(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】建築物、建設方法、設置方法、機器制御システム、及び、空調装置
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20240703BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E04B9/00 K
E04B9/00 G
F24F1/0007 401E
(21)【出願番号】P 2020561372
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2019048868
(87)【国際公開番号】W WO2020129828
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2018235516
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】原口 圭
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-037117(JP,A)
【文献】特開平11-273447(JP,A)
【文献】特開平04-000897(JP,A)
【文献】特開2009-222280(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0129075(KR,A)
【文献】中国実用新案第206131167(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00- 9/36
F24F 1/0007
F24F 11/00-11/89
F21V 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を建設する方法であって、
天井裏に、空調装置への電源供給のための第1配線を設ける工程と、
複数の天井材を吊り材で固定して天井を形成する工程と、
照明灯具への電源供給のためのコネクタ受け部が設けられ、前記第1配線からの電源供給を受け、コンバータにより変換された電源電圧を前記照明灯具に供給する前記空調装置を用意する工程と、
前記空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具を用意する工程と、
前記空調装置から電源供給を受けるための第1コネクタを一端に有し、前記照明灯具と接続するための第2コネクタを他端に有する第2配線を、前記空調装置から電源供給を受ける前記照明灯具の数分用意する工程と、
前記天井材に設けられた前記空調装置用の開口を介して、形成された天井の上方にある天井裏空間に配された前記第1配線と、形成された天井の下方にある居室空間において用意された前記空調装置とを接続する工程と、
前記第2配線の第1コネクタを、前記空調装置に設けられた前記コネクタ受け部に接続する工程と、
前記空調装置を吊り材で固定する工程と、
前記コネクタ受け部に前記第2配線が接続され、かつ、吊り材で固定された前記空調装置を、天井に設置する工程と、
前記空調装置から電源供給を受ける前記照明灯具の数分用意された前記第2配線を、天井裏空間を通るようにして、前記空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具に接続する工程と、
を有する方法。
【請求項2】
前記空調装置を用意する工程において、複数の前記コネクタ受け部が設けられた前記空調装置を用意し、
前記コネクタ受け部に接続する工程において、前記空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具の数分用意された前記第2配線の第1コネクタを、前記空調装置に設けられた複数の前記コネクタ受け部に接続し、
前記照明灯具に接続する工程において、前記空調装置に接続する前記照明灯具の数分用意された前記第2配線の前記第2コネクタを、前記空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具のそれぞれに接続する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照明灯具に接続する工程において、天井に設置される前記空調装置の周囲に配置された複数の前記天井材に設けられた開口を介して天井に設置される複数の前記照明灯具に、前記第2配線を接続する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2配線が接続された前記照明灯具を、天井に設置する工程をさらに有し、
前記空調装置を用意する工程において、形成される天井に設置する複数の前記空調装置を用意し、
複数の前記空調装置のそれぞれが、近傍に設置される複数の前記照明灯具と電気的に接続して、複数の前記空調装置及び複数の前記照明灯具が天井に設置される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数の前記空調装置に関して、前記空調装置及び当該空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具が天井に配置されるときの配置構造が同じとなるように、複数の前記空調装置と複数の前記照明灯具とが天井に設置される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記空調装置は、側面及び上面を有するケーシングと、下面で天井面を形成し上面で前
記ケーシングと接続する天井面パネルと、を有し、前記ケーシングの側面に前記コネクタ受け部が設けられており、
前記コネクタ受け部に接続する工程において、前記第2配線の第1コネクタを、前記空調装置の前記ケーシングの側面に設けられた前記コネクタ受け部に接続する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記空調装置は、少なくとも、前記ケーシングの対向する2つの側面のそれぞれに、前記コネクタ受け部が設けられており、
前記コネクタ受け部に接続する工程において、前記空調装置の前記ケーシングの2つの側面に設けられた前記コネクタ受け部のそれぞれに、前記第2配線の第1コネクタを接続する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
建築物の建設における空調装置及び照明灯具の設置方法であって、
前記空調装置への電源供給のために天井裏空間に配された第1配線を、照明灯具への電源供給のためのコネクタ受け部が設けられ、第1配線からの電源供給を受け、コンバータにより変換された電源電圧を前記照明灯具に供給する前記空調装置に接続する工程と、
前記空調装置から電源供給を受けるための第1コネクタを一端に有し、前記照明灯具と接続するための第2コネクタを他端に有する第2配線の前記第1コネクタを、前記空調装置に設けられた前記コネクタ受け部に接続する工程と、
前記空調装置を吊り材で固定する工程と、
前記コネクタ受け部に前記第2配線が接続され、かつ、吊り材で固定された前記空調装置を、天井に設置する工程と、
前記空調装置から電源供給を受ける前記照明灯具の数分用意された前記第2配線を、天井裏空間を通るようにして、前記空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具に接続する工程と、
を有する方法。
【請求項9】
前記第1配線を前記空調装置に接続する工程は、電気工事士の資格を有する者によって実行され、
前記照明灯具に接続する工程は、電気工事士の資格を有さない者であっても実行することが認められている工程である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
建築物の居室空間に設置される
照明灯具及び空調装置(但し、前記照明灯具を収容する収容部を備える空調装置を除く。)を制御する機器制御システムであって、
天井に設置される複数の前記空調装置と、
天井に設置される前記空調装置の数よりも多い複数の前記照明灯具と、
前記空調装置及び前記照明灯具に対する操作をユーザが行うための操作部と、を有し、
前記空調装置は、前記照明灯具に電源電圧を供給するためのコネクタ受け部を有し、
前記空調装置の近傍に設置される複数の前記照明灯具は、当該空調装置の前記コネクタ受け部に接続された配線と電気的に接続して、前記空調装置から電源電圧の供給を受け、
前記操作部は、前記空調装置と、当該空調装置から電源電圧の供給を受ける複数の前記照明灯具と、に対する指示をまとめて行う操作をユーザに提供することができる機器制御システム。
