(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】超純水製造装置及び超純水製造装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240702BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20240702BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240702BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20240702BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20240702BHJP
【FI】
C02F1/32
B01D61/00
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/58 H
C02F9/00
(21)【出願番号】P 2023536138
(86)(22)【出願日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2023021987
(87)【国際公開番号】W WO2024014218
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2022113246
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩一
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/105188(WO,A1)
【文献】国際公開第97/030939(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/070573(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/179426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
1/30- 1/38
1/70- 1/78
9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水装置と、この一次純水装置で処理された一次純水をさらに処理する二次純水装置とからなる超純水製造装置であって、
前記二次純水装置は、前記一次純水に紫外線を照射して第一の処理水を生成させる第一の紫外線酸化装置と、
前記第一の処理水を処理して第二の処理水を生成させる白金族金属触媒樹脂装置と、
前記第一の紫外線酸化装置の入口側に設けられた一次純水のTOC濃度を計測する第一のTOC計と、
前記第一のTOC計の測定値に基づいて前記第一の紫外線酸化装置の出力を制御可能な制御手段と
を有
し、
前記一次純水装置が、第二の紫外線酸化装置と、前記第二の紫外線酸化装置の被処理水のTOC濃度を計測する第三のTOC計とを備え、前記二次純水装置が、前記白金族金属触媒樹脂装置の後段に前記第二の処理水を処理して脱気水を生成する膜式脱気装置と、前記膜式脱気装置の後段に設けられた溶存酸素計と、この脱気水を処理して第三の処理水を生成する非再生式混合イオン交換装置と、前記非再生式混合イオン交換装置の後段に設けられた前記第三の処理水のTOC濃度を計測する第二のTOC計とを備え、前記制御手段は、前記第三のTOC計の測定値に基づいて前記第二の紫外線酸化装置の出力を制御可能であり、さらに前記溶存酸素計と第二のTOC計の測定値に基づいて、前記第二の紫外線酸化装置の出力を補正可能である、超純水製造装置。
【請求項2】
一次純水装置と、この一次純水装置で処理された一次純水をさらに処理する二次純水装置とからなる超純水製造装置であって、
前記二次純水装置が、前記一次純水に紫外線を照射して第一の処理水を生成させる第一の紫外線酸化装置と、前記第一の処理水を処理して第二の処理水を生成させる白金族金属触媒樹脂装置と、前記白金族金属触媒樹脂装置の後段に設けられた前記第二の処理水を処理して脱気水を生成する膜式脱気装置と、前記膜式脱気装置の後段に設けられた溶存酸素計と、前記脱気水を処理して第三の処理水を生成する非再生式混合イオン交換装置と、前記非再生式混合イオン交換装置の後段に設けられた前記第三の処理水のTOC濃度を計測する第二のTOC計とを備え、
前記第二のTOC計の測定値に基づいて、前記第一の紫外線酸化装置の出力を制御可能である制御手段を有
し、
前記一次純水装置が、第二の紫外線酸化装置と、前記第二の紫外線酸化装置の処理水のTOC濃度を計測する第四のTOC計とを備え、前記二次純水装置が、前記膜式脱気装置の後段に溶存酸素計を有し、前記制御手段が、前記第四のTOC計の測定値に基づいて前記第二の紫外線酸化装置の出力を制御可能であるとともに、前記溶存酸素計と第二のTOC計の測定値に基づいて、前記第二の紫外線酸化装置の出力を補正可能である、超純水製造装置。
【請求項3】
前記第一の紫外線酸化装置及び第二の紫外線酸化装置が紫外線ランプの複数のブロックから構成されるとともに、各紫外線ランプの照度が制御可能である、請求項
1又は
2に記載の超純水製造装置。
【請求項4】
処理原水を一次純水装置で処理して一次純水を製造し、この一次純水をさらに二次純水装置で処理して二次純水を製造する超純水製造方法であって、
前記一次純水に紫外線を照射して第一の処理水を生成させる第一の紫外酸化工程と、
この第一の処理水中の過酸化水素を分解して第二の処理水を生成する白金族金属触媒樹脂処理工程と、
前記紫外酸化工程前の一次純水のTOC濃度を測定してこのTOC濃度に基づいて前記一次純水に照射する紫外線の照射量を制御する工程と
を備
え、
