(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】光学式の位置測定装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/38 20060101AFI20240705BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240705BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G01D5/38 G
G01B11/00 G
G01D5/347 110E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020082442
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】10 2019 206 937.1
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】トマス・カルベラー
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-127939(JP,A)
【文献】特開2012-127946(JP,A)
【文献】特開平09-171104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0235051(US,A1)
【文献】特開2015-232562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26- 5/38
G01B 11/00
G02B 5/18, 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの測定方向(x)に沿って互いに対して移動可能
である第1の物体および第2の物体の相対位置を検出するための光学式の位置測定装置であって、
前記第1の物体に結合されるように構成された第1の格子と、
前記第2の物体に結合されるように構成された第2の格子と、
を備え、
前記第1及び第2の格子のうち1つの格子において、光源によって放出された照明光線束が少なくとも2つの部分光線束に分割され、
該少なくとも2つの部分光線束が、走査光線経路の後続の過程において異なる偏光光学効果を受け、
前記第1及び第2の格子のうち1つの格子で再結合され、異なって偏光された
前記少なくとも2つの部分光線束が再結合された後に検出ユニットで得られる信号光線束から、位相シフトされた、変位に依存した
複数の走査信号が生成可能であり、
前記少なくとも2つの部分光線束の走査光線経路内で、分割と再結合との間には別個の偏光光学素子は配置されておらず、
前記第1及び第2の格子のうち少なくとも1つ
の格子が、
前記少なくとも2つの部分光線束に対して異なる偏光光学効果を生成するための偏光格子として構成されている光学式の位置測定装置において、
前記偏光格子(22;122;222;322;422;522)が、
該偏光格子
上の位置に依らずに異なる偏光状態を有する回折次数が生じるように構成されていることを特徴とする光学式の位置測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式の位置測定装置において、
前記偏光格子(22;122;222;322;422;522)が、格子ウェブ(22.2;122.2;222.2;322.2;422.2;522.2)および格子ギャップ(22.1;122.1;222.1;322.1;422.1;522.1)の形式で円弧状に湾曲された複数の格子構造を含み、該格子構造の長手方向が、測定方向(x)に対してそれぞれ平行に向けられており、格子構造が、測定方向(x)に沿って、および測定方向(x)に対して垂直方向に、周期的に配置されている光学式の位置測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式の位置測定装置において、
前記偏光格子(22;122;222;322;422;522)が、測定方向(x)に対して平行に測定方向周期性(Λ)をもって周期的に配置されたストリップ状の格子部分(22a、22b、22c、22d)を有し、該格子部分の長手方向が測定方向(x)に対して垂直方向に向けられており、
前記格子部分内の前記格子構造(22a、22b、22c、22d)が、測定方向(x)に対して垂直方向に直交周期性(Λ_ortho)をもって周期的に配置されている光学式の位置測定
装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の光学式の位置測定装置において、
前記偏光格子(22;122;222;322;422;522)の隣接する
前記格子部分(22a,22b,22c,22d)間に
格子ギャップが配置されているか、
格子ウェブが配置されているか、または