【請求項11】
前記空調装置が冷房運転で動作している場合と暖房運転で動作している場合とに応じて、当該空調装置から電源電圧の供給を受ける複数の前記照明灯具による照明の色温度が変化する調光制御する、請求項10に記載の機器制御システム。
【請求項12】
建築物の居室空間に設置される
照明灯具及び空調装置(但し、前記照明灯具を収容する収容部を備える空調装置を除く。)を制御する機器制御システムであって、
天井に設置される複数の前記空調装置と、
天井に設置される複数の前記空調装置の周辺に設置される複数の前記照明灯具と、を有し、
複数の前記空調装置のそれぞれが、
前記照明灯具に電源電圧を供給するためのコネクタ受け部と、
当該空調装置の前記コネクタ受け部に接続された配線と電気的に接続し、かつ、天井において当該空調装置の近傍に設置される4台以上の前記照明灯具への電源電圧の供給を制御する制御部と、
を有する機器制御システム。
【請求項13】
複数の前記空調装置のそれぞれが、
複数の前記コネクタ受け部を有する、請求項12に記載の機器制御システム。
【請求項14】
上面及び複数の側面を有するケーシングと、
下面で天井面を形成し、上面で前記ケーシングと接続する天井面パネルと、
空気調和部と、
前記空気調和部を動作させるための電源電圧の供給を制御する空調動作制御部、及び、照明灯具への電源供給を制御する照明電源制御部を備える制御部と、
前記ケーシングの複数の側面に設けられる4以上のコネクタ受け部と、
を有する空調装置。
【請求項15】
前記照明灯具を収容する収容部を有さない、請求項14に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、建築物の建設方法、照明灯具及び空調装置の設置方法、機器制御システム、及び、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、工場、商業施設、あるいはこれらに限らずほとんど全ての建物において、照明や空調は欠かせない要素となっている。また、ビルを建設する場合、基礎工事から、躯体工事、仕上げ工事、設備工事、といった流れで作業が進められる。
【0003】
照明や空調などの電気設備の設置は、躯体が出来上がった後で行われる。特許文献1には、照明などの天井据付機器を天井側へ取り付けるときの作業を迅速かつ容易に行える天井据付機器用支持装置が開示されている。また、特許文献2には、天井設置タイプの空気調和機の施工作業を効率的に行う施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-70561号
【文献】特許第6388742号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建築物の建設において効率的に照明と空調を連携させる仕組み、あるいは、設置方法については十分に検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る建築物は、天井裏に、空調装置への電源供給のための第1配線を設ける工程と、複数の天井材を吊り材で固定して天井を形成する工程と、照明灯具への電源供給のためのコネクタ受け部が設けられ、前記第1配線からの電源供給を受け、コンバータにより変換された電源電圧を前記照明灯具に供給する前記空調装置を用意する工程と、前記空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具を用意する工程と、前記空調装置から電源供給を受けるための第1コネクタを一端に有し、前記照明灯具と接続するための第2コネクタを他端に有する第2配線を、前記空調装置から電源供給を受ける前記照明灯具の数分用意する工程と、前記天井材に設けられた前記空調装置用の開口を介して、形成された天井の上方にある天井裏空間に配された前記第1配線と、形成された天井の下方にある居室空間において用意された前記空調装置とを接続する工程と、前記第2配線の第1コネクタを、前記空調装置に設けられた前記コネクタ受け部に接続する工程と、前記空調装置を吊り材で固定する工程と、前記コネクタ受け部に前記第2配線が接続され、かつ、吊り材で固定された前記空調装置を、天井に設置する工程と、前記空調装置から電源供給を受ける前記照明灯具の数分用意された前記第2配線を、天井裏空間を通るようにして、前記空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具に接続する工程と、を有する方法により建設される。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る建築物において、空調装置及び照明灯具は、前記空調装置への電源供給のために天井裏空間に配された第1配線を、照明灯具への電源供給のためのコネクタ受け部が設けられ、第1配線からの電源供給を受け、コンバータにより変換された電源電圧を前記照明灯具に供給する前記空調装置に接続する工程と、前記空調装置から電源供給を受けるための第1コネクタを一端に有し、前記照明灯具と接続するための第2コネクタを他端に有する第2配線の前記第1コネクタを、前記空調装置に設けられた前記コネクタ受け部に接続する工程と、前記空調装置を吊り材で固定する工程と、前記コネクタ受け部に前記第2配線が接続され、かつ、吊り材で固定された前記空調装置を、天井に設置する工程と、前記空調装置から電源供給を受ける前記照明灯具の数分用意された前記第2配線を、天井裏空間を通るようにして、前記空調装置から電源供給を受ける複数の前記照明灯具に接続する工程と、を有する方法により設置される。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る機器制御システムは、天井に設置される複数の前記空調装置と、天井に設置される前記空調装置の数よりも多い複数の前記照明灯具と、前記空調装置及び前記照明灯具に対する操作をユーザが行うための操作部と、を有するシステムであって、前記空調装置は、前記照明灯具に電源電圧を供給するためのコネクタ受け部を有し、前記空調装置の近傍に設置される複数の前記照明灯具は、当該空調装置の前記コネクタ受け部に接続された配線と電気的に接続して、前記空調装置から電源電圧の供給を受け、前記操作部は、前記空調装置と、当該空調装置から電源電圧の供給を受ける複数の前記照明灯具と、に対する指示をまとめて行う操作をユーザに提供することができるシステムを構成し、建築物の居室空間に設置される空調装置及び照明灯具を制御する。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る機器制御システムは、天井に設置される複数の前記空調装置と、天井に設置される複数の前記空調装置の周辺に設置される複数の前記照明灯具と、を有し、複数の前記空調装置のそれぞれが、前記照明灯具に電源電圧を供給するためのコネクタ受け部と、当該空調装置の前記コネクタ受け部に接続された配線と電気的に接続し、かつ、天井において当該空調装置の近傍に設置される4台以上の前記照明灯具への電源電圧の供給を制御する制御部と、を有し、建築物の居室空間に設置される空調装置及び照明灯具を制御する。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る空調装置は、上面及び複数の側面を有するケーシングと、下面で天井面を形成し、上面で前記ケーシングと接続する天井面パネルと、空気調和部と、前記空気調和部を動作させるための電源電圧の供給を制御する空調動作制御部、及び、照明灯具への電源供給を制御する照明電源制御部を備える制御部と、前記ケーシングの複数の側面に設けられる4以上のコネクタ受け部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率的に照明と空調を連携させた建築物を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】建築物が建設されるまでの工程における照明設置の流れを説明するためのフロー図である。
【
図2】実施形態に係る建築物の居室の構造の一例を記した模式図である。
【
図4】実施形態に係る空調装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】実施形態に係る空調装置のソフトウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図6】実施形態に係る建築物の建設における天井裏空間の構造を示す図である。
【
図7】実施形態に係る空調装置の設置方法を説明するための図である。
