(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】軽失禁パッド
(51)【国際特許分類】
A61F 13/533 20060101AFI20240704BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20240704BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240704BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20240704BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61F13/533 200
A61F13/532 100
A61F13/533 100
A61F13/53 100
A61F13/537 210
A61F13/537 310
A61F13/511 100
(21)【出願番号】P 2021212990
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 幹彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐介
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063976(JP,A)
【文献】特開2019-187740(JP,A)
【文献】特開2009-061026(JP,A)
【文献】特開平11-070144(JP,A)
【文献】特開2016-010594(JP,A)
【文献】特開2020-188917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0328587(US,A1)
【文献】特開2017-136111(JP,A)
【文献】国際公開第2021/153184(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/533
A61F 13/532
A61F 13/53
A61F 13/537
A61F 13/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸収ポリマーを有する吸収体と、
前記吸収体よりも肌面側に位置し、繊維を有する肌側シートと、
少なくとも前記肌側シートと前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有する軽失禁パッドであって、
前記圧搾部は、前記軽失禁パッドの前後方向及び幅方向に間隔を空けて配置された点状圧搾部を有し、
前記肌側シートの前記繊維の配向方向における前記点状圧搾部の長さは、前記配向方向と直交する直交方向における前記点状圧搾部の長さよりも長く、
前記吸収体において吸収材料を包むコアラップは、前記吸収体の肌面を構成する第1シートと、前記第1シートよりも非肌面側に位置する第2シートと、を有し、
前記第1シートは、前記吸収体の肌面から非肌面側に折り返され、前記第2シートの非肌面を覆う折り返し部を有し、
前記点状圧搾部は、前記折り返し部の内側縁よりも前記幅方向の内側のみに配置されている、軽失禁パッド。
【請求項2】
前記肌側シートの前記繊維の平均繊維長は、前記肌側シートの前記繊維の配向方向における前記点状圧搾部の長さよりも長い、請求項
1に記載の軽失禁パッド。
【請求項3】
前記肌側シートは、着用者の肌に当接するトップシートと、前記トップシートの非肌面側に配置されたセカンドシートと、を有し、
前記点状圧搾部は、前記軽失禁パッドの肌面側から非肌面側に凹んでおり、
前記トップシートの前記繊維の配向方向における前記点状圧搾部の長さは、前記配向方向に直交する直交方向における前記点状圧搾部の長さよりも長い、請求項
1に記載の軽失禁パッド。
【請求項4】
前記点状圧搾部は、千鳥状に配置されている、請求項
1に記載の軽失禁パッド。
【請求項5】
前記吸収体において吸収材料を包むコアラップは、熱可塑性繊維を有し、
前記点状圧搾部は、前記コアラップに形成されている、請求項
1に記載の軽失禁パッド。
【請求項6】
前記圧搾部は、前記前後方向に延びる線状圧搾部と、前記軽失禁パッドの前記前後方向及び前記幅方向に間隔を空けて配置された点状圧搾部と、を有し、
前記線状圧搾部の外側縁は、複数の前記点状圧搾部のうち最も前記幅方向の外側に位置する前記点状圧搾部の外側縁よりも前記幅方向の外側に位置する、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の軽失禁パッド。
【請求項7】
前記吸収体は、前記第1シートと前記第2シートによって前記高吸収ポリマーを挟んだ吸収シートであり、
前記高吸収ポリマーの坪量は、
前記第1シートの坪量よりも高く、前記第2シートの坪量よりも高い、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の軽失禁パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿等の体液を吸収する軽失禁パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高吸収性ポリマー(SAP)をシートによって挟んだ吸収体を有する軽失禁パッドが開示されている。特許文献1の吸収体は、繊維状材料からなる第1シートと、繊維状材料からなる第2シートと、第1シートと第2シートの間に配置された高吸収ポリマーと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
軽失禁パッドは、体液の引き込み性を向上させることを求められている。吸収体よりも肌側に位置する肌側シートと吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部が設けられた軽失禁パッドが知られている。しかし、圧搾部を設けることにより、肌側シートを構成する繊維の一部が切断することがある。吸収体内の高吸収ポリマーは、粒子状であり、パルプと比較して移動し易い。そのため、肌側シートの繊維の切断によって吸収体内の高吸収ポリマーが零れてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、体液の引き込み性を向上させつつ、吸収体から高吸収ポリマーが零れることを抑制できる軽失禁パッドを提供することを目的とする。
