(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用セパレータ、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/417 20210101AFI20240705BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240705BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240705BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240705BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240705BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240705BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240705BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240705BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/489
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/449
H01M10/0566
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2019201723
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉記
(72)【発明者】
【氏名】高田 敦弘
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-094450(JP,A)
【文献】特開2012-177106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
H01M 10/0566
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン多孔質フィルム
(但し、熱可塑性樹脂からなる補強材を含むポリオレフィン多孔質フィルムを除く)を含む非水電解液二次電池用セパレータであって、
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚が、4~40μmであり、
前記ポリオレフィン多孔質フィルムに占めるポリエチレンの割合が、多孔質フィルムを構成する材料全体の50体積%以上であり、
ピン径1mmΦ、先端0.5Rのピンを突き刺し深さ2.5mm、突き刺し速度1mm/sの条件にて前記ポリオレフィン多孔質フィルムに突き刺すことにより行われる突き刺し試験において前記ポリオレフィン多孔質フィルムが破断しない、非水電解液二次電池用セパレータ。
(ここで、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの破断とは前記突き刺し試験開始と同時に上昇する前記ポリオレフィン多孔質フィルムの応力が200gf以上低下する点が発生することを指す。)
【請求項2】
前記ポリオレフィン多孔質フィルムのMD破断伸度が、20%GL以上である、請求項1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
(ここで、前記MD破断伸度は、JIS K7127規格に準拠した方法にて測定される。)
【請求項3】
ポリオレフィン、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される樹脂を含む絶縁性多孔質層をさらに備える、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記樹脂が、アラミド樹脂である、請求項3に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚が、5~20μmである、請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項6】
ポリオレフィン多孔質フィルムと、アラミド樹脂を含む絶縁性多孔質層とを備える、非水電解液二次電池用セパレータであって、
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚が、4~40μmであり、
ピン径1mmΦ、先端0.5Rのピンを突き刺し深さ2.5mm、突き刺し速度1mm/sの条件にて前記ポリオレフィン多孔質フィルムに突き刺すことにより行われる突き刺し試験において前記ポリオレフィン多孔質フィルムが破断しない、非水電解液二次電池用セパレータ。
(ここで、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの破断とは前記突き刺し試験開始と同時に上昇する前記ポリオレフィン多孔質フィルムの応力が200gf以上低下する点が発生することを指す。)
【請求項7】
前記ポリオレフィン多孔質フィルムのMD破断伸度が、20%GL以上である、請求項6に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
(ここで、前記MD破断伸度は、JIS K7127規格に準拠した方法にて測定される。)
【請求項8】
正極と、請求項1~7の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材。
【請求項9】
請求項1~7の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用セパレータ、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等の非水電解液二次電池は、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話および携帯情報端末等の機器に用いる電池、または車載用の電池として広く使用されている。
【0003】
このような非水電解液二次電池におけるセパレータとしては、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムが主に用いられている。前記ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムとしては、特許文献1に記載の、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を延伸する工程を含む方法にて製造される多孔質フィルムが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のような従来の非水電解液二次電池用セパレータは、耐電圧特性の面において改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、優れた耐電圧特性を備え、非水電解液二次電池の安全性を向上することができる非水電解液二次電池用セパレータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意研究を重ねた結果、本発明者は、特定の条件下にて実施される突き刺し試験にて破断しないポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータが、耐電圧特性に優れていることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
本発明の一態様は、以下の[1]~[6]に示す発明を含む。
