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特許7514487センサインターフェース回路及びセンサモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】センサインターフェース回路及びセンサモジュール
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/48 20240101AFI20240704BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20240704BHJP
   H04B 5/73 20240101ALI20240704BHJP
【FI】
H04B5/48
H04B1/59
H04B5/73
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022540022
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2021017464
(87)【国際公開番号】W WO2022024488
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020129427
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征幸
(72)【発明者】
【氏名】石原 昇
(72)【発明者】
【氏名】村田 眞司
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0340411(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0328637(US,A1)
【文献】渡邉 伊織ほか,インピーダンス変換回路によるRFバックスキャッタリング信号レベルの改善,電子情報通信学会技術研究報告[オンライン],2020年06月22日,Vol. 120, No. 81,pp. 9-14,インターネット:<URL:https://www.ieice.org/ken/user/index.php?cmd=download&p=teG1&t=IEICE-SRW&l=23d4e04d7fff4b24dc4fed77fd399f3604175ab97108895d556b3ba81abc654a&lang=>
【文献】宮内 楓ほか,直交バックスキャッタリング回路技術の高スペクトラム効率化に関する研究,電子情報通信学会技術研究報告 [オンライン],2017年12月07日,Vol. 117, No. 344,p. 131,インターネット:<URL:https://www.ieice.org/ken/user/index.php?cmd=download&p=V3Ev&t=IEICE-CAS&l=5c1cfe9386b8eed5ab8c7420138767a20f2e7b0e7c249a6ff410ca624606be9a&lang=>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/00 - 5/79
H04B 1/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ノードを有するRFスイッチと、
前記制御ノードに電気的に接続され、反射特性の線形領域に対応する第1のレベル又は第2のレベルの電圧を前記制御ノードへ印加するバイアス回路と、
第1のセンサに電気的に接続可能である第1の可変発振回路と、
第2のセンサに電気的に接続可能である第2の可変発振回路と、
前記第1の可変発振回路及び前記第2の可変発振回路と前記バイアス回路との間に電気的に接続された差分回路と、
を備えたセンサインターフェース回路。
【請求項2】
前記第1の可変発振回路は、前記第1のセンサの検出値に応じて発振動作を行い、第1の信号を生成し、
前記第2の可変発振回路は、前記第2のセンサの検出値に応じて発振動作を行い、第2の信号を生成し、
前記差分回路は、前記第1の信号と前記第2の信号との差分信号に応じて、制御信号を生成し、
前記バイアス回路は、前記制御信号に応じて、前記第1のレベル及び前記第2のレベルの間で切り替えながら前記電圧を前記制御ノードへ印加する、
請求項1に記載のセンサインターフェース回路。
【請求項3】
前記差分回路に対して前記第1の可変発振回路及び前記第2の可変発振回路と並列に電気的に接続された第3の可変発振回路をさらに備えた、
請求項1に記載のセンサインターフェース回路。
【請求項4】
前記差分回路に対して前記第1の可変発振回路及び前記第2の可変発振回路と並列に電気的に接続された第3の可変発振回路をさらに備え、
前記第3の可変発振回路は、設定すべきチャネル周波数に応じて発振動作を行い、第3の信号を生成し、
前記差分回路は、前記第1の信号と前記第2の信号との差分と前記第3の信号とに応じて、制御信号を生成し、
前記バイアス回路は、前記制御信号に応じて、前記第1のレベル及び前記第2のレベルの間で切り替えながら前記電圧を前記制御ノードへ印加する、
請求項2に記載のセンサインターフェース回路。
【請求項5】
アンテナ用端子と蓄電素子との間に電気的に接続された整流回路と、
前記蓄電素子に電気的に接続された電源制御回路と、
をさらに備えた、
請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサインターフェース回路。
【請求項6】
前記電源制御回路は、第1の期間に前記第1の可変発振回路及び前記第2の可変発振回路への電力供給を遮断して前記蓄電素子に電荷を蓄積させ、第2の期間に前記蓄電素子の電荷を用いて前記第1の可変発振回路及び前記第2の可変発振回路への電力供給を行う、
請求項5に記載のセンサインターフェース回路。
【請求項7】
前記第1の可変発振回路と前記差分回路との間に電気的に接続された第1の分周回路と、
前記第2の可変発振回路と前記差分回路との間に電気的に接続された第2の分周回路と、
をさらに備えた、
請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサインターフェース回路。
【請求項8】
前記センサインターフェース回路は、半導体集積回路で構成される、
請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサインターフェース回路。
【請求項9】
前記第1の可変発振回路及び前記第2の可変発振回路のそれぞれは、
リング状に複数段のインバータが接続されたインバータチェーンと、
前記インバータチェーンにおける前記複数段のインバータに直列に接続された抵抗素子と、
前記インバータチェーンにおける前記インバータ及び前記抵抗素子と並列に接続された容量素子と、
を有し、
前記抵抗素子の両端又は前記容量素子の両端には、一対のセンサ用端子が電気的に接続される、
請求項1から8のいずれか1項に記載のセンサインターフェース回路。
【請求項10】
アンテナと、
第1のセンサと、
第2のセンサと、
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサと前記アンテナとの間に電気的に接続された請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサインターフェース回路と、
を備えたセンサモジュール。
【請求項11】
前記アンテナと前記センサインターフェース回路との間に電気的に接続されたインピーダンス変換回路をさらに備えた、
請求項10に記載のセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、センサインターフェース回路及びセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
RF(Radio Frequency)バックスキャッタ通信は、主に無線によるメモリアクセス技術として実用化され、RFID(Radio Frequency IDentifier)技術として普及している。情報収集端末から無線信号をRFIDタグに照射しRFIDタグ内のメモリに格納されたIDデータを受信した無線信号に重畳(変調)して反射させ、情報収集端末でそのID情報を受信して読み取る仕組みである。RFIDタグは無線信号を反射させるので、電力を必要とする一般的な無線回路が不要となることから電池不要の動作を可能としている。