【0006】
第1態様にかかる軽失禁パッドは、高吸収ポリマーを有する吸収体と、前記吸収体よりも肌面側に位置し、繊維を有する肌側シートと、少なくとも前記肌側シートと前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有する。前記圧搾部は、前記軽失禁パッドの前記前後方向及び前記幅方向に間隔を空けて配置された点状圧搾部を有する。前記肌側シートの前記繊維の配向方向における前記点状圧搾部の長さは、前記配向方向と直交する直交方向における前記点状圧搾部の長さよりも長い。
【0007】
第2態様にかかる軽失禁パッドは、高吸収ポリマーを有する吸収体と、前記吸収体よりも肌面側に位置し、繊維を有する肌側シートと、少なくとも前記肌側シートと前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有する。前記圧搾部は、前記前後方向に延びる線状圧搾部を有する。前記吸収体は、前記股下域の前記前後方向の中心を含み、前記線状圧搾部が配置されていない股下中央域を有する。前記線状圧搾部は、前記股下中央域を前記前後方向に挟んで両側に位置し、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心である幅中心を挟んで一対で設けられている。前記股下中央域の前記前後方向の長さは、前記一対の線状圧搾部間の前記幅方向における間隔のうち最も短い最短間隔以上である。
【0008】
第3態様にかかる軽失禁パッドは、高吸収ポリマーを有する吸収体と、前記吸収体よりも肌面側に位置し、繊維を有する肌側シートと、少なくとも前記肌側シートと前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有する。前記圧搾部は、前記前後方向に延びる線状圧搾部を有する。前記吸収体は、前記股下域の前記前後方向の中心を含み、前記線状圧搾部が配置されていない股下中央域を有する。前記線状圧搾部は、前記股下中央域を前記前後方向に挟んで両側に位置し、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心である幅中心を挟んで一対で設けられている。前記線状圧搾部は、前記股下中央域よりも前側に位置する前側線状圧搾部と、前記股下中央域よりも後側に位置する後側線状圧搾部と、を有する。前記前側線状圧搾部の後端縁における前側線状圧搾部の内側縁の接線と、前記後側線状圧搾部の前端縁における後側線状圧搾部の内側縁の接線と、が交差する交点は、前記一対の線状圧搾部間の前記幅方向における間隔のうち最も短い最短間隔となる位置における前記線状圧搾部の内側縁と前記幅方向の位置が一致、又は前記最短間隔となる位置における前記線状圧搾部の内側縁よりも前記幅方向の内側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、肌面側から見た第1形態に係る軽失禁パッドの模式平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すA-A線に沿った模式断面図である。
【
図3】
図3は、第1形態に係る軽失禁パッドの
図1に示すB部分の拡大図である。
【
図4】
図4は、肌面側から見た第2形態に係る軽失禁パッド1Xの模式平面図である。
【
図5】
図5は、第2形態及び第3形態に係る軽失禁パッドの
図4に示すC部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
第1態様にかかる軽失禁パッドは、高吸収ポリマーを有する吸収体と、前記吸収体よりも肌面側に位置し、繊維を有する肌側シートと、少なくとも前記肌側シートと前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有する。前記圧搾部は、前記軽失禁パッドの前記前後方向及び前記幅方向に間隔を空けて配置された点状圧搾部を有する。前記肌側シートの前記繊維の配向方向における前記点状圧搾部の長さは、前記配向方向と直交する直交方向における前記点状圧搾部の長さよりも長い。本態様によれば、肌側シートと吸収体を厚み方向に圧縮した点状圧搾部によって、肌側シートから吸収体内への体液の引き込み性を向上できる。点状圧搾部は、間隔を空けて配置されており、連続して配置された線状圧搾部と比較して肌側シートの繊維の切断を抑制できる。加えて、点状圧搾部の配向方向の長さは、点状圧搾部の直交方向の長さよりも長い。よって、点状圧搾部によって分断する肌側シートの繊維の本数を抑制でき、肌側シートの繊維の分断による高吸収ポリマーの零れを抑制できる。よって、点状圧搾部による体液の引き込み性を向上しつつ、吸収体から高吸収ポリマーが零れることを抑制できる。
【0011】
好ましい一形態によれば、前記圧搾部は、前記前後方向に延びる線状圧搾部を有する。前記吸収体は、前記股下域の前記前後方向の中心を含み、前記線状圧搾部が配置されていない股下中央域を有する。前記線状圧搾部は、前記股下中央域を前記前後方向に挟んで両側に位置し、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心である幅中心を挟んで一対で設けられている。前記股下中央域には、前記点状圧搾部が複数配置されている。本態様によれば、股下中央域において線状圧搾部が配置されてなく、点状圧搾部が設けられているため、点状圧搾部間の非圧搾領域によって体液の引き込み性を向上させ、体液が多く排出される股下中央域の引き込みスピードを向上できる。加えて、線状圧搾部が配置されていない股下中央域に点状圧搾部を設けることで、脚等によって幅方向内側に向かう力を受けやすい股下中央域の剛性を確保できる。股下中央域のよれを抑制でき、股下中央域のよれに起因した高吸収ポリマーの零れを抑制できると共に、吸収体内への体液の引き込み性を確保できる。
【0012】
