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特許7513897複合蛍光体、発光装置、波長変換部材及び複合蛍光体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】複合蛍光体、発光装置、波長変換部材及び複合蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/66 20060101AFI20240703BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240703BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240703BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C09K11/66
C09K11/08 G
C09K11/08 A
H01L33/50
G02B5/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020217169
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102440
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有川 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 雅史
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-530633(JP,A)
【文献】特開2020-122901(JP,A)
【文献】特開2019-215516(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110938432(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107099290(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109264771(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0248070(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111944525(CN,A)
【文献】SUN,Chun et al.,One Stone, TWO Birds: High-Efficiency Blue-Emitting Perovskite Nanocrystals for LED and Security Ink Applications,CHEMISTRY OF MATERIALS,Vol.31,2019年,pages5116-5123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
G02B 5/20-5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粒子100質量%又はナノ粒子を表面付近に存在させた蛍光体粒子100質量%に対してカールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下の範囲内である、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子の表面に付着させた、波長400nm以上の光を透過する無機物を含むナノ粒子、及び波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物からなる群から選択される少なくとも1つと、を備え、
前記蛍光体粒子が、CsPbBrで表される組成を有する結晶と、CsPbBrで表される組成を有する結晶と、を含み、レーザー回折式粒度分布測定法で測定した体積平均粒径が0.1μm以上20μm以下の範囲内であり、
前記ナノ粒子又は前記膜状物に含まれる無機物が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、及び酸化スズからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物である、複合蛍光体。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、動的光散乱法で測定した平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲内である、請求項1に記載の複合蛍光体。
【請求項3】
前記ナノ粒子の含有量が、前記蛍光体粒子100質量%に対して、0.5質量%以上3.5質量%以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の複合蛍光体。
【請求項4】
前記膜状物の厚みが10nm以上4μm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の複合蛍光体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の複合蛍光体と、励起光源と、を備えた発光装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の複合蛍光体と、樹脂を含む透光性部材と、を備えた波長変換部材。
【請求項7】
蛍光体粒子100質量%又はナノ粒子を表面付近に存在させた蛍光体粒子100質量%に対してカールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下の範囲内である、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を準備することと、
前記蛍光体粒子の表面に、波長400nm以上の光を透過する無機物を含むナノ粒子、及び波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着させること、を含み、
前記蛍光体粒子が、CsPbBrで表される組成を有する結晶と、CsPbBrで表される組成を有する結晶と、を含み、レーザー回折式粒度分布測定法で測定した体積平均粒径が0.1μm以上20μm以下の範囲内であり、
前記ナノ粒子又は前記膜状物に含まれる無機物が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、及び酸化スズからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物である、複合蛍光体の製造方法。
【請求項8】
前記蛍光体粒子を準備する工程において、ハロゲン化セシウムを含む第1溶液を準備することと、ハロゲン化鉛と有機溶媒とを含む第2溶液を準備することと、前記第1溶液と前記第2溶液を混合して第3溶液を得て、前記第3溶液中にハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を析出させることを含む、請求項7に記載の複合蛍光体の製造方法。
【請求項9】
前記蛍光体粒子を準備する工程において、前記蛍光体粒子を、15℃以上35℃以下の範囲内の温度で、大気雰囲気で1時間以上の第1乾燥させること、又は凍結乾燥により第2乾燥させること、を含む、請求項7又は8に記載の複合蛍光体の製造方法。
【請求項10】
前記蛍光体粒子を準備する工程において、前記第2溶液中に平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲内のナノ粒子を添加して、前記ナノ粒子を蛍光体粒子の表面に付着させることを含む、請求項8又は請求項8を引用する請求項9に記載の複合蛍光体の製造方法。
【請求項11】
前記蛍光体粒子の表面に前記膜状物を付着させる工程において、前記膜状物を、ゾルゲル法により前記蛍光体粒子の表面に付着させる、請求項7から9のいずれか1項に記載の複合蛍光体の製造方法。
【請求項12】
前記膜状物を付着させる前に、前記第2溶液中に平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲内のナノ粒子を添加して、前記ナノ粒子を蛍光体粒子の表面に付着させることを含む、請求項8及び請求項8を引用する請求項9から11のいずれか1項に記載の複合蛍光体の製造方法。
【請求項13】
前記蛍光体粒子の表面に、前記ナノ粒子及び前記膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着させる工程の後に、40℃以上120℃以下の範囲内の温度で熱処理することを含む、請求項7から12のいずれか1項に記載の複合蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合蛍光体、発光装置、波長変換部材及び複合蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)の発光素子を用いる発光装置は、変換効率の高い光源であり、車載用や室内照明用の発光装置、液晶を使った画像表示装置のバックライト光源、イルミネーション、プロジェクター用の光源装置等の広い分野で利用されている。
【0003】
発光装置に用いる蛍光体として、発光スペクトルの半値幅が狭く、色純度が優れた蛍光材料として、例えば、特許文献1に開示された、CSPbBrで表される組成のペロブスカイト型構造を有する化合物の関心が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/037387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペロブスカイト型構造を含む蛍光体の発光効率を維持するためにさらなる改善が求められる。
【0006】
本発明の一態様は、ペロブスカイト型構造を含む蛍光体の発光効率を維持することができる複合蛍光体、発光装置、波長変換部材及び複合蛍光体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様は、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下の範囲内である、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子の表面に付着させた、表面処理剤、波長400nm以上の光を透過する無機物を含むナノ粒子、及び波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物からなる群から選択される少なくとも1つと、を備えた複合蛍光体である。
【0008】
第二の態様は、前記複合蛍光体と、励起光源と、を備えた発光装置である。
第三の態様は、複合蛍光体と、樹脂を含む透光性部材と、を備えた波長変換部材である。
【0009】
第四の態様は、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下の範囲内である、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を準備することと、前記蛍光体粒子の表面に、表面処理剤、波長400nm以上の光を透過する無機物を含むナノ粒子、及び波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着させること、を含む、複合蛍光体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、ペロブスカイト型構造を含む蛍光体の発光効率を維持することができる複合蛍光体、発光装置、波長変換部材及び複合蛍光体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】複合蛍光体の製造方法の第1実施態様を示すフローチャートである。
図2】複合蛍光体の製造方法の第2実施態様を示すフローチャートである。
図3】複合蛍光体の製造方法の第3実施態様を示すフローチャートである。
図4】複合蛍光体の製造方法の第4実施態様を示すフローチャートである。
図5】複合蛍光体の製造方法の第5実施態様を示すフローチャートである。
図6】複合蛍光体の製造方法の第6実施態様を示すフローチャートである。
図7】複合蛍光体の製造方法の第7実施態様を示すフローチャートである。
図8】発光装置の第1実施形態を示す概略断面図である。
図9】波長変換部材の第1実施形態を示す概略断面図である。
図10】波長変換部材の第2実施形態を示す概略断面図である。
図11】波長変換部材の第3実施形態を示す概略断面図である。
図12】波長変換部材の第4実施形態を示す概略断面図である。
図13】透光性部材の一例を示す概略断面図である。
