(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20240703BHJP
【FI】
H01L33/62
(21)【出願番号】P 2020154581
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】堀川 裕太
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-535237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0074451(US,A1)
【文献】特開2019-153662(JP,A)
【文献】特開2011-249807(JP,A)
【文献】特開2014-060371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0212117(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101151739(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀又は銀合金を含み、第1方向に並んで配置された第1リード及び第2リードと、
前記第1リード及び前記第2リードを保持する樹脂部材であって、前記第1方向に延びかつ互いに対向する第1側壁及び第2側壁と、前記第1方向と直交する第2方向に延びかつ互いに対向する第3側壁及び第4側壁とに規定される凹部を有する樹脂部材と、
前記凹部内に配置された発光素子と、
前記凹部内に配置され、前記発光素子を覆う透光性部材と、を備え、
上面視において、前記第2リードと対向する前記第1リードの外縁は、前記第1方向に対して傾く第3方向に延び前記第1側壁に一部が覆われる第1A外縁部を有し、
上面視において、前記第1A外縁部と対向する前記第2リードの外縁は、前記第3方向に延びる第2A外縁部と、前記第2方向に延び前記第1側壁に一部が覆われる第2B外縁部と、を有し、
前記凹部内において、前記第1A外縁部から前記第2B外縁部までの前記第1方向における距離が前記第1側壁に近づくにつれて長くなる発光装置。
【請求項2】
前記凹部内において、前記第1A外縁部から前記第2B外縁部までの前記第1方向における最大距離が前記第1A外縁部から前記第2B外縁部までの前記第1方向における最小距離の1.5倍以上3倍以下である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1方向に対して前記第3方向は45°以上80°以下傾く
請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、前記第1リード上に位置する第1発光素子と、前記第2リード上に位置する第2発光素子と、を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1発光素子と前記第2発光素子の間に保護素子が配置される請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1A外縁部及び前記第2B外縁部を覆う反射樹脂を備える請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記反射樹脂はジメチル系シリコーン樹脂を含み、前記透光性部材はフェニル系シリコーン樹脂を含む
請求項6に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の発光素子を用いた発光装置は高い発光効率を容易に得られるため、ディスプレイ等のバックライトおよび照明用灯具を含む多くの機器で用いられている。特許文献1には、正負一対のリードと凹部を有する樹脂部材と、樹脂部材の凹部の底面に載置される発光素子と、を備える発光装置が開示されている。このような発光装置は、信頼性のより一層の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に係る実施形態は、信頼性を向上させることができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態の発光装置は、銀又は銀合金を含み、第1方向に並んで配置された第1リード及び第2リードと、前記第1リード及び前記第2リードを保持する樹脂部材であって、前記第1方向に延びかつ互いに対向する第1側壁及び第2側壁と、前記第1方向と直交する第2方向に延びかつ互いに対向する第3側壁及び第4側壁とに規定される凹部を有する樹脂部材と、前記凹部内に配置された発光素子と、前記凹部内に配置され、前記発光素子を覆う透光性部材と、を備え、上面視において、前記第2リードと対向する前記第1リードの外縁は、前記第1方向に対して傾く第3方向に延び前記第1側壁に一部が覆われる第1A外縁部を有し、上面視において、前記第1A外縁部と対向する前記第2リードの外縁は、前記第3方向に延びる第2A外縁部と、前記第2方向に延び前記第1側壁に一部が覆われる第2B外縁部と、を有し、前記凹部内において、前記第1A外縁部から前記第2B外縁部までの前記第1方向における距離が前記第1側壁に近づくにつれて長くなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態の発光装置によれば、信頼性を向上させることができる発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態1に係る発光装置の模式上面図である。
