(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】MTF測定装置およびそのプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01M11/02 A
(21)【出願番号】P 2020208916
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019228347
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】正岡 顕一郎
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013416(JP,A)
【文献】特開2002-202218(JP,A)
【文献】特開2002-131183(JP,A)
【文献】特開2005-017136(JP,A)
【文献】特開2018-136222(JP,A)
【文献】特開2003-168103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0258313(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界でコントラストの異なるチャートを用いて、撮像系の空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、
前記撮像系が前記チャートを撮像したチャート画像から、前記境界を含んだ画像であるROI画像を抽出するROI画像抽出手段と、
前記ROI画像から、エッジおよびその傾きを検出するエッジ検出手段と、
前記ROI画像の画素位置と、前記画素位置を前記エッジの傾きに沿って投影した、前記ROI画像の画素幅よりも小さい画素幅を単位とする投影軸のビンとを対応付ける投影位置対応付け手段と、
前記ROI画像の前記エッジの近傍以外の画像領域において、輝度分布の勾配補正率を一次関数で近似する勾配補正率関数近似手段と、
前記一次関数を用いて前記ROI画像の画素位置ごとの輝度分布の勾配補正率を算出する勾配補正率算出手段と、
前記ROI画像の画素位置ごとの画素値を、前記輝度分布の勾配補正率で補正し、対応する前記ビンに投影する勾配補正投影手段と、
前記ビンに投影された画素値を前記ビンごとに平均化してエッジプロファイルを生成する平均化手段と、
前記エッジプロファイルからMTFを算出する周波数特性算出手段と、
を備えることを特徴とするMTF測定装置。
【請求項2】
前記勾配補正率関数近似手段は、前記ROI画像の前記エッジの予め定めた画素数の幅方向の領域以外の画像領域において、前記輝度分布の勾配補正率を一次関数で近似することを特徴とする請求項1に記載のMTF測定装置。
【請求項3】
前記勾配補正率関数近似手段は、
前記ROI画像の画素位置(x,y)における輝度分布の勾配補正率をG(x,y)、係数をp
1,p
2とするG(x,y)=1+p
1x+p
2yの一次関数において、
前記ROI画像の前記エッジの近傍で2分された画像領域の一方の輝度の高い領域である高輝度領域の各画素位置における画素値に当該画素位置に対応する前記勾配補正率を乗算した値の変動係数と、前記2分された画像領域の他方の輝度の低い領域である低輝度領域の各画素位置における画素値に当該画素位置に対応する前記勾配補正率を乗算した値の変動係数との和が最小となる前記係数p
1,p
2を求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMTF測定装置。
【請求項4】
前記勾配補正投影手段は、前記ROI画像の画素位置ごとの画素値に前記勾配補正率を乗算することで前記輝度分布の勾配を補正することを特徴とする請求項3に記載のMTF測定装置。
【請求項5】
前記エッジの傾きに基づいて、前記エッジが前記投影軸に垂直となるように前記ROI画像を回転させるROI画像回転手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のMTF測定装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のMTF測定装置として機能させるためのMTF測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像系の空間周波数特性を示すMTF(Modulation Transfer Function)を測定するMTF測定装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高解像度テレビジョンの最大の特徴は、高い空間解像度であり、デジタルカメラ等の撮像系の解像度特性が重要となる。撮像系の解像度特性は、MTFで表すことができる。
現在、MTFを測定する方法として、撮像系が撮像する測定用のチャートのサイズが比較的小さく、撮像画角を正確にチャートサイズにフレーミングする必要がないSlanted-edge法(傾斜エッジ法;以下、エッジ法という)が一般的に用いられている(特許文献1,2、非特許文献1~4参照)。
【0003】
ここで、
図14を参照して、従来のエッジ法によるMTF測定について説明する。
まず、エッジ法は、
図14(a)に示すように、エッジを含んだチャートを撮像した画像(エッジ画像I)において、MTFの測定対象となるROI(Region Of Interest:関心領域)を選定する。
次に、エッジ法は、
図14(b)に示すように、ROIからエッジeを検出し、その傾きθeを求める。そして、エッジ法は、ROIの各画素を、エッジeに沿って、等間隔に区分されたビンが並ぶ投影軸(x軸)に投影する。このとき、ビンの幅は、ROIの1画素の幅の1/4,1/8といったサブピクセル幅とする。