前記一次純水装置において、被処理水に紫外線を照射する第二の紫外酸化工程と、この第二の紫外酸化工程の被処理水のTOC濃度を測定して、前記第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を制御する工程とを有し、前記二次純水装置において、前記白金族金属触媒樹脂処理工程の後、前記第二の処理水中の溶存ガスを除去して脱気水を生成する脱ガス工程と、この脱気水からイオン性不純物を除去して第三の処理水を生成する脱イオン工程とにより、第三の処理水を生成させるに際し、前記脱気水の溶存酸素濃度を測定するとともに、第三の処理水のTOC濃度を測定し、前記溶存酸素濃度と第三の処理水の中のTOC濃度とに基づいて、前記第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を調整する、超純水製造装置の運転方法。
【請求項5】
処理原水を一次純水装置で処理して一次純水を製造し、この一次純水をさらに二次純水装置で処理して二次純水を製造する超純水製造方法であって、
前記二次純水装置において、前記一次純水に紫外線を照射して第一の処理水を生成させる第一の紫外酸化工程と、この第一の処理水中の過酸化水素を分解して第二の処理水を生成する白金族金属触媒樹脂処理工程と、前記白金族金属触媒樹脂処理工程の後、前記第二の処理水中の溶存ガスを除去して脱気水を生成する脱ガス工程と、この脱気水からイオン性不純物を除去して第三の処理水を生成する脱イオン工程とを有し、
前記第三の処理水のTOC濃度を測定する工程と、該第三の処理水のTOC濃度に基づいて
、前記第一の紫外酸化工程における紫外線の照射量を調整する工程とを備
え、
前記一次純水装置において、被処理に紫外線を照射する第二の紫外酸化工程と、この第二の紫外酸化工程の処理水のTOC濃度を測定して、前記第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を制御する工程とを有し、前記二次純水装置において、前記脱気水の溶存酸素濃度を測定するとともに、前記第三の処理水のTOC濃度を測定し、前記溶存酸素濃度及び第三の処理水のTOC濃度に基づいて前記第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を調整する、超純水製造装置の運転方法。
【請求項6】
前記第一の紫外酸化工程及び第二の紫外酸化工程が、紫外線酸化装置によるものであり、前記紫外線酸化装置が紫外線ランプの複数のブロックから構成されるとともに、各紫外線ランプの照度が制御可能であり、紫外線の照射量の制御を紫外線ランプの稼働ブロック数と各紫外線ランプの照度とにより行う、請求項
4又は
5に記載の超純水製造装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一次純水装置と二次純水装置とを備えた超純水製造装置及びこの超純水製造装置の運転方法に関し、特に二次純水装置に紫外線酸化装置と白金族金属触媒樹脂塔とを有する超純水製造装置及びこの超純水製造装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理装置、一次純水装置及び一次純水を処理する二次純水装置(サブシステム)で構成される超純水製造装置で原水を処理することにより製造されている。
【0003】
一般に超純水製造装置1は、
図1に示すように前処理装置2、一次純水装置3、及び二次純水装置(サブシステム)4といった3段の装置で構成されている。このような超純水製造装置1の前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0004】
一次純水装置3は、前処理水W0のタンク11と、逆浸透膜装置12と、複数本の紫外線ランプなどにより構成され出力制御可能な紫外線(UV)酸化装置13(以下、説明の便宜上第二の紫外線酸化装置13とする場合あり)と、再生型イオン交換装置(混床式又は4床5塔式など)14と、膜式脱気装置15とを有する、なお、16は予熱器である。ここで前処理水W0中の電解質、微粒子、生菌等の大半の除去を行うとともに有機物を分解する。
【0005】
サブシステム4は、前述した一次純水装置3で製造された一次純水W1を貯留するサブタンク21と、このサブタンク21に貯留された一次純水W1を送給するポンプ22と、この一次純水W1を処理する複数本の紫外線ランプなどにより出力制御可能な紫外線酸化装置24(以下、説明の便宜上第一の紫外線酸化装置24とする場合あり)と、白金族金属触媒樹脂塔25と、膜式脱気装置26と、逆浸透膜装置27と、非再生型混床式イオン交換装置28と、膜濾過装置としての限外濾過(UF)膜29とで構成されている、なお、23は熱交換器である。このサブシステム4では、紫外線酸化装置24で一次純水W1中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を紫外線により酸化分解し、この紫外線の照射により生じた過酸化水素を白金族金属触媒樹脂塔25で分解し、その後段の膜式脱気装置26で混入しているDO(溶存酸素)などの溶存ガスを除去する。続いて逆浸透膜装置27及び非再生型混床式イオン交換装置28で処理することで、残留した炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質を除去する。そして、限外濾過(UF)膜29で微粒子を除去して超純水(二次純水)W2とし、これを送給管30からユースポイント5に供給して、未使用の超純水は返送管31からサブタンク21に還流する。
【0006】
