(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A01D34/64 M
(21)【出願番号】P 2020205785
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 晃平
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535279(JP,A)
【文献】特表2019-506148(JP,A)
【文献】特開2019-103436(JP,A)
【文献】特開2018-108040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0159401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
草を刈るための刈刃と走行するための車輪とが設けられた基台と、
前記基台に設けられ、前記基台の進行方向の前方の地面に向けて、所定角度上方から前記基台の幅方向に延びる光を出射する光源部と、
前記基台に設けられ、前記光が照射される領域を、前記領域の前記進行方向の後方かつ上方から前記所定角度とは異なる角度で撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された撮像画像における前記光の分布に基づいて前記草の密度を取得し、取得した前記草の密度に基づいて、前記刈刃の回転数又はトルクと、前記基台の走行速度と、の両方を制御する駆動制御部と、を備える草刈機。
【請求項2】
前記撮像画像から前記光の波長に相当する画素であって輝度が所定値より小さい第2画素を抽出した抽出画像における前記第2画素の形状から前記基台が走行可能な領域を特定する特定部と、
前記基台を前記特定部が特定した前記領域に沿って走行させる走行制御部と、を備える
、請求項1に記載の草刈機。
【請求項3】
前記撮像部は、前記光源部における前記光の出射点から前記基台の進行方向に伸ばした仮想直線に上方からみて光軸が重なって前記光が照射される領域を撮像する、請求項1または2に記載の草刈機。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記撮像画像から前記光の波長に相当する画素であって輝度が所定値以上の第1画素の密度を前記草の密度として取得する、請求項
1から3のいずれか一項に記載の草刈機。
【請求項5】
前記駆動制御部は、前記刈刃による前記草の刈取幅に対応する領域における前記第1画素の密度から前記草の密度を取得する、請求項
4に記載の草刈機。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記草の密度が所定値までは前記草の密度が高くなるほど前記基台の走行速度を一定にしたまま前記刈刃の回転数又はトルクを高くし、前記草の密度が前記所定値を超えた場合は前記草の密度が高くなるほど前記刈刃の回転数及びトルクを一定にしたまま前記基台の走行速度を遅くする、請求項
1から5のいずれか一項に記載の草刈機。
【請求項7】
前記草の密度と、前記刈刃の回転数又はトルク及び前記基台の走行速度と、の関係を示す情報が記憶された記憶部を備え、
前記駆動制御部は、取得した前記草の密度と前記情報と
から前記刈刃の回転数又はトルクと前記基台の走行速度との両方を決定し、決定した前記刈刃の回転数又はトルクと前記基台の走行速度になるように、前記刈刃の回転数又はトルクと、前記基台の走行速度と、の両方を制御する、請求項
1から6のいずれか一項に記載の草刈機。
【請求項8】
前記撮像部は前記光源部よりも前記地面から離れた位置に設けられている、請求項1から
7のいずれか一項に記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
雑草等の草を刈り取るために、刈刃を備えた草刈機が用いられている。例えば、草刈機の進行方向の前方の地面に向けた光学センサを備え、この光学センサを用いて予測される草の密度に応じて刈刃の回転数を変更する草刈機が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