[1]ポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚が、4~40μmであり、
ピン径1mmΦ、先端0.5Rのピンを突き刺し深さ2.5mm、突き刺し速度1mm/sの条件にて前記ポリオレフィン多孔質フィルムに突き刺すことにより行われる突き刺し試験において前記ポリオレフィン多孔質フィルムが破断しない、非水電解液二次電池用セパレータ。
(ここで、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの破断とは前記突き刺し試験開始と同時に上昇する前記ポリオレフィン多孔質フィルムの応力が200gf以上低下する点が発生することを指す。)
[2]前記ポリオレフィン多孔質フィルムのMD破断伸度が、20%GL以上である、[1]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
(ここで、前記MD破断伸度は、JIS K7127規格に準拠した方法にて測定される。)
[3]ポリオレフィン、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される樹脂を含む絶縁性多孔質層をさらに備える、[1]または[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[4]前記樹脂が、アラミド樹脂である、[3]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[5]正極と、[1]~[4]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材。
[6][1]~[4]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、優れた耐電圧特性を備え、非水電解液二次電池の安全性を向上することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例にて使用した耐電圧試験機の電極プローブの表面の凹凸を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
本明細書において、MD方向(Machine Direction)とは、後述の多孔質フィルムの製造方法において、前記シート状のポリオレフィン樹脂組成物、前記1次シートおよび前記多孔質フィルムが搬送される方向を意味する。また、TD方向(Transverse Direction)とは、前記シート状のポリオレフィン樹脂組成物、前記1次シートおよび前記多孔質フィルムの面に平行な方向であってMD方向に垂直な方向を意味する。
【0013】
[実施形態1:非水電解液二次電池用セパレータ]
本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムを含み、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚が、4~40μmであり、ピン径1mmΦ、先端0.5Rのピンを突き刺し深さ2.5mm、突き刺し速度1mm/sの条件にて前記ポリオレフィン多孔質フィルムに突き刺すことにより行われる突き刺し試験において前記ポリオレフィン多孔質フィルムが破断しない、非水電解液二次電池用セパレータである。
【0014】
ここで、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの破断とは前記突き刺し試験開始と同時に上昇する前記ポリオレフィン多孔質フィルムの応力が200gf以上低下する点が発生することを指す。すなわち、前記突き刺し試験にて、前記突き刺し試験開始後、測定応力が200gf以上低下することなく、前記突き刺し試験機のピンが突き刺し深さ2.5mmに達した際に、前記ポリオレフィン多孔質フィルムが「破断しない」と判断する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムを含む。以下、前記ポリオレフィン多孔質フィルムを単に「多孔質フィルム」とも称する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、前記多孔質フィルムからなる非水電解液二次電池用セパレータであり得る。また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、前記多孔質フィルムおよび後述する絶縁性多孔質層を含む積層体である非水電解液二次電池用セパレータであり得る。なお、前記多孔質フィルムおよび後述する絶縁性多孔質層を含む積層体である非水電解液二次電池用セパレータを、以下において、「非水電解液二次電池用積層セパレータ」とも称する。さらに、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、必要に応じて、絶縁性多孔質層以外の多孔質層として、後述する耐熱層、接着層、保護層等の公知の多孔質層を含み得る。
【0017】
前記多孔質フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を含み、一般には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムである。また、「ポリオレフィン系樹脂を主成分とする」とは、多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合が、多孔質フィルムを構成する材料全体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは95体積%以上であることを意味する。
【0018】
前記多孔質フィルムは、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体や液体を通過させることが可能となっている。
【0019】
前記多孔質フィルムの膜厚は、4~40μmであり、5~20μmであることが好ましい。前記多孔質フィルムの膜厚が4μm以上であれば、電池の内部短絡を十分に防止することができる。一方、前記多孔質フィルムの膜厚が40μm以下であれば、非水電解液二次電池の大型化を防ぐことができる。
【0020】
前記多孔質フィルムは、ピン径1mmΦ、先端0.5Rのピンを突き刺し深さ2.5mm、突き刺し速度1mm/sの条件にて前記ポリオレフィン多孔質フィルムに突き刺すことにより行われる突き刺し試験において破断しない多孔質フィルムである。なお、前述の条件にて行う突き刺し試験を、以下において、「特殊突き刺し試験」とも称する。
【0021】
なお、特殊突き刺し試験において、前記多孔質フィルムに前記ピンを突き刺す際に、前記多孔質フィルムを固定する方法は、特に限定されないが、例えば、12mmΦのワッシャを使用して前記多孔質フィルムを固定する方法を挙げることができる。
【0022】
ここで、非水電解液二次電池において、充放電時に、電極が膨張・収縮し、その表面に凹凸が発生する。よって、非水電解液二次電池の充放電時には、前記電極の膨張によって、前記非水電解液二次電池に含まれる非水電解液二次電池用セパレータには、荷重が加えられながら、電圧が加えられる。そのため、非水電解液二次電池の充放電時において、前記荷重によって、非水電解液二次電池用セパレータはダメージを受け、その結果、前記非水電解液二次電池用セパレータの耐電圧が低下する場合があった。
【0023】
前記特殊突き刺し試験において、前記多孔質フィルムが破断するとは、前記特殊突き刺し試験において、前記特殊突き刺し試験開始と同時に上昇する前記多孔質フィルムの応力が200gf以上低下する点が発生することを指す。
【0024】
前記多孔質フィルムの膜厚が前述の範囲内であり、かつ、前記特殊突き刺し試験において、前記多孔質フィルムが破断しないことは、前記多孔質フィルムが、特定の荷重を加えられた際に破損し難く、当該荷重によって伸長し易いことを意味する。
