IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NTTドコモの特許一覧 ▶ 学校法人慶應義塾の特許一覧 ▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

特許7513989時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム
<>
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図1
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図2
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図3
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図4
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図5
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図6
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図7
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図8
  • 特許-時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】時計を止めるタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240703BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/16 400
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021038575
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138604
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】深澤 佑介
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴記
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 悠理
(72)【発明者】
【氏名】沖村 宰
(72)【発明者】
【氏名】太田 順
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144252(JP,A)
【文献】特開2017-207733(JP,A)
【文献】特開2018-189966(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22、10/00-10/06
G09B 3/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示された時間のカウントアップ又はカウントダウンを予め定められた目標時間で止めることが求められる第1のタスク、および、告知されていない目標時間が経過し、表示された時間のカウントアップ又はカウントダウンが止まった時点で、予め定められた操作を行うことが求められる第2のタスク、を含む複数のタスクを複数回にわたりユーザに提示する提示部と、
前記提示部により提示された複数回にわたる前記複数のタスクに対する前記ユーザの反応度を示す反応度データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの反応度データに基づいて、前記ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する予測部と、
を備える機能推定装置。
【請求項2】
前記機能推定装置は、
前記取得部により取得された学習用ユーザの反応度データを説明変数とし、前記学習用ユーザにつき取得されたタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を目的変数とする、前記タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測するための予測モデルを学習する学習部、をさらに備え、
前記予測部は、前記取得部により取得された対象ユーザの反応度データを、前記学習部による学習で得られた前記予測モデルに適用することで、前記対象ユーザの前記タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する、
請求項1に記載の機能推定装置。
【請求項3】
前記取得部は、
前記複数回にわたる、各タスクにおける目標時間に対する実際に反応した応答時間の先行度合い又は遅延度合いを表す誤差指標から、各タスクにおける誤差平均および誤差分散を、前記反応度データとして取得する、
請求項1又は2に記載の機能推定装置。
【請求項4】
前記取得部は、
前記誤差指標として、前記目標時間に対する前記応答時間の差分、および、前記目標時間に対する当該差分の比率、のうち少なくとも一方を用いる、
