(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】植物の環境応答特性算出方法、プログラム及び装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240704BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20240704BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2020092656
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019120239
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東出 忠桐
(72)【発明者】
【氏名】菅野 圭一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-043715(JP,A)
【文献】特開2016-183931(JP,A)
【文献】特開2016-182092(JP,A)
【文献】特開2016-154510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の生育環境を制御可能な空間内において、特定の環境条件以外の環境条件を一定にしつつ、前記特定の環境条件を基準条件と複数の調査条件に順次設定し、
前記空間内において栽培される前記植物の成長を示す指標値を取得し、
所定の調査条件に設定された第1の時間
の前において前記基準条件に設定された時間における単位時間当たりの前記指標値の変化と、前記第1の時間の後において前記基準条件に設定された時間における単位時間当たりの前記指標値の変化との平均に対する、前記第1の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化の割合を示す値を、前記所定の調査条件下における成長度を示す相対成長度
として算出する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする植物の環境応答特性算出方法。
【請求項2】
前記第
1の時間
の前において前記基準条件に設定された時間は、前記第1の時間の直前の時間であり、前記第
1の時間
の後において前記基準条件に設定された時間は、前記第1の時間の直後の時間である、ことを特徴とする請求項
1に記載の植物の環境応答特性算出方法。
【請求項3】
前記所定の調査条件を変更しつつ前記算出する処理を繰り返し実行した結果得られる、複数の調査条件下における相対成長度に基づいて、前記特定の環境条件の変化に応じた相対成長度の変化を示す関数を求め、出力する、処理を前記コンピュータが更に実行することを特徴とする請求項1
又は2に記載の植物の環境応答特性算出方法。
【請求項4】
前記出力する処理では、前記関数をグラフ化して、前記植物の生育環境を評価する評価装置又は前記植物の収量を推定する推定装置に対して出力する、ことを特徴とする請求項
3に記載の植物の環境応答特性算出方法。
【請求項5】
前記指標値は、前記植物の重量、表面積、体積のいずれかであることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の植物の環境応答特性算出方法。
【請求項6】
植物の生育環境を制御可能な空間内において、特定の環境条件以外の環境条件を一定にしつつ、前記特定の環境条件を基準条件と複数の調査条件に順次設定し、
前記空間内において栽培される前記植物の成長を示す指標値を取得し、
所定の調査条件に設定された第1の時間
の前において前記基準条件に設定された時間における単位時間当たりの前記指標値の変化と、前記第1の時間の後において前記基準条件に設定された時間における単位時間当たりの前記指標値の変化との平均に対する、前記第1の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化の割合を示す値を、前記所定の調査条件下における成長度を示す相対成長度
として算出する、
処理をコンピュータに実行させるための植物の環境応答特性算出プログラム。
【請求項7】
植物の生育環境を制御可能な空間内において、特定の環境条件以外の環境条件を一定にしつつ、前記特定の環境条件を基準条件と複数の調査条件に順次設定する設定部と、
前記空間内において栽培される前記植物の成長を示す指標値を取得する取得部と、
所定の調査条件に設定された第1の時間
の前において前記基準条件に設定された時間における単位時間当たりの前記指標値の変化と、前記第1の時間の後において前記基準条件に設定された時間における単位時間当たりの前記指標値の変化との平均に対する、前記第1の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化の割合を示す値を、前記所定の調査条件下における成長度を示す相対成長度
として算出する算出部と、
を備える植物の環境応答特性算出装置。
【請求項8】
植物の生育環境を制御可能な空間内において、特定の環境条件以外の環境条件を一定にしつつ、前記特定の環境条件を基準条件と複数の調査条件に順次設定し、
前記空間内において栽培される前記植物の成長を示す指標値を取得し、
所定の調査条件に設定された第1の時間の前において前記基準条件に設定された第2の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化を、前記第1の時間と前記第2の時間との間の時間の短さに応じた重み係数で重み付けした値と、前記第1の時間の後において前記基準条件に設定された第3の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化を、前記第1の時間と前記第3の時間との間の時間の短さに応じた重み係数で重み付けした値と、の重み付け平均に対する、前記第1の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化の割合を示す値を、前記所定の調査条件下における成長度を示す相対成長度として算出する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする植物の環境応答特性算出方法。
