IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

<>
  • 特許-測定システム及び偏心補正方法 図1
  • 特許-測定システム及び偏心補正方法 図2
  • 特許-測定システム及び偏心補正方法 図3
  • 特許-測定システム及び偏心補正方法 図4
  • 特許-測定システム及び偏心補正方法 図5
  • 特許-測定システム及び偏心補正方法 図6
  • 特許-測定システム及び偏心補正方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】測定システム及び偏心補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20240705BHJP
   G01B 21/30 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G01B21/00 F
G01B21/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020047805
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148559
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健人
(72)【発明者】
【氏名】山形 智生
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-242292(JP,A)
【文献】特開平11-194276(JP,A)
【文献】特開2010-089182(JP,A)
【文献】特開2002-098523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーテーブル上に載置されたワークの表面形状を測定する測定システムであって、
前記ワークを測定するよう構成されたセンサを保持するロボットアームと、
前記ロータリーテーブルに対して相対的に移動可能に構成されたプローブであって、前記ロータリーテーブルの中心の座標及び前記ワークの中心の座標を測定するプローブと、
前記プローブにより測定された前記ワークの中心の座標と前記ロータリーテーブルの中心の座標とに基づいて、前記ロータリーテーブルの中心と前記ロータリーテーブル上に載置された前記ワークの中心との偏心量を算出する偏心量算出手段と、
前記偏心量算出手段により算出された前記偏心量に基づいて、前記ロボットアームの教示点からオフセットされた測定位置を算出する測定位置算出手段と、
を備え
前記ロータリーテーブルは三次元測定機に設けられ、前記三次元測定機に前記プローブが備えられ、前記ロボットアームは前記三次元測定機とは別部材であり、前記センサは粗さ測定機である測定システム。
【請求項2】
前記測定位置算出手段により算出された前記測定位置に基づいて前記ロボットアームを前記ロータリーテーブルに対して相対的に移動させる相対移動手段、
を備える、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記ワークを前記ロータリーテーブルに載置した状態で前記ロータリーテーブルを回転させた場合、前記偏心量算出手段は、回転前の偏心量と前記ロータリーテーブルの回転角とに基づいて、回転後の偏心量を算出する、
請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記ロータリーテーブルの回転軸上に配置された球を備え、
前記プローブは、前記球の中心の座標を前記ロータリーテーブルの中心の座標として測定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項5】
前記球は前記ワークを保持する治具に設けられる、
請求項4に記載の測定システム。
【請求項6】
前記ロボットアームは、前記三次元測定機の定盤に設けられる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項7】
ロータリーテーブル上に載置されたワークの表面形状を測定する測定システムにおいて、前記ロータリーテーブルの中心と前記ワークの中心との偏心を補正する偏心補正方法であって、
前記ロータリーテーブルに対して相対的に移動可能に構成されたプローブを用いて、前記ロータリーテーブルの中心の座標を取得する回転中心座標取得ステップと、
前記プローブを用いて、前記ロータリーテーブル上に載置された前記ワークの中心の座標を取得するワーク中心座標取得ステップと、
前記ロータリーテーブルの中心の座標と前記ワークの中心の座標とに基づいて、前記ロータリーテーブルの中心と前記ワークの中心との偏心量を算出する偏心量算出ステップと、
前記ワークを測定するよう構成されたセンサを保持するロボットアームの教示点を、前記偏心量算出ステップにより算出された前記偏心量に基づいてオフセットさせた測定位置を算出する測定位置算出ステップと、
