない。
【0082】
水素化還元反応の反応温度及び圧力は、通常40~200℃、好ましくは70~150℃の温度、及び通常15MPa以下の反応圧力である。温度が40℃より低い場合は水素化還元反応速度が遅く、200℃より高い場合は目的物であるTCDDMからの副反応が進行しTCDDMの収率が低下する。圧力が15MPaより高い場合は高圧の反応装置を使用するため装置費用が高くなる。
【0083】
<残留金属除去>
上記の水素化還元反応操作により得られる粗反応液中には、水素化触媒に由来する金属元素が溶出成分として含まれている。蒸留精製に先立ち、粗反応液中の金属元素を除去することで、蒸留精製工程における金属元素に起因するTCDDMの熱分解を抑制することができる。
【0084】
粗反応液中の金属元素を除去してその含有量を低減する方法としては、特に制限はなく、活性炭処理、陽イオン交換樹脂、シリカゲル吸着等が挙げられる。除去効率及び吸着剤の再使用が可能であることから活性炭処理が好ましい。
【0085】
活性炭処理の方法は、粗反応液に活性炭を添加して攪拌した後、活性炭をろ過等により固液分離するバッチ処理であってもよく、粗反応液を活性炭充填塔に通液する連続処理であってもよい。
【0086】
バッチ処理の場合、粗反応液に添加する活性炭の量は、活性炭の金属元素吸着能や、粗反応液中の金属元素含有割合等によって適宜決定される。一般的な条件としては、粗反応液に対して活性炭を0.01~10質量%程度の濃度となるように添加して攪拌することが好ましい。
【0087】
連続処理の場合、処理流量は、特に制限されるものではないが、空間速度(LHSV)で1~10で処理すればよい。
【0088】
このような活性炭処理は複数回行ってもよい。即ち、粗反応液に対して活性炭処理して得られる活性炭処理液に再度活性炭処理を行ってもよい。この場合において、1回目の活性炭処理と2回目の活性炭処理で用いる活性炭の種類や使用量、処理条件等を変えてもよい。
【0089】
次工程の蒸留精製に供する粗反応液の金属元素含有量は、低いほど、TCDDMの熱分解抑制の観点から好ましい。蒸留精製に供する粗反応液の金属元素含有量は、10質量ppm以下、特に5質量ppm以下、とりわけ1質量ppm以下とすることが好ましい。
【0090】
蒸留精製に供する粗反応液のpHは、6~8の範囲内であることが好ましい。pHの下限は、6以上であればTCDDMの脱水に起因すると思われる低沸点化合物の副生や、エーテル化などの二量化に起因すると思われる高沸点化合物の副生が抑えられることから好ましい。pHの上限は、8以下であれば、蒸留精製設備がアルカリ腐食を受けにくいことから好ましい。
【0091】
通常、水素化還元反応で得られる反応生成液のpHは6~8であり、これを水素化触媒の除去処理、金属元素の除去処理に供してもpHは殆ど変わらないが、水素化触媒から溶出した酸、アルカリ成分によりpHが6~8の範囲から外れる場合がある。この場合には、適宜、酸又はアルカリ等のpH調整剤を添加してpH6~8にpH調整することが好ましい。
【0092】
<蒸留>
金属元素の含有量を低減させた粗反応液は、次いで蒸留精製に供する。
【0093】
この蒸留精製は、好ましくは、理論段数10~30段、蒸留塔の塔底温度150~250℃の範囲内にある蒸留塔を用いて実施される。
【0094】
蒸留精製に用いる蒸留塔の理論段数が10段以上であれば不純物と製品を容易に分けることができ、30段以下であれば塔頂と塔底の間の圧力差が小さく塔底の温度が低くなるため装置の熱負荷が小さくなる。より好ましい理論段数は15~30段である。
塔底温度が150℃以上であればTCDDMを揮発させることが可能であり、250℃以下であればTCDDMの二量化による高沸不純物の副生を抑えることができる。より好ましい塔底温度は160~230℃である。
【0095】
蒸留精製における蒸留塔のその他の条件については特に制限はないが、通常、圧力0.1~100kPa、還流比1~30程度で実施される。特に、還流比と留出量を制御することで、得られるTCDDM組成物中のキラル化合物A、キラル化合物B、キラル化合物Cの存在比率を調整することが可能となる。この条件は蒸留塔の設備性能、釜効率、回収量などに応じて任意に変化させてよく、本発明で規定する組成のTCDDM組成物が得られる限り、特に制限はない。
【0096】
このような蒸留精製により得られた蒸留塔の塔底液は、更に0.1~10kPa、140~250℃で単蒸留に供してもよい。このような蒸留精製で通常TCDDM純度98%以上のTCDDM組成物を高収率で得ることができる。
【0097】
<紫外線硬化性組成物>
本発明の紫外線硬化性組成物は、本発明のTCDDM組成物に由来する、紫外線硬化性組成物である。
