(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】変位センサ及び形状測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240702BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B11/24 K
(21)【出願番号】P 2020194314
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰秀
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-020788(JP,A)
【文献】特開2005-274429(JP,A)
【文献】特開昭62-172203(JP,A)
【文献】特開平07-294214(JP,A)
【文献】特開2006-138816(JP,A)
【文献】特開平07-019811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の変位方向に変位可能なワークに
対して、前記変位方向と平行な照射方向に光を照射する照射部と、
前記照射部から照射された光の前記ワークからの反射光を受光する
受光面を有する受光部と、
前記ワークからの反射光を受けて、前記受光部の
前記受光面に縞を生成する生成手段
が設けられた縞生成面を有する縞生成部と、を備え、
前記縞生成
面及び前記受光
面は、前記変位方向に対して平行になるように、又は前記変位方向の虚像に対して平行になるように、配置されている、
変位センサ。
【請求項2】
前記縞生成部は、前記生成手段としての複数の開口が形成された回折格子を含み、前記開口を通過した前記反射光によって前記受光面に縞を生成する、
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記縞生成部は、前記生成手段としての複数の段差が形成された基板を含み、前記段差を透過する前記反射光によって前記受光面に縞を生成する、
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記縞生成部は、所定間隔で配置された複数の前記生成手段を有し、
前記縞生成
面と
、前記照射部
が照射する光の光軸を含む照射面との間の距離は、前記縞生成部と前記受光面との間の距離と同じ長さである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記縞生成部は、前記生成手段として、前記変位方向に沿って隣接するように一列に配置された複数の結像素子を有する、
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項6】
前記縞生成部は、
前記縞生成面が前記変位方向に対して平行になるように、又は前記虚像に対して平行になるように配置された異なる複数の前記生成手段を有し、
前記複数の前記生成手段の各々の配置間隔が、それぞれ異なる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項7】
前記受光部は、前記反射光を検出するフォトダイオードが複数配列されたフォトダイオードアレイを有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項8】
前記生成手段は、前記変位方向に沿って隣接する生成手段同士の間隔がランダムになるように配置されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項9】
前記ワークからの反射光を前記縞生成部へ向けて反射させる反射部材を更に備え、
前記縞生成
面及び前記受光
面は、前記反射部材から見て前記変位方向の虚像に対して平行になるように、配置されている、
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項10】
前記照射部は、前記ワークに対してライン状の光であるライン光を照射し、
前記縞生成部は、直交する2軸での位置を検出可能な前記受光面に縞を生成させる、
請求項1から9のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項11】
所定の変位方向に変位可能なワークに
対して、前記変位方向と平行な照射方向に光を照射する照射部と、前記照射部から照射された光の前記ワークからの反射光を受光する
受光面を有する受光部と、前記ワークからの反射光を受けて、前記受光部の
前記受光面に縞を生成する生成手段
が設けられた縞生成面を有する縞生成部と、を備える変位センサと、
前記受光部の出力に基づいて、ワークの形状を演算する演算部と、
を有し、
前記縞生成
面及び前記受光
面は、前記変位方向に対して平行になるように、又は前記変位方向の虚像に対して平行になるように、配置されている、
形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサ及び形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの変位を検出するための変位センサとして、三角測量式センサが利用されている。三角測量式センサでは、まず、照射部の光源から照射された光が、ワークで反射される。ワークからの反射光は、結像レンズによって、受光部(例えば撮像素子)の受光面(撮像面)に結像される。
【0003】