請求項3に記載の機能推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能推定装置に係り、とりわけ、脳の前頭前野のタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定する機能推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症か否かを判定するため、または認知症の進行度合いを検査するためには、認知症検査(長谷川式スケールなど)の実施が必要であることが知られている。また、認知症の原因疾患の1つであるアルツハイマー病で表れる傾向として、脳の前頭前野の機能のうちタスク実行機能およびタスク抑制機能の障害が知られている。タスク実行機能とは、タスクの遂行に際し、現在の状況に対処して適切な思考または行動を導き出し、当該思考または当該行動に関する意思決定を促進する能力であり、タスク抑制機能とは、タスクの遂行に際し、現在の状況において不適切な思考または行動を意識的に抑止する能力である。これらのタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定するためには、心理学試験(例えば、go-nogoタスク、Stroop試験など)の実施が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「やる気と脳-価値と動機づけの脳機能イメージング」、松元健二著、高次脳機能研究第34巻第2号、2014年6月30日、URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/34/2/34_165/_pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、実際に上記の心理学試験を実施するには、専門家の臨席、所定手順の実行、試験を受けるための十分な時間の確保などが必要であり、簡単に実施できるものではなかった。
【0005】
一方、上記のタスク実行機能およびタスク抑制機能はストップウォッチへの反応(早く押す又は遅れて押す)に関係するとの医学分野の学術論文が存在する(上記の非特許文献1参照)。上記のストップウォッチへの反応度を測るテストは、前述した心理学試験とは異なり、スマートフォン等の端末で実施可能であるため、スマートフォン等の端末で簡単なテストを実施するだけでユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定することが待望される。
【0006】
そこで、本開示は、より簡易にユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る機能推定装置は、表示された時間のカウントアップ又はカウントダウンを予め定められた目標時間で止めることが求められる第1のタスク、および、告知されていない目標時間が経過し、表示された時間のカウントアップ又はカウントダウンが止まった時点で、予め定められた操作を行うことが求められる第2のタスク、を含む複数のタスクを複数回にわたりユーザに提示する提示部と、前記提示部により提示された複数回にわたる前記複数のタスクに対する前記ユーザの反応度を示す反応度データを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記ユーザの反応度データに基づいて、前記ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する予測部と、を備える。
【0008】
上記の機能推定装置において、提示部は、表示された時間のカウントアップ又はカウントダウンを予め定められた目標時間で止めることが求められる第1のタスク、および、告知されていない目標時間が経過し、表示された時間のカウントアップ又はカウントダウンが止まった時点で、予め定められた操作を行うことが求められる第2のタスク、を含む複数のタスクを複数回にわたりユーザに提示し、取得部は、提示された複数回にわたる複数のタスクに対するユーザの反応度を示す反応度データを取得する。そして、予測部は、取得されたユーザの反応度データに基づいて、ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する。このように、従来のような手間および時間を要する心理学試験に代わり、ストップウォッチへの反応度に関係する複数のタスクに対するユーザの反応度データに基づき、タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測することで、より簡易にユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より簡易にユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発明の実施形態における機能推定装置の機能ブロック構成図である。
図2】課題A、Bを提示した画面例を示す図である。
図3】(a)は課題Aについての応答時間、誤差および誤差比率の例を示す図であり、(b)は課題Bについての応答時間、誤差および誤差比率の例を示す図である。
図4】(a)は課題Aについての誤差平均および誤差分散の例を示す図であり、(b)は課題Bについての誤差平均および誤差分散の例を示す図である。
図5】(a)は心理学試験の試験結果の例を示す図であり、(b)は心理学試験の試験結果から導出されたタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を示す図である。
図6】予測モデル構築処理を示すフロー図である。
図7】反応度データの取得処理を示すフロー図である。
図8】予測モデルを用いた対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の推定処理を示すフロー図である。
図9】機能推定装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
(機能推定装置1の構成について)
図1を参照して、一実施形態に係る機能推定装置1の構成を説明する。図1に示される機能推定装置1は、タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測するための予測モデルを構築し、ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する装置である。また、機能推定装置1は、ユーザによって操作可能な装置であり、例えば、スマートフォン、タブレット端末などが挙げられる。機能推定装置1には、例えば、ユーザが操作可能なアプリケーション(以下、「アプリ」という。)がインストールされている。当該アプリの種類は、特に限定されず、例えば、SNS(ソーシャルネットワークサービス)のアプリ、通信用アプリ、動画再生アプリ、カメラ機能アプリなどが挙げられる。
【0013】