より具体的には、本発明の紫外線硬化性組成物は、本発明のTCDDM組成物を原料として合成される紫外線硬化性組成物である。さらに具体的には、本発明の紫外線硬化性組成物は、本発明のTCDDM組成物に含まれるトリシクロデカンジメタノール類を原料として合成される紫外線硬化性組成物である。
【0098】
紫外線硬化性組成物の製造方法には特に制限はなく、常法に従って行うことができる。一般的にはTCDDM組成物中のトリシクロデカンジメタノール類を原料として、ジ(メタ)アクリル酸エステル誘導体又はウレタンアクリレートなどの誘導体として用いることが望ましい。
【0099】
TCDDM組成物中に含まれるトリシクロデカンジメタノール類の2つのヒドロキシル基の両方を反応に用いてもよいし、いずれか1つのヒドロキシル基を反応させ、他のヒドロキシル基を残してもよい。その際、残ったヒドロキシル基を有機合成的手法により、用途に適した官能基に適宜変換してもよい。
【0100】
TCDDM組成物を原料として、TCDDMからジ(メタ)アクリル酸エステル誘導体を製造する手法としては、具体的には、TCDDMに(メタ)アクリル酸を反応させる方法、TCDDMと(メタ)アクリル酸エステルとをエステル交換反応させる方法、TCDDMに(メタ)アクリル酸クロリド等の(メタ)アクリル酸のハロゲン化物を反応させる方法、などが挙げられる。
【0101】
上記各製造方法における反応条件等としては、次のようである。
【0102】
(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルを用いてジ(メタ)アクリル酸エステル誘導体を製造する場合は、触媒を使用し、生成する水又は低級アルコールを連続的に系外へ取り出すことにより反応を促進することができる。
前記触媒としては、例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素、有機スズ化合物等のエステル化触媒として公知のものが挙げられ、これらから任意に選択して使用することができる。触媒の使用量は、製造装置への負荷低減、触媒費低減等の点から、反応基質の合計質量に対して、10~100000ppmが好ましい。
【0103】
(メタ)アクリル酸のハロゲン化物を用いてジ(メタ)アクリル酸エステル誘導体を製造する場合は、塩基性化合物の存在下で反応を行うことが好ましく、触媒を使用して反応を促進することもできる。
前記塩基性化合物としては、トリエチルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン等の3級アミン類、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物等の、塩基性化合物として公知のものが挙げられ、これらから任意に選択して使用することができる。塩基性化合物の使用量は、製造装置への負荷低減、原料費低減等の点から、アクリル酸、又はメタクリル酸のハロゲン化物1当量に対して、当該塩基性化合物を1.0~6.0当量にすることが好ましい。
前記触媒としては、例えば、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等のピリジン類、N-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリエチレンジアミン等の3級アミン類等の、酸塩化物のエステル化反応に公知である触媒が挙げられ、これらから任意に選択して使用することができる。触媒の使用量は、製造装置への負荷低減、触媒費低減等の点から、反応基質の合計質量に対して、10~100000ppmが好ましい。
【0104】
上記各製造方法において、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸のハロゲン化物の熱重合を防止するために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
【0105】
前記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、3-ヒドロキシチオフェノール、α-ニトロソ-β-ナフトール、パラベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシパラベンゾキノン、銅塩、フェノチアジン、パラフェニレンジアミン、フェニル-β-ナフチルアミン等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、触媒活性及び副反応への影響低減等の点から、反応基質の合計質量に対して、10~100000ppmが好ましい。
【0106】
上記各製造方法における反応温度は、反応時間の短縮と重合防止の点から、-20~120℃で行うのが好ましく、より好ましくは0~100℃である。反応時間は1~20時間が好ましい。
【0107】
上記各製造方法における反応には溶媒を用いることもできる。
