(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電力システム及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240703BHJP
H02J 3/01 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 E
H02J3/01
(21)【出願番号】P 2024032898
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2023058839
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】門口 克
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
(72)【発明者】
【氏名】柳田 靖人
(72)【発明者】
【氏名】山際 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 善紀
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 稔之
(72)【発明者】
【氏名】永井 栄寿
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220996(JP,A)
【文献】特開2012-050167(JP,A)
【文献】特開2016-046982(JP,A)
【文献】特開平10-080150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/01
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流リンク部と、
前記直流リンク部に接続され、単相交流電源と接続可能に構成され、当該単相交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して当該直流リンク部に供給する順潮流動作と、当該直流リンク部から供給される直流電力を交流電力に変換して当該単相交流電源に供給する逆潮流動作と、を備えた系統連系インバータと、
前記直流リンク部に接続され、直流電力を当該直流リンク部に供給できるように構成された1又は複数の直流電源と、
前記直流リンク部に接続され、当該直流リンク部の直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、
前記直流リンク部に接続され、当該直流リンク部から供給される直流電力を消費する1又は複数の電気機器と、
を備えた電力システムであって、
前記電気機器は、前記系統連系インバータの動作と、前記単相交流電源の電圧位相とに応じて、当該電気機器が消費する直流電力における、当該単相交流電源の電源周波数の2以上の整数倍の周波数成分である脈動電力成分を調整する脈動電力調整機能を有する
電力システム。
【請求項2】
前記系統連系インバータは、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、
前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、
前記系統連系インバータが解列動作のとき、
前記脈動電力成分が零に近づくように調整する、又は前記脈動電力成分を調整しない請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、
前記直流リンク部から前記直流電源又は前記平滑コンデンサに供給される直流電力において、前記脈動電力成分に含まれる前記電源周波数の2倍の周波数成分が低減するように当該脈動電力成分を調整する請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、
前記脈動電力成分に含まれる前記電源周波数の2倍の周波数成分の振幅、及び前記単相交流電源の電圧と当該脈動電力成分に含まれる当該電源周波数の2倍の周波数成分との位相差を調整する請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項5】
前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、
前記系統連系インバータが、前記直流リンク部から当該系統連系インバータに第1直流電力を供給する逆潮流動作のとき、
前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力から前記第1直流電力を引いた直流電力に近付くように、前記脈動電力成分を調整する第1制御モードを有する
請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項6】
前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、
前記系統連系インバータが、当該系統連系インバータから前記直流リンク部に第2直流電力を供給する順潮流動作のとき、
前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力と前記第2直流電力との和の直流電力に近付くように、前記脈動電力成分を調整する第2制御モードを有する
請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項7】
前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、
前記直流リンク部から前記系統連系インバータに供給される直流電力を第1直流電力としたとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力から当該第1直流電力を引いた直流電力に近付くように、前記脈動電力成分を調整する第1制御モードと、
前記系統連系インバータから前記直流リンク部に供給される直流電力を第2直流電力としたとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力と当該第2直流電力との和の直流電力に近付くように、前記脈動電力成分を調整する第2制御モードと、
前記脈動電力成分が零に近付づくように調整する、又は前記脈動電力成分を調整しない第3制御モードと、
を有する請求項1に記載の電力システム。
【請求項8】
前記系統連系インバータは、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、
前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、
前記系統連系インバータが逆潮流動作であって、
前記脈動電力成分が所定の閾値を超えるとき、前記第1制御モードにて機能し、
前記脈動電力成分が前記閾値以下のとき、前記第3制御モードにて機能し、
前記系統連系インバータが順潮流動作であって、
前記脈動電力成分が前記閾値を超えるとき、前記第2制御モードにて機能し、
前記脈動電力成分が前記閾値以下のとき、前記第3制御モードにて機能し、
前記系統連系インバータが解列動作のとき、
前記第3制御モードで機能する
請求項7に記載の電力システム。
【請求項9】
前記系統連系インバータは、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、
前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、
前記系統連系インバータが逆潮流動作のとき、前記第1制御モードにて機能し、
前記系統連系インバータが順潮流動作のとき、前記第2制御モードにて機能し、
前記系統連系インバータが解列動作のとき、前記第3制御モードにて機能する
請求項7に記載の電力システム。
【請求項10】
前記電気機器は、
回転電機を備え、当該回転電機の回転数またはトルクを調整することで前記脈動電力成分を調整する
請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項11】
前記電気機器は、
ヒートポンプ回路を備えたヒートポンプ機器である
請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項12】
前記直流電源は、
太陽電池装置である
請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項13】
前記直流電源は、
蓄電装置である
請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項14】
直流リンク部から供給される直流電力を消費する電気機器であって、
