(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/345 20200101AFI20240703BHJP
【FI】
H05B45/345
(21)【出願番号】P 2021565503
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2020045742
(87)【国際公開番号】W WO2021124994
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2019228191
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柴田 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】森 亮介
(72)【発明者】
【氏名】大森 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀樹
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-138279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0203709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0244801(US,A1)
【文献】特開2016-129129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載する光源装置であって、
前記発光素子はレーザーダイオードであることを特徴とする光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の発光素子を直列に接続している光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードを光源に使用する光源装置は、発光ダイオードが電圧、あるいは電流によって電気抵抗が変化して、電圧-電流特性が直線的に変化しないので、定電流回路に接続して点灯されることがある。さらに、この光源装置は発光出力を大きくするために、複数の発光ダイオードを直列に接続して同時に点灯している。この光源装置は、直列に接続している各々の発光ダイオードに一定の電流を流して点灯するために、定電流回路を備える。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定電流回路は、電流の増加を検出して電流を一定の電流に制御するように動作するが、電流の増加を検出して一定の電流に制御するまでに時間遅れが生じるおそれがある。時間遅れは、瞬時的に過大なピーク電流を流す原因となり、ピーク電流は正常な発光素子に過電流による障害を与えるおそれがある。
【0005】
本開示は、何れかの発光素子の障害が他の発光素子に誘発されるのを抑制できる光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光源装置は、複数の発光素子を直列に接続してなるダイオード負荷に一定の電流を流す光源装置であって、ダイオード負荷に接続してなる電源回路と、ダイオード負荷と直列に接続してなるピーク電流制限回路を備える。また、ピーク電流制限回路が、ダイオード負荷と直列に接続してなる電流検出器と、電流検出器の検出電圧でダイオード負荷の電流を制御する電流調整回路とを備える。さらに、電流検出器が、抵抗器とコイルとの直列回路からなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、何れかの発光素子の障害が他の発光素子に誘発されるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る光源装置のブロック図である。
【
図2】実施形態2に係る光源装置のブロック図である。
【
図3】実施形態3に係る光源装置のブロック図である。
【
図4】実施形態4に係る光源装置のブロック図である。
【
図5】ピーク電流制限回路を設けない光源装置の電流波形を示す図である。
【