【0003】
一方、近年のIoT(Internet of Things)技術への期待から、RFバックスキャッタ通信を利用したセンシング技術が注目されている。RFバックスキャッタ通信を利用したセンシング技術として、RFバックスキャッタ通信によりセンサの情報を収集するためのインターフェース回路が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】宮内 楓, 田口 泰地, 石川 洋介, 伊藤 浩之, 道正 志郎, 益 一哉, 石原 昇, 「RFバックスキャッタリングによる低電力ワイヤレスセンサ端末モジュールの試作評価結果」, 2018年 電子情報通信学会総合大会, 日本, 2018年3月20日-23日, B-18-17, p.361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載のインターフェース回路では、センサからの信号により可変発振回路の発振周波数を変化させた発振信号を生成し、その発振信号によりRFスイッチを制御し、RF信号を反射及び吸収させることで、RFバックスキャッタ通信を行う。このとき、インターフェース回路は、RF信号の反射及び吸収に応じた周波数成分を信号として情報収集端末へ送信する。
【0006】
例えば、RFバックスキャッタ通信では使用可能な帯域が限られており、マルチチャンネルで使用する場合があることを考慮すると、インターフェース回路には、信号の周波数精度を向上させることが望まれる。また、インターフェース回路には、高調波成分を抑制し、使用可能な帯域を確保することが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、信号の周波数精度を向上しつつ高調波成分を抑制できるセンサインターフェース回路及びセンサモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかるセンサインターフェース回路は、制御ノードを有するRFスイッチと、前記制御ノードに電気的に接続され、反射特性の線形領域に対応する第1のレベル又は第2のレベルの電圧を前記制御ノードへ印加するバイアス回路と、第1のセンサに電気的に接続可能である第1の可変発振回路と、第2のセンサに電気的に接続可能である第2の可変発振回路と、前記第1の可変発振回路及び前記第2の可変発振回路と前記バイアス回路との間に電気的に接続された差分回路と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信号の周波数精度を向上しつつ高調波成分を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールが適用された通信システム構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの構成を示す図である。
図3図3は、実施形態におけるRFスイッチを動作させるべき反射特性の線形領域を示す図である。
図4図4は、実施形態におけるインピーダンス変換回路の動作を示す図である。
図5図5は、実施形態における変調信号、受信信号、送信信号を示す図である。
図6図6は、実施形態における送信信号の周波数スペクトルを示す図である。
図7図7は、実施形態の第1の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの構成を示す図である。
図8図8は、実施形態の第1の変形例における送信信号の周波数成分を示す図である。
図9図9は、実施形態の第2の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの構成を示す図である。
図10図10は、実施形態の第2の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの動作を示すタイミングチャートである。
図11図11は、実施形態の第3の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの構成を示す図である。
図12図12は、実施形態の第4の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの構成を示す図である。
図13図13は、実施形態の第5の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの構成を示す図である。
図14図14は、実施形態の第6の変形例における可変発振回路の構成を示す図である。
図15図15は、実施形態の第7の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの実装構成を示す図である。
図16図16は、実施形態の第7の変形例に係るセンサインターフェース回路の動作のシミュレーション結果を示す図である。
図17図17は、実施形態の第7の変形例における送信信号の周波数スペクトルのシミュレーション結果を示す図である。
図18図18は、実施形態の第8の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの実装構成を示す図である。
図19図19は、実施形態の第9の変形例に係るセンサインターフェース回路を含むセンサモジュールの実装構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、センサインターフェース回路の実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
(実施形態)
実施形態にかかるセンサインターフェース回路は、RFバックスキャッタ通信に対応しており、RFバックスキャッタ通信を利用したセンシング技術に用いられる。例えば、センサインターフェース回路1を含むセンサモジュール100は、図1に示すように構成される。図1は、センサインターフェース回路1が適用されたセンサモジュール100を含む通信システム300の構成を示す図である。
【0013】
通信システム300において、複数のセンサモジュール100-1~100-n及び情報収集端末200は、RFバックスキャッタ通信が可能に構成されている。nは2以上の整数である。情報収集端末200は、RF信号を各センサモジュール100へ送信可能である。各センサモジュール100は、そのRF信号を用いて、センサの検出値に応じた信号を情報収集端末200へ送信可能である。
【0014】
各センサモジュール100は、センサ2、センサインターフェース回路1、及びアンテナ5を有する。センサインターフェース回路1は、センサ2及びアンテナ5の間に電気的に接続される。センサインターフェース回路1は、可変発振回路及びRFスイッチを有し、センサ2からの信号により可変発振回路の周波数を変化させ、その発振信号によりRFスイッチのオン・オフを制御することにより、RFバックスキャッタ通信を行う。すなわち、センサインターフェース回路1は、アンテナ5から見たRFスイッチ側のインピーダンスを変化させ、情報収集端末200からのRF信号をセンサ情報に応じて反射及び吸収させて情報収集端末200へ送信する。
【0015】
このとき、複数のセンサモジュール100-1~100-nには互いに異なるID(IDentifier)が付与されている。センサインターフェース回路1は、自センサモジュール100のIDに応じた周波数成分を信号として情報収集端末200へ送信し、センサ情報に応じた周波数成分を信号として情報収集端末200へ送信する。RF信号を受信した情報収集端末200は、IDに応じた周波数成分を観測することによってどのセンサ2であるか確認でき、センサ情報に応じた周波数成分を観測することによってそのセンサ2の状態を把握することができる。
【0016】
例えば、RFバックスキャッタ通信について、RF信号の周波数は、電波法で規定された所定の帯域に収めることが要求されている。IoTとしてのユースケースを考えた場合、通信システム300において、複数のセンサモジュール100-1~100-nの信号を互いに区別可能なようにマルチチャンネル化することも考えられる。この場合、各センサインターフェース回路1は、他のセンサモジュール100のセンサインターフェース回路1と異なる周波数の信号で送信することになる。