【
図2】実施形態1に係る発光装置の模式下面図である。
【
図3】実施形態1に係るリード及び樹脂部材の模式上面図である。
【
図4A】実施形態1に係る発光装置の変形例の模式上面図である。
【
図4B】実施形態1に係る発光装置の変形例の模式上面図である。
【
図5】実施形態2に係る発光装置の模式上面図である。
【
図6】実施形態2に係るリード及び樹脂部材の模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照しながら、実施形態の発光装置を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本開示による発光装置は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。以下に説明する各実施形態は、あくまでも例示であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の組み合わせが可能である。
【0009】
図面が示す構成要素の寸法、形状等は、分かり易さのために誇張されている場合があり、実際の発光装置における寸法、形状及び構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。例えば
図1Aおよび
図5では、透光性部材40を省略して図示する。また、
図1Bではワイヤー60を省略して図示する。
【0010】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本明細書において「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。さらに、「上」と表現する位置関係は接している場合と接していないが上方に位置している場合も含む。
【0011】
<実施形態1>
本実施形態1に係る発光装置1000を
図1Aから
図4Bに基づいて説明する。発光装置1000は、リード10と、樹脂部材20と、発光素子30と、透光性部材40と、を備える。リード10は、銀又は銀合金を含み、第1方向に並んで配置された第1リード11及び第2リード12を備える。樹脂部材20は、第1リード11及び第2リード12を保持する。樹脂部材20は第1方向に延びかつ互いに対向する第1側壁21及び第2側壁22と、第1方向と直交する第2方向に延びかつ互いに対向する第3側壁23及び第4側壁24と、に規定される凹部25を有する。発光素子30は、樹脂部材20の凹部25内に配置される。透光性部材40は、凹部25内に配置され、発光素子30を覆う。上面視において、第2リード12と対向する第1リード11の外縁は、第1方向に対して傾く第3方向に延びる第1A外縁部11Aを有する。第1A外縁部11Aの一部は第1側壁21に覆われる。上面視において、第1A外縁部11Aと対向する第2リード12の外縁は、第2A外縁部12Aと第2B外縁部12Bとを有する。第2A外縁部12Aは、第3方向に延びる。第2B外縁部12Bは、第2方向に延び第1側壁21に一部が覆われる。凹部25内において、第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなる。
図1Aにおいて、第1方向とはX方向であり、第2方向とはY方向のことである。本明細書において、リード10の下面側からリードの上面側に向かう方向を+Z方向と呼び、リード10の上面側からリードの下面側に向かう方向を-Z方向と呼ぶことがある。
【0012】
樹脂部材20と透光性部材40との線膨張率差や樹脂部材20及び/又は透光性部材40の劣化等によって、第1側壁21と透光性部材40との間に隙間が生じる場合がある。第1側壁21と透光性部材40との間に隙間が生じた場合には、第1側壁21と透光性部材40の隙間から水分が侵入する恐れがある。銀又は銀合金を含むリード10に水分が付着した場合には、銀のマイグレーションが発生し発光装置が短絡する恐れがある。本実施形態においては、凹部25内において、第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなっている。つまり、第1側壁21に近づくにつれて第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が長くなっている。このため、第1側壁21と透光性部材40との隙間から水分が侵入し銀のマイグレーションが発生した場合であっても第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなっているので、発光装置が短絡することを抑制することができる。これにより、発光装置の信頼性を向上させることができる。
【0013】
(リード10)