刈り取る草の量と刈刃の回転及び/又は基台の走行速度との関係によっては、草を上手く刈り取ることができずに、刈刃に草が巻き付くことや刈り取った草が刈刃付近に留まることが生じ、それによって刈取の負荷が大きくなり、能力が低下してしまう。特許文献1に記載の草刈機では、光学センサを用いて予測される草の密度に応じて刈刃の回転数を変更しているが、刈り取る草の量を的確に求めることが難しい。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、刈り取る草の量を的確に求めることができ、草を良好に刈り取ることが可能な草刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の草刈機は、草を刈るための刈刃と走行するための車輪とが設けられた基台と、前記基台に設けられ、前記基台の進行方向の前方の地面に向けて、所定角度上方から前記基台の幅方向に延びる光を出射する光源部と、前記基台に設けられ、前記光が照射される領域を、前記領域の前記進行方向の後方かつ上方から前記所定角度とは異なる角度で撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された撮像画像における前記光の分布に基づいて前記草の密度を取得し、取得した前記草の密度に基づいて、前記刈刃の回転数又はトルクと、前記基台の走行速度と、の両方を制御する駆動制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、刈り取る草の量を的確に求めることができ、草を良好に刈り取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る草刈機を+X方向から見た状態を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る草刈機を+Z方向から見た状態を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る草刈機を-Z方向から見た状態を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る草刈機の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る草刈機による草刈制御の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6(a)は、地面に生えた草と光源部及び撮像部との位置関係の一例を示す図であり、
図6(b)は、取得部が取得する撮像画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7(a)から
図7(c)は、草の密度の取得方法を示す図である。
【
図8】
図8は、草の密度と刈刃部の回転数及びベースの走行速度との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る草刈機の構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る草刈機による走行制御の一例を示すフローチャートである
【
図11】
図11は、ベースの走行可能な領域の特定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態に係る草刈機100を+X方向から見た状態を示し、
図2は、+Z方向から見た状態を示している。X軸方向は走行面に平行な方向、Y軸方向は走行面に平行で且つX軸方向に直交する方向、Z軸方向は鉛直方向である。
図1及び
図2に示すように、草刈機100は、基台としてのベース12と、前側の2つの車輪14と、後ろ側の2つの車輪16と、刈刃部18と、光源部20と、撮像部22と、バッテリー24と、モータ58、62と、を備える。例えば、草刈機100は、遠隔操縦(無線操縦)されることによって進行方向DM(+Y方向)に向かって走行しながら草刈を行うものである。
【0010】
車輪14は、ベース12の前側(+Y側端部近傍)に設けられ、X軸方向に延びる車軸を中心としてモータ62によって回転駆動する。車輪16は、ベース12の後側(-Y側端部近傍)に設けられ、X軸方向に延びる車軸を中心としてモータ62によって回転駆動する。草刈機100は、車輪14及び16により+Y方向に四輪駆動されるようになっている。
【0011】
刈刃部18は、ベース12の下側(-Z側端部近傍)に設けられ、雑草等の草を刈る刈刃を備えている。
図3は、第1の実施形態に係る草刈機100を-Z方向から見た状態を示している。
図3では、図の明瞭化のために、光源部20及び撮像部22の図示は省略している。
図3に示すように、刈刃部18は、Z軸方向に延びる回転軸28を中心に回転する円形の回転部材としての回転板30と、回転板30の円周方向に関して等間隔となって回転板30に設けられた1枚又は複数枚(例えば4枚)の刈刃32と、を有する。刈刃32は、例えば金属製であるが、ナイロン製等その他の場合でもよい。刈刃部18は、モータ58によって回転軸28を中心として回転方向Aに回転する。この回転により、刈刃32の回転軸28から最も遠い部分の軌跡は円Bとなるため、刈刃32により円B内に存在する草を刈り取ることが可能となる。
【0012】