【
図8】実施形態に係る空調装置が天井に設置された状態を説明するための図である。
【
図10】実施形態に係る照明灯具の発光面について説明するための模式図である。
【
図11】実施形態に係る照明灯具における光源素子の斜視図である。
【
図12】実施形態に係る照明灯具の設置方法を説明するための図である。
【
図13】実施形態に係る建築物において実現される機器管理システムのシステム構成を示す図である。
【
図14】実施形態に係る操作部によって表示される操作画面の一例を記す図である。
【
図15】第2実施形態に係る空調装置の斜視図である。
【
図16】第2実施形態に係る空調装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図17】第2実施形態に係る空調装置のソフトウェア構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0014】
図1は、建築物が建設されるまでの工程の流れを説明するためのフロー図である。ここでは一般的なオフィスビルのように、複数階の構造を有し、通路と居室を有する建築物を対象とする。オフィスビルのような大規模な建築物の建設では、総合建設業者が建設工事の発注を請負い、種々の業者によって作業される建設工事全体の取りまとめを行う。
【0015】
まず、設計士やデザイナーが建築物の設計を行う(ステップS1)。この工程において、通路や居室のレイアウトなどが決められ、建築物の全体的なデザインが設計図面に記される。また、採用する建築材料や、照明灯具などの電気設備資材や、空調装置についてもある程度決められ、その配置についても図面に記される。
【0016】
次に、決められた設計に基づいて、建築材料や建設機械が用意され、基礎工事が行われる(ステップS2)。この工程では、杭工事や土工事を行うことにより建築物の荷重に耐え得る安定した地盤を確保する。ここでは主に、土木工事を行う業者の作業員が作業を行う。なお、土木工事業者の作業員に限らず、他の業者の作業員も作業を行っている。
【0017】
次に、安定した地盤の上に建築物の躯体を形成する躯体工事が行われる(ステップS3)。躯体工事としては、基礎部分や地下階を有する場合には地下階など地下の工事から始まり、地上階へと進んでいく。コンクリートの打設、柱の建込み、鉄骨の組み立てなどを行い、建築物全体の骨組みが完成する。また、外壁、屋上、各階の床等にもコンクリートが打設される。
【0018】
また、躯体工事では、後の内装工事において吊りボルトなどの吊り材を吊り下げるために、インサートが埋め込まれる。例えば、吊りボルトを固定するための天井インサートを、上階の床スラブ(鉄筋コンクリートの床板など)の打設時にスラブの一部として固定する。ここでは主に、土木工事を行う業者の作業員や、とび・土工・コンクリート工事を行う業者の作業員などが作業を行う。次に、建築物の外装工事が行われる(ステップS4)。外壁のタイル張りや、窓サッシ、窓ガラス、カーテンウォールなどが取り付けられる。また、塗装なども行われる。
【0019】
次に、内装工事が行われる(ステップS5)。内装工事では、天井、壁、床を作り上げる。天井を設置する天井工事では、ステップS3の躯体工事で設けられた天井インサートから吊りボルトを下げ、軽量鉄骨材を組み合わせた下地に、天井板や天井下地材などの天井面を構成する部材である天井材が取り付けられる。天井材の支持には、吊りボルトやハンガー等の吊り材及び斜め部材などが用いられ、これにより天井板の脱落といった危険を防止するための危険防止措置が取られる。
【0020】
例えば日本国では、建築基準法や施行令などにより、このような天井脱落を防止するための規定が設けられている。その一つに、既定の条件を満たす天井材を設けるときには吊り材等により固定を行うなどの脱落防止措置を施しておくことが規定されている。例えば、空調装置は重量のある装置のため、脱落防止措置をする必要がある。また、照明灯具についても、従来の所謂ベース照明と言われるような、大型で重量のある照明灯具についても吊り材による固定を必要とする。
【0021】
なお、吊りボルトを固定するための天井インサートは、コンクリートの打設の際に設置する代わりに、打設後にコンクリートにアンカーを打ち吊りボルトを固定することも可能ではある。しかし、効率面や安全面を考慮すれば事前に設置される方が好ましく、吊り材が設けられることがわかっている場所については、設計の段階で天井インサートの配置が決められ、コンクリートの打設の際に埋め込まれるのが望ましい。
【0022】
また、内装工事では、天井を張る前、つまり天井材による天井の形成が完了する前に、配管や空調のダクトの吊り込みをしておき、電線などを配管内に通す作業も行われる。そのため、天井裏には、電気配線やダクト、空調装置などを設置するために必要な空間が設けられる。またさらに、照明や空調が設置される場所に合わせて天井材に開口が設けられる。ここで、天井内のダクト設置や吊り材による天井材の固定といった作業は、内装工事を行う業者の作業員などが作業を行う。一方で、電気配線を設ける作業は、感電等の危険があるため、電気工事を行うことのできる専門的な作業員によって行われる。
【0023】
天井を設置する天井工事の作業者と、天井裏に電気配線を通す配線工事の作業者と、は多くの場合は別人であることが想定される。なお、日本国では、電気工事士の資格を有さない者による配線工事などの電気工事は許可されていない。このように建築物の建設は、種々の専門的な業者から作業員が派遣され、それぞれが専門的な作業を行うことで安全面に配慮している。
【0024】
本明細書において、建築物の建設のために天井材を準備して天井工事を行う業者の作業員を天井設置作業者と呼ぶ。また、建築物の建設のために電気配線を準備して配線工事を行う業者の作業員を配線工事作業者と呼ぶ。なお、建築物の建設における各工程の工事は、通常複数の作業者によって行われる。従って、天井設置作業者とは一人の作業者に限らず、建築物の建設において天井工事を行う1以上の作業者を指す。配線工事作業者などについても同様である。
【0025】
次に、内装工事を終え、床や壁や天井が出来上がると、設置工事が行われる(ステップS6)。設置工事では、建築物を実際に利用する際に必要になる設備が設置される。例えば、電気、ガス、水道、排水、空調、トイレ、防災、放送などのための設備や、照明、エスカレーター、エレベーターなどの設備が配置される。これらの作業は、電気工事、電気通信工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事などの事業者の作業員が行う。
【0026】
照明や空調の設置工事においては、これらを電気的に接続する必要があるため、電気工事士の資格者による作業を要する。なお、照明が設置される場所は天井に限らないが、天井に設置される照明灯具は、通常であれば電気工事士の資格者によって天井裏に用意された配線に接続され、電気的に接続される。空調の設備工事において天井に空調装置を設置する場合も、電気工事士の資格者によって天井裏に用意された配線に接続される。
【0027】
通常では、オフィスビルのような建築物の居室において、天井に配置される大型の照明灯具や空調装置は吊り材によって固定される。従って、このような大型の照明灯具や空調装置の設置工事を行う作業員は、大型の照明灯具や空調装置を天井インサートから吊り下げられた吊り材に固定して天井に設置する作業も行うことになる。
【0028】
なお、照明の設置工事と空調の設置工事とが、別々に行われることは珍しくない。照明灯具の製造者は、照明の設置工事に間に合わせるように、建設に必要な照明灯具を製造する。同様に、空調装置の製造者は、空調の設置工事に間に合わせるように、建設に必要な空調装置を製造する。本明細書において、照明灯具を製造して提供する業者を照明灯具供給者、空調装置を製造して提供する業者を空調装置提供者と呼ぶ。
【0029】
<第一実施形態>
次に、第一実施形態に係る建築物の建設プロセスについて説明する。第一実施形態に係る建築物1は、複数階の構造を有し、通路と居室を有する。なお、一階建ての建築物であってもよい。
図2は、建築物1の特定の階における居室の構造の一例を記した模式図である。
【0030】
建築物1は、床2と、壁3と、天井4と、窓5と、により居室空間を形成する。なお、窓5が無く側面が壁3だけの居室であっても構わない。また、天井には、複数の照明灯具10と、複数の空調装置90とが設置されている。
【0031】
