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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20240703BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20240703BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20240703BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08J5/00 CEZ
C08L81/06
C08L67/03
C08J3/20 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020074700
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021172681
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小森 一弘
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-160353(JP,A)
【文献】特開2013-209622(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191828(WO,A1)
【文献】特開平03-252457(JP,A)
【文献】特開平05-171044(JP,A)
【文献】特開平11-181284(JP,A)
【文献】特開平06-123802(JP,A)
【文献】特表2003-507515(JP,A)
【文献】特開2009-74044(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124762(WO,A1)
【文献】特開2021-172679(JP,A)
【文献】特開2012-192677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-5/02
5/12-5/22
99/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリスルホンと有機フィラーとを含有する樹脂成形体の製造方法において、
ニーディングゾーンが計2ゾーン設置されたスクリューを使用して、前記芳香族ポリスルホンと前記有機フィラーとを、せん断力を加えつつ混合する工程(i)を有し、
前記有機フィラーは、芳香族ポリエステル粒子を含み、
前記芳香族ポリエステル粒子の配合量は、前記芳香族ポリスルホン100質量部に対して1~50質量部であり、かつ、
前記工程(i)を行うことにより前記有機フィラーについて下式(1a)の関係が成り立つ、樹脂成形体の製造方法。
(MB-MA)/MB×100≧10 ・・・(1a)
MA:最終的に得られる樹脂成形体中の有機フィラーのメジアン径D50(μm)
MB:前記工程(i)で用いる有機フィラーのメジアン径D50(μm)
【請求項2】
前記有機フィラーについて、さらに、下式(2a)の関係が成り立つ、請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
Ma-Mb<0 ・・・(2a)
Ma:最終的に得られる樹脂成形体中の有機フィラーの粒径の比D90/D10
Mb:前記工程(i)で用いる有機フィラーの粒径の比D90/D10
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリスルホンは、優れた耐熱性、機械的特性、電気的特性、耐熱水性等の特性を有する。そのため、芳香族ポリスルホンを含有する樹脂組成物は、電気電子分野、機械分野、自動車分野、航空機分野、医療食品工業分野等の数々の用途に使用されている。
【0003】
上記樹脂組成物として、例えば特許文献1には、芳香族ポリスルホン95~30重量%、フルオロカーボン重合体2.5~60重量%およびオキシベンゾイルポリエステル2.5~60重量%を含有してなる樹脂成形体の製造方法が開示されている。この特許文献1に記載の製造方法により得られる樹脂成形体は、摺動特性、耐摩耗性、潤滑特性の改善が図れるとされている。
また、特許文献2には、芳香族ポリスルホン100重量部に対して、末端までフッ素化され、流動温度が350℃以下の低分子量フルオロカーボン重合体0.3~50重量部を含有せしめてなる樹脂成形体の製造方法が開示されている。この特許文献2に記載の製造方法により得られる樹脂成形体は、機械的強度、摺動特性等の改善が図れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-160353号公報
