(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】アクティブ型の振動制御装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240705BHJP
G12B 9/08 20060101ALI20240705BHJP
G05D 19/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F16F15/02 A
G12B9/08 B
G05D19/02 A
(21)【出願番号】P 2019132904
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(73)【特許権者】
【識別番号】512180296
【氏名又は名称】日本防振株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100676
【氏名又は名称】IMV株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】田川 泰敬
(72)【発明者】
【氏名】武藤 学
(72)【発明者】
【氏名】川田 浩二
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-257419(JP,A)
【文献】特開2014-054627(JP,A)
【文献】特開平06-307494(JP,A)
【文献】特開2005-127460(JP,A)
【文献】特開平11-094014(JP,A)
【文献】特開平07-310779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
G12B 1/00- 17/08
G05D 5/00- 5/06
G05D 15/00- 15/01
G05D 17/00- 19/02
G05D 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体・液晶工場や精密製品の加工工場等における被制御物の振動抑制・制御に用いる振動制御装置であって、制御対象エリアの床上に直に設置するように構成した嫌振架台の上に被制御物を配置して、当該嫌振架台の剛性を維持したままで特定の周波数帯域で有効な振動を抑制可能として嫌振架台に対する振動制御を行うようにしたアクティブ型の振動制御装置であって、
前記嫌振架台
及び/又は床の振動を検出する振動検出センサと、前記嫌振架台外周部の一箇所又は複数箇所に添設した反力支持部材と、前記嫌振架台側の反力支持部材に対し先端部を当接させるアクチュエータと、前記振動検出センサの検出信号を基に、前記アクチュエータに対して前記床の振動を、特定周波数帯域において前記嫌振架台の嫌振板部に伝達することを抑制するための駆動制御信号として生成し、アクチュエータの先端部を駆動制御信号に応じて往復変位させて前記反力支持部材を介して嫌振架台の剛性を維持したまま前記嫌振架台の振動を打ち消すアクチュエータ駆動制御手段と、
を具備し、
前記嫌振架台は、上面側に平坦で被制御物を設置する嫌振板部を備え、その下部に嫌振基台部を配置して、制御対象エリアの床から立設した基礎支柱により前記嫌振基台部を支持し、これらを一体化して全体として平面視矩形状を呈するように構成されているとともに、当該嫌振架台は、制御対象エリアの前記床上に直に設置されて被制御物の振動抑制・制御を行うように構成したことを特徴とし、
前記嫌振架台の剛性を維持したままで特定周波数帯域で嫌振架台の振動を打ち消し抑制できるようにし、前記嫌振架台の固有振動数を30Hzから100Hzまでの間の振動数まで確保できるようにしたことを特徴とするアクティブ型の振動制御装置。
【請求項2】
前記反力支持部材、アクチュエータは、前記嫌振架台に対してX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の三軸方向のうち、いずれか一軸方向、いずれか二軸方向、又は三軸全方向に配置されて構成し、前記嫌振架台の振動制御効果を一層高めることができるようにしたことを特徴とする請求項1記載のアクティブ型
の振動制御装置。
【請求項3】
前記特定周波数帯域は、
2Hzから5Hzの低周波数帯域にして構成し、建物固有振動発生時の振動抑制対策としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクティブ型
の振動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブ型の振動制御装置に関し、詳しくは、半導体・液晶工場や精密製品加工工場等における被制御物の振動抑制制御に用いて好適なアクティブ型の振動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、工場のクリーンルーム内に設置されている製造装置は、加工及び検査精度が高く、外乱振動や中小規模地震でも製品に影響を及ぼすため、周辺環境・設置基準に応じた振動対策が必須である。