【0025】
よって、膜厚が前述の範囲内であり、かつ、前記特殊突き刺し試験においては破断しない多孔質フィルムを備える、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、充放電時に発生する前記電極表面の凹凸に沿って変形すると考えられる。これにより、前述の非水電解液二次電池用セパレータは、前記電極の膨張によって加えられる荷重によって受けるダメージが少なくなり、耐電圧の低下が抑制されると考えられる。その結果、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、優れた耐電圧特性を示すと考えられる。
【0026】
前記多孔質フィルムのMD破断伸度は、20%GL以上であることが好ましく、30%GL以上であることがより好ましい。MD破断伸度の上限は特に限定されないが、通常、300%GL以下であり得る。前記MD破断伸度は、JIS K7127規格に準拠した方法にて測定される。
【0027】
ここで、前記MD破断伸度は、前記多孔質フィルムをMD方向に伸長させる操作を行った場合に、前記操作を行う前の前記多孔質フィルムのMD方向の長さに対する前記多孔質フィルムが破断した際の前記多孔質フィルムのMD方向に伸長した長さの割合(%)で表される。
【0028】
前記多孔質フィルムは、通常、TD方向に伸長させた際の強度よりも、MD方向に伸長させた際の強度の方が弱いことが知られている。よって、前記電極の膨張によって荷重が加えられた際には、前記多孔質フィルムは、MD方向への伸長に起因して破損し、その結果、前記多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータの耐電圧が低下する場合があった。
【0029】
従って、前記多孔質フィルムのMD破断伸度が20%GL以上であることによって、前記MD方向への伸長に起因する前記多孔質フィルムの破損が生じ難くなり、その結果、前記非水電解液二次電池用セパレータの耐電圧の低下を抑制できると考えられる。
【0030】
前記多孔質フィルムのTD破断伸度は、50%GL以上であることが好ましく、60%GL以上であることがより好ましい。TD破断伸度の上限は特に限定されないが、通常、300%GL以下であり得る。前記TD破断伸度は、JIS K7127規格に準拠した方法にて測定される。
【0031】
前記多孔質フィルムのTD破断伸度は、MD破断伸度と同様に、前記多孔質フィルムをTD方向に伸長させる操作をおこなった場合に、前記操作を行う前の前記多孔質フィルムのTD方向の長さに対する前記多孔質フィルムが破断した際の前記多孔質フィルムのTD方向に伸長した長さの割合(%)で表される。
【0032】
一方、枚葉タイプ、すなわち、所定のサイズに加工済の多孔質フィルムでは、TD方向およびMD方向を区別し難いことがある。その場合、枚葉タイプの多孔質フィルムが長方形であれば、その長方形の特定の一辺に平行な方向に伸長した際の破断伸度と、前記長方形の特定の一辺に垂直な方向に伸長した際の破断伸度を測定する。上述の通り、多孔質フィルムは通常MD方向に伸長させた際の強度の方が弱いことから、上述の2つの破断伸度のうち、小さい方の値を「MD破断伸度の値」とし、大きい方の値を「TD破断伸度の値」とする。
【0033】
また、多孔質フィルムのTD方向およびMD方向が区別できず、かつ、多孔質フィルムの形状が長方形ではない場合には、多孔質フィルムを任意の複数の方向に伸長させ、それぞれの方向に伸長させた場合の破断伸度を測定する。その後、測定されるそれぞれの破断伸度のうち、最も小さい値を「MD破断伸度の値」とする。その後、前記「MD破断伸度の値」が測定された伸長方向に垂直な方向を「TD方向」とし、その方向における破断伸度の値を「TD破断伸度の値」とする。なお、本明細書において、多孔質フィルムの形状とは、厚み方向に垂直な面の形状を意図している。
【0034】
前記ポリオレフィン系樹脂には、重量平均分子量が5×105~15×106の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂に重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、得られる多孔質フィルムおよび当該多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータの強度が向上するのでより好ましい。
【0035】
前記ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン等の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体といった熱可塑性樹脂を挙げることができる。前記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、前記共重合体としては、例えばエチレン-プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0036】
このうち、非水電解液二次電池用セパレータに過大電流が流れることをより低温で阻止することができるため、ポリエチレンがより好ましい。なお、この過大電流が流れることを阻止することをシャットダウンともいう。前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0037】
前記ポリオレフィン系樹脂は、1分子あたりの長鎖分岐度が、好ましくは、20個以下、より好ましくは10個以下であるポリオレフィンを含み得る。ここで、前記長鎖分岐度は、例えば、GPC-MALSを使用したコンフォメーションプロットから計算した値である。ここで、前記コンフォメーションプロットは、分子半径と分子量の対数プロットを意味する。
【0038】
前記多孔質フィルムの単位面積当たりの重量、すなわち重量目付は、電池の、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、4~20g/m2であることが好ましく、5~12g/m2であることがより好ましい。
【0039】
前記多孔質フィルムの透気度は、十分なイオン透過性を示すという観点から、ガーレ値で110~200sec/100mLであることが好ましく、110~190sec/100mLであることがより好ましい。
【0040】
前記多孔質フィルムにおける、特殊突き刺し試験とは異なる、以下の(i)および(ii)に示す方法にて測定される突き刺し強度は、350gf以上であることが好ましく、400gf以上であることがより好ましく、450gf以上であることがさらに好ましい。
(i)前記多孔質フィルムを12mmΦのワッシャで固定した後、ピン(ピン径1mmΦ、先端0.5R)を、突き刺し速度:10mm/sec、突き刺し深さ:10mmの条件にて、当該多孔質フィルムに突き刺す。
(ii)(i)にて前記多孔質フィルムに前記ピンを突き刺したときの最大応力(gf)を測定し、その測定値をフィルムの突き刺し強度とする。
【0041】
前記多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)する機能を得ることができるように、20体積%~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。
【0042】
前記多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、十分なイオン透過性、および、電極を構成する粒子の入り込みを防止するという観点から、0.3μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましい。
【0043】
<ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法>
