(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】おからペーストおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/00 20210101AFI20240704BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A23L11/00 Z
A21D2/36
(21)【出願番号】P 2020052355
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】近田 周磨
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-199853(JP,A)
【文献】特開2009-106179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/00
A21D 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目開き100μmの篩を通過するおから乾燥粉末100質量部と水500~1000質量部の混合物をF値9以上の条件で加圧加熱殺菌処理
する工程を含み、前記おから乾燥粉末の水分量が7質量%以下である、おからペースト
の製造方法。
【請求項2】
加圧加熱殺菌処理直後のおからペーストの25℃における粘度が15~30Pa・sである、請求項1に記載のおからペースト
の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
製造方法によりおからペースト
を製造する工程及び、前記おからペーストを含んだ生地を
作製し、それを焼成
する工程を含む、ベーカリー食品
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おからペーストおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
おからは年間約66万トン発生しており、利用形態として、飼料用65%、肥料用25%、その他10%となっている。産業廃棄物はその他の5~9割で、食用は1%以下である(2011年、日本豆腐協会)。豆腐の製造において発生する生おからの有効利用は以前より検討されており、そのひとつにおからペーストが挙げられる。これは生おからに副資材や水を加え加熱することにより得られる。しかし生おからは腐敗しやすく、保存性が悪い。また生おからを利用した場合、繊維質が残るため、ペーストにした場合くちどけが悪くなり、パンなどの食品に配合した場合、モサついた食感の原因となる。
従来は生おからの腐敗を防ぐため、例えば特許文献1には生おからに無蒸煮大豆乳化油脂材料1~90質量%、燻液1~90質量%、水分1~150質量%混合し、冷蔵しながら微粉砕することで得られるおからペーストとすることが行われていた。また生おからに加水し、加熱処理を行うことも行われており、特許文献2にはおからに水を加え100℃以上の温度で15分以上加熱し、水溶性おから分解生成物を溶解させることを特徴としたおからペーストの製造方法であって、おからに糖、有機酸、水を加えて得られるおからペーストの製造方法が開示されている。
さらに、おからの有効利用のため生おからを乾燥・粉砕し、おから乾燥粉末を製造することは以前より行われており、特許文献3には、おからなどの食物繊維を含有する食品残渣物に150℃以上で熱風乾燥処理を施して粉砕し、水、油脂、および乳化剤を混合し、乳化処理を施す。これをさらに、レトルト容器(レトルトパウチ)に密封充填し、高温・高圧下で加圧加熱殺菌処理(レトルト殺菌処理ともいう)することにより、芳香性を有し、安定性が高く、食品や化粧品などの原料として使用しやすいペーストを得ることができることが開示されている。
しかしながら、冷却しながら粉砕を行うというような特別な工程を行うためには特別な設備が必要であり、また添加物を必要とする場合にはコストが掛かるという問題点があり、また近年の健康志向の観点から添加物を使用しない方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-106179
【文献】特開2006-230274
【文献】特開2013-158267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保存性が良く(離水がなく)、舌触りが滑らかで口溶けが良く、パンなどのベーカリー食品に用いた場合に作業性、外観や食感を改善するおからペースト及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題を解決する為鋭意研究を重ねた結果、生おからを乾燥、粉砕して得たおから乾燥粉末と所定量の水との混合物を、所定の条件で加圧加熱処理してなるおからペーストにより上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]目開き100μmの篩を通過するおから乾燥粉末100質量部と水500~1000質量部の混合物をF値9以上の条件で加圧加熱殺菌処理してなるおからペースト。
[2]加圧加熱殺菌処理後のおからペーストの25℃における粘度が15~30Pa・sである、請求項1に記載のおからペースト。
[3][1]又は[2]に記載のおからペーストを含んだ生地を焼成してなるベーカリー食品。