前記溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノンなどの非環状又は環状のアミド、ジメチルスルホキシドなどの非環状又は環状のスルホキシド又はスルホン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0108】
TCDDM組成物を原料としたウレタンアクリレートは、ウレタン結合を含有するアクリル酸又はメタクリル酸エステル誘導体であれば、特にその構造は制限されない。
【0109】
TCDDM組成物を原料として、TCDDMからウレタンアクリレートを製造する手法としては、具体的には、TCDDM組成物、ポリイソシアネート化合物、及びモノヒドロキシアクリレート化合物を、触媒の存在下で反応させる方法が望ましい。また、硬化物の性能を調整する目的で、TCDDM組成物以外のポリオール化合物を更に加えてもよい。
【0110】
ウレタンアクリレート原料としての反応基質の全質量に対するTCDDM組成物の含有割合は、硬化物の硬度や耐熱性の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。一方、前記含有割合の上限は特に限定されるものではなく、高いほど好ましい。
【0111】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、パラフェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンメタンジイソシアネート及びこれらの水素化物、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらのヌレート体、アダクト体、ビウレット体を用いても、二量体、三量体を用いてもよい。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
前記モノヒドロキシアクリレート化合物は、ヒドロキシ基とアクリロイルオキシ基とを結合する構造部位が、3つの炭素原子或いはそれ以上の原子から構成されるものであることが好ましい。このような化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピルアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等、炭素原子数3以上の脂肪族ポリオールのアクリレート化物、前記アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体、前記アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体、イソシアヌル酸ジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレートの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体、イソシアヌル酸ジアクリレートの分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。また、前記化合物群のアクリレートをメタクリレートに置き換えたメタクリレート化合物を用いてもよい。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0113】
前記TCDDM組成物以外のポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖ジオール類、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、等を挙げることができる。これらのポリオール化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0114】
前記触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫等の有機錫化合物、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫等の金属塩、トリエチルアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-エチルモルホリン等のアミン系触媒等を挙げることができる。
【0115】
モノヒドロキシアクリレート化合物等の熱重合を防止するために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