【文献】特開平03-252457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の樹脂成形体の製造方法では、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性が十分な樹脂成形体を得られない場合があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性のいずれにも優れる樹脂成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]芳香族ポリスルホンと有機フィラーとを含有する樹脂成形体の製造方法において、前記芳香族ポリスルホンと前記有機フィラーとを、せん断力を加えつつ混合する工程(i)を有し、前記有機フィラーは、芳香族ポリエステル粒子を含み、前記芳香族ポリエステル粒子の配合量は、前記芳香族ポリスルホン100質量部に対して1~50質量部であり、かつ、前記工程(i)を行うことにより前記有機フィラーについて下式(1a)の関係が成り立つ、樹脂成形体の製造方法。
(MB-MA)/MB×100≧10 ・・・(1a)
MA:最終的に得られる樹脂成形体中の有機フィラーのメジアン径D50(μm)
MB:前記工程(i)で用いる有機フィラーのメジアン径D50(μm)
【0007】
[2]前記有機フィラーについて、さらに、下式(2a)の関係が成り立つ、[1]に記載の樹脂成形体の製造方法。
Ma-Mb<0 ・・・(2a)
Ma:最終的に得られる樹脂成形体中の有機フィラーの粒径の比D90/D10
Mb:前記工程(i)で用いる有機フィラーの粒径の比D90/D10
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性のいずれにも優れる樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(樹脂成形体の製造方法)
本実施形態の樹脂成形体の製造方法は、芳香族ポリスルホン(以下、(P)成分ともいう)と有機フィラー(以下、(M)成分ともいう)とを含有する樹脂成形体を製造する方法である。
【0010】
本明細書において、樹脂成形体は、ペレット状の樹脂成形体、該ペレット状の樹脂成形体を射出成形した、射出樹脂成形体等が挙げられる。
【0011】
<(P)成分:芳香族ポリスルホン>
本実施形態で用いる(P)成分:芳香族ポリスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とスルホニル基(-SO-)と酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。
芳香族ポリスルホンは、耐熱性や耐薬品性の点から、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、さらに、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)や、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
【0012】
(1)-Ph-SO-Ph-O-
[式中、Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。]
【0013】
(2)-Ph-R-Ph-O-
[式中、Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rは、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【0014】
(3)-(Ph-O-
[式中、Phは、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは、1~3の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0015】
Ph~Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p-フェニレン基であってもよいし、m-フェニレン基であってもよいし、o-フェニレン基であってもよいが、p-フェニレン基であることが好ましい。
【0016】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアルキル基において、炭素数は、1~10であることが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0017】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアリール基において、炭素数は、6~20であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0018】
前記フェニレン基にある水素原子がこれらの基で置換されている場合は、その数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、好ましくは2個以下であり、より好ましくは1個である。
上記の中でも、前記フェニレン基にある水素原子は置換されていないことが好ましい。
【0019】
Rで表されるアルキリデン基において、炭素数は、1~5であることが好ましい。具体例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、1-ブチリデン基等が挙げられる。
【0020】
芳香族ポリスルホンは、繰返し単位(1)を、全繰返し単位の合計に対して、50モル%以上有することが好ましく、80モル%以上有することがより好ましく、繰返し単位として実質的に繰返し単位(1)のみを有することがさらに好ましい。なお、芳香族ポリスルホンは、繰返し単位(1)~(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。