【請求項9】
植物の生育環境を制御可能な空間内において、特定の環境条件以外の環境条件を一定にしつつ、前記特定の環境条件を基準条件と複数の調査条件に順次設定する設定部と、
前記空間内において栽培される前記植物の成長を示す指標値を取得する取得部と、
所定の調査条件に設定された第1の時間の前において前記基準条件に設定された第2の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化を、前記第1の時間と前記第2の時間との間の時間の短さに応じた重み係数で重み付けした値と、前記第1の時間の後において前記基準条件に設定された第3の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化を、前記第1の時間と前記第3の時間との間の時間の短さに応じた重み係数で重み付けした値と、の重み付け平均に対する、前記第1の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化の割合を示す値を、前記所定の調査条件下における成長度を示す相対成長度として算出する、
処理をコンピュータに実行させるための植物の環境応答特性算出プログラム。
【請求項10】
植物の生育環境を制御可能な空間内において、特定の環境条件以外の環境条件を一定にしつつ、前記特定の環境条件を基準条件と複数の調査条件に順次設定し、
前記空間内において栽培される前記植物の成長を示す指標値を取得し、
所定の調査条件に設定された第1の時間の前において前記基準条件に設定された第2の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化を、前記第1の時間と前記第2の時間との間の時間の短さに応じた重み係数で重み付けした値と、前記第1の時間の後において前記基準条件に設定された第3の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化を、前記第1の時間と前記第3の時間との間の時間の短さに応じた重み係数で重み付けした値と、の重み付け平均に対する、前記第1の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化の割合を示す値を、前記所定の調査条件下における成長度を示す相対成長度として算出する算出部と、
を備える植物の環境応答特性算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の環境応答特性算出方法、プログラム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温室内で栽培するトマトなどの作物の収量を増やし、病害虫の発生リスクを低減するためには、温室内の環境制御を行う必要がある。温室内の環境条件には、気温、湿度、CO2濃度、光、根圏温度、養液ECなど様々なものがあり、環境制御において設定可能な環境条件の組み合わせは膨大である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温室内の環境条件の制御を行う際には、目標とする温室内の環境が適切かどうかを判断する必要があるが、温室内で栽培する作物の品目や品種に応じたきめ細やかな判断を行うためには、品目や品種ごとの詳細な基準が必要である。
【0005】
しかしながら、従来は、過去の経験等に基づいて、大まかに基準を定めていたため、きめ細やかな判断が難しかった。
【0006】
本発明は、品目や品種ごとの環境応答特性を算出することが可能な植物の環境応答特性算出方法、プログラム及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植物の環境応答特性算出方法は、植物の生育環境を制御可能な空間内において、特定の環境条件以外の環境条件を一定にしつつ、前記特定の環境条件を基準条件と複数の調査条件に順次設定し、前記空間内において栽培される前記植物の成長を示す指標値を取得し、所定の調査条件に設定された第1の時間の前において前記基準条件に設定された時間における単位時間当たりの前記指標値の変化と、前記第1の時間の後において前記基準条件に設定された時間における単位時間当たりの前記指標値の変化との平均に対する、前記第1の時間における単位時間当たりの前記指標値の変化の割合を示す値を、前記所定の調査条件下における成長度を示す相対成長度として算出する、処理をコンピュータが実行する植物の環境応答特性算出方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物の環境応答特性算出方法、プログラム及び装置は、品目や品種ごとの環境応答特性を算出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、一実施形態に係る情報取得システムの構成を示す図であり、
図1(b)は、環境制御チャンバ50の内部の様子を示す写真である。
【
図2】
図1(a)の制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】
図1(a)の制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(a)は、環境制御パターンの一例を示す図であり、