図14】発光装置の第2実施形態を示す概略断面図である。
図15】発光装置の第2実施形態を示す概略斜視図である。
図16】発光装置の第3実施形態を示す概略断面図である。
図17】発光装置の第3実施形態を示す概略平面図である。
図18】蛍光体粒子中の水分量と内部量子効率の関係を示すグラフである。
図19】製造例4に係る蛍光体粒子のSEM写真である。
図20】製造例4に係る蛍光体粒子の断面のSEM写真である。
図21】製造例4に係る蛍光体粒子の断面のカソードルミネッセンス法により加速電子を照射した状態を示すSEM写真である。
図22】粉砕前の製造例4に係る蛍光体粒子のXRDパターンである。
図23】粉砕後の製造例4に係る蛍光体粒子のXRDパターンである。
図24】製造例5に係る蛍光体粒子のSEM写真である。
図25】実施例1に係る複合蛍光体のSEM写真である。
図26】実施例1に係る複合蛍光体の断面のSEM写真である。
図27】実施例5に係る複合蛍光体のSEM写真である。
図28】実施例7に係る複合蛍光体のSEM写真である。
図29】実施例8に係る複合蛍光体のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る複合蛍光体、発光装置、波長変換部材及び複合蛍光体の製造方法を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための例示であって、本発明は、以下の複合蛍光体、発光装置、波長変換部材及び複合蛍光体の製造方法に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。
【0013】
複合蛍光体
複合蛍光体は、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下の範囲内である、ペロブスカイト型構造を有する、ハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子の表面に付着させた、表面処理剤、波長400nm以上の光を透過する無機物を含むナノ粒子、及び波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物からなる群から選択される少なくとも1つと、を備える。
【0014】
蛍光体粒子
ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子は、CsPbBrで表される組成を有する結晶と、CsPbBrで表される組成を有する結晶と、を含むことが好ましい。CsPbBrで表される組成を有する結晶は、立方晶系のペロブスカイト型構造を有し、CsPbBrで表される組成を有する結晶は、三方晶系のペロブスカイト型構造を有する。蛍光体粒子は、CsPbBrで表される組成を有する結晶がマトリックスとなり、このマトリックス中にCsPbBrで表される組成を有するナノサイズの結晶が埋め込まれた状態となっている。本明細書において、直径が数nmから数百nmサイズの結晶をナノ結晶ともいう。CsPbBrで表される組成を有するナノ結晶は、Pbを中心として角部にBrを配置した八面体構造となるPbBrの3つの角部に配置されたBrが隣接する八面体構造と共有し、Pbを中心として角部にCsを配置した六面体構造となるCsPbBrの3つの角部に配置されたCsが隣接する六面体構造と共有した結晶構造を有する。蛍光体粒子のマトリックスを構成するCsPbBrで表される組成を有する結晶は、Pbを中心として角部にBrを配置した八面体構造の角部に配置されたBr、又は、Pbを中心として角部にCsを配置した六面体構造の角部に配置されたCsが、それぞれ隣接する六面体構造及び八面体構造をと共有せずに孤立して存在する。
【0015】
蛍光体粒子に含まれるハロゲン化セシウム鉛は、立方晶系のペロブスカイト型構造を有するCsPbBrが光を吸収し、蛍光を発すると推測される。立方晶系のCsPbBrは、ペロブスカイト型構造を構成するBrやCsが隣接する構造と共有されているため、結晶構造に歪みが生じ、結晶構造中にBrやCsが存在しない欠損部分も存在すると推測される。蛍光体粒子中に0.1質量%以上6.0質量%以下の水分が存在すると、CsPbBrで表される組成を有するペロブスカイト型構造中の欠損が水酸基(OH)で埋められると推測され、高い発光特性が維持される。
【0016】
蛍光体粒子中の水分が多すぎると、蛍光体粒子のマトリックスを構成するCsPbBrは、結晶構造が変化し、斜方晶系の結晶構造を有するCsPbBrに変化する。斜方晶系の結晶構造を有するCsPbBrは光を吸収する。蛍光体粒子のマトリックスを構成するCsPbBrの一部が斜方晶系のCsPbBrに結晶構造が変化すると、蛍光体粒子に照射された光を吸収するため、蛍光を発する立方晶系のペロブスカイト型構造を有するCsPbBrまで光が到達せず、蛍光体粒子の発光特性が低下する。蛍光体粒子のマトリックスを構成する三方晶系のペロブスカイト型構造を有するCsPbBrは、水溶性であり、過剰量の水の存在によって、最終的はCsBr、PbBrまで分解する。また、蛍光体粒子のマトリックス中に含まれるナノ結晶であるCsPbBrも水溶性であると推測され、過剰量の水の存在によって、最終的はCsBr、PbBrまで分解すると推測される。
【0017】
蛍光体粒子中の水分が少なすぎると、蛍光体粒子中に含まれるペロブスカイト型構造を有するCsPbBrで表される結晶の欠損が水酸基等で埋められなくなると推測され、発光特性が低下する。
【0018】
本明細書において、発光特性は、対象となる試料の内部量子効率をいう。吸収率及び内部量子効率は、例えば発光ピーク波長が450nmの励起光を試料に照射して、量子効率測定装置(例えばQE-2100、大塚電子株式会社製)を用いて発光スペクトルを測定し、この発光スペクトルから導き出すことができる。試料の発光スペクトルから、励起光の光量子数、励起光の試料による散乱光量子数、試料の発光光量子数を測定し、JIS Z1697に準拠して吸収率及び内部量子効率を測定することができる。吸収率(%)は励起光が発する光量子のうち、試料に吸収される光量子の割合である。また、内部量子効率は、試料に吸収された光量子のうち、発光に変換された光量子の割合であり、発光光量子数(%)を吸収光量子数(%)で除すことにより算出することができる。
【0019】
ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子は、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下であると、CsPbBrで表される組成を有する発光するペロブスカイト型構造の欠損が水酸基等で埋められ、高い発光特性を維持することができる。ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子は、カールフィッシャー法で測定した水分量が、0.1質量%以上5.5質量%以下でもよく、0.15質量%以上5.0質量%以下でもよい。ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を水溶液中で析出させて製造した場合、自然乾燥前の析出直後に溶液中から取り出したペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子のカールフィッシャー法で測定した水分量は6.0質量%程度であったため、水分量の上限値を6.0質量%以下とした。なお、前述の自然乾燥は、後述する大気雰囲気で1時間以上の第1乾燥又は凍結乾燥による第2乾燥のことをいう。
【0020】
蛍光体粒子中の水分量は、具体的には、下記条件によりカールフィッシャー電量滴定法で測定する。
蛍光体粒子の水分の測定条件
蛍光体粒子を200℃まで加熱して、蛍光体粒子中の水分を揮発させ、カールフィッシャー電量滴定法で測定することができる。水分量の測定装置としては、卓上型電量法水分計(例えばCA-100、三菱ケミカル株式会社製)を用いることができる。
【0021】
蛍光体粒子中のハロゲン化セシウム鉛の含有量は、蛍光体粒子100質量%に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であってもよく、蛍光体粒子がハロゲン化セシウム鉛からなるものであってもよく、蛍光体粒子がハロゲン化セシウム鉛100質量%含むものであってもよい。蛍光体粒子に含まれるCsPbBrで表される組成を有する結晶の含有量は、マトリックスとなるCsPbBrを100体積%としたときに、0.1体積%以上10体積%以下の範囲内であり、0.5体積%以上8.0体積%以下の範囲内でもよく、0.8体積%以上5.0体積%以下の範囲内でもよい。
【0022】
蛍光体粒子は、レーザー回折式粒度分布測定法で測定した体積平均粒径が、0.1μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましく、0.2μm以上18μm以下の範囲内でもよく、0.3μm以上15μm以下の範囲内でもよい。蛍光体粒子の体積平均粒径が0.1μm以上20μm以下の範囲内であれば、発光するCsPbBrで表される組成を有するナノサイズ結晶が、CsPbBrで表される組成を有するマトリックス中に十分に埋め込まれた状態となり、蛍光体粒子が高い発光特性を有する。蛍光体粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法で測定された体積基準の粒度分布において、小径側からの体積累積頻度が50%に達する平均粒径(メジアン径)をいう。
【0023】
表面処理剤
複合蛍光体は、蛍光体粒子の表面に付着された、表面処理剤を備えていてもよい。表面処理剤は、アルキルアミン、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド及びアルキルチオールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。蛍光体粒子の表面に表面処理剤が付着されていると、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子の表面の少なくとも一部を表面処理剤が被覆して、蛍光体粒子に含まれる水の蒸発と、外部からの水分の浸入を抑制し、水分中の水酸基等により欠損が補填された蛍光体粒子の結晶構造を維持して、高い発光効率を維持することができる。蛍光体粒子は、表面に表面処理剤が付着され、さらに後述する無機物を含む膜状物が付着されている場合には、膜状物が表面処理剤によって蛍光体粒子の表面に略均等に付着しやすくなり、蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発と、外部からの水分の浸入とが、より抑制され、蛍光体粒子の高い発光効率を維持することができる。
【0024】
表面処理剤は、炭素数が2から30のアルキル基を有するものであることが好ましく、炭素数が3から20のアルキル基を有するものであることがより好ましい。アルキルアミンは、オレイルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、及びドデシルアミンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。飽和脂肪酸は、酢酸、オクタン酸が挙げられる。不飽和脂肪酸は、例えばオレイン酸が挙げられる。アルキルホスフィンは、トリオクチルホスフィンが挙げられる。アルキルホスフィンオキシドは、トリオクチルホスフィンオキシドが挙げられる。アルキルチオールは、ドデカンチオールが挙げられる。
【0025】
ナノ粒子
複合蛍光体は、蛍光体粒子の表面に付着させた、波長400nm以上の光を透過する無機物を含むナノ粒子を備えていてもよい。ナノ粒子は、動的光散乱法で測定した平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲内のナノ粒子であることが好ましい。ナノ粒子の一部は、ハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子の表面に埋設された状態で付着していてもよい。蛍光体粒子の表面にナノ粒子が付着されていると、ナノ粒子がペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子の水分の蒸発と、外部からの水分の浸入を抑制して、蛍光体粒子の高い発光効率を維持することができる。蛍光体粒子は、表面にナノ粒子が付着され、さらに無機物を含む膜状物が付着されている場合には、ナノ粒子の一部が膜状物に埋設されていてもよい。蛍光体粒子は、表面にナノ粒子が付着され、さらに無機物を含む膜状物が付着されている場合には、ナノ粒子がアンカーとなり、蛍光体粒子の表面に付着された膜状物の密着性がよくなり、蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発と、外部からの水分の浸入を抑制して、蛍光体粒子の高い発光効率を維持することができる。ナノ粒子の平均粒径は、20nm以上90nm以下の範囲内でもよく、30nm以上80nm以下の範囲内でもよい。ナノ粒子が市販品である場合は、平均粒径はカタログ値を参照にしてもよい。