【0021】
芳香族ポリスルホンは、それを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合させることにより、製造することができる。
【0022】
例えば、繰返し単位(1)を有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」ともいう)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(5)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0023】
また、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(6)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0024】
また、繰返し単位(1)と繰返し単位(3)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(7)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0025】
(4)X-Ph-SO-Ph-X
[式中、Xは及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。Ph及びPhは、前記と同義である。]
【0026】
(5)HO-Ph-SO-Ph-OH
[式中、Ph及びPhは、前記と同義である。]
【0027】
(6)HO-Ph-R-Ph-OH
[式中、Ph、Ph及びRは、前記と同義である。]
【0028】
(7)HO-(Ph-OH
[式中、Ph及びnは、前記と同義である。]
【0029】
芳香族ポリスルホンの重縮合は、炭酸のアルカリ金属塩を用いて、溶媒中で行うことが好ましい。炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸塩であってもよいし、酸性塩である重炭酸塩(炭酸水素塩)であってもよいし、両者の混合物であってもよい。炭酸塩としては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく用いられ、炭酸水素塩としては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましく用いられる。
【0030】
重縮合の溶媒としては、有機極性溶媒が好ましく用いられる。具体例としては、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリドン、スルホラン(1,1-ジオキソチラン)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0031】
<(M)成分:有機フィラー>
本実施形態で用いる(M)成分:有機フィラーは、(M1)成分:芳香族ポリエステル粒子を含む。
【0032】
≪(M1)成分:芳香族ポリエステル粒子≫
本実施形態に用いられる芳香族ポリエステル粒子としては、下記式(11)で表される繰返し単位と、下記式(11e)で表される末端構造単位とを有するものが挙げられる。
(11)-O-Ar-CO-
(11e)-O-Ar-CO-OH
[式中、Arは、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。]
【0033】
・式(11)で表される繰返し単位
前記式(11)中のArは、重合反応性の観点から、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基であることが好ましく、1,4-フェニレン基であることがより好ましい。
【0034】
本実施形態に用いられる芳香族ポリエステル粒子は、繰返し単位(11)以外の繰返し単位や、原料モノマーに含まれる不純物等に起因する構造をわずかに含んでいてもよい。
本実施形態において、繰返し単位(11)の割合は、通常、芳香族ポリエステル粒子を構成する全繰返し単位の合計に対して90モル%以上である。
本実施形態に用いられる芳香族ポリエステル粒子は、繰返し単位(1)を、芳香族ポリエステル粒子を構成する全繰返し単位の合計に対して95モル%以上有することが好ましく、98モル%以上有することがより好ましい。
【0035】
・式(11e)で表される末端構造単位
上記式(11e)中のArは、上記式(11)中のArと同様である。
【0036】
本実施形態に用いられる芳香族ポリエステル粒子において、上記式(11e)で表される末端構造単位の割合は、例えば、芳香族ポリエステル粒子の製造条件により制御することができる。
かかる芳香族ポリエステル粒子の製造条件としては、例えば、原料モノマーである芳香族カルボン酸とカルボン酸無水物との混合比率、固相重合の温度条件が挙げられる。
【0037】
・その他の繰返し単位
本実施形態に用いられる芳香族ポリエステル粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、下記式(12)で表される繰返し単位(以下「繰返し単位(12)」という。)と、下記式(13)で表される繰返し単位(以下「繰返し単位(13)」という。)とのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。