機能推定装置1は、提示部10と、取得部20と、学習部30と、予測部40と、記憶部50とを備えている。このうち記憶部50は、情報を記憶する機能部であり、提示部10により提示されるストップウォッチアプリを用いた後述するタスクA、Bに関するデータ、取得部20により取得された後述のデータなどを記憶するデータベースとして機能する。取得部20、学習部30および予測部40は、記憶部50から情報を取得可能であり且つ記憶部50に情報を保存可能に構成されている。なお、記憶部50は、機能推定装置1の外部に設けられてもよい。
【0014】
提示部10は、ストップウォッチアプリを用いた後述する複数のタスクを複数回にわたりユーザに提示する機能部である。本実施形態では、ストップウォッチアプリを用いた複数のタスクとして、以下のタスクAとタスクBがユーザに提示される。タスクAは、画面中央に「0.00」が表示された初期状態から、図2の左側に示すように画面中央に表示される時間のカウントアップを予め定められた目標時間(図2の例では10秒)で止めること(ここでは「ストップ」ボタンへのタッチ)が求められるタスクであり、9.32秒という結果が得られている。なお、上記に代わり、画面中央に表示される時間のカウントダウンを予め定められた目標時間で止めることが求められるタスクであってもよい。一方、タスクBは、開始と同時に図2の右側に示すように画面中央に表示される時間のカウントアップが始まり、その後、告知されていない目標時間が経過して、表示された時間のカウントアップが止まった時点で、予め定められた操作(ここでは「止まった」ボタンへのタッチ)を行うことが求められるタスクであり、上記目標時間が6秒のところ、6.54秒という結果が得られている。なお、上記に代わり、開始と同時に画面中央に表示される時間のカウントダウンが始まり、表示された時間のカウントダウンが止まった時点で、予め定められた操作を行うことが求められるタスクであってもよい。また、上記タスクAは特許請求の範囲に記載の「第1のタスク」に、上記タスクBは特許請求の範囲に記載の「第2のタスク」に、それぞれ対応する。
【0015】
図1に戻り、取得部20は、提示された複数回にわたる複数のタスク(ここでは、上記タスクA、B)に対するユーザの反応度を示す反応度データを取得する機能部であり、タイマ21および算出部22を含んでいる。取得部20は、タスクA、Bそれぞれについて、タイマ21によって応答時間(上記のカウントアップを止める操作をした時間)を取得し、算出部22によって、目標時間に対する応答時間の誤差、および目標時間に対する誤差の比率(誤差比率)を算出し、得られた応答時間、誤差および誤差比率を反応度データとして取得する。なお、特許請求の範囲における「誤差指標」は上記の誤差および誤差比率を含む概念である。
【0016】
図3(a)には、あるユーザに関しタスクAについて取得された反応度データの例を示す。例えば、目標時間10.0秒に対し、応答時間10.5秒が得られ、誤差(応答時間-目標時間)として「+0.5秒」、および、誤差比率(誤差/目標時間)として「5%」が得られている。図3(a)に示す結果から、上記ユーザについては、目標時間よりも早く操作する場合と遅れて操作する場合のいずれもあると把握される。もし、目標時間よりも早く操作する傾向に偏っている場合には、タスク抑制機能の低下が疑われ、一方、目標時間よりも遅れて操作する傾向に偏っている場合には、タスク実行機能の低下が疑われる。図3(b)には、あるユーザに関しタスクBについて取得された反応度データの例を示す。例えば、目標時間7.1秒に対し、応答時間6.9秒が得られ、誤差(応答時間-目標時間)として「-0.2秒」、および、誤差比率(誤差/目標時間)として「-2.8%」が得られている。タスクBは、カウントアップ(又はカウントダウン)が止まったことをユーザが認識してから操作すると想定されるため、基本的には応答時間が目標時間よりも遅れるタスクである。そのため、目標時間よりも早く操作する傾向に偏っている場合には、特に、タスク抑制機能の低下が疑われる。
【0017】
また、取得部20は、複数回にわたるタスクA、Bそれぞれにおける目標時間に対する応答時間の先行度合い又は遅延度合いを表す誤差指標(ここでは「誤差」)から、各タスクにおける誤差平均および誤差分散を、反応度データとして取得する。例えば、図4(a)には、図3(a)に示すタスクAについての反応度データを複数回にわたって取得し、取得された複数回にわたる全ての「誤差」から「誤差平均」および「誤差分散」を、反応度データとして取得した例を示す。図4(b)には、図3(b)に示すタスクBについての反応度データを複数回にわたって取得し、取得された複数回にわたる全ての「誤差」から「誤差平均」および「誤差分散」を、反応度データとして取得した例を示す。なお、ここでは、「誤差平均」および「誤差分散」を取得するための基礎データ(誤差指標)として「誤差」(目標時間に対する応答時間の差分(応答時間-目標時間))を用いた例を説明したが、「誤差」に代わり、「目標時間に対する誤差の比率(誤差比率)」を、「誤差平均」および「誤差分散」を取得するための基礎データとして用いてもよい。
【0018】
また、タスクA、Bにおいて、「誤差平均」および「誤差分散」を取得するための基礎データとして「誤差」と「誤差比率」とを使い分ける又は併用してもよい。例えば、タスクAでは、止めるべき目標時間が予め分かっているため、目標時間に対しどの程度ずれたかの相対的な差分(誤差)が有用である。そのため、タスクAについては、「誤差平均」および「誤差分散」を取得するための基礎データとして「誤差」を用いる。一方、タスクBにおいては、時計が止まる目標時間が分かっておらず、時計が止まってから素早く反応することが求められるため、提示された時計が止まるまでの時間が長い場合における認知的な負荷と、提示された時計が止まるまでの時間が短い場合における認知的な負荷とでは、明らかに差があると考えられる。よって、タスクBについては、目標時間に対しどの程度ずれたかの相対的な差分(誤差)を基礎データとして「誤差平均」および「誤差分散」を取得するとともに、目標時間に対する差分の比率(誤差比率)を基礎データとして「誤差平均」および「誤差分散」を取得して、誤差を基礎とする「誤差平均」および「誤差分散」、並びに誤差比率を基礎とする「誤差平均」および「誤差分散」を観察することで、認知的な負荷の影響を勘案した、より多面的で精度の良いタスク実行機能およびタスク抑制機能の推定が可能となる。