例えば、オフィスビルのような建築物の場合、通路などの狭い空間における照明にはダウンライトなどの小型の天井設置器具が設置され、居室などの広い空間では主にベース照明などの大型の照明灯具が設置される。このような場合、居室に設置される照明灯具10には大型の照明灯具が多く設置され、小型の照明灯具は設置されないか居室の一部の領域に少数設置されることが典型である。また、居室において、空調装置90の設置台数よりも、照明灯具10の設置台数の方が多いことが典型である。
【0032】
居室では、照明灯具10と空調装置90とが規則的に配置される。
図2の例では、1台の空調装置90がそれぞれ3台ずつの照明灯具10によって対向するように挟まれた構造を規則性のある1つのセットと捉えることができる。そして、居室において照明灯具10と空調装置90は、行列状にセットを並べたような配置で設置されている。オフィスでは従業員が仕事をするための机が何列も並べられ、場所によって環境にあまり差が生じないように、照明灯具10及び空調装置90は規則的に配置される方が好ましい。
【0033】
図2の例では、破線で天井4を仮想的な4つの領域に分けている。このようにセットを形成する領域が4つあり、ここでは便宜的にそれぞれを領域A、領域B、領域C、領域Dと記すこととする。なお、全ての領域が、同じセット、つまり、同じ配置構造で構成されなくてもよい。また、必ずしも規則性のある配列のみで構成されなくてよい。天井4には、天井4に設置される1台の空調装置90と、その空調装置90の周辺に設置される複数の照明灯具10とを囲む領域が複数ある。
【0034】
図2に示されている照明灯具10は、照明灯具の性能としてはベース照明に相当する性能を有しつつも、照明の設置工事においては吊り材による固定を要さないような照明灯具である。つまり、照明灯具10は、ベース照明相当として取り扱えるほど大型でありながら、吊り材を要さないほど軽量である、軽量大型照明灯具である。
【0035】
ここで、本明細書における軽量大型照明灯具とは、全光束が2500lm以上であるか、床に最も近い面である発光面の面積が45000mm2以上であるか、光源素子が100個以上配されているか、の少なくとも一を満たす照明灯具を指すものとする。またあるいは、これに加えて、重量が0.5kg以上から2.5kg未満であるという条件により、軽量大型照明灯具の特性をさらに特定してもよい。
【0036】
次に、空調装置90について説明する。
図3は空調装置90の斜視図である。
図4は空調装置90の内部におけるハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図5は空調装置90におけるソフトウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0037】
空調装置90は、天井埋込型の室内機であり、その外形において、ケーシング91、天井面パネル92、4つの固定部93、及び、8つのコネクタ受け部94、を有する。また、ケーシング91と天井面パネル92とで囲まれた内側に、制御部95、空気調和部96、電源供給部97、コンバータ98、及び、照明接続部99、を有する。
【0038】
ケーシング91は、下端面が開口された箱状体からなり、空調装置90の側面及び上面を形成する。上面は正方形あるいは長方形の矩形形状を有しており、4つの側面のそれぞれが、上面の各辺に対応し、それぞれ垂直に交わって下方へと伸びる。上面の辺と辺が交わる端部において角取がされており、角取がされた領域も直線となっている。従って、側面においても角取された領域に対応して平面が設けられている。ここで、矩形形状に対応した4つの側面を主側面、端部の角取された領域に応じた側面を端側面、と呼ぶものとする。
【0039】
ケーシング91の4つの端側面のそれぞれにおいて、固定部93が設けられる。この固定部93を用いて、空調装置90は吊り材30に固定される。ケーシング91の4つの主側面のそれぞれにおいては、2つのコネクタ受け部94が横方向に並んで設けられている。コネクタ受け部94には、照明灯具10に接続される配線のコネクタを接続することができる。なお、固定部93と、コネクタ受け部94は、同じ側面に設けられてもよい。具体的には、どちらも端側面に設けられていてもよい。あるいは、どちらも主側面に設けられていてもよい。また、主側面及び端側面の両方に設けられていてもよい。
【0040】
天井面パネル92は、下面で天井面を形成し、上面でケーシング91と接続する。また、ケーシング91の開口を覆うようにして、ケーシング91に取り付けられる。また、天井面パネル92には、空気調和部96によって生成された冷風や温風などを吹き出す吹出口や、室内の空気を吸い込む吸込口が設けられている。天井面パネル92の上面及び下面は正方形あるいは長方形の矩形形状を有しており、4つの辺はそれぞれ、ケーシング91の対応する主側面と平行である。従って、天井面パネル92は、上面あるいは下面の各辺をケーシング91の主側面の向きに合わせるようにして取り付けられる。
【0041】
制御部95は、ROM、RAM、CPU等を有する。ROMは、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶するメモリである。RAMは、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域等として用いられるメモリである。CPUは、RAMにロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現するプロセッサである。
【0042】
空気調和部96は、室内熱交換器、室内ファン、ドレンパン等を有する。室内熱交換器は、フィン・アンド・チューブ式の熱交換器であり、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時には冷媒の凝縮器として機能して室内空気を加熱する。
【0043】
室内ファンは、クロスフローファンであり、ファンと、ファンを回転させるためのファンモータとを有している。また、室内ファンは、室内の空気の吸い込みと、室内への吹き出しを行う。室内ファンによって吸込口から吸い込まれた空気を室内熱交換器による熱交換で調和し、調和された空気を吹出口から室内に吹き出る。室内ファンは、室内熱交換器に供給する空気の風量を所定風量範囲において調整することができる。ドレンパンは、室内熱交換器による熱交換で空気中の水分が凝縮されて生じるドレンを受け止める。
【0044】
電源供給部97は、空気調和部96を動作させるための電源電圧を供給する。また、照明接続部99を介して照明灯具10に電源電圧を供給する。コンバータ98は、照明灯具10に電源電圧を供給する場合に、電源供給部97から供給される電源電圧を、照明灯具10の規格に合わせた電源電圧へと変換する。従って、照明灯具10に電源電圧を供給する場合、電源供給部97はコンバータ98を経由して、照明接続部99から照明灯具10へと電源電圧を供給する。
【0045】
天井埋込型の空調装置90は、広い居室空間の空調を制御するために、例えば、200VのAC電源と接続して電源電圧の供給を受ける。一方で、照明灯具10は、100VのDC電源電圧によって動作する。このような場合に、コンバータ98は、200VのAC電源電圧を、100VのDC電源電圧へと変換する。なお、コンバータ98は、空調装置90に組み込まれず、空調装置90と配線で接続する形態であってもよい。電源供給部97は、照明灯具10に電源電圧を供給する際には、コンバータにより変換された電源電圧を供給する。
【0046】
照明接続部99は、第1接続部から第8接続部までの、8つの接続部を有する。8つの接続部と8つのコネクタ受け部94とは1対1で対応する。コネクタ受け部94に挿入された配線に接続されている照明灯具10へと電源電圧を供給するための電気的な接続を実現する。
【0047】
制御部95は、操作受付部951、空調動作制御部952、照明電源制御部953、の機能を構成する。これら各機能部は、プログラムがCPUに実行させる処理によって実現される。操作受付部951は、空調装置90に対するユーザの操作を受け付ける。また、照明灯具10に対するユーザの操作を受け付ける。ユーザによる操作は、居室の壁3に設置される操作部や、携帯可能なリモート式の操作部を用いて行われ、例えば、その操作には空調機能や照明のON/OFFなどがある。
【0048】
空調動作制御部952は、空調機能を制御するために、空気調和部96や電源供給部97の動作を制御する。例えば、空気調和部96のモータを駆動するために電源供給部97から電源電圧を供給させ、室内ファンを機能させる。操作受付部951によって受け付けられた操作の指示内容に基づいて、空気調和部96の動作は調整される。例えば、冷房運転であるか、暖房運転であるか、設定温度が何度であるか、風量はどの程度か、といった指示内容に基づいて制御する。