単相交流電源と接続され、当該単相交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して前記直流リンク部に供給する順潮流動作と、当該直流リンク部から供給される直流電力を交流電力に変換して当該単相交流電源に供給する逆潮流動作と、を備えた系統連系インバータの動作と、当該単相交流電源の電圧位相と、に応じて、前記電気機器が消費する直流電力における、当該単相交流電源の電源周波数の2以上の整数倍の周波数成分である脈動電力成分を調整する脈動電力調整機能を有する
電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システム及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、コンデンサと、インバータ部と、制御部とを含む電力変換装置であって、インバータ部は、入力された電圧をスイッチングして出力し、コンデンサは、インバータ部の入力側または出力側の何れかに接続されており、制御部は、電圧制御部と、電流制御部と、リプル補償部とを含み、電圧制御部は、コンデンサの端子電圧信号が入力され、端子電圧信号を指令値に合わせるための電力指令信号を演算して出力し、電流制御部は、電力指令信号に基づいて得られた電流指令信号と、電流検出信号との誤差として得られた指令信号が入力され、指令信号に基づいて、インバータ部にパルス幅変調制御を与え、リプル補償部は、電流制御部より前段において、端子電圧によって誘導されるリプル成分に応答して、リプル成分をキャンセルする電力変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光パネルなどの直流電源からの直流電力を系統連系インバータにより交流化し、自家消費した後の余剰電力を電力系統に逆潮流させる構成が知られている。電力系統には、電源周波数の2倍の周波数の脈動電力成分が含まれるため、脈動電力成分の低減が必要である。系統連系インバータを、交流電力を直流電力に変換する順潮流、及び直流電力を交流電力に変換する逆潮流のいずれの動作においても、脈動電力成分を調整する技術が求められている。
【0005】
本開示は、系統連系インバータの動作に応じて、脈動電力成分を調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の電力システムは、直流リンク部と、前記直流リンク部に接続され、単相交流電源と接続可能に構成され、当該単相交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して当該直流リンク部に供給する順潮流動作と、当該直流リンク部から供給される直流電力を交流電力に変換して当該単相交流電源に供給する逆潮流動作と、を備えた系統連系インバータと、前記直流リンク部に接続され、直流電力を当該直流リンク部に供給できるように構成された1又は複数の直流電源と、前記直流リンク部に接続され、当該直流リンク部の直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記直流リンク部に接続され、当該直流リンク部から供給される直流電力を消費する1又は複数の電気機器と、を備えた電力システムであって、前記電気機器は、前記系統連系インバータの動作と、前記単相交流電源の電圧位相とに応じて、当該電気機器が消費する直流電力における、当該単相交流電源の電源周波数の2以上の整数倍の周波数成分である脈動電力成分を調整する脈動電力調整機能を有する。これにより、系統連系インバータの動作に応じて、脈動電力成分が調整できる。
第2の観点の電力システムは、第1の観点の電力システムであって、前記系統連系インバータは、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、前記系統連系インバータが解列動作のとき、前記脈動電力成分が零に近付くように調整する、又は前記脈動電力成分を調整しない。これにより、系統連系インバータの解列動作に応じて、脈動電力成分が調整できる。
第3の観点の電力システムは、第1の観点又は第2の観点の電力システムであって、前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、前記直流リンク部から前記直流電源又は前記平滑コンデンサに供給される直流電力において、前記脈動電力成分に含まれる前記電源周波数の2倍の周波数成分が低減するように当該脈動電力成分を調整する。これにより、単相交流において発生する脈動電力成分が調整できる。
第4の観点の電力システムは、第1の観点又は第2の観点の電力システムであって、前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、前記脈動電力成分に含まれる前記電源周波数の2倍の周波数成分の振幅、及び前記単相交流電源の電圧と当該脈動電力成分に含まれる当該電源周波数の2倍の周波数成分との位相差を調整する。これにより、脈動電力成分の調整が容易になる。
第5の観点の電力システムは、第1の観点乃至第4の観点のいずれか1つの電力システムであって、前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、前記系統連系インバータが、前記直流リンク部から当該系統連系インバータに第1直流電力を供給する逆潮流動作のとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力から前記第1直流電力を引いた直流電力に近付くように、前記脈動電力成分を調整する第1制御モードを有する。これにより、直流電源の出力を抑制することを要しない。
第6の観点の電力システムは、第1の観点乃至第5の観点のいずれか1つの電力システムであって、前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、前記系統連系インバータが、当該系統連系インバータから前記直流リンク部に第2直流電力を供給する順潮流動作のとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力と前記第2直流電力との和の直流電力に近付くように、前記脈動電力成分を調整する第2制御モードを有する。これにより、直流電源の出力を抑制することを要しない。
第7の観点の電力システムは、第1の観点の電力システムであって、前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、前記直流リンク部から前記系統連系インバータに供給される直流電力を第1直流電力としたとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力から当該第1直流電力を引いた直流電力に近付くように、前記脈動電力成分を調整する第1制御モードと、前記系統連系インバータから前記直流リンク部に供給される直流電力を第2直流電力としたとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力と当該第2直流電力との和の直流電力に近付くように、前記脈動電力成分を調整する第2制御モードと、前記脈動電力成分が零に近付づくように調整する、又は前記脈動電力成分を調整しない第3制御モードと、を有する。これにより、系統連系インバータの動作に応じて、脈動電力成分が調整できる。
第8の観点の電力システムは、第7の観点の電力システムであって、前記系統連系インバータは、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、前記系統連系インバータが逆潮流動作であって、前記脈動電力成分が所定の閾値を超えるとき、前記第1制御モードにて機能し、前記脈動電力成分が前記閾値以下のとき、前記第3制御モードにて機能し、前記系統連系インバータが順潮流動作であって、前記脈動電力成分が前記閾値を超えるとき、前記第2制御モードにて機能し、前記脈動電力成分が前記閾値以下のとき、前記第3制御モードにて機能し、前記系統連系インバータが解列動作のとき、前記第3制御モードで機能する。これにより、電気機器が消費する電力の脈動を少なくできる。
第9の観点の電力システムは、第7の観点の電力システムであって、前記系統連系インバータは、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、前記電気機器が有する前記脈動電力調整機能は、前記系統連系インバータが逆潮流動作のとき、前記第1制御モードにて機能し、前記系統連系インバータが順潮流動作のとき、前記第2制御モードにて機能し、前記系統連系インバータが解列動作のとき、前記第3制御モードにて機能する。これにより、平滑コンデンサの容量を小さくできる。