【0019】
次に、図1へ戻り、学習部30は、タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測するための予測モデル31を学習する機能部である。予測モデル31は、取得部20により取得された学習用ユーザの反応度データを説明変数とし、学習用ユーザにつき取得されたタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標である機能指標を目的変数とする。上記の「学習用ユーザ」とは、例えば、学習部30において予測モデル31の学習に用いられる反応度データが抽出される被験者(ユーザ)である。一方、後述する「対象ユーザ」とは、学習により得られた予測モデル31を用いてタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する予測対象となる被験者(ユーザ)である。本実施形態において単に「ユーザ」と記載した場合には、学習用ユーザと対象ユーザとを含む場合がある。
【0020】
上記の「機能指標」は心理学試験により得られ、当該心理学試験は、専門家の臨席の下、試験を受けるための十分な時間が確保された上で、所定手順で実行される。心理学試験の一例として、図5に示されるような「go-nogoタスク」が挙げられる。go-nogoタスクは、例えば、ユーザが、スマートフォンのような画面およびユーザ入力部(例えばタップ動作の受付部)を備える試験端末を使用することで行われる。
【0021】
図5(a)に示されるように、go-nogoタスクにおいて、試験端末の画面上には、ユーザが反応すべきシンボル(GOシンボル)とユーザが反応すべきでないシンボル(NOGOシンボル)とがシンボル情報として所定の試行回数だけ次々に提示される。ユーザは各シンボル情報に適した対処をする。例えば、ユーザは、GOシンボルにおいては素早く反応して試験端末へのタップを実施し、NOGOシンボルでは試験端末に対して何も操作せず見送る。
【0022】
GOシンボルに対してタップを実施した場合、または、NOGOシンボルに対して何も操作せず見送った場合、実行結果は「成功」となる。GOシンボルに対して所定の時間以上何も操作せず見送った場合、または、NOGOシンボルに対して誤ってタップを実施した場合、実行結果は「失敗」となる。試験端末は、上記の「成功」と「失敗」との情報を実行結果として取得する。また、試験端末は、GOシンボルが表示されてからユーザがタップ操作するまでの時間である反応時間を実行結果として取得する。
【0023】
図5(b)に示されるように、試験端末は、実行結果として得られた各データに基づいて機能指標を算出する。機能指標は、例えば、すべての心理学試験の成功率の平均値である全体成功率、GOシンボルに対する成功率であるGO成功率、NOGOシンボルに対する成功率であるNOGO成功率、および反応平均時間のうち少なくとも1つのデータである。試験端末は、得られた機能指標を記憶部50に保管する。例えば、全体成功率が所定の閾値より低い場合は、タスク実行機能およびタスク抑制機能の少なくともいずれかの機能が正常な状態より弱まっていることが示唆される。GO成功率が所定の閾値より低い場合は、タスク実行機能が正常な状態より弱まっていることが示唆される。NOGO成功率が所定の閾値より低い場合は、タスク抑制機能が正常な状態より弱まっていることが示唆される。反応平均時間が所定の閾値より大きい場合は、タスク実行機能が正常な状態より弱まっていることが示唆される。上記の各閾値は、実施されるgo-nogoタスクに対して専門家等により事前に設定される。
【0024】
学習用ユーザが提示部10により提示されたタスクを実行すると共に試験端末における心理学試験を実行することで、反応度データおよび機能指標が予測モデル31の学習用データとして得られる。取得部20において所定の期間の記憶部50内のデータに基づいて反応度データが算出された場合、当該所定の期間または当該所定の期間の直前若しくは直後に測定された機能指標と、当該反応度データとが、学習部30において予測モデル31の学習に用いられる。例えば、ある期間において、学習用ユーザが実行し、記憶部50内に記憶された複数のタスクによるデータに基づいて算出された反応度データと、上記期間と同じ期間において学習用ユーザが試験端末を利用して1回または複数回の心理学試験を実行することで取得された機能指標とが、予測モデル31の学習に用いられる。
【0025】
取得部20は、所定の人数以上の複数の学習用ユーザの機能指標を取得する。学習部30は、取得部20により取得された所定の人数以上の複数の学習用ユーザの反応度データおよび機能指標を予測モデル31に学習させる。所定の人数とは、例えば数十人または数百人である。ストップウォッチに係るタスクA、Bにおいて導出された反応度データと、心理学試験において導出された機能指標とは、タスク実行機能およびタスク抑制機能の低下を示唆するデータとして相関関係があると推定される。これにより、予測モデル31は、反応度データに含まれる各指標に対する機能指標を推定する機能を獲得する。
【0026】
次に、図1へ戻り、予測部40は、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する機能部であり、具体的には、取得部20により取得された対象ユーザの反応度データを、学習部30による学習で得られた予測モデル31に適用することで、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する。例えば、予測部40は、取得部20により所定の期間ごとに取得された対象ユーザの反応度データを予測モデル31に適用することで、当該所定の期間ごとの機能指標を予測する。また、予測部40は、取得部20によって、タスクA、Bの所定の提示回数ごとに取得された対象ユーザの反応度データを予測モデル31に適用することで、当該所定の提示回数ごとの機能指標を予測してもよい。