【0004】
そして、エッジ法は、投影軸のビンに投影された画素の値を各ビンで平均化することで、
図14(c)に示すようなオーバーサンプリングされたエッジ広がり関数(ESF:Edge Spread Function)を求める。
さらに、エッジ法は、エッジ広がり関数を微分することで、
図14(d)に示すような線広がり関数(LSF:Line Spread Function)を求める。
最後に、エッジ法は、エッジ広がり関数をフーリエ変換して絶対値をとり、直流(空間周波数“0”)で正規化することで、
図14(e)に示すように、MTFを求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-13416号公報
【文献】特開2018-136222号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】ISO 12233:2017,“Photography - Electronic still picture imaging - Resolution and spatial frequency responses”
【文献】K. Masaoka, K. Arai, and Y. Takiguchi, “Real-time measurement of ultra-high definition camera modulation transfer function,” SMPTE Motion Imaging Journal, 127(10), 2018, doi: 10.5594/JMI.2018.2868435. (in press)
【文献】K. Masaoka et. al., Modified slanted-edge method and multidirectional modulation transfer function estimation,” Optics Express 22(5):6040-6046, March 2014
【文献】「テレビジョンカメラシステムの解像度特性測定法 技術資料(ARIB TR-B41)」、1.0版、P3-7、一般社団法人電波産業会、平成28年9月29日策定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来手法のように、撮像系によって測定用のチャートを撮像する場合、測定を正確に行うため、チャート領域全体で輝度変化が±10%程度以内になることが望ましい。
しかし、測定対象の撮像系や、使用する照明の光学系によっては、チャートに均一に照明を照射することが困難な場合がある。
例えば、水中カメラや顕微鏡カメラは、水中の状態や、照明の照射位置によって、チャートに均一に照明を照射することが困難である。また、照明は、レンズシェーディングによって、均一性を得ることが難しい場合がある。
このように、チャートに均一に照明が照射されない場合、従来の手法では、MTFの正しい測定結果を得ることができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、チャートに均一に照明が照射されていない場合でも、輝度を補正して精度よくMTFを測定することが可能なMTF測定装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係るMTF測定装置は、境界でコントラストの異なるチャートを用いて、撮像系の空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、ROI画像抽出手段と、エッジ検出手段と、投影位置対応付け手段と、勾配補正率関数近似手段と、勾配補正率算出手段と、勾配補正投影手段と、平均化手段と、周波数特性算出手段と、を備える構成とした。
【0010】
かかる構成において、MTF測定装置は、ROI画像抽出手段によって、撮像系がチャートを撮像したチャート画像から、境界を含んだ画像であるROI画像を抽出する。
そして、MTF測定装置は、エッジ検出手段によって、ROI画像から、ソーベルフィルタ等によりエッジを検出するとともに、ハフ変換等によりエッジの傾きを検出する。
さらに、MTF測定装置は、投影位置対応付け手段によって、ROI画像の画素位置と、画素位置をエッジの傾きに沿って投影した、ROI画像の画素幅よりも小さい画素幅を単位とする投影軸のビンとを対応付ける。
【0011】
そして、MTF測定装置は、勾配補正率関数近似手段によって、ROI画像のエッジの近傍以外の画像領域において、輝度分布の勾配補正率を一次関数で近似する。ROI画像のエッジの近傍以外の画像領域は、エッジの近傍で2分された輝度の高い領域である高輝度領域と、輝度の低い領域である低輝度領域とで構成され、照明が均一に照射されていれば、それぞれの領域は輝度が同じになる。しかし、照明が均一に照射されていなければ、それぞれの領域に輝度分布の勾配が発生する。そこで、勾配補正率関数近似手段は、この2つの領域における輝度分布の勾配補正率を一次関数で近似する。この一次関数によって、画素位置ごとの輝度分布の勾配を補正するためのゲインを求めることが可能になる。
【0012】
そして、MTF測定装置は、勾配補正率算出手段によって、一次関数を用いてROI画像の画素位置ごとの輝度分布の勾配補正率を算出する。
そして、MTF測定装置は、勾配補正投影手段によって、ROI画像の画素位置ごとの画素値を輝度分布の勾配補正率で補正し、対応するビンに投影する。