図6】実施形態に係るピーク電流制限回路が設けられた光源装置の電流波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態に係る光源装置によれば、複数の発光素子が直列に接続されたダイオード負荷に一定の電流を流す光源装置であって、ダイオード負荷に接続してなる電源回路と、ダイオード負荷と直列に接続してなるピーク電流制限回路を備えており、ピーク電流制限回路が、ダイオード負荷と直列に接続してなる電流検出器と、電流検出器の検出電圧でダイオード負荷の電流を制御する電流調整回路とを備え、電流検出器が、抵抗器とコイルとの直列回路からなる。
【0010】
以上の光源装置は、複数の発光素子を直列に接続してなるダイオード負荷と直列に接続しているピーク電流制限回路を備えており、このピーク電流制限回路には、ダイオード負荷と直列に接続している電流検出器と、電流検出器の検出電圧でダイオード負荷の電流を制御する電流調整回路とを設ける。さらに、電流検出器には、抵抗器と直列にコイルを接続しているので、発光素子のいずれかが内部ショートなどの故障でダイオード負荷の電気抵抗が急激に低下して、電流が瞬間的に増加すると、電流検出器のコイルには、ダイオード負荷の急激な電流変動とコイルのインダクタンスに比例して瞬間的にピーク電圧が誘導される。瞬間的に誘導されるピーク電圧は、電流調整回路を制御して、出力電流であるダイオード負荷の電流を瞬間的に減少させる。したがって、いずれかの発光素子が故障してダイオード負荷の電気抵抗が瞬間的に小さくなる状態においても、極めて早い応答速度でダイオード負荷の電流を制御して、電流の増加を抑制できる。
【0011】
とくに、以上の光源装置は、電流検出器の抵抗器と直列にコイルを接続して、このコイルに誘導されるピーク電圧で電流調整回路を制御して、すなわち、ピーク電圧を電流調整回路の入力側に負帰還してダイオード負荷の電流を制限するので、極めて小さいインダクタンスのコイルで、ダイオード負荷電流の瞬間的増加を抑制できる。たとえば、以下の実施例の光源装置にあっては、抵抗器と直列に接続するコイルのインダクタンスが0.9μHと極めて小さい。とくに、以上の光源装置は、ダイオード負荷の電流を一定の電流に安定化するために設けているピーク電流制限回路の電流検出器に、極めて小さいインダクタンスのコイルを接続するという簡単な回路構成としながら、ダイオード負荷の電流が瞬間的に増加するのを制限できる。
【0012】
また、コイルのインダクタンスで瞬間的なピーク電流を抑制した後は、電流検出器の抵抗器で、ダイオード負荷を一定の電流値に安定化できる。このため、複数の発光素子を直列に接続している光源装置において、いずれかの発光素子が内部ショートなどの故障で電気抵抗が低下しても、他の発光素子を過電流の弊害から保護しながら、その後は発光素子が故障する以前と同様にあらかじめ設定している一定の電流をダイオード負荷に流すことができる。したがって、以上の光源装置は、いずれかの発光素子が故障しても他の発光素子に瞬間的に流れるピーク電流から保護し、さらに、直列に接続している発光素子の個数が少なくなっても、あらかじめ設定している一定の電流値に安定化して、ダイオード負荷の発光素子を点灯できる。
【0013】
また、他の実施形態に係る光源装置によれば、電流調整回路が、ダイオード負荷及び電流検出器と直列に接続してなるトランジスタと、トランジスタの入力側に接続してなるコンパレータと、コンパレータの第1の入力端子に基準電圧を入力する基準電圧回路とを備え、電流検出器に誘導される検出電圧がコンパレータの第2の入力端子に入力され、コンパレータの出力がトランジスタに入力されて、トランジスタがダイオード負荷の電流を制御することができる。
【0014】
さらに、他の実施形態に係る光源装置によれば、トランジスタをFETとすることができる。さらにまた、他の実施形態に係る光源装置によれば、複数のFETを並列に接続することができる。
【0015】
さらにまた、他の実施形態に係る光源装置によれば、基準電圧回路は、基準電圧を変更できる回路とすることができる。
【0016】
さらにまた、他の実施形態に係る光源装置によれば、電流検出器に誘導される電圧を増幅するサブアンプを備え、サブアンプの出力電圧をコンパレータの入力端子に入力することができる。
【0017】
さらにまた、他の実施形態に係る光源装置によれば、コンパレータの出力側とトランジスタの入力側との間に、コンパレータの出力インピーダンスを低下して出力するバッファーアンプを接続することができる。
【0018】
さらにまた、他の実施形態に係る光源装置によれば、電源回路を定電流電源とすることができる。
【0019】
さらにまた、他の実施形態に係る光源装置によれば、抵抗器を巻き線抵抗器とすることができる。
【0020】