[4]目開き100μmの篩を通過するおから乾燥粉末100質量部と水500~1000質量部の混合物をF値9以上の条件で加圧加熱殺菌処理する工程を含む、おからペーストの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生おからを乾燥粉砕して得たおから乾燥粉末に所定量の水を加え、所定の条件で加圧加熱処理することにより得られるおからペーストは、磨砕した生おからのペーストと比べてざらつきが少なく口溶けがよくなる。さらに加圧加熱処理することで粘度が安定するため離水が抑制され常温での保存が可能である。また生おからのペーストと比べ吸水が良いため、パンなどのベーカリー食品に配合した際、生地のまとまりが良くて作業性が良く、嵩高い好ましい外観であり、歯切れの良い好ましい食感を付与することができるおからペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、目開き100μmの篩を通過するおから乾燥粉末100質量部と水500~1000質量部の混合物を100℃以上の温度で加圧加熱殺菌処理してなるおからペーストであって、前記加圧加熱殺菌処理のF値が9以上である、前記おからペーストに関する。
【0008】
本発明においておから乾燥粉末は、生おからを乾燥粉砕して得ることができ目開き100μmの篩を通過する。
本発明においておから乾燥粉末は、大豆又は脱脂大豆を原料として、豆乳、大豆ホエー等の水溶性たん白質等を抽出した残渣、「生おから」を乾燥、粉砕して得られる粉末である。本発明においては、大豆を原料として豆乳を抽出した残渣を乾燥、粉砕したおから粉末が好ましい。本発明において、おから粉末は大豆から豆乳を製造する際に発生する残渣を乾燥後に粉砕して用いることができる。また、市販の乾燥おからやおからパウダーをさらに粉砕して粒度を調製することにより使用してもよい。
【0009】
本発明において生おからを乾燥させる方法は特に限定されない。例えば自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、真空乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、赤外線乾燥等をあげることが出来る。好ましくは加熱乾燥法により水分量7質量%以下になるように乾燥する。
【0010】
乾燥させたおからを粉砕する方法は特に限定されない。例えば衝撃式粉砕、気流式粉砕、磨砕粉砕、剪断粉砕、切断粉砕、圧縮粉砕、凍結粉砕等をあげることが出来る。
【0011】
本発明において、おから乾燥粉末は目開き100μmの篩を通過する。目開き100μmの篩を通過しない場合は、粒子径が大きすぎてざらつきが残り口溶けが悪い傾向にあり、また吸水性が悪くなり離水の程度が大きくなる傾向にある。
おから乾燥粉末の粒度は、体積基準のメジアン径で好ましくは100~10μm、更に好ましくは50~10μmである。粒度の測定には、例えばレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置を使用することができる。このような機器の例としてはマイクロトラックベル社製、マイクロトラックMT3000を挙げることが出来る。
【0012】
本発明のおからペーストは、前述の特定の粒度を有するおから乾燥粉末100質量部と水500~1000質量部の混合物をF値9以上の条件で加圧加熱殺菌処理してなる。
本発明において加圧加熱殺菌処理はF値が9以上の条件で行う。好ましくはF値は10以上である。またおから乾燥粉末100質量部と水500~800質量部の混合物を加圧加熱殺菌処理することが好ましい。
【0013】
本発明においてF値とは、一定温度において一定数の微生物を死滅させるのに要する加熱時間のことであり、加熱工程における殺菌効果を121℃での殺菌効果に換算したものである。121℃で1分間加圧加熱殺菌処理した場合にF値=1と定義する。F値の計算には次の式が使われる。
【0014】
F=t×10(T-121)/z
F 任意の温度T℃におけるF値
t T℃における加熱殺菌時間
z F値を1/10にする温度変化(z値=10℃)
【0015】
なおF値の計算に用いるz値は、殺菌する対象の細菌に固有の値であるが、一般のレトルト食品の場合、最も耐熱性の高いボツリヌス菌の値である「z値=10℃」を使用する。
【0016】
F値が9以上の条件を満たす範囲で、加圧加熱殺菌処理における圧力、加熱温度、加熱時間を適宜変更することができる。F値9である場合の加圧加熱殺菌処理の条件としては、121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧),装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後9分間加熱の条件を例示することができ、F値10である場合の加圧加熱殺菌処理の条件としては、121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後10分間加熱の条件を例示することができ、F値11である場合の加圧加熱殺菌処理の条件としては、121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後11分間加熱の条件を例示することができ、F値12である場合の加圧加熱殺菌処理の条件としては、121