複数の格子ギャップおよび格子ウェブが交互に隣接して配置されている光学式の位置測定装置。
【請求項5】
請求項
3に記載の光学式の位置測定装置において、
隣接する
前記格子部分の格子構造が互いに境界をなしている光学式の位置測定装置。
【請求項6】
請求項3に記載の光学式の位置測定装置において、
直交周期性Λ_orthoがΛ_ortho<1.5・λの関係にしたがって選択されており、λは使用する光源(LQ;21)の波長を示す光学式の位置測定装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の光学式の位置測定装置において、
前記偏光格子(22;122;222;322;422;522)の面積充填率FVが、FV<0.6の関係にしたがって選択されており、面積充填率FVが、偏光格子ユニットセルの総面積に対する偏光格子ユニットセルの格子ウェブ(22.2;122.2;222.2;322.2;422.2;522.2)の面積の比として定義されている光学式の位置測定装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の光学式の位置測定装置において、
前記偏光格子(22;122;222;322;422;522)が反射型位相格子として構成されており、該反射型位相格子の格子ウェブ(22.2;122.2;222.2;322.2;422.2;522.2)および格子ギャップ(22.1;122.1;222.1;322.1;422.1;522.1)が、異なる反射特性を有している光学式の位置測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光学式の位置測定装置において、
反射型位相格子が、少なくとも以下の構成要素:
キャリア基板(22.10)、
該キャリア基板(22.10)に配置された平坦な反射層(22.11)、および
該反射層(22.11)の上方に配置された格子構造層(22.13)を含む光学式の位置測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光学式の位置測定装置において、
前記格子構造層(22.13)が、d<0.6・λの関係にしたがって選択される層厚dを有し、λは、使用する光源(LQ;21)の波長を示す光学式の位置測定装置。
【請求項11】
請求項9に記載の光学式の位置測定装置において、
平坦な反射層(22.11)と格子構造層(22.12)との間に平坦な位相シフト層(22.12)が配置されている光学式の位置測定装置。
【請求項12】
請求項9に記載の光学式の位置測定装置において、
前記反射層(22.11)が金属反射層または反射性の層スタックからなっており、
前記格子構造層(22.13)が、SiO
2、TaO
x、TiO
2、Siの群からの誘電性の材料、またはTiN、GaNの群からの半導体材料、または前述の誘電性の材料のうちの1つ以上および前述の半導体材料のうちの1つ以上を有する層スタックからなっている光学式の位置測定装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の光学式の位置測定装置において、
前記偏光格子(22;122;222;322;422;522)が、結果として生じる+/-1次の回折次数が互いに直交して偏光されているように構成されている光学式の位置測定装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の光学式の位置測定装置において、
第1の物体が、反射型位相格子または透過型位相格子として構成された第1の格子に結合されており、
第2の物体が、偏光格子(22;122;222;322;422;522)として機能する反射型位相格子として構成された第2の格子に結合されており、
光源(21)によって放出された光線束(B)が、第1の格子で2つの部分光線束(TS1、TS2)に分割され、
該部分光線束(TS1、TS2)が続いて第2の格子に入射し、2つの部分光線束(TS1、TS2)のそれぞれが回折され、方向を変更され、部分光線束(TS1′、TS2′)が、第2の格子に入射した後に互いに直交して偏光されており、
部分光線束(TS1′、TS2′)が再び第1の格子(10)に入射し、そこで再結合され、続いて、結果として生じた信号光線束(S)が検出ユニットの方向に伝播する光学式の位置測定装置。
【請求項15】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の光学式の位置測定装置において、
第1の物体が、基準器(10)として機能する第1の格子(G1)に結合されており、第1の格子(G1)が反射型位相格子または透過型位相格子として構成されており、
第2の物体が走査ユニット(20)に結合されており、走査ユニット(20)が以下の構成要素:
光源(LQ;21)、
走査格子として機能する第2の格子(G2)であって、さらに偏光格子(22;122;222;322;422;522)として作用し、反射型位相格子として構成されている第2の格子(G2)、および