リード10は、第1リード11及び第2リード12を備える。第1リード11及び第2リード12は、発光素子の一対の電極の負極又は正極のいずれかと電気的に接続して発光素子に通電するための部材である。第1リード11及び第2リード12はそれぞれ銀又は銀合金を含んでいる。リード10の母材が銀又は銀合金を含んでいてもよく、第1リード11及び第2リード12の母材の表面に銀又は銀合金を含む金属層が形成されていてもよい。リード10は、銀又は銀合金を含む母材のみを有していてもよく、母材と銀又は銀合金を含む金属層を有していてもよい。リード10の母材は、例えば、銀、銅、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、又はこれらの合金、燐青銅、鉄入り銅などの金属を用いて、圧延、打ち抜き、押し出し、ウェットもしくはドライエッチングによるエッチング又はこれらの組み合わせ等の加工により所定の形状に形成することができる。リード10の母材は単層であってもよいし、積層構造(例えば、クラッド材)であってもよい。特に、安価で放熱性が高い銅を用いることが好ましい。リード10の母材の表面に形成された金属層は、単層又は積層構造でリード10の母材の一部又は全面に施していてもよい。リード10の最表面には、酸化ケイ素等の保護層を設けてもよい。このようにすることで、リード10に水分が付着することを抑制することができる。これにより、発光装置の信頼性が向上する。保護層の成膜方法は、例えば、スパッタ等の真空プロセス等の公知の方法が挙げられる。
【0014】
第1リード11及び第2リード12は、通常、板状のリードフレームから形成される。まず、複数の樹脂パッケージに対応する複数ユニットが、縦及び/又は横に繰返して配置されるように板状のリードフレームを打ち抜き等によって加工する。次に、1つの発光装置を構成する1つのユニットごとに切断する。これにより、板状のリードフレームから第1リード11及び第2リード12が形成される。このため、1つのユニットを構成する第1リード11及び第2リード12は、これらから、一体的にリードフレームに連結するための連結部が延びている。連結部は、発光装置の外側面おいて、樹脂部材と略同一平面であり樹脂部材から露出する。本願においては、第1リード11及び第2リード12の形状を説明する場合には、特に断りのない限り、連結部S(
図3参照)はその形状には含まないこととする。
【0015】
図3に示すように、第1リード11及び第2リード12は、第1方向に並んで配置される。第1リード11は、第1A外縁部11Aを有する。第1A外縁部11Aは、上面視において第2リード12と対向する第1リードの外縁の少なくとも一部である。第1A外縁部11Aは、第1方向に対して傾く第3方向に延びる。第1A外縁部11Aの一部は第1側壁21に覆われる。第2リード12は、第2A外縁部12Aと、第2B外縁部12Bと、を有する。第2A外縁部12Aは、上面視において第1A外縁部11Aと対向する第2リードの外縁の一部である。第2A外縁部12Aは第3方向に延びる。第1A外縁部11Aと第2A外縁部12Aとは平行である。第2B外縁部12Bは、上面視において第1A外縁部と対向する第2リードの外縁の一部である。第2B外縁部12Bは、第2方向に延びる。第2B外縁部12Bの一部は、第1側壁21に覆われる。凹部25内において、第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなる。
【0016】
凹部25内において第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなることにより、第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなる。これにより、第1側壁21と透光性部材40との隙間から水分が侵入した場合でも第1側壁21から近い箇所においては第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が長くなっているので銀のマイグレーションによって発光装置1000が短絡することを抑制することができる。このため、発光装置1000の信頼性を向上させることができる。
【0017】
発光装置1000は、凹部25内において第1側壁21から遠くなるにつれて第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が短くなっている。これにより、凹部内において第1側壁21から遠くなるにつれて第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が長くなる場合よりもリード10の体積を大きくしやすくなる。リード10は一般的に樹脂部よりも熱伝導率が高いので、リード10の体積が大きくなることにより発光素子30で発生した熱をリード10に伝導しやすくなる。これにより、発光素子30の温度上昇を抑制できるので発光装置1000の信頼性を向上させることができる。
【0018】
本実施形態では、第1側壁21と透光性部材40との隙間から侵入した水分が付着しやすい第1側壁21から近い箇所では第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が長くなっているので発光装置が短絡することを抑制され、第1側壁21から遠い箇所では第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が短くなっているので発光素子30の温度上昇を抑制できる。これにより、発光装置1000の信頼性を向上させることができる。