【0026】
複合蛍光体に含まれるナノ粒子は、蛍光体粒子100質量%に対して、0.5質量%以上3.5質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.8質量%以上3.2質量%以下の範囲内でもよく、1.0質量%以上3.0質量%以下の範囲内でもよい。膜状物がナノ粒子を含むときに、蛍光体粒子100質量%に対して、膜状物に含まれるナノ粒子が0.5質量%以上3.5質量%以下であると、蛍光体粒子の表面に付着したナノ粒子がアンカー効果を発揮し、膜状物の密着性が向上すると推測され、蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発と、外部からの水分の浸入を抑制して、蛍光体粒子の高い発光効率を維持することができる。
【0027】
ナノ粒子は、波長400nm以上の光を透過する無機物を含む。ナノ粒子は、波長400nm以上の光を透過する無機物からなるものであることが好ましい。ナノ粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、及び酸化スズからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物であることが好ましい。ナノ粒子は、例えばフッ化カルシウム、フッ化マグネシウムからなるものであってもよい。蛍光体粒子の表面にナノ粒子と膜状物が付着される場合には、ナノ粒子と膜状物は、同種の酸化物からなるものであっても、それぞれ異なる種類の酸化物からなるものであってもよい。ナノ粒子と膜状物は、同種のフッ化物からなるものであってもよく、それぞれ異なる種類のフッ化物からなるものであってもよい。ナノ粒子と膜状物が、同種の酸化物であっても、それぞれ異なる酸化物であっても、ナノ粒子はアンカー効果を発揮することができる。ナノ粒子と膜状物が、同種のフッ化物であっても、それぞれ異なるフッ化物であっても、ナノ粒子はアンカー効果を発揮することができる。膜状物及びナノ粒子が、同種の酸化物又はフッ化物である場合、波長400nm以上の光が透過しやすくなる。ナノ粒子及び膜状物が酸化物である場合は、複合蛍光体の高い発光効率を維持するために、ナノ粒子及び膜状物は、同種の酸化物であることが好ましい。
【0028】
膜状物
複合蛍光体は、蛍光体粒子の表面付着させた、波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物を備えていてもよい。蛍光体粒子の表面に無機物を含む膜状物が付着されていると、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発と、外部からの水分の浸入を抑制し、水分中の水酸基等により欠損が補填された蛍光体粒子の結晶構造を維持して、高い発光効率を維持することができる。膜状物は、波長が850nm以下の光を透過するものであってもよい。
【0029】
膜状物に含まれる無機物は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、及び酸化スズからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物であることが好ましい。無機物は、励起光及び蛍光体粒子の発光を透過しやすくするために、屈折率が低い方が好ましい。膜状物に含まれる無機物は、屈折率が4.0以下であるものが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましく、2.5以下であることが特に好ましい。二酸化ケイ素の屈折率は1.46であり、酸化アルミニウムの屈折率は1.77であり、酸化ジルコニウムの屈折率は2.21であり、酸化マグネシウムの屈折率は1.74であり、酸化チタンの屈折率は2.49であり、酸化セリウムの屈折率は2.20であり、酸化ジルコニウムの屈折率は1.90であり、酸化スズの屈折率は2.38である。膜状物に含まれる無機物は、フッ化物であってもよく、例えばフッ化カルシウム、フッ化マグネシウムが挙げられる。フッ化カルシウムの屈折率は1.43であり、フッ化マグネシウムの屈折率は1.38である。
【0030】
膜状物の厚みは、10nm以上4μm以下の範囲内であることが好ましく、50nm以上3μm以下の範囲内でもよく、100nm以上2μm以下の範囲内でもよい。膜状物の厚みが10nm以上4μm以下の範囲内であれば、励起光及び蛍光体粒子の発光の透過を抑制することなく、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発と、外部からの水分の浸入と、を抑制して、蛍光体粒子の高い発光効率を維持することができる。
複合蛍光体に備えられた膜状物の厚みは、後述する実施例において説明するように、複合蛍光体を樹脂中に埋設し、樹脂を硬化後、複合蛍光体の断面が露出するように切削する。次いで、切削した断面を研磨し、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置を用いて切り出す。次いで切り出した部分を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する。SEMを用いて得られた画像から膜状物の厚みの寸法を測定することができる。後述する実施例において説明する図26に示すように、複合蛍光体の断面の反射電子像のSEM写真において、膜状物は、平均の厚みが2μm前後である。複合蛍光体を埋設する樹脂は、エポキシ樹脂を使用することができる。
【0031】
複合蛍光体は、表面処理剤と、波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物と、を蛍光体粒子の表面に付着させていてもよい。また、複合蛍光体は、蛍光体粒子の表面に付着された、波長400nm以上の光を透過する無機物を含むナノ粒子と、波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物を備えていてもよい。
【0032】
複合蛍光体は、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光により励起されたときに、励起光よりも長波長側である500nm以上610nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発することが好ましい。蛍光体は、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光により励起されたときに発する光の発光ピーク波長が、500nmより大きく600nm以下の範囲内であることがより好ましく、510nm以上570nm以下の範囲内であることがさらに好ましく520nm以上530nm以下の範囲内であることがよりさらに好ましい。複合蛍光体の発光スペクトルにおいて、半値幅は狭いことが好ましく、半値幅が35nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、25nm以下であることがさらに好ましい。半値幅は、5nm以上であってもよい。半値幅は、発光スペクトルにおける発光ピークの半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)をいい、発光スペクトルにおける発光ピークの最大値の50%の値を示す発光ピークの波長幅をいう。半値幅が狭い発光ピークを有する複合蛍光体は、色純度が高くなり色再現性が良好となる。
【0033】
複合蛍光体の製造方法
複合蛍光体の製造方法は、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下の範囲内である、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を準備することと、前記蛍光体粒子の表面に、表面処理剤、波長400nm以上の光を透過する無機物を含むナノ粒子、及び波長400nm以上の光を透過する無機物を含む膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着させること、を含む。
【0034】
以下、図を参照にして複合蛍光体の製造方法を説明する。図1は、複合蛍光体の製造方法の第1実施態様に係る例を示すフローチャートである。複合蛍光体の製造方法は、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を準備する工程S100と、表面処理剤、ナノ粒子及び膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着させる工程S200とを含む。
【0035】
図2は、複合蛍光体の製造方法の第2実施態様に係る例を示すフローチャートである。複合蛍光体の製造方法の第2実施態様は、上記工程S200の前の蛍光体粒子を準備する工程S100が、ハロゲン化セシウムを含む第1溶液を準備する工程S101と、ハロゲン化鉛と有機溶媒とを含む第2溶液を準備する工程S102と、第1溶液と第2溶液を混合して第3溶液を得て、第3溶液中にハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を析出させる工程S104を含む他は、上記第1実施態様と同じ工程を含む。
【0036】
図3は、複合蛍光体の製造方法の第3実施態様に係る例を示すフローチャートである。複合蛍光体の製造方法の第3実施態様は、上記工程S104の後に、得られた蛍光体粒子を第1乾燥又は第2乾燥する工程S105を含む他は、上記第2実施態様と同じ工程を含む。
【0037】
図4は、複合蛍光体の製造方法の第4実施態様に係る例を示すフローチャートである。複合蛍光体の製造方法の第4実施態様は、蛍光体粒子を準備する工程S100において、第2溶液にナノ粒子を添加する工程S103を含み、表面処理剤、ナノ粒子及び膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着する工程S200において、表面にナノ粒子が付着された蛍光体粒子(複合蛍光体粒子)を得る工程201を含む他は、上記第2実施態様と同じ工程を含む。
【0038】
図5は、複合蛍光体の製造方法の第5実施態様に係る例を示すフローチャートである。複合蛍光体の製造方法の第5実施態様は、表面処理剤、ナノ粒子及び膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着する工程S200において、蛍光体粒子の表面に表面処理剤を付着させる工程S202と、蛍光体粒子の表面に膜状物を付着させる工程S203を含む他は、上記第2実施態様と同じ工程を含む。
【0039】
図6は、複合蛍光体の製造方法の第6実施態様に係る例を示すフローチャートである。複合蛍光体の製造方法の第6実施態様は、蛍光体粒子を準備する工程S100において、第2溶液にナノ粒子を添加する工程S103と、上記工程S104の後に、得られた蛍光体粒子を第1乾燥又は第2乾燥する工程S105を含み、表面処理剤、ナノ粒子及び膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着する工程S200において、蛍光体粒子の表面に付着させたナノ粒子を備えた複合蛍光体を得る工程201と、蛍光体粒子の表面に膜状物を付着させる工程S203を含む他は、上記第2実施態様と同じ工程を含む。
【0040】
図7は、複合蛍光体の製造方法の第7実施態様に係る例を示すフローチャートである。複合蛍光体の製造方法の第7実施態様は、蛍光体粒子を準備する工程S100において、上記工程S104の後に、得られた蛍光体粒子を第1乾燥又は第2乾燥する工程S105を含み、表面処理剤、ナノ粒子及び膜状物からなる群から選択される少なくとも1つを付着する工程S200において、膜状物を付着する工程S203の後に、膜状物を付着した複合蛍光体を40℃以上120℃以下の範囲内の温度で熱処理する工程S204を含む他は、上記第2実施形態と同じ工程を含む。
【0041】
以下各工程について説明する。
【0042】
蛍光体粒子を準備する工程
蛍光体を準備する工程は、ハロゲン化セシウムを含む第1溶液を準備することと、ハロゲン化鉛と有機溶媒とを含む第2溶液を準備することと、前記第1溶液を第2溶液に添加して第3溶液を得て、第3溶液中にハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を析出させることを含むことが好ましい。
【0043】
第1溶液の準備