第2態様にかかる軽失禁パッドは、高吸収ポリマーを有する吸収体と、前記吸収体よりも肌面側に位置し、繊維を有する肌側シートと、少なくとも前記肌側シートと前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有する。前記圧搾部は、前記前後方向に延びる線状圧搾部を有する。前記吸収体は、前記股下域の前記前後方向の中心を含み、前記線状圧搾部が配置されていない股下中央域を有する。前記線状圧搾部は、前記股下中央域を前記前後方向に挟んで両側に位置し、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心である幅中心を挟んで一対で設けられている。前記股下中央域の前記前後方向の長さは、前記一対の線状圧搾部間の前記幅方向における間隔のうち最も短い最短間隔以上である。本態様によれば、股下中央域には、線状圧搾部が配置されていないため、体液が多く排出される股下中央域の引き込みスピードを向上できるとともに、線状圧搾部に起因した肌側シートの破れを抑制し、股下中央域における高吸収ポリマーの零れを抑制できる。また、股下中央域の前後方向の長さが最短間隔以上であるため、排泄口から排出された体液が放射状に拡散すると、体液は、股下中央域の前後方向の外側に位置する線状圧搾部よりも幅中心よりも幅方向の外側に位置する線状圧搾部に先に到達し易い。そのため、体液が前後方向に拡散しやすくなり、体液を広い範囲で吸収し、非肌面側への引き込み性を向上できる。
【0013】
好ましい一形態によれば、前記圧搾部は、前記軽失禁パッドの前記前後方向及び前記幅方向に間隔を空けて配置された点状圧搾部を有する。前記股下中央域には、前記点状圧搾部が配置されている。本態様によれば、点状圧搾部及び線状圧搾部によって、肌側シートから吸収体内への体液の引き込み性を向上できる。股下中央域を前後方向に挟んで線状圧搾部が配置されているため、当該線状圧搾部に過度に力がかかることを抑制し、線状圧搾部によって分断された繊維間の隙間による高吸収ポリマーの零れを抑制できる。また、点状圧搾部は、線状圧搾部よりも繊維の分断が生じ難く、股下中央域に力がかかっても、点状圧搾部によって分断された繊維間の隙間による高吸収ポリマーの零れを抑制できる。よって、圧搾部による体液の引き込み性を向上しつつ、吸収体から高吸収ポリマーが零れることを抑制できる。
【0014】
好ましい一形態によれば、前記肌側シートの前記繊維の平均繊維長は、前記配向方向における前記点状圧搾部の長さよりも長い。本態様によれば、肌側シートの平均繊維長が点状圧搾部の配向方向の長さよりも長いため、点状圧搾部の形成時に分断されていない繊維が点状圧搾部を配向方向に跨がって配置されやすい。よって、点状圧搾部を介しての高吸収ポリマーの零れを抑制できる。
【0015】
好ましい一形態によれば、前記肌側シートは、着用者の肌に当接するトップシートと、前記トップシートの非肌面側に配置されたセカンドシートと、を有し、を有する。前記点状圧搾部は、前記軽失禁パッドの肌面側から非肌面側に凹んでいる。前記トップシートの前記繊維の配向方向における前記点状圧搾部の長さは、前記配向方向と直交する直交方向における前記点状圧搾部の長さよりも長い。本態様によれば、点状圧搾部は、肌面側から非肌面側に凹んでいるため、最も肌面側に位置するトップシートの繊維が分断しやすい。本態様によれば、着用者の肌に接するトップシートの繊維間の分断を抑制し、当該トップシートの点状圧搾部を介しての高吸収ポリマーの零れを抑制できる。
【0016】
好ましい一形態によれば、前記点状圧搾部は、千鳥状に配置されている。本態様によれば、点状圧搾部が千鳥状に配置されているため、点状圧搾部が幅方向に沿って直線状に並んだ形態及び点状圧搾部が前後方向に沿って直線状に並んだ形態と比較して、幅方向及び前後方向に直線状に延びる変形起点のみが形成されにくく、幅方向及び前後方向に傾斜する方向にも変形起点が形成される。よって、幅方向の剛性が高くなりすぎることによる股下域の違和感を抑制するとともに、前後方向に直線状に延びる折れ基点が形成されることと抑制できる。
【0017】
好ましい一形態によれば、前記吸収体において吸収材料を包むコアラップは、前記吸収体の肌面を構成する第1シートと、前記第1シートよりも非肌面側に位置する第2シートと、を有する。前記第1シートは、前記吸収体の肌面から非肌面側に折り返され、前記第2シートの非肌面を覆う折り返し部を有する。本態様によれば、第1シートと第2シートによって吸収材料を包むことができ、また折り返し部が第2シートの非肌面側に位置するため、折り返し部のめくれを抑制できる。よって、吸収材料である高吸収ポリマーの零れ抑制できる。
【0018】
好ましい一形態によれば、前記圧搾部は、前記軽失禁パッドの前記前後方向及び前記幅方向に間隔を空けて配置された点状圧搾部を有する。前記点状圧搾部は、前記折り返し部の内側縁よりも前記幅方向の内側のみに配置されている。本態様によれば、折り返し部が配置された領域は、折り返し部の存在によって剛性が高くなり、折り返し部よりも幅方向の内側の領域は、点状圧搾部の存在によって剛性が高くなる。折り返し部と点状圧搾部を領域毎に分けて配置することで、点状圧搾部と折り返し部による作用効果を得つつも、吸収体の剛性差を低減できる。
【0019】
好ましい一形態によれば、前記吸収体において吸収材料を包むコアラップは、熱可塑性繊維を有する。前記点状圧搾部は、前記コアラップに形成されている。本態様によれば、点状圧搾部の形成によってコアラップの熱可塑性繊維が融着し、分断した繊維間の隙間を低減し、点状圧搾部を介しての高吸収ポリマーの零れを抑制できる。
【0020】
好ましい一形態によれば、前記圧搾部は、前記前後方向に延びる線状圧搾部と、前記軽失禁パッドの前記前後方向及び前記幅方向に間隔を空けて配置された点状圧搾部と、を有する。前記線状圧搾部の外側縁は、複数の前記点状圧搾部のうち最も前記幅方向の外側に位置する前記点状圧搾部の外側縁よりも前記幅方向の外側に位置する。本態様によれば、幅方向外側から内側に向かう力がかかると、まず線状圧搾部に力が伝わり、次いで点状圧搾部に力が伝わる。線状圧搾部を起点に前後方向に延びる変形起点を形成し、また前後方向の体液の拡散性を向上できる。また、点状圧搾部が直に力を受けにくいため、点状圧搾部の変形を抑制し、点状圧搾部において繊維が分断しても、当該繊維間の隙間を介して高吸収ポリマーが零れることを抑制できる。
【0021】