図5(b)は、重量の測定結果及び所定時間ごとの重量変化を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)は、各気温における相対成長度を示す表であり、
図6(b)は、
図6(a)のデータを関数化したグラフである。
【
図7】温室内の気温の推移を模式化したグラフである。
【
図8】作物の収量を推定する手順について示す図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(c)は、実施例1を説明するための図(その1)である。
【
図10】実施例1を説明するための図(その2)である。
【
図12】実施例2を説明するための図(その2)である。
【
図14】実施例3を説明するための図(その2)である。
【
図15】
図15(a)は、変形例に係る環境制御パターンを示す図であり、
図15(b)は、重量の測定結果及び所定時間ごとの重量の増加速度を示すグラフである。
【
図16】変形例における環境制御パターンの別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態に係る情報取得システム100について、
図1~
図8に基づいて、詳細に説明する。本実施形態の情報取得システム100は、作物の品目、品種ごとに環境応答特性を自動的に求め、出力するシステムである。
【0011】
図1(a)には、情報取得システム100の構成が概略的に示されている。
図1(a)に示すように、情報取得システム100は、環境制御チャンバ50と、環境制御装置60と、潅水装置70と、重量計80と、環境応答特性算出装置としての制御装置10と、を備える。
【0012】
環境制御チャンバ50は、作物を栽培可能な内部空間を有する。環境制御チャンバ50の内部空間内の環境は、環境制御装置60によって制御できるようになっている。
図1(b)は、環境制御チャンバ50の内部の様子を示す写真である。
【0013】
環境制御装置60は、環境制御チャンバ50の内部空間の各種環境条件(気温、湿度、CO2濃度、光、根圏温度、養液EC(electric conductivity:電気伝導度))を制御する装置である。すなわち、環境制御装置60は、冷暖房器具や、加湿器、除湿器、CO2濃度調整装置、LED(Light Emitting Diode)照明、根圏温度を制御する温熱ヒータやチラー、養液EC制御装置等を備える。環境制御装置60は、制御装置10の制御の下、環境制御チャンバ50内の環境を制御する。
【0014】
潅水装置70は、制御装置10の指示の下、環境制御チャンバ50の内部空間で栽培されている作物に対して水やりを行う装置である。
【0015】
重量計80は、環境制御チャンバ50の内部空間で栽培されている作物の成長を示す指標値として重量を測定する。重量計80は、測定結果を制御装置10に対して出力する。
【0016】
制御装置10は、環境制御装置60及び潅水装置70を制御するとともに、重量計80の測定結果を取得し、作物ごと(品目・品種ごと)に環境条件(例えば気温)の変化に応じて成長度がどのように変化するかを示すグラフを作成する。このグラフは、作物の環境応答特性を示すものである。また、制御装置10は、作成したグラフを、表示部93(
図2参照)に表示したり、外部装置に出力する。
【0017】
図2には、制御装置10のハードウェア構成が示されている。
図2に示すように、制御装置10は、CPU90、ROM92、RAM94、記憶部(ここではHDD)96、ネットワークインタフェース97、表示部93、入力部95、及び可搬型記憶媒体用ドライブ99等を備えている。表示部93は、液晶ディスプレイ等を含み、入力部95は、キーボードやマウス、タッチパネル等を含む。これら制御装置10の構成各部は、バス98に接続されている。制御装置10では、ROM92あるいはHDD96に格納されているプログラム(植物の環境応答特性算出プログラムを含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ99が可搬型記憶媒体91から読み取ったプログラム(植物の環境応答特性算出プログラムを含む)をCPU90が実行することにより、
図3に示す各部の機能が実現される。なお、
図3の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0018】
図3には、制御装置10の機能ブロック図が示されている。制御装置10においては、CPU90がプログラムを実行することにより、
図3に示すように、設定部としての環境制御部12、潅水制御部14、取得部としての重量取得部16、算出部としての相対成長度算出部18、及び出力部20、としての機能が実現されている。
【0019】
環境制御部12は、予め定められている環境制御パターンに基づいて、環境制御装置60を制御し、環境制御チャンバ50内の各種環境条件を制御する。ここで、本実施形態では、環境制御部12は、環境制御パターンに基づいて特定の環境条件(例えば気温)を制御する一方、特定の環境条件以外の環境条件(例えば湿度、CO2濃度、光、根圏温度、養液EC)は一定に維持するように制御する。
【0020】
潅水制御部14は、潅水装置70を制御して、所定時間ごとに作物に対して潅水(水やり)を行う。また、潅水制御部14は、重量計80を用いて作物の重量を測定する直前のタイミングで、潅水装置70を制御して、作物の育苗ポットから水があふれる程度に潅水を実行する。
【0021】
重量取得部16は、重量計80から、重量の測定結果を取得する。なお、重量取得部16は、重量計80の測定結果から、育苗ポット、育苗ポット内の土及び水の重量の合計を差し引いた重量を作物の重量とする。
【0022】
相対成長度算出部18は、重量取得部16が取得した、作物の重量の測定結果から、各気温における作物の相対成長度を算出する。ここで、各気温における相対成長度とは、基準となる気温(基準条件)における作物の重量変化に対する各気温(調査条件)における作物の重量変化の割合(%)を意味する。