さらに、MTF測定装置は、平均化手段によって、ビンに投影された画素値をビンごとに平均化することで、エッジの特性を示すエッジプロファイルを生成する。このように、ROI画像の画素値を、画素幅よりも小さいビンに投影して平均化することで、オーバーサンプリングしたエッジ広がり関数を求めることができる。
そして、MTF測定装置は、周波数特性算出手段によって、エッジプロファイルを微分することで線広がり関数を求め、その線広がり関数をフーリエ変換することでMTFを算出する。
【0013】
なお、MTF測定装置は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、MTF測定用のチャートを撮像した画像において、ROI内で照明による輝度勾配を補正することで、精度よくMTFを測定することができる。
これによって、本発明は、照明の均一性を確保することが困難な測定環境であっても、精度よくMTFを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るMTF測定装置の構成を示すブロック構成図である。
【
図2】均一に照明が照射されていないチャート画像の例を示す図である。
【
図4】ROI画像回転手段によるROI画像の回転を示す図であって、(a)は回転前のROI画像、(b)は回転後のROI画像を示す。
【
図5】投影位置対応付け手段における投影情報を生成する手法を説明するための説明図である。
【
図6】輝度分布の勾配を説明するためのROI画像である。
【
図7】エッジ近傍領域と高輝度領域と低輝度領域とに区分したROI画像を示す。
【
図8】勾配補正率関数近似手段の処理を説明するための説明図である
【
図9】勾配補正投影手段の処理を説明するための説明図である。
【
図10】平均化手段の処理を説明するための説明図である。
【
図11】測定結果出力手段が表示するMTFの測定結果を示すグラフ図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るMTF測定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】変形例として、ROI画像を回転しない場合のエッジ近傍領域と高輝度領域と低輝度領域とに区分したROI画像を示す。
【
図14】従来のエッジ法のMTF測定手順を(a)~(e)で説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[MTF測定装置の構成]
最初に、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1の構成について説明する。
【0017】
MTF測定装置1は、境界でコントラストの異なるチャートCHを用いて、撮像系2の空間周波数特性を表すMTFを測定するものである。MTF測定装置1による測定を行う場合、撮像系2と表示装置3とを接続して使用する。
【0018】
撮像系2は、MTFの被測定対象となるビデオカメラまたはスチールカメラ、MTFの被測定対象となるレンズを含んだカメラ等である。また、被測定対象は、カメラのDETAIL(ディテール)コントロールによってMTFが変化する映像であってもよい。
この撮像系2は、チャートCHを撮像した画像を、MTF測定装置1に出力する。
【0019】
チャートCHは、境界でコントラストの異なるMTF測定用のチャートである。ここでは、チャートCHとして
図2に示す矢車チャートを例として説明するが、境界でコントラストの異なるエッジを含むものであれば、どのようなものであっても構わない。なお、
図2のチャートCHは、照明が均一に照射されていない状態を示している。
【0020】
表示装置3は、MTF測定装置1を操作するユーザインタフェースを提供するとともに、撮像系2が撮像したチャート画像、測定結果となるグラフ等を表示するものである。例えば、表示装置3は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
なお、表示装置3は、撮像系2が撮像したチャート画像を表示する表示装置と、測定結果となるグラフ等を表示する表示装置とをそれぞれ別に設けてもよい。
【0021】
以下、撮像系2で撮像された画像によって、撮像系2のMTFを測定するMTF測定装置1の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、MTF測定装置1は、チャート画像記憶手段10と、ROI設定手段11と、測定指示手段12と、ROI画像抽出手段13と、エッジ検出手段14と、投影情報生成手段15と、投影情報記憶手段16と、エッジプロファイル生成手段17と、周波数特性算出手段18と、測定結果出力手段19と、を備える。
【0022】
チャート画像記憶手段10は、撮像系2でMTF測定用のチャートCHを撮像した画像(チャート画像)を記憶するものである。このチャート画像記憶手段10は、図示を省略した映像入力手段を介して、チャート画像が撮像系2から入力され、入力したチャート画像を記憶する。このチャート画像記憶手段10は、新たなチャート画像が撮像系2から入力された場合、すでに記憶しているチャート画像を新たなチャート画像で上書きする。このチャート画像記憶手段10は、例えば、ハードディスク、メモリ等の一般的な記憶装置である。
なお、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像は、図示を省略した映像出力手段を介して表示装置3に出力されるとともに、ROI画像抽出手段13によって読み出される。
【0023】
ROI設定手段11は、撮像系2で撮像したチャート画像内で、境界(エッジ)を含む関心領域(ROI)を設定するものである。