なお、本実施形態では、刈刃部18及び車輪14、16がモータ58、62によって回転駆動する場合を例に示すが、刈刃部18及び/又は車輪14、16がエンジンによって回転駆動する場合でもよい。
【0013】
図1及び
図2に示すように、光源部20は、ベース12の前側(+Y側)かつベース12の幅方向(X軸方向)におけるベース12の中央部に設けられている。光源部20は、ベース12の進行方向DMの前方の地面10に向けて、ベース12の幅方向に延びる光34を照射する。光34は、ベース12の幅方向に略直線状に延び、光34の長さ方向(X軸方向)の中心の位置は、ベース12の幅方向(X軸方向)の中心の位置と略一致している。
【0014】
光34は、例えば緑色光(波長:515nm~540nm程度)であるが、赤色光(波長:610nm~660nm程度)又は青色光(波長:440nm~480nm程度)等の可視光である場合でもよい。ベース12の幅方向(X軸方向)からベース12を見たときに、光34とベース12側の地面10との間の角度は角度θとなっている。角度θは、鋭角であり、例えば5°~30°である。このように、光源部20は、進行方向DMの前方の地面10に向けて所定角度上方からベース12の幅方向に延びる光34を照射する。
【0015】
光34のX軸方向における長さL1は、少なくとも
図3における円Bの直径Dよりも長い。すなわち、光34は、刈刃32が回転しながら通過するベース12の幅方向における範囲全体に亘って地面10に向けて照射される。光34の長さL1は、草刈機100の幅方向の長さL3よりも長い場合が好ましい。光34の長さL1は例えば1m~5mである。光源部20は、例えばラインレーザ光源であり、光34としてレーザ光線を出射するが、ベース12の幅方向に延びる光34を出射することができればその他の場合でもよい。例えば、光源部20は、複数の点光源を有し、複数の点光源から出射された略円形の光線によってベース12の幅方向に延びる光34が出射される場合でもよいし、1つの点光源を有し、この1つの点光源から出射された略円形の光線を走査することによってベース12の幅方向に延びる光34が出射される場合でもよい。
【0016】
撮像部22は、ベース12の前側(+Y側)かつベース12の幅方向(X軸方向)におけるベース12の中央部に位置して設けられ、光34が照射される領域を含む地面10を、光34が照射される領域の進行方向DMの後方かつ上方から撮像する。したがって、撮像部22の撮像範囲36内には光34が照射される領域が含まれる。撮像部22の光軸38は、光源部20における光34の出射点からベース12の進行方向に伸ばした仮想直線40に上方から見て重なっている。撮像範囲36の幅方向(X軸方向)の中心の位置は、ベース12の幅方向(X軸方向)の中心の位置と略一致している。
【0017】
ベース12の幅方向(X軸方向)からベース12を見たときに、撮像部22の光軸38とベース12側の地面10との間の角度φは、光34と地面10との間の角度θとは異なっている。したがって、撮像部22は、光34が地面10に向かって照射される角度とは異なる角度から光34が照射される領域を含む地面10を撮像する。角度φは、鋭角であり、例えば45°~70°である。角度φは、例えば角度θよりも大きい。撮像部22の撮像範囲36のうちベース12に近い側は、地面10に対して直角ではない。直角になると真下にある草で反射される光34が撮像でき難くなるためである。
【0018】
撮像部22の撮像範囲36のX軸方向における長さL2は、少なくとも
図3における円Bの直径Dよりも長い。すなわち、撮像部22は、刈刃32が回転しながら通過するベース12の幅方向における範囲全体を含むように地面10を撮像する。撮像範囲36の長さL2は、草刈機100の幅方向の長さL3よりも長い場合が好ましい。撮像範囲36の長さL2は、光34の長さL1よりも短い場合でもよいし、長い場合でもよいし、略同じ長さの場合でもよい。撮像部22は、例えばCCDカメラである。
【0019】
図4には、第1の実施形態に係る草刈機100の構成がブロック図にて示されている。
図4に示すように、草刈機100は、制御部50と、光源部20と、撮像部22と、バッテリー24と、刈取機構52と、走行機構54と、記憶部56と、を備える。制御部50は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)等を用いて構成される。制御部50は、草刈機100の各部の動作を制御するための信号処理等を行う。
【0020】
制御部50は、光源部20からの光34の出射を制御する光源制御部70と、撮像部22が撮像した撮像画像を撮像部22から取得する取得部72と、取得部72が取得した撮像画像から刈り取る草が生い茂る密度を取得し、取得した草の密度に応じて刈刃部18及び車輪14、16の駆動を制御する駆動制御部74と、を含む。光源制御部70、取得部72、及び駆動制御部74は、記憶部56に記憶されたソフトウェアと制御部50のハードウェアとの協働によって実現される。記憶部56は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリである。