【0023】
出力部20は、相対成長度算出部18が算出した相対成長度を関数化し、作物ごと(品目や品種ごと)に環境応答特性のグラフを作成する。また、出力部20は、作成したグラフを表示部93に表示したり、外部装置に出力したりする。
【0024】
(制御装置10の処理について)
次に、制御装置10の処理について、
図4のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。ここで、本実施形態の制御装置10は、一例として、ある作物(例えば、品目「トマト」、品種「桃太郎」)の成長度が気温の変化よってどのように変化するかを示すグラフ(環境応答特性を示すグラフ)を作成し、出力するものとする。
【0025】
ステップS10では、環境制御部12が、予め定めた環境制御パターンに基づいて環境制御を実行する。ここで、環境制御パターンとは、
図5(a)に示すような、気温を所定時間ごとに変化させるパターンである。
図5(a)においては、気温を変化させる所定時間が単位時間(1Time)として示されている。なお、所定時間(1Time)は、1日であってもよいし、その他の長さの時間であってもよく、作物の品種や品目ごとに定めてもよい。
【0026】
図5(a)の環境制御パターンは、具体的には、基準気温を22℃として、22℃、16℃、22℃、14℃、22℃、…というように、基準気温と基準気温との間に、基準気温以外の気温を挟むパターンとなっている。
【0027】
なお、
図5(a)の環境制御パターンの場合、
図4のステップS10(1回目)においては、環境制御部12は、環境制御チャンバ50内の気温を22℃に設定する。なお、環境制御部12は、その他の環境条件(湿度、CO
2濃度、光、根圏温度、養液EC)については、予め定められた値に維持するように制御しているものとする。
【0028】
次いで、ステップS12では、潅水制御部14が、所定時間経過するまで待機する。この場合の所定時間は、前述した1Timeである。したがって、潅水制御部14は、所定時間(1Time)が経過すると、ステップS14に移行する。
【0029】
ステップS14に移行すると、潅水制御部14は、潅水を実行する。ここでは、潅水装置70に指示を出して、作物の根元(育苗ポット)に対して潅水を実行し、水が育苗ポットから溢れる状態になった段階で、潅水を停止する。
【0030】
次いで、ステップS16では、重量取得部16が、重量計80が測定した重量を取得する。なお、ステップS16において重量取得部16が取得する重量には、作物の重量のほか、育苗ポットの重量、土の重量、及びステップS14において潅水した水の重量も含まれる。本実施形態においては、
図4の処理を開始する前に、育苗ポットの重量、土の重量、育苗ポットから溢れる程度まで潅水したときの水の重量の合計を測定し、補正重量として記憶しておく。そして、重量取得部16は、ステップS16において測定された重量から補正重量を差し引くことで、作物の重量を正確に測定する。なお、ステップS14の潅水は、上述のように作物の重量測定のための潅水であるため、潅水制御部14は、作物の栽培に必要な潅水については、
図4の処理とは別に適宜行っているものとする。
【0031】
次いで、ステップS18では、相対成長度算出部18が、環境制御パターンに基づく環境制御が完了したか否かを判断する。このステップS18の判断が否定されると、ステップS10に戻る。ステップS10に戻ると、環境制御部12は、
図5(a)の環境制御パターンに基づいて環境制御を実行する。すなわち、
図4のステップS10(2回目)においては、環境制御部12は、環境制御チャンバ50内の気温を16℃に設定する。その後は、ステップS12、S14、S16、S18の処理、判断を上述したように実行する。
【0032】
その後、ステップS10~S18の処理、判断を繰り返し、
図5(a)の環境制御パターンに基づく環境制御が完了すると、ステップS18の判断が肯定され、相対成長度算出部18は、ステップS20に移行する。
【0033】
ステップS20に移行すると、相対成長度算出部18は、環境条件毎の相対成長度を算出する。本実施形態では、気温毎の相対成長度を算出する。以下、気温毎の相対成長度の算出方法について詳細に説明する。
【0034】
図5(b)には、作物の重量(g/plant)の測定結果と、所定時間(1Time)毎の重量変化(g/plant)と、がグラフにて示されている。相対成長度算出部18は、ある気温(x℃とする)における相対成長度(R
x)を求める場合、まず、その気温に維持した時間(時間nとする)における重量変化(dW
n)を特定する。また、相対成長度算出部18は、気温(x℃)に維持した時間nの直前の時間(時間n-1)の重量変化(dW
n-1)と直後の時間(時間n+1)における重量変化(dW
n+1)を特定する。なお、重量変化dW
n-1とdW
n+1は、基準気温(22℃)に維持した時間における重量変化である。そして、相対成長度算出部18は、次式(1)に基づいて、気温x℃における相対成長度R
xを求める。
R
x=dW
n/(1/2(dW
n-1+dW
n+1))×100 …(1)
【0035】
なお、上式(1)からわかるように、相対成長度Rxは、気温x℃に維持した時間の重量変化(dWn)の、気温22℃に維持した時間の重量変化dWn-1、dWn+1の平均に対する割合(%)を意味している。
【0036】
例えば、
図5(a)において、気温16℃に設定した時間(Time=1~2の間)における相対成長度R
16は、
図5(b)に示す重量変化dW
1、dW
2、dW
3を用いて、次式(2)から求めることができる。
R
16=dW
2/(1/2(dW
1+dW
3))×100 …(2)
【0037】
なお、その他の気温における相対成長度についても同様に求めることができる。
【0038】