を含み、
前記ロータリーテーブルは三次元測定機に設けられ、前記三次元測定機に前記プローブが備えられ、前記ロボットアームは前記三次元測定機とは別部材であり、前記センサは粗さ測定機である偏心補正方法。
【請求項8】
前記測定位置算出ステップにより算出された前記測定位置に基づいて前記ロボットアームを前記ロータリーテーブルに対して相対的に移動させる相対移動ステップを含む、
請求項に記載の偏心補正方法。
【請求項9】
前記偏心量算出ステップは、前記ワークを前記ロータリーテーブルに載置した状態で前記ロータリーテーブルを回転させた場合、回転前の偏心量と前記ロータリーテーブルの回転角とに基づいて回転後の偏心量を算出することを含む、
請求項又はに記載の偏心補正方法。
【請求項10】
前記回転中心座標取得ステップは、前記ロータリーテーブルの回転軸上に配置された球の座標を測定することを含む、
請求項からのいずれか1項に記載の偏心補正方法。
【請求項11】
前記ロボットアームは、前記三次元測定機の定盤に設けられる、
請求項7から10のいずれか1項に記載の偏心補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定システム及び偏心補正方法に関し、特に三次元測定機とロータリーテーブルとを使用した測定システム及びその測定システムにおける偏心補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロータリーテーブルを三次元測定装置上に設置し、ロータリーテーブルを回転させて、ロータリーテーブル上に載置された測定対象物(以下、ワークと称する)の複数の測定面を測定する技術が提案されてきた。このような三次元測定装置では、ロータリーテーブルの中心位置とワークの中心位置とのずれ、つまり、偏心を抑える必要がある。
【0003】
偏心を抑える手法として、例えば、最も単純には、ワークを載置するための治具の製作精度を上げ、ワークと治具との位置決めを精密に行うことが挙げられる。
【0004】
あるいは、特許文献1に記載されるような位置調整機構を有する治具にワークを載置して、偏心量を調整する手法もある。この場合、ワークを治具に載置した状態で予備測定を行ってワークとロータリーテーブルとの偏心の大きさ及び方向を測定し、偏心が小さくなるように位置調整機構を作業員が操作する。このような調整を行った後、実際にワークの測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-155308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の手法の効果は、いずれも、ワークとロータリーテーブルと治具との位置決め精度、及び、ロータリーテーブルと治具との加工精度に依存する。そして、そのような加工精度が高いロータリーテーブル及び治具を製作するためには多大なコストがかかるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1には、ワークを治具に載置する際に、作業員がその都度位置調整機構を操作する必要があるため、ワークを載置する際の工数が多くなるという問題もあった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ロータリーテーブルの中心位置とワークの中心位置との偏心を容易に且つ安価に補正することが可能な測定システム及びその測定システムにおける偏心補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る測定システムは、ロータリーテーブル上に載置されたワークの表面形状を測定する測定システムであって、ワークを測定するよう構成されたセンサを保持するロボットアームと、ロータリーテーブルに対して相対的に移動可能に構成されたプローブであって、ワークの中心の座標及びロータリーテーブルの中心の座標を測定するプローブと、プローブにより測定されたワークの中心の座標とロータリーテーブルの中心の座標とに基づいて、ロータリーテーブルの中心とロータリーテーブル上に載置されたワークの中心との偏心量を算出する偏心量算出手段と、偏心量算出手段により算出された偏心量に基づいて、ロボットアームの教示点からオフセットされた測定位置を算出する測定位置算出手段と、を備える。
【0010】
第1の態様に係る偏心補正システムによれば、プローブによって測定されたワークの中心の座標とロータリーテーブルの中心の座標とから偏心量を算出し、算出された偏心量に基づいてロボットアームの教示点からオフセットされた測定位置を算出する。
【0011】
従って、たとえ治具の製作精度や位置決め精度が劣っているために偏心を抑えられない場合であっても、容易に偏心量を算出し、容易にロボットアーム20の教示点をオフセットさせた測定位置を算出することができる。
【0012】