【0049】
照明電源制御部953は、コネクタ受け部94を介して接続された照明灯具10に対する電源電圧の供給を制御する。電源供給部97からの電源電圧をコンバータ98によって変換させ、照明灯具10と接続された接続部から、照明灯具10に適した電源電圧を供給させる。
【0050】
次に、第一実施形態に係る建築物1の建設において空調装置90が設置されるまでの工程を説明する。なお、
図1を利用して既に説明した建築物が建設されるまでの工程と異なる点を詳細に説明し、重複する点については説明を簡易的にあるいは省略する。
【0051】
ステップS2~ステップS4までの工程については、既にした説明と概ね同様である。次に、ステップS5の内装工事では、天井を設ける天井工事が行われる。また、天井を張る前に、天井裏に配される配線が天井よりも高い位置に通される。
図6は、天井工事が行われた状態の天井裏の一例を示している。また、
図6は、
図2の居室の領域Aにおける天井裏の例を示している。
【0052】
図6にあるように、天井裏は、コンクリートが打設された躯体80によって上面と側面が、天井材40が配された天井4によって下面が形成された空間を有している。また、天井4を形成する各天井材40は、躯体80の天井インサートに繋がれた吊り材20によって固定され、支えられている。また、空調装置90を固定するために、1台の空調装置90につき4本の吊り材30が設けられている。なお、1台の空調装置90あたりの吊り材30の本数は4本に限る必要はない。
図6の時点では、まだ空調装置90は取り付けられておらず、吊り材30は空調装置90を支持していない。
【0053】
天井裏の空間には、配管を通って設けられた配線50が用意される。この配線は、設計図面に基づき、天井裏に設置される空調装置90の設置台数に応じて設けられる。配線50は、配管を通って、外部電源からの電源電圧の供給を受けるために用意される。ここで、空調装置90に供給する電源電圧は照明灯具10に供給される電圧よりも高く、ここでは、配線50と接続して200VのAC電源電圧の供給を受けることができる。なお、配線は、空調装置90用のものに限らず、その他の電気接続機器への電源供給に十分な数の配線が用意され、天井4は設けられる。
【0054】
天井材40には、空調装置90や照明灯具10など、天井設置器具を設置するための開口が設けられる。四角の開口は、空調装置90のための開口であり、円形の開口は、照明灯具10のための開口である。
図9の例では、3×3の計9枚の天井材40において、中心にある1枚の天井材40に空調装置90を設置するための開口が設けられる。また、この1枚の天井材を挟んで3枚ずつの天井材40に照明灯具10を設置するための開口が設けられる。領域B~Dについても、躯体80との配置関係に違いはあるが、同様にして、吊り材20、吊り材30、天井材40、配線50、が設けられる。
【0055】
このようにして天井4が設けられた上で、ステップS6の設備工事において、空調装置90の設置工事が行われる。
図7及び
図8は、空調装置90の設置方法を説明するための図である。
図7は、吊り材30、天井材40、空調装置90の接続関係を天井面側(居室空間側)から俯瞰した態様で示している。また、
図8は、空調装置90が天井に設置された状態を、天井裏側から見たときの構造を示している。
【0056】
なお、建築物に天井4が設けられた時点で、
図2で示した居室を形成する空間である居室空間と、
図6で示した天井裏を形成する空間である天井裏空間と、は天井面を境に区別された空間として扱う。なお、天井面とは、天井材が設置される平面である。つまり、天井面を境界にして天井4の上側(上方)の空間が天井裏空間、下側(下方)の空間が居室空間である。また、例えば、2階以上の建築物である場合、2階の居室空間の下には、躯体を挟んで1階の天井裏空間が設けられる。
【0057】
図7に示すように、空調装置90を吊り材30に固定して天井材40の開口を塞ぐ前に、天井裏を通るようにして、天井裏空間にコネクタ付きの配線60が用意される。一方で、配線50にはコネクタは付いていない。配線60は、空調装置90用の開口が塞がれる前であれば、吊り材30で固定された後に用意されてもよい。この配線60は、照明灯具10との接続のための配線ケーブルである。また、領域Aの空調装置90は、領域Aに設置される照明灯具10と接続する。このため、配線60は領域Aの空調装置90に接続される照明灯具10の数分用意され、
図6の例に基づけば、6本の配線60が用意される。なお、配線50と配線60とを便宜的に区別するために、配線50を第1配線、配線60を第2配線、と呼ぶことがある。
【0058】
空調装置90への電源供給のために、配線50との接続作業が行われる。日本国では、この作業は、電気工事士の資格を有する者が行う必要がある。また、6本の配線60のそれぞれのコネクタを空調装置90の8つのコネクタ受け部94のうちの6つに挿入して照明接続部99に接続させる。この作業は、電気工事士の資格を有さない者であっても行うことができる。コネクタは、任意のコネクタ受け部94に挿入できるが、照明灯具10から近い場所にあるコネクタ受け部94に挿入するのが好ましい。配線同士が絡み合ったり、混線したりすることを出来るだけ避けるためである。
【0059】
空調装置90が、4つの主側面に複数個のコネクタ受け部94を用意しているのは、空調装置90と照明灯具10との配置関係、つまり、居室における天井4のレイアウトに柔軟に対応できるようにするためである。なお、コネクタ受け部94及び照明接続部99の接続部の数は、8つに限る必要はない。但し、1台の天井埋込型の空調装置90がカバーする空調領域と、1台の照明灯具10がカバーする照明領域との関係を考慮すると、4つ以上のコネクタ受け部94を設けた空調装置が好ましい。
【0060】
また、コネクタ受け部94は、4つの主側面の全てに均等に設ける代わりに、対向する2つの主側面に設けてもよい。また、レイアウトに柔軟に対応するという観点では、複数の主側面に設けておくのが望ましいが、1つの主側面に4つ以上のコネクタ受け部を設けた空調装置であっても、配線接続が出来なくなるわけではなく、実現可能である。1台の空調装置に設けられるコネクタ受け部の数は、あまりに多すぎると使用されないものが多くなり非効率であるため16以下が好ましい。但し、17以上ある空調装置を否定するわけではない。
【0061】
図8に示すように、6本の配線60が接続された空調装置90は、固定部93によって吊り材30に固定され、天井に設置される。また、6本の配線60のそれぞれが、空調装置90の周囲に設置される各照明灯具10に対応した天井材40の開口に通される。この開口の先で、照明灯具10と配線60とは接続し、天井材40に設置される。なお、天井に設置する前の段階で空調装置90は配線50と接続しているが、
図8では配線50を省略している。
【0062】
次に、天井材40に設置される照明灯具10の一例である軽量大型照明灯具について説明する。
図9は天井に設置される設置面側から見た照明灯具10の斜視図である。
図10は照明灯具10の発光面について説明するための模式図である。
図11は照明灯具10に用いられる光源素子16を示す斜視図である。
図10乃至
図11に基づき説明される照明灯具10は、縦450mm、横450mm、天井設置面から発光面までの高さが20mmの、発光面が正方形の照明灯具である。
【0063】
なお、発光面は、縦600mm、横600mmの正方形の照明灯具であってもよい。また、発光面が、縦150mm、横600mmの長方形の照明灯具であってもよい。このように、縦幅及び横幅は150mm単位で構成されているのが好ましいが、これは天井材の仕様に合わせているためである。つまり、天井材と同様に扱えるようにするために、縦幅及び横幅を150mmの倍数としている。言い換えれば、天井材の仕様に対応した大きさであれば、150mmでなくてもよく、例えば、1フィートを単位として扱っている場所であれば、1フィートの倍数で縦幅及び横幅を構成すればよい。
【0064】
なお、縦75mm、横600mmの長方形の照明灯具であってもよい。また、その他の多角形や、円形、楕円形の発光面でもよく、形状は制限されない。また、本願においては、四隅が面取り等された図形も含めて正方形あるいは長方形と呼ぶものとする。
【0065】
照明灯具10は、ベースプレート11、カバー12、緩衝部13、DCハーネス14、基板15、及び、光源素子16を有する。ベースプレート11は、照明灯具10における補強板あるいは放熱板として機能する。例えば、矩形状に形成された金属板である。例えば、金属板はアルミニウムを材料として形成することができる。