このROI設定手段11は、表示装置3が表示しているチャート画像内において、測定者によって、任意形状の閉領域を指定されることで、当該閉領域をROIとして設定する。なお、ROIの形状は、領域内に1つのエッジのみを含むように設定する形状であれば、四角形(矩形、台形、ひし形等)、三角形、円、楕円等、任意の形状でよい。
ここでは、
図3に示すように、チャートCHを撮像した画像において、矩形形状でROIが設定されたものとして説明する。
ROI設定手段11は、ROIの領域を特定するROI情報(例えば、
図3の例では、矩形を特定する4点の座標)を、ROI画像抽出手段13に出力する。
【0024】
測定指示手段12は、MTF測定の開始や終了の測定指示を受け付けるものである。例えば、図示を省略したスイッチで指示を受け付けたり、表示装置3に指示画面を表示し、マウス等の操作によって指示を受け付けたりするものであってもよい。なお、測定指示手段12は、MTF測定の開始の指示とともに、動作モードを受け付ける。
【0025】
動作モードは、MTF測定を行う際のMTF測定装置1の動作を規定するものである。ここでは、MTF測定装置1は、動作モードとして、通常動作モードと、高速動作モードとで動作する。
通常動作モードは、ROIの画像(以下、ROI画像という)におけるエッジの検出、投影情報の生成、エッジプロファイルの生成、および、周波数特性(MTF)の算出を順次行うモードである。
高速動作モードは、通常動作モードにおいて予め生成した投影情報を参照することで、エッジの検出、投影情報の生成を省略して動作するモードである。
【0026】
投影情報は、エッジ法におけるROI画像の各画素位置と投影軸のビンの位置との対応付けを示す投影位置情報Tと、ROI画像の照明により生じた輝度勾配を示す勾配補正情報Sとからなる情報である。この投影情報(投影位置情報Tおよび勾配補正情報S)の詳細については後記する。
【0027】
例えば、撮像系2がスチールカメラ等の静止画を入力するカメラの場合、MTF測定装置1は、通常動作モードを指定されることで、撮像系2から入力される画像(静止画)に対して、1フレーム画像分のMTFを測定する。
また、例えば、撮像系2がビデオカメラ等の動画を入力するカメラの場合、MTF測定装置1は、通常動作モードを指定されることで、撮像系2から入力される画像(動画)に対して、フレーム画像ごとに逐次MTFを測定する。
なお、通常動作モードで動画を入力する場合、CPUパワーによっては、入力されるすべてのフレーム画像でMTFを測定できない場合がある。この場合、MTF測定装置1は、投影情報を生成することが主目的として動作することになる。
【0028】
また、MTF測定装置1は、高速動作モードを指定されることで、撮像系2から入力される画像(動画)に対して、フレーム画像ごとに逐次MTFを測定する。このとき、MTF測定装置1は、事前に通常動作モードにおいて生成した投影情報を参照することで、高速にMTFを測定する。
ただし、高速動作モードは、エッジの位置や照明が、事前に行う通常動作モードと同じであることを前提とする。これによって、MTF測定装置1は、高速動作モードにおいて、エッジの検出と投影情報の生成とを省略することができる。
【0029】
なお、MTF測定装置1は、通常動作モードにおいて、フレーム画像ごとに、エッジの検出と投影情報の生成とを行って、MTFを測定することが可能なCPUパワーであれば、動作モードを分ける必要はない。
測定指示手段12は、開始、終了の測定指示をROI画像抽出手段13に出力する。また、測定指示手段12は、指定された動作モードをROI画像抽出手段13およびエッジプロファイル生成手段17に出力する。
【0030】
ROI画像抽出手段13は、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像から、ROI設定手段11で設定されたROI情報で示されるROIの領域の画像を、ROI画像として抽出するものである。
なお、ROI画像抽出手段13は、測定指示手段12から、測定の開始を指定された場合、チャート画像記憶手段10に順次記憶されるチャート画像から逐次ROI画像を抽出する。そして、動作モードとして通常動作モードが指定された場合、ROI画像抽出手段13は、抽出したROI画像を、エッジ検出手段14とエッジプロファイル生成手段17とに出力する。また、動作モードとして高速動作モードが指定された場合、ROI画像抽出手段13は、抽出したROI画像を、エッジプロファイル生成手段17に出力する。
【0031】
エッジ検出手段14は、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像から、エッジとその傾きを検出するものである。ここでは、エッジ検出手段14は、エッジ抽出手段140と、エッジ傾き検出手段141と、を備える。
【0032】
エッジ抽出手段140は、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像から、エッジを抽出するものである。このエッジ抽出手段140におけるエッジの抽出手法は、既知の手法を用いることができる。例えば、エッジ抽出手段140は、ソーベルフィルタ,ラプラシアンフィルタ,キャニーフィルタ等、画像内の輝度値の変化を強調する先鋭化フィルタをROI画像に適用し、2値化することでエッジを抽出したエッジ抽出画像を生成する。
【0033】
なお、ROI画像が任意の形状で、ROI境界がエッジとして抽出される場合、エッジ抽出手段140は、ROI境界のエッジをマスク処理によって削除することとする。例えば、エッジ抽出手段140は、ROIの形状を特定するROI情報に基づいて、ROIの輪郭線を太線化した領域に含まれるエッジを除外する。
