(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
F22D 11/00 20060101AFI20240705BHJP
F01K 9/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F22D11/00 D
F01K9/00 B
F01K9/00 Z
(21)【出願番号】P 2019042827
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2021-12-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 達也
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】竹下 和志
【審判官】間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159236(JP,A)
【文献】特開昭63-3298(JP,A)
【文献】特開平4-316902(JP,A)
【文献】特開平5-296009(JP,A)
【文献】特開昭63-131959(JP,A)
【文献】特開2017-56428(JP,A)
【文献】特開2007-64546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/00
F01K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を生成するボイラと、
該ボイラからの蒸気によって駆動される蒸気タービンと、
該蒸気タービンから排気された蒸気を液化する復水器と、
前記蒸気タービンによって駆動される発電機と、
前記復水器から温水ラインを介して送られてくる温水を冷却して冷水とし、該冷水を冷水ラインを介して該復水器に返送する冷却塔と
を有する発電システムにおいて、
該温水ラインから温水を往送ラインによって半導体製造工場又は水処理設備の熱交換器に供給し、該熱交換器からの低温水を返送ラインによって直接に該冷水ラインに導く温水利用手段を備
え(ただし、該返送ラインに冷却塔が設けられている態様を除く。)
、かつ、前記往送ラインに、該往送ラインを流れる温水を加熱するための加熱器を備えたことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記ボイラ、復水器及び発電機が第1区画に配備され、前記冷却塔が第2区画に配備されており、
該第1区画で生じた排水と第2区画で生じた排水とを共通の排水処理設備で処理することを特徴とする請求項
1の発電システム。
【請求項3】
前記ボイラに供給される補給水を製造する水処理装置が前記第2区画に設置されていることを特徴とする請求項
2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記第2区画の電気機器は商用電源によって作動することを特徴とする請求項
2又は
3の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ及び発電機を有する発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電システムの余熱を利用して温水を周辺地域に供給したり、温水プールを運営したりすることが広く行われている。
【0003】
また、木質系や農業系・汚泥系などのバイオマス由来のバイオマス燃料は、バイオマスの成育過程において二酸化炭素を取り込むことから、地球温暖化ガスとなる二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルとされるため、バイオマス燃料を用いたボイラで発電を行う発電プラントが検討されている。
【0004】
特許文献1には、バイオマスボイラを備えた発電プラントにおいて、蒸気タービンから抽気した蒸気によってボイラ給水を加熱することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、木質バイオマス発電プラントの余熱により生成させた温水を利用して魚類の養殖を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-162739号公報
【文献】特開2017-195742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、他施設と熱を共同利用したり一部設備を共用化したりすることができる発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発電システムは、蒸気を生成するボイラと、該ボイラからの蒸気によって駆動される蒸気タービンと、該蒸気タービンから排気された蒸気を液化する復水器と、前記蒸気タービンによって駆動される発電機と、前記復水器から温水ラインを介して送られてくる温水を冷却して冷水とし、該冷水を冷水ラインを介して該復水器に返送する冷却塔とを有する発電システムにおいて、該温水ラインから温水を往送ラインによって他施設の熱交換器に供給し、該熱交換器からの低温水を返送ラインによって該冷水ラインに導く温水利用手段を備える。
【0009】
本発明の一態様では、前記往送ラインに、該往送ラインを流れる温水を加熱するための加熱器を備える。
【0010】
本発明の一態様では、前記ボイラ、復水器及び発電機が第1区画に配備され、前記冷却塔が第2区画に配備されており、該第1区画で生じた排水と第2区画で生じた排水とを共通の排水処理設備で処理する。
【0011】
本発明の一態様では、前記排水処理設備の少なくとも主要部は前記第2区画に設けられている。
【0012】
本発明の一態様では、前記ボイラに供給される補給水を製造する水処理装置が前記第2区画に設置されている。
【0013】
本発明の一態様では、前記第2区画の電気機器は商用電源によって作動する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発電システムによると、他施設と熱を共同利用したり一部設備を共用化したりすることができる。
【0015】