検出ユニット(DET;23)を含み、
光源(LQ;21)によって放出された光線束(B)が、第1の格子(G1)で2つの部分光線束(TS1、TS2)に分割され、
部分ビーム光線束(TS1、TS2)が続いて第2の格子(G2)に入射し、2つの部分光線束(TS1、TS2)のそれぞれが方向を変更され、部分光線束(TS1′、TS2′)が、第2の格子(G2)に入射した後に互いに直交して偏光されており、
部分光線束(TS1′、TS2′)が、再び第1の格子(G1)に入射し、そこで再結合され、続いて、結果として生じた信号光線束(S)が検出ユニット(DET;23)の方向に伝播する光学式の位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対して移動可能な2つの物体の相対位置を決定するために適した光学式の位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の高精度な光学式の位置測定装置では、強度に関する評価方法に加えて、位置決定のための位相シフトされた、変位に依存した3つ以上の走査信号を生成するために偏光光学的な方法も使用される。走査信号の偏光光学的な生成に関しては、例えば、本出願人の欧州特許出願公開第0481356号明細書を参照されたい。
【0003】
欧州特許出願公開第0481356号明細書による信号生成の基礎となる原理が、展開した走査光線経路の概略図として
図1に示されている。格子A、Mは、ここでは、指定された測定方向xに沿って、残りの構成要素であるL1、L2、AOと一緒に相対的に移動可能に配置されている。左から入射し、偏光子P1によって所定のように偏光された光線束は、最初に格子Aを介して2つの部分光線束に分割される。
図1に示すように、位置情報が符号化されている干渉されるべき部分光線束の光線経路には、別個の偏光光学的な構成要素、例えば、異なる向きのラムダ/4プレートPE1、PE2が挿入されている。ラムダ/4プレートPE1、PE2は、通過する2つの部分光線束を互いに直交して偏光する。すなわち、2つの部分光線束は、次に、例えば、左右に円偏光される。次に、これら2つの部分ビームは、共通の信号光線束(0)を形成するように重ね合わされ、後続の検出ユニットもしくは評価光学系AOにおいて、重ね合わされた3つ以上の部分光線束I90、I210、I330に分割される。異なる向きの偏光子P90、P210、P330を通過した後、検出器素子D90、D210、D330では結果として最終的にそれぞれ120°だけ位相シフトされた走査信号S90、S210、S330が生じ、これらの信号を既知の方法でさらに処理することができる。ラムダ/4プレートPE1、PE2に加えて、分割された部分光線束の光路には、部分光線束が通過した格子A、L1、L2によって引き起こされた不正確な偏光を補正するために、偏光子P2、P3の形式のさらなる偏光光学的な構成要素が配置されることが多い。
【0004】
位相シフトされた、変位に依存した複数の走査信号をこのように偏光光学的に生成することの欠点は、互いに対して移動する構成要素間の走査光線経路もしくは走査ギャップにラムダ/4板および偏光子などの別個の、もしくは付加的な光学素子を挿入する必要があることである。対応する光学式の位置測定装置の構成容積が制限されているか、または走査間隔が短い場合には、このような付加的な構成要素は問題となる可能性がある。位置測定装置が国際公開第2008/138501号パンフレットから公知の原理に類似して構成される場合、
図1のA、MおよびL1、L2などの構成要素は、互いに対して変位可能な2つの基準器として構成されている。この場合、2つの基準器の間に設けられた定置の偏光光学素子を機械的に保持することは、しばしば不可能である。
【0005】
走査光線経路に付加的な偏光光学素子を設けることは、使用されるキャリア構造の平坦性、平行性、および均質性に対する要求の増大をも意味し、これらの支持構造を収容するために、ドリフトのない安定した取付け面が必要である。起こり得る材料誤差は、この場合には、適切な較正方法による多大な付加的な労力をもってしか補正することができない。このことは、特に、長い並進不変の基準が、対応する光学的な位置測定装置において使用される場合に当てはまる。
【0006】
走査ギャップ内の固有振動数または空気流などの他のシステム特性が走査光線経路内の付加的に必要な偏光光学素子によってさらに悪影響を受ける可能性もある。
【0007】