第3態様にかかる軽失禁パッドは、高吸収ポリマーを有する吸収体と、前記吸収体よりも肌面側に位置し、繊維を有する肌側シートと、少なくとも前記肌側シートと前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有する。前記圧搾部は、前記前後方向に延びる線状圧搾部を有する。前記吸収体は、前記股下域の前記前後方向の中心を含み、前記線状圧搾部が配置されていない股下中央域を有する。前記線状圧搾部は、前記股下中央域を前記前後方向に挟んで両側に位置し、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心である幅中心を挟んで一対で設けられている。前記線状圧搾部は、前記股下中央域よりも前側に位置する前側線状圧搾部と、前記股下中央域よりも後側に位置する後側線状圧搾部と、を有する。前記前側線状圧搾部の後端縁における前側線状圧搾部の内側縁の接線と、前記後側線状圧搾部の前端縁における後側線状圧搾部の内側縁の接線と、が交差する交点は、前記一対の線状圧搾部間の前記幅方向における間隔のうち最も短い最短間隔となる位置における前記線状圧搾部の内側縁と前記幅方向の位置が一致、又は前記最短間隔となる位置における前記線状圧搾部の内側縁よりも前記幅方向の内側に位置する。本態様によれば、交点において吸収体の変形を促し、交点の前後方向の延長線上又は交点よりも幅方向の外側に線状圧搾部が位置するため、交点よりも幅方向に広がる領域において、線状圧搾部間の領域(圧搾部がない領域)を確保でき、体液の吸収スピードを確保できる。また、最短間隔となる位置における線状圧搾部の内側縁よりも幅方向の内側に交点が位置する形態にあっては、最短間隔となる位置と、交点と、が幅方向にずれているため、最短間隔となる位置における線状圧搾部近傍の変形を抑制し、高吸収ポリマーの零れを抑制できる。
【0022】
好ましい一形態によれば、前記吸収体において吸収材料を包むコアラップは、前記吸収体の肌面を構成する第1シートと、前記第1シートよりも非肌面側に位置する第2シートと、を有する。前記吸収体は、前記第1シートと前記第2シートによって前記高吸収ポリマーを挟んだ吸収シートである。前記高吸収ポリマーの坪量は、第1シートの坪量よりも高く、前記第2シートの坪量よりも高い。本態様によれば、吸収シートは、パルプが主の吸収材料である吸収体と比較して、体液の引き込み性を十分に得にくいことがある。また、吸収シートは、パルプが主の吸収材料である吸収体と比較して、高吸収ポリマーの坪量が多く、高吸収ポリマーの零れが発生しやすい。当該吸収シートにおいて、体液の引き込み性を高めつつ、高吸収ポリマーの零れを抑制できる。
【0023】
(2)軽失禁パッドの全体概略構成
図1は、一実施形態における軽失禁パッド1の平面図である。
図2は、
図1に示すA-A線に沿った軽失禁パッド1の断面図である。
図3は、
図1に示すB部分の拡大図である。
図2においては、説明の便宜上、軽失禁パッド1を構成する各部材が部分的に厚み方向に離間しているが、実際の製品においては、各部材が接合された部分を有する。ここで、本発明における外端縁とは、前後方向Lの外側に位置する縁であり、内端縁とは、前後方向Lの内側に位置する縁である。ここで、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける縁である。
【0024】
軽失禁パッド1は、主として尿を吸収する目的の吸収性物品であり、ナプキンのように主として経血を吸収する目的でなく、おりものシートのように主としておりものを吸収する目的でない吸収性物品である。軽失禁パッド1の吸収材料は、主として高吸収ポリマーである。軽失禁パッド1の吸収体30における高吸収ポリマーの含有量は、吸収体全体の25%以上である。軽失禁パッド1は、生理用ナプキンと比較して薄型であり、自然状態における厚みは、4.5mm以下であってよく、より好適には、3.0mm以下であってよい。軽失禁パッド1は、互いに直交する前後方向Lと幅方向Wを有し、かつ着用者の肌面側T1から非肌面側T2へ延びる厚み方向Tを有する。肌面側T1は、使用時に、着用者の肌に面する側に相当する。非肌面側T2は、使用時に、肌面側T1とは反対側、すなわち着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。軽失禁パッド1は、股下域S1、前側域S2及び後側域S3を有する。股下域S1、前側域S2及び後側域S3は、軽失禁パッド1を前後方向Lに三等分した領域によって構成されてよい。股下域S1は、着用者の排泄口、例えば膣口に対向する領域である。軽失禁パッド1が下着に装着されたときに、股下域S1は下着の股下部に配置され、着用者の両足の間に配置される領域である。前側域S2は、股下域S1よりも前側に位置する。後側域S3は、股下域S1よりも後方に位置する。股下域S1は、後述するセカンドシート15が配置された領域であってよい。吸収体30が幅方向Wの内側に括れた括れ部を有する形態にあっては、股下域S1は、括れ部が設けられた領域であってもよい。また、軽失禁パッド1の外側縁に複数のくびれ部を有する形態にあっては、軽失禁パッド1の前後方向Lの中心を挟んで配置されたくびれ部の間の領域を、股下域S1としてもよい。また、圧搾部等の形状が幅方向に平行な仮想線に対して線対称の形態にあっては、当該仮想線を股下域S1の前後方向Lの中心として、股下域S1及び股下中央域S11の範囲を定めてもよい。
【0025】
軽失禁パッド1は、吸収体30と、肌側シート10と、裏面シート20と、を少なくとも有してよい。肌側シート10は、繊維を有し、吸収体30よりも肌面側T1に位置する。なお、肌側シート10は、その全体が吸収体30よりも肌面側T1に位置してなくてよく、少なくとも一部が吸収体30よりも肌面側T1に位置していればよい。肌側シート10は、着用者の肌に当接するトップシート11と、トップシート11の非肌面側T2に配置されたセカンドシート15と、を有してよい。トップシート11は、軽失禁パッド1の肌面全体に配置されていてもよいし、吸収体30の幅方向Wの中央を含む一定の領域に配置されてもよい。本実施の形態のトップシート11は、吸収体30の肌面側T1を覆っている。肌側シート10は、トップシート11の幅方向Wの外側部を覆うサイドシート12を有してよい。サイドシート12は、着用時に起立する防漏ギャザーを構成する。トップシート11は、軽失禁パッドの外縁(前後方向Lの端縁、及び幅方向Wの端縁)に到達している。トップシート11、セカンドシート15及びサイドシート12は、繊維を有していればよく、例えば、不織布によって構成されてよく、少なくともトップシート11は、液透過性を有し、サイドシート12は、その表面が疎水処理されていてもよい。サイドシート12の外側縁は、軽失禁パッドの外縁に位置し、サイドシート12の内側縁は、吸収体30の外側縁30Eよりも幅方向Wの内側に位置する。