第1溶液は、ハロゲン化セシウムと水を含む水溶液であることが好ましい。水は、脱イオン水を用いることができる。第1溶液中のハロゲン化セシウムの濃度は、ハロゲン化セシウムの飽和濃度以下であればよい。ハロゲン化セシウムは、臭化セシウムを用いることができる。第1溶液中の臭化セシウムの濃度は、蛍光体粒子を析出しやすくするために、好ましくは0.5molL-1以上5.8molL-1以下の範囲内であり、より好ましくは1.0molL-1以上5.5molL-1以下の範囲内であり、1.5molL-1以上5.0molL-1以下の範囲内であってもよい。ハロゲン化セシウムを脱イオン水等の水中に溶解した第1溶液を、ハロゲン化鉛を有機溶媒に溶解した第2溶液に添加して得られた第3溶液中にハロゲン化セシウム鉛を析出させることにより、得られるハロゲン化セシウム鉛は水分を含む。
【0044】
第2溶液の準備
第2溶液は、ハロゲン化鉛と有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒は、ハロゲン化鉛が溶解する溶媒であればよい。有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、γ-ブチロラクトン(GBL)、ジクロロメタン(DCM)、トルエン、クロロホルム、アセトニトリル、シクロヘキサン、及びヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒を用いることができ、2種以上を併用してもよい。第2溶液中のハロゲン化鉛の濃度は、ハロゲン化鉛の飽和濃度以下であればよい。ハロゲン化鉛は、臭化鉛を用いることができる。第2溶液中の臭化鉛の濃度は、蛍光体粒子を析出しやすくするために、好ましくは0.01molL-1以上0.50molL-1以下の範囲内であり、より好ましくは0.03molL-1以上0.40molL-1以下の範囲内であり、0.05molL-1以上0.30molL-1以下の範囲内であってもよい。
【0045】
第3溶液
第2溶液を撹拌しながら、第2溶液中に第1溶液を滴下し、第1溶液中の臭化セシウムと、第2溶液中の臭化鉛を反応させて、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を析出させる。第1溶液と第2溶液の体積比(第1溶液/第2溶液)は、0.1以上1以下の範囲内であればよく、0.12以上0.8以下の範囲内でもよく、0.15以上0.6以下の範囲内でもよく、0.2以上0.5以下の範囲内でもよい。第1溶液を第2溶液に添加して得られた第3溶液中で臭化セシウムと臭化鉛を反応させる時間は、反応が十分に行われる温度であればよく、好ましくは0.5時間以上5時間以内であり、さらに好ましくは1時間以上3時間以内である。第1溶液を第2溶液に添加して得られた第3溶液中で臭化セシウムと臭化鉛を反応させる温度は、室温であればよく、好ましくは15℃以上35℃以下の範囲内であり、18℃以上30℃以下の範囲内でもよく、20℃から25℃の範囲内でもよい。第1溶液を第2溶液に添加して得られた第3溶液中で臭化セシウムと臭化鉛を反応させる間は、第3溶液の撹拌を連続することが好ましい。
【0046】
複合蛍光体の製造方法において、第3溶液中に析出させた蛍光体粒子を分離する固液分離することを含んでいてもよく、固液分離した蛍光体粒子を洗浄することを含んでいてよく、蛍光体粒子を第1乾燥又は第2乾燥することを含んでいてもよい。
【0047】
ナノ粒子を付着させる工程
複合蛍光体の製造方法は、蛍光体粒子を準備する工程において、第2溶液中に動的光散乱法で測定した平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲内のナノ粒子を添加すること、を含んでいてもよい。ナノ粒子は、前述のナノ粒子を用いることができる。ナノ粒子は、第2溶液中に添加する前に、有機溶媒に分散させてから、ハロゲン化鉛を含む第2溶液に添加してもよい。ナノ粒子は、得られるペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子の表面に付着し、蛍光体粒子の水分を保持することができる量であればよい。第2溶液中に添加するナノ粒子の量は、第3溶液中に析出されるハロゲン化セシウム鉛100質量部に対して、好ましくは10質量部以上250質量部以下の範囲内であり、より好ましくは30質量部以上240質量部以下の範囲内であり、さらに好ましくは100質量部以上230質量部以下の範囲内である。ナノ粒子を添加した第2溶液を撹拌しながら第1溶液を滴下することによって、第1溶液と第2溶液を混合した第3溶液中に、表面にナノ粒子が付着したペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を得ることができる。第3溶液中でペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛が析出するときに、ナノ粒子は析出する表面に押し出されて、蛍光体粒子の表面に付着され、ナノ粒子の一部が蛍光体粒子に埋設し、ナノ粒子の一部が表面に突出する場合がある。後述する固液分離、第1乾燥又は第2乾燥後、蛍光体粒子と蛍光体粒子の表面にナノ粒子が付着された複合蛍光体を得ることができる。
【0048】
複合蛍光体の製造方法は、後述する膜状物を付着させる前に、前記第2溶液中に平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲内のナノ粒子を添加して、前記ナノ粒子を蛍光体粒子の表面に付着させることを含んでいてもよい。
【0049】
固液分離
第3溶液中に析出させた蛍光体粒子は、自然沈降させて上澄みを除去し、固液分離してもよく、遠心分離機を使用し、析出させた蛍光体粒子を沈降させて、上澄みを除去して固液分離してもよい。
【0050】
洗浄
第3溶液から固液分離された蛍光体粒子は、洗浄してもよく、洗浄と固液分離を複数回繰り返してもよい。複数回の洗浄を行う場合には、1回目の洗浄と、1回目以降の洗浄で異なる種類の洗浄液を用いて洗浄してもよい。洗浄液としては、トルエン、ヘキサン等の非極性有機溶媒、又はクロロホルム、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性有機溶媒が挙げられる。洗浄液は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
第1乾燥
複合蛍光体の製造方法は、蛍光体粒子を、15℃以上35℃以下の範囲内の温度で、大気雰囲気で1時間以上の第1乾燥させること、又は凍結乾燥による第2乾燥させることと、を含むことが好ましい。第3溶液に析出された蛍光体粒子を第1乾燥又は第2乾燥させることにより、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下の蛍光体粒子を得ることができる。第1乾燥又は第2乾燥後の蛍光体粒子の水分量は、前記蛍光体粒子の水分の測定条件で、カールフィッシャー法により測定することができる。
【0052】
第1乾燥は、室温で、大気雰囲気で1時間以上、乾燥させてもよい。第1乾燥の温度は、20℃以上30℃以下の範囲内でもよく、20℃から25℃の範囲内でもよい。本明細書において、大気雰囲気は、酸素を20体積%以上含み、大気圧(101.3kPa)雰囲気をいう。第1乾燥する時間は、2時間以上であってもよく、5時間以上であってもよく、10時間以上であってもよい。第1乾燥する時間は、蛍光体粒子の水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下となるように、25時間以内が好ましく、20時間以内でもよく、18時間以内でもよい。
【0053】
第2乾燥
複合蛍光体の製造方法は、蛍光体粒子を、凍結乾燥による第2乾燥をさせてもよい。凍結乾燥による第2乾燥は、蛍光体粒子の水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下となるように、好ましくは-50℃以上-10℃以下、より好ましくは-50℃以上-15℃以下、さらに好ましくは-50℃以上-20℃以下の範囲内の温度で行うことができる。また、凍結乾燥による第2乾燥は、ゲージ圧で、好ましくは1Pa以上100Pa以下、より好ましくは5Pa以上95Pa以下、さらに好ましくは10Pa以上90Pa以下の範囲内の真空で行うことができる。凍結乾燥による第2乾燥は、好ましくは1時間以上20時間以内、より好ましくは1時間以上15時間以内行うことができる。凍結乾燥による第2乾燥は、小型凍結乾燥機(例えばFD-1000及びドライチャンバー、東京理化器械株式会社製)を用いて行うことができる。本明細書において、真空とは、大気圧よりも低い圧力雰囲気をいう。
【0054】
表面処理剤の付着
複合蛍光体の製造方法は、蛍光体粒子に表面処理剤を付着させる工程を含んでいてもよい。蛍光体粒子の表面に表面処理剤を付着させる工程において、表面処理剤又は表面処理剤を含む液中に蛍光体粒子を分散させ、固液分離後、第3乾燥させることを含むことが好ましい。第3乾燥は、例えば20℃から25℃の室温で、ゲージ圧で0Paから-20000Paの真空で行うことが好ましい。表面処理剤は、前述の表面処理剤を用いることができる。表面処理剤が液体である場合には、表面処理剤に蛍光体粒子を分散させてもよい。
【0055】
表面処理剤は、蛍光体粒子100体積部に対して、表面処理剤又は表面処理剤を含む溶液が、400体積部以上3000体積部以下の範囲内であることが好ましく、500体積部以上2800体積部以下の範囲内でもよく、700体積部以上2700体積部以下の範囲内でもよい。表面処理剤又は表面処理剤を含む溶液が、蛍光体粒子100体積部に対して、400体積部以上3000体積部以下の範囲内であると、蛍光体粒子の表面の少なくとも一部を表面処理剤で被覆することができ、表面処理剤が1000体積部以上2500体積部以下の範囲内であると、蛍光体の粒子の表面に略均一に表面処理剤を付着させることができる。
【0056】
複合蛍光体の製造方法は、後述する膜状物を付着させる前に、前記蛍光体粒子の表面に表面処理剤を付着させることを含んでいてもよい。
【0057】
ゾルゲル法による膜状物の付着
複合蛍光体の製造方法は、膜状物を付着させる工程の一態様として、膜状物を付着させる工程において、前記膜状物を、ゾルゲル法により、前記蛍光体粒子の表面に付着させることができる。
【0058】
蛍光体粒子は、Si、Al、Zr、Mg、Ti、Ce、Zn及びSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属アルコキシドを含む溶液に接触させ、金属アルコキシドを加水分解及び縮重合させて、Si、Al、Zr、Mg、Ti、Ce、Zn及びSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物を付着させる。ゾルゲル法によれば、蛍光体粒子を、金属アルコキシドを含む溶液に接触させて、金属アルコキシドを加水分解及び縮重合させることによって、主成分としてSiO、Al、ZrO、MgO、TiO、CeO、ZnO、及びSnOからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物を好ましくは膜状に付着させ、膜状物を備えた複合蛍光体を得ることができる。本明細書において、主成分は、膜状物中にSiO、Al、ZrO、MgO、TiO、CeO、ZnO、及びSnOからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物を50体積%以上含むことをいう。この膜状物が、保護膜として機能し、蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発と、外部からの水分の浸入を抑制して、蛍光体粒子の高い発光効率を維持することができる。
【0059】
金属アルコキシドとしては、アルコキシル基を2つ以上有するシラン化合物であることが好ましく、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブドキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アルミニウムトリブドキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシドが挙げられる。金属アルコキシドは、作業性及び入手容易性を考慮して、テトラエトキシシランであることが好ましい。
【0060】