第10の観点の電力システムは、第1の観点乃至第9の観点のいずれか1つの電力システムであって、前記電気機器は、回転電機を備え、当該回転電機の回転数またはトルクを調整することで前記脈動電力成分を調整する。これにより、電力脈動の影響が顕在化しない。
第11の観点の電力システムは、第1の観点乃至第9の観点のいずれか1つの電力システムであって、前記電気機器は、ヒートポンプ回路を備えたヒートポンプ機器である電力システムである。これにより、電力脈動の影響が顕在化しない。
第12の観点の電力システムは、第1の観点乃至第11の観点のいずれか1つの電力システムであって、前記直流電源は、太陽電池装置である。これにより、電力系統との連系が容易になる。
第13の観点の電力システムは、第1の観点乃至第11の観点のいずれか1つの電力システムであって、前記直流電源は、蓄電装置である。これにより、電力系統との連系が容易になる。
第14の観点の電気機器は、直流リンク部から供給される直流電力を消費する電気機器であって、単相交流電源と接続され、当該単相交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して前記直流リンク部に供給する順潮流動作と、当該直流リンク部から供給される直流電力を交流電力に変換して当該単相交流電源に供給する逆潮流動作と、を備えた系統連系インバータの動作と、当該単相交流電源の電圧位相と、に応じて、前記電気機器が消費する直流電力における、当該単相交流電源の電源周波数の2以上の整数倍の周波数成分である脈動電力成分を調整する脈動電力調整機能を有する。これにより、系統連系インバータの動作に応じて、脈動電力成分が調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態における電力システムの一例を示す図である。
【
図2】系統連系インバータの逆潮流動作と順潮流動作とにおけるエネルギフローの概要を説明する図である。(a)は、逆潮流動作、(b)は、順潮流動作である。
【
図3】平滑コンデンサが吸収する脈動電力成分と、直流負荷が消費する脈動電力成分とを説明する表である。
【
図4】制御パタン1のエネルギフローを説明する図である。(a)は、エネルギフロー、(b)は、系統連系インバータの電力、(c)は、平滑コンデンサの電力、(d)は、直流負荷の電力である。
【
図5】制御パタン2のエネルギフローを説明する図である。(a)は、エネルギフロー、(b)は、系統連系インバータの電力、(c)は、平滑コンデンサの電力、(d)は、直流負荷の電力である。
【
図6】制御パタン3のエネルギフローを説明する図である。(a)は、エネルギフロー、(b)は、系統連系インバータの電力、(c)は、平滑コンデンサの電力、(d)は、直流負荷の電力である。
【
図7】制御パタン4のエネルギフローを説明する図である。(a)は、エネルギフロー、(b)は、系統連系インバータの電力、(c)は、平滑コンデンサの電力、(d)は、直流負荷の電力である。
【
図8】制御パタン5のエネルギフローを説明する図である。(a)は、エネルギフロー、(b)は、直流負荷の電力である。
【
図9】変形例の電力システムのエネルギフローを説明する図である。(a)は、エネルギフロー、(b)は、系統連系インバータの電力、(c)は、平滑コンデンサの電力、(d)は、直流負荷群の電力である。
【
図10】平滑コンデンサが吸収する脈動電力成分と、直流負荷が消費する脈動電力成分とを説明する表である。
【
図11】制御パタン6のエネルギフローを説明する図である。(a)は、エネルギフロー、(b)は、系統連系インバータの電力、(c)は、平滑コンデンサの電力、(d)は、直流負荷の電力である。
【
図12】制御パタン7のエネルギフローを説明する図である。(a)は、エネルギフロー、(b)は、系統連系インバータの電力、(c)は、平滑コンデンサの電力、(d)は、直流負荷の電力である。
【
図13】制御パタン6における、位相関係を説明する図である。
【
図14】制御パタン7における、位相関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施の形態について詳細に説明する。
[電力システム1]
図1は、本実施の形態における電力システム1の一例を示す図である。
電力システム1は、系統連系インバータ10と、直流リンク部20と、平滑コンデンサ30と、太陽光パネル40と、蓄電池50と、空調機60とを備える。電力システム1は、単相交流電源100に接続されている。単相交流電源100は、電力系統である。図においては、系統連系インバータ10を系統連系INVと表記する。電力システム1が備える、系統連系インバータ10、太陽光パネル40、蓄電池50、及び空調機60を略して機器と表記する。直流リンクは、DCリンクと表記されることがある。太陽光パネル40は、太陽電池装置の一例である。蓄電池50は、蓄電装置の一例である。
【0009】
系統連系インバータ10は、電力が入出力される2つの入出力部を有する。系統連系インバータ10の一方の入出力部は、単相交流電源100に接続可能に構成されている。系統連系インバータ10の他方の入出力部は、直流リンク部20に接続されている。平滑コンデンサ30は、直流リンク部20に接続されている。太陽光パネル40は、DC/DCコンバータ41を介して直流リンク部20に接続されている。蓄電池50は、DC/DCコンバータ51を介して、直流リンク部20に接続されている。空調機60は、直流リンク部20に接続されている。単相交流電源100が接続された交流電流経路を交流ライン(
図1では、ACラインと表記)とし、直流リンク部20、太陽光パネル40、蓄電池50、及び空調機60が接続された直流電流経路を直流ライン(
図1では、DCラインと表記)とする。系統連系インバータ10は、交流ラインと直流ラインとの間に設けられている。
【0010】
系統連系インバータ10は、順潮流動作、逆潮流動作、及び解列動作を行う。言い換えると、本開示における系統連系インバータ10の動作は、順潮流動作、逆潮流動作、及び解列動作である。順潮流動作は、交流電力を直流電力に変換して、単相交流電源100側から直流リンク部20側に電力を供給する。逆潮流動作は、直流電力を交流電力に変換して、直流リンク部20側から単相交流電源100側に電力を供給する。系統連系インバータ10は、電力を双方向に供給できるインバータである。逆潮流動作及び順潮流動作では、系統連系インバータ10を介して、交流ライン側と直流ライン側とが並列して動作する。解列動作は、直流電力を交流電力に変換する逆潮流動作、及び交流電力を直流電力に変換する順潮流動作のいずれも行わない動作である。解列動作では、交流ライン側と直流ライン側とが切り離されて動作する。系統連系インバータ10は、交流電力の系統(ここでは、電力系統である。)と直流電力の系統とを連系させる。
【0011】
系統連系インバータ10は、例えば、4個のトランジスタをブリッジ状に配列したフルブリッジ回路などで構成される。
【0012】
直流リンク部20は、直流電流経路であって、2つの電流経路の一方を正(+)、他方を負(-)と表記する。
平滑コンデンサ30は、直流リンク部20の2つの電流経路の間に接続され、直流電圧に発生する脈動を平滑化する。平滑コンデンサ30は、例えば電解コンデンサである。
【0013】
太陽光パネル40は、光電効果により光エネルギを電気エネルギに変換する。DC/DCコンバータ41は、太陽光パネル40と直流リンク部20との間に設けられ、太陽光パネル40が出力する直流電圧を、直流リンク部20の直流電圧に変換する。
【0014】
蓄電池50は、電気エネルギを蓄積する。DC/DCコンバータ51は、蓄電池50と直流リンク部20との間に設けられ、蓄電池50の出力電圧を、直流リンク部20の直流電圧に変換する。
【0015】
太陽光パネル40と、蓄電池50とは、直流電源の一例である。電力システム1は、太陽光パネル40と蓄電池50とのいずれか一方を備えればよい。太陽光パネル40と、蓄電池50とを一括して説明する場合には、直流電源と表記する。直流電源は、少なくとも、直流リンク部20側に電力を一方向に供給できる機器である。直流電源は、直流リンク部20側と電力を双方向に供給できる機器であってもよい。
【0016】
空調機60は、直流リンク部20から供給される直流電力を消費する。空調機60の代わりに、ヒートポンプ機器であってもよい。空調機60と、ヒートポンプ機器とは、直流電力を消費する電気機器の一例である。電気機器は、直流電力を消費する負荷である。電気機器は、直流リンク部20側から電力を一方向に供給される機器である。言い換えると、電気機器は、直流リンク部20側に電力を供給しない機器である。直流電力を消費する電気機器を直流負荷である電気機器と表記することがある。以下では、空調機60を直流負荷として説明する。空調機60、ヒートポンプ機器など、直流負荷である電気機器については、後に詳述する。