偏心を抑えるために加工精度及び位置決め精度を上げることは必ずしも必要ではないため、加工精度及び位置決め精度を上げるためにロータリーテーブル及び治具にかかるコストを低減することができる。
【0013】
好ましくは、第1の態様に係る測定システムは、測定位置算出手段により算出された測定位置に基づいてロボットアームをロータリーテーブルに対して相対的に移動させる相対移動手段を備える。
【0014】
算出された偏心量に基づいてロボットアームの教示点からオフセットされた測定位置に、相対移動手段によりロボットアームをロータリーテーブルに対して移動させることにより、偏心を自動的に補正することができる。偏心を補正するために作業員による操作は不要となるため、ワークを載置する際の工数を低減することができる。
【0015】
第1の態様に係る測定システムにおいて、好ましくは、ワークをロータリーテーブルに載置した状態でロータリーテーブルを回転させた場合、偏心量算出手段は、回転前の偏心量とロータリーテーブルの回転角とに基づいて、回転後の偏心量を算出する。
【0016】
ロータリーテーブルを回転させた場合に、ロータリーテーブルを回転させた後の偏心量を数値演算のみで算出することができるため、作業効率よくワークを測定することができる。
【0017】
好ましくは、第1の態様に係る測定システムは、ロータリーテーブルの回転軸上に配置された球を備え、プローブは、球の中心の座標をロータリーテーブルの中心の座標として測定する。また、第1の態様に係る測定システムにおいて、好ましくは、球はワークを保持する治具に設けられる。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の第2の態様に係る偏心補正方法は、ロータリーテーブル上に載置されたワークの表面形状を測定する測定システムにおいて、ロータリーテーブルの中心とワークの中心との偏心を補正する偏心補正方法であって、ロータリーテーブルに対して相対的に移動可能に構成されたプローブを用いて、ロータリーテーブルの中心の座標を取得する回転中心座標取得ステップと、プローブを用いて、ロータリーテーブル上に載置されワークの中心の座標を取得するワーク中心座標取得ステップと、ロータリーテーブルの中心の座標とワークの中心の座標とに基づいて、ロータリーテーブルの中心とワークの中心との偏心量を算出する偏心量算出ステップと、ワークを測定するよう構成されたセンサを保持するロボットアームの教示点を、偏心量算出ステップにより算出された偏心量に基づいてオフセットさせた測定位置を算出する測定位置算出ステップと、を含む。第2の態様に係る偏心補正方法によっても、第1の態様に係る測定システムと同様の効果を得ることができる。
【0019】
好ましくは、第2の態様に係る偏心補正方法は、測定位置算出ステップにより算出された測定位置に基づいてロボットアームをロータリーテーブルに対して相対的に移動させる相対移動ステップを含む。
【0020】
第2の態様に係る偏心補正方法において、好ましくは、偏心量算出ステップは、ワークをロータリーテーブルに載置した状態でロータリーテーブルを回転させた場合、回転前の偏心量とロータリーテーブルの回転角とに基づいて回転後の偏心量を算出することを含む。
【0021】
第2の態様に係る偏心補正方法において、好ましくは、回転中心座標取得ステップは、ロータリーテーブルの回転軸上に配置された球の座標を測定することを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ロータリーテーブル上に載置されたワークの表面形状を測定する測定システムであって、ロータリーテーブルの中心位置とワークの中心位置との偏心を容易に且つ安価に補正することが可能な測定システム及びその測定システムにおける偏心補正方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】測定システムの斜視図
図2】測定システムの機能ブロック図
図3】ロータリーテーブルにワークを載置した状態を示す平面図
図4】ロータリーテーブルに載置されたワークの近傍を示す側面図
図5】偏心補正方法を示すフローチャート
図6】ロータリーテーブルの中心の座標、ワークの中心の座標及び偏心量の関係の模式図
図7】ロータリーテーブルを角度θだけ回転させた場合におけるロータリーテーブルの中心の座標、ワークの中心の座標及び偏心量の関係の模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明に係る測定方法の実施形態について説明する。なお、図面において基本的に同じ構成要素には同じ参照符号を付している。
【0025】
図1は本実施形態に係る測定システム100の斜視図である。まず、図1を用いて測定システムの概略構成について説明する。
【0026】
なお、以下の説明では、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は互いに直交する方向であり、X軸方向は水平方向、Y軸方向はX軸方向に直交する水平方向、Z軸方向は上下方向(垂直方向)である。