さらにまた、他の実施形態に係る光源装置によれば、発光素子をレーザーダイオードとすることができる。
【0021】
以下、図面に基づいて本開示を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本開示を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0022】
図1~
図4は、本実施形態に係る光源装置100、200、300、400のブロック図である。発光素子1は、複数個を直列に接続してダイオード負荷10とし、このダイオード負荷10を定電流電源2に接続して、予め設定している定格電流を流して点灯される。発光素子1は、例えば、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)である。ダイオード負荷10は、複数の発光素子1を直列に接続して回路基板(図示せず)に実装しているダイオードアレイ、あるいは複数個の発光素子1を脱着できるように電気接続したものが使用される。光源装置100、200、300、400は、直列に接続する発光素子1の個数を多くして、多数の発光素子1を点灯して発光出力を大きくできる。すべての発光素子1の正常な動作状態では、すべての発光素子1が定電流電源2から供給される一定の設定電流で駆動される。しかしながら、複数の発光素子1を直列に接続して点灯しているタイミングで、何れかの発光素子1が内部ショート、あるいは何れかの発光素子1の動作電圧が急峻に低下すると、ダイオード負荷10の電気抵抗が低下するので、ダイオード負荷10の電流が増加する。定電流電源2は、電流の増加を検出して設定値に制御するが、増加した電流を設定値に制御するまでに時間遅れがある。応答時間の遅れは、故障していない発光素子1に過大な電流を流して電流による障害を与える。例えば、何れかの発光素子の障害が他の発光素子に誘発される。とくに、発光素子をレーザーダイオードとする光源装置は、レーザーダイオードの応答特性が良いため、過電流やレーザー光による過出力で故障しやすい。
【0023】
定電流電源2は、出力側に直列に半導体スイッチング素子を接続し、この半導体スイッチング素子の内部抵抗を調整して、半導体スイッチング素子の電圧降下値をコントロールして出力電流を制御するアナログ方式と、DC/DCコンバータで出力電流を制御するスイッチング方式とがある。スイッチング方式は、半導体スイッチング素子をオンオフに切り換えるデューティーで定電流特性を実現して高い電力効率を実現できる。スイッチング方式は、出力電圧のリップルを少なくして綺麗な直流とするために、出力側に大きな静電容量の電解コンデンサが接続されるが、この電解コンデンサは、出力電流を一定値にコントロールする応答速度を遅くする原因となる。電解コンデンサの放電と充電の時間遅れが、出力電流の応答時間を遅らせるからである。高い電力効率のスイッチング方式の定電流電源は、半導体スイッチング素子の電力ロスを少なくできるが、出力側に接続している大容量の電解コンデンサによる応答時間の遅れが、故障していない発光素子に過電流やレーザー光の過出力による損傷を与える。
【0024】
1.実施形態1
(光源装置)
図1は、実施形態1に係る光源装置100のブロック図である。
光源装置100は、複数の発光素子1を直列に接続しているダイオード負荷10に電流を流す電源回路20と、ダイオード負荷10と直列に接続しているピーク電流制限回路30とを備える。また、ピーク電流制限回路30は、ダイオード負荷10と直列に接続している電流検出器31と、電流検出器31の両端に出力される検出電圧でダイオード負荷10の電流を制御する電流調整回路32とを備える。電流検出器31は、抵抗器4とコイル5との直列回路である。
【0025】
(電源回路)
電源回路20は、ダイオード負荷10に予め制御している電流を流す定電流電源2を備える。電源回路20は、好ましくは定電圧定電流電源を使用する。定電圧定電流電源は、出力電圧を設定値以下で供給しながら、ダイオード負荷10の電流を設定値に制御する。定電流電源2は、好ましくは、ダイオード負荷10に流す電流値を変更する回路を備えている。電流値を変更できる定電流電源2は、ダイオード負荷10に流す電流値、すなわち出力電流を、例えば1A~10Aの範囲で変更して、発光素子1に最適な電流を流して点灯する。定電流電源2は、DC/DCコンバータの出力電圧で制御するスイッチング方式又はアナログ方式である。スイッチング方式の定電流電源2は、電力効率を高くしながら、軽量化できる特徴がある。軽量化は、重い電源トランスを省略することで実現できる。この定電流電源2は、オンオフに切り換える半導体スイッチング素子のデューティーで、出力電流を設定値に制御するので、設定電流を大幅に変更でき、しかも発熱量も少なくできる。