本発明の一実施形態におけるポリオレフィン多孔質フィルムを製造する方法は特に限定されないが、具体的には、例えば、以下に示す(A)~(C)の工程を含む方法を挙げることができる。
(A)ポリオレフィン系樹脂および任意で孔形成剤等の添加剤を混練機に加えて溶融混練し、ポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(B)得られたポリオレフィン樹脂組成物を押し出し機のTダイより押し出し、冷却しながら、第1の方向に延伸して、シート状に成形することにより、1次シートを得る工程、(C)1次シートを、前記第1の方向へ収縮させながら前記第1の方向と異なる第2の方向に延伸する工程。
【0044】
工程(A)において、前記ポリオレフィン系樹脂の使用量は、得られるポリオレフィン樹脂組成物の重量を100重量%とした場合、6重量%~45重量%であることが好ましく、9重量%~36重量%であることがより好ましい。
【0045】
前記孔形成剤は、特に限定されないが、例えば、無機充填剤および可塑剤等を挙げることができる。前記無機充填剤としては、特に限定されるものではなく、無機フィラー、具体的には炭酸カルシウム等が挙げられる。前記可塑剤としては、特に限定されるものではなく、流動パラフィン等の低分子量の炭化水素が挙げられる。
【0046】
前記添加剤としては、前記孔形成剤の他に、任意で、本発明の効果を損なわない範囲にて、公知の添加剤を挙げることができる。前記公知の添加剤としては、例えば、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0047】
工程(B)において、1次シートを得る方法は特に限定されるものではなく、インフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ押出加工、スカイフ法等のシート成形方法により1次シートを製造することができる。
【0048】
例えば、Tダイ押出加工におけるTダイ押出温度などの、前記シート成形方法におけるシート成型温度は、200℃以上、280℃以下が好ましく、220℃以上、260℃以下がより好ましい。
【0049】
より膜厚精度の高い1次シートを得る方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂組成物に含有されるポリオレフィン系樹脂の融点より高い表面温度に調整された一対の回転成形工具を用いて、ポリオレフィン樹脂組成物を圧延成形する方法が挙げられる。このとき、回転成形工具の表面温度は、(ポリオレフィン系樹脂の融点+5)℃以上であることが好ましい。また表面温度の上限は、(ポリオレフィン系樹脂の融点+30)℃以下であることが好ましく、(ポリオレフィン系樹脂の融点+20)℃以下であることがさらに好ましい。一対の回転成形工具としては、ロールまたはベルトが挙げられる。両回転成形工具の周速度は必ずしも厳密に同一周速度である必要はなく、それらの差異が±5%以内程度であればよい。また、前記シート形成方法により得られる単層のシート同士を積層したものを、1次シートとしてもよい。
【0050】
ポリオレフィン樹脂組成物を一対の回転成形工具により圧延成形する際には、押出機よりストランド状に吐出したポリオレフィン樹脂組成物を直接一対の回転成形工具間に導入してもよく、一旦ペレット化したポリオレフィン系樹脂組成物を用いてもよい。
【0051】
工程(B)における延伸倍率は、1.1倍以上、1.9倍以下が好ましく、1.2倍以上、1.8倍以下がより好ましい。また、工程(B)における延伸温度は、120℃以上、160℃以下が好ましく、130℃以上、155℃以下がより好ましい。
【0052】
工程(B)におけるポリオレフィン樹脂組成物の冷却には、冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができる。好ましくは冷却ロールに接触させる方法である。
【0053】
工程(B)における第1の方向は、MD方向であることが好ましい。前記第1の方向がMD方向であることは、後述の緩和操作によって、通常、最も低い、多孔質フィルムのMD方向の伸長に対する強度を改善し、前記多孔質フィルム全体の伸長に対する強度を効率よく改善することができる面において好ましい。
【0054】
前記ポリオレフィン樹脂組成物および前記1次シートに孔形成剤が含まれている場合、工程(B)および工程(C)の間、または、工程(C)の後に、延伸されたシートを、洗浄液を用いて洗浄して、前記孔形成剤を除去する工程を含む。
【0055】
前記洗浄液は、前記孔形成剤を除去できる溶媒であれば特に限定されないが、例えば、塩酸水溶液、ヘプタン、ジクロロメタンなどを挙げることができる。
【0056】
工程(C)における、前記第2の方向に延伸する際の延伸温度は、80℃以上、120℃以下が好ましく、80℃以上、115℃以下がより好ましい。また、前記第2の方向に延伸する際の延伸倍率は、2倍以上、12倍以下が好ましく、4倍以上、10倍以下がより好ましい。
【0057】
工程(C)において、前記1次シートを前記第2の方向に延伸する際に、前記1次シートを前記第1の方向へ収縮させる操作を行うことによって、得られる多孔質フィルムの前記第1の方向に伸長させた際の伸びを改善することができる。その結果、得られる多孔質フィルムの伸長に対する強度を向上させることができ、その結果、特殊突き刺し試験にて破断しない多孔質フィルムを好適に製造することができる。なお、以下において、前記1次シートを前記第1の方向へ収縮させる操作を、「緩和操作」とも称する。
【0058】
工程(C)における第2の方向は、前記第1の方向と異なる方向であり、好ましくは第1の方向と直交する方向である。例えば、前記第1の方向がMD方向の場合、前記第2の方向は、TD方向である。
【0059】
工程(C)における、1次シートを、前記第1の方向へ収縮させながら前記第1の方向と異なる第2の方向に延伸する工程とは、以下の(I)および(II)に示す態様も含みうる。
(I)1次シートを、前記第1の方向へ収縮させると同時に前記第1の方向と異なる第2の方向に延伸する工程
(II)1次シートを、前記第1の方向へ収縮させる間に前記第1の方向と異なる第2の方向に延伸する工程(すなわち第1の方向への収縮の開始と第2の方向への延伸の開始が同時とは限らない)
また、前述の通り、前記多孔質フィルムは、通常、MD方向に伸長させた際の伸びが弱いことが知られている。よって、MD方向において前記緩和操作を行うことによって、前述のMD方向に伸長させた際の伸びを改善することができ、その結果、前記多孔質フィルム全体における伸長させた際の強度を効率よく改善することができる。それゆえに、前記特殊突き刺し試験にて破断しない多孔質フィルムをより好適に製造することができる。
【0060】
前記緩和操作における緩和率は、以下の式(1)で表される:
緩和率(%)=[{(延伸工程前の1次シートの前記第1の方向の長さ)-(延伸工程後の多孔質フィルムの前記第1の方向の長さ)}/(延伸工程前の1次シートの前記第1の方向の長さ)]×100 (1)
また、前記第1の方向がMD方向の場合には、前記緩和率を「MD緩和率」とも称する。
【0061】
なお、1次シートの長さとしては、必ずしも全長を測定しなくてもよい。前記緩和率の算出方法の具体例を以下に説明する。
【0062】
比較的小さなサイズに切断された1次シートに対して前記延伸工程を施す場合、前記緩和率は以下のように算出できる。ここで、1次シートは正方形または長方形であると想定する。この場合、1次シートの4辺を把持部材によって把持する。前記第1の方向に垂直な2辺を把持する把持部材間の距離を縮めることによって1次シートを前記第1の方向に収縮させる。換言すれば前記第1の方向において対向する把持部材間の距離を縮めることによって1次シートを前記第1の方向に収縮させる。また、同時に、前記第1の方向に平行な2辺、すなわち、前記第2の方向に垂直な2辺を把持する把持部材間の距離を広げることによって1次シートを前記第2の方向に延伸する。換言すれば前記第2の方向において対向する把持部材間の距離を広げることによって1次シートを前記第2の方向に延伸する。この場合、前記緩和率は下記式(1a)にて算出される。