【0027】
図1に示すように、測定システム100は、三次元測定機(CMMともいう。CMM:Coordinate Measuring Machine)10、粗さ測定機30、ロボットアーム20、ロータリーテーブル40、及び、統括コントローラ50(図2)を備える。
【0028】
三次元測定機10は、測定対象の三次元座標を測定する。本実施形態では、測定システム100において、ロータリーテーブル40の中心とワークWの中心との偏心を測定し、補正する場合、三次元測定機10(プローブ15)はロータリーテーブル40の中心の座標及びワークWの中心の座標を測定する(後述)。
【0029】
本実施形態では、三次元測定機10の例として、ビーム13及びコラム14により構成される門を有する門型の三次元測定機について説明するが、三次元測定機10を門型に限定する趣旨ではない。ホリゾンタルアーム型、多関節アーム型等の様々な三次元測定機を用いることが可能である。
【0030】
図1に示すように、三次元測定機(門型の三次元測定機)10は、定盤11、ヘッド12、ビーム(梁)13、1対のコラム(支柱)14、及び、プローブ15を備える。
【0031】
定盤11は、X-Y平面に平行な平面状に形成されている。定盤11には、定盤11の表面から図中上側(+Z軸方向)に伸びる一対のコラム(支柱)16が取り付けられている。コラム14の上端部(+Z側の端部)には、ビーム13が架け渡されている。一対のコラム14は、定盤11上をY軸方向に同期して移動可能であり、ビーム13は、X軸方向に平行な状態で、Y軸方向に移動可能である。
【0032】
コラム14を定盤11に対して移動させるための駆動手段として、例えば、モータを使用することができる。
【0033】
ビーム13には、Z軸方向に伸びるヘッド12が取り付けられている。ヘッド12は、ビーム13の長さ方向(X軸方向)に沿って移動可能である。ヘッド12をビーム13に対して移動させるための駆動手段(不図示)として、例えば、モータを使用することができる。
【0034】
ヘッド12の下端部(-Z側の端部)には、プローブ15が図中上下方向(Z軸方向)に移動可能に取り付けられている。プローブ15を上下方向に移動させるための駆動手段(不図示)としては、モータを使用することができる。
【0035】
プローブ15は、スタイラス16及び測定子17を備える。スタイラス16は剛性が高い軸状の部材であり、スタイラス16の材料としては、例えば、超硬質合金、チタン、ステンレス、セラミック、カーボンファイバー等を使用することができる。
【0036】
測定子17はスタイラス16の先端部に設けられる。三次元測定を行う場合には、コラム14、ヘッド12及びプローブ15をXYZ軸方向に移動させて、測定子17で測定対象物の表面上を走査する。三次元測定は接触測定でもよいし、非接触測定でもよい。
【0037】
接触測定を行う場合、測定子17の材料は、好ましくは、硬度が高く、耐摩耗性に優れる。測定子26の材料としては、例えば、ルビー、窒化珪素、ジルコニア、セラミック等を使用することができる。測定子26の直径(以下、スタイラス径という。)は一例で4.0mmである。非接触測定を行う場合、プローブ15は、例えばレーザプローブである。
【0038】
三次元測定機10は、コラム14、ヘッド12及びプローブ15のそれぞれの移動量を測定するための移動量測定部(例えば、不図示のリニアエンコーダ)を含む。汎用測定プログラムを使用して移動量測定部の測定結果を処理することにより、測定対象物の三次元座標(形状、寸法)等が得られる。
【0039】
粗さ測定機30はロボットアーム20の先端に保持されており、ワークWの表面の粗さを測定するセンサを有する。粗さ測定機30は接触式でもよいし非接触式でもよい。また、粗さ測定機30は例示にすぎず、粗さ測定機以外にも、輪郭形状測定機等の様々な、表面形状測定機(センサ)を用いることができる。
【0040】
ロボットアーム(ロボットとも呼ばれる)20は、X軸、Y軸及びZ軸方向に、定盤11(及びロータリーテーブル40)に対して相対的に移動可能に構成されている。ロボットアーム20を駆動することにより、ロボットアーム20に保持されている粗さ測定機30の位置を変更することができる。また、後述のように、ロボットアーム20を定盤11に対して相対的に移動させることにより、ロータリーテーブル40の中心とワークWの中心とのずれ(偏心)を補正することもできる。
【0041】
図1では、ロボットアーム20の一例として多関節ロボットアームを示す。ロボットアーム20は、複数の可動部と、複数の可動部をそれぞれ駆動する複数のモータ(相対移動手段)とを備える。これにより、ロボットアーム20はX軸、Y軸及びZ軸方向に、定盤11(及びロータリーテーブル40)に対して相対的に駆動可能である。図1のロボットアーム20は例示にすぎず、ロボットアーム20を多関節ロボットアームに限定する趣旨ではない。パラレルリンクロボットアーム、直交ロボットアーム等の様々なロボットアームを用いることが可能である。