【0003】
このような製造装置や検査装置に伝搬する振動を抑制する手法としては、一般的に装置全体を除振装置に搭載するか、嫌振架台(剛性床)で床補強を行い振動環境の改善を行っている。
【0004】
半導体製造装置は、工場のレイアウトや設置環境が常に変化するために、装置を導入した後に振動問題が発生すると対応が困難である。
【0005】
また、除振台はバネ(サスペンション)等で支持されているため剛性が小さく、小規模な地震でも装置上で振動が増幅してしまい、床振動を制御しても装置性能に影響を及ぼす場合がある。また、除振台上の被制御物が可動部を含む場合、可動部の運動により振動が増幅することもある。
【0006】
特許文献1には、架台に支持された床上に設置した嫌振機器に振動が伝達しないようにするアクティブ除振装置であって、前記架台を構成する梁に設けられ、電圧を印加することにより歪を発生させる圧電素子と、前記圧電素子を設けた梁に設けられ、該梁の振動を計測する計測手段と、前記計測手段の計測結果に基づいて前記圧電素子に印加する電圧値を制御し、前記振動により前記梁に生じた歪を抑止する方向の歪を前記圧電素子に発生させる制御手段と、から構成したアクティブ除振装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1のアクティブ除振装置の場合、架台を構成する横梁に圧電素子を取り付けることにより、この横梁の弾性振動を抑制することが主目的であり、当該特許文献1の装置のような構造では、横梁の弾性振動を抑制できたとしても、床からの振動伝達を防ぐことはできないことから、後記する本願発明の装置が目的としているような設置床からの振動伝達の効率的な抑制はできない。
【0008】
また、特許文献2には、棒状構造物の軸線から偏位した位置に取り付けられ電圧をかけられることにより伸縮する圧電体と、上記棒状構造物の振動を検知するための振動検出手段と、該振動検出手段の検出値に基づいてその振動を抑制すべく上記圧電体に電圧をかける印加手段とを備えた構成の棒状構造物の振動制御装置が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2の棒状構造物の振動制御装置の場合、例えばトランスファープレスのクロスバーのような棒状構造物の弾性振動制御に関するものであり、前記特許文献1における装置の構造と同様に、当該特許文献2の装置のような構造では、後記する本願発明の装置が目的としているような床振動の効率的な抑制はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平8-326835号公報
【文献】実開平6-076741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における上記事情に鑑み開発されたものであり、半導体工場等のクリーンルームの床構造は一般的に2重床構造となっており、また、剛性確保のために嫌振架台(剛性床)を設置している場合が多いが、その嫌振架台(又は搭載装置フレームや装置脚部)等にアクティブ型のアクチュエータを外側から付加し、嫌振架台等の剛性を保持したまま特定の周波数帯域で有効な振動を抑制することが可能で、更に、既存の嫌振架台等にアクチュエータを付加することにより簡易に実現できるため、例えば工場等のレイアウト変更後の新たな振動問題の発生に対して迅速、容易に対応可能なアクティブ型の振動制御装置を提供するものである。
【0012】
なお、本発明のアクティブ型の振動制御装置における上記嫌振架台以外の対象物としては、例えば、鉄骨又はコンクリート製の架台、或いは振動制御装置内部で装置本体を支えている架台やフレーム等を挙げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、制御対象エリアの床上に設置されるとともに、上部に被制御物を設置する嫌振架台(又は鉄骨又はコンクリート製の架台、或いは振動制御装置内部で装置本体を支えている架台やフレーム)等に対する振動制御を行うアクティブ型の振動制御装置であって、前記嫌振架台、床のいずれか一方(或いは嫌振架台及び床)の振動を検出する振動検出センサと、前記嫌振架台外周部に添設した反力支持部材(又は反力支持機構部)と、前記嫌振架台側の反力支持部材に対し先端部を当接させるアクチュエータと、前記振動検出センサの検出信号を基に、前記アクチュエータに対して前記嫌振架台、床のいずれか一方(或いは嫌振架台及び床)の振動を、特定周波数帯域において前記嫌振架台等々の嫌振板部(嫌振部分)に伝達することを抑制するための駆動制御信号を生成し、アクチュエータの先端部を駆動制御信号に応じて往復変位させて前記反力支持部材を介して嫌振架台の剛性を維持したまま前記嫌振架台の振動を打ち消すアクチュエータ駆動制御手段と、を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