【0027】
また、予測部40は、予測されたユーザの機能指標、または、推定されたタスク実行機能およびタスク抑制機能を、ユーザが確認可能なように出力する機能(例えば、表示出力する、印刷出力する、データとして出力するなどの機能)を有してもよい。
【0028】
さらに、予測部40は、予測された機能指標を用いて対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を診断してもよい。ここでのタスク実行機能およびタスク抑制機能の診断とは、対象ユーザの当該機能に異常があるか否か、弱まっている兆候があるか否か、従前若しくは他の同年齢のユーザと比べて弱まっているか否かなどを含む対象ユーザの脳の状態を、機能指標に基づいて診断することを指す。
【0029】
この場合、例えば、取得部20が、機能指標に対する専門家が定めた閾値を取得して、予測部40が、予測されたユーザの機能指標と、専門家が定めた閾値とに基づいて、ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を診断してもよい。例えば、予測されたユーザの機能指標が当該閾値より低い場合、予測部40は、当該ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能が低下している可能性があると診断することができる。
【0030】
また、例えば、取得部20が、学習用ユーザの機能指標と、学習用ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の診断結果とを取得し、さらに、予測部40が、予測された対象ユーザの機能指標に加え、上記の取得された学習用ユーザの機能指標、並びに学習用ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の診断結果に基づいて、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を診断してもよい。この場合、学習用ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能が低下している可能性があるとの診断結果が得られている場合、当該学習用ユーザの機能指標を閾値とすることができる。当該学習用ユーザが複数存在する場合は、機能指標の平均値などの特徴量を閾値としてもよい。例えば、予測された対象ユーザの機能指標が当該閾値より低い場合、予測部40は、当該対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能が低下している可能性があると診断することができる。
【0031】
なお、図1には、学習部30が予測モデル31を内蔵する例を示したが、予測モデル31は記憶部50に保管されてもよい。
【0032】
(機能推定装置1で実行される処理について)
次に、図6図8のフローチャートを用いて、本実施形態に係る機能推定装置1で実行される処理(機能推定装置1が行う推定方法)を説明する。まず、図6に示される機能推定装置1において予測モデル31を構築する処理を説明する。
【0033】
機能推定装置1によって、学習用ユーザの反応度データの取得処理が実行される(ステップS1)。ステップS1は、図7に示される以下の複数のステップにより構成されている。まず、提示部10によって、所定のタイミングで、予め定められた目標時間に係るタスクAが提示される(ステップS11)。続いて、取得部20のタイマ21によって、タスクAに係る応答時間を取得し(ステップS12)、取得部20の算出部22によって、タスクAに係る誤差(応答時間-目標時間)および誤差比率(誤差/目標時間)を算出する(ステップS13)。次に、提示部10によって、予め定められた目標時間に係るタスクBが提示される(ステップS14)。続いて、取得部20のタイマ21によって、タスクBに係る応答時間を取得し(ステップS15)、取得部20の算出部22によって、タスクBに係る誤差(応答時間-目標時間)および誤差比率(誤差/目標時間)を算出する(ステップS16)。上記のステップS12、S13、S15、S16で得られたさまざまな反応度データは記憶部50に記憶される。
【0034】
続いて、ステップS11~S16の処理が所定回数、実施されたか否かが取得部20によって判定される(ステップS17)。ここで、実施回数が所定回数未満である場合(ステップS17:NO)は、ステップS11へ戻り、ステップS11~S16の処理が繰り返される。
【0035】
その後、ステップS11~S16の処理が所定回数だけ繰り返されると、ステップS17でYES判定され、ステップS18において、取得部20は、例えば図4(a)、(b)に示すように、複数回にわたるタスクA、Bそれぞれにおける目標時間に対する応答時間の先行度合い又は遅延度合いを表す誤差から、タスクA、Bそれぞれにおける誤差平均および誤差分散を、反応度データとして取得する。これにより、図7に示される反応度データ取得処理が完了する。なお、タスクAに係るステップS11~S13と、タスクBに係るステップS14~S16とで、実行順序を図7とは逆にしてもよい。
【0036】
図6へ戻り、続いて、取得部20によって、反応度データが取得された学習用ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す機能指標が取得される(ステップS2)。続いて、学習部30によって、ステップS1で取得された反応度データを説明変数とし、ステップS2で取得された機能指標を目的変数とする予測モデル31が学習される(ステップS3)。以上の処理により、図6に示される予測モデルの構築処理が完了する。
【0037】
次に、図8を参照して、機能推定装置1における予測モデル31を用いて対象ユーザの機能指標を予測する処理を説明する。まず、取得部20によって、対象ユーザの反応度データが取得される(ステップS4)。ステップS4における処理は、例えば、図6に示されるステップS1内の各処理と同一の処理で進められる。上述のステップS11~S18の処理手順における「学習用ユーザ」を「対象ユーザ」に置き換えた処理手順でステップS4は実現される。続いて、予測部40によって、対象ユーザの反応度データが予測モデル31に適用されることで、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す機能指標が予測される(ステップS5)。これにより、図8に示される対象ユーザの機能指標を予測する処理が完了する。