【0019】
凹部25内における第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における最大距離L1は特に限定されないが、
図3に示すように、凹部25内における第1A外縁部11Aから第2B外縁部11Bまでの第1方向における最小距離L2の1.5倍以上3倍以下であることが好ましい。第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における最大距離L1が第1A外縁部11Aから第2B外縁部11Bまでの第1方向における最小距離の1.5倍以上であることにより、第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が長くなる。これにより、銀のマイグレーションによって発光装置が短絡することを抑制することができる。第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における最大距離L1が第1A外縁部11Aから第2B外縁部11Bまでの第1方向における最小距離の3倍以内であることにより、第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が短くなる。これにより、リード10の体積を大きくしやすくなるので発光装置の放熱性が向上する。
【0020】
第1方向に対して第3方向が傾く角度は、特に限定されないが、例えば45°以上80°以下で傾くことが好ましい。尚、本明細書において、第1方向に対して第3方向が傾く角度とは、第1方向と第3方向とが成す角度のうち鋭角の方の角度を意味する。第1方向に対して第3方向が45°以上で傾くことにより、第1方向に対して第3方向が45°未満で傾く場合よりも第1方向における第1A外縁部11Aの長さを短くすることができる。これにより、第1方向において発光装置を小型化しやすくなる。また、第1方向に対して第3方向が80°以下で傾くことにより、第1方向に対して第3方向が80°より大きく傾く場合よりも第1側壁21の近い箇所において第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が長くしやすくなる。これにより、発光装置が短絡することを抑制することができる。
【0021】
図1B、
図2に示すように、第1リード11及び/又は第2リード12は、その下面に第1窪み部101を有していてもよい。第1窪み部101は、+Z方向に窪んでいる。例えば、第1窪み部101は第1リード11及び第2リード12の下面から、第1リード11及び/又は第2リードの最大厚みの10%以上50%以下窪んでいる。第1窪み部101内には、樹脂部材20が位置している。これにより、リード10と樹脂部材20の密着性が向上する。下面視において第1窪み部101は、第1A外縁部11A、第2A外縁部12A及び/又は第2B外縁部12Bと重なることが好ましい。このようにすることで、第1A外縁部11A、第2A外縁部12A及び/又は第2B外縁部12Bと樹脂部材20との密着性が向上する。第1窪み部101は、プレス加工、ハーフエッチング等の公知の方法によって形成することができる。
図2に示すように、第1リード11及び第2リード12の下面は樹脂部材20から露出することが好ましい。これにより、第1リード11及び第2リード12の下面から電気を供給することができる。
【0022】
(樹脂部材20)
樹脂部材20は第1リード11及び第2リード12を保持する部材である。樹脂部材20は、第1側壁21、第2側壁22、第3側壁23及び第4側壁24を備える。第1側壁21及び第2側壁22は、第1方向に延びかつ互いに対向している。第3側壁23及び第4側壁24は、第2方向に延びかつ互いに対向している。樹脂部材20は、第1側壁21、第2側壁22、第3側壁23及び第4側壁24に規定される凹部25を有する。
【0023】
樹脂部材20は、樹脂材料として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの公知の材料を用いることができる。熱可塑性樹脂の場合には、例えば、ポリフタルアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、不飽和ポリエステルなどを用いることができる。熱硬化性樹脂の場合には、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂などを用いることができる。特に、樹脂材料として、耐熱性および耐光性に優れたエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
樹脂部材20は、樹脂材料に、光反射性物質を含有することが好ましい。光反射性物質としては、発光素子からの光を吸収しにくく、樹脂材料に対して屈折率差の大きい部材を用いることが好ましい。このような光反射性物質は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。これら光反射性物質は、樹脂材料に対して5重量%以上90重量%以下で含有させることができる。樹脂部材20が反射性を有することで、発光素子からの光を+Z方向に取出しやすくなる。