、嫌振架台を、剛性の小さいバネ材等で支持した除振台を使用することなく、かつ、アクティブ除振装置の上での使用を前提とせず、制御対象エリアの前記床上に直に設置されて、上面側に平坦で被制御物を設置する嫌振板部を備え、その下部に嫌振基台部を配置し、制御対象エリアの前記床から前記嫌振基台部を支持するように構成したものであることから、前記嫌振架台の剛性を維持したままで特定周波数帯域で嫌振架台の振動を打ち消し抑制できるようにし、前記嫌振架台の固有振動数を30Hzから100Hzまでの間の振動数まで確保できるようにしたことを特徴とするアクティブ型の振動制御装置を実現し提供することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な効果を奏し、かつ、嫌振架台外周部の一箇所又は複数箇所に剛性の高い反力支持部材を添設し、アクチュエータの硬度の大きい先端部を前記嫌振架台側の反力支持部材に対し操作力にて進退動可能に当接させる構成としているので、嫌振架台の剛性をより確実に保持し、また、嫌振架台側の反力支持部材に対する先端部の位置の最適化を図ることもできるアクティブ型の振動制御装置を実現することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、前記特定周波数帯域を、2Hzから5Hzの低周波数帯域と構成し、建物固有振動発生時の振動抑制対策とした請求項1又は2に記載のアクティブ型の振動制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は本発明の実施例に係るアクティブ型の振動制御装置、及び嫌振架台の概略構成図である。
【
図2】
図2は本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置、及び嫌振架台の概略平面図である。
【
図3】
図3は本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置における嫌振架台に対する反力支持部材の取り付け態様を示す概略部分拡大図である。
【
図4】
図4は本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置におけるアクチェータの概略正面図である。
【
図5】
図5は本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置におけるアクチェータの概略左側面図である。
【
図6】
図6は本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置におけるアクチェータの内部構成を示す概略正面図である。
【
図7】
図7は本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置におけるアクチェータの概略右側面図である。
【
図8】
図8は本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置の制御系を示すブロック図である。
【
図9】
図9は嫌振架台に関する実物大試験における周波数、速度、加速度、変位の特性を示す図である。
【
図10】
図10は嫌振架台に関する実物大試験における架台剛性の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、嫌振架台にアクティブ型のアクチュエータを外側から付加し、嫌振架台の剛性を保持したまま特定の周波数帯域で有効な振動を抑制することが可能なアクティブ型の振動制御装置を提供するという目的を、制御対象エリアの床上に設置されるとともに、上部に被制御物を設置する嫌振架台に対する振動制御を行うアクティブ型の振動制御装置であって、前記嫌振架台、床のいずれか一方(或いは嫌振架台及び床)の振動を検出する振動検出センサと、前記嫌振架台(又は鉄骨又はコンクリート製の架台、フレーム、振動制御装置全体を支えている架台、フレーム、鉄骨又はコンクリート製の梁、根太、支柱等々)の外周部の一箇所又は複数箇所に添設した剛性の高い反力支持部材と、前記嫌振架台等の側の反力支持部材に対し操作力にて進退動可能に硬度の大きい先端部を当接させるアクチュエータと、前記振動検出センサの検出信号を基に、前記アクチュエータに対して前記嫌振架台、床のいずれか一方(或いは嫌振架台及び床)の振動を、特定周波数帯域において前記嫌振架台等々の嫌振板部(嫌振部分)に伝達することを抑制するための駆動制御信号を生成し、アクチュエータの先端部を駆動制御信号に応じて往復変位させて前記反力支持部材を介して嫌振架台の剛性を維持したまま前記嫌振架台の振動を打ち消すアクチュエータ駆動制御手段と、を有する構成により実現した。
【実施例】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るアクティブ型の振動制御装置について詳細に説明する。
【0023】