前記重合禁止剤としては、反応を阻害するものでなければ特に制限はなく、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、3-ヒドロキシチオフェノール、α-ニトロソ-β-ナフトール、パラベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシパラベンゾキノン、銅塩、フェノチアジン、パラフェニレンジアミン、フェニル-β-ナフチルアミン等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、触媒活性及び副反応への影響低減等の点から、反応基質の合計質量に対して、10~100000ppmが好ましい。
【0116】
上記製造方法における反応温度は、反応時間の短縮と重合防止の点から、30~120℃で行うのが好ましく、より好ましくは40~100℃である。反応時間は1~10時間が好ましい。
【0117】
上記各製造方法における反応には溶媒を用いることもできる。
前記溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノンなどの非環状又は環状のアミド、ジメチルスルホキシドなどの非環状又は環状のスルホキシド又はスルホン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0118】
本発明の紫外線硬化性組成物は、本発明のTCDDM組成物を原料として合成されるため、紫外線硬化性組成物に本来要求される性能を損なうことなく、高粘度に制御することができ、塗工安定性に優れている。このため、本発明の紫外線硬化性組成物は、ハードコート材料、防汚コート材料、レジスト材料、インクジェットインク、3Dプリンター用材料などに好適に使用することができる。
【0119】
レジスト等の用途では、スクリーン印刷又はフレキ印刷法等を用いて基材上に前記紫外線硬化性組成物を塗布し硬化する方法が用いられており、薄く均一に塗布できること、厚盛に塗布できること、基材上に微細なパターンを高精度に印刷できること等の観点から、紫外線硬化性組成物は高粘度であることが要求されている。
ハードコートや防汚コート等、インクジェット印刷などの用途では、コーター方式、スプレー方式、ディスペンサー方式で基材上に前記紫外線硬化性組成物を塗布し硬化する方法が用いられ、紫外線硬化性組成物を精度よく定量吐出する観点から、紫外線硬化性組成物には高粘度であることが要求されている。
【0120】
上述したように、本発明の紫外線硬化性組成物は、ヒドロキシメチル基の結合位置が異なる3種類の鏡像異性体を主成分とし、且つ、異性体比率を適切に制御することで、結晶性を調節し、糸曳きが起こりづらく、取り扱い性に優れたTCDDM組成物に由来する。このため、本発明の紫外線硬化性組成物は、高粘度となり塗工安定性や塗布安定性に優れる。さらに、高粘度化するために粘度向上剤を配合する必要がないため、紫外線硬化性組成物に本来要求される性能が損なわれるという問題がない。これらのことから、本発明の紫外線硬化性組成物は、ハードコート材料、防汚コート材料、レジスト材料、インクジェットインク、及び3Dプリンター用材料の用途に好適に用いることができる。
【0121】
<重合体組成物>
本発明の重合体組成物は、本発明のTCDDM組成物に由来する重合体組成物、又は、本発明の紫外線硬化性組成物に由来する重合体組成物である。
より具体的には、本発明の重合体組成物は、本発明のTCDDM組成物又は該TCDDM組成物を含む組成物を重合してなる重合体組成物であって、TCDDM組成物中のトリシクロデカンジメタノール類に由来する構造単位を含む重合体を含む組成物である。或いは又、本発明の重合体組成物は、本発明の紫外線硬化性組成物を重合してなる重合体を含む組成物である。
【0122】
本発明の重合体組成物の一実施形態は、重合体組成物そのものであってもよいし、さらに固形分濃度を調整するために水又は有機溶媒等の溶媒を適量添加ないし除去してなるものであってもよいし、該溶媒を除去し乾燥して固形物としたものであってもよい。さらに重合により得られた重合体を含む組成物から、適当に不純物を除去し精製してなる重合体組成物であってもよいし、さらに必要に応じて、重合により得られた前記重合体の性能に影響を与えない範囲で、適当な添加剤、例えば、保存安定剤(紫外線吸収剤や抗酸化剤など)、着色剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤、難燃化剤、発泡剤などを加えてなるものであってもよい。
即ち、本発明の重合体組成物は、本発明のTCDDM組成物又は本発明の紫外線硬化性組成物を重合してなる重合体を含むものであればよく、その形態や成分組成などに関しては特に制限されるものではない。
【0123】
重合体組成物の別の実施形態として、具体的には、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0124】