【0025】
(発光素子30)
発光素子30は、電圧を印加することで自ら発光する半導体素子であり、窒化物半導体等から構成される公知の半導体素子を適用できる。発光素子としては、例えばLEDチップが挙げられる。発光素子は、少なくとも半導体層を備え、多くの場合に素子基板をさらに備える。発光素子は、素子電極を有する。素子電極は、金、銀、錫、白金、ロジウム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ニッケル又はこれらの合金で構成することができる。半導体材料としては、窒化物半導体を用いることが好ましい。窒化物半導体は、主として一般式InxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)で表される。このほか、InAlGaAs系半導体、InAlGaP系半導体、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、炭化珪素などを用いることもできる。発光素子の素子基板は、主として半導体層を構成する半導体の結晶を成長可能な結晶成長用基板であるが、結晶成長用基板から分離した半導体層を接合させる接合用基板であってもよい。
【0026】
発光素子30は、樹脂部材20の凹部25の底面に位置する第1リード11、第2リード12及び/又は樹脂部材20の表面に接合部材によって載置される。発光素子30は、第1リード11及び/又は第2リード12上に載置されることが好ましい。第1リード11及び/又は第2リード12は一般的に樹脂部材20より熱伝導率が高いので、発光素子30が第1リード11及び/又は第2リード12上に載置されることで、発光素子30から発生した熱をリード10に伝導しやすくなる。これにより、発光素子30の温度上昇を抑制できるので発光装置の信頼性を向上させることができる。発光素子はフリップチップ実装でもよく、フェイスアップ実装でもよい。フェイスアップ実装の場合には、発光素子30の正極及び負極と第1リード11及び第2リード12とをそれぞれワイヤーによって電気的に接続してもよい。発光素子30は、1つの発光装置において1つのみ搭載されていてもよいし、複数個搭載されていてもよい。この場合、光度を向上させるために、同じ発光色の色を発する発光素子を複数個組み合わせてもよい。また、例えば、RGBに対応するように、発光色の異なる発光素子を複数個組み合わせることにより、色再現性を向上させることができる。発光装置が複数の発光素子備えている場合には、全てが直列接続されていてもよいし、並列接続されていてもよいし、直列及び並列接続が組み合わせられていてもよい。
【0027】
図1Aに示す発光装置1000では、2つの発光素子30が並列に接続されている。例えば、発光装置1000は、第1リード11上に位置する第1発光素子31と、第2リード12上に位置する第2発光素子32と、の2つの発光素子30を備えている。第1リード11と第1発光素子31の一方の電極とがワイヤー60により接続されている。第1発光素子31の他方の電極と第2リード12がワイヤーにより接続されている。第1リード11と第2発光素子32の一方の電極とがワイヤーにより接続されている。第2発光素子32の他方の電極と第2リード12がワイヤーにより接続されている。
【0028】
図1Aに示すように、発光装置が第1方向に並ぶ第1発光素子31と第2発光素子32とを備えている場合には、第2方向において第1発光素子31と第2発光素子32の間で第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなっていることが好ましい。第1方向に第1発光素子31と第2発光素子32が並んでいる場合には、第1方向において第1発光素子31と第2発光素子32の間に位置する透光性部材40は、第1発光素子31からの光と第2発光素子32の光によって劣化しやすくなる恐れがある。透光性部材40が劣化すると、第1側壁21と透光性部材40との間に隙間が生じやすくなる。第1側壁21と透光性部材40との間に隙間が生じるとその隙間から水分が侵入しやすくなる。このため、水分が侵入しやすくなる恐れがある第1方向における第1発光素子31と第2発光素子32の間では、第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなっていることが好ましい。このようにすることで、水分が侵入しやすくなる恐れがある第1方向において第1発光素子31と第2発光素子32の間で、第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなっているので、銀のマイグレーションが発生した場合であっても発光装置が短絡することを抑制することができる。
【0029】