【0038】
なお、ステップS5の後に、予測部40によって、予測された対象ユーザの機能指標と、予め定められた閾値とに基づいて、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能が診断されてもよい。また、予測部40は、予測された対象ユーザの機能指標、又は、診断された対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の診断結果を出力(表示出力、印刷出力など)してもよい。また、予測部40は、予測された対象ユーザの機能指標を表すデータ、又は、診断された対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の診断結果を表すデータを記憶部50に出力し、保管してもよい。
【0039】
(本実施形態の効果について)
以上のように、本実施形態の機能推定装置1によって、従来のような手間および時間を要する心理学試験に代わり、ストップウォッチに係るタスクA、Bに対するユーザの反応度を示す反応度データに基づき、タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す機能指標を予測することで、より簡易にユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定することができる。
【0040】
また、学習部30において、学習用ユーザの反応度データを説明変数とし、学習用ユーザの機能指標を目的変数とすることで、機能指標を予測するための予測モデル31を構築することができる。また、対象ユーザの反応度データを説明変数として予測モデル31に適用することで、対象ユーザの機能指標を予測することができる。このように機能指標を予測するための予測モデル31を構築し、当該予測モデル31を対象ユーザの機能指標の予測に用いることで、より精度良くタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定することができる。
【0041】
特に、取得部20は、反応度データとして、複数回にわたるタスクA、Bにおける目標時間に対する実際に反応した応答時間の先行度合い又は遅延度合いを表す誤差(つまり、正負の方向性を持った誤差)から、タスクA、Bそれぞれにおける誤差平均および誤差分散を取得する。即ち、タスクA、Bに対するユーザの反応度データとして、成功又は失敗を表す単純な結果ではなく、タスク抑制機能の低下に相関する「本来より早く操作してしまうケース」、および、タスク実行機能の低下に相関する「本来より遅れて操作してしまうケース」を検知して、早押し又は遅れの傾向を数値化し、正負の方向性を持った誤差を変数としてタスク実行機能およびタスク抑制機能をより精度良く推定することができる。
【0042】
さらに、取得部20は、タスクA、Bにおいて、「誤差平均」および「誤差分散」を取得するための基礎データ(誤差指標)として「誤差」と「誤差比率」とを使い分ける又は併用してもよい。例えば、タスクAでは、止めるべき目標時間が予め分かっており、目標時間に対しどの程度ずれたかの相対的な差分(誤差)が有用であるため、タスクAについては、「誤差平均」および「誤差分散」を取得するための基礎データとして「誤差」を用いる。一方、タスクBにおいては、時計が止まる目標時間が分かっておらず、時計が止まってから素早く反応することが求められるため、提示された時計が止まるまでの時間が長い場合における認知的な負荷と、提示された時計が止まるまでの時間が短い場合における認知的な負荷とでは、明らかに差があると考えられる。そこで、タスクBについては、目標時間に対しどの程度ずれたかの相対的な差分(誤差)を基礎データとして「誤差平均」および「誤差分散」を取得するとともに、目標時間に対する差分の比率(誤差比率)を基礎データとして「誤差平均」および「誤差分散」を取得して、誤差を基礎とする「誤差平均」および「誤差分散」、並びに誤差比率を基礎とする「誤差平均」および「誤差分散」を観察することで、認知的な負荷の影響を勘案した、より多面的で精度良くタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定することができる。
【0043】
なお、機能推定装置1において学習部30は必須構成要件ではない。機能推定装置1が学習部30を備えない場合、予測部40は、機能推定装置1の外部で生成された推定モデルを取得し、当該推定モデルを用いて対象ユーザの機能指標を予測してもよい。また、機能推定装置1は、機械学習によって生成された推定モデルを用いることなく、例えば、タスクA、Bそれぞれに関する誤差平均、誤差分散などにつき予め定められた基準に基づいて、対象ユーザの機能指標を予測してもよい。また、予測部40は、例えば、記憶部50に記憶された過去の反応度データを読み出し、新たに取得された最新の操作データを過去の反応度データと相対的に比較することで、タスク実行機能およびタスク抑制機能における低下などにつき診断してもよい。
【0044】
なお、上記実施形態の説明に用いられたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェアおよびソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的または間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置または上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0045】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、および割り振り(assigning)などがあるが、これらの機能に限られない。例えば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)または送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0046】
