(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】燃焼防止装置及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20240702BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F25B49/02 C
F25B1/00 396D
F25B1/00 396J
F25B1/00 396G
F25B1/00 396E
F25B1/00 396T
F25B1/00 396C
(21)【出願番号】P 2020155871
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神戸 雅範
(72)【発明者】
【氏名】深野 修司
(72)【発明者】
【氏名】北山 英博
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-257762(JP,A)
【文献】国際公開第2014/126005(WO,A1)
【文献】特開2007-139375(JP,A)
【文献】特開2009-064297(JP,A)
【文献】特開2012-159216(JP,A)
【文献】特開2000-105034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防爆エリアに設けられ、燃焼性を有する一次冷媒が循環する一次冷媒サイクルと、
前記一次冷媒と熱的に結合された不燃性の二次冷媒が循環する二次冷媒サイクルと、
を備える冷凍サイクルシステムのための燃焼防止装置であって、
前記二次冷媒サイクルは、
前記防爆エリアに設けられ、前記一次冷媒サイクルの前記一次冷媒と前記二次冷媒とを熱交換させるための熱交換器と、
前記熱交換器の下流側に設けられた受液器と、
を備え、
前記一次冷媒の漏洩を検出するための検出器と、
前記二次冷媒サイクルを構成する二次冷媒路とは別に設けられ、前記受液器に連通することにより、前記受液器から前記二次冷媒を前記防爆エリアに導くように構成された少なくとも1つのガス噴出管と、
前記検出器の検出結果に基づいて、前記ガス噴出管を介した前記受液器から前記防爆エリアへの前記二次冷媒の供給状態を切り替えるための切替えバルブと、
を備える燃焼防止装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのガス噴出管は、前記防爆エリア内に前記二次冷媒を噴出可能な噴出口を有する、
請求項1に記載の燃焼防止装置。
【請求項3】
前記噴出口は、前記ガス噴出管の延在方向に沿って複数設けられる、
請求項2に記載の燃焼防止装置。
【請求項4】
前記噴出口は、前記防爆エリア内の下部領域に設けられる、
請求項2又は3に記載の燃焼防止装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガス噴出管は、前記受液器の気相部に連通する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の燃焼防止装置。
【請求項6】
前記防爆エリア内の雰囲気を前記防爆エリアの外部に排出するための送風機を備える、請求項1乃至5の何れか一項に記載の燃焼防止装置。
【請求項7】
前記防爆エリアは、前記冷凍サイクルシステムのうち少なくとも前記一次冷媒サイクルを含む範囲がエンクロージャによって囲まれることにより規定される、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の燃焼防止装置。
【請求項8】
前記防爆エリアは、前記冷凍サイクルシステムのうち少なくとも前記一次冷媒サイクルを含む範囲が収容される機械室の隔壁によって規定される、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の燃焼防止装置。
【請求項9】
前記一次冷媒は燃焼性がISO817のクラス2L以上に属する、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の燃焼防止装置。
【請求項10】
前記二次冷媒は燃焼性がISO817のクラス1に属する、
請求項1乃至9の何れか一項に記載の燃焼防止装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の燃焼防止装置を備える冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼防止装置及び該燃焼防止装置を備える冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
