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特許7515241ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20240705BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20240705BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240705BHJP
   H01F 1/11 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01F41/02 G
C01G49/00 C
C01G53/00 A
H01F1/11
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019153865
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2020038963
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-06-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2018163374
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595156333
【氏名又は名称】DOWAエフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山田 智也
(72)【発明者】
【氏名】坪井 禅
(72)【発明者】
【氏名】上村 一志
(72)【発明者】
【氏名】馬場 拓行
(72)【発明者】
【氏名】三島 泰信
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】井上 信一
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄とストロンチウムとランタンとコバルトの複合酸化物の粉末と、酸化鉄とを、SrとLaの合計に対する酸化鉄中のFeのモル比Fe/(Sr+La)が9.8~10.4になるように混合して造粒した後、焼成することを特徴とする、ボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項2】
前記焼成により得られた焼成物を粗粉砕して得られた粗粉砕粉を粉砕した後、アニールすることを特徴とする、請求項1に記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項3】
前記複合酸化物の粉末が、炭酸ストロンチウムと酸化ランタンと酸化鉄と酸化コバルトとを混合して造粒した後、1000~1250℃で焼成して得られた焼成物を粉砕することにより得られることを特徴とする、請求項1または2に記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項4】
前記複合酸化物の粉末と前記酸化鉄とを混合して造粒した後の焼成が1100~1400℃で行われることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項5】
(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-z(但し、0.15≦x≦0.34、0.010≦y≦0.029、11.0≦n≦12.0、-0.04≦z≦1.46)の組成を有し、平均粒径が1.42~2.11μmであることを特徴とする、ボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項6】
前記ボンド磁石用フェライト粉末の比表面積が1.09~1.96m/gであることを特徴とする、請求項に記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項7】
前記ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.55以下であることを特徴とする、請求項またはに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項8】
前記ボンド磁石用フェライト粉末90.0質量部と、シランカップリング剤0.8質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂8.4質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを作製し、この混練ペレットを9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石を作製し、このボンド磁石の残留磁化Brを測定磁場10kOeで測定したときに、残留磁化Brが2950G以上であることを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項9】
前記ボンド磁石の最大エネルギー積BHmaxを測定磁場10kOeで測定したときに、最大エネルギー積BHmaxが2.15MGOe以上であることを特徴とする、請求項に記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項10】
前記ボンド磁石用フェライト粉末の保磁力Hcの温度係数が0.1%/℃以下であることを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項11】
請求項乃至10のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末と、バインダとを備えたことを特徴とする、ボンド磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法に関し、特に、フェライトの粗粒と微粒を含むボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータや、複写機のマグネットロールなどに使用される磁石のような高磁力の磁石として、フェライト系焼結磁石が使用されている。しかし、フェライト系焼結磁石は、欠け割れが発生したり、研磨が必要なために生産性に劣るという問題があることに加えて、複雑な形状への加工が困難であるという問題がある。
【0003】
そのため、近年では、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータなどの高磁力の磁石として、希土類磁石のボンド磁石が使用されている。しかし、希土類磁石は、フェライト系焼結磁石の約20倍のコストがかかり、また、錆び易いという問題があるため、フェライト系焼結磁石の代わりにフェライト系ボンド磁石を使用することが望まれている。
【0004】