このエッジ抽出手段140は、エッジを抽出したエッジ抽出画像をエッジ傾き検出手段141に出力する。
【0034】
エッジ傾き検出手段141は、エッジ抽出手段140でエッジを抽出したエッジ抽出画像から、エッジを直線とみなして、直交座標の予め定めた一方の座標軸(ここでは、xy座標のy軸とする)に対する傾きを検出するものである。このエッジ傾き検出手段141におけるエッジの傾き検出は、既知の手法を用いることができる。例えば、エッジ傾き検出手段141は、ハフ(Hough)変換によりエッジの傾き検出を行う。
エッジ検出手段14は、抽出したエッジ(エッジ抽出画像)と、エッジの傾き(角度)と、ROI画像とを、投影情報生成手段15に出力する。
【0035】
投影情報生成手段15は、エッジ検出手段14で検出されたROI画像のエッジおよびその傾きに基づいて、投影情報を生成するものである。ここでは、投影情報生成手段15は、ROI画像回転手段150と、投影位置対応付け手段151と、勾配補正率関数近似手段152と、勾配補正率算出手段153と、を備える。
【0036】
ROI画像回転手段150は、エッジ検出手段14で検出されたエッジの傾きに基づいて、ROI画像のエッジが投影軸に垂直となるようにROI画像を回転させるものである。
ここでは、ROI画像回転手段150は、エッジ抽出画像のエッジの中心位置を原点として、ROI画像を回転させる。
すなわち、ROI画像回転手段150は、
図4(a)に示すように、ROI画像の座標系(ここでは、uv座標系とする)を、エッジ抽出画像のエッジの中心位置と同じROI画像Rの画素位置を原点Oとする座標系(ここでは、xy座標系とする)に変換する。そして、ROI画像回転手段150は、原点Oを中心として、エッジの傾きθeだけ回転させることで、
図4(b)に示すように、エッジが投影軸(x軸)に対して垂直となるように変換する。
【0037】
このように、ROI画像を回転することで、MTF測定装置1は、チャートCHにおいて、エッジを含んだ任意の角度の領域をROIとすることができる。
なお、傾きの角度が0度,±45度,±90度の場合、すなわち、エッジが、水平方向,斜め45度方向,垂直方向の場合、ROI画像の回転に伴って、エッジの画素値が、投影軸の同じビンに投影されることになるため、エッジ法には適さない。しかし、チャートCHまたは撮像系2を傾けることで、これらの角度を避けることは容易である。もし、傾きの角度θが0度,±45度,±90度の場合、MTF測定装置1は、エラーメッセージ等を表示し、測定者がチャートCHの角度を変える等の処理を行えばよい。
【0038】
ROI画像回転手段150は、回転前の座標系(uv座標系)におけるROI画像の画素位置と、回転後の座標系(xy座標系)におけるROI画像の画素位置とを対応付けて投影位置対応付け手段151に出力する。なお、回転後の座標値は実数とする。
また、ROI画像回転手段150は、回転前後のROI画像の画素位置と、回転後のROI画像とを勾配補正率関数近似手段152に出力する。
【0039】
投影位置対応付け手段151は、ROI画像の画素位置と、当該画素位置をエッジの傾きに沿って投影した、ROI画像の画素幅よりも小さい画素幅を単位とする投影軸のビンとを対応付けるものである。
なお、ここでは、エッジが投影軸に対して垂直となるようにROI画像を回転させているため、投影位置対応付け手段151は、
図5に示すように、回転後のROI画像Rの各画素の画素位置を投影軸(x軸)のビンに対応付ける。
この投影軸のビンは、ROI画像Rの画素よりも小さいサブピクセルとし、例えば、1画素の1/4や1/8とする。
【0040】
投影位置対応付け手段151は、回転前のROI画像の各画素の画素位置と、回転後のROI画像の各画素のサブピクセル単位の投影軸のビン(サブ画素位置)と、を対応付けることで投影情報の一部である投影位置情報Tを生成する。
投影位置対応付け手段151は、生成した投影位置情報Tを投影情報記憶手段16に記憶する。
【0041】
勾配補正率関数近似手段152は、ROI画像のエッジの近傍以外の画像領域において、輝度分布の勾配補正率を一次関数で近似するものである。なお、エッジの近傍とは、エッジから予め定めた距離内の領域である。
チャートCHに均一に照明が照射されていない場合、エッジを境界として区分される2つの領域(黒領域、白領域)は、チャートCH上ではそれぞれ同じコントラストであってもROI画像の画素は輝度が異なる。なお、本手法では、チャートCH全体に対して小さい領域であるROI画像に対して、照明の影響による輝度分布の勾配補正率を、一次関数で近似する。
【0042】
例えば、
図6に示すROI画像Rは、照明によって、右の方へ行くほど輝度が高くなった状態を示しており、一方向に輝度分布が異なることを示している。
そこで、勾配補正率関数近似手段152は、
図7に示すように、エッジeの近傍(±Δ画素)で2分された画像領域の一方の輝度の高い領域(高輝度領域A
high)、および、他方の輝度の低い領域(低輝度領域A
low)の画素値から、輝度分布の勾配補正率を近似する一次関数を求める。なお、エッジeの近傍(±Δ画素)の領域(エッジ近傍領域A
mid)は、照明に関係なく画素値が変化する領域であるため、一次関数を求める対象からは除外する。なお、エッジの近傍を示す距離Δは、少なくともエッジの幅を除外する予め定めた画素数であって、例えば、10~20画素とする。
勾配補正率関数近似手段152は、画素位置(x,y)における輝度分布の勾配補正率G(x,y)を、以下の式(1)に示す一次関数で表したときの係数p
1,p
2を算出する。
【0043】
【0044】
この式(1)の一次関数の意味について、
図8を参照して説明する。なお、ここでは、説明を簡略化するため、x座標に着目して説明する。