走査光線経路内に別個の、もしくは付加的な偏光光学素子を設けることなしに位相シフトされた走査信号を偏光光学的に生成する光学式の位置測定装置が、本出願人によるドイツ特許出願公開第102010063253号明細書において既に提案されている。この解決策によれば、必要な偏光光学素子は、例えば周期的に変化する構造を有する高周波格子の形式で走査光線経路の他の構成要素に組み込まれて構成されている。このような位置測定装置では、使用される構成要素は、測定方向に位置に依存する偏光特性を有する;例えば、この場合には、基準器が偏光格子として機能するように構成することもできる。この場合、この偏光格子は、例えば、局所的に可変の複数の層からなり、格子周期dR<λ/2を有する高周波格子を含み、この高周波格子は0次の回折次数しか有しておらず、偏光光学的な機能を生成する。高周波格子の格子配向は、測定方向に沿って偏光周期dPで変化し、この偏光周期dPは、基準器の照明領域の幅hwSpotよりも著しく大きい必要があり、この幅hwSpotは、生成可能な走査信号の信号周期SPを下方に制限している。すなわち、関係dP>5hwSpotを保持する必要がある。したがって、基準器の異なる箇所に入射する部分光線束は、局所的に異なる偏光光学効果を受け、この場合に偏光変化をそれぞれの走査間隔に正確に適合させる必要がある。このために、部分光線束の入射点間の間隔は、基準器の格子周期の半分に対応するように選択される。走査間隔が変化した場合、走査信号の変調度が損なわれ、他の信号特性が変化する。
【0008】
走査光線経路内に付加的な別個の偏光光学素子を設けることなしに位相シフトされた走査信号を偏光光学的に生成する別の光学式の位置測定装置が出願人のドイツ特許出願公開第102014211004号明細書から公知である。この文献によれば、所定の条件下で光学式の位置測定装置の基準器または走査プレート側の格子における回折を使用して、回折された部分光線束内の特定の偏光状態、例えば、反対の円偏光状態を設定することができる。しかしながら、このために一方では、分割される光線束に関して特定の入射条件が保持されるべきである。他方では、回折された部分光線束に所望の偏光特性を設定するために、対応する格子は極めて小さい格子周期を有している必要がある。したがって、部分光線束に偏光光学効果を生じさせるこの可能性は特定の制約を受け、あらゆる走査原理に使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第0481356号明細書
【文献】国際公開第2008/138501号パンフレット
【文献】ドイツ特許出願公開第102010063253号明細書
【文献】ドイツ特許出願公開第102014211004号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の基礎をなす課題は、位相シフトされた走査信号を偏光光学的に生成するために、走査光線経路内にいかなる付加的な偏光光学素子も必要とせずに異なる光学走査原理を使用することを可能にする光学式の位置測定装置を提案することである。異なる部分光線束で設定された偏光状態は走査条件が変化した場合であっても、可能な限り不変であること、したがって、生成された走査信号の一定の品質を保証することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する光学式の位置測定装置によって解決される。
【0012】
本発明による光学式の位置測定装置の有利な構成が、従属請求項に記載された手段により得られる。
【0013】
本発明による光学式の位置測定装置は、少なくとも1つの測定方向に沿って互いに対して移動可能な2つの物体の相対位置を検出するために用いられ、物体は第1の格子および第2の格子に結合されている。1つの格子において、光源によって放出された照明光線束が少なくとも2つの部分光線束に分割され、部分光線束は、走査光線経路の後続の過程において異なる偏光光学効果を受け、格子において様々に偏光された部分光線束が再結合された後に検出ユニットで得られる信号光線束から位相シフトされた、変位に依存した走査信号が生成可能である。部分光線束の走査光線経路内で、分割と再結合との間には別個の偏光光学素子は配置されていない。通過する少なくとも1つ格子は、部分光線束に対して異なる偏光光学効果を生成するための偏光格子として構成されている。この場合、偏光格子は、格子のあらゆる入射位置において異なる偏光状態を有する回折次数が生じるように構成されている。
【0014】
偏光格子は、格子ウェブおよび格子ギャップの形式で円弧状に湾曲された複数の格子構造を含み、格子構造の長手方向は測定方向に対してそれぞれ平行に向けられており、格子構造は、測定方向に沿って、および測定方向に対して垂直方向に、周期的に配置されている。
【0015】
偏光格子は、測定方向に対して平行に測定方向周期性をもって周期的に配置されたストリップ状の格子部分を有することが可能であり、これらの格子部分の長手方向は測定方向に対して垂直方向に向けられており、格子部分には、格子構造が測定方向に対して垂直方向に直交周期性をもって周期的に配置されている。
【0016】
さらに、偏光格子の隣接する格子部分間には
格子ギャップが配置されているか、
格子ウェブが配置されているか、または
複数の格子ギャップおよび格子ウェブが交互に隣接して配置されている。
【0017】