上述したような超純水製造装置1では、紫外線酸化装置24におけるTOC成分の酸化分解機構は、水を酸化分解してOHラジカルを生成させ、このOHラジカルによりTOC成分を酸化分解するものであり、通常、この紫外線酸化装置24における紫外線は、水中のTOCを十分に酸化分解できるような過剰量が照射される。このように紫外線酸化装置24の紫外線照射量が多いと、水の分解で生成したOHラジカルが過剰となるため、余剰のOHラジカルが会合することで過酸化水素となる。発生した過酸化水素は後段の白金族金属触媒樹脂塔25と接触することで分解されるが、白金族金属触媒樹脂塔25を長期的に安定して運転するためには、過酸化水素の負荷はできるだけ低いことが望ましい。
【0007】
そこで、従来は
図5に示すような構成のサブシステム4としていた。すなわち、サブシステム4において、第一の紫外線酸化装置24の後段に第一の紫外線酸化装置24の入口側のTOC濃度を計測するTOC計51と、白金族金属触媒樹脂塔25の処理水の過酸化水素濃度を計測する過酸化水素計52と、膜式脱気装置26の処理水の溶存酸素酸素(DO)濃度を計測する溶存酸素計53と、非再生型混床式イオン交換装置28の処理水のTOC濃度を計測するTOC計54とを設ける。ここで、第一の紫外線酸化装置24は、複数本、例えば1ブロック当たり2本の紫外線ランプで、3ブロック程度の複数ブロックで構成されている。
【0008】
このようなサブシステム4では、TOC計51、過酸化水素計52、溶存酸素計53及びTOC計54で、TOC濃度、過酸化水素及び溶存酸素濃度をそれぞれ監視する。そして、TOC計51による第一の紫外線酸化装置24に供給される一次純水W1のTOC濃度の計測結果に応じて、第一の紫外線酸化装置24の紫外線ランプの点灯本数(稼働ブロック数)を作業員が手動で調整するなどして、出力を制御することで第一の紫外線酸化装置24における紫外線の過剰照射をできるだけ抑制し、過酸化水素の生成量を削減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したようなサブシステム4を備える超純水製造装置1では、第一の紫外線酸化装置24を手動による紫外線ランプの点灯ブロック数のオン・オフで調整しているので、第一の紫外線酸化装置24に供給される一次純水W1の水質の変動に対して、迅速に対応することができない。また、紫外線ランプの点灯ブロック数で制御しているので、紫外線照射量の微妙な調整は困難である。このため、紫外線の過剰照射となる場合があり過酸化水素の発生を十分に抑制することができない、という問題点がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サブシステテムにおいて紫外線酸化装置での紫外線の過剰照射を抑制することができると共に、TOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる超純水製造装置及び超純水製造装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に鑑み、本発明は第一に、一次純水装置と、この一次純水装置で処理された一次純水をさらに処理する二次純水装置とからなる超純水製造装置であって、前記二次純水装置は、前記一次純水に紫外線を照射して第一の処理水を生成させる第一の紫外線酸化装置と、前記第一の処理水を処理して第二の処理水を生成させる白金族金属触媒樹脂装置と、前記第一の紫外線酸化装置の入口側に設けられた一次純水のTOC濃度を計測する第一のTOC計と、前記第一のTOC計の測定値に基づいて前記第一の紫外線酸化装置の出力を制御可能な制御手段とを有する超純水製造装置を提供する(発明1)。
【0012】
かかる発明(発明1)によれば、第一のTOC計の測定値に基づいて、制御手段により第一の紫外線酸化装置の出力を制御可能となっており、第一の紫外線酸化装置の出力の調整を迅速かつ頻繁に行うことができるので、第一の紫外線酸化装置における紫外線の過剰照射を少なくし、過酸化水素の生成を抑制することで溶存酸素の上昇を防止してTOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【0013】
上記発明(発明1)においては、前記一次純水装置が、第二の紫外線酸化装置と、前記第二の紫外線酸化装置の被処理水のTOC濃度を計測する第三のTOC計とを備え、前記二次純水装置が、前記白金族金属触媒樹脂装置の後段に前記第二の処理水を処理して脱気水を生成する膜式脱気装置と、前記膜式脱気装置の後段に設けられた溶存酸素計と、この脱気水を処理して第三の処理水を生成する非再生式混合イオン交換装置と、前記非再生式混合イオン交換装置の後段に設けられた前記第三の処理水のTOC濃度を計測する第二のTOC計とを備え、前記制御手段は、前記第三のTOC計の測定値に基づいて前記第二の紫外線酸化装置の出力を制御可能であり、さらに前記溶存酸素計と第二のTOC計の測定値に基づいて、前記第二の紫外線酸化装置の出力を補正可能であることが好ましい(発明2)。
【0014】
かかる発明(発明2)によれば、第一のTOC計の測定値に基づいて、制御手段により前記第一の紫外線酸化装置の出力を調整するとともに、第三のTOC計の測定値に基づいて第二の紫外線酸化装置の出力を調整することができる。さらに溶存酸素計と第二のTOC計の測定値に基づいて、第一の紫外線酸化装置で処理する一次純水のTOC濃度が最適化されるように、第二の紫外線酸化装置の出力を補正することができるので、第一の紫外線酸化装置における紫外線の過剰照射を最小限とすることで過酸化水素の生成を抑制して、特にTOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【0015】