【0021】
刈取機構52は、刈刃部18と、刈刃部18に備わる回転板30を回転させるモータ58と、バッテリー24から供給される電流を増幅してモータ58に供給するモータアンプ60と、を備える。駆動制御部74は、取得した草の密度に応じてモータアンプ60による電流の増幅量を制御することで、刈刃部18の回転数を制御する。
【0022】
走行機構54は、車輪14及び16と、車輪14及び16を回転させるモータ62と、バッテリー24から供給される電流を増幅してモータ62に供給するモータアンプ64と、を備える。駆動制御部74は、取得した草の密度に応じてモータアンプ64による電流の増幅量を制御することで、ベース12の走行速度を制御する。
【0023】
第1の実施形態に係る草刈機100による草刈制御の一例について、
図5のフローチャートに沿って説明する。
図5に示すように、作業者によって草刈機100の電源がオンされると、光源制御部70は、光源部20から光34の出射を開始させる(ステップS10)。光源部20は、ベース12の進行方向DMの前方の地面10に向けて所定角度上方からベース12の幅方向に延びる光34を出射する。ここでは、光34は緑色光(波長:515nm~540nm程度)の光線であるとする。
【0024】
光源部20から光34が出射された後、取得部72は、撮像部22が撮像した光34が照射される領域を含む地面10の撮像画像を取得する(ステップS12)。ここで、取得部72が取得する撮像画像について説明する。
図6(a)は、地面10に生えた草90と光源部20及び撮像部22との位置関係の一例を示す図、
図6(b)は、取得部72が取得する撮像画像80の一例を示す図である。なお、
図6(b)では、草刈機100が畦道を走行する場合の撮像画像80の一例を示している。
【0025】
図6(a)に示すように、光源部20は地面10に向けて所定角度上方から光34を出射するため、光34は地面10に生えた草90に斜め上方から照射する。撮像部22は、例えば光34が地面10に向かって照射される角度とは異なる角度から光34が照射される領域を含む地面10を撮像する。このような場合に、撮像部22によって撮像される撮像画像80は、例えば
図6(b)に示すように、水田92と水田92の間の畦道94とを含む地面10と、草90と、光源部20から出射された光34のうち地面10で反射された光34aと、光源部20から出射された光34のうち草90で反射された光34bと、が斜め上方から写された画像となる。
【0026】
図5に示すように、駆動制御部74は、取得部72が取得した撮像画像80を用いて、刈り取る草90が生い茂る密度を取得する(ステップS14)。ここで、草90の密度の取得方法について説明する。
図7(a)から
図7(c)は、草90の密度の取得方法を示す図である。
図7(a)に示すように、まず、駆動制御部74は、
図6(b)に示す撮像画像80から光34の波長(515nm~540nm程度)に相当し且つ輝度が閾値よりも高い画素88のみを抽出した抽出画像82を生成する。閾値としては、草90に光34bが照射された部分と照射されていない部分とを切り分けることが可能な輝度の値とすることができる。次に、駆動制御部74は、
図7(b)に示すように、抽出画像82の画素88のうち輝度が所定値以上の画素88aを抽出した抽出画像84を生成する。光34の地面10での反射率と草90での反射率とは異なり、草90での反射率は地面10での反射率に比べて大きい。したがって、光34が地面10で反射したか又は草90で反射したかを切り分けることが可能な輝度の値を所定値として設定し、輝度が所定値以上の画素88aを抽出することで、草90に照射された光34bに対応する箇所の画素を抽出することができる。なお、駆動制御部74は、抽出画像82を生成せずに、撮像画像80から抽出画像84を直接生成してもよい。
【0027】
次に、駆動制御部74は、
図7(c)に示すように、抽出画像84の所定の領域96における画素88aの密度を算出する。所定の領域96としては、例えば刈刃32が通る領域に対応する領域であって、幅Wを刈刃32による草90の刈取幅(すなわち