【0042】
また、図1ではロボットアーム20は定盤11の上に設けられている。ロボットアーム20を定盤11の上に設ける場合、ロボットアーム20の振動系は三次元測定機10の水平方向(X方向及びY方向)及び垂直方向(Z方向)の振動系と同じになり、ロボットアーム20は外部環境の振動(例えば、地面の振動)から影響を受けづらくなる。そのため、外部環境の振動による影響を低減させ、粗さ測定機30によるワークWの測定の精度を向上させることができるという利点がある。
【0043】
しかしながら、ロボットアーム20の設置位置を定盤11の上に限定する趣旨ではない。当然ながら、ロボットアーム20を定盤11の外に設けてもよい。
【0044】
ロータリーテーブル40は定盤11上に設けられる。ロータリーテーブル40は不図示のモータを有し、X-Y平面に平行な平面上で、Z軸に平行な回転軸を中心に回転可能に構成される。本実施形態では、反時計回りの回転を正方向の回転として説明する。
【0045】
更に、ロータリーテーブル40は、ロータリーテーブル40を回転させた際の回転角を測定する機能を有する。回転角を測定する機能は、例えば公知のロータリーエンコーダや角度センサ(不図示)により実現される。
【0046】
図2は、測定システム100の機能ブロック図である。図2に示すように、統括コントローラ50は、例えば、フィールドネットワークを介して、三次元測定機10、ロボットアーム20、粗さ測定機30及びロータリーテーブル40と接続され、これらとの間でデータ及び信号を通信することによりこれらを統括して制御する。
【0047】
統括コントローラ50は、測定機コントローラ51、ロボットアームコントローラ52、センサコントローラ53、回転コントローラ54、及びインターフェース55を備える。
【0048】
測定機コントローラ51は、三次元測定機10の各駆動手段を制御し、各駆動手段との間で送受信するデータの変換処理を行う。例えば、測定機コントローラ51は、三次元測定機10のコラム14、ヘッド12及びプローブ15のそれぞれの移動量を処理することにより、ワークWの三次元座標(形状、寸法)等を算出する。
【0049】
ロボットアームコントローラ52は、ユーザの操作、又は、教示データ等の専用のプログラムにより自動で、ロボットアーム20に備えられているモータ等を制御することにより、ロボットアーム20を作動させる。測定システム100においてロータリーテーブル40の中心とワークWの中心との偏心を測定し、補正する場合、ロボットアームコントローラ52は、例えば、後述の偏心量算出手段及び測定位置算出手段を実現する。
【0050】
センサコントローラ53及び回転コントローラ54は、それぞれ、ユーザの操作又は専用のプログラムにより自動で、粗さ測定機30及びロータリーテーブル40を制御する。
【0051】
測定機コントローラ51、ロボットアームコントローラ52、センサコントローラ53、及び回転コントローラ54は、1以上のプロセッサを備える1以上のコンピュータを用いて実現することができる。プロセッサとして、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate ArraY)などが挙げられる。
【0052】
コンピュータとして例えば、パソコン、マイクロコンピュータ、PLC(Programmable Logic Controller)等が挙げられる。コンピュータは、ROMやRAMなどのメモリ、ハードディスクなどの外部記録装置、入力装置、出力装置、ネットワーク接続装置などを備えてもよい。メモリには、各装置及び手段を制御するためのプログラムが記憶されており、このプログラムをプロセッサが読み出し実行することにより、各種の演算処理や制御処理が実行される。
【0053】
例えば、統括コントローラ50のメモリ(不図示)に、三次元測定機10、粗さ測定機30、ロボットアーム20及びロータリーテーブル40を駆動させるためのプログラム等を記憶し、このプログラムをプロセッサが読み出し実行することにより、後述の偏心補正方法の手順を自動で行うこともできる。
【0054】
インターフェース55はユーザや各機器との間で命令やデータをやり取りする手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、ディスプレイ、スピーカ、データ通信機器(ネットワーク接続機器)等である。
【0055】
次に、図3及び図4を用いて本実施形態に係る測定システム100にワークWを載置した状態について説明する。以下の説明では、例として、略円形状の外形を有するワークWをロータリーテーブル40上に載置し、ロータリーテーブル40によってワークWを例えば所定角度づつ回転させることにより、粗さ測定機30を用いてワークW上の複数の場所を測定する場合を想定する。当然ながら、ワークの形状、及び、測定システム100で測定するパラメータを限定する趣旨ではない。