上記の三角測量式センサでは、受光部が受光する光分布にムラが発生し、位置変動が生じるおそれがある。そこで、光分布のムラを抑制するために、下記の特許文献1に開示された技術の適用が検討されうる。特許文献1には、光源からの光を格子に照射して縞を発生させ、縞の位相を受光部で検出した結果から、光源の位置を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の技術を適用した場合には、ワークの位置によって、受光部が検出する縞の周期が変化する。このため、ワークに変位すると、受光部の縞を検出する検出素子の周期と、縞の周期とにずれが発生してしまい、検出精度が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ワークが変位しても受光部で検出する縞の周期の変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様においては、所定の変位方向に変位可能なワークに光を照射する照射部と、前記照射部から照射された光の前記ワークからの反射光を受光する受光部と、前記ワークからの反射光を受けて、前記受光部の受光面に縞を生成する生成手段を有する縞生成部と、を備え、前記縞生成部及び前記受光部は、前記変位方向に対して平行になるように、又は前記変位方向の虚像に対して平行になるように、配置されている、変位センサを提供する。
【0008】
また、前記縞生成部は、前記生成手段としての複数の開口が形成された回折格子を含み、前記開口を通過した前記反射光によって前記受光面に縞を生成することとしてもよい。
【0009】
また、前記縞生成部は、前記生成手段としての複数の段差が形成された基板を含み、前記段差を透過する前記反射光によって前記受光面に縞を生成することとしてもよい。
【0010】
また、前記縞生成部は、所定間隔で配置された複数の前記生成手段を有し、前記縞生成部と前記照射部の照射面との間の距離は、前記縞生成部と前記受光面との間の距離と同じ長さであることとしてもよい。
【0011】
また、前記縞生成部は、前記生成手段として、前記変位方向に沿って隣接するように一列に配置された複数の結像素子を有することとしてもよい。
【0012】
また、前記縞生成部は、前記変位方向に対して平行になるように、又は前記虚像に対して平行になるように配置された異なる複数の前記生成手段を有し、前記複数の前記生成手段の各々の配置間隔が、それぞれ異なることとしてもよい。
【0013】
また、前記受光部は、前記反射光を検出するフォトダイオードが複数配列されたフォトダイオードアレイを有することとしてもよい。
【0014】
また、前記生成手段は、前記変位方向に沿って隣接する生成手段同士の間隔がランダムになるように配置されていることとしてもよい。
【0015】
また、前記ワークからの反射光を前記縞生成部へ向けて反射させる反射部材を更に備え、前記縞生成部及び前記受光部は、前記反射部材から見て前記変位方向の虚像に対して平行になるように、配置されていることとしてもよい。
【0016】
また、前記照射部は、前記ワークに対してライン状の光であるライン光を照射し、前記縞生成部は、直交する2軸での位置を検出可能な前記受光面に縞を生成させることとしてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様においては、所定の変位方向に変位可能なワークに光を照射する照射部と、前記照射部から照射された光の前記ワークからの反射光を受光する受光部と、前記ワークからの反射光を受けて、前記受光部の受光面に縞を生成する生成手段を有する縞生成部と、を備える変位センサと、前記受光部の出力に基づいて、ワークの形状を演算する演算部と、を有し、前記縞生成部及び前記受光部は、前記変位方向に対して平行になるように、又は前記変位方向の虚像に対して平行になるように、配置されている、形状測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ワークが変位しても受光部で検出する縞の周期の変化を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【
図2】ワークWが変位する際の縞の周期d
Dを説明するための模式図である。
【
図3】比較例に係る変位センサ110を説明するための模式図である。
【
図4】形状測定装置1の構成を説明するための模式図である。
【
図5】第2の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【
図6】第3の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【
図7】第4の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【
図8】第5の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【
図9】第6の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【
図10】第7の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【
図11】第8の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【
図12】第9の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
(変位センサの構成)