【0017】
しかし、環境変動等により、可変発振回路の発振周波数がばらつきRF信号の周波数がばらつくと、所定の帯域から外れたり、マルチチャンネル化が困難になったりする可能性がある。このため、インターフェース回路1には、信号の周波数精度を向上させることが望まれる。
【0018】
また、センサインターフェース回路1は、RF信号の反射特性が非線形に歪むと、RF信号の周波数スペクトルにおいて、基本波のピーク以外に高調波成分のピークが現れる。これにより、RF信号について、所定の帯域内で使用可能な帯域が制限されて、マルチチャンネル化が困難になる可能性がある。このため、インターフェース回路1には、高調波成分を抑制し、使用可能な帯域を確保することが望まれる。
【0019】
そこで、本実施形態では、センサインターフェース回路1において、センサの信号を他のセンサの信号との差分信号で生成し、その差分信号に応じてRFスイッチを反射係数が線形変化するようにバイアスさせることで、信号の周波数精度向上と高調波成分抑制とを図る。
【0020】
具体的には、センサインターフェース回路1において、
(1)一般的な無線通信回路(例えば、パワーアンプ)を不要化し、長期間の電池動作、または、電池なしでの動作が可能であること、
(2)高感度、高分解能のセンサ情報を収集できること、
(3)多種多数のセンサに対応可能であること、
(4)モノリシック集積回路化が可能で小型化が可能であること、
(5)低コストで実現できること、
を目指す。そのため、センサインターフェース回路1において、可変発振回路を複数設け、センサの信号を他のセンサの信号との差分で得られるようにする。センサインターフェース回路1において、第1のセンサに電気的に接続可能である第1の可変発振回路と、第2のセンサに電気的に接続可能である第2の可変発振回路とを設ける。第1のセンサは、その検出値を取得したいセンサであり、第2のセンサは、差分の信号を取るための基準となるセンサであり、環境に応じて検出値が変化しにくいセンサ又は第1のセンサと逆方向に検出値が変化するセンサである。センサインターフェース回路1において、第1の可変発振回路及び第2の可変発振回路の出力側に差分回路を設け、第1のセンサの検出値に応じた第1の可変発振回路からの第1の発振信号と第2のセンサの検出値に応じた第2の可変発振回路からの第2の発振信号との差分信号が差分回路で生成される。これにより、第1の可変発振回路及び第2の可変発振回路で、それぞれ、環境変動等により発振周波数がばらついても、そのばらつきの影響が抑制された差分信号を生成でき、信号の周波数精度を向上できる。差分回路は、差分信号に応じた制御信号をバイアス回路へ供給する。バイアス回路は、制御信号に応じて、反射特性の線形領域に対応する第1のレベル又は第2のレベルの電圧をRFスイッチの制御ノードへ印加する。第1のレベルは、実質的にRF信号の反射とみなせる大きな反射係数に対応し、第2のレベルは、実質的にRF信号の吸収とみなせる小さな反射係数に対応する。これにより、RFスイッチにおけるRF信号の反射・吸収の特性を線形化でき、RF信号の周波数スペクトルにおいて高調波成分を抑制できる。したがって、信号の周波数精度を向上しつつ高調波成分を抑制できる。
【0021】
より具体的には、図1に示すように、各センサモジュール100において、センサ2に加えて基準センサ3を追加する。センサ2は、その検出値を取得したいセンサである。基準センサ3は、差分の信号を取るための基準となるセンサであり、環境に応じて検出値が変化しにくいセンサである。
【0022】
なお、センサ2の信号に対して差分の信号を取るためのセンサは、環境に応じて検出値が変化しにくい基準センサ3である代わりに、環境に応じてセンサ2と同様に変化するが基準となる環境に置かれることで基準となる検出値を出力するセンサであってもよい。例えば、センサ2が照度センサである場合、差分の信号をとるためのセンサとして白色光が固定的に照射されたセンサが用いられてもよい。
【0023】
あるいは、センサ2の信号に対して差分の信号を取るためのセンサは、環境に応じて検出値が変化しにくい基準センサ3である代わりに、環境変化に対してセンサ2と逆方向に検出値が変化するセンサであってもよい。
【0024】
このとき、各センサモジュール100のセンサインターフェース回路1は、例えば、図2に示すように構成され得る。図2は、センサインターフェース回路1の構成を示す図である。センサインターフェース回路1は、可変発振回路11、可変発振回路12、差分回路18、バイアス回路15、RFスイッチ16、及び電池22を有する。差分回路18は、ミキサ回路13及びフィルタ回路14を有する。
【0025】
可変発振回路11は、センサ用端子23a、23bを介してセンサ2に電気的に接続可能であり、出力ノード11cが差分回路18のミキサ回路13に電気的に接続されている。可変発振回路12は、センサ用端子24a、24bを介して基準センサ3に電気的に接続可能であり、出力ノード12cが差分回路18のミキサ回路13に電気的に接続されている。差分回路18は、可変発振回路11及び可変発振回路12とバイアス回路15との間に電気的に接続されている。ミキサ回路13は、可変発振回路11及び可変発振回路12とフィルタ回路14との間に電気的に接続されている。フィルタ回路14は、ミキサ回路13とバイアス回路15との間に電気的に接続されている。バイアス回路15の出力ノードは、RFスイッチ16の制御ノード16aに電気的に接続されている。RFスイッチ16は、アンテナ用端子17及びグランド電位の間に電気的に接続されている。RFスイッチ16は、例えば、トランジスタNMを含む。トランジスタNMは、例えばNMOSトランジスタであり、ドレインがアンテナ用端子17に電気的に接続され、ソースがグランド電位に電気的に接続され、ゲートが制御ノード16aとして機能する。
【0026】
バイアス回路15は、図3に示すような反射特性の線形領域LRのレベルの電圧を制御ノード16aへ印加する。図3は、RFスイッチ16を動作させるべき反射特性の線形領域LRを示す図である。反射特性は、トランジスタNMのゲート電圧に応じた反射係数の変化を示す。線形領域LRは、反射特性における反射係数が線形的に変化する領域である。レベルVは、実質的にトランジスタNMをオフさせるレベルであり、RFバックスキャッタ通信における反射に相当する大きな反射係数に対応する。レベルVは、実質的にトランジスタNMをオンさせるレベルであり、RFバックスキャッタ通信における吸収に相当する小さな反射係数に対応する。
【0027】
RFスイッチ16に直接的にアンテナ5が接続される場合、RFスイッチ16としてのトランジスタNMを微細化すると、アンテナ5から見た場合のRFスイッチ16側の抵抗値Rmが大きな抵抗値Rm(例えば、500Ω)になり得る。図3に示すように、アンテナ5から見た場合のRFスイッチ16側の抵抗値がRmである場合、反射特性が点線で示すようになり、線形領域LR内におけるレベルVに対応する反射係数Γ11とレベルVに対応する反射係数Γ12との差ΔΓ=Γ11-Γ12は小さい。すなわち、RFスイッチ16側の反射特性の線形領域LR内における反射係数差の確保が困難になる。
【0028】
一方、RFスイッチ16としてのトランジスタNMのサイズを大きくすれば、RFスイッチ16のオン抵抗値がより小さな抵抗値Rm(例えば、50Ω)になり得る。図3に示すように、アンテナ5から見た場合のRFスイッチ16側の抵抗値がRm=Rmである場合、反射特性が実線で示すようになり、線形領域LR内におけるレベルVに対応する反射係数Γ21とレベルVに対応する反射係数Γ22との差ΔΓ=Γ21-Γ22が比較的大きくなる。すなわち、RFスイッチ16側の反射特性の線形領域LR内における反射係数差を大きく確保できる。しかし、RFスイッチ16としてのトランジスタNMのサイズが大きいので、センサインターフェース回路1の回路面積が増大しやすい。
【0029】