【0056】
図3及び図4は、ロータリーテーブル40上に測定対象であるワークWを載置した状態を示す平面図及び側面図である。図3に示すように、ワークWはロータリーテーブル40上に治具41を介して載置される。治具41は、例えば3以上の支持点を有し、これらの支持点でワークWと接触することにより、ワークWを支持する。ワークWを支持することができれば、治具41はどのような形状でもよい。
【0057】
また、治具41は、ロータリーテーブル40の中心のX-Y平面上の座標を測定するための球42を有する。球42は、ロータリーテーブル40の回転軸上に設けられる。図4では、球42は支持棒43により下方から支持されているが、この構成に限定されない。例えば、球42は不図示の支持棒により上方から支持されてもよい。
【0058】
次に、本実施形態に係る偏心補正方法について説明する。図5は、本実施形態に係る偏心補正方法を示すフローチャートである。
【0059】
図5において、向かって左側が三次元測定機10の測定機コントローラ51によって制御される処理であり、向かって右側がロボットアーム20のロボットアームコントローラ52によって制御される処理である。
【0060】
まず、三次元測定機10は、ロータリーテーブル40の回転軸上にある球42の座標を測定することにより、ロータリーテーブル40の中心のX-Y平面上の座標(X,Y)を取得する(ステップS10:回転中心座標取得ステップ)。
【0061】
続いて、治具41を用いてワークWをロータリーテーブル40に載置する。そして、三次元測定機10により略円形状のワークWの幾何要素を測定することにより、ワークWの中心WCのX-Y平面上の座標(X,Y)を求める(ステップS12:ワーク中心座標取得ステップ)。このステップは、ワークWをロータリーテーブル40に載置するたびに行われる。
【0062】
続いて、ロータリーテーブル40の中心のX-Y平面上の座標(X,Y)と、ワークWの中心WCのX-Y平面上の座標(X,Y)との差から、X軸方向及びY軸方向の偏心量(ΔX,ΔY)を算出する。具体的には偏心量(ΔX,ΔY)は以下の数1により算出される(ステップS14:偏心量算出ステップ)。
【0063】
【数1】
【0064】
図6に、ロータリーテーブル40の中心の座標、ワークWの中心の座標及び偏心量の関係の模式図を示す。図6に示すように、偏心量(ΔX,ΔY)は、ロータリーテーブル40の中心の位置X軸方向及びY軸方向についてワークWの中心WCの位置がずれている方向(偏心の方向)とずれている距離(偏心の大きさ)を示す。
【0065】
続いて、三次元測定機10は算出された偏心量をロボットアーム20に出力する(フィードバックする)(ステップS16)。ロボットアーム20は偏心量を受け取ると(ステップS20)、ロボットアーム20はその偏心量分だけロボットアーム20の教示点の座標からずれた座標(オフセットされた位置)をロボットアーム20の測定位置として算出する(ステップS22:測定位置算出ステップ)。なお、ロボットアーム20に複数の教示点が設定されている場合、必ずしもすべての教示点について上記のようなオフセットを行う必要はない。例えば、ロボットアーム20と、周辺設備やワークWとが偏心によって干渉することを避けるために必要な教示点についてのみオフセットを行えば十分である。
【0066】
次に、ロボットアーム20を測定位置に移動させ(ステップS24:相対移動ステップ)偏心を補正する。その後、教示データに従って粗さ測定機30によりワークWの粗さを測定する(ステップS26:測定ステップ)。
【0067】
従来、偏心を抑えるために、治具の製作精度を上げ、ワークと治具との位置決めを精密に行っていた。一方、本実施形態では、三次元測定機10により取得されたロータリーテーブル40の中心の座標とワークWの中心の座標とに基づいて偏心量を算出し、この偏心量に基づいて算出された測定位置にロボットアーム20を移動させることにより、偏心を補正する。
【0068】
本実施形態によれば、たとえ治具の製作精度や位置決め精度が劣っている場合であっても、容易に偏心量を算出し、偏心を補正することができる。このため、本実施形態では、偏心を抑えるために必ずしも高い加工精度及び高い位置決め精度を必要としない。これにより、従来、加工精度及び位置決め精度を上げるためにロータリーテーブル及び治具にかかっていたコストを低減することができる。
【0069】
更に、特許文献1に記載されるような位置調整機構を有する治具を用いる場合、偏心が小さくなるように位置調整機構を作業員が操作することから、ワークWを治具41に載置する際の工数は増加するという問題があった。一方、本実施形態によれば、三次元測定機10によって取得されたロータリーテーブル40の中心の座標(球42の座標)とワークWの中心WCの座標とに基づいて自動的にロボットアーム20を移動させることにより偏心を補正することができる。偏心を補正するために作業員による操作は不要であるため、必要であったワークWを治具41に載置する際の工数を低減することができる。