第1の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図1を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、第1の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。変位センサ10は、ワークWに光を照射して、ワークWまでの距離(変位)を測定する。変位センサ10は、三角測量式センサである。変位センサ10は、
図1に示すように、照射部20と、受光部30と、縞生成部40とを有する。
【0022】
照射部20は、ワークWに光を照射する。例えば、照射部20は、下方へ向けて直線状の光をワークWに照射する。ワークWは、所定の変位方向として上下方向に変位する。照射部20は、照射面26に沿う上下方向に移動して変位するワークWに対して、光を照射することになる。照射面26は、照射部20が照射する光の光軸を含む面である。
【0023】
照射部20は、光源22と、レンズ24とを有する。光源22は、所定波長のレーザ光を出射する。レンズ24は、例えばコリメータレンズやロッドレンズであり、光源22が出射した光を、直線状の光としてワークWに照射する。照射部20から照射された光は、ワークW(具体的には、照射点P)で反射される。ワークWからの反射光は、
図1に示すように、散乱する。
【0024】
受光部30は、照射部20から照射された光のワークWからの反射光を受光する。受光部30は、反射光(具体的には、縞生成部40が生成する反射光による縞)を受光する受光面32を有する。受光面32は、変位センサ10からワークWまでの距離(変位)に対応する位置に、反射光を受光する。このため、受光面32において反射光が受光された位置を特定できれば、ワークWの変位を検出する。受光面32は、ワークWの変位方向(上下方向)に対して平行になるように、配置されている。
受光部30は、例えば縞を撮像するイメージセンサである。一例として、受光部30は、CMOS受光素子を含む。
【0025】
縞生成部40は、一の位置に位置するワークWからの反射光を受けて、受光部30の受光面32に縞を生成する生成手段を有する。例えば、縞生成部40は、複数の反射光(
図1では3つの反射光)を受けて、受光面32の複数の位置に干渉縞を生成する。受光面32に縞を生成することで、光分布のムラを抑制できるので、ワークWの変位を適切に検出可能となる。縞は、受光面32に所定の周期d
Dで生成される。
【0026】
図2は、ワークWが変位する際の縞の周期d
Dを説明するための模式図である。
図2(a)には、位置X1に位置するワークWが示され、
図2(b)には、位置X2に位置するワークWが示されている。
図2(a)及び
図2(b)から、ワークWが位置X1から位置X2へ移動すると、受光面32における縞の位置が移動する。一方で、ワークWが位置X1から位置X2へ移動しても、縞の周期d
Dは同じ大きさである。
【0027】
縞生成部40は、縞を生成する生成手段として、ここでは回折格子42を有する。回折格子42には、
図1に示すように、所定間隔で複数の開口44が配列されている。開口44が、ワークWからの反射光を透過させる透過部であり、回折格子42において開口44以外の部分が、反射光を透過させない非透過部である。回折格子42は、回折を利用して干渉縞を生成する。
【0028】
本実施形態の縞生成部40は、
図1に示すように、回折格子42がワークWの変位方向(上下方向)に対して平行になるように、配置されている。別言すれば、縞生成部40は、回折格子42が照射部20の照射面26と平行になるように、配置されている。このため、回折格子42は、受光部30の受光面32とも平行になっている。ここでは、縞生成部40(回折格子42)と照射点P(照射面26)の間の距離uと、縞生成部40と受光面32の間の距離vは、異なる大きさである。
【0029】
第1の実施形態において、縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向に対して平行に配置されているため、ワークWが変位しても、ワークWの照射点Pと縞生成部40の間の距離uが変化しない。このため、ワークWが変位しても、受光部30の受光面32に生成される縞の周期が変化しない。
【0030】
図3は、比較例に係る変位センサ110を説明するための模式図である。変形例に係る変位センサ110は、照射部120と、受光部130と、縞生成部140とを有する。照射部120の構成は、
図1に示す変位センサ10の照射部20と似た構成である。一方で、受光部130及び縞生成部140のワークWに対する配置は、変位センサ10の受光部30及び縞生成部40のワークWに対する配置とは異なる。すなわち、受光部130及び縞生成部140は、ワークWの変位方向に対して直交するように配置されている点で、ワークWの変位方向に対して平行に配置された受光部30及び縞生成部40とは異なる。
【0031】
比較例に係る構成の場合には、受光面132に生成される縞134の周期d
Dは、下記の式(1)で示される。
式(1)において、uは照射点Pと縞生成部140の間の距離であり、vは縞生成部140と受光面132との間の距離であり、d
Gは回折格子142の格子定数である。
【0032】
比較例において、ワークWが変位方向(上下方向)に変位すると、ワークWの照射点Pと縞生成部140の間の距離uが変化するため、式(1)から明らかなように縞134の周期dDが変化してしまう。この結果、受光面132に生成される縞134の周期と、受光面132に配置された検出素子の周期にずれが生じてしまい、縞134を精度良く検出できない。
【0033】
これに対して、第1の実施形態の変位センサ10においては、ワークWが変位方向に変位しても、ワークWの照射点Pと縞生成部40との間の距離uは変化しない。また、縞生成部40と受光面32の間の距離vも変化しない。このため、