本発明において前記ポリエステル系樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエチレン系重合体を主成分とする樹脂である。該ポリエチレン系重合体は、特に限定されるものではなく、例えば、グリコールを主とするポリオール由来の構造単位とテレフタル酸系化合物由来の構造単位を含み、且つ、本発明のTCDDM組成物中のトリシクロデカンジメタノール類由来の構造単位を含む重合体であるものをいう。
【0125】
本発明において前記エポキシ系樹脂とは、エポキシ系重合体を主成分とする樹脂である。該エポキシ系重合体は、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノール系化合物由来の構造単位とエピクロロヒドリン由来の構造単位を含み、且つ、本発明のTCDDM組成物中のトリシクロデカンジメタノール類由来の構造単位を含む重合体が挙げられる。
【0126】
本発明において前記アクリレート系樹脂とは、アクリレート系重合体を主成分とする樹脂である。該アクリレート系重合体は、特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位又は(メタ)アクリル酸誘導体に由来する構造単位を含み、且つ、本発明のTCDDM組成物中のトリシクロデカンジメタノール類由来の構造単位を含む重合体が挙げられる。
【0127】
本発明において前記ポリカーボネート系樹脂とは、ポリカーボネート系重合体を主成分とする樹脂である。該ポリカーボネート系重合体は、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノール化合物由来の構造単位、ホスゲン(塩化カルボニル)由来の構造単位、又はジフェニルカーボネート由来の構造単位を含み、且つ、本発明のTCDDM組成物中のトリシクロデカンジメタノール類由来の構造単位を含む重合体が挙げられる。
【0128】
本発明において前記ポリウレタン系樹脂とは、ポリウレタン系重合体を主成分とする樹脂である。該ポリウレタン系重合体は、特に限定されるものではなく、例えば、グリコールを主とするポリオール由来の構造単位と、2官能イソシアネート由来の構造単位を含み、且つ、本発明のTCDDM組成物中のトリシクロデカンジメタノール類由来の構造単位を含む重合体が挙げられる。
【実施例
【0129】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0130】
実施例及び比較例で使用した化合物は以下のとおりである。
・ジシクロペンタジエン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(エヌ・イーケムキャット株式会社製)
・トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(東京化成工業株式会社製)
・メチルシクロヘキサン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・ルテニウム担持炭素(ドライベースRu含有率5%、含水率56%)(商品名:Ru/C、エヌ・イーケムキャット株式会社製)
・粉末活性炭(商品名:特性白鷺、大阪ガスケミカル株式会社製)
【0131】
実施例及び比較例における評価は以下の方法により実施した。
【0132】
<Xa、Xb、Xc及びXtの測定>
実施例及び比較例で得られたTCDDM組成物について、キラル化合物Aのピーク面積Xa、キラル化合物Bのピーク面積Xb、キラル化合物Cのピーク面積Xc、及びTCDDMのピーク面積合計Xtを、ガスクロマトグラフィーを用いて下記の手順により算出した。
【0133】
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
測定装置:GC-2025(島津製作所製)
キャリアガス:ヘリウム、線速30cm/sec
カラム:DB-1(Agilent Technologies社製、長さ30m×内径0.25mm×膜厚1.00μm)
温度(昇温条件):160℃→5℃/分で昇温→300℃(保持時間2分)
注入口温度:200℃
イオン源温度:300℃
サンプル量:0.3μL
スプリット比:1:30
検出器:FID
【0134】
後掲の実施例3で得られたTCDDM組成物のガスクロマトグラムを図1に示す。
(1)というラベルが付けられた、溶出時間14.88分と15.03分の間におけるピーク(「ピーク1」)は、TCDDM組成物中の前記キラル化合物Aのピークである。
(2)というラベルが付けられた、溶出時間15.03分と15.18分の間におけるピーク(「ピーク2」)は、TCDDM組成物中の前記キラル化合物Bのピークである。
(3)というラベルが付けられた、溶出時間15.38分と15.56分の間におけるピーク(「ピーク3」)は、TCDDM組成物中の前記キラル化合物Cのピークである。