【0038】
(12)-CO-Ar-CO-
(13)-O-Ar-O-
[式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基、又は下記式(14)で表される基を表す。Ar又はArで表される前記の基に存在する水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。]
【0039】
(14)-Ar-Z-Ar
[式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。]
【0040】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0041】
上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0042】
上記アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が挙げられ、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0043】
Ar又はArで表される基に存在する水素原子が上記の基で置換されている場合、その数は、Ar又はArで表される基毎に、それぞれ独立に、通常2個以下であり、好ましくは1個である。
【0044】
式(14)におけるアルキリデン基としては、炭素数1~10のアルキリデン基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n-ブチリデン基、2-エチルヘキシリデン基等が挙げられる。
【0045】
繰返し単位(12)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(12)としては、Arがp-フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arがm-フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、Arがジフェニルエ-テル-4,4’-ジイル基であるもの(ジフェニルエ-テル-4,4’-ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0046】
繰返し単位(13)は、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位である。繰返し単位(13)としては、Arがp-フェニレン基であるもの(ヒドロキノンに由来する繰返し単位)、Arが4,4’-ビフェニリレン基であるもの(4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0047】
本実施形態に用いられる芳香族ポリエステル粒子中の繰返し単位(12)及び繰返し単位(13)の少なくとも一方の割合は、芳香族ポリエステル粒子を構成する全繰返し単位の合計に対して、通常10モル%未満であり、好ましくは5モル%以下であり、より好ましくは2モル%以下である。
【0048】
尚、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
【0049】
(M1)成分の含有量の下限値は、(P)成分100質量部に対して、1質量部以上であり、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。
一方(M1)成分の含有量の上限値は、(P)成分100質量部に対して、50質量部以下であり、好ましくは40質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下である。
【0050】
(M1)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、例えば、1~50質量部であり、好ましくは10~40質量部であり、より好ましくは20~30質量部である。
【0051】
(M)成分の総量(100質量%)に対して、(M1)成分の含有量は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、(M)成分の全てが(M1)成分であってもよい。
【0052】
≪(M2)成分:(M1)成分以外の有機フィラー≫
本実施形態において、(M)成分は、(M1)成分以外の有機フィラー(以下、(M2)成分ともいう)が含まれていてもよい。
(M2)成分としては、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。
【0053】
(M2)成分は、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、摺動特性、耐薬品性の観点からは、フッ素樹脂が好ましく、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。その中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
【0054】
(M2)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、好ましくは0~50質量部であり、より好ましくは0~40質量部である。