これに対して、代替的に、隣接する格子部分の格子構造が互いに境界をなしていることも可能である。
【0018】
有利な実施形態では、直交周期性Λ_orthoはΛ_ortho<1.5・λの関係にしたがって選択することもでき、λは使用する光源の波長を示す。
【0019】
さらに、偏光格子の面積充填率FVは、FV<0.6の関係にしたがって選択されており、面積充填率FVは、偏光格子ユニットセルの総面積に対する偏光格子ユニットセルの格子ウェブの面積の比として定義されている。
【0020】
さらに、偏光格子が反射型位相格子として構成されていることも可能であり、反射型位相格子の格子ウェブおよび格子ギャップは異なる反射特性を有している。
【0021】
好ましい実施形態では、反射型位相格子は、少なくとも以下の構成要素を含むことができる:
キャリア基板、
キャリア基板に配置された平坦な反射層、および
反射層の上方に配置された格子構造層。
【0022】
この場合、格子構造層は、d<0.6・λの関係にしたがって選択される層厚dを有することができ、λは、使用する光源の波長を示す。
【0023】
さらに、平坦な反射層と格子構造層との間には平坦な位相シフト層が配置されている。
【0024】
さらに、
反射層が金属反射層または反射性の層スタックからなっていること、および
格子構造層が、SiO2、TaOx、TiO2、Siの群からの誘電性の材料、またはTiN、GaNの群からの半導体材料、または前述の誘電性の材料のうちの1つ以上および前述の半導体材料のうちの1つ以上を有する層スタックからなっていることも可能である。
【0025】
有利には、偏光格子は、結果として生じる+/-1次の回折次数が互いに直交して偏光されているように構成されている。
【0026】
本発明による光学式の位置測定装置のさらなる実施形態では、
第1の物体は、反射型位相格子または透過型位相格子として構成された第1の格子に結合されており、
第2の物体は、偏光格子として機能する反射型位相格子として構成された第2の格子に結合されており、
光源によって放出された光線束は、第1の格子で2つの部分光線束に分割され、
部分光線束は続いて第2の格子に入射し、2つの部分光線束のそれぞれは回折され、方向を変更され、部分光線束は、第2の格子に入射した後には互いに直交して偏光されており、
部分光線束は再び第1の格子に入射し、そこで再結合され、続いて、結果として生じた信号光線束は検出ユニットの方向に伝播するように構成されている。
【0027】
あるいは、
第1の物体は、基準器として機能する第1の格子に結合されており、第1の格子は反射型位相格子または透過型位相格子として構成されており、
第2の物体は走査ユニットに結合されており、走査ユニットは以下の構成要素:
光源、
走査格子として機能する第2の格子であって、さらに偏光格子として作用し、反射型位相格子として構成されている第2の格子、および
検出ユニットを含み、
光源によって放出された光線束は、第1の格子で2つの部分光線束に分割され、
部分光線束は続いて第2の格子に入射し、2つの部分光線束のそれぞれは方向を変更され、部分光線束は、第2の格子に入射した後には互いに直交して偏光されており、
部分光線束は、再び第1の格子に入射し、そこで再結合され、結果として生じる信号光線束は、次に、検出ユニットの方向に伝播する。
【0028】
本発明による手段によって、位相シフトされた走査信号を偏光符号化して生成するために、走査光線経路内に別個の偏光光学素子を必要としない光学式の位置測定装置を実現することができる。信号を生成する部分光線束に対する所望の偏光光学効果は、走査光線経路における通常の機能に加えて、偏光格子として機能する格子によって生成することができる。対応する位置測定装置を特に小型に構成することが可能である。
【0029】
別個の偏光光学素子なしに偏光符号化された走査信号を生成するための最初に論じた変形形態と比較して、本発明による解決策は、例えば、分割される光線束の入射角に関して存在するようないかなる制限的な境界条件にもしたがわない。さらに、これらの解決策と比較して、走査間隔が変化した場合に信号品質が損なわれることはない。信号取得のために使用される部分光線束の所定の偏光状態の生成は、本発明による解決策ではそれぞれの走査間隔とは基本的に無関係である。
【0030】
本発明による手段は、分割された部分ビームが完全に空間的に分離されていない光学式の位置測定装置においても偏光符号化された走査信号を生成することを可能にする。従来の方法ではこのことは不可能である。なぜならば、部分光線束が重なり合う走査ビーム経路に偏光光学素子を配置することができないからである。
【0031】
さらに、従来技術にしたがって、いわゆる「高周波格子」を偏光格子として使用する場合には、光線を偏光するために必要な極めて小さい格子周期への制限もなくなる。
【0032】