金属アルコキシドを含む溶液は、作業性を考慮して、有機溶媒を含むことが好ましい。金属アルコキシドを含む溶液に含まれる有機溶媒は、極性有機溶媒であることが好ましく、例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N,N-ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭素数が1~8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルコール、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、アセトン等のケトンが挙げられる。極性有機溶媒は、好ましくは炭素数が1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有する低級アルコール又はケトンであってもよい。極性有機溶媒は、より好ましくは比誘電率が18から33のエタノール又はケトンであってもよい。極性有機溶剤は、具体的には、より好ましくは、メタノール(比誘電率33)、エタノール(比誘電率24)、1-プロパノール(比誘電率20)、2-プロパノール(比誘電率18)、及びアセトン(比誘電率21)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。金属アルコキシドを含む溶液中に酸又はアルカリの触媒を含むことにより、金属アルコキシドの加水分解の分解速度を速めることができる。触媒となる酸又はアルカリの溶液としては、例えば塩酸溶液、アンモニア溶液が挙げられる。
【0061】
原子堆積法による膜状物の付着
複合蛍光体の製造方法は、膜状物を付着させる工程の他の態様として、膜状物を付着させる工程において、膜状物を、原子堆積法により、蛍光体粒子の表面に付着させてもよい。原子堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)により膜状物を形成すると、蛍光体粒子の表面に隙間なく均一な厚みの膜状物を形成することができる。この膜状物が、保護膜として機能し、蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発と、外部からの水分の浸入を抑制して高い発光効率を維持することができる。
【0062】
熱処理
複合蛍光体の製造方法は、蛍光体粒子の表面に膜状物を形成した後、40℃以上120℃以下の温度で熱処理すること、を含んでいてもよい。蛍光体粒子の表面に膜状物を形成した後に、40℃以上120℃以下の温度で熱処理することにより、膜状物が蛍光体粒子の表面に密着する。この膜状物が、保護膜として機能し、蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発と、外部からの水分の浸入を抑制して、蛍光体粒子の高い発光効率を維持することができる。複合蛍光体の製造方法は、ゾルゲル法により膜状物を形成した場合は、40℃以上120℃以下の温度で熱処理することを含むことがより好ましい。膜状物を形成した後に熱処理する時間は、蛍光体粒子に含まれる水分の蒸発を抑制するため、好ましくは0.5時間以上2時間以内であり、0.5時間以上1.5時間以内でもよい。
【0063】
発光装置
次に複合蛍光体を波長変換部材の構成要素として利用した発光装置について説明する。発光装置は、前述の複合蛍光体と、励起光源と、を備える。
【0064】
発光装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。図8は、発光装置の第1実施形態を示す概略断面図である。
【0065】
発光装置100は、凹部を有する成形体40と、光源となる発光素子10と、発光素子10を被覆する蛍光部材50とを備える。成形体40は、第1リード20及び第2リード30と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42とが一体的に成形されてなるものである。成形体40は、凹部の底面を構成する第1リード20及び第2リード30が配置され、凹部の側面を構成する樹脂部42が配置されている。成形体40の凹部の底面に、発光素子10が載置されている。発光素子10は、一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は、第1リード20及び第2リード30とそれぞれワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は、蛍光部材50により被覆されている。蛍光部材50は、発光素子10の発光の波長を変換する蛍光体70を含む。蛍光体70は、複合蛍光体を第1蛍光体71として含む。蛍光体70は、第1蛍光体の発光ピーク波長とは異なる波長範囲が異なる発光ピーク波長を有する第2蛍光体72を含んでいてもよい。
【0066】
発光素子
光源には発光素子を用いることができる。発光素子は380nm以上500nm以下の波長範囲内の光を発する。発光素子は、蛍光体を効率よく励起するために、発光ピーク波長は、400nm以上490nm以下の範囲内であってもよく、420nm以上480nm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0067】
発光素子の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は、例えば30nm以下とすることができる。半導体発光素子としては、例えば窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることができる。蛍光体の半値幅及び発光素子の半値幅は、発光スペクトルにおいて最大発光強度の50%の発光強度を示す発光スペクトルの波長幅を意味する。
【0068】
蛍光部材
蛍光部材は、蛍光体と樹脂とを含む。樹脂は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、及びこれらの変性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を用いることができる。
【0069】
第1蛍光体
蛍光部材は、複合蛍光体を第1蛍光体とし、この第1蛍光体を含んでいてもよい。
【0070】
第1蛍光体は、例えば光源を覆う蛍光部材に含有されて発光装置を構成することができる。光源が第1蛍光体を含有する蛍光部材で覆われた発光装置では、光源から出射された光の一部が第1蛍光体に吸収されて、500nm以上610nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する緑色光に変換されて放射される。380nm以上500nm以下の波長範囲内の光を発する光源を用いることで、放射される光の一部を蛍光部材中の蛍光体がより有効に利用することができる。
【0071】
蛍光部材に含まれる第1蛍光体の量は、発光装置から発せられる混色光の所望の色調に応じて適宜選択することができる。第1蛍光体の含有量は、蛍光部材に含まれる樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下の範囲内で含むことが好ましく、1.0質量部以上10質量部以下の範囲内で含んでいてもよく、1.0質量部以上5.0質量部以下の範囲内で含んでいてもよい。
【0072】
第2蛍光体
蛍光部材は、第1蛍光体とは発光ピーク波長の範囲が異なる第2蛍光体を含んでいてもよい。例えば発光装置は、青色光を放出する発光素子と、これに励起される第1蛍光体と、必要に応じて第2蛍光体を備えることによって、所望の混色光を発することができる。第2蛍光体は、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光により励起されたときに、発光スペクトルにおいて、600nm以上670nm以下の範囲に少なくとも1つの発光ピーク波長を有するものであることが好ましい。
【0073】
第2蛍光体は、例えば(2a)Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種の元素とAlを組成に含み、Euで賦活されるシリコンナイトライド系蛍光体、(2b)Euで賦活されるアルカリ土類金属シリコンナイトライド系蛍光体、(2c)K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選ばれる少なくとも1種と、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を組成に含み、Mnで賦活されるフッ化物蛍光体、及び(2d)Mnで賦活されるフルオロジャーマネート蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含むことが好ましく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。
【0074】
(2a)Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種の元素とAlを組成に含み、Euで賦活されるシリコンナイトライド系蛍光体は、下記式(i)で表される組成を含む蛍光体が挙げられる。
(Ca1-s-tSrEuAlSi (i)
(式(I)中、s、t、u、v、w及びxは、それぞれ0≦s≦1.0、0<t<1.0、0<s+t<1.0、0.8≦x≦1.0、0.8≦u≦1.2、0.8≦v≦1.2、1.9≦u+v≦2.1、2.5≦w≦3.5を満たす数である。)。式(i)で表される組成を含む蛍光体を、CaAlSiN:Eu蛍光体又は(Sr,Ca)AlSiN:Eu蛍光体と表す場合もある。本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を構成する元素及びそのモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
【0075】
(2b)Euで賦活されるアルカリ土類金属シリコンナイトライド系蛍光体は、下記式(ii)で表される組成を含む蛍光体が挙げられる。
(Ca1-p-q-rSrBaEuSi(ii)
式(ii)中、p、q及びrは、0≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0<r<1.0及びp+q+r≦1.0を満たす。
【0076】
(2c)K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素と、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を組成に含み、Mnで賦活されるフッ化物蛍光体は、下記式(iii)で表される組成を含む蛍光体が挙げられる。
[M 1-gMn4+ ] (iii)
式(iii)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、少なくともKを含む元素である。Mは、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Si、Alが挙げられる。gは0<g<0.2を満たす。
【0077】
(2d)Mnで賦活されるフルオロジャーマネート蛍光体は、下記式(iv)で表される組成を含む蛍光体が挙げられる。
(i-j)MgO・(j/2)Sc・kMgF・mCaF・(1-n)GeO・(n/2)M :zMn4+ (iv)
式(iv)中、MはAl、Ga及Inからなる群から選択される少なくとも1種であり、i、j、k、m、n及びzはそれぞれ、2≦i≦4、0≦j<0.5、0<k<1.5、0≦m<1.5、0<n<0.5、及び0<z<0.05を満たす。
【0078】
第2蛍光体が、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光により励起されたときに600nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体である場合、第2蛍光体としては、具体的には、K(Si,Al)F:Mnで表されるフッ化物蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn4+等で表されるマグネシウムフルオロジャーマネート蛍光体、CaSi:Eu、(Ba,Sr)Si:Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Eu、CaAlSiN:Eu、SrLiAl:Eu等が挙げられる。第2蛍光体は、発光スペクトルにおける半値幅が10nm以下と狭く、色純度が高く、色再現性に優れた前記(2c)で表されるフッ化物蛍光体を用いることが好ましい。
【0079】
蛍光部材に含まれる第2蛍光体の量は、発光装置から発せられる混色光の所望の色調に応じて適宜選択することができる。第2蛍光体の含有量は、蛍光部材に含まれる樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下の範囲内で含むことが好ましく、1.0質量部以上10質量部以下の範囲内で含んでいてもよく、1.0質量部以上5.0質量部以下の範囲内で含んでいてもよい。
【0080】
蛍光部材は、樹脂及び蛍光体に加えて、フィラー、光拡散材等を更に含んでいてもよい。フィラーや光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。