【0063】
緩和率(%)=[{(延伸工程前の前記第1の方向において対向する把持部材間の距離)-(延伸工程後の前記第1の方向において対向する把持部材間の距離)}/(延伸工程前の前記第1の方向において対向する把持部材間の距離)]×100 (1a)
また、長尺の1次シートに対して前記延伸工程を施す場合、前記緩和率は以下のように算出できる。ここで、前記第2の方向の両端を把持部材によって把持する。ここで、複数の把持部材が前記第1の方向に並んでいる。前記第1の方向に隣接する把持部材間の距離を縮めることによって1次シートを前記第1の方向に収縮させる。また、同時に、前記第2の方向において対向する把持部材間の距離を広げることによって1次シートを前記第2の方向に延伸する。この場合、前記緩和率は下記式(1b)にて算出される。
【0064】
緩和率(%)=[{(延伸工程前の前記第1の方向において隣接する把持部材間の距離)-(延伸工程後の前記第1の方向において隣接する把持部材間の距離)}/(延伸工程前の前記第1の方向において隣接する把持部材間の距離)]×100 (1b)
前記工程(C)における前記緩和率は、前記特殊突き刺し試験にて破断しない多孔質フィルムを好適に製造するとの観点から、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、前記緩和率は、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
【0065】
工程(C)において前記第2の方向に延伸された1次シートに対して、特定の温度にて熱処理することによって熱固定を行って、多孔質フィルムを得てもよい。前記熱固定は、好ましくは110℃以上、130℃以下、より好ましくは115℃以上、128℃以下の温度にて実施される。また、前記熱固定は、好ましくは15秒以上、20分未満、より好ましくは1分以上、15分以下の時間をかけて実施される。
【0066】
<絶縁性多孔質層>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータが、非水電解液二次電池用積層セパレータである場合、前記ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルム上に積層された絶縁性多孔質層とを含むことが好ましい。
【0067】
前記絶縁性多孔質層は、通常、樹脂を含んでなる樹脂層であり、好ましくは、耐熱層または接着層である。前記絶縁性多孔質層を構成する樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。なお、以下において、前記絶縁性多孔質層を単に「多孔質層」とも称する。
【0068】
前記多孔質層は、必要に応じて、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に積層される。ポリオレフィン多孔質フィルムの片面に多孔質層が積層される場合には、当該多孔質層は、好ましくは、非水電解液二次電池としたときの、ポリオレフィン多孔質フィルムにおける正極と対向する面に積層され、より好ましくは、正極と接する面に積層される。
【0069】
前記樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。
【0070】
前記樹脂としては、具体的には、例えば、ポリオレフィン;(メタ)アクリレート系樹脂;含フッ素樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0071】
前述の樹脂のうち、ポリオレフィン、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーが好ましい。
【0072】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびエチレン-プロピレン共重合体等が好ましい。
【0073】
含フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体およびエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等、並びに、前記含フッ素樹脂の中でもガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴムを挙げることができる。
【0074】
ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリアミドなどのアラミド樹脂が好ましい。
【0075】
アラミド樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)がより好ましい。
【0076】
ポリエステル系樹脂としては、ポリアリレートなどの芳香族ポリエステルおよび液晶ポリエステルが好ましい。
【0077】
ゴム類としては、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0078】
融点又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド等を挙げることができる。
【0079】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等を挙げることができる。
【0080】
なお、前記多孔質層に用いられる樹脂としては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
前記多孔質層は、微粒子を含んでもよい。本明細書における微粒子とは、一般にフィラーと称される有機微粒子または無機微粒子のことである。従って、前記多孔質層が微粒子を含む場合、前記多孔質層に含まれる前述の樹脂は、微粒子同士、並びに微粒子と多孔質フィルムとを結着させるバインダー樹脂としての機能を有することとなる。また、前記微粒子は、絶縁性微粒子が好ましい。
【0082】
前記多孔質層に含まれる有機微粒子としては、樹脂からなる微粒子が挙げられる。前記多孔質層に含まれる無機微粒子としては、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライトおよびガラス等の無機物からなるフィラーが挙げられる。これらの無機微粒子は、絶縁性微粒子である。前記微粒子は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
前記微粒子のうち、無機物からなる微粒子が好適であり、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、水酸化アルミニウム、またはベーマイト等の無機酸化物からなる微粒子がより好ましく、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、ベーマイトおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも1種の微粒子がさらに好ましく、アルミナが特に好ましい。
【0084】
前記多孔質層における微粒子の含有量は、前記多孔質層の1~99体積%であることが好ましく、5~95体積%であることがより好ましい。前記微粒子の含有量を前記範囲とすることにより、前記微粒子同士の接触によって形成される空隙が、樹脂等によって閉塞されることが少なくなる。よって、十分なイオン透過性を得ることができると共に、単位面積当たりの目付を適切な値にすることができる。
【0085】