このようなボンド磁石用フェライト粉末として、組成が(Sr1-x)O・n[(Fe1-y-zCoZn](但し、AはLa、La-Nd、La-Pr又はLa-Nd-Pr、n=5.80~6.10、x=0.1~0.5、y=0.0083~0.042、0≦z<0.0168)であって、飽和磁化値σsが73Am/kg(73emu/g)以上である平均粒径が1.0~3.0μmのマグネトプランバイト型ストロンチウムフェライト粒子粉末であり、且つマグネトプランバイト型ストロンチウムフェライト粒子粉末中に板状粒子を個数割合で60%以上含んでいる、ボンド磁石用ストロンチウムフェライト粒子粉末が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-175907号公報(段落番号0025)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のボンド磁石用ストロンチウムフェライト粒子粉末は、板状粒子を多く含有しているため、磁場配向により粒子粉末を磁場方向に揃えようとすると、板状粒子同士が互いに配向を阻害するため、高い配向性を有するボンド磁石を作製するのが困難であった。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、磁場配向により高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、鉄とストロンチウムとランタンとコバルトの複合酸化物の粉末と、酸化鉄とを混合して造粒した後、焼成することにより、磁場配向により高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の製造方法は、鉄とストロンチウムとランタンとコバルトの複合酸化物の粉末と、酸化鉄とを混合して造粒した後、焼成することを特徴とする。
【0010】
このボンド磁石用フェライト粉末の製造方法において、焼成により得られた焼成物を粗粉砕して得られた粗粉砕粉を粉砕した後、アニールするのが好ましい。また、複合酸化物の粉末が、炭酸ストロンチウムと酸化ランタンと酸化鉄と酸化コバルトとを混合して造粒した後、1000~1250℃で焼成して得られた焼成物を粉砕することにより得られるのが好ましい。また、複合酸化物の粉末と酸化鉄とを混合して造粒した後の焼成が1100~1400℃で行われるのが好ましい。さらに、複合酸化物の粉末と酸化鉄を混合する際に、SrとLaの合計に対する酸化鉄中のFeのモル比Fe/(Sr+La)が4.5~11.7になるように複合酸化物の粉末と酸化鉄を混合するのが好ましい。
【0011】
また、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末は、(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-z(但し、0<x≦0.5、0<y≦0.04、10.0≦n≦12.5、-1.0≦z≦3.5の組成を有し、平均粒径が1.3~2.5μmであることを特徴とする。
【0012】
このボンド磁石用フェライト粉末は、比表面積が1.0~2.1m/gであるのが好ましく、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値が1.55以下であるのが好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末90.0質量部と、シランカップリング剤0.8質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂8.4質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを作製し、この混練ペレットを9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石を作製し、このボンド磁石の残留磁化Brを測定磁場10kOeで測定したときに、残留磁化Brが2950G以上であるのが好ましい。さらに、上記のボンド磁石の最大エネルギー積BHmaxを測定磁場10kOeで測定したときに、最大エネルギー積BHmaxが2.15MGOe以上であるのが好ましい。
【0013】
また、本発明によるボンド磁石は、上記のボンド磁石用フェライト粉末と、バインダとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁場配向により高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1で得られたボンド磁石用フェライト粉末についての粉末X線回折法(XRD)による測定結果を示す図である。
図2】実施例1で得られたボンド磁石の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3】比較例1で得られたボンド磁石の断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の製造方法の実施の形態では、鉄とストロンチウムとランタンとコバルトの複合酸化物の粉末と、酸化鉄(好ましくはヘマタイト(α-Fe))とを(SrとLaの合計に対する酸化鉄中のFe/(Sr+La)が好ましくは4.5~11.7、さらに好ましくは9.0~11.0になるように)混合して造粒した後、(好ましくは1100~1400℃、さらに好ましくは1100~1300℃、最も好ましくは1150~1250℃で)焼成し、この焼成により得られた焼成物を粗粉砕して得られた粗粉砕粉を粉砕した後、(好ましくは950~1000℃で)アニールする。
【0017】
上記の鉄とストロンチウムとランタンとコバルトの複合酸化物の粉末は、炭酸ストロンチウムと酸化ランタンと酸化鉄と酸化コバルトとを混合して造粒した後、好ましくは1000~1250℃、さらに好ましくは1050~1200℃、最も好ましくは1050~1150℃で焼成して得られた焼成物を粉砕することにより得ることができる。
【0018】
上記の粗粉砕粉を湿式のアトライターなどにより(好ましくは20~80分間)粉砕処理(湿式粉砕処理)し、得られたスラリーをろ過して得られた固形物を乾燥させ、得られた乾燥ケーキをミキサーで解砕して得られた解砕物を振動ボールミルなどにより解砕した後、アニール処理を行うのが好ましい。
【0019】
このようにして、(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-z(但し、0<x≦0.5、0<y≦0.04、10.0≦n≦12.5、-1.0≦z≦3.5)で示される組成のボンド磁石用フェライト粉末を製造することができる。
【0020】
また、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の実施の形態は、(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-z(但し、0<x≦0.5(好ましくは0.03≦x≦0.5、さらに好ましくは0.1≦x≦0.5)、0<y≦0.04(好ましくは0.004≦y≦0.04)、10.0≦n≦12.5(好ましくは10.0≦n≦12.0)、-1.0≦z≦3.5(好ましくは-0.5≦z≦3.5))の組成を有し、平均粒径が1.3~2.5μm(好ましくは1.3~2.0μm)である。
【0021】
このボンド磁石用フェライト粉末の比表面積は、好ましくは1.0~2.1m/g、さらに好ましくは1.2~2.0m/gである。
【0022】