ラベル付けされていない小さいピークはそれ以外のTCDDM異性体のピークである。
【0135】
ピーク面積Xa、Xb、Xc及びXtは、以下の手順に従って求めた。
【0136】
得られたガスクロマトグラムについて、ベースラインとガスクロマトグラム曲線との間の、溶出時間14.88~15.90分の範囲における面積をXtとした。
【0137】
得られたガスクロマトグラムについて、ベースラインとガスクロマトグラム曲線との間の、溶出時間14.88~15.03分の範囲における面積をXaとした。
【0138】
得られたガスクロマトグラムについて、ベースラインとガスクロマトグラム曲線との間の、溶出時間15.03~15.18分の範囲における面積をXbとした。
【0139】
得られたガスクロマトグラムについて、ベースラインとガスクロマトグラム曲線との間の、溶出時間15.38~15.56分の範囲における面積をXcとした。
【0140】
<TCDDM組成物の質量分析>
実施例及び比較例で得られたTCDDM組成物について、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて、下記の手順により、m/z及びフラグメントパターンを測定した。
【0141】
(ガスクロマトグラフィー質量分析条件)
測定装置:GCMS-QP2010Ultra(島津製作所製)
キャリアガス:ヘリウム、線速40cm/sec
カラム:BPX-5(Trajan Scientific and Medical製、長さ60m×内径0.32mm×膜厚0.25μm)
温度(昇温条件):160℃→5℃/分で昇温→300℃(保持時間2分)
気化室温度:200℃
イオン源温度:250℃
MSインターフェース温度:300℃
注入量:0.5μL
スプリット比:1:30
【0142】
<取り扱い性の評価>
実施例及び比較例で得られたTCDDM組成物の取り扱い性の指標として、室温(20℃)における試験液にガラス棒の先端10mmを浸漬し、10cm引き上げた際の曳糸性を下記の判定基準で評価した。
(判定基準)
A:曳糸性を示さなかった。
B:曳糸性を示すが、直ぐに糸切れした。
C:曳糸性を示し、糸切れせずに残った。
【0143】
[参考例1]
<ヒドロホルミル化反応>
内容量20Lのオートクレーブ反応器に、窒素雰囲気下で、ヒドロホルミル化反応触媒の原料化合物として、Rh(acac)(CO)2 2.51g、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト188.6gを量り取り、有機溶媒としてメチルシクロヘキサン3.9kgを仕込んだ後、120rpmで攪拌しつつ、反応器内の反応液の温度を70℃まで昇温した。次いで、ガス導入バルブより速やかに水素と一酸化炭素の混合ガス(水素:一酸化炭素=1:1(モル比))を反応器内の圧力が5MPaGとなるように圧入し、この圧力を維持したまま、反応液の温度を100℃まで昇温した後、さらに原料化合物としてジシクロペンタジエン4.9kgを5時間かけてフィードし、さらに3時間反応させた。反応中は反応で消費された量の混合ガスを、反応器内の圧力を5MPaGに維持しながら、反応器内に導入し続けた。
反応終了後、反応器内の反応液を室温まで冷却し、反応器内の残存ガスを放圧し12.5kgのヒドロホルミル化反応生成液を得た。反応前の反応液に含まれる原料化合物のジシクロペンタジエンの量と、反応後の反応生成液中の生成物であるトリシクロデカンジカルバルデヒドの生成量をガスクロマトグラフィーにて分析し、トリシクロデカンジカルバルデヒドの収率を求めた。該収率は99%であった。
【0144】
<抽出操作>
得られたヒドロホルミル化反応生成液12.5kgに対し、メタノール3.77kg、水2.0kgを加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した。その後、30分間静置し2相に分離させ抽出操作を行った。得られた下相(a1)にメチルシクロヘキサンを0.4kg加え30分間攪拌した。その後、30分間静置し2相に分離させて抽出操作を行い、13.8kgの下相(a2)を得た。
得られた下相(a2)の組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、トリシクロデカンジカルバルデヒド47質量%、メタノール27質量%、水14質量%、メチルシクロヘキサン7質量%、その他成分5質量%であった。
【0145】
<水素化還元反応>
内容量20Lのオートクレーブ反応器に、上述した抽出操作により得られた下相(a2)13.8kg、ルテニウム担持炭素0.14kgを仕込んだ後、120rpmで攪拌しつつ、反応器内の反応液の温度を160℃まで昇温した。次いで、ガス導入バルブより水素ガスを反応器内の圧力が5MPaGとなるとなるように圧入し、この圧力と反応液の温度を維持したまま、8時間反応させた。反応中は反応で消費された量の混合ガスを、反応器内の圧力を5MPaGに維持を維持するように、反応器内に導入し続けた。