また、本発明は、一次純水装置と、この一次純水装置で処理された一次純水をさらに処理する二次純水装置とからなる超純水製造装置であって、前記二次純水装置が、前記一次純水に紫外線を照射して第一の処理水を生成させる第一の紫外線酸化装置と、前記第一の処理水を処理して第二の処理水を生成させる白金族金属触媒樹脂装置と、前記白金族金属触媒樹脂装置の後段に設けられた前記第二の処理水を処理して脱気水を生成する膜式脱気装置と、前記膜式脱気装置の後段に設けられた溶存酸素計と、前記脱気水を処理して第三の処理水を生成する非再生式混合イオン交換装置と、前記非再生式混合イオン交換装置の後段に設けられた前記第三の処理水のTOC濃度を計測する第二のTOC計とを備え、前記第二のTOC計の測定値に基づいて、前記第一の紫外線酸化装置の出力を制御可能である制御手段を有する超純水製造装置を提供する(発明3)。
【0016】
かかる発明(発明3)によれば、制御手段により最終的な処理水である第三の処理水のTOCの測定値に基づいて、フィードバック制御により第一の紫外線酸化装置の出力を調整することにより、第一の紫外線酸化装置における紫外線の過剰照射を少なくし、過酸化水素の生成を抑制することで溶存酸素の上昇を防止してTOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【0017】
上記発明(発明3)においては、前記一次純水装置が、第二の紫外線酸化装置と、前記第二の紫外線酸化装置の処理水のTOC濃度を計測する第四のTOC計とを備え、前記二次純水装置が、前記膜式脱気装置の後段に溶存酸素計を有し、前記制御手段が、前記第四のTOC計の測定値に基づいて前記第二の紫外線酸化装置の出力を制御可能であるとともに、前記溶存酸素計と第二のTOC計の測定値に基づいて、前記第二の紫外線酸化装置の出力を補正可能であることが好ましい(発明4)。
【0018】
かかる発明(発明4)によれば、制御手段により第四のTOC計の測定値に基づいて、フィードバック制御により第二の紫外線酸化装置の出力を調整することができる。さらに溶存酸素計と最終的な処理水である第三の処理水のTOCの測定値に基づいて、第一の紫外線酸化装置で処理する一次純水のTOC濃度が最適化されるように、第二の紫外線酸化装置の出力を補正することができるので、第一の紫外線酸化装置における紫外線の過剰照射を最小限とすることで過酸化水素の生成を抑制して、特にTOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【0019】
上記発明(発明2又は4)においては、前記第一の紫外線酸化装置及び第二の紫外線酸化装置が紫外線ランプの複数のブロックから構成されるとともに、各紫外線ランプの照度が制御可能であることが好ましい(発明5)。
【0020】
上記発明(発明5)によれば、制御手段により、紫外線酸化装置の稼働するブロック数と紫外線ランプの照度を制御することにより、紫外線酸化装置の出力を細かく調整することができる。
【0021】
本発明は第二に、処理原水を一次純水装置で処理して一次純水を製造し、この一次純水をさらに二次純水装置で処理して二次純水を製造する超純水製造方法であって、前記一次純水に紫外線を照射して第一の処理水を生成させる第一の紫外酸化工程と、この第一の処理水中の過酸化水素を分解して第二の処理水を生成する白金族金属触媒樹脂処理工程と、前記紫外酸化工程前の一次純水のTOC濃度を測定してこのTOC濃度に基づいて前記一次純水に照射する紫外線の照射量を制御する工程とを備えた、超純水製造装置の運転方法を提供する(発明6)。
【0022】
かかる発明(発明6)によれば、紫外酸化工程前の一次純水のTOC濃度を測定し、このTOC濃度に基づいて前記一次純水に照射する紫外線の照射量を制御することにより、第一の紫外線酸化装置の出力の調整を迅速かつ頻繁に行うことができるので、紫外線酸化装置における紫外線の過剰照射を少なくし、過酸化水素の生成を抑制することで溶存酸素の上昇を防止してTOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【0023】
上記発明(発明6)においては、前記一次純水装置において、被処理水に紫外線を照射する第二の紫外酸化工程と、この第二の紫外酸化工程の被処理水のTOC濃度を測定して、前記第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を制御する工程とを有し、前記二次純水装置において、前記白金族金属触媒樹脂処理工程の後、前記第二の処理水中の溶存ガスを除去して脱気水を生成する脱ガス工程と、この脱気水からイオン性不純物を除去して第三の処理水を生成する脱イオン工程とにより、第三の処理水を生成させるに際し、前記脱気水の溶存酸素濃度を測定するとともに、第三の処理水のTOC濃度を測定し、前記溶存酸素濃度と第三の処理水の中のTOC濃度とに基づいて、前記第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を調整することが好ましい(発明7)。
【0024】
かかる発明(発明7)によれば、一次純水装置において、第二の紫外酸化工程の被処理水のTOC濃度に基づいて、この第二の紫外線酸化装置で処理する紫外線の照射量を制御する。さらに、二次純水装置において第三の処理水を生成させるに際し、脱気水の溶存酸素濃度を測定するとともに、第三の処理水のTOC濃度を測定し、この溶存酸素濃度と第三の処理水の中のTOC濃度とに基づいて、第一の紫外酸化工程で処理する一次純水のTOC濃度が最適化されるように第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を補正することにより、紫外線酸化装置における紫外線の過剰照射を最小限とすることで過酸化水素の生成を抑制して、TOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【0025】