【0026】
(ピーク電流制限回路)
ピーク電流制限回路30の電流調整回路32は、何れかの発光素子1が内部ショート、あるいは何れかの発光素子1の動作電圧が急峻に低下して、ダイオード負荷10の電流が瞬時的に増加するのを制限して、発光素子1の過電流やレーザー光の過出力による弊害を防止する。電源回路20を定電流電源2とする光源装置100は、ピーク電流制限回路30の設定電流を、電源回路20の定電流電源2と同じ設定電流とし、あるいはほぼ同じ設定電流とする。この光源装置100は、定電流電源2からダイオード負荷10に設定された一定の電流を供給し、何れかの発光素子1が内部ショート、あるいは何れかの発光素子1の動作電圧が急峻に低下して、定電流電源2の応答時間の遅れが原因で、ダイオード負荷10にピーク電流が流れると、このピーク電流をピーク電流制限回路30が抑制する。
【0027】
図5の電流特性は、ピーク電流制限回路を設けない光源装置の電流波形を示している。この図は、複数(たとえば20個)の発光素子1を直列にして、特定の発光素子1の両端を短絡して、ダイオード負荷10に流れる電流が変化する状態を示している。特定の発光素子1が短絡すると、ダイオード負荷10の電気抵抗が減少してピーク電流が流れる。
図5の電流特性において、ピーク電流の時間幅、すなわちピーク電流が減衰するまでの時間幅は約20msec近くになる。ピーク電流が流れる時間は、定電流電源2の応答時間の遅れによって変化するが、発光素子1は過電流やレーザー光による過出力の障害を受ける。
【0028】
ピーク電流制限回路30は、ピーク電流を抑制して過電流やレーザー光による過出力による発光素子1の障害を抑制する。ピーク電流制限回路30の電流調整回路32は、電流検出器31がピーク電流を検出するタイミングで内部抵抗を増加してピーク電流を抑制するトランジスタ3と、電流検出器31がピーク電流を検出するタイミングでトランジスタ3の内部抵抗を大きくするコンパレータ33を備えている。コンパレータ33は、電流検出器31から入力される検出電圧を基準電圧に比較して、電流検出器31がピーク電流を検出して検出電圧が高くなるタイミングでトランジスタ3の内部抵抗を大きくする信号をトランジスタ3に出力する。
【0029】
(電流検出器)
電流検出器31は、抵抗器4とコイル5を直列に接続している。
図1の電流検出器31は、抵抗器4と直列にコイル5を接続している。この電流検出器31は、抵抗器4の電気抵抗と、コイル5のインダクタンスを最適値に調整できる。抵抗器4には、抵抗線を碍子などの絶縁材の表面にコイル状に巻き付けた巻き線抵抗器を使用することができる。巻き線抵抗器にはインダクタンスがあり、抵抗線の抵抗率と長さで電気抵抗を調整して、抵抗線の巻き回数でインダクタンスを調整する。巻き線抵抗器は、抵抗器とコイルとが一体構造であるが、等価回路において、抵抗器とコイルは直列に接続される。
【0030】
抵抗器4は、流れる電流に比例して両端の電圧が高くなる。コイル5は、ピーク電流が流れて電流が急激に変化するタイミングで、電流検出器31の検出電圧を高くして、ダイオード負荷10のピーク電流を抑制する。コイル5は、ピーク電流が発生するタイミングで両端の誘導電圧を高くする。とくに、ピーク電流の立ち上がり時において検出電圧を高くする。ピーク電流がコイル5の両端に誘導する電圧(E)が、以下の式(I)で示すように、コイル5のインダクタンス(L)に比例して大きくなるからである。
E=L×di/dt 式(I)
【0031】
ただし、式(I)において、diは電流の変化量、dtは電流が変化する時間で、di/dtはピーク電流が単位時間に増加する割合を示している。ピーク電流は、立ち上がり時に急激に電流が増加するので、このタイミングでdi/dtが極めて大きくなって、誘導電圧が相当に高くなる。したがって、抵抗器4と直列にコイル5を接続している電流検出器31は、ピーク電流が流れる瞬間、とくにピーク電流の立ち上がりタイミングにおいて、コイル5の両端の誘導電圧が高くなって、検出電圧が高くなる。瞬時的に大きくなった検出電圧は、コンパレータ33の入力端子に入力される。コイル5のインダクタンスは、直列に接続している抵抗器4の電気抵抗、ダイオード負荷10に流れる電流、トランジスタ3、要求される応答速度などを考慮して最適値に設定されるが、たとえば、ダイオード負荷10の電流を1A~10A、抵抗器4の電気抵抗を0.2Ω~0.5Ωとする回路構成において、0.5μH~5μHに設定する。