図3における円B)に対応する長さ、長さLを草90の密度を所定のタイミングで繰り返し取得する制御に適した長さ、例えばベース12の走行速度に応じて決定した長さとすることができる。例えば、長さLは、ベース12の走行速度と画像処理時間を考慮し、それに十分間に合うような画像を取得可能な長さとすることができる。領域96は、抽出画像84の最下端に接する領域としているが、この場合に限らず、最下端よりも上方に位置する領域としてもよい。密度を算出した位置と、その位置からベース12、車輪14、又は刈刃部18の前端部までの距離と、の関係を予め把握しておけばよい。一例として、幅Wを700ピクセル、長さLを10ピクセルとし、所定の領域96の大きさを7000ピクセルとする。駆動制御部74は、所定の領域96における画素88aの密度を算出し、算出した画素88aの密度を草90が生い茂る密度として取得する。一例として、7000ピクセルの領域96内に画素88aが350ピクセルある場合、駆動制御部74は、(350/7000)×100を計算して草90の密度が5%であることを取得する。なお、駆動制御部74は、抽出画像82、84を生成することなく、撮像画像80から領域96における画素88aの密度を算出する場合でもよい。
【0028】
なお、領域96の位置を抽出画像84の最下端から上方に大きく離れた位置とした場合、撮像画像80から領域96における画素88aの密度を直接算出すると、地面10からの光34aの反射光を誤って草90からの光34bの反射光としてしまう恐れがある。したがって、このような場合では、撮像画像80から抽出画像84を生成する場合が好ましい。
【0029】
図5に示すように、駆動制御部74は、取得した草の密度に応じて刈刃部18の回転数及びベース12の走行速度を決定する(ステップS16)。草刈機100は、記憶部56に例えば
図8に示すような草の密度と刈刃部18の回転数及びベース12の走行速度との関係を示す情報を記憶している。したがって、駆動制御部74は、
図8に示すような情報に基づいて、刈刃部18の回転数及びベース12の走行速度を決定する。
図8において、縦軸は、刈刃部18の回転が停止している場合を0%、刈刃部18の回転数が最大となる場合を100%としている。また、縦軸は、ベース12の走行が停止している場合を0%、ベース12の走行速度が最大となる場合を100%としている。一例として、草の密度が5%である場合、駆動制御部74は、
図8に示す情報から、刈刃部18の回転数を10%、ベース12の走行速度を100%と決定する。
【0030】
駆動制御部74は、刈取機構52及び走行機構54を制御して、ステップS16で決定した刈刃部18の回転数およびベース12の走行速度となるように、刈刃部18の回転数およびベース12の走行速度を調整する(ステップS18)。作業者によって草刈機100の電源がオフされない間は(ステップS20:No)、所定のタイミングでステップS12~S20が繰り返される。作業者が草刈機100の電源をオフした場合(ステップS20:Yes)、処理を終了する。
【0031】
第1の実施形態によれば、光源部20は、ベース12の進行方向DMの前方の地面10に向けて角度θ上方からベース12の幅方向に延びる光34を出射する。撮像部22は、光34が照射される領域を、この領域の進行方向DMの後方かつ上方から角度θとは異なる角度φで撮像する。そして、撮像部22により撮像された撮像画像80に基づいて、刈刃32の回転数及びベース12の走行速度を制御する。例えば、光源部20からベース12の幅方向に延びていない光が出射される場合、このような光が照射される領域を撮像した撮像画像を用いて草90の量を取得したとしても、刈刃32によって刈り取られる範囲の草90の量を的確に求めることが難しい。これに対し、光源部20からベース12の幅方向に延びる光34が出射され、光34が出射される領域を撮像した撮像画像80を用いて草90の量を取得することで、刈刃32によって刈り取られる範囲の草90の量を的確に求めることができる。また、光34が地面10に向けて照射される角度θとは異なる角度φで光34が照射された領域を撮像した撮像画像80は、地面10に照射される光34aと草90に照射される光34bとが一直線上に並ばずに
図6(b)に示すような画像となる。このような撮像画像80を用いることで、刈り取る草90の位置を的確に求めることができる。
【0032】
よって、撮像画像80に基づいて刈刃32の回転数及びベース12の走行速度を制御することで、刈刃32に草90が巻き付くこと及び刈り取った草90が刈刃32付近に留まることを抑制でき、草90を良好に刈り取ることができる。また、刈刃32に草90が巻き付くこと及び刈り取った草90が刈刃32付近に留まることが抑制されるため、モータ58への負荷を抑えることができる。なお、本第1の実施形態では、撮像画像80に基づいて刈刃32の回転数を制御する場合を例に示したが、刈刃32の回転数に代えて刈刃32を回転させる力(トルク)を制御する場合でもよい。
【0033】
また、本第1の実施形態では、
図2のように、撮像部22は、光源部20における光34の出射点からベース12の進行方向DMに伸ばした仮想直線40に上方から見て光軸38が重なって光34が照射される領域を撮像する。このような位置に配置された撮像部22が撮像する撮像画像80を用いることで、刈り取る草90の量及び位置を的確に求めることができる。