また、ボンド磁石用フェライト粉末10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cmの圧力で圧縮したときのボンド磁石用フェライト粉末の密度をボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度(CD)として測定すると、圧縮密度(CD)は、好ましくは3.0~4.0g/cmであり、さらに好ましくは3.2~3.6g/cmである。
【0023】
また、ボンド磁石用フェライト粉末8gとポリエステル樹脂0.4ccを乳鉢中で混練し、得られた混練物7gを内径15mmφの金型に充填し、2トン/cmの圧力で60秒間圧縮して得られた成形品を金型から抜き取り、150℃で30分間乾燥させて圧粉体を作製し、この圧粉体の磁気特性として、BHトレーサーを使用して、測定磁場10kOeで圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定すると、保磁力iHcは、好ましくは2000~4000Oe、さらに好ましくは2300~3500Oeであり、残留磁化Brは、好ましくは1700~2000G、さらに好ましくは1800~1950Gである。
【0024】
一般に、マグネトプランバイト型の結晶構造を有するフェライト磁性材料は、残留磁化Brが負の温度係数で保磁力Hcが正の温度係数であり、保磁力Hcの温度係数が0.2~0.3%/℃程度であることが知られている。すなわち、マグネトプランバイト型の結晶構造を有するフェライト磁性材料は、低温になる程、保磁力Hcが低下するため、ボンド磁石に使用する場合には、保磁力Hcが必要以上に高いフェライト磁性材料を使用しないと、低温から高温の温度サイクルにより不可逆的な減磁(低温減磁)が発生する問題がある。このようなフェライト磁性材料の低温減磁は、屋外で気温の変動を大きく受けるエアコン用の室外機や自動車などのモータに使用するボンド磁石の材料としてフェライト磁性材料を使用する場合には、特に問題になる。そのため、ボンド磁石用フェライト粉末20mgとパラフィン10mgを測定用セルに詰めて、60℃で10分間保持した後に冷却することによりボンド磁石用フェライト粉末を測定用セル中に固定し、このボンド磁石用フェライト粉末の保磁力を5T(10,000Oe)まで磁場を印加したフルループ(掃印加速度200Oe/秒)により-25℃と0℃と25℃の3点で測定し、その保磁力Hcの変化率から算出したボンド磁石用フェライト粉末の保磁力Hcの温度係数が0.1%/℃以下であるのが好ましい。
【0025】
また、ボンド磁石用フェライト粉末90.0質量部と、シランカップリング剤0.8質量部と、滑剤0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂8.4質量部とをミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを作製し、この混練ペレットを9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石を作製し、このボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定磁場10kOeで測定すると、保磁力iHcは、2200~3700Oe、さらに好ましくは2400~3500Oeであり、残留磁化Brは、好ましくは2950G以上、さらに好ましくは2970G以上であり、最大エネルギー積BHmaxは、好ましくは2.15MGOe以上、さらに好ましくは2.2~2.5MGOeである。
【0026】
さらに、上記のボンド磁石を印加磁場方向に対して平行に切断し、電子顕微鏡により粒子の形状を2000倍で観察し、得られた電子顕微鏡写真を2値化することにより、粒子の形状指数として、長軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離(平行な2本の直線に対して垂直に引いた線分の長さ)の最大値)が1.0μm以上の粒子の短軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最小値)に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)(アスペクト比)を求める(各粒子を板状の粒子と仮定し、体積を長軸長×長軸長×短軸長として、体積で重みづけした体積平均アスペクト比を算出する)と、アスペクト比は、1.55以下であるのが好ましい。アスペクト比が1.55以下であれば、磁場配向によりボンド磁石用フェライト粉末の粒子を磁場方向に揃え易くなって、粒子の配向性が高く残留磁化Brや最大エネルギー積BHmaxが高いボンド磁石を作製し易くなる。
【実施例
【0027】
以下、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
(粗粉砕粉の製造)
炭酸ストロンチウム(SrCO、比表面積5.8m/g)と酸化ランタン(La、比表面積3.8m/g)と(酸化鉄としての)ヘマタイト(α-Fe、比表面積5.3m/g)と酸化コバルト(Co、比表面積3.3m/g)をモル比Sr:La:Fe:Co=0.70:0.30:0.70:0.30になるように秤量して混合し、この混合物にパンペレタイザー中で水を加えながら造粒し、得られた直径3~10mmの球状の造粒物を内燃式のロータリーキルンに投入し、大気雰囲気中において1100℃で20分間焼成(一次焼成)して焼成物を得た。この焼成物をローラーミルで粉砕して、鉄とストロンチウムとランタンとコバルトの複合酸化物の粉末を得た。この複合酸化物の粉末の比表面積を比表面積測定装置(カンタクローム社製のモノソーブ)を使用してBET一点法によって測定したところ、比表面積は3.5m/gであった。
【0029】
この複合酸化物の粉末と(酸化鉄としての)ヘマタイト(α-Fe、比表面積5.3m/g)を、SrとLaの合計に対する酸化物中のモル比(Fe/(Sr+La))=10.0になるように秤量して混合し、この混合物に対して(添加剤として)0.17質量%のホウ酸と2.3質量%の塩化カリウムを加えて混合した後、水を加えて造粒し、得られた直径3~10mmの球状の造粒物を内燃式のロータリーキルンに投入し、大気中において1250℃(焼成温度)で20分間焼成(二次焼成)して得られた焼成物をローラーミルで粉砕して、粗粉砕粉を得た。
【0030】
(ボンド磁石用フェライト粉末の製造)
得られた粗粉砕粉100質量部と水150質量部とを湿式のアトライターに投入し、20分間粉砕処理を行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過して得られた固形物を大気中において150℃で10時間乾燥させて、乾燥ケーキを得た。この乾燥ケーキをミキサーで解砕して得られた解砕物を、振動ボールミル(株式会社村上精機工作所製のUras Vibrator KEC-8-YH)により、媒体として直径12mmのスチール製ボールを使用して、回転数1800rpm、振幅8mmで20分間粉砕処理を行った。このようにして得られた粉砕物を電気炉により大気中において985℃で30分間アニール(焼鈍)して、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0031】