【0032】
(電流調整回路)
電流調整回路32は、電流検出器31から入力される検出電圧でダイオード負荷10に流れる電流を制御する。電流調整回路32は、ダイオード負荷10にピーク電流が流れて、電流検出器31から入力される検出電圧が瞬時的に高くなると、電流を制限してピーク電流を抑制する。電流検出器31は、ピーク電流の立ち上がり時に検出電圧を高くするので、電流調整回路32は、検出電圧が高くなるタイミング、すなわちダイオード負荷10にピーク電流が流れるタイミングで効果的に電流を抑制する。電流調整回路32は、トランジスタ3の内部抵抗を大きくしてダイオード負荷10のピーク電流を抑制する。したがって、ダイオード負荷10と直列に接続しているトランジスタ3を備え、さらに電流検出器31から入力される検出電圧でトランジスタ3の内部抵抗を制御するコンパレータ33を備える。
【0033】
(トランジスタ)
トランジスタ3は、好ましくはFETを使用する。とくに、優れた大電流特性のMOSFETが適している。FETは入力抵抗が大きく、オン抵抗が小さくて効率よく電流をコントロールできるからである。ただ、トランジスタ3はFETに限らず入力信号で内部抵抗をコントロールできる全てのトランジスタ、たとえばバイポーラトランジスタやIGBT等も使用できる。FETは入力電圧で内部抵抗がコントロールされる。FETは、入力電圧を高くして内部抵抗を小さく、入力電圧を低くして内部抵抗を大きくできる。さらに、
図4に示す光源装置400の電流調整回路32Cは、FETを複数備えており、複数のFET同士を並列接続することでFETの並列数に比例して最大許容電流を増加させることを可能としている。
【0034】
(コンパレータ)
コンパレータ33は、電流検出器31から入力される検出電圧を基準電圧に比較して、トランジスタ3の内部抵抗をコントロールする。
図1のコンパレータ33は差動アンプ6を備えている。差動アンプ6は、出力側をトランジスタ3の入力側に接続して、出力電圧でトランジスタ3の内部抵抗をコントロールする。差動アンプ6は、第1の入力端子6Aには基準電圧を入力する基準電圧回路34を接続して、第2の入力端子6Bには電流検出器31の検出電圧を入力している。差動アンプ6は、第1の入力端子6Aと第2の入力端子6Bの差電圧を増幅し、あるいは増幅することなくトランジスタ3に出力する。差動アンプ6は、第1の入力端子6Aを+側入力端子、第2の入力端子6Bを-側入力端子としている。基準電圧回路34は、基準電圧を変更できる回路として、ピーク電流制限回路30の設定電流を変更できる。
【0035】
以上のピーク電流制限回路30は、以下の動作をしてダイオード負荷10のピーク電流を抑制する。
1.ダイオード負荷10にピーク電流が流れると、ピーク電流に対応して電流検出器31の検出電圧が上昇する。
とくに、ピーク電流の立ち上がり時に電流の変化値が大きくなるので、このタイミングでコイル5に誘導される電圧が高くなって、検出電圧は瞬時的に高くなる。
2.瞬時的に上昇した検出電圧はコンパレータ33である差動アンプ6に設けている第2の入力端子6Bに入力される。
3.差動アンプ6は、第2の入力端子6Bの電圧を第1の入力端子6Aの基準電圧に比較し、第2の入力端子6Bの電圧が高くなると、出力電圧を-側に変化させる。
4.-側に変化した出力電圧は、トランジスタ3の入力側に入力される。
5.入力電圧が-側に変化したトランジスタ3は、内部抵抗を増加させる。
6.内部抵抗の増加したトランジスタ3は、ダイオード負荷10の電流を減少して、ピーク電流を抑制する。
【0036】
ピーク電流制限回路30は、以上の動作をしてダイオード負荷10のピーク電流を抑制するが、抵抗器4に直列に接続しているコイル5が、ピーク電流の立ち上がり時に検出電圧を瞬時的に高くして、このタイミングでトランジスタ3の内部抵抗を瞬時的に増加させる。内部抵抗が瞬時的に増加したトランジスタ3は、ダイオード負荷10に流れるピーク電流を速やかに抑制する。
【0037】
図6は、電流検出器31において、コイル5を抵抗器4に直列に接続している光源装置100におけるダイオード負荷10に流れる電流特性を示している。
図5はコイルを接続しない抵抗器のみの電流検出器を使用する光源装置におけるダイオード負荷に流れる電流波形を示している。