2016年に開催された第28回モントリオール議定書締約国会合(MOP28)で改正案が採択され(キガリ改正)、2019年に発効した。この改正は、オゾン層破壊効果が低いことから冷凍や空調の分野で使用が普及していたHFC(ハイドロフルオロカーボン)、通称「代替フロン」を、温室効果ガスとして気候変動に悪影響を与えるため段階的に規制することを決めている。そのため、今後、冷凍や空調の分野において、地球温暖化係数(GWP)がさらに低いが燃焼性を有する炭化水素系などの冷媒の使用が増加してくることが予想される。このような将来動向は、設備の経年劣化などによる腐食によって可燃性冷媒が漏れた時など、安全性リスクを高めることになるため、この対策が必須となる。
【0003】
特許文献1には、可燃性冷媒を使用した冷凍サイクルシステムにおいて、その可燃性冷媒ガスが万一漏洩した時に発火や爆発を防止するため、冷凍サイクルシステムのユニット内又は冷媒配管内に不活性ガスを噴射し、可燃性冷媒ガスを不燃範囲に希釈し、又は冷媒配管の一部に可燃性冷媒ガスの緊急放出口を設け、その噴出口に不活性ガスを噴射して可燃性冷媒ガスと混合するようにした発火などの防止手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された手段では、発火防止及び消火措置に用いられる不活性ガスは、冷凍サイクルシステムとは別置きのガスボンベから供給されるため、冷凍サイクルシステム以外の新たな設備を設ける必要がある。従って、これらの設備を含めると冷凍サイクルシステム全体のコストが上昇し、かつ設置スペースも増えるおそれがある。
【0006】
本開示は、上述する課題に鑑みてなされたもので、設備追加を抑えることで、コスト及びスペースの増加を抑制可能な燃焼防止装置及び冷凍サイクルシステムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼防止装置は、防爆エリアに設けられ、燃焼性を有する一次冷媒が循環する一次冷媒サイクルと、前記一次冷媒と熱的に結合された不燃性の二次冷媒が循環する二次冷媒サイクルと、を備える冷凍サイクルシステムのための燃焼防止装置であって、前記二次冷媒サイクルは、前記防爆エリアに設けられ、前記一次冷媒サイクルの前記一次冷媒と前記二次冷媒とを熱交換させるための熱交換器と、前記熱交換器の下流側に設けられた受液器と、を備え、前記一次冷媒の漏洩を検出するための検出器と、前記受液器に連通することにより、前記受液器から前記二次冷媒を前記防爆エリアに導くように構成された少なくとも1つのガス噴出管と、前記検出器の検出結果に基づいて、前記ガス噴出管を介した前記受液器から前記防爆エリアへの前記二次冷媒の供給状態を切り替えるための切替えバルブと、を備える。
【0008】
また、本開示の少なくとも一実施形態に係る冷凍サイクルシステムは、本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼防止装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、設備追加を抑えることでコスト及びスペースの増加を抑制可能な燃焼防止装置及び冷凍サイクルシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る冷凍サイクルシステムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る燃焼防止装置10を備える冷凍サイクルシステム30の全体構成図である。冷凍サイクルシステム30は、燃焼性を有する一次冷媒が循環する一次冷媒路34aを含む一次冷媒サイクル34と、不燃性の二次冷媒が循環する二次冷媒路36aを含む二次冷媒サイクル36とを備えている。一次冷媒路34aは防爆エリア32に設けられている。一次冷媒路34a及び二次冷媒路36aには、夫々冷凍サイクルを構成する機器が設けられている。
【0013】
図1には、一実施形態に係る一次冷媒サイクル34及び二次冷媒サイクル36が図示されている。一次冷媒サイクル34は、燃焼性の一次冷媒が循環する一次冷媒路34aに冷凍サイクル構成機器が設けられ、二次冷媒サイクル36は、不燃性の二次冷媒が循環する二次冷媒路36aに冷凍サイクル構成機器が設けられている。
【0014】