前記微粒子は、粒径または比表面積が互いに異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
前記多孔質層の厚さは一層あたり、0.5~15μmであることが好ましく、2~10μmであることがより好ましい。多孔質層の厚さが一層あたり0.5μm以上であれば、非水電解液二次電池の破損等による内部短絡を充分に抑制することができ、また、多孔質層における電解液の保持量が充分となる。一方、前記多孔質層の厚さが一層あたり15μm以下であれば、レート特性またはサイクル特性の低下を抑制することができる。
【0087】
前記多孔質層の単位面積当たりの重量、すなわち重量目付は一層あたり、1~20g/m2であることが好ましく、4~10g/m2であることがより好ましい。
【0088】
また、前記多孔質層の1平方メートル当たりに含まれる多孔質層構成成分の体積は一層あたり、0.5~20cm3であることが好ましく、1~10cm3であることがより好ましく、2~7cm3であることがさらに好ましい。
【0089】
前記多孔質層の空隙率は、十分なイオン透過性を得ることができるように、20~90体積%であることが好ましく、30~80体積%であることがより好ましい。また、前記多孔質層が有する細孔の孔径は、前記非水電解液二次電池用積層セパレータが十分なイオン透過性を得ることができるように、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0090】
<非水電解液二次電池用積層セパレータ>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、非水電解液二次電池用積層セパレータであり得る。
【0091】
前記非水電解液二次電池用積層セパレータの膜厚は、5.5μm~45μmであることが好ましく、6μm~25μmであることがより好ましい。
【0092】
前記非水電解液二次電池用積層セパレータの透気度は、ガーレ値で100~350sec/100mLであることが好ましく、100~300sec/100mLであることがより好ましい。
【0093】
また、前記非水電解液二次電池用積層セパレータの突き刺し強度は、350gf以上であることが好ましく、400gf以上であることがより好ましく、450gf以上であることがさらに好ましい。なお、前記突き刺し強度は、前記多孔質フィルムと同様の方法にて測定される。
【0094】
尚、本発明の一実施形態における非水電解液二次電池用セパレータは、前記多孔質フィルムおよび前記多孔質層以外の別の多孔質層を、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。前記別の多孔質層としては、耐熱層や接着層、保護層等の公知の多孔質層が挙げられる。
【0095】
<多孔質層、非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法>
本発明の一実施形態における絶縁性多孔質層および本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法としては、例えば、前記多孔質層に含まれる樹脂を含む塗工液を前記多孔質フィルムの片面または両面に塗布し、乾燥させることによって多孔質層を析出させる方法が挙げられる。
【0096】
なお、前記多孔質フィルムの両面に多孔質層を析出させる場合は、(a)前記多孔質フィルムの両面にて前記多孔質層を同時に析出させてもよく、(b)前記多孔質フィルムの片面に前記塗工液を塗布し、乾燥させることによって、前記多孔質フィルムの片面に多孔質層を析出させた後、前記多孔質フィルムのもう一方の片面に前記塗工液を塗布し、乾燥させることによって、前記多孔質フィルムのもう一方の片面に多孔質層を析出させてもよい。
【0097】
また、前記塗工液を前記多孔質フィルムの片面または両面に塗布する前に、当該ポリオレフィン多孔質フィルムの塗工液を塗布する片面または両面に対して、必要に応じて親水化処理を行うことができる。
【0098】
前記塗工液は、前記多孔質層に含まれる樹脂を含む。また、前記塗工液は、前記多孔質層に含まれ得る後述の微粒子を含み得る。前記塗工液は、通常、前述の多孔質層に含まれ得る樹脂を溶媒に溶解させると共に、前記微粒子を分散させることにより調製され得る。ここで、前記樹脂を溶解させる前記溶媒は、前記微粒子を分散させる分散媒を兼ねている。また、前記溶媒により前記樹脂をエマルションとしてもよい。
【0099】
前記溶媒は、ポリオレフィン多孔質フィルムに悪影響を及ぼさず、前記樹脂を均一かつ安定に溶解し、前記微粒子を均一かつ安定に分散させることができればよく、特に限定されるものではない。前記溶媒としては、具体的には、例えば、水および有機溶媒が挙げられる。前記溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
塗工液は、所望の多孔質層を得るのに必要な樹脂固形分(樹脂濃度)や微粒子量等の条件を満足することができれば、どのような方法で形成されてもよい。塗工液の形成方法としては、具体的には、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法等が挙げられる。また、前記塗工液は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記樹脂および微粒子以外の成分として、分散剤や可塑剤、界面活性剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。尚、添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよい。
【0101】
塗工液の多孔質フィルムへの塗布方法、つまり、多孔質フィルムの表面への多孔質層の形成方法は、特に制限されるものではない。多孔質層の形成方法としては、例えば、塗工液を多孔質フィルムの表面に直接塗布した後、溶媒を除去する方法;塗工液を適当な支持体に塗布し、溶媒を除去して多孔質層を形成した後、この多孔質層と多孔質フィルムとを圧着させ、次いで支持体を剥がす方法;塗工液を適当な支持体に塗布した後、塗布面に多孔質フィルムを圧着させ、次いで支持体を剥がした後に溶媒を除去する方法等が挙げられる。
【0102】
塗工液の塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、例えば、グラビアコーター法、ディップコーター法、バーコーター法、およびダイコーター法等が挙げられる。
【0103】
溶媒の除去方法は、乾燥による方法が一般的である。また、塗工液に含まれる溶媒を他の溶媒に置換してから乾燥を行ってもよい。
【0104】
[実施形態2:非水電解液二次電池用部材、実施形態3:非水電解液二次電池]
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用部材は、正極、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータ、および負極がこの順で配置されてなる。
【0105】
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータを含む。
【0106】
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、例えば、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材を備え得る。なお、非水電解液二次電池用セパレータ以外の非水電解液二次電池の構成要素は、下記説明の構成要素に限定されるものではない。
【0107】