【0034】
また、本第1の実施形態では、
図6(b)のように、光34が照射される領域を撮像した撮像画像80における光34の分布に基づいて草90の密度を取得する。これにより、刈り取る草90の量を的確に求めることができる。そして、取得した草90の密度に応じて刈刃32の回転数及びベース12の走行速度を制御する。これにより、刈刃32に草90が巻き付くこと等を抑制できるため、刈取の負荷が大きくなることによる能力の低下を抑制でき、草90を良好に刈り取ることができる。
【0035】
また、本第1の実施形態では、
図7(a)から
図7(c)のように、光34が照射される領域を撮像した撮像画像80から光34の波長に相当する画素88であって輝度が所定値以上の画素88a(第1画素)の密度を草90の密度として取得する。これにより、刈り取る草90の量を的確に求めることができる。そして、取得した草90の密度に応じて刈刃32の回転数及びベース12の走行速度を制御する。これにより、刈刃32に草90が巻き付くこと等を抑制できるため、刈取の負荷が大きくなることによる能力の低下を抑制でき、草90を良好に刈り取ることができる。
【0036】
また、本第1の実施形態では、
図7(c)のように、刈刃32による草90の刈取幅に対応する領域96における画素88aの密度から草90の密度を取得する。これにより、刈刃32の刈取範囲における草90の量を的確に求めることができる。よって、領域96における草90の密度に応じて刈刃32の回転数及びベース12の走行速度を制御することで、刈刃32に草90が巻き付くこと等を抑制できるため、刈取の負荷が大きくなることによる能力の低下を抑制でき、草90を良好に刈り取ることができる。
【0037】
また、本第1の実施形態では、
図8のように、草90の密度が所定値までは草90の密度が高くなるほどベース12の走行速度を一定にしたまま刈刃32の回転数を高くし、所定値を超えた場合は草90の密度が高くなるほど刈刃32の回転数を一定にしたままベース12の走行速度を遅くする。これにより、刈刃32に草90が巻き付くこと等を効果的に抑制できるため、刈取の負荷が大きくなることによる能力の低下を抑制でき、草90を良好に刈り取ることができる。なお、撮像画像80に基づいて刈刃32のトルク及びベース12の走行速度を制御する場合、草90の密度が所定値までは草90の密度が高くなるほどベース12の走行速度を一定にしたまま刈刃32のトルクを高くし、所定値を超えた場合は草90の密度が高くなるほど刈刃32のトルクを一定にしたままベース12の走行速度を遅くしてもよい。
【0038】
また、本第1の実施形態では、
図1のように、ベース12の幅方向からベース12を見たときに、撮像部22の光軸38とベース12側の地面10との間の角度φは、光34とベース12側の地面10との間の角度θよりも大きい。このような位置に配置された撮像部22が撮像する撮像画像80を用いることで、刈り取る草90の量及び位置を的確に求めることができる。
【0039】
また、本第1の実施形態では、
図1のように、撮像部22は光源部20よりも地面10から離れた位置に設けられる。これにより、撮像部22が撮像する撮像画像80に刈刃32による刈取幅全体が含まれることを容易に実現できる。
【0040】
なお、上記第1の実施形態では、撮像画像80から光34の波長に相当する画素88であって輝度が所定値以上の画素88aを抽出して草90の密度を取得する場合を例に示したが、この場合に限られない。例えば、撮像画像80から光34の波長に相当する画素88を抽出し(
図7(a)参照)、線状に略連続的に連なる画素88(
図7(a)における矢印95の部分)から離れた位置にある画素88を光34が草90に照射された箇所と見なして、これらから草90の密度を取得する場合でもよい。なお、線状に連なる画素88は光34が地面10に照射された部分の画素であることから、線状に連なる画素88の形状から畦道の形状を把握することができる。
【0041】
なお、上記第1の実施形態では、撮像部22により撮像された撮像画像80に基づいて、刈刃32の回転数及びベース12の走行速度の両方を制御する場合を例に示したが、この場合に限られない。撮像画像80に基づいて、刈刃32の回転数又はトルクと、ベース12の走行速度と、の少なくとも一方を制御する場合でもよい。
【0042】
《第2の実施形態》
第2の実施形態に係る草刈機の外観は、第1の実施形態の草刈機100の
図1から
図3と同じであるため、図示及び説明を省略する。
図9は、第2の実施形態に係る草刈機200の構成を示すブロック図である。