【0017】
図1において、各機器における電力の名称と電力が供給される向きとを定義する。
図1において、電力が供給される向きを矢印で示す。
系統連系インバータ10が順潮流動作及び逆潮流動作のいずれかを行うときの電力を、電力P
pcsと表記する。電力P
pcsを、直流電力P
pcsと表記することがある。電力P
pcsは、直流リンク部20側から単相交流電源100側へ供給される向きを正(+)とする。電力P
pcsは、逆潮流動作のときに正(+)、順潮流動作のときに負(-)になる。系統連系インバータ10が順潮流動作及び逆潮流動作のいずれも行わない解列動作のときには、電力P
pcsは、零(“0”)である。なお、電力をエネルギと表記することがある。
【0018】
平滑コンデンサ30に供給される電力を、電力PCと表記する。電力PCは、直流リンク部20の正(+)側から負(-)側へ供給される向きを正(+)とする。
太陽光パネル40の供給する電力を、電力Ppvと表記する。電力Ppvは、太陽光パネル40から直流リンク部20へ供給される向きを正(+)とする。
蓄電池50が供給する電力を、電力Pbatteryと表記する。電力Pbatteryは、蓄電池50から直流リンク部20へ供給される向きを正(+)とする。電力Pbatteryが正(+)であれば、蓄電池50は放電となり、負(-)であれば、蓄電池50は充電となる。
空調機60が消費する電力を、電力Ploadと表記する。電力Ploadは、直流リンク部20から空調機60へ供給される向きを正(+)とする。
【0019】
系統連系インバータ10の電力Ppcsは、式(1)で表記される。ここで、Ppcs_ampは電力Ppcsの振幅、ωは単相交流電源100の電源周波数(角周波数)である。以下では、電源周波数(角周波数)を周波数と表記する。
式(1)に示すように、系統連系インバータ10が順潮流動作及び逆潮流動作のいずれかを行うと、直流リンク部20に、-Ppcs_accos(2ωt)で示す、単相交流電源100の周波数ωの2倍の周波数2ωの電力脈動が発生する。電力Ppcs_acは、系統連系インバータ10で発生する脈動電力である。言い換えると、電力Ppcsは、交流成分の電力Ppcs_acと、直流成分の電力Ppcs_dcとを含む。以下では、電力Ppcs_acを脈動電力成分Ppcs_acと表記し、電力Ppcs_dcを直流電力成分Ppcs_dcと表記する。
【0020】
【0021】
直流リンク部20に電力の脈動が生じると、蓄電池50を劣化させたり、太陽光パネル40の発電電力を低下させたりする。以下では、電力の脈動は単相交流電源100の2倍の周波数2ωとして説明するが、電力の脈動は、単相交流電源100の2以上の整数倍の周波数成分を有してもよい。
【0022】
エネルギ収支により、式(2)が成立する。式(2′)は、式(2)を書き換えたものである。
【0023】
【0024】
太陽光パネル40の電力Ppvは、直流成分のみであって、式(3)で表記される。言い換えると、電力Ppvは直流成分の電力Ppv_dcを含む。以下では、直流成分の電力Ppv_dcを直流電力成分Ppv_dcと表記する。直流電力成分Ppv_dcは、MPPT(Maximum Power Point Control)制御によって決定される。
蓄電池50の電力Pbatteryは、直流成分のみであって、式(4)で表記される。言い換えると、電力Pbatteryは直流成分の電力Pbattery_dcを含む。以下では、直流成分の電力Pbattery_dcを直流電力成分Pbattery_dcと表記する。直流電力成分Pbattery_dcは、電力システム1のエネルギ収支によって決定される。
【0025】
空調機60の電力Ploadは、式(5)で表記する。電力Ploadは、単相交流電源100の2倍の周波数2ωを有する交流成分の電力Pload_acと、直流成分の電力Pload_dcとを含む。以下では、交流成分の電力Pload_acを交流電力成分Pload_acと表記し、直流成分の電力Pload_dcを直流電力成分Pload_dcと表記する。交流電力成分Pload_acは、系統連系インバータ10の順潮流動作及び逆潮流動作によって発生する脈動電力成分Ppcs_acを打ち消す制御に用いられる。直流電力成分Pload_dcは、要求される空調能力によって決定される。空調機60が消費する交流電力成分Pload_acを系統連系インバータ10で発生する脈動電力成分Ppcs_acに近付くように調整すれば、系統連系インバータ10で発生する脈動電力成分を打ち消せる。以下では、交流電力成分Pload_acを脈動電力成分Pload_acと表記することがある。
【0026】
【0027】
図2は、系統連系インバータ10の逆潮流動作と順潮流動作とにおけるエネルギフローの概要を説明する図である。
図2(a)は、逆潮流動作、
図2(b)は、順潮流動作である。
図2(a)、(b)において、直流成分の電力(図では、DC電力成分)の流れ(フロー)を矢印付き実線で、交流成分の電力(図では、AC電力成分)の流れ(フロー)を矢印付き破線で示す。
【0028】
図2(a)に示す逆潮流動作では、系統連系インバータ10は、直流電力を交流電力に変換して、直流リンク部20側から単相交流電源100側に電力P
pcsを供給する。太陽光パネル40及び蓄電池50から供給される直流電力Pの内、電力Pcos
2(ωt)が空調機60によって消費され、残りの電力Psin
2(ωt)が系統連系インバータ10から単相交流電源100側に供給される。逆潮流動作では、直流負荷により直流電力を2つの交流成分の電力に分流し、直流負荷が消費する電力を脈動させて、系統連系インバータ10による電力の脈動を打ち消す。
【0029】
図2(b)に示す順潮流動作では、系統連系インバータ10は、交流電力を直流電力に変換して、単相交流電源100側から直流リンク部20側に電力を供給する。空調機60は、太陽光パネル40が供給する直流電力P
pvと蓄電池50が供給する直流電力P
batteryとの和である直流電力P
pv+P
batteryを消費する。さらに、空調機60は、系統連系インバータ10から供給される脈動電力Psin
2(ωt)を消費する。順潮流動作では、直流リンク部20における脈動電力を直流負荷にそのまま流す。直流負荷が脈動電力Psin
2(ωt)を消費することで、系統連系インバータ10による電力の脈動を打ち消す。
【0030】
図2(a)、(b)に示した逆潮流動作及び順潮流動作のいずれにおいても、系統連系インバータ10において発生する脈動電力は、空調機60により消費され、電力の脈動が太陽光パネル40、蓄電池50などの直流電源に及ぶことが抑制される。
【0031】
本開示における電力システム1では、系統連系インバータ10の動作に応じて、空調機60などの電気機器が消費する電力を脈動させて、系統連系インバータ10において発生する電力の脈動を打ち消している。電気機器は、脈動電力を調整する脈動電力調整機能を有している。電気機器が脈動電力調整機能を有しない場合には、大容量の平滑コンデンサ30を用いて電力の脈動を抑制することが必要であった。本開示における電力システム1では、直流電力を消費する電気機器が有する脈動電力調整機能により、系統連系インバータ10において発生する電力の脈動を打ち消すことから、平滑コンデンサ30の容量を小さくできる。
【0032】
(実施例1)
実施例1では、単相交流電源100の2倍の周波数2ωの脈動電力成分をできる限り平滑コンデンサ30で吸収し、平滑コンデンサ30で吸収できない分を直流負荷(ここでは、空調機60)で吸収する。
平滑コンデンサ30の電力PCを式(6)で表す。平滑コンデンサ30の電力PCは、単相交流電源100の2倍の周波数2ωを有する交流成分の電力PC_acと、直流成分の電力PC_dcとを含む。交流成分の電力PC_acが、平滑コンデンサ30が吸収する脈動電力成分である。交流成分の電力PC_acを、脈動電力成分PC_acと表記する。脈動電力成分PC_acの絶対値|PC_ac|の最大を最大脈動電力成分PC100とする(PC100>0)。最大脈動電力成分PC100は、平滑コンデンサ30が吸収できる脈動電力成分PC_acの最大値である。最大脈動電力成分PC100は、所定の閾値の一例である。
【0033】
【0034】
系統連系インバータ10の電力Ppcsにおける脈動電力成分Ppcs_acと、最大脈動電力成分PC100との関係によって、空調機60が消費する脈動電力成分Pload_acが決まる。
【0035】
図3は、平滑コンデンサ30が吸収する脈動電力成分P
C_acと、直流負荷(ここでは、空調機60)が消費する脈動電力成分P
load_acとを説明する表である。この表は、系統連系インバータ10における脈動電力成分P
pcs_acと最大脈動電力成分P
C100との関係に基づいて分類している。脈動電力成分P
pcs_acは、絶対値で示している。