図8は、ROI画像のあるy座標におけるx座標の画素値(輝度)の変化を示している。原点Oのx座標にエッジが存在しているものとする。この場合、x座標が高輝度領域A
highの範囲および低輝度領域A
lowの範囲では、チャートCHに均一に照明が照射されていれば、理想的には、
図8のグラフ中、点線Liで示すように、高い輝度の画素値(白相当)と低い輝度の画素値(黒相当)とでそれぞれ画素値のレベルが一定となる。
ここで、
図8は、x軸の正の方へ行くほど輝度が高くなった状態を示しており、
図8のグラフ中、実線Lrに示すように、理想の輝度のレベル(理想レベル)対してx軸正方向に画素値が増大していく。
【0045】
この場合、理想レベルの画素値を“1”としたとき、ROI画像の勾配補正率G(x)は、係数pを用いて、G(x)=1+pxで表すことができる。このG(x)は、理想レベルに補正する倍率を表すことになる。
このG(x)をxy座標系に拡張したものが、前記式(1)である。すなわち、G(x,y)は、理想レベルに近づけるためのゲインであって、(x,y)の画素値をG(x,y)倍することで理想の画素値を求めることが可能になる。
なお、エッジを原点Oの近傍に配置して輝度分布の勾配補正率を一次関数で近似することで、エッジ近傍の輝度レベルの変化を小さくして、より正確なエッジの輝度レベルでMTFを測定することができる。
図1に戻って、MTF測定装置1の構成について説明する。
【0046】
勾配補正率関数近似手段152は、前記式(1)の係数p1,p2をROI画像の画素値から算出する。
ここでは、勾配補正率関数近似手段152は、高輝度領域Ahighの各画素位置(x,y)における画素値に式(1)で算出される勾配補正率G(x、y)を乗算した値の変動係数(Coefficient of Variation)と、低輝度領域Alowの各画素位置(x,y)における画素値に式(1)で算出される勾配補正率G(x、y)を乗算した値の変動係数との和が最小となる係数p1,p2を探索する。
すなわち、勾配補正率関数近似手段152は、以下の式(2)で示す値が最小となる係数p1,p2を探索する。
【0047】
【0048】
ここで、CV(v)は、vの変動係数であって、vの標準偏差をvの平均で割った値[std(v)/mean(v)]である。
また、nhighは、高輝度領域Ahighに含まれる画素のインデックスである。v(nhigh)は、インデックスnhighに対応する画素の画素値である。G(nhigh)は、インデックスnhighに対応する画素位置(x,y)の式(1)で算出される勾配補正率である。
また、nlowは、低輝度領域Alowに含まれる画素のインデックスである。v(nlow)は、インデックスnlowに対応する画素の画素値である。G(nlow)は、インデックスnlowに対応する画素位置(x,y)の式(1)で算出される勾配補正率である。
【0049】
勾配補正率関数近似手段152が式(2)の値を最小(極小値)とする係数p1,p2の探索手法は、一般的な探索アルゴリズムを用いればよい。
例えば、勾配補正率関数近似手段152は、係数p1,p2の初期値をそれぞれ“0”とし、予め定めたステップ幅、例えば、±0.005で増減させて式(2)を計算する処理を繰り返し、式(2)の値が最小となる係数p1,p2を求める。
勾配補正率関数近似手段152は、求めた係数p1,p2を勾配補正率算出手段153に出力する。
【0050】
勾配補正率算出手段153は、勾配補正率関数近似手段152で近似された輝度分布の勾配補正率を示す一次関数を用いてROI画像の画素位置ごとの輝度分布の勾配補正率を算出するものである。
勾配補正率算出手段153は、ROI画像の画素位置(x,y)における輝度分布の勾配補正率G(x,y)を、勾配補正率関数近似手段152で求められた係数p1,p2を用いて、前記式(1)で求める。
ここでは、勾配補正率算出手段153は、回転前のROI画像の各画素のインデックス(n)と、当該画素に対応する回転後の画素位置(x,y)で算出された勾配補正率G(x,y)とを対応付けることで投影情報の一部である勾配補正情報Sを生成する。
【0051】
勾配補正率算出手段153は、生成した勾配補正情報Sを投影情報記憶手段16に記憶する。
また、投影情報生成手段15は、投影情報(投影位置情報Tおよび勾配補正情報S)を生成し、投影情報記憶手段16に記憶した段階で、エッジプロファイル生成手段17に、投影情報の生成完了を通知する。
【0052】
投影情報記憶手段16は、投影情報生成手段15で生成された投影情報(投影位置情報Tおよび勾配補正情報S)を記憶するもので、メモリ等の一般的な記憶装置である。
投影位置情報Tは、回転前のROI画像の各画素の画素位置と、投影軸(x軸)のビンとを対応付けた情報である。
勾配補正情報Sは、回転前のROI画像の各画素の画素位置と、各画素位置における輝度分布の勾配補正率とを対応付けた情報である。
この投影情報記憶手段16に記憶されている投影情報は、エッジプロファイル生成手段17によって参照される。
【0053】
エッジプロファイル生成手段17は、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像のエッジの画素分布形状を示すエッジプロファイルを生成するものである。ここでは、エッジプロファイル生成手段17は、勾配補正投影手段170と、平均化手段171と、を備える。
【0054】
勾配補正投影手段170は、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像の画素位置ごとの画素値を、輝度分布の勾配補正率で補正し、対応する投影軸のビンに投影するものである。