【0066】
なお、本明細書において「光源」とは、光を発する部材のことを指し、光源はLEDに代表される発光素子であってよく、あるいは、発光素子と波長変換部材とを組み合わせたものであってもよい。「波長変換部材」は、発光素子が発する光の一部または全部を他の波長の光に変換する部材のことを指しており、例えば蛍光体部材を挙げることができる。
【0067】
カバー12は、基板15に配された光源素子16を覆うように設けられる。また、光源素子16が発する光に対する透光性を有する。カバー12は、例えば樹脂材に酸化チタン等を分散させた光拡散性を有する乳白色に形成されている。樹脂材としては、例えばアクリル樹脂を採用することができ、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂を採用することができる。
【0068】
緩衝部13は、ベースプレート11の天井設置面の外周に設けられる。緩衝部13によって、ベースプレート11の天井設置面が天井4(あるいは天井材40)と直接接触することを防ぎ衝撃を緩衝する。また、緩衝部13は、ベースプレート11の外周の一部において設けられておらず、緩衝部13の厚みによって取外しアーム挿入口Gを有する。
【0069】
DCハーネス14は、後述するソケット70に嵌め込まれる。このソケット70は、天井材40に取り付けられ、DCハーネス14は、ソケット70を介して天井4に取り付けられる。
【0070】
基板15は、例えば樹脂またはセラミックの絶縁性の基板であり、複数の光源素子16を配置する光源配置面を有する。また、基板15の光源配置面には光源素子16に電力を供給するための導電パターンが設けられている。導電パターンの材質は、基板15の主材料に応じて適宜選択できる。例えば、セラミックス材から成る基板の場合、導電パターンには、セラミックスシートの焼成温度にも耐え得る高融点を有するものが好ましい。例えば、導電配線の材質が、タングステンおよび/またはモリブデンのような高融点の金属を含んで成るものであってよい。さらに、その上に鍍金やスパッタリング、蒸着などにより、ニッケル、金および/または銀など他の金属材料が被覆材として設けられたものであってもよい。また、樹脂材から成る基板の場合、導電パターンは、加工し易いものが好ましい。例えば、射出成型された樹脂から成る基板の場合、導電パターンは、打ち抜き加工、エッチング加工または屈曲加工などの加工がし易く、かつ、比較的大きい機械的強度を有するものが好ましい。具体的な導電パターンの材質を例示しておくと、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、ロジウム、鉄、ニッケル、およびモリブデン等の金属、ならびに、鉄-ニッケル合金、りん青銅、および鉄入り銅などを挙げることができる。
【0071】
図6は、カバー12の内部の構造がわかるように、カバー12により覆われている一部分を取り除いた場合の図を示している。従って、実際には、照明灯具10における基板15や光源素子16は、カバー12によって覆われている。基板15の光源配置面と反対側の面は、ベースプレート11に接触する。基板15には、複数のネジ穴Sが設けられており、ネジ穴Sを介してベースプレート11にネジ止めされる。
【0072】
光源素子16は、基板15に均等に配列される。450mm四方の光源配置面において、光源素子16は、15mm以上~20mm以下のピッチ間隔で配置される。
図7に示されるように、光源素子16は、発光素子17と、波長変換部材18と、封止部材19とを含む。発光素子17は、基板15の光源配置面に実装され、発光素子17の電極は基板15に形成された導電パターンと電気的に接続されている。波長変換部材18は発光素子17を覆う。
【0073】
封止部材19は、電気的絶縁性を有し、光源から出射される光に対して透過可能(例えば、透過率70%以上)であって、固化前(例えば硬化完了前)は流動性を有する材料を採用することができる。例えば、樹脂原料を含んでよく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの変性樹脂やハイブリッド樹脂等を挙げることができる。なかでも、シリコーン樹脂は、耐熱性および/または耐光性に優れているので好ましい(本明細書でいう「シリコーン樹脂」は、その変性樹脂またはシリコーン骨格を少なくとも有する樹脂などを包括的に含む"シリコーン系樹脂"のことを指している)。このような封止原料は、必要に応じて、フィラーおよび/または蛍光体などを付加的に含有していてもよい。
【0074】
封止部材19は波長変換部材18を覆う。封止部材19において発光素子17の上面の中心付近を覆う部分が凹んでいる。また、このような窪み部分を囲む周囲部分には複数の突起が設けられている。突起は、窪み部分の周囲におよそ均等に設けられて、隣り合う突起を結ぶ直線によって囲まれた領域内に窪み部分は収まる。このように、全体として扁平形状を有し、さらに、窪み部分と複数の突起を有する封止部材19によって、光源素子16はバットウイング形の配光特性を有する。
【0075】
なお、好適なバットウイング形の配光特性を得るには、突起のサイズが大きすぎない方がよい。例えば、封止部材19に関し、突起自体の高さを"h"とし、隆起の高さ(突起を除いた場合の封止部材の高さ)を"H"とすると、0<h≦H/8を満たすのが好ましく、0<h≦H/10を満たすのがより好ましく、0<h≦H/12を満たすのがさらに好ましい。
【0076】
また、封止部材19は、少なくとも最大厚さ寸法が最大幅寸法よりも小さい。例えば、最大幅は、最大厚さの2倍以上となっている。なお、最大厚さは、基板15から封止部材19の突起の頂上までの高さとなるのが好ましい。このような扁平形状の封止部材によって、より低い高さからバットウイングの発光がもたらされる。また、偶発的な外力により光源素子16が基板から取れてしまうといった不具合を抑制することができる。
【0077】
このような、縦450mm、横450mm、天井設置面から発光面までの高さが20mmの照明灯具10の一実施例として、縦24×横24の計576個の光源素子16を配置したものは、全光束が4500lm、色温度5000K、重量1.94kg、となった。つまり、一実施例における照明灯具10は、全光束が4000lm以上であるか、床に最も近い面である発光面の面積が202500mm2以上であるか、光源素子が500個以上配されているか、重量が2.0kg未満であるか、の一または複数を満たす軽量大型照明灯具の一例である。
【0078】
また、発光面が、縦150mm、横600mmである点で異なる照明灯具10の他の実施例として、縦8×横32の計256個の光源素子16を配置したものは、全光束が3450lm、色温度2700K、重量1.09kgとなった。つまり、他の実施例における照明灯具10は、全光束が3000lm以上であるか、床に最も近い面である発光面の面積が90000mm2以上であるか、光源素子が200個以上配されているか、重量が1.5kg未満であるか、の一または複数を満たす軽量大型照明灯具の一例である。
【0079】
次に、本願に係る建築物1の建設において照明灯具10の設置工程を説明する。
図12は、天井材40、配線60、ソケット70、照明灯具10の接続関係を天井面側から俯瞰した態様で示している。配線60は、空調装置90と接続するコネクタが設けられた端とは反対側の他端において、照明灯具10と接続するためのコネクタが設けられる。なお、ここでのコネクタは、空調装置90に接続するコネクタと同種類のものであってもよく、別種類のものえあってもよい。なお、便宜的に区別するために、空調装置90に接続するコネクタを第1コネクタ、照明灯具10に接続するコネクタを第2コネクタ、と呼ぶことがある。
【0080】
天井工事において、天井裏に配線を通す作業は、電気工事士の資格を有する配線工事作業者によって行われる。また、空調装置90と配線50との接続作業も、電気工事士の資格を有する空調設置工事作業者によって行われる。
【0081】
一方で、第1コネクタ及び第2コネクタ付きの配線60は、数メートル以上の長さを有する配線ケーブルとして、事前に用意しておくことができる。また、配線ケーブルとしては、例えば、給電と通信の双方を行うことのできるLANケーブルを用いることができる。第1コネクタや第2コネクタ等の感電防止接続器具を付けた配線60を用いれば、照明灯具10を配線60に接続する作業は、電気工事士の資格を有する者でなくても行うことができる。つまり、配線50と空調装置90を接続する作業が済んでいれば、電気工事士の資格を有する者でなくても、照明灯具10に電源を供給するための配線接続作業を含め、照明灯具10の設置作業を行うことができる。