【0036】
系統連系インバータ10の動作は、制御パタン1、2では順潮流動作、制御パタン3、4では逆潮流動作、制御パタン5では解列動作である。順潮流動作においては、脈動電力成分Ppcs_acは負であり(Ppcs_ac<0)、逆潮流動作においては、脈動電力成分Ppcs_acは正であり(Ppcs_ac>0)、解列動作においては、脈動電力成分Ppcs_ac及び直流電力成分Ppcs_dcは零(“0”)である(Ppcs_ac=0、Ppcs_dc=0)。
【0037】
制御パタン1は、順潮流動作であって、脈動電力成分Ppcs_acの絶対値が最大脈動電力成分PC100を超えるときである(|Ppcs_ac|>PC100)。このとき、平滑コンデンサ30が脈動電力成分Ppcs_acにおける最大脈動電力成分PC100相当分を吸収しても、脈動電力成分Ppcs_acにおいて最大脈動電力成分PC100を超える脈動電力成分(|Ppcs_ac|-PC100)が残る。直流負荷は、残りの脈動電力成分(|Ppcs_ac|-PC100)を消費する。
【0038】
制御パタン2は、順潮流動作であって、脈動電力成分Ppcs_acの絶対値が最大脈動電力成分PC100以下のときである(PC100≧|Ppcs_ac|>0)。このとき、平滑コンデンサ30の最大脈動電力成分PC100で脈動電力成分Ppcs_acの全部が吸収される。直流負荷は、脈動電力成分Ppcs_acを消費することを要しない(Pload_ac=0)。
【0039】
制御パタン3は、逆潮流動作であって、脈動電力成分Ppcs_acの絶対値が最大脈動電力成分PC100以下のときである(PC100≧|Ppcs_ac|>0)。このとき、平滑コンデンサ30の最大脈動電力成分PC100で脈動電力成分Ppcs_acの全部が吸収される。直流負荷は、脈動電力成分を消費することを要しない(Pload_ac=0)。
【0040】
制御パタン4は、逆潮流動作であって、脈動電力成分Ppcs_acの絶対値が最大脈動電力成分PC100を超えるときである(|Ppcs_ac|>PC100)。このとき、平滑コンデンサ30が脈動電力成分Ppcs_acにおける最大脈動電力成分PC100相当分を吸収しても、脈動電力成分Ppcs_acにおいて最大脈動電力成分PC100を超える脈動電力成分(|Ppcs_ac|-PC100)が残る。直流負荷は、残りの脈動電力成分(|Ppcs_ac|-PC100)を消費する。
【0041】
制御パタン5は、解列動作であって、系統連系インバータ10の電力Ppcsが零(“0”)である(Ppcs_ac=0、Ppcs_dc=0)。系統連系インバータ10は、脈動電力成分を発生しない。平滑コンデンサ30が吸収する脈動電力成分PC_ac及び直流負荷が消費する脈動電力成分Pload_acは、零(“0”)である(PC_ac=0、Pload_ac=0)。
【0042】
以上においては、脈動電力成分Ppcs_acの絶対値が最大脈動電力成分PC100を超えるときと、脈動電力成分Ppcs_acの絶対値が最大脈動電力成分PC100以下のときとに分けた。脈動電力成分Ppcs_acの絶対値が最大脈動電力成分PC100以上のときと、脈動電力成分Ppcs_acの絶対値が最大脈動電力成分PC100未満のときとに分けてもよい。
以下において、制御パタン1~5をエネルギフロー図にて説明する。
【0043】
図4は、制御パタン1のエネルギフローを説明する図である。
図4(a)は、エネルギフロー、
図4(b)は、系統連系インバータ10の電力P
pcs、
図4(c)は、平滑コンデンサ30の電力P
C、
図4(d)は、直流負荷(ここでは、空調機60)の電力P
loadである。
図4(b)~(d)において、横軸は時間tである。
図4(b)~(d)では、単相交流電源100の一周期を示している。
図4(a)において直流成分の電力(図では、DC電力成分)の流れ(フロー)を矢印付き実線で、交流成分の電力(図では、AC電力成分)の流れ(フロー)を矢印付き破線で示す。交流成分の電力の流れは、脈動電力成分の流れである。以下に示す他の図において、同様の部分の説明を省略する。
【0044】
制御パタン1は、順潮流動作であって、脈動電力成分P
pcs_acの絶対値が最大脈動電力成分P
C100を超えるときである(|P
pcs_ac|>P
C100)。このとき、平滑コンデンサ30が脈動電力成分P
pcs_acにおける最大脈動電力成分P
C100相当分を吸収し、空調機60が残りの脈動電力成分(|P
pcs_ac|-P
C100)を消費する(
図4中、矢印付き破線で示すAC電力成分)。そして、空調機60は、太陽光パネル40からの電力P
pvと蓄電池50からの電力P
batteryとの和(P
pv+P
battery)、及び系統連系インバータ10から直流リンク部20に供給される直流電力成分P
pcs_dcを消費する。太陽光パネル40からの電力P
pvと蓄電池50からの電力P
batteryとの和(P
pv+P
battery)は、直流電源が供給する直流電力である。系統連系インバータ10から直流リンク部20に供給される直流電力(-P
pcs)が第2直流電力の一例である。
【0045】
制御パタン1では、直流負荷である電気機器(ここでは、空調機60)が有する脈動電力調整機能は、電気機器が消費する直流電力を直流電源が供給する直流電力と第2直流電力との和に近付くように脈動電力成分を調整する。制御パタン1は、第2制御モードの一例である。なお、本実施例の脈動電力調整機能は、脈動電力成分Ppcs_acを取得する脈動電力成分取得手段と、単相交流電源100の2倍の周波数2ωの脈動電力成分の位相2ωtを取得する脈動電力位相取得手段とを有する。脈動電力成分取得手段は、例えば、電力測定手段で測定した電力Ppcsに対して短時間フーリエ変換などの演算処理を行って検出するように構成してもよい。脈動電力成分取得手段は、例えば、系統連系インバータ10の演算値を取得するように構成してもよい。脈動電力位相取得手段は、例えば、電力測定手段で測定した電力Ppcsに対して短時間フーリエ変換などの演算処理を行って検出するように構成してもよい。脈動電力位相取得手段は、例えば、位相同期回路やゼロクロス回路などの電圧位相検出手段により検出した系統連系インバータ10の電圧位相ωtに対して演算処理を行って検出するように構成してもよい。脈動電力位相取得手段は、例えば、系統連系インバータ10の演算値を取得するように構成してもよい。また、脈動電力位相取得手段は、位相2ωtを取得するように構成してもよいし、位相2ωtの余弦値cos(2ωt)を取得するように構成してもよい。
【0046】
図5は、制御パタン2のエネルギフローを説明する図である。
図5(a)は、エネルギフロー、
図5(b)は、系統連系インバータ10の電力P
pcs、
図5(c)は、平滑コンデンサ30の電力P
C、
図5(d)は、直流負荷(ここでは、空調機60)の電力P
loadである。
【0047】
制御パタン2は、順潮流動作であって、脈動電力成分P
pcs_acの絶対値が最大脈動電力成分P
C100以下のときである(P
C100≧|P
pcs_ac|>0)。このとき、平滑コンデンサ30の最大脈動電力成分P
C100で脈動電力成分P
pcs_acの全部が吸収される。空調機60は、脈動電力成分P
pcs_acを消費することを要しない(P
load_ac=0)。空調機60の消費する電力P
loadは、直流電力成分P
load_dcのみとなる(
図5(d)参照)。空調機60の消費する直流電力成分P
load_dcは、太陽光パネル40からの電力P
pvと蓄電池50からの電力P
batteryとの和(P
pv+P
battery)、及び系統連系インバータ10から供給される直流電力成分P
pcs_dcである。
【0048】
制御パタン2では、直流負荷である電気機器(ここでは、空調機60)の有する脈動電力調整機能は、脈動電力成分が零(“0”)に近付くように調整する、又は脈動電力成分を調整しない。制御パタン2は、第3制御モードの一例である。
【0049】
図6は、制御パタン3のエネルギフローを説明する図である。
図6(a)は、エネルギフロー、
図6(b)は、系統連系インバータ10の電力P
pcs、
図6(c)は、平滑コンデンサ30の電力P
C、
図6(d)は、直流負荷(ここでは、空調機60)の電力P
loadである。
【0050】
制御パタン3は、逆潮流動作であって、脈動電力成分P
pcs_acの絶対値が最大脈動電力成分P
C100以下のときである(P
C100≧|P
pcs_ac|>0)。このとき、平滑コンデンサ30の最大脈動電力成分P
C100で脈動電力成分P
pcs_acの全部が吸収される。空調機60は、脈動電力成分を消費することを要しない(P
load_ac=0)。空調機60の消費する電力P
loadは、直流電力成分P
load_dcのみとなる(