反応終了後、反応器内の反応液を室温まで冷却し、反応器内の残存ガスを放圧し、ルテニウム担持炭素を5μmのフィルターを用いたろ過により分離し、反応生成液14.5kgを得た。反応前の反応液に含まれる原料化合物のトリシクロデカンジカルバルデヒドの量と、反応後の反応生成液中の生成物であるTCDDMの生成量をガスクロマトグラフィーにて分析した。TCDDMの収率は94%であった。
蛍光X線分析により分析した反応生成液のRu濃度は36質量ppmであり、pHは7であった。
【0146】
[実施例1]
参考例1で得られた水素化還元反応生成液1.90kgを規則充てん物20段相当のバッチ式蒸留塔に仕込み、溶媒を主成分とする軽沸成分を1.03kg留去した後、0.4kPa、185℃でTCDDM組成物を留出させ、初留、本留の順に回収した。本留として回収したTCDDM組成物の回収量は0.36kgであった。得られたTCDDM組成物について、キラル化合物A、キラル化合物B及びキラル化合物Cの成分割合、並びに、取り扱い性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0147】
[実施例2]
参考例1で得られた水素化還元反応生成液を0.3kPa、210℃で単蒸留することによりTCDDM組成物を得た。得られたTCDDM組成物について、キラル化合物A、キラル化合物B及びキラル化合物Cの成分割合、並びに、取り扱い性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0148】
[実施例3]
参考例1で得られた水素化還元反応生成液1.00kgに、粉末活性炭を含有濃度が1質量%となるように添加し、室温で3時間攪拌した。次いで、攪拌後の反応生成液をろ過して、前記粉末活性炭を除去し、活性炭処理液0.95kgを得た。蛍光X線分析により分析した活性炭処理液のRu濃度は3.5質量ppmであった。
この活性炭処理液0.12kgを規則充てん物20段相当のバッチ式蒸留塔に仕込み、溶媒を留去した後、0.6kPa、185℃、還流比30で17g留出するまで蒸留を行った。更に、得られた塔底液0.01kgを0.3kPa、210℃で単蒸留することによりTCDDM組成物0.01kgを得た。得られたTCDDM組成物について、キラル化合物A、キラル化合物B及びキラル化合物Cの成分割合、並びに、取り扱い性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0149】
[比較例1]
市販品のTCDDM組成物(1)(製品名:TCD Alcohol DM、OQ Chemicals社製)について、キラル化合物A、キラル化合物B及びキラル化合物Cの含有割合、並びに、取り扱い性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0150】
[比較例2]
市販品のTCDDM組成物(2)(東京化成工業株式会社製)について、キラル化合物A、キラル化合物B及びキラル化合物Cの含有割合、並びに、取り扱い性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0151】
[比較例3]
市販品のTCDDM組成物(3)(Merck社製)について、キラル化合物A、キラル化合物B及びキラル化合物Cの含有割合、並びに、取り扱い性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0152】
実施例1~3及び比較例1~3で得られたTCDDM組成物について、上述した方法によりガスクロマトグラフィー質量分析を行い、m/z及びフラグメントパターンを測定したところ、いずれもピーク1~3はTCDDMに相当するm/z及びフラグメントパターンを示すことを確認した。
以下に観測された代表的なフラグメントを記す。
MS(EI):178([M-18]+)、165、147、119、105、91、81、67
【0153】
【表1】
【0154】
実施例1~3で得られたTCDDM組成物は、キラル化合物Cの成分割合が高く、組成物としても結晶性に優れるため、糸曳きが生じづらく、取り扱い性に優れていた。
比較例1~3のTCDDM組成物は、キラル化合物Cの含有割合が低いため、糸曳きが生じやすく、取り扱い性に劣るものであった。
【0155】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2022年3月17日付で出願された日本特許出願2022-042785に基づいており、その全体が引用により援用される。
図1