このボンド磁石用フェライト粉末について、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のZSX100e)を使用して、ファンダメンタル・パラメータ法(FP法)により、各元素の成分量を算出することにより、組成分析を行った。この組成分析では、ボンド磁石用フェライト粉末を測定用セルに詰め、10トン/cmの圧力を20秒間加えて成型し、測定モードをEZスキャンモード、測定径を30mm、試料形態を酸化物、測定時間を標準時間とし、真空雰囲気中において、定性分析を行った後に、検出された構成元素に対して定量分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.3質量%のMnOと、85.3質量%のFeと、2.4質量%のCoと、6.8質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、4.9質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.32、y=0.026、n=11.5、z=0.79であった。なお、zは、Srの価数を+2、Laの価数を+3、Feの価数を+3、Coの価数を+2、Oの価数を-2として、化学式の価数の合計が0(ゼロ)になるように算出した。
【0032】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、粉末X線回折装置(株式会社リガク製のMiniflex600)を使用して、管電圧を40kV、管電流を15mA、測定範囲を15°~60°、スキャン速度を1°/分、スキャン幅を0.02°として、粉末X線回折法(XRD)による測定を行った。その測定結果を図1に示す。なお、図1の下側には、一般的なM型フェライト構造を有するSrFe1219のピーク位置が記載されている。図1から、すべてのピークがSrFe1219と同じ位置に観測され、本実施例のボンド磁石用フェライト粉末がM型フェライト構造を有することが確認された。この結果は、以下に説明する実施例2~8および比較例1~3でも同様であった。
【0033】
また、ボンド磁石用フェライト粉末の平均粒径(APD)を比表面積測定装置(株式会社島津製作所製のSS-100)を用いて空気浸透法により測定したところ、平均粒径は1.72μmであった。また、このボンド磁石用フェライト粉末の比表面積を上記と同様の方法により測定したところ、比表面積は1.47m/gであった。
【0034】
また、ボンド磁石用フェライト粉末10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cmの圧力で圧縮したときのボンド磁石用フェライト粉末の密度をボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度(CD)として測定したところ、3.45g/cmであった。
【0035】
また、ボンド磁石用フェライト粉末8gとポリエステル樹脂(日本地科学社製のP-レジン)0.4ccを乳鉢中で混練し、得られた混練物7gを内径15mmφの金型に充填し、2トン/cmの圧力で60秒間圧縮して得られた成形品を金型から抜き取り、150℃で30分間乾燥させて圧粉体を得た。この圧粉体の磁気特性として、BHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF-5BH)を使用して、測定磁場10kOeで圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定したところ、保磁力iHcは3060Oeであり、残留磁化Brは1870Gであった。
【0036】
また、ボンド磁石用フェライト粉末20mgとパラフィン10mgを測定用セルに詰めて、60℃で10分間保持した後に冷却することによりボンド磁石用フェライト粉末を測定用セル中に固定し、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製のVSM-5HSC)を用いて、このボンド磁石用フェライト粉末の保磁力を5T(10,000Oe)まで磁場を印加したフルループ(掃印加速度200Oe/秒)により-25℃と0℃と25℃の3点で測定し、その保磁力Hcの変化率から、保磁力Hcの温度係数を算出した。その結果、このボンド磁石用フェライト粉末の保磁力Hcの温度係数は、-0.024%/℃であった。なお、この温度係数は、保磁力Hcをyとし、温度をxとして、yとxの関係式を最小二乗法により求めて、その関係式の傾きとして算出した。
【0037】
(ボンド磁石の製造)
得られたボンド磁石用フェライト粉末90.0質量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製のZ-6094N)0.8質量部と、滑剤(ヘンケル社製のVPN-212P)0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製のP-1011F)8.4質量部とを秤量し、ミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを得た。この混練ペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製)に装填して、9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石(F.C.90.0質量%、9.7kOe)を得た。
【0038】
このボンド磁石の磁気特性として、BHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF-5BH)を使用して、測定磁場10kOeでボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定したところ、保磁力iHcは3017Oe、残留磁化Brは3069G、最大エネルギー積BHmaxは2.33MGOeであった。
【0039】
また、このボンド磁石を印加磁場方向に対して平行に切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)により粒子の形状を2000倍で観察し、得られたSEM写真を2値化することにより、粒子の形状指数として、SEM写真中の200個以上の粒子(SEM写真の1以上の視野内に外縁部全体が観察される長軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最大値)が1.0μm以上の200個以上の粒子)について、短軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最小値)に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値(アスペクト比)を求めたところ、1.43であった。なお、このアスペクト比として、各粒子を板状の粒子と仮定し、体積を長軸長×長軸長×短軸長として、体積で重みづけした体積平均アスペクト比を算出した。
【0040】
[実施例2]