図6(d)参照)。空調機60の消費する直流電力成分P
load_dcは、太陽光パネル40からの電力P
pvと蓄電池50からの電力P
batteryとの和(P
pv+P
battery)から供給される。
【0051】
制御パタン3では、直流負荷である電気機器(ここでは、空調機60)の有する脈動電力調整機能は、脈動電力成分が零(“0”)に近付くように調整する、又は脈動電力成分を調整しないでよい。制御パタン3は、第3制御モードの一例である。
【0052】
図7は、制御パタン4のエネルギフローを説明する図である。
図7(a)は、エネルギフロー、
図7(b)は、系統連系インバータ10の電力P
pcs、
図7(c)は、平滑コンデンサ30の電力P
C、
図7(d)は、直流負荷(ここでは、空調機60)の電力P
loadである。
【0053】
制御パタン4は、逆潮流動作であって、電力P
pcs_acの絶対値が最大脈動電力成分P
C100を超えるときである(|P
pcs_ac|>P
C100)。逆潮流動作では、系統連系インバータ10は、直流電力を交流電力に変換して、直流リンク部20側から単相交流電源100側に電力P
pcsを供給する。このとき、平滑コンデンサ30が脈動電力成分P
pcs_acにおける最大脈動電力成分P
C100相当分を吸収し、空調機60が残りの脈動電力成分(|P
pcs_ac|-P
C100)を消費する(
図7中、矢印付き破線で示すAC電力成分)。空調機60は、太陽光パネル40からの電力P
pvと蓄電池50からの電力P
batteryとの和(P
pv+P
battery)から、直流リンク部20から系統連系インバータ10へ供給される直流電力成分P
pcs_dcを引いた直流電力成分を消費する。直流リンク部20から系統連系インバータ10に供給される直流電力P
pcsが第1直流電力の一例である。
【0054】
制御パタン4では、直流負荷である電気機器(ここでは、空調機60)が有する脈動電力調整機能は、電気機器が消費する直流電力を直流電源が供給する直流電力から第1直流電力を引いた電力に近付くように脈動電力成分を調整する。制御パタン4は、第1制御モードの一例である。
【0055】
図8は、制御パタン5のエネルギフローを説明する図である。
図8(a)は、エネルギフロー、
図8(b)は、直流負荷(ここでは、空調機60)の電力P
loadである。
【0056】
制御パタン5は、解列動作であって、系統連系インバータ10の電力Ppcsが零(“0”)である(Ppcs=0)。空調機60が消費する脈動電力成分Pload_acは、零(“0”)である。空調機60は、太陽光パネル40からの電力Ppvと蓄電池50からの電力Pbatteryとの和(Ppv+Pbattery)の電力を消費する。
【0057】
制御パタン5では、直流負荷である電気機器(ここでは、空調機60)の有する脈動電力調整機能は、脈動電力成分が零(“0”)に近付くように調整する、又は脈動電力成分を調整しない。制御パタン5は、第3制御モードの一例である。
【0058】
(実施例1の変形例)
実施例1では、1つの空調機60を直流負荷とした。変形例では、複数の直流負荷を設けている。
図9は、変形例の電力システム2のエネルギフローを説明する図である。
図9(a)は、エネルギフロー、
図9(b)は、系統連系インバータ10の電力P
pcs、
図9(c)は、平滑コンデンサ30の電力P
C、
図9(d)は、直流負荷群(ここでは、空調機60、61)の電力P
loadである。
図9は、
図7に示した制御パタン4である。
【0059】
電力システム2は、空調機60に加え、空調機61を備える。空調機61は、空調機60と並列に直流リンク部20に接続されている。空調機60と空調機61とで、直流負荷群を構成する。他の構成は、
図1に示した電力システム1と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0060】
電力システム2において、空調機60と空調機61とで構成される直流負荷群により、電力Ploadを制御する。直流負荷群は、その内の1台だけで脈動電力成分を消費する場合、又は複数台で分担して消費する場合があるのは言うまでもない。
【0061】
(実施例2)
実施例1の電力システム1では、単相交流電源100の2倍の周波数2ωの脈動電力成分を平滑コンデンサ30により吸収させ、吸収できない分を直流負荷(ここでは、空調機60)で消費させた。実施例2の電力システム3では、脈動電力成分を直流負荷で消費させ、消費できない分を平滑コンデンサ30で吸収させる。実施例2は、実施例1における平滑コンデンサ30の役割と、直流負荷の役割とを交換したものである。
【0062】
電力システム3において、直流負荷(ここでは、空調機60)が消費できる脈動電力成分の最大値を、一例として直流電力成分Pload_dcの1/2とする(最大脈動電力成分Pload_dc/2)。最大値を大きくすると、直流負荷に供給される電力の変動が激しくなって、空調能力に影響を与える恐れがある。
【0063】
図10は、平滑コンデンサ30が吸収する脈動電力成分P
C_acと、直流負荷(ここでは、空調機60)が消費する脈動電力成分P
load_acとを説明する表である。この表では、系統連系インバータ10における脈動電力成分P
pcs_acと最大脈動電力成分P
load_dc/2との関係で分類している。
図10は、
図3における平滑コンデンサ30で吸収する脈動電力成分P
C_acと、直流負荷(ここでは、空調機60)が消費する脈動電力成分P
load_acとを入れ替え、さらに、最大脈動電力成分P
C100を最大脈動電力成分P
load_dc/2に置換えたものである。
【0064】
図10においては、脈動電力成分P
pcs_acの絶対値が最大脈動電力成分P
load_dc/2を超えるときと、脈動電力成分P
pcs_acの絶対値が最大脈動電力成分P
load_dc/2以下のときとに分けた。脈動電力成分P
pcs_acの絶対値が最大脈動電力成分P
load_dc/2以上のときと、脈動電力成分P
pcs_acの絶対値が最大脈動電力成分P
load_dc/2未満のときとに分けてもよい。
【0065】
図10の制御パタン1のエネルギフローは、
図4に示した実施例1の制御パタン1と同じであるので、制御パタン1と表記とする。
図10の制御パタン4のエネルギフローは、
図7に示した実施例1の制御パタン4と同じであるので、制御パタン4と表記とする。同様に、
図10の制御パタン5のエネルギフローは、
図8に示した実施例1の制御パタン5と同じであるので、制御パタン5と表記とする。
【0066】
図11は、制御パタン6のエネルギフローを説明する図である。
図11(a)は、エネルギフロー、
図11(b)は、系統連系インバータ10の電力P
pcs、
図11(c)は、平滑コンデンサ30の電力P
C、
図11(d)は、直流負荷(ここでは、空調機60)の電力P
loadである。
【0067】
制御パタン6は、順潮流動作であって、系統連系インバータ10の脈動電力成分P
pcs_acの絶対値が空調機60の消費できる最大脈動電力成分P
load_dc/2以下のときである(P
load_dc/2≧|P
pcs_ac|>0)。このとき、空調機60で脈動電力成分P
pcs_acの全部が消費される。平滑コンデンサ30は、脈動電力成分を吸収することを要しない。
図11(a)に示すエネルギフローにおける脈動電力成分の流れる経路は、
図5(a)に示した制御パタン3と異なる。
図5(a)では、脈動電力成分は、系統連系インバータ10から平滑コンデンサ30に供給された。
図11(a)では、脈動電力成分は、系統連系インバータ10から空調機60に供給される。空調機60は、太陽光パネル40からの電力P
pvと蓄電池50からの電力P
batteryとの和(P
pv+P
battery)、及び系統連系インバータ10から直流リンク部20に供給される直流電力成分P
pcs_dcを消費する。
【0068】
制御パタン6では、直流負荷である電気機器(ここでは、空調機60)が有する脈動電力調整機能は、電気機器が消費する直流電力を直流電源が供給する直流電力と第2直流電力との和に近付くように脈動電力成分を調整する。制御パタン6は、第2制御モードの一例である。
【0069】
図12は、制御パタン7のエネルギフローを説明する図である。
図12(a)は、エネルギフロー、
図12(b)は、系統連系インバータ10の電力P
pcs、
図12(c)は、平滑コンデンサ30の電力P
C、
図12(d)は、直流負荷(ここでは、空調機60)の電力P
loadである。
【0070】
制御パタン7は、逆潮流動作であって、電力P
pcs_acの絶対値が空調機60の消費できる最大脈動電力成分P
load_dc/2以下のときである(P
load_dc/2≧|P
pcs_ac|>0)。このとき、空調機60で脈動電力成分P