そのため、図1に示すセンサモジュール100において、センサインターフェース回路1とアンテナ5との間にインピーダンス変換回路(ZC)4を電気的に接続する。インピーダンス変換回路4は、図4に示すように、RFスイッチ16(トランジスタNM)の微細化に適した抵抗値Rmと反射係数差の確保に適した抵抗値Rmとの間のインピーダンス変換を行う。図4は、インピーダンス変換回路4の動作を示す図である。これにより、RFスイッチ16としてのトランジスタNMを微細化しながら(すなわちオン抵抗値をRmとしながら)、アンテナ5から見たRFスイッチ16側の抵抗値をRmとすることができ、RFスイッチ16側の反射特性の線形領域LR内における反射係数差を大きく確保できる。
【0030】
図2に示すセンサインターフェース回路1は、2つの可変発振回路11,12を具備する。可変発振回路11,12のそれぞれの発振周波数は、センサ2および基準センサ3により設定される。可変発振回路11は、センサ2の検出値に応じて発振動作を行い、周波数fsを有する発振信号Sを生成する。可変発振回路12は、基準センサ3の検出値に応じて発振動作を行い、周波数frefを有する発振信号Srefを生成する。
【0031】
例えば、センサ2の検出値が高い値d1である場合、可変発振回路11は、d1に応じた周波数fs=fs1を有する発振信号Sを生成する。センサ2の検出値が低い値d2(<d1)である場合、可変発振回路11は、d2に応じた周波数fs=fs2(<fs1)を有する発振信号Sを生成する。いずれの場合も、可変発振回路12は、同様な周波数frefを有する発振信号Srefを生成する。
【0032】
ミキサ回路13は、周波数fsを有する発振信号Sを可変発振回路11から受け、周波数frefを有する発振信号Srefを可変発振回路12から受け、周波数fs-frefの発振信号S1と周波数fs+frefの発振信号S2とを生成する。フィルタ回路14は、ミキサ回路13の出力から周波数fs-frefの発振信号S1を変調信号として抽出してバイアス回路15へ供給する。フィルタ回路14は、その通過帯域に周波数fs-frefを含み周波数fs+frefを含まないローパスフィルタ又はバンドパスフィルを用いることができる。すなわち、差分回路18は、可変発振回路11からの発振信号Sと可変発振回路12からの発振信号Srefとの差分を取り、周波数fs-frefを有する変調信号を生成する。変調信号のデューティ比は、略50%であってもよい。
【0033】
例えば、センサ2の検出値が高い値d1であり、可変発振回路11がd1に応じた周波数fs=fs1を有する発振信号Sを生成する場合、差分回路18は、図5(a)に示すような周波数fs1-frefを有する変調信号を生成する。周期TP1は、周波数fs1-frefに対応する周期である。
【0034】
センサ2の検出値が低い値d2(<d1)であり、可変発振回路11がd2に応じた周波数fs=fs2を有する発振信号Sを生成する場合、差分回路18は、図5(b)に示すような周波数fs2-fref(<fs1-fref)を有する変調信号を生成する。周期TP2は、周波数fs2-frefに対応する周期であり、周期TP1より長い周期である。
【0035】
図2に示すバイアス回路15は、自センサモジュール100のIDに応じて、RFスイッチ16をオン・オフし信号反射を制御する。また、バイアス回路15は、周波数fs-frefを有する変調信号を差分回路18から受けると、変調信号に応じて、RFスイッチ16をオン・オフし信号反射を制御する。
【0036】
例えば、センサ2の検出値が高い値d1であり、可変発振回路11がd1に応じた周波数fs=fs1を有する発振信号Sを生成する場合、RFスイッチ16は、図5(a)に示す変調信号に応じてオン・オフし、アンテナ5の「受信信号」が「送信信号」として示すように反射・吸収される。この反射・吸収の周期は、周期TP1に略等しい。
【0037】
センサ2の検出値が低い値d2(<d1)であり、可変発振回路11がd2に応じた周波数fs=fs2を有する発振信号Sを生成する場合、RFスイッチ16は、図5(b)に示す変調信号に応じてオン・オフし、アンテナ5の「受信信号」が「送信信号」として示すように反射・吸収される。この反射・吸収の周期は、周期TP2(>TP1)に略等しい。
【0038】
これを送信信号の周波数特性についてみると、図6のようになる。図6は、送信信号の周波数スペクトルを示す図である。RFスイッチ16は、RFミキサとして振る舞うので、差分回路の出力fs-frefが周波数fRF付近のRF帯へアップコンバージョンされる。
【0039】
例えば、センサ2の検出値が高い値d1であり、可変発振回路11がd1に応じた周波数fs=fs1を有する発振信号Sを生成する場合、送信信号の周波数スペクトルは、図6(a)に示すようになる。図6(a)に示す周波数スペクトルでは、周波数fRFを有するキャリア成分に加えて、周波数fRF-(fs1-fref)を有する信号成分と周波数fRF+(fs1-fref)を有する信号成分とが現れている。
【0040】
センサ2の検出値が低い値d2(<d1)であり、可変発振回路11がd2に応じた周波数fs=fs2を有する発振信号Sを生成する場合、送信信号の周波数スペクトルは、図6(b)に示すようになる。図6(b)に示す周波数スペクトルでは、周波数fRFを有するキャリア成分に加えて、周波数fRF-(fs2-fref)を有する信号成分と周波数fRF+(fs2-fref)を有する信号成分とが現れている。
【0041】
情報収集端末200は、センサ2の検出値と発振周波数との対応関係を示すセンサ情報と基準の周波数frefの情報とを有していてもよい。図6(a)、図6(b)に示されるように、センサモジュール100からのRF信号を受信した情報収集端末200は、RF信号の周波数スペクトルにおける信号成分の周波数とキャリア成分の周波数fRFとの差分を求めることができる。情報収集端末200は、その差分と基準の周波数frefとに応じて、可変発振回路11の発振周波数fsを求めることができ、その発振周波数fsとセンサ情報とに応じて、センサ2の検出値を求めることができる。
【0042】
図2に示すセンサインターフェース回路1の構成では、センサ2に対応した発振信号と基準センサ3に対応した発振信号との差分を取ることにより、センサ2に対応した発振信号に印加される外来雑音や温度依存性によるノイズ成分をキャンセルでき、高精度、高分解能のセンシング動作が可能となる。また、差信号をバックスキャッタ制御信号として用いることにより、狭い帯域でのセンシング動作が可能となる。発振周波数の異なる複数のセンサモジュールの情報を周波数軸上に多数展開することが可能なる。また、本構成では、インピーダンス変換回路(ZC)4をアンテナ5とRFスイッチ16との間に付加することにより、大きな反射係数差をえることができる。一般的なインピーダンス50Ωのアンテナを直結させた場合は、オン抵抗を50Ωと小さくするためにRFスイッチ16(トランジスタNM)のサイズを大きくする必要があるが、50Ωのインピーダンスを高抵抗に変換するインピーダンス変換回路4を付加し、高抵抗に対して反射させることによって、RFスイッチ(トランジスタ)のサイズを小さくしながら大きな反射係数差を確保でき、通信の長距離伝送化が可能となる。このインピーダンス変換回路4はインダクタとキャパシタとの組合せで実現できるため、変換動作に電力を必要としない。また、バイアス回路15は、RFスイッチ16としてのトランジスタNMのゲートを線形領域にバイアスし、線形に反射係数を変化させる。これにより、RFスイッチ16としてのトランジスタNMのスイッチング時における高調波成分等のスプリアス信号の発生を抑圧できる。
【0043】
なお、可変発振回路11及び可変発振回路12は、それぞれ、電池22から電源電力が供給可能に構成されている。可変発振回路11及び可変発振回路12は、それぞれ、差分信号の生成に適した低い周波数の発振動作を行うので、消費電力が低くなる。センサインターフェース回路1は、情報収集端末200からのRF信号の反射・吸収によるパッシブ無線通信を行うので、パワーアンプ等の電力消費が大きな回路が不要であり、全体的に消費電力が小さい。このため、電池22を長時間動作させることが可能である。
【0044】