湿式のアトライターによる粉砕処理時間を40分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0041】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、85.1質量%のFeと、2.5質量%のCoと、0.1質量%のZnOと、6.7質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、4.9質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Zn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.32、y=0.028、n=11.6、z=0.64であった。
【0042】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.62μm、比表面積は1.62m/g、圧縮密度(CD)は3.40g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3130Oe、残留磁化Brは1870Gであった。
【0043】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは3052Oe、残留磁化Brは3038G、最大エネルギー積BHmaxは2.28MGOeであり、アスペクト比は1.54であった。
【0044】
[実施例3]
湿式のアトライターによる粉砕処理時間を80分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0045】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、85.0質量%のFeと、2.5質量%のCoと、0.1質量%のZnOと、6.7質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、5.0質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Zn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.32、y=0.028、n=11.5、z=0.79であった。
【0046】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.42μm、比表面積は1.96m/g、圧縮密度(CD)は3.42g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3310Oe、残留磁化Brは1870Gであった。
【0047】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは3193Oe、残留磁化Brは3036G、最大エネルギー積BHmaxは2.28MGOeであり、アスペクト比は1.50であった。
【0048】
[実施例4]
二次焼成の温度を1150℃とした以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0049】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、85.0質量%のFeと、2.6質量%のCoと、6.8質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、4.9質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.31、y=0.029、n=11.5、z=0.83であった。
【0050】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.53μm、比表面積は1.65m/g、圧縮密度(CD)は3.29g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3410Oe、残留磁化Brは1820Gであった。
【0051】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは3407Oe、残留磁化Brは2985G、最大エネルギー積BHmaxは2.21MGOeであり、アスペクト比は1.54であった。
【0052】
[実施例5]
実施例1と同様の複合酸化物の粉末と(酸化鉄としての)ヘマタイト(α-Fe、比表面積5.3m/g)を、SrとLaの合計に対する酸化鉄中のFeのモル比(Fe/(Sr+La))=10.4になるように秤量して混合した以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0053】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.4質量%のMnOと、85.7質量%のFeと、2.4質量%のCoと、0.1質量%のZnOと、6.5質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、4.7質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるMn、Zn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.31、y=0.026、n=12.0、z=-0.04であった。
【0054】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.70μm、比表面積は1.56m/g、圧縮密度(CD)は3.40g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2780Oe、残留磁化Brは1890Gであった。
【0055】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2546Oe、残留磁化Brは3009G、最大エネルギー積BHmaxは2.23MGOeであり、アスペクト比は1.53であった。
【0056】
[実施例6]
炭酸ストロンチウム(SrCO、比表面積5.8m/g)と酸化ランタン(La、比表面積3.8m/g)とヘマタイト(α-Fe、比表面積5.3m/g)と酸化コバルト(Co、比表面積3.3m/g)をモル比Sr:La:Fe:Co=0.70:0.30:0.85:0.15になるように秤量して混合した以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0057】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.3質量%のMnOと、86.4質量%のFeと、1.2質量%のCoと、6.7質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、5.0質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.32、y=0.014、n=11.5、z=0.73であった。