pcs_acの全部が消費される。平滑コンデンサ30は、脈動電力成分を吸収することを要しない。
図12(a)に示すエネルギフローにおける脈動電力成分の流れる経路は、
図6(a)に示した制御パタン3と異なる。
図6(a)では、脈動電力成分P
pcs_acは、平滑コンデンサ30から系統連系インバータ10に供給される。
図12(a)では、脈動電力成分P
pcs_acは、空調機60から系統連系インバータ10に供給される。空調機60は、太陽光パネル40からの電力P
pvと蓄電池50からの電力P
batteryとの和(P
pv+P
battery)から、直流リンク部20から系統連系インバータ10に供給される直流電力成分P
pcs_dcを引いた直流電力を消費する。
【0071】
制御パタン7では、直流負荷である電気機器(ここでは、空調機60)が有する脈動電力調整機能は、電気機器が消費する直流電力を直流電源が供給する直流電力から第1直流電力を引いた差の直流電力に近付くように脈動電力成分を調整する。制御パタン7は、第1制御モードの一例である。
【0072】
実施例2においても、実施例1の変形例で示したように、直流負荷を複数としてもよい。
【0073】
次に、制御パタン6(
図10及び
図11参照)及び制御パタン7(
図10及び
図12参照)において、単相交流電源100の電圧位相ωtと、単相交流電源100の2倍の周波数2ωの脈動電力成分の位相2ωtとの関係を説明する。
【0074】
図13は、制御パタン6における、位相関係を説明する図である。
図13において、上から、単相交流電源100の電圧波形、系統連系インバータ10の電力P
pcs波形、直流負荷である空調機60の電力P
load波形、太陽光パネル40の電力P
pv波形、及び蓄電池50の電力P
battery波形を示す。横軸は、単相交流電源100の電圧の位相(度)である。
図13は、単相交流電源100の電圧の一周期を示している。縦軸は、電力(W)であって、矢印で示す軸が電力の零(“0”)である。
【0075】
図13では、力率が1である場合を示す。単相交流電源100の電圧と電流との位相差は、0度又は180度である。電圧と電流との位相差は、力率によって変化する。
【0076】
制御パタン6は、順潮流動作であって、電力Ppcsが負(-)である(Ppcs<0)。電圧と、電力Ppcsに発生する脈動との位相差は、135度である。単相交流電源100の電圧を|Es|sin(ωt)とすると、電力Ppcsに発生する脈動は|Ppcs_ac|sin(2(ωt-135度))である。制御パタン6では、空調機60により脈動電力成分Ppcs_acの全部が消費される。空調機60の電力波形は、電力Ppcsにおける脈動を打ち消すように、電圧に対して45度の位相差で脈動するとよい。空調機60の有する脈動電力調整機能は、電圧との位相差を45度に近付けるように、電力Ploadの脈動電力成分を調整する。言い換えると、空調機60の有する脈動電力調整機能は、単相交流電源100の電圧|Es|sin(ωt)に対し、|Pload_ac|sin(2(ωt-45度))に近付くように電力Ploadの脈動電力成分を調整する。太陽光パネル40の電力Ppvと蓄電池50の電力Pbatteryとの和は、一定であって、電力脈動の影響を受けない。
【0077】
図14は、制御パタン7における、位相関係を説明する図である。
図14において、上から、単相交流電源100の電圧波形、系統連系インバータ10の電力P
pcs波形、直流負荷である空調機60の電力P
load波形、太陽光パネル40の電力P
pv波形、及び蓄電池50の電力P
battery波形を示す。横軸は、単相交流電源100の電圧の位相(度)である。
図14は、単相交流電源100の電圧の一周期を示している。縦軸は、電力(W)であって、矢印で示す軸が電力の零(“0”)である。
図14では、
図13と同様に、力率が1である場合を示す。
【0078】
制御パタン7は、逆潮流動作であって、電力Ppcsが正(+)である(Ppcs>0)。電圧と、電力Ppcsに発生する脈動との位相差は、45度である。単相交流電源100の電圧を|Es|sin(ωt)とすると、電力Ppcsに発生する脈動は|Ppcs_ac|sin(2(ωt-45度))である。制御パタン7では、空調機60により脈動電力成分Ppcs_acの全部が消費される。空調機60の電力波形は、電力Ppcsにおける脈動を打ち消すように、電圧に対して135度の位相差で脈動するとよい。空調機60の有する脈動電力調整機能は、電圧との位相差を135度に近付けるように、電力Ploadの脈動電力成分を調整する。言い換えると、空調機60の有する脈動電力調整機能は、単相交流電源100の電圧|Es|sin(ωt)に対し、|Pload_ac|sin(2(ωt-135度))に近付くように電力Ploadの脈動電力成分を調整する。
【0079】
なお、順潮流動作であって電力Ppcsが負(-)となる制御パタン1は、制御パタン6と同様に、単相交流電源100の電圧に対して45度の位相差で脈動するように、電力Ploadの脈動電力成分を調整すればよい。逆潮流動作であって電力Ppcsが正(+)となる制御パタン4は、制御パタン7と同様に、単相交流電源100の電圧に対して135度の位相差で脈動するように、電力Ploadの脈動電力成分を調整すればよい。また、系統連系インバータ10の電力Ppcsは、順調流動作及び逆潮流動作でそれぞれ単相交流電源100の電圧波形に対して位相が90度ずれていることは自明のことである。
【0080】
実施例1の電力システム1、比較例の電力システム2、及び実施例2の電力システム3は、直流電源の一例として、太陽光パネル40と蓄電池50とを備えたが、太陽光パネル40と蓄電池50とのいずれか一方を備えてもよい。実施例1の電力システム1、比較例の電力システム2、及び実施例2の電力システム3は、さらに他の直流電源を備えてもよい。実施例1の電力システム1、比較例の電力システム2、及び実施例2の電力システム3は、太陽光パネル40とDC/DCコンバータ41をそれぞれ2つ以上備えてもよいし、蓄電池50とDC/DCコンバータ51をそれぞれ2つ以上備えてもよい。
【0081】
実施例1の電力システム1、及び実施例2の電力システム3は、直流負荷である電気機器の一例として空調機60を備えた。空調機60は、回転電機を備え、回転電機の回転数又はトルクを調整するものであるとよい。インバータを介して回転させる回転電機では、インバータを制御する信号により、回転数を単相交流電源100の2倍の周波数2ωで脈動させられる。同様に、インバータを介して回転させる回転電機では、インバータを制御する信号により、回転機器のトルクを単相交流電源100の2倍の周波数2ωで脈動させられる。回転電機を備える空調機60によって制御される空間の温度は、回転電機の回転数又はトルクが脈動しても、脈動の影響が顕在化しにくい。
【0082】
直流負荷である電気機器は、熱媒体を循環させるヒートポンプ回路を備えたヒートポンプ機器であってもよい。ヒートポンプ機器は、例えば、空調機、給湯機、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などである。空調機は、冷房専用機、暖房専用機、あるいは冷房と暖房を切り替える空調機であってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。ヒートポンプ機器において制御される温度は、電源から供給する電力を単相交流電源100の2倍の周波数2ωで脈動させても、脈動の影響が顕在化しにくい。
【0083】
直流負荷である電気機器として、空調機60及びヒートポンプ機器を示したが、空調機60及びヒートポンプ機器に限定されない。電気機器は、消費する電力を単相交流電源100の2倍の周波数2ωで脈動させても、脈動の影響が顕在化しにくいものであればよく、例えば電気温水器のような蓄熱機器や送風機・換気扇などでもよい。
【0084】
(実施の形態の作用効果)
本実施の形態の電力システム1、2、3は、直流リンク部20と、直流リンク部20に接続され、単相交流電源100と接続可能に構成され、単相交流電源100から供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンク部20に供給する順潮流動作と、直流リンク部20から供給される直流電力を交流電力に変換して単相交流電源100に供給する逆潮流動作と、を備えた系統連系インバータ10と、直流リンク部20に接続され、直流電力を直流リンク部20に供給できるように構成された、太陽光パネル40、蓄電池50を一例とする1又は複数の直流電源と、直流リンク部20に接続され、直流リンク部20の直流電圧を平滑する平滑コンデンサ30と、直流リンク部20に接続され、直流リンク部20から供給される直流電力を消費する、空調機60、61、ヒートポンプ機器を一例とする1又は複数の電気機器と、を備え、電気機器は、系統連系インバータ10の動作と、単相交流電源100の電圧位相とに応じて、電気機器が消費する直流電力における、単相交流電源の電源周波数の2以上の整数倍の周波数成分である脈動電力成分を調整する脈動電力調整機能を有する。これにより、系統連系インバータ10の動作に応じて、脈動電力成分が調整できる。