以上のように、本実施形態では、センサインターフェース回路1において、センサ2の信号を基準センサ3等の他のセンサの信号との差分信号で生成し、その差分信号に応じてRFスイッチ16を反射係数が線形変化するようにバイアスさせる。これにより、環境変動等によりセンサ2に対応する可変発振回路11の発振周波数がばらついた場合に、そのばらつきの影響を差分信号で抑制できる(例えば、キャンセルできる)。この結果、差分信号に応じてRFスイッチ16をオン・オフにさせることにより、RF信号の反射・吸収に応じた信号の周波数精度を向上できる。また、RFスイッチ16のオン・オフを反射特性の線形変化領域で行わせることができ、送信信号に高調波成分が含まれることを抑制できる。したがって、RF信号を所定の帯域に容易に収めることができ、高感度、高分解能のセンサ情報を収集でき、多種多数のセンサに対応可能である。
【0045】
なお、通信システム300において、情報収集端末200は、時分割方式で、複数のセンサモジュール100-1~100-nへRF信号を送信してもよい。この場合、情報収集端末200は、センサモジュール100からのRF信号を受信した際に、IDに応じた周波数成分を観測することによってどのセンサ2であるか確認でき、センサ情報に応じた周波数成分を観測することによってそのセンサ2の状態を把握することができる。
【0046】
(実施形態の第1の変形例)
あるいは、通信システム300における複数のセンサモジュール100i-1~100i-nには、互いに異なるIDが付与される代わりに、互いに異なるチャネル周波数fch1~fchnが割り当てられていてもよい。例えば、センサインターフェース回路1iは、図7に示すように構成され得る。図7は、実施形態の第1の変形例に係るセンサインターフェース回路1iを含むセンサモジュール100iの構成を示す図である。
【0047】
センサインターフェース回路1iは、差分回路18(図2参照)に代えて差分回路18iを有し、チャネル設定用発振回路21iをさらに有する。チャネル設定用発振回路21iには、自センサモジュール100iに対応したチャネル周波数fchが予め設定されている。差分回路18iは、ミキサ回路19iをさらに有する。ミキサ回路19iは、ミキサ回路13とフィルタ回路14との間に電気的に接続されている。なお、差分回路18iは、ミキサ回路19iとフィルタ回路14との間にミキサ回路13が電気的に接続された構成であってもよい。
【0048】
例えば、センサモジュール100i-1において、チャネル設定用発振回路21iには、チャネル周波数fch=fch1が予め設定されている。ミキサ回路19iは、周波数fs-frefの発振信号S1と周波数fs+frefの発振信号S2とをミキサ回路13から受け、周波数fch1を有する発振信号Schをチャネル設定用発振回路21iから受け、周波数fch1±(fs-fref)の発振信号S1’と周波数fch1±(fs+fref)の発振信号S2’とを生成する。フィルタ回路14は、ミキサ回路19iの出力から周波数fch1±(fs-fref)の発振信号S1’を変調信号として抽出してバイアス回路15へ供給する。バイアス回路15は、周波数fch1±(fs-fref)の変調信号に応じて、RFスイッチ16をオン・オフし信号反射を制御する。これにより、送信信号の周波数スペクトルは、図8に示すように、周波数fRFを有するキャリア成分に加えて、帯域FB_100i-1に周波数fRF-fch1±(fs1-fref)を有する信号成分が現れ、帯域FB’_100i-1に周波数fRF+fch1±(fs1-fref)を有する信号成分が現れている。帯域FB_100i-1,FB’_100i-1は、センサモジュール100i-1用の帯域である。
【0049】
同様に、センサモジュール100i-nにおいて、チャネル設定用発振回路21iには、チャネル周波数fch=fchn(≠fch1)が予め設定されている。ミキサ回路19iは、周波数fs-frefの発振信号S1と周波数fs+frefの発振信号S2とをミキサ回路13から受け、周波数fchnを有する発振信号Schをチャネル設定用発振回路21iから受け、周波数fchn±(fs-fref)の発振信号S1’と周波数fchn±(fs+fref)の発振信号S2’とを生成する。フィルタ回路14は、ミキサ回路19iの出力から周波数fchn±(fs-fref)の発振信号S1’を変調信号として抽出してバイアス回路15へ供給する。バイアス回路15は、周波数fchn±(fs-fref)の変調信号に応じて、RFスイッチ16をオン・オフし信号反射を制御する。これにより、送信信号の周波数スペクトルは、図8に示すように、帯域FB_100i-nに周波数fRF-fchn±(fs1-fref)を有する信号成分が現れ、帯域FB’_100i-nに周波数fRF+fchn±(fs1-fref)を有する信号成分が現れている。帯域FB_100i-n,FB’_100i-nは、センサモジュール100i-n用の帯域である。
【0050】
このように、通信システム300における複数のセンサモジュール100i-1~100i-nに互いに異なるチャネル周波数fch1~fchnが割り当てられることで、マルチチャンネル化が可能となる。これにより、複数のセンサモジュール100i-1~100i-nから情報収集端末200へセンサの検出値に応じた信号を同時に送信することができ、情報収集端末200におけるセンサ情報の効率的な収集が可能となる。
【0051】
(実施形態の第2の変形例)
あるいは、各センサモジュール100jは、図9に示すように、RF信号のエネルギーがセンサインターフェース回路1jへ充電され得るように構成されていてもよい。図9は、実施形態の第2の変形例に係るセンサインターフェース回路1jを含むセンサモジュール100jの構成を示す図である。
【0052】
実施形態又は実施形態の第1の変形例では、可変発振回路11,12の動作周波数は、センサ値の変化に追従できる低周波信号とすることができる。このため、図2図7に示すセンサインターフェース回路1,1iは、基本的に低消費電力での動作が可能である。このことから、微弱な環境エネルギーを利用しても動作が可能であると考えられる。
【0053】
このような考えに基づき、図9に示すように、センサモジュール100jにおいて、センサインターフェース回路1jとアンテナ5との間にカップリング容量6jが電気的に接続される。カップリング容量6jは、一端がアンテナ5に電気的に接続され、他端がセンサインターフェース回路1jのアンテナ用端子25jに電気的に接続される。センサインターフェース回路1jは、昇圧/整流回路26j及び電源制御回路27jをさらに有する。昇圧/整流回路26jは、アンテナ用端子25jと蓄電素子Ccとの間に電気的に接続されている。電源制御回路27jは、蓄電素子Ccと可変発振回路11,12との間に電気的に接続されている。蓄電素子Ccは、例えば容量素子であり、一端が昇圧/整流回路26j及び電源制御回路27jを接続するラインに電気的に接続され、他端がグランド電位に電気的に接続されている。図9は、実施形態の第2の変形例に係るセンサインターフェース回路1jの構成を示す図である。
【0054】
昇圧/整流回路26jは、アンテナ5からカップリング容量6jを介して伝達されたRF信号を昇圧するとともに整流して蓄電素子Ccへ供給する。電源制御回路27jは、第1の期間に可変発振回路11,12への電力供給を遮断して蓄電素子Ccに電荷を蓄積させる。電源制御回路27jは、第2の期間に蓄電素子Ccの電荷を用いて可変発振回路11,12への電力供給を行う。
【0055】
すなわち、センサインターフェース回路1jにおいて、情報収集端末200からの電磁波(RF信号)を昇圧/整流しエネルギーを蓄電素子Ccに蓄え、電源制御回路27jにより所定の電力が蓄えられたら、可変発振回路11,12で構成されるセンサ回路への電力供給を可能としている。この構成により、電池22なしでのセンサモジュール100jの動作(バッテリレス動作)が可能となる。
【0056】
例えば、バッテリレス動作は、図10に示すように行われる。図10は、実施形態の第2の変形例に係るセンサインターフェース回路1jの動作を示すタイミングチャートである。
【0057】