一次冷媒サイクル34は、一次冷媒路34aに一次冷媒ガスを圧縮する圧縮機38を備え、圧縮機38で圧縮された一次冷媒ガスは凝縮器40で冷却されて凝縮する。凝縮器40には一次冷媒ガスを冷却するための冷却媒体(例えば冷却水)wが循環する冷却媒体路42が導設されている。凝縮器40で一次冷媒の保有熱を吸収した冷却媒体wを別な用途の熱源として使用することもできる。この場合、一次冷媒サイクル34に設けられた冷凍サイクル構成機器は、ヒートポンプサイクルを構成していると言える。凝縮器40で凝縮した一次冷媒液は、膨張弁44で減圧された後、熱交換器46で二次冷媒と熱交換し、二次冷媒から蒸発潜熱を得て蒸発する。熱交換器46で蒸発した一次冷媒ガスは圧縮機38に吸引されて圧縮される。圧縮機38は、例えば、スクリュ圧縮機、往復動圧縮機、遠心圧縮機等を用いることができる。
【0015】
二次冷媒サイクル36は、熱交換器46の下流側の二次冷媒路36aに受液器48が設けられ、熱交換器46で一次冷媒と熱交換して冷却され少なくとも一部が液化した二次冷媒は、受液器48に一時貯留され貯留中に気液分離する。受液器48内の二次冷媒液は液ポンプ50によって冷却負荷である冷却器52に送られる。冷却器52は、例えば、冷凍庫、冷蔵庫、フリーザ等に形成される冷却空間54を冷却するために設けられ、冷却空間54に貯蔵された食品などを冷凍又は冷蔵する。例えば、冷却器52は、ケーシングの内部に伝熱管が蛇行配置され、伝熱管の内部を流れる二次冷媒が伝熱管の外側雰囲気を冷却する。冷却器52で冷却空間54の冷却に供され少なくとも一部が蒸発した二次冷媒は、熱交換器46に戻り、熱交換器46で一次冷媒によって冷却され液化する。
【0016】
一次冷媒路34aを循環する一次冷媒は燃焼性を有するため、一次冷媒サイクル34は、一次冷媒路34a及び一次冷媒路34aに設けられた冷凍サイクル構成機器を含め、防爆エリア32の内側に設けられる。他方、二次冷媒サイクル36は、二次冷媒路36aを循環する二次冷媒が不燃性であるため、特に防爆エリア32の内側に設ける必要はない。
図1に示す例示的な実施形態では、受液器48及び液ポンプ50が防爆エリア32の内側に設けられているが、これらを防爆エリア32の外に設けてもよい。
【0017】
一実施形態では、防爆エリア32は、少なくとも一次冷媒サイクル34を含む範囲がエンクロージャによって囲まれることにより規定される。別な実施形態では、防爆エリア32は、少なくとも一次冷媒サイクル34を含む範囲が収容される機械室の隔壁によって規定される。これによって、防爆エリア32の内側に設けられた機器類のうち、電子設備などが発する電流や火花あるいは漏電などによる発火や引火などを防止できる。
【0018】
防爆エリア32の他の実施形態として、例えば、化学工場のように、エンクロージャ又は機械室が存在しない指定範囲として防爆エリアが規定される場合もある。
【0019】
次に、冷凍サイクルシステム30に設けられた燃焼防止装置10について説明する。燃焼防止装置10は、防爆エリア32における一次冷媒の漏洩を検出するための検出器12を備える。検出器12は、一次冷媒サイクル34から漏洩する一次冷媒を検出する。
図1に示す例示的な実施形態では、検出器12は防爆エリア32の内部に設けられているが、検出器12は、防爆エリア32に漏洩した一次冷媒ガスを検出できればよく、検出器12の設置場所は特に防爆エリア32の内部に限定されない。
【0020】
また、燃焼防止装置10は、受液器48から二次冷媒を防爆エリア32に導くための少なくとも1つのガス噴出管14と、検出器12の検出結果に基づいて、ガス噴出管14を介した受液器48から防爆エリア32への二次冷媒の供給状態を切り替えるための切替えバルブ18と、を備える。即ち、切替えバルブ18は、冷凍サイクルシステム30の正常運転時は閉じられ、検出器12が一次冷媒の漏れを検出した時開放される。切替えバルブ18が開くと、受液器48内の二次冷媒rがガス噴出管14から防爆エリア32内に供給される。
【0021】
不燃性の二次冷媒rが防爆エリア32内に噴出されることで、漏洩した一次冷媒の濃度を希釈し、発火濃度未満とすることができる。これによって、漏洩した一次冷媒の発火や引火などを防止できる。また、防爆エリア32に噴出する不活性ガスとして二次冷媒を用いるため、発火などの防止のために不活性ガスを供給するための新たな設備を必要としない。従って、燃焼防止装置としてのコスト及びスペースの増加を抑制できる。
【0022】
なお、燃焼防止装置10は、冷凍サイクルシステム30の新設時に、冷凍サイクルシステム30に付設することができると共に、既設の冷凍サイクルシステム30の改造時に、燃焼防止装置10を設けるようにしてもよい。
【0023】