【0026】
裏面シート20は、軽失禁パッド1の全域に配置されており、厚み方向Tの最も非肌面側T2に設けられている。裏面シート20は、液不透過性を有し、フィルムによって構成されてよい。裏面シート20の非肌面には、軽失禁パッド1を下着等の着用物品に接合する接合部60が設けられてよい。接合部60は、
図2に示すように、幅方向Wに間隔を空けて複数設けられてよい。本実施の形態の接合部60は、前後方向Lに沿って延びており、幅方向Wに間隔を空けて4本配置されている。接合部60は、吸収体の幅方向の中心である幅中心30CWに配置されず、幅方向Wにおいて幅中心30CWを挟んで両側に配置されている。幅中心30CWを挟んで両側に配置された接合部60同士の間隔は、後述する線状圧搾部の最短間隔G82よりも短い。よって、線状圧搾部82が設けられた領域を、接合部60を介して着用物品に止めることができ、線状圧搾部82が配置された領域の位置ずれを抑制できる。
【0027】
吸収体30は、体液を吸収する吸収材料として高吸収ポリマー35を有してればよい。吸収体30は、高吸収ポリマー35以外の吸収材料(例えば、パルプ)を有してもよい。吸収体30は、吸収材料を包むコアラップを有する。コアラップは、吸収材料を内包してなくてもよく、少なくとも吸収材料の肌面側T1を覆っていればよい。コアラップは、1枚のシートによって構成されていてもよいし、複数のシートを有してもよい。コアラップは、吸収体30の肌面を構成する第1シート31と、第1シート31よりも非肌面側T2に位置する第2シート32と、を有してよい。第2シート32は、吸収体30の非肌面を構成してよい。第1シート31は、吸収体30の肌面全面を構成する非折り返し部311と、吸収体30の非肌面側T2に折り返された折り返し部312と、を有してよい。折り返し部312は、第2シート32の非肌面側T2に配置されてよい。高吸収ポリマー35は、第1シート31と第2シート32の間に挟まれ、接着剤36を介して各シートに接合されていてもよい。
【0028】
コアラップは、第1シート31と第2シート32の間に配置された中間シート33を有してよい。高吸収ポリマー35は、第1シート31と中間シート33の間、及び第2シート32と中間シート33の間に配置されてよい。本態様によれば、中間シート33が肌面側T1と非肌面側T2の高吸収ポリマー35のそれぞれに絡むため、第1シート31及び第2シート32のみの形態と比較して、高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。中間シート33は、第1シート31及び第2シート32と共に、吸収体30の外縁に到達してもよいし、吸収体30の外縁に到達せずに、吸収体30の外縁よりも内側に配置されていてもよい。本実施の形態において、第1シート31と第2シート32は、エアレイドパルプによって構成され、中間シート33は、エアスルー不織布によって構成されてよい。
【0029】
軽失禁パッド1には、少なくとも肌側シート10及び吸収体30を厚み方向Tに圧縮した圧搾部80が設けられてよい。圧搾部80は、吸収体30と肌側シート10が厚み方向Tに圧縮されてよく、吸収体30とトップシート11のみが圧縮されていてもよいし、吸収体30、トップシート11及びセカンドシート15が圧縮されていてもよいし、吸収体30、トップシート11及びサイドシート12が圧縮されていてもよい。圧搾部80は、前後方向L及び幅方向Wに間隔を空けて配置された点状圧搾部81と、前後方向Lに延びる線状圧搾部82と、の少なくとも一方を有してよい。圧搾部80は、吸収体30が配置された領域に設けられてよく、股下域S1、前側域S2、後側域S3の全域に亘って設けられてよい。点状圧搾部81は、平面視にて間欠的に配置された圧搾部であればよく、その形状は問わない。すなわち、点状圧搾部81の平面視の形状は、円形(正円形、楕円形等)であってもよいし、多角形(三角形、正方形、長方形、五角形等)であってもよいし、絵柄(ハート柄、星柄等)であってもよい。点状圧搾部81同士の間隔は、各点状圧搾部81の最大寸法よりも長ければよい。線状圧搾部82は、前後方向Lに平行に延びる構成のみならず、前後方向Lに対して45度未満の角度で延びる構成も含む。線状圧搾部82は、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。曲線状の線状圧搾部82は、波状であってもよい。線状圧搾部82は、圧搾部が連続した部分であってもよいし、複数の圧搾部の集合体が線状に配置されていてもよい。なお、線状圧搾部82を構成する圧搾部同士の間隔は、当該構成する圧搾部の最大寸法よりも短くてよい。圧搾部80は、幅方向Wに線状に延びる幅圧搾部83を更に有してもよい。
【0030】
本実施の形態の吸収体30は、体液の引き込み性を向上させつつ、吸収体30から高吸収ポリマー35が零れることを抑制できるように構成されている。次いで、体液の引き込み性の向上しつつ高吸収ポリマー35の零れを抑制するための構成について詳細に説明する。体液の引き込み性の向上しつつ高吸収ポリマー35の零れを抑制するための構成は、大別して、第1形態と第2形態がある。本実施の形態では、第1形態及び第2形態のいずれにおいても共通の構成は、いずれかの図面において図示している。両方の形態の構成を備えていてもよいが、第1形態の構成と、第2形態の構成と、のいずれかの構成のみを備えることによっても、体液の引き込み性の向上しつつ高吸収ポリマー35の零れを抑制できる効果を得ることができる。
【0031】
まず、第1形態について説明する。第1形態において、圧搾部80は、点状圧搾部81を有していればよく、線状圧搾部82を有していなくてもよい。第1形態において、
図3に示すように、肌側シート10の繊維の配向方向における点状圧搾部81の長さL81は、配向方向と直交する直交方向における点状圧搾部81の長さW82よりも長くてよい。肌側シート10の繊維の配向方向は、点状圧搾部81が形成される肌側シート10の繊維の配向方向であってよく、トップシート11の繊維の配向方向であってもよいし、セカンドシート15の繊維の配向方向であってもよい。すなわち、トップシート11の繊維の配向方向に点状圧搾部81が長くてもよいし、セカンドシート15の繊維の配向方向に点状圧搾部81が長くてもよい。なお、繊維の配向方向は、不織布等のシートを製造する際の搬送方向(いわゆるMD方向)に相当する方向であり、シートの構成繊維の配向を拡大観察手段(例えば、マイクロスコープや走査型電子顕微鏡等)を用いて拡大観察することにより確認することができる。本実施の形態において、肌側シート10の配向方向は、前後方向Lであり、直交方向は、幅方向Wである。トップシート11の繊維の配向方向も、セカンドシート15の繊維の配向方向も前後方向Lである。なお、変形例において、肌側シート10の配向方向は、幅方向Wであり、直交方向は、前後方向Lであって、点状圧搾部81の前後方向Lに沿った長さが、点状圧搾部81の幅方向に沿った長さよりも短くてもよい。