図9に示すように、第2の実施形態に係る草刈機200では、制御部50は、光源制御部70と取得部72と駆動制御部74に加えて、特定部76と走行制御部78を含む。特定部76は、撮像部22が撮像した撮像画像からベース12が走行可能な領域を特定する。走行制御部78は、車輪14の回転軸の向きを変えることでベース12の走行方向を調整し、特定部76が特定した領域に沿ってベース12を走行させる。光源制御部70、取得部72、駆動制御部74、特定部76、及び走行制御部78は、記憶部56に記憶されたソフトウェアと制御部50のハードウェアとの協働によって実現される。その他の構成は、第1の実施形態に係る草刈機100の
図4と同じであるため説明を省略する。
【0043】
第2の実施形態に係る草刈機200による草刈制御は、第1の実施形態に係る草刈機100の
図5と同じであるため説明を省略する。
図10は、第2の実施形態に係る草刈機200による走行制御の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、草刈機200の電源がオンされると、光源制御部70は、光源部20から光34の出射を開始させる(ステップS30)。光源部20は、ベース12の進行方向DMの前方の地面10に向けて所定角度上方からベース12の幅方向に延びる光34を出射する。ここでは、光34は緑色光(波長:515nm~540nm程度)の光線であるとする。
【0044】
光源部20から光34が出射された後、取得部72は、撮像部22によって撮像された光34が照射される領域を含む地面10の撮像画像を取得する(ステップS32)。一例として、取得部72は、
図6(b)に示すような撮像画像80を取得する。
【0045】
特定部76は、取得部72が取得した撮像画像80を用いてベース12が走行可能な領域を特定する(ステップS34)。ここで、特定部76によるベース12の走行可能な領域の特定方法について説明する。まず、特定部76は、取得部72が取得した
図6(b)に示すような撮像画像80から光34の波長(515nm~540nm程度)に相当しかつ輝度が閾値よりも高い画素88のみを抽出して、
図7(a)に示すような抽出画像82を生成する。次いで、特定部76は、抽出画像82の画素88のうち輝度が所定値未満の画素88bを抽出して
図11に示すような抽出画像86を生成する。第1の実施形態で説明したように、光34が地面10で反射したか又は草90で反射したかを切り分けることが可能な輝度の値を所定値として設定し、輝度が所定値未満の画素88bを抽出することで、地面10に照射された光34aに対応する箇所の画素を抽出することができる。なお、特定部76は、抽出画像82を生成せずに、撮像画像80から抽出画像86を直接生成してもよい。
【0046】
特定部76は、抽出画像86における画素88bの形状からベース12が走行可能な領域を特定する。例えば、特定部76は、画素88bの形状から周辺よりも盛り上がった部分(水田92の間の畦道94)を特定し、この畦道94をベース12が走行可能な領域と特定する。
【0047】
図10に示すように、走行制御部78は、車輪14の回転軸の向きを調整しながら、特定部76が特定した領域に沿ってベース12を走行させる(ステップS36)。草刈機200の電源がオフされない間は(ステップS38:No)、所定のタイミングでステップS32~S36が繰り返し行われる。草刈機200の電源がオフされた場合(ステップS38:Yes)、処理を終了する。
【0048】
第2の実施形態によれば、特定部76は、撮像画像80から光34の波長に相当する画素88であって輝度が所定値よりも小さい画素88b(第2画素)を抽出した抽出画像86における画素88bの形状からベース12が走行可能な領域(例えば畦道94)を特定する。走行制御部78は、特定部76が特定した領域(畦道)に沿ってベース12を走行させる。これにより、草刈機200を自動走行させることができる。
【0049】
なお、上記第1の実施形態では無線通信によって遠隔操縦される草刈機の場合を例に示し、上記第2の実施形態では自立移動型の草刈機の場合を例に示したが、歩行型の草刈機等その他の場合でもよい。
【0050】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 地面
12 ベース
14、16 車輪
18 刈刃部
20 光源部
22 撮像部
24 バッテリー
28 回転軸
30 回転板
32 刈刃
34、34a、34b 光
36 撮像範囲
38 光軸
40 仮想直線
50 制御部
52 刈取機構
54 走行機構
56 記憶部
58、62 モータ
60、64 モータアンプ
70 光源制御部
72 取得部
74 駆動制御部
76 特定部
78 走行制御部
90 草
92 水田
94 畦道
80 撮像画像
82、84、86 抽出画像
88、88a、88b 画素
96 領域
100、200 草刈機