一実施形態では、ガス噴出管14は防爆エリア32の内部に二次冷媒rを噴出可能な噴出口16を有する。検出器12が防爆エリア32内における一次冷媒の漏れを検出した時、切替えバルブ18が開放されて、噴出口16から防爆エリア32内に二次冷媒rが噴射される。これによって、防爆エリア32内の一次冷媒の濃度を希釈し、発火濃度未満とすることができ、漏洩した一次冷媒の発火や引火などを防止できる。
【0024】
一実施形態では、噴出口16は、ガス噴出管14の延在方向に沿って複数設けられる。この実施形態によれば、検出器12が一次冷媒の漏れを検出した時、複数の噴出口16から二次冷媒rを同時に噴出させることができ、これによって、防爆エリア32内に大量の二次冷媒rを一度に広範囲に噴射できる。従って、二次冷媒を防爆エリア32の全域に短時間で拡散できるため、防爆エリア32に大量の一次冷媒が漏れても、速やかに防爆エリア32内の一次冷媒の濃度を希釈し、発火濃度未満とすることができる。
【0025】
噴出口16は、例えば、ノズル又は噴霧器等を備えるようにしてもよい。これによって、噴出口16から噴出する二次冷媒の噴出範囲を広げることができる。
【0026】
一実施形態では、切替えバルブ18は、検出器12から送られるガス検出信号により自動的に開動作する電磁弁で構成されていてもよく、又は、二次冷媒の噴出圧を調整できるように圧力調整弁で構成されていてもよい。
【0027】
一実施形態では、噴出口16は、防爆エリア32内の下部領域に設けられる。一次冷媒として使用される燃焼性を有する炭化水素系の冷媒は空気より比重が大きいため、一次冷媒漏れが起こった場合防爆エリア32の下部領域に滞留する。この実施形態によれば、二次冷媒を一次冷媒の滞留エリアに重点して噴射できるため、防爆エリア32の下部領域に滞留した一次冷媒の濃度を効率的に希釈することができる。
【0028】
一般的に、受液器48の内部は大気圧より高圧であるため、受液器48内の二次冷媒は切替えバルブ18を開放するだけで、防爆エリア32に噴出する。特に、CO2は高温下で高圧となりやすいため、切替えバルブ18を開放するだけで容易に防爆エリア32に噴出する。受液器48内の圧力が高すぎるとき、ガス噴出管14に圧力調整器を設けるとよい。これによって、該圧力調整器を通る二次冷媒を所望の圧力に調整して噴出口16から噴出させることができる。
【0029】
一実施形態では、検出器12から送られる検出信号を受けて切替えバルブ18の動作を制御するコントローラを設けてもよい。例えば、このコントローラは、検出器12が一次冷媒の漏洩を検出した時、切替えバルブ18を開放するように制御する。切替えバルブ18は、開閉式の弁であってもよく、あるいは圧力調整又は流量調整が可能な弁であってもよい。切替えバルブ18が圧力調整又は流量調整が可能な弁であると、噴出口16から噴出する二次冷媒の圧力を最適な圧力又は流量に調整できる。
【0030】
別な実施形態では、上記コントローラ及び上記圧力調整器を備え、上記コントローラが上記圧力調整器を制御し、噴出口16から噴出する二次冷媒の圧力を最適な圧力に調整するようにしてもよい。
【0031】
一実施形態では、少なくとも1つのガス噴出管14は、受液器48の気相部gに連通する。比較例として、検出器12が一次冷媒サイクル34からの一次冷媒の漏れを検出し、その検出信号を受けて、受液器12内の二次冷媒をガス噴出管14を介して防爆エリア32に供給する場合に、受液器48内の液相の二次冷媒を供給すると、二次冷媒によってはガス噴出管14の出口から防爆エリア32や一次冷媒サイクル34に噴出して減圧したとき、二次冷媒液の一部が気化して蒸発潜熱を奪われ、氷結してしまう恐れがある。例えば、二次冷媒がCO2であるとき、受液器48内のCO2液を供給すると、ガス噴出管14の噴出口16で急冷しドライアイスになってしまうおそれがある。これを防ぐため、受液器48内の気相部gから二次冷媒ガスを供給する。これによって、噴出口16での氷結を防止できる。
【0032】
一実施形態では、
図1に示すように、防爆エリア32内の雰囲気を防爆エリア32の外部に排出するための送風機24を備える。防爆エリア32で一次冷媒の漏れが発生したとき、送風機24で防爆エリア32の一次冷媒を外部へ排出する。これによって、防爆エリア32の一次冷媒濃度を低下させることができるため、発火や引火などの発生を未然に防止できる。また、ガス噴出管14からの二次冷媒ガスの噴出と送風機24との稼働を併用することで、防爆エリア32に漏洩した一次冷媒の濃度を急速に希釈できる。また、本実施形態によれば、防爆エリア32で一次冷媒の漏れが発生した場合に、ガス噴出管14からの二次冷媒ガスの噴出によって希釈された一次冷媒を送風機24で外部へ排出することができるため、防爆エリアの外部での発火や引火などの発生を防止することができる。