【0032】
第1形態によれば、肌側シート10と吸収体30を厚み方向Tに圧縮した点状圧搾部81によって、肌側シート10から吸収体30内への体液の引き込み性を向上できる。点状圧搾部81は、間隔を空けて配置されており、連続して配置された線状圧搾部82と比較して肌側シート10の繊維の切断を抑制できる。加えて、点状圧搾部81の配向方向の長さL81は、点状圧搾部81の直交方向の長さW81よりも長い。すなわち、点状圧搾部81は、肌側シート10の繊維が延びる方向に長く、複数の繊維が隣接する直交方向の長さが短い。よって、点状圧搾部81によって分断する肌側シート10の繊維の本数を抑制でき、肌側シート10の繊維の分断による高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。よって、点状圧搾部81による体液の引き込み性を向上しつつ、吸収体30から高吸収ポリマー35が零れることを抑制できる。
【0033】
第1形態において、好適には、吸収体30は、股下域S1の前後方向Lの中心である股下中心S1CLを含み、線状圧搾部82が配置されていない股下中央域S11を有する。線状圧搾部82は、股下中央域S11を前後方向Lに挟んで両側に位置し、かつ幅中心30CWを挟んで一対で設けられている。股下中央域S11には、点状圧搾部81が複数配置されてよい。股下中央域S11は、当該領域の幅方向Wの全体に亘って線状圧搾部82が配置されていない領域である。本実施の形態の股下中央域S11の前後方向Lの範囲は、股下中心S1CLよりも前側に位置する線状圧搾部82の後端縁よりも後側であって、股下中心S1CLよりも後側に位置する線状圧搾部82の前端縁よりも前側の領域である。股下中央域S11の幅方向Wの範囲は、吸収体30の外側縁30E間の領域である。
図1において、股下中央域S11に斜線を付して示す。なお、幅圧搾部83を有する形態にあっては、股下中央域S11には、幅圧搾部83が設けられてなくてよい。すなわち、股下中央域S11は、線状に延びるいずれの圧搾部も設けられていないことが好ましい。股下中央域S11の前後方向Lの長さL11は、一対の線状圧搾部82間の幅方向における間隔のうち最も短い最短間隔G82以上であってよい。第1実施形態の股下中央域S11の前後方向Lの長さL11は、一対の線状圧搾部82の最短間隔G82と略同じである。
【0034】
股下中央域S11は、体液が多く排出され易い。股下中央域S11には、線状圧搾部82が配置されず、点状圧搾部81が配置されている。圧搾部80が設けられた領域は、体液の非肌面側T2への引き込み性を確保できる一方、非肌面側T2への体液の吸収スピードが低下することがある。股下中央域S11において線状圧搾部82が配置されてなく、点状圧搾部81間の非圧搾領域が設けられているため、体液が多く排出される股下中央域S11の引き込みスピードを向上できる。また、股下中央域S11を前後方向Lに挟んで線状圧搾部82が配置されていることにより、線状圧搾部82を介して吸収体30の前後方向Lの全体に体液を拡散し、吸収体30全体に亘って体液を吸収できる。加えて、線状圧搾部82が配置されていない股下中央域S11に点状圧搾部81を設けることで、脚等によって幅方向内側に向かう力を受けやすい股下中央域S11の剛性を確保できる。股下中央域S11のよれを抑制でき、股下中央域S11のよれに起因した高吸収ポリマーの零れを抑制できると共に、吸収体30内への体液の引き込み性を確保できる。
【0035】
次いで、第2形態に係る軽失禁パッド1Xについて、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、肌面側から見た第2形態に係る軽失禁パッド1Xの模式平面図である。
図5は、
図4に示すC部分の拡大図である。なお、以下の説明において、第1形態と同じ構成については、同符号を用いて説明を省略する。第2形態に係る軽失禁パッド1Xは、線状圧搾部82を有していればよく、点状圧搾部81を有していない。すなわち、第2形態において、股下中央域S11には、いずれの圧搾部80も設けられていなくてよい。第2形態において、線状圧搾部82は、股下中央域S11を前後方向Lに挟んで両側に位置し、かつ幅中心30CWを挟んで一対で設けられている。第2形態において、股下中央域S11の前後方向Lの長さL11は、一対の線状圧搾部82間の幅方向における間隔のうち最も短い最短間隔G82以上である。より好適には、股下中央域S11の前後方向Lの長さが、前後方向Lにおいて股下中央域S11に隣接する位置(線状圧搾部82の前後方向Lの内端縁)の線状圧搾部82の間隔以上であることが好ましい。また、L11=G82であってもよいが、好適には、L11>G82であってよい。より好適には、L11/G82は、1.2以上であってよく、更に好適には、1.5以上であってよい。L11は、20mm以上であってよく、好適には、30mm以上であってよい。
【0036】
第2形態によれば、股下中央域S11には、線状圧搾部82が配置されていないため、体液が多く排出される股下中央域S11の引き込みスピードを向上できる。また、仮に、股下中央域S11の前後方向Lの長さL11が最短間隔G82よりも短い形態にあっては、排泄口から排出された体液が放射状に拡散すると、体液は、幅中心30CWよりも幅方向Wの外側に位置する線状圧搾部82よりも、股下中央域S11よりも前後方向の外側に位置する線状圧搾部82に先に到達し易い。そのため、体液が幅方向Wに拡散しやすくなり、横漏れが発生しやすい。一方、股下中央域S11の前後方向Lの長さL11が最短間隔G82以上であることにより、排泄口から排出された体液が放射状に拡散すると、体液は、股下中央域S11よりも前後方向Lの外側に位置する線状圧搾部82よりも、幅中心30CWよりも幅方向Wの外側に位置する線状圧搾部82に先に到達し易い。そのため、体液が前後方向Lに拡散しやすくなり、体液を広い範囲で吸収し、非肌面側T2への引き込み性を向上できる。また、股下中央域S11に線状圧搾部82が設けられていないため、線状圧搾部82に起因した肌側シート10の破れを抑制し、股下中央域S11における高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。股下中央域S11は、着用者の排泄口に当たり易い領域であり、高吸収ポリマー35が排泄口に触れることによる違和感を抑制できる。