【0070】
ステップS26でワークWの粗さを測定した後、ワークWに他に測定すべき場所があるか否か判定する(ステップS28)。例えば、図2に示すような歯車形状のワークWについて歯車の各々の歯の粗さを粗さ測定機30で測定する場合、まだ粗さを測定してない歯があるか否か判定する。
【0071】
他に測定すべき場所がない場合(ステップS28:NO)、処理は終了する。他に測定すべき場所がある場合(ステップS28:YES)、次に測定すべき場所が粗さ測定機30に対向するように所定角度だけロータリーテーブル40を回転させてから(ステップS30:回転ステップ)、ステップS14に戻る。
【0072】
ここで、図7を用いて、ロータリーテーブル40を回転させた場合の偏心量の算出方法について説明する。図7は、図6の状態からロータリーテーブル40を反時計回りに角度θだけ回転させた場合における、ロータリーテーブル40の中心の座標、ワークWの中心の座標及び偏心量の関係の模式図である。図7において、一点鎖線は、ロータリーテーブル40を回転させる前の状態を示す。実線はロータリーテーブル40を角度θだけ回転させた後の状態を示す。
【0073】
球42はロータリーテーブル40の回転軸上にあるため、ロータリーテーブル40の回転の前後で球42の位置は不変である。しかし、ワークWの中心WCがロータリーテーブル40の中心からずれている場合(偏心している場合)、図7に示すように、ワークWの中心WCの位置は回転前の座標から球42を中心に角度θだけ回転した座標に移動する。この結果、偏心量は、回転前の(ΔX,ΔY)から(ΔX´,ΔY´)に変化する。
【0074】
この回転後の偏心量(ΔX´,ΔY´)は、ロータリーテーブル40の中心を原点としてワークWの中心WCの座標を回転角θだけ回転させる回転変換により算出することができる。具体的には、回転後の偏心量(ΔX´,ΔY´)は以下の数2のように回転角θの回転行列R(θ)により算出することができる。
【0075】
【数2】
【0076】
このように、ロータリーテーブル40を回転させた後の偏心量は、回転前の偏心量と回転角θとに基づいて数値演算のみで算出することができる。ロータリーテーブル40を回転させた場合であっても、再度ワークWの中心の座標を測定する必要はないため、作業効率よくワークWを測定することができる。
【0077】
<効果>
以上で説明したように、本実施形態では、三次元測定機10により取得されたロータリーテーブル40の中心の座標とワークWの中心の座標とに基づいて偏心量を算出し、この算出された偏心量に基づいてロボットアーム20の教示点をオフセットさせた測定位置を算出する。
【0078】
たとえ治具の製作精度や位置決め精度が劣っているために偏心を抑えられない場合であっても、容易に偏心量を算出し、容易にロボットアーム20の教示点をオフセットさせた測定位置を算出することができる。そのため、偏心を抑えるために加工精度及び位置決め精度を上げることは必ずしも必要ではない。
【0079】
これにより、加工精度及び位置決め精度を上げるためにロータリーテーブル及び治具にかかるコストを低減することができる。
【0080】
また、本実施形態では、三次元測定機10によって取得されたロータリーテーブル40の中心の座標とワークWの中心WCの座標とに基づいて偏心量を算出し、相対移動手段により算出された偏心量に基づいてロボットアーム20を自動的に移動させることにより偏心を補正することができる。偏心を補正するために作業員による操作は不要であるため、ワークWを治具41に載置する際の工数を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態では、ロータリーテーブル40を回転させた後の偏心量は、回転前の偏心量と回転角θとに基づいて数値演算のみで算出することができる。ロータリーテーブル40を回転させた場合であっても、再度ワークWの中心の座標を測定する必要はないため、作業効率よくワークWを測定することができる。
【0082】
<その他>
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
10:三次元測定機
11 :定盤
12 :ヘッド
13 :ビーム
14 :コラム
15 :プローブ
16 :スタイラス
17 :測定子
20 :ロボットアーム
30 :粗さ測定機
40 :ロータリーテーブル
41 :治具
42 :球
43 :支持棒
50 :統括コントローラ
51 :測定機コントローラ
52 :ロボットアームコントローラ
53 :センサコントローラ
54 :回転コントローラ
55 :インターフェース
100 :測定システム
W :ワーク
WC :ワークの中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7