さらに、本発明は、処理原水を一次純水装置で処理して一次純水を製造し、この一次純水をさらに二次純水装置で処理して二次純水を製造する超純水製造方法であって、前記二次純水装置において、前記一次純水に紫外線を照射して第一の処理水を生成させる第一の紫外酸化工程と、この第一の処理水中の過酸化水素を分解して第二の処理水を生成する白金族金属触媒樹脂処理工程と、前記白金族金属触媒樹脂処理工程の後、前記第二の処理水中の溶存ガスを除去して脱気水を生成する脱ガス工程と、この脱気水からイオン性不純物を除去して第三の処理水を生成する脱イオン工程とを有し、前記第三の処理水のTOC濃度を測定する工程と、該第三の処理水のTOC濃度に基づいて前記第一の紫外線酸化装置の出力を制御する工程とを備えた、超純水製造装置の運転方法を提供する(発明8)。
【0026】
かかる発明(発明8)によれば、最終的な処理水である第三の処理水のTOCの測定値に基づいて、フィードバック制御により第一の紫外酸化工程における紫外線の出力を調整することにより、第一の紫外酸化工程における紫外線の過剰照射を少なくし、過酸化水素の生成を抑制することで溶存酸素の上昇を防止してTOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【0027】
上記発明(発明8)においては、前記一次純水装置において、被処理に紫外線を照射する第二の紫外酸化工程と、この第二の紫外酸化工程の処理水のTOC濃度を測定して、前記第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を制御する工程とを有し、前記二次純水装置において、前記脱気水の溶存酸素濃度を測定するとともに、前記第三の処理水のTOC濃度を測定し、前記溶存酸素濃度及び第三の処理水のTOC濃度に基づいて前記第二の紫外酸化工程における紫外線の照射量を調整することが好ましい(発明9)。
【0028】
かかる発明(発明9)によれば、制御手段により第四のTOC計の測定値に基づいて、フィードバック制御により第二の紫外酸化工程における紫外線の出力を調整することができる。さらに溶存酸素濃度と最終的な処理水である第三の処理水のTOCの測定値に基づいて、第一の紫外酸化工程で処理する一次純水のTOC濃度が最適化されるように、第二の紫外酸化工程の出力を補正することができるので、第一の紫外線酸化工程における紫外線の過剰照射を最小限とすることで過酸化水素の生成を抑制して、特にTOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【0029】
上記発明(発明7又は9)においては、前記第一の紫外酸化工程及び第二の紫外酸化工程が、紫外線酸化装置によるものであり、前記紫外線酸化装置が紫外線ランプの複数のブロックから構成されるとともに、各紫外線ランプの照度が制御可能であり、紫外線の照射量の制御を紫外線ランプの稼働ブロック数と各紫外線ランプの照度とにより行うことが好ましい(発明10)。
【0030】
上記発明(発明10)によれば、紫外線酸化装置の稼働するブロック数と紫外線ランプの照度を制御することにより、紫外線酸化装置の出力を細かく調整することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の超純水製造装置は、一次純水装置と、この一次純水装置で処理された一次純水をさらに処理する二次純水装置とからなり、この二次純水装置が第一の紫外線酸化装置と、白金族金属触媒樹脂装置を備え、この第一の紫外線酸化装置で処理する一次純水のTOC濃度を測定してこの測定値に基づいて制御手段により、第一の紫外線酸化装置の出力を調整するものであるので、第一の紫外線酸化装置における紫外線の過剰照射を少なくし、過酸化水素の生成を抑制することで溶存酸素の上昇を防止してTOC濃度の低い超純水を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明を適用可能な超純水製造装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態による超純水製造装置におけるサブシステムを示す概略図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態による超純水製造装置を示す概略図である。
【
図4】本発明の第三の実施形態による超純水製造装置を示す概略図である。
【
図5】超純水製造装置における従来のサブシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第一の実施形態〕
以下、本発明の超純水製造装置の第一の実施形態について
図1及び
図2を参照して説明する。
【0034】
(超純水製造装置)
本実施形態の超純水製造装置は、基本的な全体構成は、前述した
図1に示したものと同じであり、サブシステム4に特徴を有する。
【0035】
<サブシステム4>
本実施形態において、サブシステム4は、
図2に示すように第一の紫外線酸化装置24の入口側のTOC濃度を計測する第一のTOC計41と、白金族金属触媒樹脂塔25の処理水(第二の処理水)の過酸化水素濃度を計測する過酸化水素計42と、膜式脱気装置26の処理水の溶存酸素酸素(DO)濃度を計測する溶存酸素計43と、非再生型混床式イオン交換装置28の処理水(第三の処理水)のTOC濃度を計測する第二のTOC計44とを有する。そして、第一のTOC計41は、パーソナルコンピュータなどの制御手段45に測定データを送信可能となっているとともに、制御手段45はこの送信データに基づいて、第一の紫外線酸化装置24を制御可能となっている。
【0036】