図1に示す例示的な実施形態では、送風機24は、防爆エリア32を形成するエンクロージャ(筐体)又は機械室の隔壁に設けられている。
【0033】
一実施形態では、一次冷媒として、ISO817のクラス2L以上に属する燃焼性冷媒を用いる。例えば、プロパン、イソブタン、プロピレン等の炭化水素系冷媒を用いることができる。このようなGWPが低い冷媒を用いることで、地球環境を保全できると共に、冷凍サイクルシステム30に燃焼防止装置10を設けることで、防爆エリア32における一次冷媒の発火や引火などを防止できる。
【0034】
一実施形態では、二次冷媒として、燃焼性がISO817のクラス1の不燃性冷媒を用いる。例えば、CO2、N2、Ar等の不活性冷媒を用いることができる。これらの冷媒は不燃性であるため、一次冷媒の漏れが発生した時、これらの冷媒をガス噴出管14を介して防爆エリア32に供給することで、一次冷媒の発火や引火などを防止できる。また、一般的に、二次冷媒サイクル36の内部は大気圧より高圧であるため、一次冷媒の漏洩時に、ガス噴出管14から防爆エリア32へ圧力制御することなく容易に噴出できる。
【0035】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0036】
1)一態様に係る燃焼防止装置は、防爆エリア(32)に設けられ、燃焼性を有する一次冷媒が循環する一次冷媒サイクル(34)と、前記一次冷媒と熱的に結合された不燃性の二次冷媒(r)が循環する二次冷媒サイクル(36)と、を備える冷凍サイクルシステム(30)のための燃焼防止装置(10)であって、前記二次冷媒サイクル(36)は、前記防爆エリア(32)に設けられ、前記一次冷媒サイクル(34)の前記一次冷媒と前記二次冷媒(r)とを熱交換させるための熱交換器(46)と、前記熱交換器(46)の下流側に設けられた受液器(48)と、を備え、前記一次冷媒の漏洩を検出するための検出器(12)と、前記受液器(48)に連通することにより、前記受液器(48)から前記二次冷媒(r)を前記防爆エリア(32)に導くように構成された少なくとも1つのガス噴出管(14)と、前記検出器(12)の検出結果に基づいて、前記ガス噴出管(14)を介した前記受液器(48)から前記防爆エリア(32)への前記二次冷媒(r)の供給状態を切り替えるための切替えバルブ(18)と、を備える。
【0037】
このような構成によれば、上記検出器が防爆エリア内における一次冷媒サイクルからの一次冷媒の漏れを検出したとき、上記切替えバルブが作動して、上記ガス噴出管を介した前記受液器から前記防爆エリアへの二次冷媒の供給を開始させる。これによって、漏洩した一次冷媒の濃度を希釈し、発火濃度未満とすることで、漏洩した一次冷媒の発火や引火などを防止できる。また、防爆エリアに噴出する不活性ガスとして二次冷媒ガスを用いるため、発火などの防止のために不活性ガスを供給するための新たな設備を必要としない。従って、燃焼防止装置としてのコスト及びスペースの増加を抑制できる。
【0038】
2)別な態様に係る燃焼防止装置は、1)に記載の燃焼防止装置であって、前記少なくとも1つのガス噴出管(14)は、前記防爆エリア(32)内に前記二次冷媒(r)を噴出可能な噴出口(16)を有する。
【0039】
このような構成によれば、検出器が防爆エリア内における一次冷媒の漏れを検出したとき、上記切替えバルブが作動して、上記噴出口から防爆エリア内に二次冷媒を噴出できる。これによって、防爆エリア内の一次冷媒の濃度を希釈し、発火濃度未満とすることで、漏洩した一次冷媒の発火や引火などを防止できる。
【0040】
3)さらに別な態様に係る燃焼防止装置は、2)に記載の燃焼防止装置であって、前記噴出口(16)は、前記ガス噴出管(14)の延在方向に沿って複数設けられる。
【0041】
このような構成によれば、ガス噴出管の複数の噴出口から二次冷媒を同時に噴出させることにより、防爆エリア内に大量の二次冷媒を一度に広範囲に噴射できる。これによって、大量の一次冷媒の漏れが発生しても、速やかに防爆エリア内の一次冷媒の濃度を希釈し、発火濃度未満とすることができる。
【0042】
4)さらに別な態様に係る燃焼防止装置は、2)又は3)に記載の燃焼防止装置であって、前記噴出口(16)は、前記防爆エリア(32)内の下部領域に設けられる。
【0043】
このような構成によれば、一次冷媒が空気より重いとき、防爆エリア内の下部領域に溜まるため、二次冷媒を該下部領域に噴出することで、一次冷媒を速やかに希釈でき、発火濃度未満とすることができる。