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後12分間加熱の条件を例示することができ、F値13である場合の加圧加熱殺菌処理の条件としては、121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後13分間加熱の条件を例示することができ、F値14である場合の加圧加熱殺菌処理の条件としては、121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後14分間加熱の条件を例示することができ、F値15である場合の加圧加熱殺菌処理の条件としては、121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後15分間加熱の条件を例示することができる。
上記加圧加熱殺菌処理を行う装置としては、F値9以上の条件で加圧加熱殺菌処理することができる装置であれば特に制限されず、また、装置内の温度や圧力のばらつきが少ない装置が好ましい。加圧加熱殺菌の方式としては、熱水スプレー式、熱水貯湯式、蒸気式等を挙げることができる。
【0017】
好ましくは加圧加熱殺菌処理直後のおからペーストの25℃における粘度は15~30Pa・sである。なおここで「加圧加熱殺菌処理直後」とは加圧加熱殺菌処理が完了した後おからペーストを冷却し中心温度が25℃になった時点から1時間以内をいう。粘度が低いと離水が発生しやすくなる傾向にあり、粘度がより高くなると流動性が低くなり、加工時の作業性が低くなる傾向にある。加圧加熱殺菌処理直後のおからペーストの25℃における粘度はさらに好ましくは20~26Pa・sである。
【0018】
本発明のおからペーストは、おから乾燥粉末と水以外に調味料、酸味料、香辛料、香料、色素、穀粉発酵物等を含むことができる。
【0019】
本発明は、上述の本発明のおからペーストを含んだ生地を焼成してなるベーカリー食品にも関する。
本発明においてベーカリー食品とは普通小麦の強力小麦粉を代表とする穀粉などの澱粉含有物、油脂、砂糖、鶏卵、イースト、食塩など含む生地を混合しオーブンにて焼成した食品である。ベーカリー食品としてはバゲット、パリジャン、バタール、ブール、シャンピニヨン、カンパーニュ等のフランスパン、菓子パン、クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュペストリー、食パン等を挙げることができる。
本発明のベーカリー食品は、生地において小麦粉、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉、米粉などの穀粉;イースト、イーストフード;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉など及びこれらにα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った加工澱粉類;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分である卵成分;牛乳、粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類;乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常ベーカリー食品の製造に用いる副原料を使用することができる。
【0020】
本発明のベーカリー食品は、生地に含まれる穀粉100質量部に対し5~35質量部のおからペーストを含む。好ましくは生地に含まれる穀粉100質量部に対し10~25質量部のおからペーストを含む。
【0021】
本発明のベーカリー食品は本発明のおからペーストを含んだ生地を焼成して成る以外は常法により製造できる。
本発明のベーカリー食品は、本発明のおからペーストを含んだ生地を焼成する以外は常法に従って製造することが出来る。例えば、パンであれば直捏法や中種法、湯種法、冷蔵長時間法、老麺法、ノータイム法、ポーリッシュ法、加糖中種法が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[製造例1 おから乾燥粉末の製造]
(1)生おから(1kg、水分量81質量%)を設定温度95℃の加熱乾燥機によって加熱し、水分量7質量%になるまで乾燥した。
(2)(1)で得られた乾燥物をピンミルで粉砕し、目開き100μmの篩を通して、通過したものをおから乾燥粉末とした。
(3)得られたおから乾燥粉末の粒度分布をレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル社製、マイクロトラックMT3000)を使用して体積基準で測定したところ、メジアン径は約40μmであった。
【0023】
[試験例1 おからペーストの製造と評価]
(実施例1:おからペーストA)
ミキサーに製造例1で得たおから乾燥粉末100質量部を投入し、水800質量部を加え十分に攪拌し、1kgずつレトルトパウチに充填した。レトルトパウチをレトルト殺菌試験機(日阪製作所製)に入れ、F値=13になるように加圧加熱処理(121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後13分間加熱)した。
(比較例1:おからペーストB)
ミキサーに製造例1で得たおから乾燥粉末100質量部を投入し、水800質量部を加え十分に攪拌し、1kgずつレトルトパウチに充填した。レトルトパウチを95℃の湯に60分間浸漬し加熱処理した。