ここで、第一の紫外線酸化装置24は、複数本の紫外線ランプからなる紫外線ランプの複数のブロックから構成されていて、前述した制御手段45は、点灯するブロック数を制御するとともに各ブロックの紫外線ランプの照度を調光することにより、第一の紫外線酸化装置24における紫外線の出力を制御可能となっていることが好ましい。上述したような紫外線酸化装置24としては、紫外線ランプの照度と点灯ブロック数の両方を調整可能なものとして、日本フォトサイエンス社製「JPW」、「JPH」、「ZK-UV」を用いることができる。また、紫外線ランプの照度調整機能のみを有するものとして、千代田工販社製「COX」、「WOX」、「NWOX」が挙げられるが、紫外線の照射量の調整レンジが広いことから、紫外線ランプの照度と点灯ブロック数の両方を調整可能なものが好ましく、特にTOC分解性能が高い点で日本フォトサイエンス社製「JPW」、「ZK-UV」が好ましい。具体的には、本実施形態では1ブロック当たり2本の紫外線ランプで、3ブロックで構成されていて、このブロックごとに紫外線ランプの照度を30~100%の範囲で調光可能なものとする。このような構成とすれば、点灯ブロック数は1~3ブロックであるので、紫外線の出力の最大値に対して、10~100%の範囲で紫外線ランプの紫外線照射量を調整することができる。
【0037】
(超純水製造装置の運転方法)
上述したような超純水製造装置1の運転方法について、以下説明する。
まず、原水Wを前処理装置2に供給すると、凝集、加圧浮上(沈殿)、濾過(膜濾過)装置などにより、原水W中の懸濁物質やコロイド物質の除去を行い、処理原水としての前処理水W0を得る。この過程では高分子系有機物、疎水性有機物などもある程度除去される。
【0038】
この前処理水W0を一次純水装置3に供給して一旦タンク11に貯留した後、図示しないポンプにより送水し、予熱器16で予熱して前処理水W0の粘度を低下させ逆浸透膜装置12に供給する。この逆浸透膜装置12で所定の回収率で被処理水を処理することにより塩類を除去すると共に、イオン性、コロイド性のTOCを除去する。次に第二の紫外線酸化装置13で、TOC成分を所定のレベルにまで低減する(第二の紫外線酸化工程)。続いて再生型イオン交換装置14で、塩類などのイオン性成分を除去する。そして、膜式脱気装置15では無機系炭素(IC)、溶存酸素の除去を行い、一次純水W1を製造する。
【0039】
この一次純水W1は、配管17を介してサブシステム4へ送水される。サブシステム4では、一次純水W1をポンプ22で送液して、低圧紫外線酸化装置による第一の紫外線酸化装置24で、低圧紫外線ランプより出される約185nmの紫外線によりTOCを有機酸、さらにはCO2レベルにまで分解して、第一の処理水を生成する(第一の紫外線酸化工程)。次に、白金族金属触媒樹脂塔25で過酸化水素(H2O2)を水(H2O2)と酸素(O2)とに分解して第二の処理水を生成する(白金族金属触媒樹脂処理工程)。続いて、ここで発生した酸素や溶存する二酸化炭素を膜式脱気装置26で除去した後、微量に残存する低分子量有機物及びイオン性不純物を逆浸透膜27及び非再生型混床式イオン交換装置28で除去して第三の処理水を生成する(脱イオン工程)。そして、限外濾過(UF)膜29では、微粒子が除去され、非再生型混床式イオン交換装置28などから流出した微粒子を除去して超純水W2を製造することができる。
【0040】
上述したような超純水製造装置1の製造工程において、第一のTOC計41により第一の紫外線酸化装置24に流入する一次純水W1のTOC濃度を測定し、この測定値に基づいて制御手段45は、TOCの分解に必要な紫外線量となるように第一の紫外線酸化装置24の出力を制御する。このとき、本実施形態においては、第一の紫外線酸化装置24が、1ブロック当たり2本の紫外線ランプで、3ブロック程度の複数ブロックで構成されていて、このブロックごとに紫外線ランプの照度を30~100%の範囲で調光可能なものであるので、第一の紫外線酸化装置24の紫外線の出力の最大値に対して、約10~100%の範囲で紫外線ランプの紫外線照射量を調整することができる。これにより、第一の紫外線酸化装置24の被処理水である一次純水W1のTOC濃度に応じて、紫外線ランプの点灯本数のみで処理する場合に比べて、適切な紫外線の出力に迅速に調整することができるので、第一の紫外線酸化装置24における紫外線の過剰照射を少なくし、過酸化水素の生成を抑制することで溶存酸素の上昇を防止してTOC濃度の低い超純水W2を安定して製造することができる。この第一の紫外線酸化装置24における紫外線出力の調整は、サブシステム4における一次純水W1の処理量と、第一のTOC計41によるTOC濃度の測定値との相関による、最適な紫外線照射量をあらかじめ算出しておき、これに基づき行えばよい。
【0041】
また、溶存酸素計43と第二のTOC計44とにより、超純水W2の溶存酸素濃度及びTOC濃度を測定し、超純水W2の要求水質を満たすか否かを監視してもよい。
【0042】
〔第二の実施形態〕
次に、本発明の超純水製造装置の第二の実施形態について
図1及び
図3を参照して説明する。
【0043】
(超純水製造装置)
本実施形態の超純水製造装置は、基本的な全体構成は、前述した
図1に示したものと同じである。
【0044】
図3に示すように本実施形態では、一次純水装置3の第二の紫外線酸化装置13の入口側のTOC濃度を計測する第三のTOC計46と、再生型イオン交換装置14の処理水のTOC濃度を計測する第四のTOC計47とを有し、第三のTOC計46は、制御手段45に測定データを送信可能となっているとともに、サブシステム4の溶存酸素計43と第二のTOC計44の測定データも制御手段45に送信可能となっている以外、前述した第一の実施形態と同じ構成を有する。そして、制御手段45は、この第三のTOC計46の測定データに基づいて、第二の紫外線酸化装置13の出力を制御可能となっているとともに、溶存酸素計43と第二のTOC計44の測定データに基づいて、第二の紫外線酸化装置13の出力を補正可能となっている。
【0045】