【0055】
(M)成分の総量(100質量%)に対して、(M2)成分の含有量は、0~60質量%が好ましく、0~50質量%がより好ましい。
【0056】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、上述した(P)成分及び(M)成分以外の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、タルクフィラー、酸化チタンフィラー、顔料、ガラス繊維等の無機フィラー等が挙げられる。
【0057】
<工程(i)>
本実施形態の樹脂成形体の製造方法は、(P)成分と(M)成分とを、せん断力を加えつつ混合する工程(i)を有する。
工程(i)を行うことにより(M)成分について下式(1a)の関係が成り立つ。
(MB-MA)/MB×100≧10 ・・・(1a)
MA:最終的に得られる樹脂成形体中の有機フィラーのメジアン径D50(μm)
MB:前記工程(i)で用いる有機フィラーのメジアン径D50(μm)
【0058】
(MB-MA)/MB×100(以下、「左辺」と表記する)が10以上であれば、工程(i)により、樹脂成形体中の有機フィラーが凝集しておらず、十分に解砕されていることを意味する。
左辺は、10以上であり、12以上が好ましく、15以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。
左辺の上限値としては、例えば、55以下である。
左辺が上記好ましい範囲内であれば、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性がいずれもより向上する。
【0059】
さらに、工程(i)を行うことにより(M)成分について、下式(2a)の関係が成り立つことが好ましい。
Ma-Mb<0 ・・・(2a)
Ma:最終的に得られる樹脂成形体中の有機フィラーの粒径の比D90/D10
Mb:前記工程(i)で用いる有機フィラーの粒径の比D90/D10
【0060】
Ma-Mbが0未満の場合、工程(i)により、有機フィラーの粒径が均一化されていることを意味する。
【0061】
Ma-Mbは、-5以上-1以下が好ましく、-3以上-2以下がより好ましい。
Ma-Mbが上記好ましい範囲内であれば、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性がいずれもより向上する。
【0062】
なお、本明細書において、粒子径はそれぞれ以下のものを意味する。
メジアン径(D50)は、(M)成分の粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となるときの粒子径である。
粒径D90は、(M)成分の粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積90%となるときの粒子径である。
粒径D10は、(M)成分の粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積10%となるときの粒子径である。
メジアン径(D50)、粒径D90、及びD10は、界面活性剤を含む水に(M)成分を分散させ、レーザー回折式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、商品名:LA-950V2等)で測定することができる。
【0063】
なお、(M)成分が複数混合されて含まれる場合は、上記測定方法により求められる(M)成分の混合物のメジアン径D50、粒径の比D90/D10が、上記の範囲を満たすものを意味し、(M)成分に含まれる各成分がそれぞれ上記の範囲内を満たせばよいというものではない。
ここで、(M)成分が複数混合されて含まれる場合とは、粒径や種類の異なる(M1)成分が複数含まれる場合、(M1)成分に加えて、さらに(M1)成分以外の有機フィラー(以下、(M2)成分ともいう)が含まれる場合が挙げられる。
【0064】
また、最終的に得られる樹脂成形体中の(M)成分のメジアン径D50、粒径D90、及びD10については、例えば、(M)成分以外は溶解する有機溶剤を用いて、(M)成分のみ取り出し、上記の測定方法により測定することができる。
【0065】
上式(1a)中、MAは、好ましくは71μm以下であり、より好ましくは10~50μmであり、さらに好ましくは10~25μmであり、よりさらに好ましくは10~15μmである。
【0066】
上式(1a)中、MBは、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは5~50μmであり、さらに好ましくは10~30μmであり、よりさらに好ましくは10~25μmである。
【0067】
上式(2a)中、Maは、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは1.0~5.0であり、さらに好ましくは2~3.5であり、よりさらに好ましくは2.5~3.5である。
Maが、上記の好ましい範囲内で、かつ、MAが上記の好ましい範囲内であれば、引張強度、曲げ強度、及び耐衝撃性がいずれもより向上する。
【0068】
上式(2a)中、Mbは、好ましくは6.0以下であり、より好ましくは1.0~6.0であり、さらに好ましくは3.0~6.0であり、よりさらに好ましくは4.0~6.0である。