(比較例2:おからペーストC)
生おから55質量部に水45質量部加え、磨砕しペースト化した。前記加水量は乾燥おからに対する水分量に換算したときおからペーストAと同じになるよう調整したものである。 ペースト化した生おからを1kgずつレトルトパウチに充填した。レトルトパウチをレトルト殺菌試験機(日阪製作所製)に入れ、F値=13になるように加圧加熱処理(121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後13分間加熱)した。
(比較例3:おからペーストD)
生おから55質量部に水45質量部加え、磨砕しペースト化した。前記加水量は乾燥おからに対する水分量に換算したときおからペーストAと同じになるよう調整したものである。ペースト化した生おからを1kgずつレトルトパウチに充填した。レトルトパウチを95℃の湯に60分間浸漬し加熱処理した。
(比較例4:おからペーストE)
ミキサーに製造例1で得たおから乾燥粉末100質量部を投入し、水800質量部を加え十分に攪拌し、1kgずつレトルトパウチに充填した。レトルトパウチをレトルト殺菌試験機(日阪製作所製)に入れ、F値=8になるように加圧加熱処理(121℃設定、最大圧力0.3MPa(ゲージ圧)、装置内のレトルトパウチに充填したおからペーストの中心温度が121℃に到達後8分間加熱)した。
【0024】
保存性及び食感について、下記の評価基準1にしたがって、生おからを使用しF値が9以上の条件で加圧加熱殺菌処理した比較例2を評点3として10名のパネラーにより評価した。食感については加熱処理後、それぞれのおからペーストを室温まで冷ましたものを試食して評価した。保存性は、おからペーストを製造して24時間静置後に離水の程度を観察して評価した。また、粘度は、おからペースト200質量部に水100質量部加え攪拌し、TVC-7型粘度計(東機産業株式会社)により25℃で測定した。加圧加熱殺菌処理直後の粘度と加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度を比較し、変動が0.5Pa・s以下のものを安定性〇、それ以上のものを安定性×とした。
結果を表2に示す。
【0025】
【0026】
表2
*1:加圧加熱殺菌処理直後の粘度
*2:加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度
【0027】
おから乾燥粉末を使用し、F値が9以上の条件で加圧加熱殺菌処理を行った実施例1は保存性、食感ともに良かった。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度と加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度がほぼ変化せず安定性が高かった。
おから乾燥粉末を使用するが、加圧加熱殺菌処理を行っていない比較例1は、食感は比較的良いものの加熱が不十分であり、多少の離水が見られた。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度に比べて加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度が大幅に減少し安定性が低かった。
生おからを使用し、加圧加熱殺菌処理を行っていない比較例3は、保存性、食感ともに劣る結果となった。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度に比べて加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度が大幅に減少し安定性が低かった。
おから乾燥粉末を使用するが、所定の加圧加熱殺菌処理条件を満たさない(F値が9未満)比較例4は、食感は比較的良いものの加熱が不十分であり、多少の離水が見られた。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度に比べて加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度が大幅に減少し安定性が低かった。
【0028】
[試験例2 おからペーストの製造と評価(おから乾燥粉末の粒径)]
製造例1で得たおから乾燥粉末の代わりに市販のおから乾燥粉末「さとの雪 おからパウダー」(さとの雪食品製、メジアン径約393μm)、「おからパウダー おとうふ工房いしかわ」(おとうふ工房いしかわ製、メジアン径約350μm)を使用して実施例1と同様にしておからペーストF、おからペーストGを得た。
保存性及び食感について、上記の評価基準1にしたがって比較例2を評点3として10名のパネラーにより評価した。食感については加熱処理後、それぞれのおからペーストを室温まで冷ましたものを試食して評価した。保存性は、おからペーストを製造して24時間静置後に離水の程度を観察して評価した。また、粘度は、おからペースト200質量部に水100質量部加え攪拌し、TVC-7型粘度計(東機産業株式会社)により25℃で測定した。加圧加熱殺菌処理直後の粘度と加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度を比較し、変動が0.5Pa・s以下のものを安定性〇、それ以上のものを安定性×とした。
結果を表3に示す。