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータを介して対向した構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を有する。非水電解液二次電池は、特にはリチウムイオン二次電池であることが好ましい。なお、ドープとは、吸蔵、担持、吸着、または挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0108】
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池部材は、本発明の実施形態1に係る耐電圧特性に優れる非水電解液二次電池用セパレータを備えている。従って、本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池部材は、安全性に優れる非水電解液二次電池を製造できるとの効果を奏する。本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、本発明の実施形態1に係る耐電圧特性に優れる非水電解液二次電池用セパレータを備えている。従って、本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、安全性に優れるという効果を奏する。
【0109】
<正極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における正極としては、一般に非水電解液二次電池の正極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0110】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、V、Mn、Fe、CoおよびNi等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0111】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。前記導電剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、アクリル樹脂、並びに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。なお、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0113】
前記正極集電体としては、例えば、Al、Niおよびステンレス等の導電体が挙げられる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0114】
シート状の正極の製造方法としては、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にした後、当該ペーストを正極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0115】
<負極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における負極としては、一般に非水電解液二次電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0116】
前記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金等が挙げられる。当該材料としては、例えば、炭素質材料等が挙げられる。炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、および熱分解炭素類等が挙げられる。
【0117】
前記負極集電体としては、例えば、Cu、Niおよびステンレス等が挙げられ、特にリチウムイオン二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0118】
シート状の負極の製造方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にした後、当該ペーストを負極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。前記ペーストには、好ましくは前記導電剤および前記結着剤が含まれる。
【0119】
<非水電解液>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であれば特に限定されず、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、Li2B10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩およびLiAlCl4等が挙げられる。前記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
非水電解液を構成する有機溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、アミド類、カーバメート類および含硫黄化合物、並びにこれらの有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒等が挙げられる。前記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0121】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0122】
[測定方法]
実施例1~4および比較例1にて製造された非水電解液二次電池用セパレータ(多孔質フィルム)の物性等を、以下の方法を用いて測定した。
【0123】
[膜厚]
多孔質フィルムの膜厚を、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機(VL-50)を用いて測定した。
【0124】
[重量目付]
多孔質フィルムから、一辺の長さ8cmの正方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルの重量W(g)を測定した。そして、以下の式(2)に従い、多孔質フィルムの重量目付を算出した。
【0125】
重量目付(g/m2)=W/(0.08×0.08) (2)
[透気度]
多孔質フィルムの透気度(ガーレ値)を、JIS P8117に準拠して測定した。
【0126】
[MD緩和率]
後述の実施例および比較例においては、長尺の1次シートのTD方向の両端を、MD方向に隣接する複数の把持部材によって把持した。よって、MD緩和率は下記式(1b´)にて算出した。
【0127】
MD緩和率(%)=[{(延伸工程前のMD方向において隣接する把持部材間の距離)-(延伸工程後のMD方向において隣接する把持部材間の距離)}/(延伸工程前のMD方向において隣接する把持部材間の距離)]×100 (1b´)
[突き刺し強度]
多孔質フィルムの突き刺し強度を、以下の(i)および(ii)に示す方法にて測定した。
(i)前記多孔質フィルムを12mmΦのワッシャで固定した後、ピン(ピン径1mmΦ、先端0.5R)を、突き刺し速度:10mm/sec、突き刺し深さ:10mmの条件にて、当該多孔質フィルムに突き刺した。
(ii)(i)にて前記多孔質フィルムに前記ピンを突き刺したときの最大応力(gf)を測定し、その測定値をフィルムの突き刺し強度とした。
【0128】
[特殊突き刺し試験]
多孔質フィルムを12mmΦのワッシャで固定し、ピン(ピン径1mmΦ、先端0.5R)を1mm/sの突き刺し速度にて突き刺し深さ2.5mmまで、前記多孔質フィルムに突き刺した。その際の破断しないサンプルを合格とした。なお、ここで、「破断する」との定義は、特殊突き刺し試験において応力を測定し、試験開始時の応力を下回る応力が測定されることである。
【0129】
[MD破断伸度、TD破断伸度]