図2に示すように、ワークWが変位しても、受光面32に生成される縞の周期も変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出素子の周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
【0034】
(形状測定装置の構成)
上述した構成の変位センサ10を含む形状測定装置1の構成について、
図4を参照しながら説明する。
【0035】
図4は、形状測定装置1の構成を説明するための模式図である。形状測定装置1は、変位センサ10の検出結果に基づいて、ワークWの形状を測定する装置である。形状測定装置1は、
図4に示すように、変位センサ10と、制御装置90とを含む。
【0036】
変位センサ10の構成は、前述した
図1に示す構成であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
制御装置90は、変位センサ10(具体的には、照射部20及び受光部30)の動作を制御する。また、制御装置90は、例えば、ワークWを変位方向(上下方向)に移動させる駆動源を制御し、ワークWを移動させうる。制御装置90は、記憶部92と、制御部94とを含む。
【0037】
記憶部92は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部92は、制御部94によって実行可能なプログラムや各種データを記憶する。例えば、記憶部92は、変位センサ10が検出した結果を記憶する。
【0038】
制御部94は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部94は、記憶部92に記憶されたプログラムを実行することにより、変位センサ10の動作を制御する。
制御部94は、照射部20の光源22によるワークWへの光の照射を制御する。また、制御部94は、受光部30の出力を取得し、ワークWの形状を演算する。すなわち、制御部94は、変位センサ10の受光部30の出力に基づいて、ワークWの形状を演算する演算部として機能する。
【0039】
(第1の実施形態における効果)
第1の実施形態に係る変位センサ10においては、受光部30及び縞生成部40が、ワークWの変位方向に対して平行になるように配置されている。
これにより、ワークWが変位しても、ワークWの照射点Pと縞生成部40との間の距離uと、縞生成部40と受光部30の間の距離vは変化しないので、受光部30の受光面32に生成される縞の周期も変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出素子の周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
【0040】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図5を参照しながら説明する。
第1の実施形態の縞生成部40の生成手段が回折格子42であったのに対して、第2の実施形態では、生成手段が段差である点で相違する。
【0041】
図5は、第2の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。第2の実施形態の変位センサ10は、
図5に示すように、照射部20と、受光部30と、縞生成部40とを有する。第2の実施形態の照射部20及び受光部30の構成は、第1の実施形態と同様であるので、以下では説明を省略する。
【0042】
縞生成部40は、開口が形成された回折格子42の代わりに、複数の段差52が形成された基板50を有する。基板50は、透明体であり、ワークWからの反射光を透過させる。段差52は、ここでは基板50の凸部である。基板50は、ワークWの変位方向(別言すれば、照射面26)と平行になるように配置されている。縞生成部40によって、受光面32には周期d
Dの縞が生成される。
なお、
図5では、説明の便宜上、ワークWが位置X1に位置する際の縞の周期が示されているが、ワークWが変位しても、縞の周期は変化しない。
【0043】
縞生成部40は、基板50を設けることで、段差52を透過する反射光によって受光面32に縞を生成する。この際、基板50の段差57の部分を透過する反射光と、段差57以外の部分を透過する反射光とに、位相差が生じ、反射光の干渉が引き起こされる。段差57の厚さは、照射部20が照射する光の波長をλとした場合に、反射光の位相差がλ/2になるように設定されることが望ましい。
【0044】
第2の実施形態では、段差52が形成された基板50をワークWの変位方向に対して平行に配置することで、第1の実施形態と同様に、ワークWが変位しても、受光面32に生成される縞の周期が変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出素子の周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
【0045】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図6を参照しながら説明する。
第1の実施形態では、縞生成部40と照射点Pの間の距離uと、縞生成部40と受光面32の間の距離vとが異なる長さであったのに対して、第4の実施形態では、2つの距離が同じ長さである点で相違する。
【0046】
図6は、第3の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。第3の実施形態の変位センサ10は、