【0081】
波長変換部材
第1実施形態の発光装置に用いた蛍光部材とは異なる形態の波長変換部材について説明する。波長変換部材は、前述の複合蛍光体と、樹脂を含む透光性部材とを備える。以下、図面を参照にして、波長変換部材及び波長変換部材を用いた発光装置の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」「層」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、「フィルム」は、シートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられ、また「シート」はフィルムとも呼ばれ得るような部材も含む意味で用いられる。
【0082】
図9は、第1実施形態に係る波長変換部材51の概略断面図である。波長変換部材51は、前述の複合蛍光体を含む波長変換シート55と、樹脂を含む透光性部材56と、を備える。波長変換部材51は、波長変換シート55の光の入射面又は出射面となる少なくとも一方の面にシート状の透光性部材56を備える。
【0083】
図10は、第2実施形態に係る波長変換部材52の概略断面図である。波長変換部材52は、前述の複合蛍光体を含む波長変換シート55と、波長変換シート55の光の入射面及び出射面の両面にシート状の第1透光性部材57と、シート状の第2透光性部材58と、を備える。
【0084】
図11は、第3実施形態に係る波長変換部材53の概略断面図である。波長変換部材53は、前述の複合蛍光体を含む第1蛍光体を含む第1波長変換シート55と、第1蛍光体とは発光ピーク波長の範囲が異なる第2蛍光体を含む第2波長変換シート59と、第2波長変換シート59に接合された樹脂を含む透光性部材56と、を備える。
【0085】
図12は、第4実施形態に係る波長変換部材54の概略断面図である。波長変換部材54は、前述の複合蛍光体を含む第1蛍光体を含む第1波長変換シート55と、第1蛍光体とは発光ピーク波長の範囲が異なる第2蛍光体を含む第2波長変換シート59と、第1波長変換シート55に接合された第1透光性部材57と、第2波長変換シート59に接合された樹脂を含む第2透光性部材58と、を備える。
【0086】
波長変換シート
波長変換シートは、前述の複合蛍光体と、樹脂とを含む。波長変換シートは、前述の複合蛍光体と、樹脂とを含む波長変換シート用組成物をシート状に形成することができる。波長変換シートには、前述の複合蛍光体を第1蛍光体として、第1蛍光体とは発光ピーク波長の範囲が異なる第2蛍光体を含んでいてもよい。第2蛍光体は、前述の第2蛍光体を用いることができる。波長変換部材は、複数の波長変換シートを備え、前述の複合蛍光体を第1蛍光体として含む第1波長変換シートと、第1蛍光体とは発光ピーク波長の範囲が異なる第2蛍光体を含む第2波長変換シートと、を備えていてもよい。
【0087】
波長変換シートに含まれる樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びこれらの変性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を用いることができる。
【0088】
波長変換シートに含まれる第1蛍光体又は第2蛍光体の含有量は、波長変換シートに含まれる樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下の範囲内で含むことが好ましく、1.0質量部以上10質量部以下の範囲内で含んでいてもよく、1.0質量部以上5.0質量部以下の範囲内で含んでいてもよい。
【0089】
波長変換シートの厚さは、30μm以上800μm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50μm以上500μm以下の範囲内であってもよい。波長変換シートの厚さが70μm以上400μm以下の範囲内であれば、放熱性を維持した状態で所望の色調の発光色が得られる量の複合蛍光体を含む蛍光体を、波長変換シートに含有させることができる。
【0090】
波長変換シートを形成する方法としては、例えば印刷法、圧縮成形法等が挙げられる。印刷法により波長変換シートを形成する場合は、基材に、波長変換シート用組成物を印刷法により塗布し硬化する。
【0091】
透光性部材
波長変換部材は、波長変換シートの光の入射面又は出射面となる少なくとも一方の面に透光性部材を備える。
【0092】
透光性部材は、樹脂を含み、波長変換シートの保護部材としても機能する。透光性部材は、複数の異なる種類の樹脂の層を含み、無機酸化物で形成されたバリア層を含むものであってもよい。透光性部材の全体の厚みは、特に制限されないが、強度及び小型化の要望を満たすために、好ましくは5μm以上500μm以下の範囲内であり、10μm以上450μmの範囲内でもよく、15μm以上400μm以下の範囲内でもよく、20μm以上350μm以下の範囲内でもよい。
【0093】
図13は、複数の異なる種類の樹脂の層が積層された透光性部材の一例を示す概略断面図である。透光性部材56は、第1接合層56a、第1保護層56b、第2接合層56c、第2保護層56d、ガスバリア層又は水蒸気のバリア層56e、帯電防止層又は第3接合層56fが積層された積層構造を有していてもよい。
【0094】
第1保護層及び第2保護層を構成する樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂等が挙げられる。第1接合層を構成する樹脂としては、例えばアクリル系樹脂等が挙げられる。第2接合層を構成する樹脂としては、例えばポリイソフタル酸エステル樹脂等が挙げられる。ガス又は水蒸気のバリア層を構成する物質としては、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物が挙げられる。帯電防止層を構成する樹脂としては、例えばポリイミド樹脂等が挙げられる。第3接合層を構成する樹脂としては、例えばウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0095】
発光装置
前述の複合蛍光体を含む波長変換部材を備えた発光装置の一実施形態について説明する。発光装置は、前述の波複合蛍光体を含む長変換部材と、励起光源とを備える。波長変換部材は、前述の第1実施形態から第4実施形態に係るどの波長変換部材であってもよい。
【0096】
発光装置の第2実施形態について説明する。図14は、発光装置の第2実施形態の概略断面図である。図15は、発光装置の第2実施形態の概略斜視図である。
【0097】
発光装置200は、励起光源となる発光素子11と、第1実施形態に係る波長変換部材51と、を備える。波長変換部材51は、前述の複合蛍光体を含む波長変換シート55と、波長変換シート55の出射側の面に透光性部材56と、を備える。波長変換部材は、第1実施形態の波長変換部材51、第2実施形態の波長変換部材52、第3実施形態の波長変換部材53及び第4実施形態の波長変換部材54からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。発光素子11は、基板90の配線91上に導電性部材61を介して、フリップチップ実装されている。基板90は、配線91と、配線91を保持する基体92とを備える。波長変換部材51は、前面視において、発光素子11の全面を覆い隠す大きさである。波長変換部材51の光の入射面51aは、発光素子11の一つの面に導光部材62を介して接着されている。被覆部材80は、基板90上に形成され、導電性部材61、発光素子11、導光部材62及び波長変換部材51の側面を被覆し、導電性部材61、発光素子11、導光部材62及び波長変換部材51の全周囲を包囲している。波長変換部材51の前面と被覆部材80の前面は、実質的に同一面を構成している。発光素子11は前述の発光素子10と同様の発光素子を用いることができる。
【0098】
基板
基板は、少なくとも、配線と、その配線を保持する基体と、により構成される。このほか、基板は、ソルダーレジスト又はカバーレイ等の絶縁性保護膜を含んでいてもよい。
【0099】
配線
配線は、基体の少なくとも上面(前面)に形成され、基体の内部及び/若しくは側面及び/若しくは下面(後面)にも形成されていてもよい。また、配線は、発光素子が実装される素子接続端子部、外部回路と接続される外部接続端子部、及びこれら端子部間を接続するリード配線部等を有することが好ましい。配線は、銅、鉄、ニッケル、タングステン、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン、パラジウム、ロジウム、又はこれらの合金で形成することができる。
【0100】
基体
基体は、リジッド基板であれば、樹脂若しくは繊維強化樹脂、セラミックス、ガラス、金属、紙等を用いて構成することができる。
【0101】
導電性部材
導電性部材としては、金、銀、銅等のバンプ、銀、金、銅、プラチナ、アルミニウム、パラジウム等の金属粉末と樹脂バインダを含む金属ペーストの少なくとも一つを用いることができる。
【0102】
導光部材
導光部材は、発光素子と波長変換部材を接着し、発光素子からの光を波長変換部材に導光する部材である。導光部材の母材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの変性樹脂が挙げられる。
【0103】
被覆部材
被覆部材は、前方への光取り出し効率の観点から、発光素子の発光ピーク波長における光反射率が、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0104】
被覆部材の樹脂
被覆部材を構成する樹脂は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの変性樹脂が挙げられる。
【0105】
白色顔料
白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムのうちの一種を単独で、又はこれらのうちの二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
発光装置の製造方法
発光装置の製造方法は、特開2017-188592号公報に記載の方法によって、発光装置を製造することができる。
【0107】
発光装置の第3実施形態について説明する。図16は、発光装置の第3実施形態の概略断面図である。図17は、発光装置の第3実施形態の概略平面図である。
発光装置300の第3実施形態は、上面発光型である。上面発光型の発光装置は画像表示装置に使用することができる。発光装置300は、第2実施形態に係る発光装置200と共通する部材には、同一の符号を付す。発光装置300は、例えば500μm以下の薄い基体93と、配線91A及び91Bを備えた基板90を用いる。また、波長変換部材52は、第2実施形態の波長変換部材52を用いた例を示した。波長変換部材は、第1実施形態の波長変換部材51、第2実施形態の波長変換部材52、第3実施形態の波長変換部材53及び第4実施形態の波長変換部材54からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。波長変換部材52の光の入射面は、発光素子11の一つの面に導光部材62を介して接合されている。発光装置300は、基体93を備える基板90を備え、その他の部材は、発光装置200と共通する。
【0108】
例えばバックライトで用いる発光装置において、青色光を発する発光素子と、緑色光を発する緑色蛍光体と、赤色光を発する赤色蛍光体と、を用いることで、広い範囲の発光色を導くことができる。
【実施例
【0109】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
実施例及び比較例において使用した試薬等は以下のとおりである。
臭化セシウム(CsBr)(東京化成工業株式会社製)
臭化鉛(II)(PbBr)(Stream Chemicals製)
ジメチルスルホキシド(DMSO)(特級、富士フィルム和光純薬株式会社製)
アセトン(濃度99質量%、富士フィルム和光純薬株式会社製)
エチルシリケート28(コルコート株式会社製)
アンモニア水(特級、富士フィルム和光純薬株式会社製)
オレイルアミン(東京化成工業株式会社製)
コロイダルシリカ水溶液(スノーテックスO、動的光散乱法により測定した平均粒径12nm、20質量%水溶液、日産化学株式会社製)
アルミニウム-Sec-ブトキシド(東京化成工業株式会社製)
トルエン(脱水、関東化学株式会社製)
【0111】
蛍光体粒子及び複合蛍光体の製造に使用した装置は以下のとおりである。
シリンジポンプ(YSP-101、株式会社ワイエムシィ(YMC)製)
遠心分離機(CN-2060、アズワン株式会社製)