【0044】
5)さらに別な態様に係る燃焼防止装置は、1)乃至4)の何れかに記載の燃焼防止装置であって、前記少なくとも1つのガス噴出管(14)は、前記受液器(48)の気相部(g)に連通する。
【0045】
このような構成によれば、ガス噴出管の凍結を防ぐことができる。つまり、検出器が一次冷媒サイクルからの一次冷媒の漏れを検出したのを受けて、受液器内の二次冷媒をガス噴出管を介して防爆エリアに供給する場合に、受液器内の液相の二次冷媒を供給すると、二次冷媒によっては供給先で蒸発し、蒸発潜熱により氷結してしまう場合がある。これを防ぐため、受液器内の気相の二次冷媒を供給することで、供給先での氷結を防止できる。
【0046】
6)さらに別な態様に係る燃焼防止装置は、1)乃至5)の何れかに記載の燃焼防止装置であって、前記防爆エリア(32)内の雰囲気を前記防爆エリア(32)の外部に排出するための送風機(24)を備える。
【0047】
このような構成によれば、防爆エリアで一次冷媒の漏れが発生したとき、上記送風機で防爆エリアの一次冷媒を外部へ排出することで、防爆エリアの一次冷媒濃度を低下させることができるため、発火などの発生を未然に防止できる。
【0048】
7)さらに別な態様に係る燃焼防止装置は、1)乃至6)の何れかに記載の燃焼防止装置であって、前記防爆エリア(32)は、前記冷凍サイクルシステム(30)のうち少なくとも前記一次冷媒サイクル(34)を含む範囲がエンクロージャによって囲まれることにより規定される。
【0049】
このような構成によれば、防爆エリアはエンクロージャ(筐体)によって形成されるため、防爆エリアの内側に設けられた機器類のうち、電子設備などが発する電流や火花あるいは漏電などによる発火や引火などを防止できる。
【0050】
8)さらに別な態様に係る燃焼防止装置は、1)乃至6)の何れかに記載の燃焼防止装置であって、前記防爆エリア(32)は、前記冷凍サイクルシステム(30)のうち少なくとも前記一次冷媒サイクル(34)を含む範囲が収容される機械室の隔壁によって規定される。
【0051】
このような構成によれば、防爆エリアは機械室によって形成されるため、防爆エリアの内側に設けられた機器類のうち、電子設備などが発する電流や火花あるいは漏電などによる発火、引火などを防止できる。
【0052】
9)さらに別な態様に係る燃焼防止装置は、1)乃至8)の何れかに記載の燃焼防止装置であって、前記一次冷媒は燃焼性がISO817のクラス2L以上に属する。
【0053】
このような構成によれば、一次冷媒がISO817のクラス2L以上に属する燃焼性冷媒であっても、本開示に係る燃焼防止装置の一態様によって防爆エリアにおける一次冷媒の発火などを防止できる。
【0054】
10)さらに別な態様に係る燃焼防止装置は、1)乃至9)の何れかに記載の燃焼防止装置であって、前記二次冷媒(r)は燃焼性がISO817のクラス1に属する。
【0055】
このような構成によれば、二次冷媒がISO817のクラス1に属する燃焼性の不燃性冷媒で構成されるため、一次冷媒の漏れが発生した時、不燃性の二次冷媒を一次冷媒路を含む防爆エリアに噴射し、一次冷媒の濃度を発火濃度未満にすることで、二次冷媒の発火や引火を防止できる。
【0056】
11)一態様に係る冷凍サイクルシステム(30)は、1)乃至10)の何れかに記載の燃焼防止装置(10)を備える。
【0057】
このような構成によれば、冷凍サイクルシステムが上述の燃焼防止装置を備えるため、一次冷媒サイクルから一次冷媒の漏れが発生したとき、二次冷媒サイクルの受液器から防爆エリアへの二次冷媒の供給を開始できる。これによって、漏洩した一次冷媒の濃度を希釈し、発火濃度未満とすることで、漏洩した一次冷媒の発火や引火などを防止できる。また、防爆エリアに噴出する不活性ガスとして二次冷媒ガスを用いるため、発火などの防止のために新たに不活性ガスを供給するための設備を必要としない。従って、燃焼防止装置としてのコスト及びスペースの増加を抑制できる。
【符号の説明】
【0058】
10 燃焼防止装置
12 検出器
14 ガス噴出管
16 噴出口
18 切替えバルブ
20 圧力調整器
22 コントローラ
24 送風機
30 冷凍サイクルシステム
32 防爆エリア
34 一次冷媒サイクル
34a 一次冷媒路
36 二次冷媒サイクル
36a 二次冷媒路
38 圧縮機
40 凝縮器
42 冷却媒体路
44 膨張弁
46 熱交換器
48 受液器
50 液ポンプ
52 冷却器
54 冷却空間
g 気相部
r 二次冷媒
w 冷却媒体