まず、
図1乃至
図3を参照して、本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置1、及び嫌振架台(剛性床)21について説明する。
【0024】
前記したように、本発明のアクティブ型の振動制御装置1における嫌振架台21以外の対象物としては、例えば、鉄骨又はコンクリート製の架台、或いは振動制御装置内部で装置本体を支えている架台やフレーム等を挙げることができるが、以下の実施例では、振動制御装置1における対象物を嫌振架台21として説明する。
【0025】
本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置1は、嫌振架台21に対するアクティブ型の振動制御を行うものである。
【0026】
前記嫌振架台21は、上面側に平坦で被制御物Oを設置する嫌振板部22を備え、その下部に嫌振基台部23を配置し、制御対象エリアの床2から立設した基礎支柱24により前記嫌振基台部23を支持し、これらを一体化して、全体として例えば平面視矩形状を呈するように構成している。
【0027】
本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置1は、前記床2、嫌振架台21の地震等に伴う振動を検出する振動検出センサ3aと、前記嫌振基台部23の外周部の一箇所又は複数箇所(本実施例では2箇所)に反力支持部材における支持部により支持されつつ添設した剛性(例えば鋼板等)の高い反力支持部材25と、前記嫌振基台部23側の反力支持部材25に対しハンドル34による操作力にて進退動可能とした硬度の大きい先端部32を当接させる例えば2台並列のピエゾを用いたアクチュエータ駆動部33を備えるアクチュエータ31と、前記振動検出センサ3aの検出信号を基に、前記アクチュエータ31に対して特定周波数帯域、例えば2~5Hzの低周波数帯域で前記嫌振架台21、床2のいずれか一方(或いは嫌振架台21及び床2)の振動を、前記嫌振架台21の嫌振板部22に伝達することを抑制するための駆動制御信号として生成し、アクチュエータ駆動部33を駆動して前記先端部32を駆動制御信号に応じて往復変位させ前記反力支持部材25を介して前記嫌振架台21の剛性を維持したまま前記嫌振架台21の振動を打ち消すアクチュエータ駆動制御手段41と、を有している。
【0028】
なお、振動検出センサ3bは、モニターとしての作用を発揮するが、前記振動検出センサ3aと同様に、前記アクチュエータ31に対して特定周波数帯域で前記嫌振架台21、床2のいずれか一方(或いは嫌振架台21及び床2)の振動を、前記嫌振架台21の嫌振板部22に伝達することを抑制するための駆動制御信号として生成するようにもできる。
【0029】
また、前記振動検出センサ3bは、前記低周波数帯域で前記嫌振架台21、床2のいずれか一方(或いは嫌振架台21及び床2)の振動の駆動制御信号を生成する際、逆位相の振動を発生させて駆動制御信号を生成することもできる。
【0030】
ピエゾ素子を用いた前記アクチュエータ31は、高い分解能、高いエネルギー効率、大きな耐荷重、早い応答性等優れた効果を発揮する。
【0031】
次に、
図4乃至
図8を参照して、前記アクチュエータ31について詳述する。
【0032】
前記アクチュエータ31は、ベース基板31bを備える直方体状のアクチュエータ本体31aと、このアクチュエータ本体31aの右側板の外側からアクチュエータ本体31a内を貫き左側板の外側の外側に至る範囲に配置した円形のハンドル34、円形棒状の連結ネジ35、例えばコイルバネからなるバネ材36、例えばピエゾ素子を用いたアクチュエータ駆動部33、先端部32の直列連結構造と、前記アクチュエータ本体31a内、及び左側板の外側にわたって配置した前記連結ネジ35、バネ材36、アクチュエータ駆動部33、鋼板等からなる先端部32を水平配置に支持するとともに、前記アクチュエータ駆動部33の動作に連動して前記先端部32を前記反力支持部材25に対して往復変位可能とする第1支持機構部37と、前記アクチュエータ本体31aの右側板外側に配置したハンドル34を回転操作可能に支持し、ハンドル34の回転操作に応じて前記連結ネジ35、バネ材36を介して前記アクチュエータ駆動部33、先端部32の前記反力支持部材25に対する予圧縮力を調整可能とする第2支持機構部38と、を具備している。
【0033】
前記アクチュエータ駆動制御手段41は、
図8に示すように、このアクチュエータ駆動制御手段41の動作プログラムを格納したプログラムメモリ及び演算部42と、前記動作プログラムに基づき各要素の制御を行う制御部43と、前記振動検出センサ3a(或いは振動検出センサ3a、3b)からの信号をデジタル信号に変換し、振動抑制プログラム及び演算部42に送るA/D変換器44a、44bと、を具備し、前記動作プログラム及び振動検出センサ3a(或いは振動検出センサ3a、3b)からのデジタル化された検出信号を基に、前記アクチュエータ31のアクチュエータ駆動部33に対して、前記嫌振架台21、床2のいずれか一方(或いは嫌振架台21及び床2)の振動で、かつ、特定周波数帯域で有効な振動を発生させる駆動制御信号を生成し、この駆動制御信号を基にD/A変換器45、駆動アンプ46を経てアクチュエータ駆動部33を駆動制御し、前記アクチュエータ駆動部33の先端部32を駆動制御信号に応じて往復変位させて前記反力支持部材25を介して嫌振架台21の剛性を維持したまま嫌振架台21の振動を打ち消す構成になっている。