図6に示すように、照射部20と、受光部30と、縞生成部40とを有する。第3の実施形態の照射部20及び受光部30の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0047】
第3の実施形態の縞生成部40は、所定間隔で配置された複数の生成手段を有する。例えば、縞生成部40は、生成手段として、回折格子42において所定間隔で配置された複数の開口46を有する。ここでは、複数の開口46が、一定の周期gで配置されているものとする。
【0048】
縞生成部40は、照射部20の照射点Pと受光面32との中間位置に位置する。すなわち、縞生成部40と照射点Pの間の距離uは、縞生成部40と受光面32の間の距離vと同じ長さである。
【0049】
上記のように、複数の開口46が一定の周期gで配置され、かつ、距離u及び距離vが同じ長さである場合には、受光面32に周期gの縞が生成される。すなわち、開口46の周期と、縞の周期gとが、同じ大きさとなる。これにより、開口46の間隔を小さくすることで、受光面32に細かな縞を生成できる。
【0050】
第3の実施形態でも、縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向と平行になるように配置されている。このため、ワークWが変位方向に変位しても、縞の周期gが変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出沿いの周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
【0051】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図7を参照しながら説明する。
第1の実施形態の縞生成部40の生成手段が回折格子42であったのに対して、第4の実施形態では、生成手段が結像素子である点で相違する。結像素子は、光学系を利用して像を得る結像機能を有する素子である。
【0052】
図7は、第4の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。第4の実施形態の変位センサ10は、
図7に示すように、照射部20と、受光部30と、縞生成部40とを有する。第4の実施形態の照射部20及び受光部30の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
縞生成部40は、生成手段として、互いに隣接するように配置された複数の結像素子55を有する。具体的には、
図7に示すように、3つの結像素子55は、ワークWの変位方向に対して平行になるように配置されている。これにより、ワークWが変位しても、3つの結像素子55によって、受光面32に縞を生成できる。なお、上記では、結像素子55が3つ設けられていることとしたが、これに限定されず、結像素子55が4つ以上設けられていてもよい。
【0054】
複数の結像素子55は、一例として集光レンズである。集光レンズを用いる場合には、受光面32で受光される光のパワーが大きくなる。なお、上記では、結像素子55が集光レンズであることとしたが、これに限定されない。例えば、結像素子55は、フレネルレンズ等の他のレンズであってもよいし、フレネルゾーンプレート等の回折光学素子であってもよい。これにより、厚みが小さい結像素子55を配置できる。
【0055】
第4の実施形態でも、縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向と平行になるように配置されている。このため、ワークWが変位方向に変位しても、縞の周期が変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出沿いの周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
【0056】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図8を参照しながら説明する。
第1の実施形態では、縞生成部40は一つの回折格子42を有していたのに対して、第5の実施形態では、複数の回折格子が設けられている点で相違する。
【0057】
図8は、第5の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。第5の実施形態の変位センサ10は、
図8に示すように、照射部20と、受光部30と、縞生成部40とを有する。第5の実施形態の照射部20の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0058】
第3の実施形態の縞生成部40は、生成手段が複数形成された回折格子を複数有する。例えば、縞生成部40は、第1回折格子60と、第2回折格子62と、第3回折格子64とを有する。第1回折格子60、第2回折格子62及び第3回折格子64は、ワークWの変位方向と平行になるように、一列に配置されている。
【0059】
図8では簡略して図示されているが、第1回折格子60、第2回折格子62及び第3回折格子64には、前述した回折格子42と同様に、複数の開口が形成されている。第1回折格子60は、第1周期で配列された開口を有し、第2回折格子62は、第2周期で配列された開口を有し、第3回折格子64は、第3周期で配列された開口を有する。第1周期、第2周期及び第3周期の大きさは、それぞれ異なる。
【0060】
受光部30は、縞生成部40の複数の回折格子に対応した複数の受光面を有する。例えば、受光部30は、第1受光面36と、第2受光面37と、第3受光面38とを有する。第1受光面36、第2受光面37及び第3受光面38は、ワークWの変位方向と平行になるように、一列に配置されている。