充電モードにおいて、センサインターフェース回路1jは、可変発振回路11,12への電力供給を遮断しており、RF信号を昇圧/整流して蓄電素子Ccへ供給する。蓄電素子CcにはRF信号に応じた電荷が充電され、蓄電素子Ccの電圧が上昇していく。蓄電素子Cc(例えば、容量素子)の電圧が閾値電圧VRHを超え、閾値電圧VRHに対応したエネルギーが蓄電素子Ccに蓄えられると、タイミングt1において、蓄電素子Ccからの電荷の放電が開始される。すなわち、蓄電素子Ccから電源制御回路27j経由で可変発振回路11,12への電力供給が開始され、可変発振回路11,12を含むセンサ回路の電源がオンとなる。これにより、センサインターフェース回路1jの動作モードが充電モードからセンシングモードへ移行し、バックスキャッタ動作が開始される。すなわち、センサ2,3の検出値に応じて可変発振回路11,12が発振信号を生成し、それらの発振信号の差分に応じた制御信号が差分回路18で生成され、その制御信号に応じてバイアス回路15がRFスイッチ16をオン・オフ制御する。これにより、RF信号の反射・吸収による送信信号が情報収集端末200へ送信される。
【0058】
蓄電素子Ccの電圧が閾値電圧VRLを下回り、蓄電素子Ccに蓄えられたエネルギーが閾値電圧VRLに対応したエネルギーよりも減少すると、タイミングt2において、可変発振回路11,12への電力供給が遮断され、可変発振回路11,12を含むセンサ回路はオフとなる。これにより、センサインターフェース回路1jの動作モードがセンシングモードから充電モードへ移行する。充電モードにおいて、再び、蓄電素子Ccへ電荷が充電され、蓄電素子Ccの電圧が上昇していく。
【0059】
図10に示すように、充電モードとセンシングモードとの繰り返しにより、間欠的なバッテリレスのセンシング動作が可能となる。センサ情報は、センシングモード時の信号をモニタすることにより取得できる。
【0060】
このように、センサモジュール100jにおいて、RF信号のエネルギーの一部をセンサインターフェース回路1jへ充電可能であるので、バッテリレス動作化が可能である。これにより、電池交換及びそれに関連するメンテナンスが不要となるので、メンテナンスフリー化が可能である。
【0061】
(実施形態の第3の変形例)
あるいは、各センサモジュール100kは、図11に示すように、実施形態の第1の変形例の構成と実施形態の第2の変形例の構成とが組み合わせられて構成されてもよい。図11は、実施形態の第3の変形例に係るセンサインターフェース回路1kを含むセンサモジュール100kの構成を示す図である。すなわち、センサモジュール100kにおいて、センサインターフェース回路1kとアンテナ5との間にカップリング容量6jが電気的に接続される。センサインターフェース回路1kは、差分回路18(図2参照)に代えて差分回路18iを有し、チャネル設定用発振回路21i、昇圧/整流回路26j及び電源制御回路27jをさらに有する。差分回路18i及びチャネル設定用発振回路21iのそれぞれの詳細は、実施形態の第1の変形例と同様である。カップリング容量6j、昇圧/整流回路26j及び電源制御回路27jのそれぞれの詳細は、実施形態の第2の変形例と同様である。
【0062】
このように、通信システム300における複数のセンサモジュール100k-1~100k-nに互いに異なるチャネル周波数fch1~fchnが割り当てられることで、マルチチャンネル化が可能となる。また、各センサモジュール100kにおいて、RF信号のエネルギーの一部をセンサインターフェース回路1kへ充電可能であるので、バッテリレス動作化が可能である。これにより、複数のセンサモジュール100k-1~100k-nからのセンサ情報の収集をバッテリレス動作で実現することができる。
【0063】
(実施形態の第4の変形例)
あるいは、各センサモジュール100pは、図12に示すように、センサ2,3の検出値を高分解能で取得可能に構成されていてもよい。図12は、実施形態の第4の変形例に係るセンサインターフェース回路1pを含むセンサモジュール100pの構成を示す図である。
【0064】
IoTとしてのユースケースを考えた場合、環境に応じたセンサ2の信号変化が微弱なことがある。微弱な信号変化であっても、信号取得における時間方向の分解能を向上させて、信号変化に応じた大きな周波数変化を高速に生成しつつそれを時間平均すれば、ノイズ成分の影響を抑制しながら、実施形態と同等レベルの差分信号を高精度に生成できると期待される。
【0065】
このような考えに基づき、図12に示すように、センサインターフェース回路1pは、可変発振回路11及び可変発振回路12(図2参照)に代えて可変発振回路11p及び可変発振回路12pを有し、分周回路28p及び分周回路29pをさらに有する。
【0066】
可変発振回路11pは、センサ2の検出値に対して実施形態の可変発振回路11より高い周波数fhs(>fs)の発振信号Sを生成する。分周回路28pは、可変発振回路11pと差分回路18との間に電気的に接続されている。分周回路28pの分周比はfhs/(fs)である。分周回路28pは、可変発振回路11pの発振信号Sを分周し、周波数fsを有する分周信号DSを生成して差分回路18のミキサ回路13へ供給する。
【0067】
可変発振回路12pは、基準センサ3の検出値に対して実施形態の可変発振回路12より高い周波数fhref(>fref)の発振信号Srefを生成する。分周回路29pは、可変発振回路12pと差分回路18との間に電気的に接続されている。分周回路29pの分周比はfhref/(fref)である。分周回路29pは、可変発振回路12pの発振信号Srefを分周し、周波数frefを有する分周信号DSrefを生成して差分回路18のミキサ回路13へ供給する。
【0068】
ここで、分周回路28p,29pによる分周動作は発振信号に対して平均化動作(積分動作)となるため、センシングの高分解能動作化が可能となる。センサ2,3の検出値に対する可変発振回路11p,12pの発振周波数の割合を高めに設定すると、微小なセンサインピーダンスの変化に対して大きな周波数変化を示す発振信号を得ることができる。この大きな周波数変化を示す発振信号を分周し、差信号を取ることによりジッタ雑音の少ない高分解能動作の実現が可能となる。
【0069】
このように、センサモジュール100pにおいて、可変発振回路11p及び可変発振回路12pで高分解能の発振動作を行いながら、それによる高周波数の発振信号を分周回路28p,29pで時間平均するので、実施形態と同等レベルの差分信号を高精度に生成できる。これにより、センサモジュール100pを高精度化でき、高分解能化でき、センサモジュール100pを低雑音動作化することができる。
【0070】
(実施形態の第5の変形例)
あるいは、各センサモジュール100qは、図13に示すように、実施形態の第1の変形例の構成と実施形態の第4の変形例の構成とが組み合わせられて構成されてもよい。図13は、実施形態の第5の変形例に係るセンサインターフェース回路1qを含むセンサモジュール100qの構成を示す図である。すなわち、センサインターフェース回路1qは、差分回路18(図12参照)に代えて差分回路18iを有し、チャネル設定用発振回路21iをさらに有する。差分回路18i及びチャネル設定用発振回路21iのそれぞれの詳細は、実施形態の第1の変形例と同様である。
【0071】
このように、通信システム300における複数のセンサモジュール100q-1~100q-nに互いに異なるチャネル周波数fch1~fchnが割り当てられる。また、各センサモジュール100qにおいて、可変発振回路11p及び可変発振回路12pで高分解能の発振動作を行いながら、それによる高周波数の発振信号を分周回路28p,29pで時間平均するので、実施形態と同等レベルの差分信号を高精度に生成できる。これにより、周波数スペクトルにおいて、キャリア成分の周波数fRFからの各センサモジュール100qの帯域(図8参照)までの周波数方向の距離を近づけることができ、マルチチャンネル化が容易になる。
【0072】
あるいは、図示しないが、各センサモジュールは、実施形態の第3の変形例の構成と実施形態の第4の変形例の構成とが組み合わせられて構成されてもよい。
【0073】
(実施形態の第6の変形例)
あるいは、各センサインターフェース回路1において、各可変発振回路11,12は、図14に示すような弛張型の発振回路であってもよい。図14は、実施形態の第6の変形例における可変発振回路11,12の構成を示す図である。図14(a)は、可変発振回路11,12に接続すべきセンサ2,基準センサ3が抵抗型のセンサである場合を例示し、図14(b)は、可変発振回路11,12に接続すべきセンサ2,基準センサ3が容量型のセンサである場合を例示する。