多孔質フィルムのMD破断伸度およびTD破断伸度をJIS K7127規格に準拠した方法にて測定した。具体的な測定方法を以下に示す。
【0130】
多孔質フィルムのMD方向の長さを測定した。測定された多孔質フィルムのMD方向の長さを、以下において、「伸長前のMD長さ」と称する。その後、前記多孔質フィルムをMD方向に伸長し、前記多孔質フィルムが破断した際の前記多孔質フィルムのMD方向の長さを測定した。測定された前記多孔質フィルムが破断した際の前記多孔質フィルムのMD方向の長さを、以下において、「伸長後のMD長さ」と称する。以下の式(
3)を用いて、MD破断伸度を測定した。
MD破断伸度[%GL]=[{(伸長後のMD長さ)-(伸長前のMD長さ)}/(伸長前のMD長さ)]×100 (
3)
同様に、多孔質フィルムのTD方向の長さを測定した。測定された多孔質フィルムのTD方向の長さを、以下において、「伸長前のTD長さ」と称する。その後、前記多孔質フィルムをTD方向に伸長し、前記多孔質フィルムが破断した際の前記多孔質フィルムの
TD方向の長さを測定した。測定された前記多孔質フィルムが破断した際の前記多孔質フィルムのTD方向の長さを、以下において、「伸長後のTD長さ」と称する。以下の式(
4)を用いて、
TD破断伸度を測定した。
TD破断伸度[%GL]=[{(伸長後のTD長さ)-(伸長前のTD長さ)}/(伸長前のTD長さ)]×100 (
4)
[耐電圧試験]
多孔質フィルムに対して、Φ8mmであり、かつ、
図1に示すように、凸部の直径がΦ100μm、凸部の高さが800μm、凸部間の距離が200μmの表面凹凸を有する、耐電圧試験機(KIKUSUI製 TOS9200)の円柱型の電極プローブを載せ、続いて、前記電極プローブの上に400gのおもりを載せた。その後、印加速度200mV/secにて加圧し、破壊電圧を測定した。測定された破壊電圧の値を、耐電圧特性の値とした。
【0131】
なお、前記耐電圧試験は、実際の非水電解液二次電池における充放電時における、非水電解液二次電池用セパレータに荷重が加えられながら、電圧が加えられる態様を模したものである。従って、前記耐電圧試験にて測定される耐電圧特性の値が高い場合には、実際の非水電解液二次電池セパレータにおける充放電時において、前記多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータの耐電圧特性が良好であることを示す。
【0132】
[実施例1]
超高分子量ポリエチレン粉末(固有粘度:21dL/g、粘度平均分子量300万、東ソー株式会社製)68重量%と、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP-0115、日本精鑞社製)32重量%とを準備した。この超高分子量ポリエチレンとポリエチレンワックスとの合計を100重量部として、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.4重量部、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.1重量部、および、ステアリン酸ナトリウム1.3重量部を加えた。さらに、得られた混合物の全体積に対して38体積%となるように平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)を加えた。これらを粉末のままヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物とした。
【0133】
当該ポリオレフィン樹脂組成物を一対のロールにてMD方向に1.4倍の延伸倍率にて延伸し、シート状のポリオレフィン樹脂組成物を作製した。得られたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5重量%)に浸漬させることで前記炭酸カルシウムを除去し、1次シートを得た。続いて、得られた1次シートのTD方向の両端を、MD方向に隣接する複数の把持部材によって把持した。1次シートを、MD方向に隣接する把持部材間の距離を縮めることによってMD方向に緩和させながら、TD方向において対向する把持部材間の距離を広げることによってTD方向に7倍の延伸倍率にて延伸し、膜厚11μmの多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータ1とした。このとき、MD緩和率は10%であった。
【0134】
[実施例2]
MD緩和率を20%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚10μmの多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータ2とした。
【0135】
[実施例3]
MD緩和率を30%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚11μmの多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータ3とした。
【0136】
[実施例4]
MD緩和率を50%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚11μmの多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータ4とした。
【0137】
[比較例1]
MD緩和率を0%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚13μmの多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータ5とした。
【0138】
[結論]
実施例1~4および比較例1におけるMD緩和率および前述の方法にて測定された非水電解液二次電池用セパレータの物性値を、以下の表1および表2に示す。なお、特殊突き刺し試験において、多孔質フィルムが破断しなかった場合を「○」、破断した場合を「×」にて表す。なお、ここで、多孔質フィルムが破断するとは、前記突き刺し試験開始と同時に上昇する前記多孔質フィルムの応力が200gf以上低下する点が発生することを指す。
【0139】
【0140】
【0141】
表2に記載の通り、実施例1~4に記載の非水電解液二次電池用セパレータ1~4および比較例1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ5は同程度の膜厚を有している。しかしながら、実施例1~4に記載の非水電解液二次電池用セパレータ1~4が特殊突き刺し試験にて破断しない一方、比較例1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ5は、特殊突き刺し試験にて破断した。よって、実施例1~4に記載の非水電解液二次電池用セパレータ1~4は、比較例1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ5と比較して、伸長に対する強度に優れていることが分かった。なお、実施例1~4に記載の非水電解液二次電池用セパレータ1~4は、比較例1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ5よりも、MD破断伸度が向上している。
【0142】
そして、特殊突き刺し試験にて破断しない実施例1~4に記載の非水電解液二次電池用セパレータ1~4は、比較例1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ5よりも、耐電圧特性に優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の一態様は、耐電圧特性に優れる非水電解液二次電池用セパレータを備える、安全性に優れる非水電解液二次電池の製造に利用することができる。