【0085】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、系統連系インバータ10は、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、前記電気機器が有する脈動電力調整機能は、系統連系インバータ10が解列動作のとき、脈動電力成分が零に近付くように調整する、又は脈動電力成分を調整しない。これにより、系統連系インバータ10の解列動作に応じて、脈動電力成分が調整できる。
【0086】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記電気機器が有する脈動電力調整機能は、直流リンク部20から前記直流電源又は平滑コンデンサ30に供給される直流電力において、脈動電力成分に含まれる電源周波数の2倍の周波数成分が低減するように脈動電力成分を調整する。これにより、単相交流において発生する脈動電力成分が調整できる。
【0087】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記電気機器が有する脈動電力調整機能は、脈動電力成分に含まれる電源周波数の2倍の周波数成分の振幅、及び単相交流電源100の電圧と脈動電力成分に含まれる電源周波数の2倍の周波数成分との位相差を調整する。これにより、脈動電力成分の調整が容易になる。
【0088】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記電気機器が有する脈動電力調整機能は、系統連系インバータ10が、直流リンク部20から系統連系インバータ10に第1直流電力を供給する逆潮流動作のとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力から第1直流電力を引いた直流電力に近付くように、脈動電力成分を調整する第1制御モードを有する。これにより、直流電源の出力を抑制することを要しない。
【0089】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記電気機器が有する脈動電力調整機能は、系統連系インバータ10が、系統連系インバータ10から直流リンク部20に第2直流電力を供給する順潮流動作のとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力と第2直流電力との和の直流電力に近付くように、脈動電力成分を調整する第2制御モードを有する。これにより、直流電源の出力を抑制することを要しない。
【0090】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記電気機器が有する脈動電力調整機能は、直流リンク部20から系統連系インバータ10に供給される直流電力を第1直流電力としたとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力から当該第1直流電力を引いた直流電力に近付くように、脈動電力成分を調整する第1制御モードと、系統連系インバータ10から直流リンク部20に供給される直流電力を第2直流電力としたとき、前記電気機器が消費する直流電力が、前記直流電源が供給する直流電力と当該第2直流電力との和の直流電力に近付くように、脈動電力成分を調整する第2制御モードと、脈動電力成分が零に近付づくように調整する、又は脈動電力成分を調整しない第3制御モードと、を有する。これにより、系統連系インバータ10の動作に応じて、脈動電力成分が調整できる。
【0091】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、系統連系インバータ10は、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、前記電気機器が有する脈動電力調整機能は、系統連系インバータ10が逆潮流動作であって、脈動電力成分が所定の閾値を超えるとき、前記第1制御モードにて機能し、脈動電力成分が閾値以下のとき、前記第3制御モードにて機能し、系統連系インバータ10が順潮流動作であって、脈動電力成分が閾値を超えるとき、前記第2制御モードにて機能し、脈動電力成分が閾値以下のとき、前記第3制御モードにて機能し、系統連系インバータ10が解列動作のとき、前記第3制御モードで機能する。これにより、電気機器が消費する電力の脈動を少なくできる。
【0092】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、系統連系インバータ10は、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換のいずれも行わない解列動作を備え、前記電気機器が有する脈動電力調整機能は、系統連系インバータ10が逆潮流動作のとき、前記第1制御モードにて機能し、系統連系インバータ10が順潮流動作のとき、前記第2制御モードにて機能し、系統連系インバータ10が解列動作のとき、第3制御モードにて機能する。これにより、平滑コンデンサ30の容量を小さくできる。
【0093】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記電気機器は、回転電機を備え、回転電機の回転数またはトルクを調整することで脈動電力成分を調整する。これにより、電力脈動の影響が顕在化しない。
【0094】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記電気機器は、ヒートポンプ回路を備えたヒートポンプ機器である電力システムである。これにより、電力脈動の影響が顕在化しない。
【0095】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記直流電源は、太陽電池装置である。これにより、電力系統との連系が容易になる。
【0096】
本実施の形態の電力システム1、2、3において、前記直流電源は、蓄電装置である。これにより、電力系統との連系が容易になる。
【0097】
本実施の形態において、空調機60、61、ヒートポンプ機器を一例とする電気機器は、直流リンク部20から供給される直流電力を消費する電気機器であって、単相交流電源100と接続され、単相交流電源100から供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンク部20に供給する順潮流動作と、直流リンク部20から供給される直流電力を交流電力に変換して単相交流電源100に供給する逆潮流動作と、を備えた系統連系インバータ10の動作と、単相交流電源100の電圧位相と、に応じて、前記電気機器が消費する直流電力における、単相交流電源100の電源周波数の2以上の整数倍の周波数成分である脈動電力成分を調整する脈動電力調整機能を有する。これにより、系統連系インバータの動作に応じて、脈動電力成分が調整できる。
【0098】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様の変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0099】
1、2、3…電力システム、10…系統連系インバータ、20…直流リンク部、30…平滑コンデンサ、40…太陽光パネル、41、51…DC/DCコンバータ、50…蓄電池、60、61…空調機、100…単相交流電源
【要約】 (修正有)
【課題】系統連系インバータの動作に応じて、脈動電力成分を調整する電力システム及び電気機器を提供する。
【解決手段】電力システム1は、直流リンク部20と、直流リンク部20に接続され、単相交流電源と接続可能に構成され、単相交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンク部に供給する順潮流動作及び直流リンク部から供給される直流電力を交流電力に変換して単相交流電源に供給する逆潮流動作を備えた系統連系インバータ10と、直流リンク部に接続された1又は複数の直流電源40、50と、平滑コンデンサ30と、1又は複数の電気機器60と、を備える。電気機器60は、系統連系インバータ10の動作と、単相交流電源の電圧位相とに応じて、電気機器60が消費する直流電力における、単相交流電源の電源周波数の2以上の整数倍の周波数成分である脈動電力成分を調整する。
【選択図】
図1