この勾配補正投影手段170は、投影情報記憶手段16に記憶されている勾配補正情報Sを参照して、ROI画像の各画素の画素値の勾配を補正し、投影情報記憶手段16に記憶されている投影位置情報Tを参照して、補正後の画素値を投影軸のビンに投影し、ビンごとの集合を生成する。なお、勾配補正投影手段170は、インデックスが付された各画素に対応して勾配補正情報Sとして記憶されている勾配補正率を乗算することで、勾配を補正する。
【0055】
勾配補正投影手段170は、
図9に示すように、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像Rの画素について、画素位置に対応する勾配補正率を乗算(×G)して補正された画素値をサブピクセル単位の投影軸のビンに投影する。
これによって、勾配補正投影手段170は、ROI画像の画素値を、輝度分布の勾配分だけ補正した画素値で投影軸のビンに投影することができ、照明の影響を抑えることができる。
勾配補正投影手段170は、ビンごとの画素値の集合を平均化手段171に出力する。
【0056】
平均化手段171は、勾配補正投影手段170で生成された投影軸のビンごとの画素値の集合を、ビンごとに平均化するものである。
これによって、平均化手段171は、
図10に示すように、サブピクセル単位の投影軸と画素値を対応付けたエッジの画素分布形状を示すエッジプロファイルを生成する。
平均化手段171は、生成したエッジプロファイルを周波数特性算出手段18に出力する。
【0057】
なお、エッジプロファイル生成手段17は、測定指示手段12から動作モードとして、通常動作モードを指示された場合、投影情報生成手段15から投影情報の生成完了を通知された段階で、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像からエッジプロファイルを生成する。
また、エッジプロファイル生成手段17は、測定指示手段12から動作モードとして、高速動作モードを指示された場合、投影情報生成手段15から投影情報の生成完了を待たずに、ROI画像抽出手段13で抽出されたROI画像からエッジプロファイルを生成する。
【0058】
周波数特性算出手段18は、エッジプロファイル生成手段17で生成されたエッジプロファイルからMTFを算出するものである。
この周波数特性算出手段18は、エッジプロファイル生成手段17で生成されたエッジプロファイルを微分することで、線広がり関数(LSF:Line Spread Function)を求め、そのLSFをフーリエ変換する。これによって、周波数特性算出手段18は、MTFを求めることができる。
この周波数特性算出手段18は、算出したMTFを測定結果出力手段19に出力する。
【0059】
測定結果出力手段19は、周波数特性算出手段18で算出されたMTFの測定結果を表示するものである。この測定結果出力手段19は、周波数特性算出手段18で算出されたMTFをグラフ化する。
例えば、測定結果出力手段19は、
図11に示すように、横軸を周波数(cycles/pixel)、縦軸をMTFとするグラフに対応するデータをプロットする。
測定結果出力手段19は、このグラフを表示装置3に出力して表示する。これによって、測定者は、被測定対象である撮像系2のMTFを認識することができる。
【0060】
なお、
図11中、実線のグラフL
CORRは、本発明のMTF測定装置1が出力するMTF測定結果を示している。また、
図11中、破線のグラフLが、輝度勾配を補正しない従来のMTF測定装置によるMTF測定結果を示している。
図11のグラフLに示すように、補正を行わない場合、DC(0cycles/pixel)に近い成分が輝度勾配により過小評価され、全体的にMTF特性が下がっている。
このように、MTF測定装置1は、照明による輝度勾配の影響を抑えてMTFを測定することができる。
【0061】
以上説明したようにMTF測定装置1を構成することで、MTF測定装置1は、チャートCHに均一に照明が照射されていない場合でも、照明による輝度分布の勾配の影響を抑えてMTFを測定することができる。
なお、MTF測定装置1は、図示を省略したコンピュータを、前記した各手段として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【0062】
[MTF測定装置の動作]
次に、
図12を参照(構成については適宜
図1参照)して、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1の動作について説明する。
ここでは、MTF測定装置1は、撮像系2から入力される、チャートCHを撮像したチャート画像を、逐次、チャート画像記憶手段10に記憶するとともに、表示装置3にチャート画像を表示する。以下、MTF測定装置1がチャート画像からMTFを測定する動作について詳細に説明する。なお、MTF測定装置1は、測定指示手段12によって、通常動作モードに設定されているものとする。
【0063】
ステップS1において、ROI設定手段11は、ROIの位置、大きさ等を設定する。例えば、ROI設定手段11は、表示装置3が表示しているチャート画像内において、測定者によって、任意形状の閉領域を指定されることで、ROIを設定する。
ステップS2において、ROI画像抽出手段13は、チャート画像記憶手段10が記憶するチャート画像から、ステップS1で設定されたROIの領域の画像を、ROI画像として抽出する。
【0064】
ステップS3において、エッジ検出手段14のエッジ抽出手段140は、ステップS2で抽出されたROI画像から、エッジを検出する。
ステップS4において、エッジ検出手段14のエッジ傾き検出手段141は、ステップS3で検出されたエッジを直線とみなし、エッジの傾きを計算する。