なお、第二の紫外線酸化装置13は、前述した第一の紫外線酸化装置24と同じ構成であり、複数本の紫外線ランプからなる紫外線ランプの複数のブロックから構成されていて、制御手段45は、点灯するブロック数を制御するとともに各紫外線ランプの照度を調光することにより、紫外線の出力を制御可能となっていることが好ましい。具体的には、本実施形態では1ブロック当たり2本の紫外線ランプで、3ブロックで構成されていて、このブロックごとに紫外線ランプの照度を30~100%の範囲で調光可能なものとする。このような構成とすれば、点灯ブロック数は1~3ブロックであるので、紫外線の出力の最大値に対して、約10~100%の範囲で紫外線ランプの紫外線照射量を調整することができる。
【0046】
(超純水製造装置の運転方法)
上述したような第二の実施形態の超純水製造装置1の運転方法について以下説明する。本実施形態の超純水製造装置1における超純水の製造工程は前述した第一の実施形態と同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態の超純水製造装置1の製造工程において、一次純水装置3では、第三のTOC計46により第二の紫外線酸化装置13に流入する被処理水のTOC濃度を測定し、この測定値に基づいて制御手段45は、TOCの分解に必要な紫外線量となるように第二の紫外線酸化装置13の出力を制御する(
図3中の(1))。このとき、本実施形態においては、第二の紫外線酸化装置13が、1ブロック当たり2本の紫外線ランプで、3ブロック程度の複数ブロックで構成されていて、このブロックごとに紫外線ランプの照度を30~100%の範囲で調光可能なものであるので、第二の紫外線酸化装置13の紫外線の出力の最大値に対して、約10~100%の範囲で紫外線ランプの紫外線照射量を調整することができる。
【0048】
また、サブシステム4では、第一のTOC計41により第一の紫外線酸化装置24に流入する一次純水W1のTOC濃度を測定し、この測定値に基づいて制御手段45は、TOCの分解に必要な紫外線量となるように第一の紫外線酸化装置24の出力を制御する(
図3中の(2))。このとき、本実施形態においては、第一の紫外線酸化装置24が、1ブロック当たり2本の紫外線ランプで、3ブロック程度の複数ブロックで構成されていて、このブロックごとに紫外線ランプの照度を30~100%の範囲で調光可能なものであるので、第一の紫外線酸化装置24の紫外線の出力の最大値に対して、約10~100%の範囲で紫外線ランプの紫外線照射量を調整することができる。
【0049】
一方、一次純水装置3において、一次純水W1中のTOCが十分に低くなると、サブシステム4の第一の紫外線酸化装置24で分解するTOC量が少ないため、上述したような第一の紫外線酸化装置24における紫外線の出力の制御だけでは、TOCに対して紫外線照射量が非常に過剰となる場合がある。この場合、第一の紫外線酸化装置24において発生する過酸化水素(H
2O
2)が多くなる。これが顕著となると白金族金属触媒樹脂塔25で処理した第二の処理水の溶存酸素濃度が高くなるとともに過酸化水素(H
2O
2)もブレイクし、膜式脱気装置26処理水の溶存酸素濃度が上昇するか、非再生型混床式イオン交換装置28中のイオン交換樹脂に起因して第三の処理水の有機物(TOC)が増加することになる。そこで、本実施形態においては、膜式脱気装置26の後段で溶存酸素計43により溶存酸素濃度を測定するとともに、非再生型混床式イオン交換装置28の後段で第二のTOC計44により第三の処理水のTOC濃度を測定し、これらのいずれか一方、又は両方が上昇する傾向を示した場合には、制御手段45は、一次純水W1のTOC濃度が少なすぎると判断し、第一の紫外線酸化装置24の被処理水である一次純水W1のTOC濃度を上昇させる。具体的には、制御手段45は第二の紫外線酸化装置13の紫外線出力を減少させるように制御する(
図3中の(3))。この紫外線の出力を減少度合いは、サブシステム4における一次純水W1の処理量と、溶存酸素計43及び第二のTOC計44の上昇傾向とにより、あらかじめ算出しておいた計算式により算出すればよい。これにより第一の処理水の溶存酸素濃度の上昇を改善することができる。
【0050】
上述したような第二の実施形態の超純水製造装置によれば、第一の紫外線酸化装置24の被処理水である一次純水W1のTOC濃度に応じて、第一の紫外線酸化装置24において紫外線の出力を最適に制御するだけでなく、この第一の紫外線酸化装置24におけるTOCの分解が最適化するように、一次純水装置3の第二の紫外線酸化装置13をも制御するものであるので、第一の紫外線酸化装置24における紫外線の過剰照射を一層少なくし、過酸化水素の生成を抑制することで溶存酸素の上昇を防止してTOC濃度の低い超純水W2を安定して製造することができる。
【0051】
〔第三の実施形態〕
さらに、本発明の超純水製造装置の第三の実施形態について
図1及び
図4を参照して説明する。
【0052】
(超純水製造装置)
本実施形態の超純水製造装置は、基本的な全体構成は、前述した
図1に示したものと同じである。
【0053】
図4に示すように本実施形態では、一次純水装置3の第二の紫外線酸化装置13の入口側のTOC濃度を計測する第三のTOC計46と、再生型イオン交換装置14の処理水のTOC濃度を計測する第四のTOC計47とを有し、第四のTOC計47は、制御手段45に測定データを送信可能となっていて、制御手段45は、この第四のTOC計47のデータに基づき第二の紫外線酸化装置13を制御可能となっている。
【0054】
また、サブシステム4は、第一の紫外線酸化装置24の入口側のTOC濃度を計測する第一のTOC計41と、白金族金属触媒樹脂塔25の処理水(第二の処理水)の過酸化水素濃度を計測する過酸化水素計42と、溶存酸素酸素(DO)濃度を計測する溶存酸素計43と、非再生型混床式イオン交換装置28の処理水(第三の処理水)の溶存酸素酸素(DO)濃度を計測する溶存酸素計43とTOC濃度を計測する第二のTOC計44とを有する。そして、溶存酸素計43と第二のTOC計44は、制御手段45に測定データを送信可能となっていて、制御手段45は、第二のTOC計44の測定データに基づいて、第一の紫外線酸化装置24の紫外線の出力を制御可能となっているとともに、溶存酸素計43と第二のTOC計44の測定データに基づいて、第二の紫外線酸化装置13の紫外線の出力を補正可能となっている。