【0069】
上記工程(i)では、(P)成分と(M)成分とをせん断力を加えつつ混合する。
本実施形態における工程(i)としては、2軸押出機、万能混合機、ニーダー、バンバリーミキサー等公知の混練装置を使用して混合する方法が挙げられる。
【0070】
本発明の一実施形態として、2軸押出機を用いる場合、装置の構成(スクリューデザイン、ダイスヘッドの穴の径等)、製造条件(フィード位置、フィード量、回転数、温度等)等を変更することにより、上式(1a)(好ましくは上式(1a)及び(2a))の関係が成り立つように制御することができる。
【0071】
2軸押出機に(P)成分及び(M)成分をフィードする際、基端側(樹脂組成物(樹脂成形体)の排出側とは反対側)からフィードすると、(M)成分に加わるせん断履歴が最も大きくなる。一方で、(P)成分及び(M)成分をサイドフィードすると、(M)成分に加わるせん断履歴は小さくなりやすい。
また、2軸押出機の回転数を一定にした状態で(M)成分のサイドフィード量を減らして2軸押出機の基端側からの(M)成分のフィード量を増やすと、(M)成分に加わるせん断履歴が増加する場合がある。ただし、基端側からのフィード量を増やしすぎると押出トルクの変動幅が大きくなり安定生産できない場合がある。そのため、(M)成分の分散性を向上させつつ安定生産するためには、2軸押出機のトルク変動が問題ない範囲で2軸押出機の基端側からの(M)成分フィード比率を増加させることが好ましい。(M)成分フィード比率とは、(M)成分のサイドフィード量に対する基端側からの(M)成分フィード量を指す。(M)成分のフィード比率の範囲は、基端側0~100%であり、基端側30~100%が好ましい。
【0072】
2軸押出機のシリンダー温度を下げると、シリンダー内の樹脂組成物の粘度が大きくなり、(M)成分に加わるせん断応力が増加する。そのため、シリンダー温度としては(P)成分のガラス転移温度を基準として、当該ガラス転移温度+60~160℃が好ましく、当該ガラス転移温度+90~140℃が特に好ましい。2軸押出機のシリンダー温度が(P)成分のガラス転移温度+60℃を下回ると、2軸押出機のトルクが大きくなりすぎる場合がある。
【0073】
スクリューデザインを決定するスクリューエレメントは、通常、順フライトからなる搬送用エレメントと、可塑化部用エレメントと、混練部用エレメントとからなる。二軸押出機の場合、可塑化部や混練部には、逆フライト、シールリング、順ニーディングディスク、逆ニーディングディスク、ニュートラルディスク等のスクリューエレメントが組み合わされて構成されるのが一般的である。
【0074】
スクリューエレメントとして、ニーディングディスクを増やすと、(M)成分に加わるせん断履歴が増加する。そのため、(M)成分が通過する領域のニーディングディスクの比率は、エレメント全体の長さに対して10~35%が好ましく、20~30%がより好ましい。
ニーディングディスクとしては、順ニーディングディスクを複数個連続させる構成でも良く、逆ニーディングディスクやニュートラルディスクを交互に連続させる構成でも良い。ただし、ニーディングディスク比率が35%を超えると、シリンダー内部での樹脂圧力上昇が大きくなりすぎる場合があり、各々の原料がフィード口から2軸押出機内に入らないというフィード不良が発生するおそれがある。また、ニーディングディスク比率が10%を下回ると、(M)成分の分散不良が発生する場合があり、引張強度、曲げ強度、及び耐衝撃性などの物性が低下する場合がある。
【0075】
また上記スクリューエレメントの回転数を上げると、(M)成分に加わるせん断履歴が増加する。そのため、スクリューエレメントの回転数は100~1000rpmが好ましい。
【0076】
2軸押出機のダイスヘッドの穴の径を小さくすると、(M)成分に加わるせん断履歴が増加する。そのため、2軸押出機のダイスヘッドの穴の径はΦ2.0~Φ4.0mmが好ましい。
【0077】
また、せん断力を加えつつ混合する工程を複数回行うことにより、せん断履歴を増加させることもできる。
例えば、2軸押出機を用いて、(P)成分と(M)成分とを含有する樹脂組成物をせん断力を加えつつ混合し、押出成形して、押出成形品(ペレット状の樹脂成形体等)を得る。その後、得られた押出成形品を再度2軸押出機を用いて、せん断力を加えつつ混合する方法が挙げられる。
【0078】
せん断力を加えつつ混合する工程は、1~6回行うことが好ましく、1~3回行うことがより好ましい。
【0079】
本発明のその他の実施形態としては、溶融粘度が高い樹脂を使用する方法、硬度が高いフィラー(酸化チタン、ガラス繊維等)を使用する方法等が挙げられる。
【0080】
以上説明した本実施形態の樹脂成形体の製造方法は、(P)成分:芳香族ポリスルホンと特定の配合量の(M1)成分:芳香族ポリエステル粒子とを併有する樹脂組成物を、工程(i)により、(M1)成分を含む(M)成分が、上式(1a)の関係が成り立つように制御すること、すなわち、(M)成分を解砕するように混合することによって、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性のいずれも向上した樹脂成形体を製造できる。好ましくは、さらに、上式(2a)の関係が成り立つように制御すること、すなわち、(M)成分の粒径が均一になるように混合することによって、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性のいずれもより向上した樹脂成形体を製造できる。かかる理由は定かではないが、工程(i)により、(M)成分が解砕され、好ましくはさらに粒子径が均一化されることにより、衝撃が均一に加わりやすくなるためである、と推測される。このように、本実施形態の樹脂成形体の製造方法によれば、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性のいずれにも優れた樹脂成形体を製造することができる。