【0065】
ステップS5において、投影情報生成手段15のROI画像回転手段150は、ステップS4で検出されたエッジの傾きに基づいて、ROI画像のエッジが投影軸に垂直となるように、エッジの中心位置を原点とする座標系でROI画像を回転させる。
ステップS6において、投影情報生成手段15の投影位置対応付け手段151は、回転前のROI画像の各画素の画素位置(u,v)と、ステップS5における回転後のROI画像の各画素のサブピクセル単位の投影軸のビンの位置と、を対応付けて、投影情報の一部である投影位置情報Tを生成する。投影位置対応付け手段151は、投影位置情報Tを投影情報記憶手段16に記憶する。
【0066】
ステップS7において、投影情報生成手段15の勾配補正率関数近似手段152は、
図7に示すように、エッジの近傍(±Δ画素)以外の輝度の高い領域(高輝度領域A
high)、および、輝度の低い領域(低輝度領域A
low)の画素値から、輝度分布の勾配補正率を一次関数で近似する。すなわち、勾配補正率関数近似手段152は、前記式(2)が最小となる前記式(1)の一次関数の係数p
1,p
2を求める。
【0067】
ステップS8において、投影情報生成手段15の勾配補正率算出手段153は、ステップS7で求められた係数p1,p2を用いて、前記式(1)により、回転後のROI画像の画素位置(x,y)における輝度分布の勾配補正率G(x,y)を算出し、回転前のROI画像の画素位置(u,v)と対応付けて、投影情報の一部である勾配補正情報Sを生成する。勾配補正率算出手段153は、勾配補正情報Sを投影情報記憶手段16に記憶する。
【0068】
ステップS9において、エッジプロファイル生成手段17の勾配補正投影手段170は、投影情報(投影位置情報Tおよび勾配補正情報S)を参照して、ステップS3で抽出されたROI画像の各画素の画素値の勾配を補正し、補正後の画素値を投影軸のビンに投影し、ビンごとの集合を生成する。
ステップS10において、エッジプロファイル生成手段17の平均化手段171は、ステップS9で生成された投影軸のサブピクセル単位の画素値の集合を、ビン単位で平均化する。これによって、エッジプロファイル生成手段17は、ROI画像のエッジの画素分布形状を示すエッジプロファイルを生成することができる。
【0069】
ステップS11において、MTF測定装置1は、周波数特性算出手段18によって、ステップS10で生成されたエッジプロファイルを微分することで、線広がり関数(LSF)を求め、そのLSFをフーリエ変換することでMTFを算出する。
ステップS12において、MTF測定装置1は、測定結果出力手段19によって、ステップS11で算出されたMTFの測定結果を表示する。例えば、測定結果出力手段19は、
図11に示すように、横軸を周波数(cycles/pixel)、縦軸をMTFとするグラフに対応するデータをプロットして、表示装置3に表示する。
【0070】
以上の動作によって、MTF測定装置1は、測定者によって設定されるチャートCH上のROIでMTFを測定することができる。
これによって、MTF測定装置1は、チャートCHに均一に照明が照射されていない場合でも、照明による輝度分布の勾配を補正することで、照明による輝度分布の勾配の影響を抑えてMTFを測定することができる。
【0071】
なお、ここでは、動作モードとして通常動作モードが設定された場合の動作について説明した。動作モードとして高速動作モードが設定された場合、MTF測定装置1は、逐次、チャート画像記憶手段10に記憶されるチャート画像に対して、ステップS9からS12の動作を繰り返すこととすればよい。ただし、高速動作モードは、予め通常動作モードでステップS1からS8を動作させ、投影情報を投影情報記憶手段16に記憶し、エッジの位置や照明が、事前に行う通常動作モードと同じであることを前提とする。
【0072】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されものではない。
ここでは、MTF測定装置1は、ROI画像回転手段150によって、エッジが投影軸に直交するようにROI画像を回転させることで、任意の角度のエッジを用いたMTFの測定を可能とした。
しかし、撮像系2が、例えば、垂直に対してチャートCHのエッジを数度傾けた状態でチャートCHを撮像することを前提とした場合、必ずしもROI画像を回転させる必要はない。
【0073】
この場合、投影情報生成手段15から、ROI画像回転手段150を省略することができる。また、この場合、勾配補正率関数近似手段152は、
図13に示すように、斜めのエッジeにおいて、水平方向のエッジeの近傍(±Δ画素)の領域をエッジ近傍領域A
midとして、それより輝度の高い領域を高輝度領域A
high、輝度の低い領域を低輝度領域A
lowとすればよい。なお、
図13に示すように、勾配補正率関数近似手段152は、ROI画像R中のエッジeの中心を原点とする座標系(xy座標系)で、輝度分布の勾配補正率を一次関数で近似することが好ましい。
【符号の説明】
【0074】
1 MTF測定装置
10 チャート画像記憶手段
11 ROI設定手段
12 測定指示手段
13 ROI画像抽出手段
14 エッジ検出手段
140 エッジ抽出手段
141 エッジ傾き検出手段
15 投影情報生成手段
150 ROI画像回転手段
151 投影位置対応付け手段
152 勾配補正率関数近似手段
153 勾配補正率算出手段
16 投影情報記憶手段
17 エッジプロファイル生成手段
170 勾配補正投影手段
171 平均化手段
18 周波数特性算出手段
19 測定結果出力手段
2 撮像系
3 表示装置
CH チャート