【0034】
図9は嫌振架台に関する実物大試験における周波数、速度、加速度、変位の特性を示すものであり、また、
図10は嫌振架台に関する実物大試験における架台剛性(水平方向)の特性を示すものである。
【0035】
実物大試験は、前記嫌振板部22の大きさ1800×2400mm、高さ350mmのものを使用し、前記嫌振板部22に前記振動検出センサ3a(或いは嫌振板部22と床2に振動検出センサ3a、3b)を設置し、前記アクチュエータ31により前記反力支持部材25を介して前記
嫌振板部22に対して制御信号を付与し、前記振動検出センサ3a(或いは振動検出センサ3a、3b)の検出信号にFFT処理(周波数分析処理)を行って、嫌振架台21の周波数(Hz)、速度(mm/sec)、加速度(Gal)、変位(μm〉に関する特性を
図9に示すように取得したものである。
【0036】
図9から明らかなように嫌振架台21上において床2上に比較し建物の固有振動数に対して有効な周波数帯域2~5Hzにおける振動抑制効果が確認された。
【0037】
また、
図10から明らかなように嫌振架台21の架台剛性は、1×10^8N/m以上と十分な剛性が確認された。
【0038】
上述した本実施例においては、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の三軸方向のうち、X方向の振動を抑制する構成を示したが、この他、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の三軸方向のうち、前記反力支持部材25、アクチュエータ31を、前記嫌振架台21に対して、いずれか二軸方向又は三軸全方向に配置しこれらを同時制御する構成としてこれら各方向の振動抑制を行い、振動抑制効果をより高めるようにすることも可能である。
【0039】
また、前記反力支持部材25としては、嫌振架台21の仕様に合わせて、高さ、寸法を調整可能な構成とし、サイズの異なる嫌振架台21に対応可能な構成とすることもできる。
【0040】
更に、前記アクチュエータ31としては、上述した場合の他、超磁歪アクチュエータやリニアアクチュエータ等を採用することも可能である。
【0041】
本実施例に係るアクティブ型の振動制御装置1によれば更に以下の効果を奏する。
【0042】
(a)従来のアクティブ除振装置とは異なり、嫌振架台21の剛性を保ったまま振動抑制が可能である。
(b)剛性の小さいバネ材等で支持した除振台を不要とする。
(c)嫌振架台21の導入(搭載)後の取り付け(後付け)が可能である。すなわち、既存の嫌振架台21にアクチュエータを付加することにより簡易に実現できるため、例えば工場等のレイアウト変更後の新たな振動問題の発生に対して迅速、容易に対応できる。
(d)制御プログラムを調整するのみで、異なる設置環境に柔軟に対応できる。
(e)嫌振架台21を移動させることなく設置することが可能(大掛かりな工事が不要)である。
(f)建物自体の剛性を高める、或いは振動減衰装置を付加する等の大規模な工事を必要としない。
(g)嫌振架台21側の反力支持部材25に対し操作力にて進退動可能に先端部32を当接させるアクチュエータ31を採用しているので、嫌振架台21側の反力支持部材25に対する先端部32の位置の最適化を図ることができる。
(h)2台並列のアクチュエータ駆動部33を備えるアクチュエータ31を採用する構成等、予備機構を有するようにすれば、一部故障しても運用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のアクティブ型の振動制御装置は、上述した場合の他、高層階建物の固有振動や中小規模の地震に対する振動制御用途として広範に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 アクティブ型の振動制御装置
2 床
3a 振動検出センサ
3b 振動検出センサ
21 嫌振架台
22 嫌振板部
23 嫌振基台部
24 基礎支柱
25 反力支持部材(又は反力支持機構部)
31 アクチュエータ
31a アクチュエータ本体
31b ベース基板
32 先端部
33 アクチュエータ駆動部
34 ハンドル
35 連結ネジ
36 バネ材
37 第1支持機構部
38 第2支持機構部
41 アクチュエータ駆動制御手段
42 振動抑制プログラム及び演算部
43 制御部
44a A/D変換器
44b A/D変換器
45 D/A変換器
46 駆動アンプ
O 被制御物