【0058】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.87μm、比表面積は1.27m/g、圧縮密度(CD)は3.43g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2650Oe、残留磁化Brは1880Gであった。また、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末の保磁力Hcを測定し、その保磁力Hcの温度係数を算出したところ、-0.063%/℃であった。
【0059】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2724Oe、残留磁化Brは3038G、最大エネルギー積BHmaxは2.29MGOeであり、アスペクト比は1.52であった。
【0060】
[実施例7]
二次焼成の温度を1300℃とした以外は、実施例6と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0061】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.3質量%のMnOと、86.5質量%のFeと、1.2質量%のCoと、6.7質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、5.0質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.32、y=0.013、n=11.5、z=0.61であった。
【0062】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.84μm、比表面積は1.36m/g、圧縮密度(CD)は3.49g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2390Oe、残留磁化Brは1910Gであった。
【0063】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2473Oe、残留磁化Brは3043G、最大エネルギー積BHmaxは2.29MGOeであり、アスペクト比は1.49であった。
【0064】
[実施例8]
二次焼成の温度を1200℃とした以外は、実施例6と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0065】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.3質量%のMnOと、86.2質量%のFeと、1.3質量%のCoと、0.2質量%のZnOと、6.8質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、5.0質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるMn、Zn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.32、y=0.014、n=11.4、z=0.85であった。
【0066】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.71μm、比表面積は1.49m/g、圧縮密度(CD)は3.40g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2870Oe、残留磁化Brは1870Gであった。
【0067】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2865Oe、残留磁化Brは3061G、最大エネルギー積BHmaxは2.32MGOeであり、アスペクト比は1.47であった。
【0068】
[実施例9]
複合酸化物の粉末と(酸化鉄としての)ヘマタイトを、SrとLaの合計に対する酸化物中のモル比(Fe/(Sr+La))=9.8になるように秤量して混合した以外は、実施例6と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0069】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、85.7質量%のFeと、1.3質量%のCoと、6.9質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、5.3質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるMn、Zn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.33、y=0.015、n=11.0、z=1.46であった。
【0070】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.90μm、比表面積は1.32m/g、圧縮密度(CD)は3.41g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2840Oe、残留磁化Brは1840Gであった。
【0071】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは3038Oe、残留磁化Brは3004G、最大エネルギー積BHmaxは2.23MGOeであり、アスペクト比は1.50であった。
【0072】
[実施例10]
複合酸化物の粉末と(酸化鉄としての)ヘマタイトを、SrとLaの合計に対する酸化物中のモル比(Fe/(Sr+La))=10.4になるように秤量して混合した以外は、実施例6と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0073】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.4質量%のMnOと、86.5質量%のFeと、1.2質量%のCoと、0.2質量%のZnOと、6.7質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、4.8質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるMn、Zn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.31、y=0.014、n=11.7、z=0.41であった。
【0074】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.97μm、比表面積は1.21m/g、圧縮密度(CD)は3.39g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2540Oe、残留磁化Brは1870Gであった。
【0075】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2564Oe、残留磁化Brは3013G、最大エネルギー積BHmaxは2.24MGOeであり、アスペクト比は1.51であった。
【0076】
[実施例11]