図6(a)は、上記のようにして求められた各気温における相対成長度を示す表である。なお、本実施形態では、基準気温を22℃としているため、気温22℃における相対成長度は100(%)となる。
【0039】
図4に戻り、次のステップS22では、出力部20が、相対成長度を関数化して、環境応答特性を示すグラフを作成し、出力する。具体的には、出力部20は、
図6(a)の表のデータをグラフ上にプロットし、最小二乗法等を用いて
図6(b)に示すようなグラフを作成する。なお、
図6(b)のグラフは、横軸を気温とし、縦軸を相対成長度としている。そして、出力部20は、生成したグラフを表示部93に表示したり、外部装置に対して出力する。
【0040】
以上により、
図4の全処理が終了する。なお、気温以外の環境条件(湿度、CO
2濃度、光、根圏温度、養液EC)についての環境応答特性も、
図4の処理を実行することで、同様にグラフ化し、出力することができる。例えば、湿度に対する環境応答特性をグラフ化して出力する場合には、湿度以外の環境条件を一定に維持しつつ、湿度を
図5(a)と同様の環境制御パターン(基準湿度と基準湿度以外の湿度とを交互に繰り返すパターン)に基づいて変更する。そして、各湿度における重量変化から、上式(1)に基づいて各湿度における相対成長度を求めるようにすればよい。
【0041】
(外部装置の処理について(その1))
ここで、外部装置においては、制御装置10から出力された
図6(b)のグラフを用いて、以下のような情報処理を行うことができる。
【0042】
例えば、外部装置が、温室内で作物(品目「トマト」、品種「桃太郎」とする)を栽培する作業者が利用可能な情報処理装置であるとする。
【0043】
この情報処理装置は、温室の外部に設置された屋外センサや温室の内部に設置された温室内センサにおいて取得される環境情報、温室の施設情報や温室内に設置された機器情報、機器設定情報、屋外環境の予測情報を取得し、取得した各情報に基づいて、温室内の環境を推定する。
【0044】
また、情報処理装置は、推定した温室内の環境を評価し、評価結果に基づいて、評価結果が改善するように、制御対象機器に対して制御情報を出力する。
【0045】
このような処理を実行する情報処理装置において、温室内の環境を評価する場合に、
図6(b)のグラフを用いることができる。なお、
図6(b)のグラフは、作物の品種や品目ごとに用意されるため、情報処理装置は、実際に温室内で栽培する作物(品目「トマト」、品種「桃太郎」)に対応するグラフを評価に用いる。
【0046】
例えば、情報処理装置は、取得した情報に基づいて、
図7に模式化して示すような温室内の気温の推移に関して、(1)夜室温Tn、(2)昼室温Td、(3)夜昼移行平均Tm、(4)昼夜移行平均Teを予測する。ここで、情報処理装置は、緯度、経度、月日の情報に基づいて、日出・日入時刻を算出し、算出結果に基づいて、
図7の夜設定維持時間mn(分)を算出するとともに、夜昼移行(朝)時間mm(分)及び昼夜移行(夕)時間me(分)を日射及び屋外気温の関数として算出する。また、情報処理装置は、1日の時間からmn、mm、meを除外した時間を昼設定維持時間md(分)とする。
【0047】
そして、情報処理装置は、
図7のように予測した予測温室環境を評価する。具体的には、情報処理装置は、予測した温室内の気温の推移について点数化(スコア化)して、評価する。この点数化の際に、情報処理装置は、制御装置10から取得したグラフ(気温と相対成長度との関係(
図6(b))を参照する。なお、
図6(b)の縦軸の相対成長度を、以下においては、「気温スコア」と呼ぶものとし、相対成長度の値を点数(ポイント)として扱う。情報処理装置は、温室内の気温を点数化する際に、各時刻の気温スコアの推移を算出する。また、情報処理装置は、気温スコアの平均を算出し、1日の平均気温スコアとする。
【0048】
ここで、情報処理装置は、例えば、1日の平均気温スコアが所定の基準を満たしていなければ、機器の設定を調整(変更)する。この場合、気温スコアがより高くなるように、制御対象機器の設定気温を調整する。例えば、昼(又は夜)の時間帯の気温スコアが低い場合には、昼(又は夜)の気温スコアが高くなるように、各時間帯の設定気温を調整すればよい。
【0049】
また、情報処理装置は、1日の平均気温スコアを用いて、気温による成育への影響度を評価する。この場合、情報処理装置は、例えば、1日の平均気温スコア(Sとする)を用いて、予想成育量DMo(g/m2/d)を次式(3)に基づいて算出する。
DMo=DMp×S …(3)
【0050】
なお、DMpは、ポテンシャル成育量(g/m2/d)であり、理想的環境(温湿度による抑制がない場合)の成育量を意味する。情報処理装置は、DMoが基準を満たしていなければ、制御対象機器の設定気温を変更するなどする。
【0051】
なお、情報処理装置は、気温スコアの推移や、1日の平均気温スコア、予想成育量DMoなどを表示して、作業者に提供することとしてもよい。これにより、作業者は、温室内の環境が適切か否かを判断することができる。
【0052】
なお、上記においては、情報処理装置は、温室内の気温(予測値)を評価する場合について説明したが、湿度やCO
2濃度、光、根圏温度、養液ECについても同様に評価することができる。この場合、湿度やCO
2濃度、光、根圏温度、養液ECについての環境応答特性を示すグラフ(
図6(b)と同様のグラフ)を用いて、温室内の湿度やCO
2濃度、光、根圏温度、養液EC(予測値)を評価することとすればよい。
【0053】
なお、情報処理装置は、更に、温室内の環境情報計測値(実測値)に基づいて、環境を評価し、評価結果を出力(表示)することもできる。この場合、情報処理装置は、温室内センサにより検出された情報(実際の気温、湿度、CO2濃度、光、根圏温度、養液EC)を取得し、環境応答特性を示すグラフに基づいて、温室環境を評価し、表示するようにすればよい。