【0082】
図12に示されるように、照明灯具10を設置するために設けられる開口は天井材40に比べて小さい。また、照明灯具10の発光面と比べても十分に小さい開口である。なお、本明細書において、発光面の面積に対して開口が1/3以下であることを、十分に小さいと言うものとする。また、発光面の面積に対して開口が1/5以下であることを、非常に小さいと言うものとする。また、発光面の面積に対して開口が1/10以下であることを、極めて小さいと言うものとする。
【0083】
照明灯具10を設置するための開口は、例えば、直径10cm~15cmの円形で形成される。また、開口の形状は円形でなくてもよく、最大径が15cm以下の多角形であってもよい。また、ソケット70等の大きさや形状に基づいて決定されればよい。なお、後述するが、照明灯具10の取り付けのために、居室側から配線50を手に取ることが出来るように、開口は作業員の腕が通せるだけの大きさを確保するのが好ましい。
【0084】
開口の具体的な一例として、縦450mm、横450mm、天井設置面から発光面までの高さが20mmの照明灯具10を設置するために、直径15cmの円形の開口が設けられる。従って、極めて小さい開口によって照明灯具10を設置することが出来る。また別の一例として、縦150mm、横600mm、天井設置面から発光面までの高さが20mmの照明灯具10を設置するために、12.5cmの円形の開口が設けられる。従って、非常に小さい開口によって照明灯具10を設置することが出来る。
【0085】
なお、天井材40は予め開口が設けられたものである必要はない。開口の無い状態の天井材40を用意し、内装工事を行う現場で作業員が天井材40に穴を空けて開口を設ける方が一般的である。開口のない天井材40に対し、適宜開口を設ける作業を行えばよい。どのような天井設置器具を設置するかによって用意すべき開口の形状も異なり得る。よって、開口は、天井材40を吊り材20で固定して天井に取り付けるときに設ければよく、あるいは、天井を形成した後で設けてもよい。
【0086】
居室空間に存在する作業員によって居室空間内に照明灯具10とソケット70とが準備され、照明灯具10のDCハーネス14をソケット70に差し込む。また、ソケット70の嵌合部と照明灯具10の嵌合部とによって、照明灯具10とソケット70とが嵌め合って固定される。そして、配線60の第2コネクタをソケット70に差し込むことで、照明灯具10は電気的に接続され、空調装置90を介して外部電源からの電源電圧の供給を受けることができる。
【0087】
ソケット70は、配線60の第2コネクタと接続する接続部としてのコネクタ受け部を有する。居室空間に存在する作業員は、天井裏空間を通る配線60を居室空間内に引っ張り出して接続作業を行えばよい。なお、照明灯具10が発光の強度や色調を調節する調光機能を有する場合に備えて、ソケット70には調光の制御を行う調光ドライバ装置と接続する接続部としてのコネクタ受け部を別に有してもよい。なお、便宜的に区別するために、電源供給用のコネクタ受け部を電源用コネクタ受け部、調光用のコネクタ受け部を調光用コネクタ受け部、と呼ぶことがある。
【0088】
また、ソケット70は、留め具71を有しており、居室空間に存在する作業員が、この留め具71によってソケット70を天井材40に設置する。留め具71はバネ性(弾性)を有しており、これを天井面側(居室空間側)から天井材40の開口に通して貫通させる。貫通した後は、留め具71が天井材40の天井裏面に掛かり、従って荷重が天井材40に掛かるようになる。天井4に照明灯具10が取り付けられると、1の照明灯具10及び1のソケット70の荷重は、1の天井材40に掛かることとなる。なお、留め具71は、バネ性を有する構造に限らず、天井材40に荷重が掛かる構造であればよい。
【0089】
なお、配線60のコネクタとソケット70とを接続する作業と、ソケット70と照明灯具10とを接続する作業と、はいずれが先であってもよい。また、ソケット70を天井材40に取り付ける作業は、照明灯具10をソケット70に接続する前でも、接続した後であってもよい。また、ソケット70は、予め照明灯具10と一体となって形成されていてもよい。つまり、ソケット付きの照明灯具10と、配線60の第2コネクタとを接続するようにしてもよい。
【0090】
一実施例として、直径150mmの円形の開口に取り付けられるソケット70は、留め具71を除いて開口を通る貫通領域が直径148mmの円形であり、天井面と接する天井面側が直径160mmの円形である。また、縦450mm、横450mm、天井設置面から発光面までの高さが20mmの照明灯具10の重量と合わせて、天井材40に掛かる荷重は2.00kgとなった。
【0091】
また、他の一実施例として、直径125mmの円形の開口に取り付けられるソケット70は、留め具71を除いて開口を通る貫通領域が直径123mmの円形であり、天井面と接する天井面側が直径130mmの円形である。また、縦150mm、横600mm、天井設置面から発光面までの高さが20mmの照明灯具10の重量と合わせて、天井材40に掛かる荷重は1.10kgとなった。
【0092】
一つの目安として、天井材40に掛かる荷重が3.0kg未満の天井設置器具は、吊り材20による固定を要さずに天井に設置することができる。この点で、上述したいずれの実施例も、ソケット70と照明灯具10とが天井材40に設置され、その合計荷重は3.0kg未満を満たす。
【0093】
このように、照明灯具10の設置工事は、吊り材20による固定を要さないため、天井裏にある配線60を居室空間に引っ張り出せるだけの開口が設けられていればよい。言い換えると、照明灯具10を天井4に設置する作業をするには、腕が通せるサイズの開口があればよい。
【0094】
また、電気工事士の資格を有する者でなくても照明灯具10と配線60との接続作業を行うことができる。言い換えると、この接続作業は、電気工事士の資格を有さない者であっても実行することが認められる方法で行われる。このことはつまり、建築物1の建設において、空調装置90の設置工事と並行して、照明灯具10の設置作業を効率的に進めることができることを意味する。つまり、電気工事士の資格を有する者は空調装置90の配線作業を行い、資格を有さない者がその周囲の照明灯具10の設置作業を行うといったように分担し、照明灯具10と空調装置90の設置工事をまとめて行うことが可能となる。なお、照明灯具10の設置工程は、空調装置90の設置工程より前であってもよい。
【0095】
このようにして照明灯具10及び空調装置90が設置された居室では、
図2に示すように、空調装置90が、その近傍に位置する照明灯具10への電源供給を制御する効率的なシステムが構築できる。
図2の例であれば、各領域A~Dにおいて、その領域に設置された空調装置90が、その領域に設置された照明灯具10への電源供給を制御している。これにより、空調装置90は、自らの空調範囲における照明の制御も行うことが出来るようになる。
【0096】
天井4に設置される複数の照明灯具10は、その照明灯具10から最も近い位置にある空調装置90に、配線60を介して接続されるのが好ましい。また、空調装置90と、その空調装置90に最も近い照明灯具10との距離は、1.0m以内であることが好ましい。
図2の居室における照明灯具10と空調装置90との接続関係は、これを満たしている。
【0097】
また、空調装置90は全てのコネクタ受け部94で照明灯具10と接続する必要はなく、その居室のレイアウトに応じた適当な数の照明灯具10と接続すればよい。接続する照明灯具10を変更する際も、接続している配線60を外して、新たに接続する照明灯具10の配線60をコネクタ受け部94に差し込めばいいため、空調装置90からの制御の対象となる照明灯具10の変更が容易である。特に、照明灯具10に軽量大型照明灯具を用いることで、例えば、躯体工事が終わった後に照明灯具10の配置場所や数を変更したいとなっても、吊り材を新たに用意する必要がなく、変更に柔軟に対応できる。そして、空調装置90であれば、電源供給を制御する照明灯具10の数の変更にも柔軟に対応することができる。
【0098】