炭酸ストロンチウム(SrCO、比表面積5.8m/g)と酸化ランタン(La、比表面積3.8m/g)とヘマタイト(α-Fe、比表面積5.3m/g)と酸化コバルト(Co、比表面積3.3m/g)をモル比Sr:La:Fe:Co=0.80:0.20:0.80:0.20になるように秤量して混合した以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0077】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、86.5質量%のFeと、1.6質量%のCoと、7.7質量%のSrOと、0.2質量%のBaOと、3.5質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.22、y=0.018、n=11.5、z=0.67であった。
【0078】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.98μm、比表面積は1.20m/g、圧縮密度(CD)は3.40g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2600Oe、残留磁化Brは1870Gであった。また、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末の保磁力Hcを測定し、その保磁力Hcの温度係数を算出したところ、0.020%/℃であった。
【0079】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2748Oe、残留磁化Brは3031G、最大エネルギー積BHmaxは2.26MGOeであり、アスペクト比は1.49であった。
【0080】
[実施例12]
炭酸ストロンチウム(SrCO、比表面積5.8m/g)と酸化ランタン(La、比表面積3.8m/g)とヘマタイト(α-Fe、比表面積5.3m/g)と酸化コバルト(Co、比表面積3.3m/g)をモル比Sr:La:Fe:Co=0.80:0.20:0.90:0.10になるように秤量して混合した以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0081】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、87.2質量%のFeと、0.9質量%のCoと、7.9質量%のSrOと、0.2質量%のBaOと、3.2質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.20、y=0.010、n=11.5、z=0.74であった。
【0082】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は2.11μm、比表面積は1.11m/g、圧縮密度(CD)は3.45g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2340Oe、残留磁化Brは1890Gであった。また、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末の保磁力Hcを測定し、その保磁力Hcの温度係数を算出したところ、0.052%/℃であった。
【0083】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2371Oe、残留磁化Brは3064G、最大エネルギー積BHmaxは2.31MGOeであり、アスペクト比は1.43であった。
【0084】
[実施例13]
炭酸ストロンチウム(SrCO、比表面積5.8m/g)と酸化ランタン(La、比表面積3.8m/g)とヘマタイト(α-Fe、比表面積5.3m/g)と酸化コバルト(Co、比表面積3.3m/g)をモル比Sr:La:Fe:Co=0.90:0.10:0.90:0.10になるように秤量して混合した以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0085】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、87.6質量%のFeと、0.9質量%のCoと、8.3質量%のSrOと、0.2質量%のBaOと、2.4質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.15、y=0.010、n=11.6、z=0.53であった。
【0086】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は2.01μm、比表面積は1.09m/g、圧縮密度(CD)は3.39g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2290Oe、残留磁化Brは1920Gであった。また、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末の保磁力Hcを測定し、その保磁力Hcの温度係数を算出したところ、0.056%/℃であった。
【0087】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2414Oe、残留磁化Brは3038G、最大エネルギー積BHmaxは2.27MGOeであり、アスペクト比は1.44であった。
【0088】
[実施例14]
一次焼成の温度を1200℃とした以外は、実施例6と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0089】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、86.2質量%のFeと、1.3質量%のCoと、6.8質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、5.0質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.32、y=0.014、n=11.3、z=0.90であった。
【0090】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.62μm、比表面積は1.53m/g、圧縮密度(CD)は3.40g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3010Oe、残留磁化Brは1570Gであった。
【0091】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは3298Oe、残留磁化Brは2999G、最大エネルギー積BHmaxは2.24MGOeであり、アスペクト比は1.49であった。
【0092】
[実施例15]
一次焼成の温度を1050℃とした以外は、実施例6と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0093】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.4質量%のMnOと、86.4質量%のFeと、1.3質量%のCoと、6.5質量%のSrOと、0.1質量%のBaOと、5.1質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mn、Baなどの元素も検出されたが、いずれも微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.34、y=0.014、n=11.7、z=0.40であった。