【0054】
(外部装置の処理について(その2))
外部装置は、制御装置10から出力された環境応答特性のグラフを用いて、作物の収量を推定する情報処理装置であってもよい。この情報処理装置は、光合成特性に基づいて作物の収量を推定する。
【0055】
この作物の収量の推定においては、情報処理装置は、
図8に示すように、収穫までの期間における、平均気温や、積算日射量、平均CO
2濃度を用いて、各種計算を実行して、作物の収量を推定する。そして、情報処理装置は、この計算において、制御装置10から出力される環境応答特性のグラフを用いることができる。なお、
図8において、破線枠で示されているデータは、作業者が入力する作物の生体情報であり、グレーの枠で示されているデータは、センサ等から得られる環境情報である。また、一点鎖線枠で示されているデータは、予め設定されている情報であり、実線枠で示されているデータは、計算により求められる情報である。
【0056】
例えば、情報処理装置は、平均気温を用いて展開葉数を計算する場合に、気温についての環境応答特性を考慮する。また、情報処理装置は、積算日射量を用いて一日の積算受光量を計算する場合に、光についての環境応答特性を考慮する。更に、情報処理装置は、平均CO2濃度を用いて光利用効率を計算する際に、CO2濃度についての環境応答特性を考慮する。
【0057】
このようにすることで、収量の推定を精度よく行うことが可能となる。なお、本実施形態では、制御装置10が、外部装置に対して
図6(b)に示すような環境応答特性を示すグラフを作成し、出力する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、制御装置10は、外部装置に対して、
図6(a)に示すような各気温における相対成長度のデータを出力してもよい。この場合、外部装置は、
図6(a)のデータから
図6(b)のグラフを作成して、上述した処理に利用するようにすればよい。
【0058】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、環境制御部12は、環境制御装置60を介して、環境制御チャンバ50内の特定の環境条件(例えば気温)以外の環境条件(湿度、CO2濃度、光、根圏温度、養液EC)を一定にしつつ、特定の環境条件(気温)を基準条件(22℃)と複数の調査条件(16℃、14℃など)に順次設定する(S10)。また、重量取得部16は、環境制御チャンバ50内において栽培される作物の重量の計測値を取得する(S16)。そして、相対成長度算出部18は、調査条件(例えば16℃)に設定された時間における作物の重量変化(dWn)と、基準条件(22℃)に設定された複数の時間における作物の重量変化(dWn-1、dWn+1)と、に基づいて、作物の相対成長度Rxを算出する処理を行うことで、各調査条件下における相対成長度を算出する(S20)。これにより、品種や品目ごとに、各調査条件下における相対成長度を自動的に算出することができる。
【0059】
また、出力部20は、相対成長度算出部18の算出結果に基づいて、気温についての環境応答特性を示すグラフを作成し、出力する(S22)。これにより、本実施形態では、
図6(b)に示すような環境応答特性を示すグラフを自動的に作成して、出力することができる。この場合、環境応答特性を示すグラフを、作物の生育環境を評価する外部装置(情報処理装置)や作物の収量を推定する外部装置(情報処理装置)に対して出力することで、温室内の環境評価や、収量の推定を適切に行うことができる。また、品種や品目ごとに環境応答特性を示すグラフを準備することができるため、適切な環境であるか否かの評価や収量の推定を、作物の品目や品種に応じてきめ細やかに実行することができる。
【0060】
また、本実施形態では、相対成長度(Rx)を、基準条件(気温22℃)に設定された直前の時間における重量変化(dWn-1)と、直後の時間における重量変化(dWn+1)との平均に対する、基準条件に設定された時間における重量変化の割合(%)としている。これにより、簡易な計算により、相対成長度として適切な値を算出することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、環境制御パターンとして、例えば、「22℃」、16℃、14℃、20℃、「22℃」というように、基準気温(22℃)の間に2種以上の気温を設定するパターンを採用してもよい。この場合、上式(1)の分母(基準気温に設定したときの重量変化の平均)として、重量変化の重み付け平均(時間差を重みとした重み付け平均)を用いることとしてもよい。例えば、16℃の相対成長度R16を算出する場合には、その直前に基準気温(22℃)に設定した時間における重量変化(dWn-1)に3を掛けた値と、後に基準気温(22℃)に設定した時間における重量変化(dWn-1)に1を掛けた値とを足して、4で割った数(重み付け平均)を、上式(1)の分母として用いるようにしてもよい。また、20℃の相対成長度R20を算出する場合には、その前に基準気温(22℃)に設定した時間における重量変化(dWn-1)に1を掛けた値と、その後に基準気温(22℃)に設定した時間における重量変化(dWn-1)に3を掛けた値とを足して、4で割った数(重み付け平均)を、上式(1)の分母として用いるようにしてもよい。一方、14℃の相対成長度R14を算出する場合には、上式(1)の分母として、前後の基準気温(22℃)のときの重量変化の平均を用いることとすればよい。
【0062】
なお、上記実施形態では、基準気温を22℃として気温22℃の相対成長度を100%とした結果、
図6(b)のような環境応答特性を示すグラフが得られたが、作物によっては、ある気温において相対成長度が100%を超える場合も出てくる。このような場合には、相対成長度が最も大きくなった気温を基準気温として、各気温の相対成長度を計算しなおせばよい。