【0037】
第2形態において、股下中央域S11には、点状圧搾部81が配置されてもよい。点状圧搾部81及び線状圧搾部82によって、肌側シート10から吸収体30内への体液の引き込み性を向上できる。点状圧搾部81は、線状圧搾部82よりも繊維の分断が生じ難く、股下中央域S11に力がかかっても、点状圧搾部81によって分断された繊維間の隙間による高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。線状圧搾部82が配置されていない股下中央域S11に点状圧搾部81を設けることで、脚等によって幅方向Wの内側に向かう力を受けやすい股下中央域S11の剛性を確保できる。股下中央域S11のよれを抑制でき、股下中央域S11のよれに起因した高吸収ポリマー35の零れを抑制できると共に、吸収体30内への体液の引き込み性を確保できる。よって、圧搾部80による体液の引き込み性を向上しつつ、吸収体30から高吸収ポリマー35が零れることを抑制できる。
【0038】
次いで、第1形態及び第2形態において採用できる共通の好適な構成について説明する。肌側シート10の繊維の平均繊維長は、配向方向における点状圧搾部81の長さL11よりも長くてよい。ここで、平均繊維長は、中心線繊維長(Cont)による測定で長さ加重平均繊維長L(l)を意味する。長さ加重平均繊維長は、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)]により、L(l)値として測定される。なお、これはJIS P 8226-2(パルプ-工学的自動分析法による繊維長測定方法非偏光法に準ずる)で推奨されている方法でもある。また、本実施の形態のように、点状圧搾部81が複数の肌側シートに形成された構成にあっては、トップシート11の繊維の平均繊維長と、セカンドシート15の繊維の平均繊維長と、の少なくともいずれか一方が、点状圧搾部81の長さL11よりも長ければよい。本態様によれば、肌側シート10の平均繊維長が点状圧搾部81の配向方向の長さよりも長いため、点状圧搾部81の形成時に分断されていない繊維が点状圧搾部81を配向方向に跨がって配置されやすい。よって、点状圧搾部81を介しての高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。
【0039】
点状圧搾部81は、軽失禁パッド1の肌面側T1から非肌面側T2に凹んでよい。トップシート11の繊維の配向方向における点状圧搾部81の長さL81は、直交方向における点状圧搾部81の長さW81よりも長い。点状圧搾部81は、肌面側T1から非肌面側T2に凹んでいるため、最も肌面側に位置するトップシート11の繊維が分断しやすい。しかし、本態様によれば、点状圧搾部81によるトップシート11の繊維の分断を抑制し、当該トップシート11の点状圧搾部81を介しての高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。より好適には、セカンドシート15の繊維の配向方向における点状圧搾部81の長さL81は、直交方向における点状圧搾部81の長さW81よりも長くてよい。本態様によれば、セカンドシート15の繊維間の分断も抑制し、トップシート11及びセカンドシート15を介しての高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。
【0040】
点状圧搾部81は、千鳥状に配置されてよい。点状圧搾部81が千鳥状に配置されていることにより点状圧搾部81が幅方向に沿って直線状に並んだ形態及び点状圧搾部81が前後方向に沿って直線状に並んだ形態と比較して、幅方向及び前後方向に直線状に延びる変形起点のみが形成されにくく、幅方向及び前後方向に傾斜する方向にも変形起点が形成される。よって、幅方向の剛性が高くなりすぎることによる股下域S1の違和感を抑制するとともに、前後方向Lに直線状に延びる折れ基点が形成されることと抑制できる。
【0041】
吸収体は、第1シート31と第2シート32を有し、第1シート31は、吸収体30の肌面から非肌面側T2に折り返され、第2シート32の非肌面を覆う折り返し部312を有してよい。第1シート31と第2シート32によって吸収材料を包むことができ、また折り返し部312が第2シート32の非肌面側T2に位置するため、折り返し部312のめくれを抑制できる。よって、吸収材料である高吸収ポリマー35の零れ抑制できる。より好適には、吸収体30は、第1シート31と第2シート32の間に配置された中間シート33を有してよい。中間シート33の存在によって高吸収ポリマー35が繊維により引っかかり易くなり、高吸収ポリマー35の零れをより抑制できる。
【0042】
点状圧搾部81は、第1シート31の折り返し部312の内側縁よりも幅方向Wの内側のみに配置されてよい。すなわち、第1シート31の折り返し部312に重なる領域には、点状圧搾部81が配置されていなくてよい。折り返し部312が配置された領域は、折り返し部312の存在によって剛性が高くなり、折り返し部312よりも幅方向の内側の領域は、点状圧搾部81の存在によって剛性が高くなる。折り返し部312と点状圧搾部81を領域毎に分けて配置することで、点状圧搾部81と折り返し部312による作用効果を得つつも、吸収体30の剛性差を低減できる。
【0043】
吸収体30のコアラップ(第1シート及び第2シート)は、熱可塑性繊維を有してよい。点状圧搾部81は、熱可塑性繊維を有するコアラップに形成されてよい。点状圧搾部81の形成によってコアラップの熱可塑性繊維が融着し、分断した繊維間の隙間を低減し、点状圧搾部81を介しての高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。
【0044】