【0074】
可変発振回路11,12は、インバータチェーン111、抵抗素子R、及び容量素子Cを有する。インバータチェーン111は、リング状に接続された複数段のインバータInv1~Inv3を含む。インバータInvの段数は、奇数段であり、例えば3段である。初段のインバータInv1の出力ノードは、次段のインバータInv2の入力ノードに電気的に接続されている。最終段のインバータInv3の出力ノードは、可変発振回路11,12の出力ノードNoutと初段のインバータInv1の入力ノードとにそれぞれ電気的に接続されている。抵抗素子Rは、インバータチェーン111における複数段のインバータInv1~Inv3に直列に電気的に接続される。図14(a)、図14(b)では、抵抗素子RがインバータInv1の出力ノードとインバータInv2の入力ノードとの間に電気的に接続された構成が例示されている。容量素子Cは、インバータチェーン111におけるインバータInv及び抵抗素子Rと並列に接続される。図14(a)、図14(b)では、容量素子Cが初段のインバータInv1及び抵抗素子Rの直列接続に対して並列に接続された構成が例示されている。
【0075】
センサ2,基準センサ3が抵抗型のセンサである場合、図14(a)に示すように、抵抗素子Rの両端にセンサ用端子を介してセンサ2,3が電気的に接続される。センサ2,基準センサ3の一端はセンサ用端子23a,24aを介して抵抗素子Rの一端側のノードNに電気的に接続され、センサ2,基準センサ3の他端はセンサ用端子23b,24bを介して抵抗素子Rの他端側のノードNに電気的に接続される。センサ2,3は、等価的に、その検出値に応じて抵抗値が可変する可変抵抗素子Rsとして機能する。可変抵抗素子Rsの抵抗値が変化することで、ノードN及びノードN間の合成抵抗値Rall=(R・Rs)/(R+Rs)が変化し、合成抵抗値Rallと容量素子Cの容量値Cとの時定数{(R・Rs)/(R+Rs)}×Cが変化する。
【0076】
センサ2,基準センサ3が容量型のセンサである場合、図14(b)に示すように、容量素子Cの両端にセンサ用端子を介してセンサ2,基準センサ3が電気的に接続される。センサ2,基準センサ3の一端はセンサ用端子23a,24aを介して容量素子Cの一端側のノードN11に電気的に接続され、センサ2,基準センサ3の他端はセンサ用端子23b,24bを介して容量素子Cの他端側のノードN12に電気的に接続される。センサ2,基準センサ3は、等価的に、その検出値に応じて容量値が可変する可変容量素子Csとして機能する。可変容量素子Csの容量値が変化することで、ノードN11及びノードN12間の合成容量値Call=C+Csが変化し、抵抗素子Rの抵抗値と合成容量値Callとの時定数R×(C+Cs)が変化する。
【0077】
図14(a)、図14(b)に示す可変発振回路11,12は、インバータ3段によるリング構成で低電源電圧での低消費電力動作が可能な構成である。可変発振回路11,12は、弛張型の発振動作を行う。可変発振回路11,12において、抵抗素子及び容量素子の時定数に応じた充電速度で容量素子の一端に電荷が充電されていく。容量素子の電圧がインバータInv2のHレベルの閾値を超えると、インバータInv2の出力がLレベル、インバータInv3の出力がHレベル、インバータInv1の出力がLレベルとなり、抵抗素子及び容量素子の時定数に応じた放電速度で容量素子の一端から電荷が放電される。容量素子の電圧がインバータInv2のLレベルの閾値を下回ると、インバータInv2の出力がHレベル、インバータInv3の出力がLレベル、インバータInv1の出力がHレベルとなり、再び、容量素子の一端に電荷が充電されていく。容量素子の一端に電荷の充電・放電が交互に繰り返されることで、弛張型の発振動作が実現される。
【0078】
すなわち、可変発振回路11,12の発振周波数は、抵抗素子と容量素子の時定数により決定できる。時定数は、図14(a)の場合であれば、{(R・Rs)/(R+Rs)}×Cで、図14(b)の場合であれば、R×(C+Cs)で表され得る。本構成では、容量端子の一端がグランド電位へ接続される一般的なローパスフィルタ構成ではなく、容量端子の一端が帰還ループに接続された構成になっている。これにより、低消費電力での安定動作を実現している。この回路に、図14(a)に示すように抵抗型のセンサ2,基準センサ3を抵抗素子Rの両端に接続したり、図14(b)に示すように容量型のセンサ2,基準センサ3を容量素子Cの両端に接続したりすることにより、センサ2,基準センサ3の状態に応じた発振信号を得ることができる。
【0079】
仮に、図14(a)、図14(b)に示す構成において、インバータの段数を1段少なく、例えば2段にして抵抗素子Rと容量素子Cとを入れ替えた第1の構成を考える。第1の構成では、インバータの段数が少ない分、低消費電力動作化に有利であるが、抵抗素子の抵抗値が低くなる、または、容量素子の容量値が大きくなると、2段のインバータの動作が分離されてしまい動作が不安定となりやすく、寄生発振を生じやすい。これにより、第1の構成では、寄生発振を避けようとすると、接続可能なセンサの抵抗値又は容量値の範囲が制限されてしまい、適用可能なセンサの抵抗値又は容量値のダイナミックレンジの確保が困難になる。
【0080】
それに対して、図14(a)、図14(b)に示す構成では、インバータの段数の増加が1段程度で済み、低消費電力動作化が可能である。また、抵抗素子の抵抗値が低くなる、または、容量素子の容量値が大きくなる場合に、奇数段(例えば、3段)のインバータにより弛張型の発振動作が安定して行われるので、接続可能なセンサの抵抗値又は容量値の範囲を広く確保できる。したがって、図14(a)、図14(b)に示す構成によれば、低消費電力動作化が可能であり、且つ、適用可能なセンサの抵抗値又は容量値のダイナミックレンジを広く確保できる。
【0081】
(実施形態の第7の変形例)
あるいは、各センサモジュール100rでは、図15に示すように、センサインターフェース回路1rが半導体集積回路で構成されてもよい。図15は、実施形態の第7の変形例に係るセンサインターフェース回路1rを含むセンサモジュール100rの実装構成を示す図である。実施形態及び実施形態の第1の変形例~第6の変形例に係るセンサインターフェース回路は、いずれも、モノリシック又は複数チップでの集積回路化が可能である。図15では、実施形態の第3の変形例に係るセンサインターフェース回路1kがモノリシック集積回路化された場合の実装構成が例示されている。図15は、トランジスタレベルの設計結果を示すスケマティック図を例示している。
【0082】
図15に示すセンサインターフェース回路1rは、半導体チップ7rに搭載される。半導体チップ7rは、メイン回路領域7r1、サブ回路領域7r2、電源回路領域7r3を有する。
【0083】
メイン回路領域7r1には、RFスイッチ16、BPF(Band Pass Filter)回路8、インバータ9、ミキサ回路13、ミキサ回路19i、可変発振回路11が配される。BPF回路8は、入力側に配されるフィルタ回路14と出力側に配されるバイアス回路15とを含む。可変発振回路11には、端子S1,S2,S3を介してセンサ2が電気的に接続される。センサ2は、抵抗素子2a及び容量素子2bを含む。センサ2が抵抗型センサである場合、抵抗素子2aは可変抵抗素子である。
【0084】
サブ回路領域7r2には、可変発振回路12、チャネル設定用発振回路21iが配される。可変発振回路12には、端子S11,S12,S13を介して基準センサ3が電気的に接続される。基準センサ3は、抵抗素子3a及び容量素子3bを含む。チャネル設定用発振回路21iには、端子XT,XTOを介して水晶等の原発振器が電気的に接続される。
【0085】
電源回路領域7r3には、昇圧/整流回路26j、電源制御回路27jが配される。昇圧/整流回路26jは、CP(Charge Pump)回路26j1を含む。電源制御回路27jは、入力側に配されるPM(Power Management)回路27j1と出力側に配されるREG(REGulator)回路27j2とを含む。昇圧/整流回路26jは、端子RFIN、インダクタ6j1、キャパシタ6jを介してアンテナ5に電気的に接続されている。蓄電素子Cc(容量素子)は、昇圧/整流回路26j及び電源制御回路27jの間のノード41に、端子VDDを介して電気的に外部接続されている。電源制御回路27jは、端子VDD_OSCに外部接続された容量素子を介してメイン回路領域7r1へ電源供給が可能であり、端子VDD_OSC2に外部接続された容量素子を介してサブ回路領域7r2へ電源供給が可能である。