第2方向に延びる線S1に対して第1発光素子31の中心と第2発光素子32の中心とが線対称であるとする。本明細書において、線対称とは、±20μm以内の位置の変動は許容されるものとする。発光装置が第1方向に並ぶ第1発光素子31と第2発光素子32とを備えている場合には、第2方向に延びる線S1上において、特に第1発光素子31からの光と第2発光素子32の光によって透光性部材40が劣化しやすくなる恐れがある。このため、上面視において、第1A外縁部11Aから第2B外縁部12Bまでの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなっている部分が第2方向に延びる線S1と重なることが好ましい。このようにすることで、水分が侵入しやすくなる恐れがある第2方向に延びる線S1上において、第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が第1側壁21に近づくにつれて長くなっているので、銀のマイグレーションが発生した場合であっても発光装置が短絡することを抑制することができる。尚、本明細書において、「発光素子の中心」とは、上面視における発光素子の幾何学的な重心を意味する。例えば、上面視における発光素子の形状が矩形である場合は、発光装置の中心とは発光装置の対角線の交点を意味する。
【0030】
(透光性部材40)
透光性部材40は凹部25内に位置し発光素子30を覆う部材である。透光性部材40が発光素子30を覆うことにより、発光素子30を外力から保護することができる。透光性部材40の材料として、例えば、樹脂を用いることができる。透光性部材に用いることができる樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂及び変性シリコーン樹脂は、耐熱性及び耐光性に優れているので好ましい。
【0031】
透光性部材40は蛍光体を含有してもよい。このようにすることで、発光装置の色調整が容易になる。透光性部材40に含まれる蛍光体は1種類でもよく複数種類でもよい。透光性部材40に含有される蛍光体は分散していてもよく、偏在していてもよい。蛍光体には、公知の材料を適用することができる。蛍光体の例は、KSF系蛍光体等のフッ化物系蛍光体、CASN等の窒化物系蛍光体、YAG系蛍光体、βサイアロン蛍光体等である。KSF系蛍光体およびCASNは、青色光を赤色光に変換する波長変換部材の例であり、YAG系蛍光体は、青色光を黄色光に変換する波長変換部材の例である。βサイアロン蛍光体は、青色光を緑色光に変換する波長変換部材の例である。蛍光体は、量子ドット蛍光体であってもよい。
【0032】
(保護素子50)
発光装置1000は、保護素子50を備えることが好ましい。保護素子50としては、静電気及び高電圧サージから発光素子を保護するための素子であるツェナーダイオードが挙げられる。保護素子50は樹脂部材20に覆われていてもよく、
図1Aに示すように凹部25内に配置されてもよい。保護素子50が樹脂部材20に覆われることにより発光素子30からの光が保護素子50に吸収されることを抑制できる。これにより、発光装置の光取り出し効率が向上する。凹部25内に保護素子50が位置する場合には、
図1Bに示すように保護素子50の少なくとも一部が反射樹脂70に覆われることが好ましい。このようにすることで、発光素子30からの光が保護素子50に吸収されることを抑制できる。保護素子50は第1発光素子31と第2発光素子32の間に位置していてもよい。このようにすることで、第2方向において発光装置100を小型化しやすくなる。
【0033】
(反射樹脂70)
発光装置1000は、反射樹脂70を備えることが好ましい。透光性部材40は凹部25内に位置しリード10を覆う部材である。反射樹脂70は保護素子50の少なくとも一部を覆ってもよい。反射樹脂70として、樹脂材料に光反射性物質を含有した部材を用いることができる。発光装置1000が反射樹脂を備えることにより、リード10が硫化した場合であっても発光装置の光取り出し効率の低減を抑制することができる。反射樹脂70は、第1A外縁部及び第2B外縁部を覆うことが好ましい。このようにすることで、第1側壁21と透光性部材40の隙間から侵入した水分がリード10に付着することを抑制することができる。反射樹脂70は、発光素子30と接していてもよく離れていてもよい。反射樹脂70が発光素子30と接していることにより、反射樹脂70がリード10を覆う面積が増加するので、発光素子30からの光がリード10に吸収されることを抑制することができる。また、反射樹脂70が発光素子30と離れていることにより、発光素子30の側面からの光を取り出しやすくなる。
【0034】
反射樹脂70の樹脂の材料としては、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂及び変性シリコーン樹脂は、耐熱性及び耐光性に優れているので好ましい。
【0035】
反射樹脂70がジメチル系シリコーン樹脂を含み、透光性部材40はフェニル系シリコーン樹脂を含むことが好ましい。ジメチル系シリコーン樹脂は、フェニル系シリコーン樹脂に比較すると硬度が低く柔らかい。このため、反射樹脂70がジメチル系シリコーン樹脂を含むことでリード10と反射樹脂70との間に隙間が生じにくくなる。これにより、リード10に水分が付着することを抑制できる。また、透光性部材40がジメチル系シリコーン樹脂を含むことで、外力によって透光性部材40が変形することを抑制することができる。
【0036】