また、各照明灯具10が空調装置90の各コネクタ受け部94に接続される例を説明したが、コネクタ受け部94に接続された配線60と接続する照明灯具10と、他の照明灯具10とが別の配線で繋がり、リレーする形で電源供給が行われてもよい。この場合、最低限1つのコネクタ受け部94が設けられていれば、複数の照明灯具10への電源供給が可能である。また、照明灯具10同士の接続は、空調装置90から電源供給を受けるために照明灯具10と接続する第1コネクタを一端に設け、他端に第2コネクタを設けた配線60で対応できる。いずれにしても、配線60は空調装置90から電源供給を受ける照明灯具10の数分用意される。また、空調装置90は、近傍に設置された複数の照明灯具10への電源供給を制御する役割を果たす。なお、1台の空調装置90から、その近傍にある4台以上の照明灯具10へと電源要求されるのが好ましい。
【0099】
図13は、
図2の居室における照明灯具10及び空調装置90の出力を管理する機器制御システム1000の例である。機器制御システム1000は、領域A~Dに設置された複数の空調装置90、各空調装置90に接続する複数の照明灯具10、各空調装置を操作するための操作部100、及び、建築物1あるいは居室全体の空調及び照明を管理するリモートサーバ500を有する。この機器制御システム1000では、空調装置90は、操作部100及びリモートサーバ500と通信可能に接続している。また、空調装置90は、照明接続部99を介して接続している照明灯具10の動作を制御することができる。操作部100あるいはリモートサーバ500からの指示命令を空調装置90の操作受付部951で受け付け、空調装置90が、自身及び自身と接続する照明灯具10の出力制御を行う。なお、機器制御システム1000においてリモートサーバ500は必須ではない。
【0100】
このような機器制御システム1000によって、例えば、ユーザが操作部100を用いて、空調装置90と照明灯具10の一括操作を行うことができる。居室のある領域の空調装置90を動作させるときに、併せて、その空調装置90の近傍の照明灯具10を付けるといった同期制御を、ユーザは操作部100に用意された操作ボタンを押下するだけで指示することができる。なお、ここでの操作ボタンは、ハードウェアキーで実現されてもよく、また、画面のソフトウェアキーで実現されてもよい。同期の対象が近傍の照明灯具10のため、離れた位置にある(別の離れた領域にある)照明灯具10まで一緒に付けずに済み、省エネルギーにも貢献することができる。
【0101】
従来であれば、居室の壁3には、空調装置10を操作する操作部と、照明灯具10のON/OFFを操作するスイッチとが、別々に用意され、まとめて操作するといったことが出来なかった。しかし、このような機器制御システム1000であれば、その居室を区切る領域単位で、その領域内にある複数の照明灯具10と1つの空調装置90とを、連携して制御することができ、操作部とスイッチとがまとまった操作画面をユーザに提供することができる。
【0102】
なお、
図13の例では1台の操作部100によって、1つの空調装置90と、その空調装置90に繋がる複数の照明灯具10を制御しているが、これに限らず、1台の操作部100によって、1つの領域に設置される複数の空調装置90と、その複数の空調装置90に繋がる複数の照明灯具10とを制御してもよい。つまり、1つの空調装置90という単位ではなく、1つの領域単位で操作部100を設けてもよい。また、全ての領域を、領域単位で操作できる1台の操作部100で構成されてもよい。オフィスビルの広い居室空間では、1つの操作部によって、領域内に設置された複数台の空調装置が操作されることは珍しくない。
【0103】
図14は、居室内に設置される複数の照明灯具10及び複数の空調装置90を、1つの操作部100で領域毎に操作する操作画面の例である。このように、「エリアA」や「エリアB」など各領域に対する領域名が表示され、領域毎に、照明と空調のON/OFFをまとめて操作する一括操作ボタン101、照明だけのON/OFFをまとめて操作する照明操作ボタン102、及び、空調だけのON/OFFをまとめて操作する空調操作ボタン103が設けられる。これらの操作ボタンは、照明と空調をまとめて操作するか、個別に操作するかを、ユーザが直感的に認識できる文字や絵などのシンボルが表示される。また、空調の設定温度を調整する温度調節ボタン104や、あるいは、照明が調光機能を有する場合はさらに、照明の強弱を調整する明るさ調節ボタン105などを有する。このような操作画面を操作部100が表示することで、照明用のスイッチと空調用のコントローラを別々に壁3に取り付けなくてもよく、ユーザの操作性も向上する。
【0104】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態に係る建築物における空調装置290について説明する。
図15は、空調装置290の斜視図である。また、
図16は、空調装置290のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0105】
第二実施形態の空調装置290は、コネクタ受け部として、照明灯具10への電源電圧の供給のために設けられた第1コネクタ受け部94を有する点では第一実施形態と同様であり、さらに、照明灯具10の調光制御のために設けられた第2コネクタ受け部294を有する点が、第一実施形態とは異なる。なお、1つのコネクタ受け部で、通電及び通信を行える配線と接続し、電源供給及び調光制御が行えるようにしてもよい。つまり、第1コネクタ受け部94及び第2コネクタ受け部294を1つにまとめたコネクタ受け部で実現してもよい。またあるいは、調光制御のためのコネクタ受け部を有し、電源供給のためのコネクタ受け部については設けないようにしてもよい。この場合、照明灯具10は、空調装置290からではなく、別のルートで電源供給を受けられるよう配線接続される。
【0106】
また、第2コネクタ受け部294を有したことに伴って、照明接続部299は、各照明灯具10への電源電圧の供給のための第1~第8照明接続部に加えて、さらに、各照明灯具10の調光制御のための第1~第8調光接続部が設けられている。また、制御部295には、照明灯具10の調光を制御するためのドライバプログラムが搭載され、このドライバプログラムに基づいて、照明灯具10に対する調光制御を実行する調光制御部954が機能する。
【0107】
このように、第二実施形態においては、空調装置290において、コネクタ受け部に接続された照明灯具10に対する電源電圧の供給だけでなく、調光制御も行うことが出来る。例えば、空調装置90が冷房運転で動作している場合と、暖房運転で動作している場合とで、照明の色温度が変化するように制御することができる。例えば、冷房運転中は、照明を青色っぽい白色となるように色温度を調整することでユーザに視覚からの冷涼感を与え、暖房運転中は、照明をオレンジ色っぽい白色となるように色温度を調整することでユーザに視覚からの温感を与えることが出来る。
【0108】
以上、本発明に係る建築物、建築物の建設方法、及び、建設される建築物における照明灯具の設置方法等を、各実施形態に基づき説明してきたが、本発明の技術思想は、説明してきた具体的な実施形態に限定されるわけではない。実施形態において、本発明に係る照明灯具が居室に設置される例を説明したが、設置場所は居室に限らず、例えば、正面玄関やホールといった場所であってもよい。居室空間とは、居室に限定するものではなく、天井を境に天井裏と反対側に存在する空間のことを示してもよい。
【0109】
また、各実施形態により開示された全ての構成要素を必要十分に備えることを必須とせずとも、本発明は適用され得る。当業者、あるいは、発明の属する技術分野において、設計の自由度の範囲であれば、請求の範囲に、実施形態により開示された構成要素の一部が記載されていないとしても、本発明の適用は可能であり、本明細書はこれを含むものであることを前提として発明を開示する。
【0110】
各実施形態に記載の建築物は、オフィスビル、高層ビル等の建築の分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 建築物、2 床、3 壁、4 天井、5 窓、10 照明灯具、11 ベースプレート、12 カバー、13 緩衝部、14 DCハーネス、15 基板、16 光源素子、17 発光素子、18 波長変換部材、19 封止部材、20,30 吊り材、40 天井材、50,60 配線、70 ソケット、71 留め具、80 躯体、90,290 空調装置、91 ケーシング、92 天井面パネル、93 固定部、94,294 コネクタ受け部、95 制御部、951 操作受付部、952 空調動作制御部、953 照明電源制御部、954 調光制御部、96 空気調和部、97 電源供給部、98 コンバータ、99,299 照明接続部、1000 機器制御システム、100 操作部、101 一括操作ボタン、102 照明操作ボタン、103 空調操作ボタン、104 温度調節ボタン、105 明るさ調節ボタン、500 リモートサーバ