【0063】
なお、上記実施形態では、相対成長度算出部18は、調査条件(例えば16℃)に設定された時間における作物の重量変化(dWn)と、基準条件(22℃)に設定された複数の時間における作物の重量変化(dWn-1、dWn+1)と、に基づいて、作物の相対成長度Rxを算出する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、調査条件を設定した時間に最も近い、基準条件に設定された時間、における作物の重量変化の値(dWzとする)を1つのみ用いて、次式(1)’より、作物の相対成長度Rxを算出してもよい。
Rx=(dWn/dWz)×100 …(1)’
【0064】
以下、実施例1~3について、説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
図9(a)~
図9(c)、
図10には、作物(品目「トマト」、品種「桃太郎ヨーク」)の、気温についての環境応答特性を算出した例が示されている。
図9(a)には、調査条件を35℃とし、基準条件を25℃とした場合の温度処理パターンが示されている。本実施例1では、基準条件(25℃)、調査条件(35℃)、基準条件(25℃)と順に設定することとし、その他の環境条件(湿度、CO
2濃度、光、根圏温度、養液EC)は予め定められた値(相対湿度:50%、CO
2濃度:400ppm、光合成有効光量子密度:700μmol・m
-2・s
-1、養液EC:1.0dS・s
-1)とした。
【0066】
その結果、作物の重量変化は、
図9(b)に示すようになった。また、基準条件(25℃)に設定した期間の重量変化dW
opt1、dW
opt2、は、それぞれ次のように計算できる。
dW
opt1=ln(141.5)-ln(136.4)/(3-0)=0.0122
dW
opt2=ln(158.6)-ln(150.9)/(9-5)=0.0124
また、調査条件(35℃)に設定した期間の重量変化dW
2は、以下のとおりである。
dW
2=ln(147.8)-ln(143.2)/(15-11)
=0.0079
これらは、
図9(c)に示すようになった。なお、
図9(c)の重量変化の単位は(g/g・h)に限らず、(/h)であってもよい。
【0067】
したがって、上式(1)より、気温35℃における基準温度25℃に対する相対成長度(R35)は、以下のように算出できる。
R35=dW2/(1/2(dWopt1+dWopt2))×100
=0.0079/(1/2(0.0122+0.0124))×100
=64.1(%)
【0068】
なお、その他の調査条件についても同様にして相対成長度を算出したところ、
図10に示すようなグラフを得ることができた。
図10においては、基準条件(25℃)のときの相対成長度が100%となっている。
【0069】
(実施例2)
図11(a)~
図11(c)、
図12には、作物(品目「トマト」、品種「桃太郎ヨーク」)の、CO
2濃度についての環境応答特性を算出した例が示されている。
図11(a)には、調査条件を300ppm、1200ppmとし、基準条件を400ppmとした場合のCO
2濃度の設定パターンが示されている。本実施例2では、基準条件(400ppm)、調査条件(300ppm)、調査条件(1200ppm)と順に設定することとし、その他の環境条件(気温、湿度、光、根圏温度、養液EC)は予め定められた値(気温:25℃、相対湿度:50%、光合成有効光量子密度:700μmol・m
-2・s
-1、養液EC:1.0dS・s
-1)とした。
【0070】
その結果、作物の重量変化は、
図11(b)に示すようになった。また、基準条件(400ppm)に設定した期間の重量変化dW
400、調査条件(300ppm、1200ppm)に設定した期間の重量変化dW
300、dW
1200は、それぞれ次のように計算できる。
dW
400=ln(230.1)-ln(228.5)/(2-1)=0.0070
dW
300=ln(230.2)-ln(228)/(4-3)=0.0064
dW
1200=ln(232.8)-ln(230.1)/(6-5)=0.0078
これらは、
図11(c)に示すようになった。なお、
図11(c)の重量変化の単位は(g/g・h)に限らず、(/h)であってもよい。
【0071】
したがって、上式(1)’より、CO2濃度=300ppmにおける基準条件(400ppm)に対する相対成長度(R300)は、以下のように算出できる。
R300=dW300/dW400×100
=0.0064/0.0070×100
=91.7(%)
【0072】
同様に、CO2濃度=1200ppmにおける基準条件(400ppm)に対する相対成長度(R1200)は、以下のように算出できる。
R300=dW1200/dW400×100
=0.0078/0.0070×100
=121.5(%)
【0073】
なお、その他の調査条件についても同様にして相対成長度を算出したところ、
図12に示すようなグラフを得ることができた。
図12においては、基準条件(400ppm)のときの相対成長度が100%となっている。
【0074】
(実施例3)
図13(a)~
図13(c)、
図14には、作物(品目「トマト」、品種「桃太郎ヨーク」)の、養液ECについての環境応答特性を算出した例が示されている。
図13(a)には、調査条件を6dS/mとし、基準条件を2dS/mとした場合の養液ECの設定パターンが示されている。本実施例3では、基準条件(2dS/m)、調査条件(6dS/m)、基準条件(2dS/m)と順に設定することとし、その他の環境条件(気温、湿度、CO
2濃度、光、根圏温度)は予め定められた値(気温:25℃、相対湿度:50%、CO
2濃度:400ppm、光合成有効光量子密度:700μmol・m
-2・s
-1)とした。
【0075】
その結果、作物の重量変化は、