【実施例
【0081】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
使用した原料は以下に示す通りある。
(P)-1成分:芳香族ポリスルホン(住友化学社製、商品名:PES 4100P(登録商標))
(M1)-1成分:芳香族ポリエステル粒子(住友化学社製、商品名:E101U)
(M1)-2成分:芳香族ポリエステル粒子(住友化学社製、商品名:E101P)
【0082】
<樹脂成形体の製造方法>
(実施例1)
2軸押出機(池貝社製、商品名:PCM-30)と水封式真空ポンプ(神港精機社製、商品名:SW-25)とを使用した。2軸押出機のスクリュー構成としては、ニーディングゾーンが計2ゾーン設置されたスクリューを使用した。スクリュー上流側には、逆ニーディングディスクを設置し、下流側には順ニーディングディスクを設置した。2軸押出機のシリンダー温度を340℃、スクリュー回転数を200rpmとし、フィーダーから(P)-1成分と(M1)-1成分とをフィードし、真空ベントで脱気しながら溶融混練して吐出し、樹脂組成物1(ストランド1)を得た。その後、吐出されたストランド1をカットして、実施例1のペレット状の樹脂成形体1を得た。
【0083】
(実施例2)
上記樹脂成形体1を2軸押出機のフィーダーからフィードし、2軸押出機のシリンダー温度を340℃、スクリュー回転数を200rpmとし、真空ベントで脱気しながら溶融混練して吐出し、樹脂組成物2(ストランド2)を得た。その後、ストランド2をカットして、ペレット状の樹脂成形体2を得た。
該樹脂成形体2を2軸押出機のフィーダーからフィードし、2軸押出機のシリンダー温度を340℃、スクリュー回転数を200rpmとし、真空ベントで脱気しながら溶融混練して吐出し、樹脂組成物3(ストランド3)を得た。その後、吐出されたストランド3をカットして、実施例2のペレット状の樹脂成形体3を得た。
【0084】
(比較例1)
2軸押出機のスクリュー構成を順ニーディングゾーンが計1ゾーン設置されたスクリューに変更したこと以外は、上記実施例1の樹脂成形体の製造方法と同様の方法で、比較例1のペレット状の樹脂成形体を得た。
【0085】
(実施例3)
(M1)-1成分を(M1)-2成分に変更したこと以外は、上記実施例1の樹脂成形体の製造方法と同様の方法で、実施例3のペレット状の樹脂成形体を得た。
【0086】
(比較例2)
(M1)-1成分を(M1)-2成分に変更したこと以外は、上記比較例1の樹脂成形体の製造方法と同様の方法で、比較例2のペレット状の樹脂成形体を得た。
【0087】
[粒径の評価]
<(M)成分の粒径の評価>
界面活性剤(International Products Corporation社製、商品名:MICRO90)0.5wt%を純水に溶解させて溶液Aを得た。各例における(M)成分をスパチュラで200mg取って、20mLの溶液Aに加えた。その後、超音波振動を5分間加え、分散させ、各例の測定用水溶液を得た。該水溶液を散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、商品名:LA-950V2)にセットし、各例の(M)成分のメジアン径D50、粒径D10、D90を測定した。
<樹脂成形体中の(M)成分の粒径の評価>
・樹脂成形体中からの(M)成分抽出操作
以下(1)~(9)の手順により樹脂成形体中の(M)成分を抽出する。
(1)樹脂成形体4gをオーブンにて180℃で5h乾燥して、当該樹脂成形体の絶乾重量を測定する。
(2)乾燥後の前記樹脂成形体4gをセパラブルフラスコに投入する。
(3)N-メチル-2-ピロリドンをセパラブルフラスコに400mL投入する。
(4)当該セパラブルフラスコに関し、セパラブルフラスコ170℃で約4h撹拌処理する。
(5)1μmメッシュフィルターを使用して加圧ろ過を実施する(0.2MPa程度)。
(6)50mL程度のN-メチル-2-ピロリドンを加圧ろ過装置に投入し、残渣を洗浄する。
(7)アセトン50~100mL程度を3回に分けて、加圧ろ過装置に投入し、N-メチル-2-ピロリドン溶媒を除去する。
(8)残渣((M)成分)を150℃で3h乾燥させる。
(9)乾燥後の(M)成分の重量を測定する。
【0088】
・樹脂成形体中から抽出した(M)成分の粒径測定
界面活性剤(International Products Corporation社製、商品名:MICRO90)0.5wt%を純水に溶解させて溶液Aを得た。上記の方法により抽出した各例における(M)成分をスパチュラで200mg取って、20mLの溶液Aに加えた。その後、超音波振動を5分間加え、分散させ、各例の測定用水溶液を得た。該水溶液を散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、商品名:LA-950V2)にセットし、各例の(M)成分のメジアン径D50、粒径D10、D90を測定した。