【0055】
(超純水製造装置の運転方法)
上述したような第三の実施形態の超純水製造装置1の運転方法について以下説明する。
本実施形態の超純水製造装置1における超純水の製造工程は前述した第一の実施形態と同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施形態の超純水製造装置1の運転工程において、一次純水装置3では、第四のTOC計47により測定された再生型イオン交換装置14の処理水のTOC濃度と、あらかじめ想定しておいた再生型イオン交換装置14の処理水のTOC濃度との差異に基づいて、第二の紫外線酸化装置13のTOC分解量の過不足を判断し、フィードバック制御により、TOCの分解に必要な紫外線量となるように第二の紫外線酸化装置13の出力を制御する(
図4中の(1))。このとき、本実施形態においては、第二の紫外線酸化装置13が、1ブロック当たり2本の紫外線ランプで、3ブロック程度の複数ブロックで構成されていて、このブロックごとに紫外線ランプの照度を30~100%の範囲で調光可能なものであるので、第二の紫外線酸化装置13の紫外線の出力の最大値に対して、約10~100%の範囲で紫外線ランプの紫外線照射量を調整することができる。
【0057】
また、サブシステム4では、最終的な水質である非再生型混床式イオン交換装置28の処理水(第三の処理水)の第二のTOC計44の測定データと、あらかじめ想定しておいた非再生型混床式イオン交換装置28の処理水のTOC濃度との差異に基づいて、フィードバック制御により第一の紫外線酸化装置24の出力を制御する(
図4中の(2))。このとき、本実施形態においては、第一の紫外線酸化装置24が、1ブロック当たり2本の紫外線ランプで、3ブロック程度の複数ブロックで構成されていて、このブロックごとに紫外線ランプの照度を30~100%の範囲で調光可能なものであるので、第一の紫外線酸化装置24の紫外線の出力の最大値に対して、約10~100%の範囲で紫外線ランプの紫外線照射量を調整することができる。
【0058】
一方、一次純水装置3において、一次純水W1中のTOCが十分に低くなると、サブシステム4の第一の紫外線酸化装置24で分解するTOCが少ないため、上述したような第一の紫外線酸化装置24における紫外線の出力の制御だけでは、TOCに対して紫外線照射量が非常に過剰となる場合がある。この場合、第一の紫外線酸化装置24において発生する過酸化水素(H
2O
2)が多くなる。これが顕著となると白金族金属触媒樹脂塔25を過酸化水素(H
2O
2)がブレイクし、膜式脱気装置26処理水の溶存酸素濃度が上昇するか、非再生型混床式イオン交換装置28中のイオン交換樹脂に起因して有機物(TOC)が生じることになる。そこで、本実施形態においては非再生型混床式イオン交換装置28の後段で溶存酸素計43により溶存酸素濃度を測定するとともに第二のTOC計44によりTOC濃度を測定し、これらのいずれか一方、又は両方が上昇する傾向を示した場合には、第一の紫外線酸化装置24の被処理水である一次純水W1のTOC濃度を上昇させる(
図4中の(3))。具体的には、制御手段45は第二の紫外線酸化装置13の紫外線出力を減少させるように制御する。この紫外線出力を減少度合いは、サブシステム4における一次純水W1の処理量と、溶存酸素計43及び第二のTOC計44の上昇傾向とにより、あらかじめ算出しておいた計算式により算出すればよい。
【0059】
上述したような第三の実施形態によれば、最終的な処理水である非再生型混床式イオン交換装置28の処理水(第三の処理水)における溶存酸素濃度及びTOC濃度に応じて、第一の紫外線酸化装置24をフィードバック制御により適切な紫外線の出力に調整するだけでなく、この第一の紫外線酸化装置24におけるTOCの分解が最適化するように、一次純水装置3の第二の紫外線酸化装置13を制御するものであるので、第一の紫外線酸化装置24における紫外線の過剰照射を一層少なくし、過酸化水素の生成を抑制することで溶存酸素の上昇を防止してTOC濃度の低い超純水W2を安定して製造することができる。
【0060】
以上、本実施形態の超純水製造装置及びその運転方法について添付図面を参照してきたが、本発明はサブシステム4に紫外線酸化装置と白金族金属触媒樹脂塔とを有してれば適用可能であり、特に一次純水装置にも紫外線酸化装置を有する超純水製造装置に特に好適に適用可能であるが、それ以外の構成については、特に制限はなく、逆浸透膜装置や電気脱イオン装置など汎用的な装置を適宜配置してもよい。また、第二の実施形態のようなフィードフォワード制御と、第三の実施形態のようなフィードバック制御とを併用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 超純水製造装置
2 前処理装置
3 一次純水装置
4 二次純水装置(サブシステム)
5 ユースポイント
11 タンク
12 逆浸透膜装置
13 紫外線(UV)酸化装置(第二の紫外線酸化装置)
14 再生型イオン交換装置
15 膜式脱気装置
16 予熱器
17 配管
21 サブタンク
22 ポンプ
23 熱交換器
24 紫外線酸化装置(第一の紫外線酸化装置)
25 白金族金属触媒樹脂塔
26 膜式脱気装置
27 逆浸透膜装置
28 非再生型混床式イオン交換装置
29 限外濾過(UF)膜(膜濾過装置)
30 送給管
31 返送管
41 第一のTOC計
42 過酸化水素計
43 溶存酸素計
44 第二のTOC計
45 制御手段
46 第三のTOC計
47 第四のTOC計
W 原水
W0 前処理水
W1 一次純水
W2 超純水(二次純水)