図13(b)に示すようになった。また、基準条件(2dS/m)に設定した期間の重量変化dW
EC2-1、dW
EC2-2、調査条件(6dS/m)に設定した期間の重量変化dW
EC6は、それぞれ次のように計算できる。
dW
EC2-1=ln(149.5)-ln(144.4)/(3-0)=0.0116
dW
EC2-2=ln(163.6)-ln(157.9)/(15-11)
=0.0089
また、調査条件(6dS/m)に設定した期間の重量変化dW
EC6は、以下のとおりである。
dW
EC6=ln(154.8)-ln(151.2)/(9-5)=0.0059
これらは、
図13(c)に示すようになった。なお、
図13(c)の重量変化の単位は(g/g・h)に限らず、(/h)であってもよい。
【0076】
したがって、上式(1)より、養液EC=6dS/mにおける養液EC=2dS/mに対する相対成長度(REC6)は、以下のように算出できる。
REC6=dWEC6/(1/2(dWEC2-1+dWEC2-2))×100
=0.0059/(1/2(0.0116+0.0089))×100
=57.6(%)
【0077】
なお、その他の調査条件についても同様にして相対成長度を算出したところ、
図14に示すようなグラフを得ることができた。
図14においては、基準条件(養液EC=2)のときの相対成長度が100%となっている。
【0078】
(変形例)
なお、上記実施形態では、
図5(b)に示すような、各時間(1Time分の時間)内における重量変化を用いて、上式(1)より、各気温における相対成長度を算出する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、作物の重量の増加速度を用いて、相対成長度を算出してもよい。具体的には、
図15(a)に示すように、
図5(a)と同様の環境制御パターンに基づいて環境制御を行いつつ、作物の重量測定を実行する。そして、相対成長度算出部18は、重量の測定結果を示すグラフから、
図15(b)に示すように、各時間(1Time分の時間)内における重量の増加速度r
nを求める。ここで、増加速度r
nは、次式より求めることができる。
r
n=(lnW
n-lnW
n-1)/(t
n-t
n-1) …(4)
【0079】
なお、lnWnは、重量Wnの自然対数を意味する。例えば、増加速度r2であれば、lnW2-lnW1を所定時間(1Time)で除した値となる。
【0080】
なお、
図15(b)のr
opt1~r
opt5は、基準気温(22℃)における重量の増加速度を意味している。増加速度r
opt1~r
opt5についても、上式(4)から求めることができる。例えば、増加速度r
opt1であれば、lnW
1-lnW
0を所定時間(1Time)で除した値となる。
【0081】
そして、相対成長度算出部18は、気温(x℃)の相対成長度(Rx)を、気温x℃における増加速度rnを用いて、次式(5)から求める。
Rx=rn/{(ropt1+ropt2+…+roptM)/M}×100 …(5)
【0082】
なお、本変形例の場合、環境制御パターンは、
図15(a)のように基準気温以外の気温の前後を基準気温とするパターンを採用しなくてもよい。すなわち、例えば、
図16に示すように、基準気温と基準気温の間に、基準気温以外の気温が複数設定されてもよい。このようにしても、上式(5)を用いて相対成長度R
xを求めることができる。
【0083】
なお、上記実施形態及び変形例では、環境制御チャンバ50内に設置した重量計80を用いて、自動的に作物の重量を測定する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、作業者が作物を重量計に都度のせることにより、作物の重量を測定することとしてもよい。この場合、重量計の計測結果が自動的に制御装置10に送信されてもよいし、作業者が測定結果を制御装置10に手入力してもよい。
【0084】
なお、上記実施形態では、重量取得部16は、重量計80が測定した作物の重量を取得する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、作物の画像から推定される作物の重量を重量取得部16が取得することとしてもよい。この場合、例えば、撮影画像のうち作物を撮影した範囲に含まれるピクセル数と所定の換算式とに基づいて、作物の重量を推定することができる。この場合、重量を取得する直前の潅水(ステップS14)は行わなくてもよい。
【0085】
なお、上記実施形態では、ステップS16において、重量取得部16が、作物の重量を重量計80から取得し、ステップS20において、作物の重量変化に基づいて相対成長度を算出する場合について説明した。しかしながら、これに限らず、制御装置10は、ステップS16において、作物の成長を示す指標値として作物の表面積や体積を取得し、ステップS20において、作物の表面積や体積の変化に基づいて、相対成長度を算出することとしてもよい。作物の表面積や体積は、作物の画像から推定することができる。この場合、例えば、撮影画像のうち作物を撮影した範囲に含まれるピクセル数と所定の換算式とに基づいて、作物の表面積や体積を推定することができる。
【0086】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0087】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0088】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0089】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 制御装置(環境応答特性算出装置)
12 環境制御部(設定部)
16 重量取得部(取得部)
18 相対成長度算出部(算出部)