【0061】
第1受光面36には、第1回折格子60による縞が生成され、第2受光面37には、第2回折格子62による縞が生成され、第3受光面38には、第3回折格子64による縞が生成される。第1受光面36、第2受光面37及び第3受光面38に生成される縞の周期は、それぞれ異なる。これにより、第1受光面36、第2受光面37及び第3受光面38は、異なる波長の信号を出力可能となる。そして、異なる波長の信号を出力することで、ワークWの絶対位置を求めることが可能となる。
【0062】
第5の実施形態でも、縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向と平行になるように配置されている。このため、ワークWが変位方向に変位しても、縞の周期が変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出沿いの周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
【0063】
<第6の実施形態>
第6の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図9を参照しながら説明する。
第1の実施形態では、受光部30がイメージセンサを有することとしたのに対して、第6の実施形態では、受光部30が複数のフォトダイオードを並べたフォトダイオードアレイを有する点で相違する。
【0064】
図9は、第6の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。第6の実施形態の変位センサ10は、
図9に示すように、照射部20と、受光部30と、縞生成部40とを有する。第6の実施形態の照射部20及び縞生成部40は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
第6の実施形態の受光部30は、複数のフォトダイオード35a~35dを並べたフォトダイオードアレイ34を有する。フォトダイオード35a~35dは、光を検出する光検出器である。フォトダイオード35a~35dは、照射面26と平行になるように、一列に配置されている。また、フォトダイオード35a~35dは、交互に配置されている。
【0066】
フォトダイオード35a~35dは、アナログ出力として電流を出力する。このため、受光部30の応答性が速く、高速に検出可能となる。また、受光部30にフォトダイオード35a~35dを用いる場合には、イメージセンサを用いる場合に比べて、発熱量を抑制できる。
【0067】
受光部30は、フォトダイオード35a及びフォトダイオード35cの出力の差分(変位)と、フォトダイオード35b及びフォトダイオード35dの出力の差分(変位)とを求めることで、ワークWの変位に伴う縞の変位量を求めることができる。なお、上記の差分が大きくなることで、変位量も大きくなる。
【0068】
第6の実施形態でも、縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向と平行になるように配置されている。このため、ワークWが変位方向に変位しても、縞の周期が変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出沿いの周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
【0069】
<第7の実施形態>
第7の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図10を参照しながら説明する。
第1の実施形態では、縞生成部40の複数の生成手段(回折格子42の開口)が所定周期で配置されていたのに対して、第7の実施形態では、隣接する生成手段同士の間隔がランダムになるように配置されている点で相違する。
【0070】
図10は、第7の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。第7の実施形態の変位センサ10は、
図10に示すように、照射部20と、受光部30と、縞生成部40とを有する。第7の実施形態の照射部20及び受光部30は、第1の実施形態と同様である。
【0071】
第7の実施形態の縞生成部40は、開口48同士の間隔がランダムとなるように配置された回折格子42を有する。複数の開口48のランダム配置としては、例えば、M系列符号(Maximum length sequence)という擬似ランダム符号を適用可能である。M系列符号は、n段のシフトレジスタと加算によって算出される系列のうち最も長い系列によって成り立っている。
ワークWの位置毎に、受光面32での3つの縞の受光位置が異なり、重複しない。
【0072】
図4の形状測定装置1の制御装置90は、受光部30が出力する3つの縞の受光位置と、予め記憶部92に記憶している受光位置のパターンとをマッチングして、ワークWの変位を特定する。
【0073】
記憶部92は、受光面32における縞の受光位置(具体的には、3つの縞の受光位置)を示すパターンを複数記憶している。記憶部92が記憶している複数の記憶パターンは、予め測定されたものであり、3つの受光位置が重複しないパターンである。
【0074】
制御部94は、受光部30から、3つの縞の受光位置を取得する。制御部94は、取得した3つの受光位置が、記憶部92に記憶された複数の記憶パターンのいずれの記憶パターンに一致するかを判定する。制御部94は、一致度が最も大きい記憶パターンを選択し、当該記憶パターンによって変位を検出する。