上記(M)成分のメジアン径D50、粒径の比のD90/D10の結果を表1に示す。
また上記式(1a)及び(2a)に関係する下記の値も表1に示す。
・(MB-MA)/MB×100
MA:最終的に得られる樹脂成形体中の有機フィラーのメジアン径D50(μm)
MB:上記工程(i)で用いる有機フィラーのメジアン径D50(μm)
・Ma-Mb
Ma:最終的に得られる樹脂成形体中の有機フィラーの粒径の比D90/D10
Mb:上記工程(i)で用いる有機フィラーの粒径の比D90/D10
【0089】
[比重の評価]
各例のペレット状の樹脂成形体について、ASTM D792(方法A)に準拠して、比重を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
[引張強度・引張破断点伸びの評価]
各例のペレット状の樹脂成形体について、射出成形機(日精樹脂工業社製、商品名:PNX40-5A)を用い、成形温度340℃、金型温度150℃、射出速度70mm/秒の成形条件にて、長さ115mm、平行部幅6mm、厚さ2.5mmのASTM4号ダンベル型試験片を成形した。得られた試験片の引張強度(最大点強度)と引張破断点伸びを、ASTM D638に準拠し、試験速度10mm/minにて測定した。引張破断点伸び(破断点伸び)は、初期チャック間距離を50mmとし試験片が破断した際のチャック間の距離の変位から算出した(引張呼び歪ともいう)。その結果を表1に示す。
【0091】
[曲げ強度・曲げ弾性率・曲げ破断点歪の評価]
各例のペレット状の樹脂成形体について、射出成形機(日精樹脂工業社製、商品名:PNX40-5A)を用いて、成形温度340℃、金型温度150℃、射出速度70mm/秒で、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ6.4mmの試験片を成形した。得られた試験片の曲げ強度と曲げ弾性率と曲げ破断点歪(破断点歪)を、ASTM D790に準拠し、試験速度2mm/minにて測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
[Izod衝撃強度(ノッチなし)の評価]
各例のペレット状の樹脂成形体について、射出成形機(日精樹脂工業社製、商品名:PNX40-5A)を用いて、成形温度340℃、金型温度150℃、射出速度70mm/秒の成形条件にて、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ6.4mmの試験片を成形し、該試験片を長尺方向に2等分した。2等分した試験片のIzod衝撃強度を、ASTM D256に準拠して測定した。その結果を表1に示す。
【0093】
[荷重たわみ温度の評価]
各例のペレット状の樹脂成形体について、射出成形機(日精樹脂工業社製、商品名:PNX40-5A)を用いて、長さ126mm、幅12.7mm、厚さ6.4mmの試験片を成形した。得られた試験片の荷重たわみ温度を、ASTM D648に準拠し、1.82MPaの荷重で測定した。
その結果を表1に示す。
【0094】
[成形収縮率の評価]
射出成形機(日精樹脂工業社製、商品名:PNX40-5A)を用いて64mm(MD)×64mm(TD)×3mmtの試験片を成形した。
該試験片について、MDの2辺の長さを測定し、その平均値を求め、この平均値と、金型キャビティのMDの長さとから、下記式により、MDの収縮率を算出した。
また、該試験片について、TDの2辺の長さを測定し、その平均値を求め、この平均値と、金型キャビティのTDの長さとから、下記式により、TDの収縮率を算出した。
上記MDの収縮率、TDの収縮率、及びTD収縮率/MD収縮率を表1に示す。
【0095】
[MDの収縮率(%)]=([金型キャビティのMDの長さ(μm)]-[成形体のMDの2辺の長さの平均値(μm)])/[金型キャビティのMDの長さ(μm)]×100
[TDの収縮率(%)]=([金型キャビティのTDの長さ(μm)]-[成形体のTDの2辺の長さの平均値(μm)])/[金型キャビティのTDの長さ(μm)]×100
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示す結果から、実施例1及び2のペレット状の樹脂成形体を用いて作製された射出樹脂成形体は、比較例1のペレット状の樹脂成形体を用いて作製された射出樹脂成形体は、引張強度、曲げ強度、Izod衝撃強度のいずれにも優れることが確認できる。
【0098】
実施例3のペレット状の樹脂成形体を用いて作製された射出樹脂成形体は、比較例2のペレット状の樹脂成形体を用いて作製された射出樹脂成形体は、引張強度、曲げ強度、Izod衝撃強度のいずれにも優れることが確認できる。
【0099】
また、上記式(1a)を満たし、かつ、上記式(2a)を満たす、実施例1及び2のペレット状の樹脂成形体を用いて作製された射出樹脂成形体は、特にIzod衝撃強度の値が高く、耐衝撃性に優れていた。
【0100】
以上より、本発明を適用した実施例の樹脂成形体は、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性のいずれにも優れることが確認できる。