線状圧搾部82の外側縁82Eは、複数の点状圧搾部81のうち最も幅方向の外側に位置する点状圧搾部81の外側縁81Eよりも幅方向の外側に位置してよい本態様によれば、幅方向Wの外側から内側に向かう力がかかると、まず線状圧搾部82に力が伝わり、次いで点状圧搾部81に力が伝わる。線状圧搾部82を起点に前後方向Lに延びる変形起点を形成し、また前後方向Lの体液の拡散性を向上できる。また、点状圧搾部81が直に力を受けにくいため、点状圧搾部81の変形を抑制し、点状圧搾部81において繊維が分断しても、当該繊維間の隙間を介して高吸収ポリマー35が零れることを抑制できる。
【0045】
次いで、第3形態に係る軽失禁パッドについて、
図5を参照して説明する。
図5に係る軽失禁パッドは、第3形態に係る軽失禁パッドも示している。第3形態に係る軽失禁パッドは、線状圧搾部82を有していればよく、点状圧搾部81を有していない。第3形態において、線状圧搾部82は、股下中央域S11よりも前側に位置する前側線状圧搾部821と、股下中央域S11よりも後側に位置する後側線状圧搾部822と、を有する。なお、前側線状圧搾部821と、後側線状圧搾部822と、は、股下中心S1CLを通り、幅方向Wに延びる仮想線を中心として線対称であってもよいし、非対称であってもよい。
図5において、前側線状圧搾部821の後端縁821Rにおける前側線状圧搾部821の内側縁の接線をFL821として示し、後側線状圧搾部822の前端縁822Fにおける後側線状圧搾部822の内側縁の接線をFL822として示す。接線FL821と、接線FL822と、が交わる交点P1は、一対の線状圧搾部82間の幅方向Wにおける間隔のうち最も短い最短間隔G82となる位置における線状圧搾部82の内側縁よりも、幅方向Wの内側に位置してよい。または、交点P1の幅方向Wの位置は、最短間隔G82となる位置における線状圧搾部82の内側縁の幅方向Wの位置と一致してよい。すなわち、交点P1の前後方向Lの延長線上に最短間隔G82となる位置における線状圧搾部82の内側縁が配置されていてもよいし、交点P1の前後方向Lの延長線よりも幅方向Wの外側に最短間隔G82となる位置における線状圧搾部82の内側縁が配置されてよい。なお、第3形態では、最短間隔G82となる位置は、前側線状圧搾部821の後端縁821Rに一致するとともに、後側線状圧搾部822の前端縁822Fに一致しているが、当該形態に限られず、最短間隔G82となる位置と前側線状圧搾部821の後端縁821Rが前後方向Lに離間していてもよいし、最短間隔G82となる位置と後側線状圧搾部822の前端縁822Fが前後方向Lに離間していてもよい。また、最短間隔G82となる位置は、前側線状圧搾部821に位置してもよいし、後側線状圧搾部822に位置してもよい。
【0046】
一対の線状圧搾部82間の幅方向Wにおける間隔のうち最も短い最短間隔G82となる位置では、線状圧搾部82間の距離が短いため、吸収体30の密度が高くなり易い。吸収体30の密度が高い部分では、体液の吸収スピードが体液の拡散スピードに追いつかず、漏れが発生するおそれがある。特に、経血、おりもののような、粘度が比較的高い体液であれば、体液の拡散スピードも抑制されるため、漏れ難いが、尿のような、比較的粘度の低い体液であれば、拡散スピードが高く、漏れにつながり易い。しかし、最短間隔G82における左右の線状圧搾部82に挟まれた領域には、点状圧搾部81等の他の圧搾部が配置されてなく、吸収スピードの低下を抑制できる。また、前側線状圧搾部821を起点とした変形は、接線FL821に沿って延びやすく、後側線状圧搾部822を起点とした変形は、接線FL822に沿って延びやすい。当該変形が交差する点が、交点P1となる。交点P1において吸収体の変形を促し、変形の中心となる交点P1よりも幅方向の外側のみ又が交点P1の前後方向Lの延長線上に線状圧搾部82が位置するため、変形の中心となる交点P1よりも幅方向に広がる領域において、線状圧搾部82間の領域(圧搾部がない領域)を確保でき、体液の吸収スピードを確保できる。また、最短間隔G82となる位置では、肌側シート10の破れによる高吸収ポリマー35の零れが生じ易い。最短間隔G82となる位置において、軽失禁パッドが変形すると、高吸収ポリマーの零れがより生じ易くなる。しかし、最短間隔G82となる位置における線状圧搾部82の内側縁よりも幅方向Wの内側に交点P1が位置する形態にあっては、最短間隔G82となる位置と、交点P1と、が幅方向にずれているため、最短間隔G82となる位置における線状圧搾部82近傍の変形を抑制し、高吸収ポリマー35の零れを抑制できる。
【0047】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0048】
第1形態から第3形態において、吸収体30は、第1シート31と第2シート32によって高吸収ポリマー35を挟んだ吸収シートであってよい。高吸収ポリマー35の坪量は、第1シート31の坪量よりも高く、第2シート32の坪量よりも高くてよい。吸収シートは、パルプが主の吸収材料である吸収体と比較して、体液の引き込み性を十分に得にくいことがある。また、吸収シートは、パルプが主の吸収材料である吸収体と比較して、高吸収ポリマー35の坪量が多く、高吸収ポリマーの零れが発生しやすい。当該吸収シートにおいて、体液の引き込み性を高めつつ、高吸収ポリマーの零れを抑制できる。なお、当該坪量の比較は、複数のシート部材の坪量の合計でなく、各シート部材の坪量に基づいて比較する。高吸収ポリマー35の坪量が比較的高いことにより、吸収容量を確保できる。本実施の形態の第1シートの坪量及び第2シート32の坪量は、それぞれ50g/m2であり、中間シートの坪量は、40g/m2であり、高吸収ポリマー35の坪量は、100g/m2である。なお、複数のシート部材の坪量の合計は、高吸収ポリマー35の坪量よりも高くてよい。複数のシート部材によって高吸収ポリマー35を挟み込んで保持でき、軽失禁パッドの外面側から粒状の高吸収ポリマー35が当たることによる違和感を抑制できる。
【符号の説明】
【0049】
1、1X:軽失禁パッド
10:肌側シート
11:トップシート
12:サイドシート
15:セカンドシート
20:裏面シート
30:吸収体
31:第1シート
311:折り返し部
32:第2シート
33:中間シート
35:高吸収ポリマー
80:圧搾部
81:点状圧搾部
82:線状圧搾部
S1:股下域
S11:股下中央域
S2:前側域
S3:後側域
L:前後方向
W:幅方向
T:厚み方向
T1:肌面側
T2:非肌面側