小型凍結乾燥機(FDS-1000及びドライチャンバー、東京理化器械株式会社製)
【0112】
蛍光体粒子の製造例1
臭化セシウム3.192gを脱イオン水4.5mLに溶解した第1溶液を準備した。第1溶液中の臭化セシウムの濃度は、3.333molL-1であった。
臭化鉛(II)0.688gをジメチルスルホキシド(DMSO)15mLに溶解した第2溶液を準備した。第2溶液中の臭化鉛の濃度は、0.125molL-1であった。
第2溶液を撹拌しながら、第1溶液を第2溶液中にマイクロピペットを使用いて滴下し、第1溶液と第2溶液を混合した第3溶液を得た。
第1溶液の滴下終了後、第3溶液を2時間撹拌して臭化セシウムと臭化鉛を反応させて、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を析出させた。
臭化セシウムと臭化鉛の反応終了後、遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて、固液分離した。
得られた蛍光体粒子をトルエンで第1洗浄した。洗浄後の蛍光体粒子を再び遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
第1洗浄後の蛍光体粒子をクロロホルムで第2洗浄し、第2洗浄後の蛍光体粒子を再び遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。固液分離後、まだ水に濡れている状態の蛍光体粒子の水分量を後述するカールフィッシャー法で測定したところ、蛍光体粒子の水分量は5.98質量%であった。この結果から、溶液中に析出させて得られた蛍光体粒子は、例えば後述する第1乾燥前又は第2乾燥前に自然乾燥させた場合であっても、乾燥時間にもよるが、少なくとも6.0質量%以下の水分量を含んでいることが確認できた。
第2洗浄後の蛍光体粒子をドラフト内で15時間、室温(20℃から25℃)、大気雰囲気で第1乾燥させ、製造例1の蛍光体粒子を得た。
【0113】
蛍光体粒子の製造例2
第1乾燥工程において、室温(20℃から25℃)、大気雰囲気で15時間、第1乾燥する代わりに、室温(20℃から25℃)、窒素雰囲気(Nガス100体積%)で148時間、第1乾燥させたこと以外は、製造例1と同様にして、製造例2の蛍光体粒子を得た。
【0114】
蛍光体粒子の製造例3
第1乾燥工程において、室温(20℃から25℃)、大気雰囲気で15時間、第1乾燥する代わりに、試料を予め液体窒素で凍結させた後、小型凍結乾燥機を用いて、ゲージ圧で-30℃、100Pa以下の真空で15時間凍結乾燥による第2乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして、製造例3の蛍光体粒子を得た。
【0115】
蛍光体粒子の製造例4
臭化セシウム63.843gを脱イオン水90mLに溶解した第1溶液を準備した。第1溶液中の臭化セシウムの濃度は、3.333molL-1であった。
臭化鉛(II)13.763gをジメチルスルホキシド(DMSO)300mLに溶解した第2溶液を準備した。
第2溶液を撹拌しながら、第1溶液を第2溶液中にシリンジポンプを使用して、5mL/分の速度で滴下し、第1溶液と第2溶液を混合した第3溶液を得た。
第1溶液の滴下終了後、第3溶液を2時間撹拌して臭化セシウムと臭化鉛を反応させて、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含む蛍光体粒子を析出させた。
臭化セシウムと臭化鉛の反応終了後、遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて、固液分離した。
得られた蛍光体粒子をジメチルスルホキシド(DMSO)とアセトンを体積比で1:1となるように混合した混合液で第1洗浄した。洗浄後の蛍光体粒子を再び遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
第1洗浄後の蛍光体粒子をアセトンで第2洗浄し、第2洗浄後の蛍光体粒子を再び遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
第2洗浄後の蛍光体粒子をドラフト内で15時間、室温(20℃から25℃)、大気雰囲気で第1乾燥させ、製造例4の蛍光体粒子を得た。
【0116】
蛍光体粒子の製造例5
コロイダルシリカ水溶液20g、ジメチルスルホキシド(DMSO)20gを100mLのナスフラスコに計量して混合し、混合液を得た。この混合液を、エバポレーターを使用して-1000Paから-20000Paまで減圧しながら、135分撹拌して、水分を揮発させ、コロイダルシリカ分散液を得た。このコロイダルシリカ分散液の残水分量は0.16質量%であり、コロイダルシリカの濃度は18.6質量%であった。コロイダルシリカ分散液の残水分量は、コロイダルシリカ分散液を、エバポレーターを使用して45℃で135分かけて水分を揮発させ、水分を揮発させた後の分散液全体の質量を測定し、水分を揮発させる前のコロイダルシリカ分散液の質量で除した割合を示す。
臭化セシウム3.192gを脱イオン水3.9mLに溶解した第1溶液を準備した。第1溶液中の臭化セシウムの濃度は、3.844molL-1であった。
臭化鉛(II)0.688gをジメチルスルホキシド(DMSO)8.8mLに溶解した第2溶液を準備した。第2溶液中の臭化鉛の濃度は、0.213molL-1であった。
第2溶液に予め準備したコロイダルシリカ分散液9.143gを混合し、コロイダルシリカを含有した第2溶液を得た。この第2溶液を撹拌しながら、第1溶液を第2溶液中にマイクロピペットを使用いて滴下し、第1溶液と第2溶液を混合した第3溶液を得た。
第1溶液の滴下終了後、第3溶液を2時間撹拌して臭化セシウムと臭化鉛を反応させて、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含み、コロイダルシリカからなるナノ粒子を表面に付近に存在させた蛍光体粒子を析出させた。
臭化セシウムと臭化鉛の反応終了後、遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて、固液分離した。
得られた蛍光体粒子をジメチルスルホキシド(DMSO)とアセトンを体積比で1:1となるように混合した混合液で第1洗浄した。洗浄後の蛍光体粒子を再び遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
第1洗浄後の蛍光体粒子をアセトンで第2洗浄し、第2洗浄後の蛍光体粒子を再び遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
第2洗浄後の蛍光体粒子をドラフト内で15時間、室温(20℃から25℃)、大気雰囲気で第1乾燥させ、製造例5の表面にナノ粒子が埋め込まれた蛍光体粒子を得た。ナノ粒子の含有量は、蛍光体粒子100質量%に対して、3.4質量%であった。蛍光体粒子中のナノ粒子の含有量は、蛍光体粒子に含まれるケイ素(Si)の量を、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emision Spectroscopy)を用いて測定し、元素分析の結果からナノ粒子の含有量を算出した。
【0117】
蛍光体粒子の評価
発光特性
得られた各蛍光体粒子について、発光特性を測定した。蛍光体粒子の発光特性は、量子効率測定装置(QE-2100、大塚電子株式会社製)を用いて、発光ピーク波長が450nmである励起光を蛍光体粒子に照射し、室温(25℃)における発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから、内部量子効率(%)、発光ピーク波長(nm)、発光ピークの半値幅(nm)を求めた。内部量子効率(%)は、蛍光体粒子に吸収された光量子のうち、発光に変換された光量子の割合であり、発光光量子数(%)を吸収光量子数(%)で除すことにより算出した。
【0118】
水分量の測定
得られた各蛍光体粒子の水分量は、各蛍光体粒子を200℃まで加熱して、蛍光体粒子中の水分を揮発させ、卓上型電量法水分計(CA-100、三菱ケミカル株式会社製)を用いて、カールフィッシャー電量滴定法で測定した。図18は、製造例1から4に係る各蛍光体粒子の水分量と内部量子効率の関係を示すグラフである。
【0119】
SEM写真-2次電子像
走査型電子顕微鏡(SEM、JIS-IT200、日本電子株式会社製)を用いて、蛍光体粒子の2次電子像であるSEM写真を得た。図19は、製造例4の蛍光体粒子のSEM写真(2次電子像)である。図24は、製造例5の蛍光体粒子のSEM写真(2次電子像)である。
【0120】
SEM写真-反射電子
製造例4に係る蛍光体粒子をエポキシ樹脂に包埋し、樹脂を硬化させた後に、蛍光体粒子の断面が露出するように切削し、表面を紙やすりで研磨した後、クロスセクションポリッシャー(CP)で表面を仕上げ、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM、SU8230、株式会社日立ハイテク製)を用いて、製造例4に係る蛍光体粒子の断面の反射電子像のSEM写真を得た。図20は、製造例4の蛍光体粒子の断面のSEM写真(反射電子像)である。
【0121】
カソードルミネッセンス(CL:Cathodluminescence)法
製造例4に係る蛍光体粒子の断面を、Mini-CL(GATAN社製)を備えた、FIB/SEM装置(NB5000、日立製作所社製)を用いて、カソードルミネッセンス法により加速電子を照射し、製造例4に係る蛍光体粒子の発光の状態を確認した。カソードルミネッセンス法で解析した製造例4に係る蛍光体粒子の断面のSEM(CL像)写真を得た。図21は、カソードルミネッセンス法で解析した製造例4に係る蛍光体粒子の断面のSEM写真(CL像)である。
【0122】
X線回折法
CuKα線を用いたX線回折(XRD:X-ray Diffraction)法により、製造例4に係る蛍光体粒子の粉砕前のXRDパターンと、製造例4に係る蛍光体粒子の粉砕後のXRDパターンを測定した。XRDパターンの測定は、X線回折装置(MiniFlex、株式会社リガク製)を用いて、走査範囲10°以上16°以下の範囲内(10°≦2θ≦16°)、線源:CuKα、スキャン速度2deg/分、測定方法:FT、係数単位:強度(Counts))の条件で行った。図22に、粉砕前の製造例4に係る蛍光体粒子のXRDパターンを示す。図23に、粉砕後の製造例4に係る蛍光体粒子のXRDパターンを示す。
【0123】
体積平均粒径(μm)
得られた各蛍光体粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法を用いたレーザー回折式粒度分布測定装置(MASTER SIZER2000、MALVERN社製)を用いて、体積基準の粒度分布において、小径側からの体積累積頻度が50%に達する体積平均粒径を測定した。
【0124】
【表1】
【0125】
製造例1から5の蛍光体粒子は、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛を含んでいた。製造例1、3、4及び5の蛍光体粒子は、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%以上6.0質量%以下の範囲内であり、内部量子効率が48%以上と高くなった。製造例2の蛍光体粒子は、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1質量%未満であり、内部量子効率が28%であり、製造例1、3及び4の蛍光体粒子よりも内部量子効率が低くなった。
【0126】
図18は、製造例1から4に係る各蛍光体粒子の水分量と内部量子効率の関係を示すグラフである。蛍光体粒子中に0.1質量%以上6.0質量%以下の水分が存在すると、CsPbBrで表される結晶構造中の欠損が水酸基(OH)で埋められ、内部量子効率が高くなった。製造例2に係る蛍光体粒子のように、水分量が0.1質量%未満であると、蛍光体粒子中に含まれるペロブスカイト型構造を有するCsPbBrで表される結晶の欠損が水酸基等で埋められなくなり、内部量子効率が低くなったと推測された。蛍光体粒子の水分量が、例えば製造例4に係る蛍光体粒子のように水分量が0.17質量%であると、内部量子効率は60質量%以上と高くなる。
【0127】
図19は、製造例4に係る蛍光体粒子の2次電子像のSEM写真である。製造例4に係る蛍光体粒子は、ハロゲン化セシウム鉛の結晶が成長したものであることが推測できる。
【0128】