図5に示すように、電流検出器においてコイルを接続しない抵抗器のみからなる光源装置は、ピーク電流が流れる時間幅が約20msecと相当に長くなって、発光素子が過電流やレーザー光の過出力による障害を受ける。これに対して電流検出器31においてコイル5を接続している光源装置100は、
図6に示すように、ピーク電流が流れる時間幅が約100μsecとなって、約1/200に短縮され、さらにピーク電流の最大電流も小さくなって、発光素子1の過電流やレーザー光の過出力による障害を防止できる。ただし、
図6はダイオード負荷の電流を2A、抵抗器の電気抵抗を0.5Ω、コイルのインダクタンスを0.9μHとして測定した電流特性を示している。
【0038】
2.実施形態2
図2は、実施形態2に係る光源装置200のブロック図である。この図の光源装置200の電流調整回路32Aは、電流検出器31に誘導される電圧を増幅するサブアンプ7を備える。この光源装置200は、電流検出器31のジュール熱による発熱を小さくして、電流検出器31の温度変化による検出誤差を少なくできる特徴がある。サブアンプ7が、電流検出器31の電圧を増幅してコンパレータ33に入力するので、電流検出器31の電気抵抗とインダクタンスを小さくして、電流検出器31の検出電圧を低くしながら、コンパレータ33には所定の電圧を入力できるからである。たとえば、サブアンプ7の増幅率を10倍とすれば、電流検出器31の電気抵抗とインダクタンスを1/10として、電流検出器31のジュール熱による発熱量を1/10にできる。コンパレータ33は、入力される基準電圧と検出電圧が小さすぎると、高い精度で電流をコントロールするのが難しくなる。たとえば、抵抗器4の電気抵抗を0.2Ω、と仮定すると、ダイオード負荷10の電流値を2Aで検出電圧は0.4Vとなって、この電圧がコンパレータ33に入力される。抵抗器4の電気抵抗を1/10に低下して、0.02Ωとして、ジュール熱の発熱量は小さくできるが、コンパレータ33の入力電圧が0.04Vと低下して、トランジスタ3の内部抵抗を高精度でコントロールするのが難しくなる。電流検出器31の検出電圧を10倍に増幅してコンパレータ33に入力すると、コンパレータ33の入力電圧は0.4Vとなって、電流を高い精度でコントロールできる。
【0039】
3.実施形態3
図3は、実施形態3に係る光源装置300のブロック図である。この図の光源装置300の電流調整回路32Bは、コンパレータ33の出力側とトランジスタの入力側との間にバッファーアンプ8を接続している。バッファーアンプ8は、100%負帰還の増幅回路で出力インピーダンスを低くできる。バッファーアンプ8は、コンパレータ33の出力をインピーダンス変換してトランジスタ3に入力する。この光源装置300は、バッファーアンプ8でコンパレータ33の出力インピーダンスを低下させてトランジスタ3に入力するので、トランジスタ3の入力容量を速やかに充電する。したがって、コンパレータ33の出力信号でトランジスタ3の内部抵抗を速やかにコントロールして、ピーク電流の増加に短時間に応答して、さらに効率よく抑制する。
【0040】
電流容量の大きいトランジスタ、たとえばMOSFETやIGBTは入力容量が大きい。したがって、トランジスタ3をMOSFETやIGBTとするピーク電流制限回路は、ダイオード負荷の電流を大きくして発光出力を大きくできるが、トランジスタ3の大きな入力容量が、応答時間を遅らせる原因となる。
図3のピーク電流制限回路30は、100%負帰還のバッファーアンプ8の出力インピーダンスが小さく、入力容量の大きいトランジスタ3の応答時間遅れを短縮できる。したがって、このピーク電流制限回路30は、ダイオード負荷10の電流を大きくして発光出力を大きくしながら、ダイオード負荷10のピーク電流を速やかに抑制できる。
【0041】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示に係る光源装置は、複数の発光素子を直列に接続して発光出力を大きくする光源装置として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
100、200、300、400…光源装置
1…発光素子
2…定電流電源
3…トランジスタ
4…抵抗器
5…コイル
6…差動アンプ
6A…第1の入力端子
6B…第2の入力端子
7…サブアンプ
8…バッファーアンプ
10…ダイオード負荷
20…電源回路
30…ピーク電流制限回路
31…電流検出器
32、32A、32B、32C…電流調整回路
33…コンパレータ
34…基準電圧回路