【0029】
表3
*1:加圧加熱殺菌処理直後の粘度
*2:加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度
【0030】
目開き100μmの篩を通過するおから乾燥粉末(粒度約40μm)を使用した実施例1は保存性、食感ともに良かった。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度と加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度がほぼ変化せず安定性が高かった。目開き100μmの篩を通過しないおから乾燥粉末(粒度約393μm及び粒度約350μm)を使用した比較例5及び6のいずれも保存性、食感ともに劣る結果となり、特に食感についてはざらついた食感となった。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度に比べて加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度が大幅に減少し安定性が低かった。
【0031】
[試験例3 おからペーストの製造と評価(加圧加熱殺菌条件)]
加圧加熱殺菌条件を表4記載の通りとした以外は実施例1と同様にして表4記載のおからペーストを得た。
保存性及び食感について、上記の評価基準1にしたがって比較例2を評点3として10名のパネラーにより評価した。食感については加熱処理後、それぞれのおからペーストを室温まで冷ましたものを試食して評価した。保存性は、おからペーストを製造して24時間静置後に離水の程度を観察して評価した。また、粘度は、おからペースト200質量部に水100質量部加え攪拌し、TVC-7型粘度計(東機産業株式会社)により25℃で測定した。加圧加熱殺菌処理直後の粘度と加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度を比較し、変動が0.5Pa・s以下のものを安定性〇、それ以上のものを安定性×とした。
結果を表4に示す。
【0032】
表4
*1:加圧加熱殺菌処理直後の粘度
*2:加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度
【0033】
F値が9以上の条件で加圧加熱殺菌処理を行った実施例1~3は保存性、食感ともに良かった。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度と加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度がほぼ変化せず安定性が高かった。
F値が5以下の条件で加圧加熱殺菌処理を行った比較例7~9は保存性、食感ともに劣った。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度に比べて加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度が大幅に減少し安定性が低かった。
F値が8の条件で加圧加熱殺菌処理を行った比較例4は食感は比較的良いものの加熱が不十分であり、多少の離水が見られた。また加圧加熱殺菌処理直後の粘度に比べて加圧加熱殺菌処理後30日経過後の粘度が大幅に減少し安定性が低かった。
【0034】
[試験例4 おからペーストを用いた製パン試験]
おからペーストを生地に添加してパンを製造した場合の効果を検証した。対照例としておからペーストを入れない生地で作製したパンを3点とした。対照例においては生地性を比較例10と合わせるため、ミキシングの状態を確認しながら水分量を調整した(下記表参照) 。
(1)表6の配合にしたがって、ミキサーに小麦粉、塩、膨張剤、水、おからペーストを入れ、低速で5分間ミキシングした。
(2)全卵3質量部、バター5質量部、液糖7.5質量部、グラニュー糖5質量部、水あめ2.5質量部、イースト1.5質量部を加えてさらに低速で8分間ミキシングした。
(3)室内で30分間寝かした。
(4)生地を8~10mmの厚みに伸ばしてカットした。作業性を評価した。
(5)170℃で12分間焼成した。
(6)焼成後20分間室温で放冷し、外観と食感を評価した。
なお、作業性、外観及び食感は表5の評価基準2に従って10名のパネラーによって評価した。結果を表6に示す。
【0035】
【0036】
【0037】
おから乾燥粉末を使用し、F値が9以上の条件で加圧加熱殺菌処理を行ったおからペーストAを用いた実施例4は対照例と比較して作業性、焼成後の外観、食感のいずれにおいても優れていた。
おから乾燥粉末を使用するが、加圧加熱殺菌処理を行っていないおからペーストBを用いた比較例10は、食感は比較的良いものの、作業性、焼成後の外観においては対照例とほぼ同等であった。
生おからを使用しているが、F値が9以上の条件で加圧加熱殺菌処理を行ったおからペーストCを用いた比較例11では食感は対照例とほぼ同等であったが作業性、焼成後の外観は劣る結果となった。
生おからを使用し、加圧加熱殺菌処理を行っていないおからペーストDを用いた比較例12は、作業性、焼成後の外観、食感のいずれにおいても劣る結果となった。
おから乾燥粉末を使用するが、所定の加圧加熱殺菌処理条件を満たさない(F値が9未満)おからペーストEを用いた比較例13は、食感は比較的良いものの、作業性、焼成後の外観においては対照例に対する改善の程度が十分ではなかった。