図20は、製造例4に係る蛍光体粒子の断面の反射電子像のSEM写真である。製造例4に係るペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛からなる蛍光体粒子は、断面の中に細かい粒状の濃淡が確認できた。この結果からペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛からなる蛍光体粒子は、CsPbBrで表される組成を有する結晶がマトリックスとなり、このマトリックス中にCsPbBrで表される組成を有する結晶が埋め込まれていると推測された。
【0129】
図21は、製造例4に係る蛍光体粒子の断面にカソードルミネッセンス法により加速電子を照射し、蛍光体粒子の断面における発光の状態を確認したCL像のSEM写真である。製造例4に係るペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛からなる蛍光体粒子は、断面において部分的に発光(図21の白色点部分)していることが確認できた。この結果から、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛からなる蛍光体粒子は、CsPbBrで表される組成を有する結晶がマトリックスとなり、このマトリックス中にCsPbBrで表される組成を有する結晶が埋め込まれ、マトリックス中に埋め込まれたCsPbBrで表される組成を有する結晶が発光していることが確認できた。
【0130】
図22は、粉砕前の製造例4に係る蛍光体粒子のXRDパターンを示す。粉砕前のペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛からなる蛍光体粒子は、CsPbBrで表される結晶に由来するピークが確認できたが、CsPbBrで表される結晶に由来するピークは確認できなかった。これは、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛中に含まれる立方晶系のCsPbBrで表される結晶が少なく、蛍光体粒子の表面にCsPbBrで表される結晶が存在しないため、三方晶系のCsPbBrで表される結晶に由来するピークのみが確認できたと推測された。
【0131】
図23は、粉砕後の製造例4に係る蛍光体粒子のXRDパターンを示す。粉砕後のペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛からなる蛍光体粒子は、三方晶系のCsPbBrで表される結晶に由来するピークとともに、立方晶系のCsPbBrで表される結晶に由来するピークが確認できた。この結果から、ペロブスカイト型構造を有するハロゲン化セシウム鉛からなる蛍光体粒子は、三方晶系のCsPbBrで表される組成を有する結晶がマトリックスとなり、このマトリックス中に立方晶系のCsPbBrで表される組成を有する結晶が埋め込まれており、蛍光体粒子の粉砕によって、マトリックス中に埋め込まれていたCsPbBrで表される結晶が表面に現れて、CsPBBrで表される結晶に由来するピークが確認できたと考えられた。
【0132】
図24は、製造例5に係る蛍光体粒子のSEM写真である。製造例5に係る蛍光体粒子は、ハロゲン化セシウム鉛の結晶が成長したものであり、表面にナノ粒子が存在していた。
【0133】
実施例1
製造例4の蛍光体粒子1.0gをアセトン3mLに分散させて、蛍光体粒子分散液を得た。
この蛍光体粒子分散液を撹拌しながら、蛍光体粒子分散液に、エチルシリケート28を1mLと、15質量%のアンモニア水1mLと、を混合した混合液を、シリンジポンプを使用して90分かけて滴下した。
混合液の滴下終了後、撹拌を止めて、蛍光体粒子に膜状物を付着させた複合蛍光体を自然に沈降させ、シリカ微粒子で白濁した上澄み液を除去した。
その後、アセトンで洗浄し、複合蛍光体を自然に沈降させ、上澄み液を除去した。上澄み液が無色透明になるまでアセトンで洗浄を3回繰り返した。洗浄後の複合蛍光体を、遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、複合蛍光体を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
得られた複合蛍光体を2時間、室温(20℃から25℃)、大気雰囲気で第1乾燥した。第1乾燥した複合蛍光体を、1時間、100℃、大気雰囲気で熱処理して、実施例1の複合蛍光体を得た。
【0134】
実施例2
第1乾燥した複合蛍光体を、1時間、80℃、大気雰囲気で熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の複合蛍光体を得た。
【0135】
実施例3
第1乾燥した複合蛍光体を、1時間、50℃、大気雰囲気で熱処理したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の複合蛍光体を得た。
【0136】
参考例
製造例4の蛍光体粒子2.0g(100体積部)をオレイルアミン10mL(2000体積部)中に分散させて24時間撹拌し、表面処理した。撹拌終了後、遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、表面処理後の蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
得られた表面処理後の蛍光体粒子にエタノールを加えて洗浄し、遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、表面処理後の蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
得られた表面処理後の蛍光体粒子を15時間、室温(20℃から25℃)、ゲージ圧で-10000Paの真空で第3乾燥し、参考例4のオレイルアミンである表面処理剤を表面に付着させた蛍光体粒子を得た。
【0137】
実施例5
参考例4で得られたオレイルアミンを表面に付着させた蛍光体粒子を用いて、実施例1と同様にして、膜状物を付着させた実施例5の複合蛍光体を得た。
【0138】
実施例6
製造例5のナノ粒子が表面に付着された蛍光体粒子を実施例6の複合蛍光体として得た。
【0139】
実施例7
製造例5の蛍光体粒子1.5gをアセトン4.5mLに分散させて、蛍光体粒子分散液を得た。この蛍光体粒子分散液を撹拌しながら、蛍光体粒子分散液に、エチルシリケート28を1.5mLと、15質量%のアンモニア水1.5mLと、を混合した混合液を、シリンジポンプを使用して90分かけて滴下した。混合液の滴下終了後、撹拌を止めて、蛍光体粒子に膜状物を付着させた複合蛍光体を自然に沈降させ、シリカ微粒子で白濁した上澄み液を除去した。その後、アセトンで洗浄し、複合蛍光体を自然に沈降させ、上澄み液を除去した。上澄み液が無色透明になるまでアセトンで洗浄を3回繰り返した。洗浄後の複合蛍光体を、遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、複合蛍光体を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
得られた複合蛍光体を2時間、室温(20℃から25℃)、大気雰囲気で第1乾燥した。第1乾燥した複合蛍光体を、1時間、50℃、大気雰囲気で熱処理して、実施例7の複合蛍光体を得た。
【0140】
実施例8
製造例4の蛍光体粒子3.0gをアセトン10mLに分散させて、蛍光体粒子分散液を得た。アルミニウム-sec-ブトキシド1.25mLをトルエン1.25mLに溶解したアルミニウム-sec-ブトキシド溶液を作製した。
この蛍光体粒子分散液を撹拌しながら、蛍光体粒子分散液に、アルミニウム-sec-ブトキシド溶液2.5mLと、15質量%のアンモニア水0.6mLと、を混合した混合液を、シリンジポンプを使用して45分かけて滴下した。
混合液の滴下終了後、撹拌を止めて、蛍光体粒子に膜状物を付着させた複合蛍光体を自然に沈降させ、遠心分離機を使用して5000rpmで10分間遠心分離を行い、複合蛍光体を沈降させ、上澄み液を捨てて固液分離した。
得られた複合蛍光体を2時間、室温(20℃から25℃)、大気雰囲気で第1乾燥した。第1乾燥した複合蛍光体を、1時間、50℃、大気雰囲気で熱処理して、実施例8の複合蛍光体を得た。
【0141】
複合蛍光体の評価
発光特性
複合蛍光体の発光特性は、蛍光体粒子の発光特性と同様にして、内部量子効率(%)、発光ピーク波長(nm)及び半値幅(nm)を求めた。
【0142】
SEM写真-2次電子像
走査型電子顕微鏡(SEM、JSM-IT200、日本電子株式会社製)を用いて、各複合蛍光体のSEM写真を得た。
【0143】
SEM写真-反射電子
実施例5に係る複合蛍光体をエポキシ樹脂に包埋し、樹脂を硬化させた後に、複合蛍光体の断面が露出するように切削し、表面を紙やすりで研磨した後、クロスセクションポリッシャー(CP)で表面を仕上げ、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置を用いて切り出し、切り出した部分を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM、SU8230、株式会社日立ハイテク製)を用いて、実施例5に係る複合蛍光体の断面の反射電子像のSEM写真を得た。
【0144】
耐久性(真空乾燥後の内部量子効率)
得られた各複合蛍光体(1.0g)を室温(20℃から25℃)で60時間、ゲージ圧で-10000Paの真空で乾燥し(第4乾燥ともいう。)、第4乾燥後の内部量子効率を、蛍光体粒子の発光特性と同様にして求めた。
【0145】
【表2】
【0146】
実施例1から8に係る複合蛍光体は、膜状物を付着させた場合においても、内部量子効率が45%以上であり、高い発光特性を維持していた。また、実施例1から8に係る複合蛍光体は、発光ピーク波長が450nmである励起光を吸収して、520nm以上530nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピークの半値幅が25nm以下と狭かった。また、実施例1から7に係る複合蛍光体は、60時間、真空で第4乾燥した後も内部量子効率が35%以上であり、高い発光特性を維持していた。実施例8に係る複合蛍光体は、実施例1から3に係る複合蛍光体と同様の傾向になると推測されたため、耐久性を測定していない。
【0147】
図25は、実施例1に係る複合蛍光体の2次電子像のSEM写真である。実施例1に係る複合蛍光体は、蛍光体粒子の表面にゾルゲル法により二酸化ケイ素を含む膜状物が付着していた。
【0148】
図26は、実施例1に係る複合蛍光体の断面の反射電子像のSEM写真である。実施例1に係る複合蛍光体は、蛍光体粒子の表面にゾルゲル法により二酸化ケイ素を含む膜状物が付着していた。膜状物の厚みは、部位によって若干の差があり、1μmから3μm程度であり、平均して約2μmであった。
【0149】
図27は、実施例5に係る複合蛍光体の2次電子像のSEM写真である。表面処理により、蛍光体粒子の表面に表面処理剤であるオレイルアミンが付着し、ゾルゲル法による二酸化ケイ素を含む膜状物が付着しやすくなり、複合蛍光体の表面に凹凸が形成されていた。蛍光体粒子の表面をオレイルアミン等の表面処理剤で処理すると、膜状物と蛍光体粒子の密着性が向上すると推測された。
【0150】
図28は、実施例7に係る複合蛍光体の2次電子像のSEM写真である。実施例7に係る複合蛍光体は、蛍光体粒子の表面にナノ粒子が付着しているため、ナノ粒子がアンカーとなって、蛍光体粒子とゾルゲル法による二酸化ケイ素を含む膜状物の密着性がよくなり、蛍光体粒子の表面の全面に膜状物が付着していた。
【0151】
図29は、実施例8に係る複合蛍光体の2次電子像のSEM写真である。実施例8に係る複合蛍光体は、蛍光体粒子の表面にゾルゲル法により酸化アルミニウムを含む膜状物が付着していた。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本開示の実施形態に係る複合蛍光体は、各種照明用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源等に有用である。特に、液晶を使った画像表示装置のバックライトユニットに有利に適用できる。本開示の実施形態に係る発光装置は、モバイル機器の表示装置用のバックライトにも有利である。一般照明用の発光装置、車両用の発光装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0153】
10、11:発光素子、20:第1リード、30:第2リード、40:成形体、42:樹脂部、50:蛍光部材、51、52、53、54:波長変換部材、55:波長変換シート、第1波長変換シート、56:透光性部材、57:第1透光性部材、58:第2透光性部材、59:第2波長変換シート、60:ワイヤ、61:導電性部材、62:導光部材、70:蛍光体、71:第1蛍光体、72:第2蛍光体、80:被覆部材、90:基板、100、200、300:発光装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29