例えば、本開示の一実施形態における機能推定装置1は、本開示の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。図9に示されるように、上述の機能推定装置1は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、およびバス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0047】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、およびユニットなどに読み替えることができる。機能推定装置1のハードウェア構成は、図に示された各装置を1つまたは複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0048】
機能推定装置1における各機能は、プロセッサ1001およびメモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信を制御したり、メモリ1002およびストレージ1003におけるデータの読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0049】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、およびレジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。例えば、上述の機能推定装置1の各機能は、プロセッサ1001によって実現されてもよい。
【0050】
プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、およびデータなどを、ストレージ1003および通信装置1004の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施形態において説明された動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、機能推定装置1の各機能は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001によって実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時または逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されてもよい。
【0051】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、およびRAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、またはメインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本開示の一実施形態に係る情報提供方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0052】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002およびストレージ1003の少なくとも一方を含むデータベース、サーバ、その他の適切な媒体であってもよい。
【0053】
通信装置1004は、有線ネットワークおよび無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、または通信モジュールなどともいう。通信装置1004は、例えば周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)および時分割複信(TDD:Time Division Duplex)の少なくとも一方を実現するために、高周波スイッチ、デュプレクサ、フィルタ、周波数シンセサイザなどを含んで構成されてもよい。例えば、上述の取得部20などは、通信装置1004によって実現されてもよい。
【0054】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005および出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0055】
プロセッサ1001およびメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007によって接続される。バス1007は、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0056】
機能推定装置1は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部または全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0057】
情報の通知は、本開示において説明された態様/実施形態に限られず、他の方法を用いて行われてもよい。
【0058】
本開示において説明された各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明された方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示された特定の順序に限定されない。
【0059】
情報等は、上位レイヤから下位レイヤへ、または下位レイヤから上位レイヤへ出力され得る。情報等は、複数のネットワークノードを介して入出力されてもよい。
【0060】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理されてもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0061】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0062】