【0086】
RFスイッチ16は、トランジスタNMを含む。トランジスタNMは、ゲートがバイアス回路15に電気的に接続され、ソースがグランド電位に接続され、ドレインが端子RFBSを介してインピーダンス変換回路4に電気的に接続されている。
【0087】
インピーダンス変換回路4は、インダクタ4a,4bを有する。インダクタ4aは、一端が端子RFBSに電気的に接続され、他端がノード4cに電気的に接続されている。インダクタ4bは、一端がグランド電位に電気的に接続され、他端がノード4cに電気的に接続されている。ノード4cは、アンテナ5に電気的に接続されている。
【0088】
図15に示すようにインピーダンス変換回路4が端子RFBSを介してトランジスタNMに電気的に外部接続されることにより、トランジスタNMのサイズ(W×L、W:ゲート幅、L:ゲート長)を小さくすることができる。
【0089】
図15に示す実装構成について、その動作についてシミュレーションした結果を図16及び図17に示す。図16は、実施形態の第7の変形例に係るセンサインターフェース回路1rの動作のシミュレーション結果を示す図である。図17は、実施形態の第7の変形例における送信信号の周波数スペクトルのシミュレーション結果を示す図である。
【0090】
図16に示すように、2つの可変発振回路11,12は、電源電圧1Vで、約500kHzの発振が可能であり、その発振信号S,Srefがそれに応じた比較的低い周波数を有する。ミキサ回路13、ミキサ回路19i、フィルタ回路14を含む差分回路18i(図11参照)は、比較的低い周波数で変調信号を生成する。この変調信号に応じてバイアス回路15がRFスイッチ16をオン・オフ制御し、RF信号の反射・吸収による送信信号が情報収集端末200へ送信される。
【0091】
図17は、1GHzのRF信号の照射を想定した時の反射信号特性のシミュレーション結果を示す。アンテナ条件は、損失ゼロの理想状態を想定した。送信信号の周波数スペクトルには、図17に点線で囲った部分に信号成分のピークが現れる。すなわち、送信信号の周波数スペクトルには、周波数fRFを有するキャリア成分に加えて、帯域FBに周波数fRF-fch±(fs-fref)を有する信号成分が現れ、帯域FB’に周波数fRF+fch±(fs-fref)を有する信号成分が現れている。帯域FB,FB’は、センサモジュール100r用の帯域である。
【0092】
なお、図16及び図17に示すシミュレーション結果では、消費電力は、100μW未満で、-10dBm以上のRF信号の照射エネルギーにより図12に示したようなバッテリレス動作の確認に成功した。
【0093】
世の中で一般的に使用されているWiFiやBluetooth,ZigBeeといった無線通信モジュールの消費電力は、最小加工寸法65nmや40nm以下の先端的集積回路プロセスの適用により低消費電力化が進められているが、それでも1mW以上の電力が必要なためバッテリレス動作は困難な状況にある。
【0094】
しかし、実施形態の第7の変形例では、高価な先端的集積回路技術を用いなくとも、低コストの集積回路技術で100μW未満の低消費電力動作の実現でき、無線信号エネルギーによるバッテリレス動作を実現できる。さらに、集積回路化によりセンサ端末の小型化が可能で、様々な物、場所(人体を含む)にセンサ端末を組み込むことが可能となる。
【0095】
(実施形態の第8の変形例)
あるいは、各センサモジュール100sは、図18に示すように、半導体チップ7rが回路基板71上に搭載されて構成されてもよい。図18は、実施形態の第8の変形例に係るセンサインターフェース回路1rを含むセンサモジュール100sの実装構成を示す図であり、半導体チップ7rが図15に示す半導体チップ7rと同様である。図18は、回路基板71の回路構成を示している。
【0096】
図18に示す回路基板71は、誘電体基板が用いられ得る。回路基板71上には、インピーダンス変換回路4’が搭載されている。インピーダンス変換回路4’は、インダクタ4a及びキャパシタ4e~4gを有する。インダクタ4aは、一端がノード4dを介して端子RFBS(図15参照)に電気的に接続され、他端がノード4cに電気的に接続されている。キャパシタ4e,4fは、一端がノード4cを介して端子RFBSに電気的に接続されている。キャパシタ4gは、一端がノード4cに電気的に接続され、他端がグランド電位に電気的に接続されている。ノード4cは、導体パターン511を介してアンテナ5に電気的に接続されている。
【0097】
また、回路基板71上には、抵抗素子Rsの両端が端子S11,S22(図15参照)に電気的に接続され、容量素子Csの両端が端子S22,S33に電気的に接続されている。抵抗素子Rrefの両端が端子S1,S2に電気的に接続され、容量素子Crefの両端が端子S2,S3に電気的に接続されている。抵抗素子Rsの両端又は容量素子Csの両端にセンサ2を付加し、抵抗素子Rrefの両端又は容量素子Crefの両端に基準センサ3を付加することによりセンサモジュール100sとして動作する。
【0098】
(実施形態の第9の変形例)
あるいは、各センサモジュール100tは、図19に示すように、アンテナ5tがパッチアンテナで構成されてもよい。図19は、実施形態の第9の変形例に係るセンサインターフェース回路1rを含むセンサモジュール100tの実装構成を示す図である。アンテナ5tは、回路基板71t上に搭載されるカバー81に配される。図示しないが、半導体チップ7rは、カバー81の内側で回路基板71t上に搭載される。図19は、回路基板71tの主面に垂直な方向をZ方向とし、Z方向に垂直な平面内で互いに直交する2方向をX方向及びY方向とする。
【0099】
アンテナ5tは、複数の導体線路50~59を有する。導体線路50は、一端が接続部材512を介して導体パターン511に電気的に接続されている。導体線路50は、カバー81の-Y側の側面において接続部材512から+Z方向に延び、+Z側の主面を+Y方向に延びて導体線路51に電気的に接続される。導体線路51は、カバー81の+Z側の主面を-Y側の端部付近から+Y方向に+Y側の端部付近まで延びている。導体線路52~55は、互いにY方向に離間しながら導体線路51から-X方向に延びている。導体線路56~59は、互いにY方向に離間しながら導体線路51から+X方向に延びている。
【0100】
センサモジュール100tの小型化のためには、アンテナ5tの小型化が有効である。RFIDタグで使用されているアンテナのサイズは、920帯で10cm以上の大サイズとなっている。
【0101】
一方、実施形態の第9の変形例のアンテナ5tは、小型パッチアンテナで構成され、図19に示すような特有のパターンの構成により小型化が可能とされる。アンテナ5tのサイズは、例えば、10mm×10mmである。
【0102】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1,1i,1j、1k,1p,1q,1r センサインターフェース回路
2 センサ
3 基準センサ
4 インピーダンス変換回路
5,5t アンテナ
6j カップリング容量
11,11p,12,12p 可変発振回路
13,19i ミキサ回路
14 フィルタ回路
15 バイアス回路
16 RFスイッチ
17,25j アンテナ用端子
18,18i 差分回路
21i チャネル設定用発振回路
22 電池
23a,23b,24a,24b センサ用端子
26j 昇圧/整流回路
27j 電源制御回路
28p,29p 分周回路
100,100-1~100-n,100i,100i-1~100i-n,100j,100k,100k-1~100k-n,100p,100q,100q-1~100q-n,100r,100s,100t センサモジュール
111 インバータチェーン
200 情報収集端末
300 通信システム
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