【0075】
第7の実施形態でも、縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向と平行になるように配置されている。このため、ワークWが変位方向に変位しても、縞の周期が変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出沿いの周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
また、第7の実施形態の場合には、受光面32の縞の受光位置が重複しないように複数の結像手段がランダムに配置されることで、ワークWの変位を精度良く判別できる。
【0076】
なお、
図10に示すワークWが透明体である場合には、上述した構成を採用することで、透明体の測定点が複数あっても、複数の測定点を分離できる。例えば、
図10の位置X1が透明体の裏面であり、位置X2が透明体の表面である場合には、透明体の表面及び裏面を分離して識別できる。
【0077】
<第8の実施形態>
第8の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図11を参照しながら説明する。
【0078】
図11は、第8の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。変位センサ10は、
図11に示すように、照射部20、受光部30及び縞生成部40に加えて、反射部材70を有する。
【0079】
反射部材70は、ワークWからの反射光を縞生成部40へ向けて反射させる部材である。反射部材70は、例えばミラーであり、ワークWの変位方向に対して交差するように配置されている。反射部材70は、ワークWの変位方向において、照射部20の近くに配置されている。
【0080】
第1の実施形態の縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向に対して平行になるように配置されているのに対して、第8の実施形態の縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向に対して交差するように配置されている。一方で、第8の実施形態の縞生成部40及び受光部30は、ワークWの変位方向の虚像に対して平行になるように配置されている。
【0081】
図11には、ワークWの変位方向の虚像75が示されている。虚像75は、反射部材70から見てワークWの変位方向(上下方向)に対称な位置の仮想の像である。縞生成部40及び受光部30は、それぞれ虚像75と平行になるように配置されている。また、縞生成部40及び受光部30は、上下方向において反射部材70とほぼ同じ位置に配置されている。
【0082】
第8の実施形態では、縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向の虚像75と平行になるように配置されているため、ワークWが変位方向に変位しても、縞の周期が変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出沿いの周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
【0083】
また、第8の実施形態の場合には、反射部材70を設けたことによって、ワークWから変位センサ10を離して位置させやすくなる。すなわち、ワークWの変位方向において、第1の実施形態の場合には縞生成部40及び受光部30がワークWの近くに位置しているのに対して、第8の実施形態の場合には縞生成部40、受光部30及び反射部材70がワークWから離れて位置している。
【0084】
<第9の実施形態>
第9の実施形態に係る変位センサ10の構成について、
図12を参照しながら説明する。
第1の実施形態の照射部20は、ワークWに対してスポット光を照射していたのに対して、第9の実施形態では、ライン状の光であるライン光をワークWに対して照射する点で相違する。
【0085】
図12は、第9の実施形態に係る変位センサ10の構成を説明するための模式図である。
図12では、太線がライン光を示している。ここでは、ライン光が、ワークWの幅よりも広くなるように、ワークWに対して照射されている。縞生成部40は、ワークWからの反射光(以下、反射ライン光)を受けて、受光部30に受光面32に縞を生成する。縞生成部40は、縞の生成手段として、例えば前述した回折格子42や段差52を有する。
【0086】
受光部30の受光面32は、縞生成部40によって生成される縞の、直交する2軸方向での位置を検出可能である。受光面32には、例えば、直交する2軸方向での位置を検出可能なエリアセンサが設けられている。
【0087】
第9の実施形態でも、縞生成部40及び受光部30が、ワークWの変位方向と平行になるように配置されている。このため、ワークWが変位方向に変位しても、縞の周期が変化しない。この結果、縞の周期と、受光面32の検出沿いの周期とにずれが生じないので、ワークWが変位しても縞を精度良く検出できる。
また、第9の実施形態の場合には、ワークWに対してライン光を照射することで、一括でワークW全体の変位を検出可能となる。
【0088】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0089】
1 形状測定装置
10 変位センサ
20 照射部
30 受光部
32 受光面
34 フォトダイオードアレイ
35a~35d フォトダイオード
40 縞生成部
42 回折格子
52 段差
55 結像素子
70 反射部材
75 虚像
94 制御部
W ワーク