【0094】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.88μm、比表面積は1.21m/g、圧縮密度(CD)は3.41g/cm、圧粉体の保磁力iHcは2950Oe、残留磁化Brは1850Gであった。
【0095】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2880Oe、残留磁化Brは2998G、最大エネルギー積BHmaxは2.23MGOeであり、アスペクト比は1.53であった。
【0096】
[比較例1]
炭酸ストロンチウム(SrCO、比表面積5.8m/g)と酸化ランタン(La、比表面積3.8m/g)とヘマタイト(α-Fe、比表面積5.3m/g)と酸化コバルト(Co、比表面積3.3m/g)をモル比Sr:La:Fe:Co=0.70:0.30:11.70:0.30になるように秤量して混合し、一次焼成の温度を1100℃から1250℃に変更して、二次焼成を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0097】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.3質量%のMnOと、85.3質量%のFeと、2.4質量%のCoと、7.0質量%のSrOと、4.9質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mnなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.31、y=0.026、n=11.3、z=1.12であった。
【0098】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.26μm、比表面積は2.19m/g、圧縮密度(CD)は3.34g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3590Oe、残留磁化Brは1830Gであった。
【0099】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは3332Oe、残留磁化Brは2882G、最大エネルギー積BHmaxは2.04MGOeであり、アスペクト比は1.56であった。
【0100】
[比較例2]
一次焼成の温度を1200℃とした以外は、比較例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0101】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.3質量%のMnOと、85.3質量%のFeと、2.4質量%のCoと、7.1質量%のSrOと、4.7質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mnなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.30、y=0.026、n=11.3、z=1.09であった。
【0102】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.25μm、比表面積は2.21m/g、圧縮密度(CD)は3.26g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3950Oe、残留磁化Brは1790Gであった。
【0103】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは3609Oe、残留磁化Brは2867G、最大エネルギー積BHmaxは2.02MGOeであり、アスペクト比は1.62であった。
【0104】
[比較例3]
一次焼成の温度を1300℃とした以外は、比較例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0105】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行った。その結果、ボンド磁石用フェライト粉末中には、0.1質量%のCrと、0.3質量%のMnOと、85.4質量%のFeと、2.4質量%のCoと、7.0質量%のSrOと、4.7質量%のLaが含まれており、ボンド磁石用フェライト粉末の主成分であるSr、La、Fe、Coが検出された。なお、原料中の不純物由来と考えられるCr、Mnなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.3質量%と微量であった。これらの微量(酸化物換算で1.0質量%以下)の元素を不純物とみなし、主成分であるSr、La、Fe、Coの分析値から、ボンド磁石用フェライト粉末の化学式を(Sr1-xLa)・(Fe1-yCo19-zと表記した場合のx、y、n、zを算出すると、x=0.30、y=0.026、n=11.4、z=0.95であった。
【0106】
また、このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径、比表面積、圧縮密度(CD)、圧粉体の保磁力iHcおよび残留磁化Brを測定した。その結果、平均粒径は1.22μm、比表面積は2.41m/g、圧縮密度(CD)は3.42g/cm、圧粉体の保磁力iHcは3140Oe、残留磁化Brは1800Gであった。
【0107】
また、このボンド磁石用フェライト粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を得た。このボンド磁石について、実施例1と同様の方法により、保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定し、アスペクト比を算出したところ、保磁力iHcは2885Oe、残留磁化Brは2930G、最大エネルギー積BHmaxは2.11MGOeであり、アスペクト比は1.58であった。
【0108】
これらの実施例および比較例の結果を表1~表4に示す。また、実施例1および比較例1で得られたボンド磁石の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をそれぞれ図2および図3に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
実施例1~15および比較例1~3の結果から、実施例1~15では、磁場配向により高い残留磁化Brを有するボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末を製造することができることがわかる。
【0114】
また、実施例1、6及び11~13のボンド磁石用フェライト粉末は、保磁力Hcの温度係数が0.1%/℃以下と極めて低く、低温減磁の影響を受け難いボンド磁石用フェライト粉末であることがわかる。特に、実施例1および6のボンド磁石用フェライト粉末は、保磁力Hcの温度係数が負の温度係数であり、低温減磁の影響を極めて受け難い優れたボンド磁石用フェライト粉末であることがわかる。

図1
図2
図3