本開示において説明された各態様/実施形態は単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的な通知に限られず、暗黙的に(例えば、当該所定の情報の通知を行わないことによって)行われてもよい。
【0063】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明された実施形態に限定されないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく修正および変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とし、本開示に対して何ら制限的な意味を有しない。
【0064】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0065】
ソフトウェア、命令、および情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)および無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、または他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術および無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0066】
本開示において説明された情報、および信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、またはこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0067】
なお、本開示において説明された用語および本開示の理解に必要な用語については、同一のまたは類似する意味を有する用語と置き換えられてもよい。
【0068】
本開示において使用される「システム」および「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0069】
本開示において説明された情報、およびパラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。
【0070】
上述したパラメータに使用される名称はいかなる点においても限定的な名称ではない。さらに、これらのパラメータを使用する数式等は、本開示で明示的に開示した数式等と異なる場合もある。
【0071】
本開示で使用される「判断(determining)」、および「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、または「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0072】
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、またはこれらのあらゆる変形は、2またはそれ以上の要素間の直接的または間接的なあらゆる接続または結合を意味し、互いに「接続」または「結合」された2つの要素間に1またはそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合または接続は、物理的に行われてもよく、論理的に行われてもよく、或いはこれらの組み合わせで実現されてもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用される場合、2つの要素は、1またはそれ以上の電線、ケーブルおよびプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域および光(可視および不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」または「結合」されると考えることができる。
【0073】
本開示において使用される「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0074】
本開示において使用される「第1の」、および「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量または順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本開示において使用され得る。したがって、第1および第2の要素への参照は、2つの要素のみが採用され得ること、および何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことのいずれも意味しない。
【0075】
上記の各装置の構成における「部」は、「回路」、または「デバイス」等に置き換えられてもよい。
【0076】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」およびそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0077】
本開示において、例えば、英語での「a」,「an」および「the」のように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0078】
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、および「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…機能推定装置、10…提示部、20…取得部、21…タイマ、22…算出部、30…学習部、31…予測モデル、40…予測部、50…記憶部、1001…プロセッサ、1002…メモリ、1003…ストレージ、1004…通信装置、1005…入力装置、1006…出力装置、1007…バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9