反射樹脂70の光反射性物質はリード10側に偏在していることが好ましい。つまり、下側に位置する反射樹脂70における光反射性物質の濃度が、上側に位置する反射樹脂70における光反射性物質の濃度がよりも高いことが好ましい。このようにすることで、反射樹脂70の下側は光反射性物質の濃度が高いので発光素子30からの光がリード10に吸収されることを抑制することができる。反射樹脂70の上側は光反射性物質の濃度が低いので発光素子の側面からの光を取り出しやすくなる。樹脂材料に含有される光反射性物質をリード側に偏在させる方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、遠心沈降等の強制沈降や、自然沈降により光反射性物質を偏在させることができる。
【0037】
発光装置1000が反射樹脂70を備える場合には、
図3に示すように第1リード11及び/又は第2リード12は第2窪み部102(網掛けのハッチングで示す)を有することが好ましい。第2窪み部102は、上面視において発光素子30を囲んでいる。また、
図1B、
図1Cに示すように、第2窪み部102内には反射樹脂70が位置する。例えば、第2窪み部102は第1リード11及び第2リード12の上面から、第1リード11及び/又は第2リードの最大厚みの10%以上50%以下窪んでいる。反射樹脂70が第2窪み部102内に位置することにより、反射樹脂70とリード10の密着性が向上する。また、反射樹脂70が発光素子30と接する場合には、反射樹脂70の光反射性物質がリード10側に偏在していることが好ましい。このようにすることで、第2窪み部102内において反射樹脂70における光反射性物質の濃度が高くなり、発光素子30の側面と接する部分において反射樹脂70における光反射性物質の濃度を低くすることができる。これにより、発光素子30の側面からの光を取り出しやすくなる。
【0038】
第2窪み部102は、第1発光素子31又は第2発光素子32の全周を囲んでいてもよく、
図4A、
図4Bに示すように第1発光素子31又は第2発光素子32の少なくとも一部を囲んでいてもよい。
図4A、
図4Bは第2窪み部102の形状が分かり易いように反射樹脂70を省略して図示する。第2窪み部102が第1発光素子31又は第2発光素子32の全周を囲むようにすることで、反射樹脂70とリード10の密着性が更に向上する。第2窪み部102が第1発光素子31又は第2発光素子32の少なくとも一部を囲むにようにすることで凹部25内における第2窪み部102が形成されないリード10の上面の面積を大きくすることができる。これにより発光素子及び/又はワイヤーの配置が容易になる。
【0039】
<実施形態2>
本発明の実施形態2に係る発光装置2000を
図5、
図6に基づいて説明する。実施形態2に係る発光装置2000は、実施形態1に係る発光装置1000と比較して、第1リード11の形状が相違する。第1リードの形状以外の構成は実施形態1と同様である。
【0040】
発光装置2000は、リード10と、樹脂部材20と、発光素子30と、透光性部材40と、を備える。リード10は、銀又は銀合金を含み、第1方向に並んで配置された第1リード11及び第2リード12を備える。樹脂部材20は、第1リード11及び第2リード12を保持する。樹脂部材20は第1方向に延びかつ互いに対向する第1側壁21及び第2側壁22と、第2方向に延びかつ互いに対向する第3側壁23及び第4側壁24と、に規定される凹部25を有する。発光素子30は、樹脂部材20の凹部25内に配置される。透光性部材40は、凹部25内に配置され、発光素子30を覆う。上面視において、第2リード12と対向する第1リード11の外縁は、第1方向に対して傾く第3方向に延びる第1A外縁部11Aと第2方向に延びる第1B外縁部11Bとを有する。第1A外縁部11Aの一部は第1側壁21に覆われる。第1B外縁部11Bの一部は第2側壁22に覆われる。上面視において、第1リード11と対向する第2リード12の外縁は、第2A外縁部12Aと第2B外縁部12Bとを有する。第2A外縁部12Aは、第3方向に延び第2側壁22に一部が覆われる。第2B外縁部12Bは、第2方向に延び第1側壁21に一部が覆われる。凹部25内において、第1B外縁部11Bから第2A外縁部12Aまでの第1方向における距離が第2側壁22に近づくにつれて長くなる。これにより、第2側壁22と透光性部材40との隙間から水分が侵入し銀のマイグレーションが発生した場合であっても第1リード11から第2リード12までの第1方向における距離が第2側壁22に近づくにつれて長くなっているので発光装置が短絡することを抑制することができる。これにより、発光装置の信頼性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の一実施形態に係る発光装置は、液晶ディスプレイのバックライト装置、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、プロジェクタ装置、さらには、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1000、1000A、1000B、2000:発光装置
10:リード
11:第1リード
11A:第1A外縁部
11B:第1B外縁部
12:第2リード
12A:第2A外縁部
12B:第2B外縁部
20:樹脂部材
21:第1側壁
22:第2側壁
23:第3側壁
24:第4側壁
25:凹部
30:発光素子
40:透光性部材
50:保護素子
60:ワイヤー
70:反射樹脂