本発明の一態様によると、復水器から冷却塔へ送られる温水の一部を他施設の熱交換器に供給し、熱交換器で降温した低温水を復水器へ戻すことにより、冷却塔の負荷が小さくなり、冷却塔における水の蒸発量が削減されると共に、循環ポンプやファンの節電にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の発電システムの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して実施の形態に係る発電システムについて説明する。木質チップなどのバイオマスを燃料とするボイラ1で発生した蒸気がタービン2に供給され、発電機3が駆動される。タービン2から排出された蒸気は、復水器4にて復水となり、ボイラ1に返送される。
【0018】
復水器4へは、冷却塔5から冷水が冷水ライン6及び循環ポンプ(図示略)を介して供給されると共に、温水が温水ライン7を介して冷却塔5へ送水される。温水ライン7の途中から往送ライン9が分岐しており、往送ライン9を介して温水の少なくとも一部が他プラント等の他施設10の熱交換器(図示略)に供給され、熱交換器で熱交換して降温した低温水が返送ライン11を介して冷水ライン6に返送可能とされている。
【0019】
他施設10としては、半導体製造工場などの各種工場(プラント)のほか、プール等の公共施設や、空調設備、水処理設備などが挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
冷却塔5は、温水ライン7からの温水が充填材に散水され、ファン(図示略)の作動によって吸引される空気と接触して一部が蒸発し、蒸発潜熱によって降温して冷水となるように構成されている。
【0021】
冷却塔5には、工業用水が工業用水ライン12を介して補給されるよう構成されている。冷却塔5は、循環量、ブロー量、薬品処理、補給水量、水質、濃縮倍率、薬品添加などが制御される。
【0022】
工業用水の一部は、前処理装置14で前処理された後、純水装置15で処理されることにより純水となり、純水タンク16を介して復水器4へ補給されるよう構成されている。純水装置15は、濾過装置、RO(逆浸透)装置や、さらには脱気装置、電気脱イオン装置を備えることが好ましいが、これに限定されない。
【0023】
ボイラ1で生じたドレンは、ドレン配管19を介して排水処理設備20に送られて処理される。また、ボイラ排ガスを脱硫処理することにより生じた脱硫排水や、場内排水及び冷却塔5のブロー排水も排水処理設備20で処理された後、放流される。
【0024】
ボイラ1、タービン2、発電機3、復水器4及び純水タンク16等よりなる発電設備は、第1区画に配置されている。冷却塔5、前処理装置14、純水装置15及び排水処理設備20の少なくとも主要部等は第2区画に配置されている。排水処理設備の主要部とは、電力消費量の多い設備のことである。第1区画に設ける設備機器は、配管、タンクや、移送用ポンプなどの電力非使用又は低消費電力の機器とすることが好ましい。
【0025】
この実施の形態では、第1区画と第2区画とは事業主体が別となっており、各々の制御システムも独自別個のものとなっている。また、第2区画の各装置は商用電源にて駆動される。
【0026】
このように構成された発電システムにおいては、復水器4からの温水の少なくとも一部を温水ライン7から他施設10の熱交換器に供給し、該熱交換器で降温した低温水を冷水ライン6を介して復水器4へ戻すようにしているので、冷却塔5の負荷が小さく、冷却塔5における水の蒸発量が減少する。また、そのため、冷却塔5の補給水量や、循環ポンプ及びファンの消費電力も減少する。
【0027】
なお、温水ライン7から往送ライン9へ分岐させる温水量を制御するために、ライン7,9等にバルブ(流量調整弁もしくは切り替え弁)が設けられており、(復水器に影響しない温度範囲で)需要家での要求を満たすように調整することが好ましい。
【0028】
他施設10の熱交換器に供給する温水の温度を高めるために、往送ライン9に加熱器(図示略)を設置してもよい。この加熱器としては、化石燃料を使用しないCO2フリー熱源や、ヒートポンプ、木質チップを用いた追い焚きボイラなどが好適であるが、これに限定されない。
【0029】
なお、タービン2前で抽気した蒸気を用いて往送ライン9の温水を加熱してもよい。また、この抽気蒸気を他施設10に直接に供給するようにしてもよい。
【0030】
発電効率(復水器の真空度や復水器の冷水入口と温水出口の温度差が所定範囲に維持される)と需要家(他施設10)での必要熱量を調整しながら熱回収の最適化を図ることができる。
【0031】
この実施の形態では、第1区画と第2区画とで別個に制御ユニット又は管理システムを設け、第1区画における発電効率に応じて、第2区画の冷却塔や熱源供給ラインへの供給量や戻り量、温度差を制御することが好ましい。
【0032】
この実施の形態では、消費電力の多い装置を第2区画に配置し、商用電源で駆動するようにしている。商用電源は、電力コストが再生エネルギー買取システムによる場合よりも安価であることが多い。
【0033】
この実施の形態では、水処理設備を第2区画内に集約して設置したことにより、運転管理性、施工容易性を改善し、結果として一括管理による省スペース、省人化、省電力を実現することができる。例えば、第1区画と第2区画とで、管理主体やシステムを変えることで、それぞれの処理を効率良く行ったり、管理効率を良くすることができる。第2区画においては、制御の類似する範囲で水処理用供給契約や保守契約を結び、水処理用の遠隔監視システムや自動制御システムを設置する。その中で、発電用ボイラと連携を取りながら、特に、水処理部分に特化した制御を最適に行うことが可能となる。例えば、ボイラを正常運転するために必要な冷却塔や処理機器の運転条件に不備があることによる運転条件警報と、前記ボイラ本体が正常に動作していても定常的に発生する管理不備による日常管理警報とに区分する等の機能を設けることができる。
【0034】
本発明では、制御の優先度は、発電、水処理加熱、往送ライン加熱(通常、蒸気等の加温設備を有するため)の順とすることが好ましい。
【0035】
純水装置15がRO装置を備えている場合、RO給水の温度を25℃以上とする必要がある。通常期の原水は15℃程度、冬季は5℃程度になるので、加温を行う。夏季の加温は不要である。既に加温設備がある場合は、温水をベースに使用し、蒸気やヒータ等を変動の制御で使用空調設備においては、冬季以外はほとんど使用しないようにするのが好ましい。
【0036】
本発明では、冷却循環水の温水側を予熱に使用し、他施設の空調設備で変動幅を追従するように運転することが好ましい。
【0037】
本発明では、発電した電力をFITで売電してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ボイラ
2 タービン
4 復水器
5 冷却塔
15 純水装置
20 排水処理設備