図面に関連した本発明による装置の例示的な実施形態の以下の説明に基づいて本発明のさらなる詳細および利点を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】従来技術による光学式の位置測定装置を示す概略図である。
【
図2】いわゆる「3格子エンコーダ」として構成された本発明による光学式の位置測定装置の一実施形態における展開した走査光線経路を示す図である。
【
図3】
図3aおよび
図3bは、それぞれ3格子エンコーダとして構成された本発明による光学式の位置測定装置の側面図である。
【
図4】
図3a、
図3bに示す実施形態の検出ユニットを示す概略図である。
【
図5】
図3a、
図3bに示す実施形態において基準器として機能する第1の格子を示す平面図である。
【
図6a】
図3a、
図3bに示す実施形態において
偏光格子として機能する第2の格子を示す部分平面図である。
【
図7】
図7a~
図7eは、それぞれの偏光格子の代替的な実施形態のユニットセルを示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に
図2~
図6cに基づいて本発明による光学式の位置測定装置を説明する。この光学式の位置測定装置は、いわゆる「3格子エンコーダ」として形成されており、展開される走査ビーム経路が
図2に示されている。
図3a、3bは、このような3格子エンコーダの特定の実施形態の異なる断面図を示し、
図4は、同じ3格子エンコーダの検出ユニットを示し、
図5は、使用される基準器の上面図を示し、
図6a~6cは、この例で使用される
偏光格子の様々な図を示す。
【0035】
対応する位置測定装置は、少なくとも1つの測定方向xに沿って互いに対して移動可能な2つの物体の相対位置を検出するために使用される。これらの物体は様々な図には示されていない。相互に移動可能な物体は、例えば、直線状の測定方向xに沿って互いに対して変位することができる機械構成要素であってもよい。機械構成要素の相対位置に関して位置測定装置によって生成された走査信号は制御ユニットに伝送され、制御ユニットはこれらの測定信号を運動制御のために使用することができる。
【0036】
一般に、第1の物体は位置測定装置の第1の格子に結合されており、第2の物体は第2の格子に結合されている。いずれか1つの格子において、光源によって放出された照明光線束は、少なくとも2つの部分光線束に分割される。走査光線経路のさらなる過程において、部分光線束は異なる偏光光学効果を有し、最終的に格子で再結合されて、結果として生じる信号ビームを形成する。次に、検出ユニットにおいて、信号光線束から、複数の位相シフトされた、変位もしくは位置に依存した走査信号を生成することができる。部分光線束の分割と再統合との間の走査光線経路には、この場合、別個の偏光光学素子は配置されておらず、むしろ、通過した格子のうちの少なくとも1つは、部分光線束に対して異なる偏光光学効果をもたらすための偏光格子として機能する。この場合、偏光格子は、異なる偏光状態を有する回折次数が格子上の各入射位置で生じるように形成されている。原則として、偏光格子を適切に形成し、対応する格子パラメータを選択することによって、回折された部分光線束において極めて多様な偏光状態を設定することが可能である。このことは、回折された部分光線束が、直線、楕円形、または円形に偏光されている場合もあることを意味する。照明光線束を異なる偏光状態を有する部分光線束に分割する場合には、分割された部分光線束が走査光路でそれぞれ互いに直交して偏光されていることが有利であることも判明している。このことは、直線偏光の場合には、分割された部分光線束の偏光面が互いに垂直に配向されていることを意味し、円偏光または楕円偏光の場合には、直交偏光とは、部分光線束の偏光方向が互いに反対に整列されていることであると理解される。
【0037】
適切な偏光格子の具体的な構成および可能な実施形態を以下に詳細に説明する。
【0038】
信号を生成するために使用される光線束の展開された走査ビーム経路を
図2に示した第1の実施形態による3格子エンコーダでは、光源LQによって放出された照明光線束Bは第1の格子G1に到達し、この格子を介して2つの部分光線束TS1、TS2に分割され、これらの部分光線束はそれぞれ光軸OAから離れて伝播する。照明光線束Bは、二重矢印で示すように直線的に伝搬する。第1の格子G1を介して分割された2つの部分光線束TS1、TS2は、最初はそれぞれ同じ偏光を有する。走査光線経路をさらに進むと2つの部分光線束TS1、TS2は、この例では偏光格子として機能する第2の格子G2に入射する。部分光線束TS1、TS2は格子G2によって回折され、方向が変更され、次いで、部分光線束TS1′、TS2′として光軸OAの方向にさらに伝播する。方向の変更に加えて、偏光格子としての役割を果たす第2の格子G2によって、回折された部分光線束TS1′、TS2′は、格子G2を通過した後、または格子G2に入射した後には異なる偏光状態を有し、互いに対して直交して偏光されている。原則として、既に上述したように、部分光線束TS1′、TS2′は、互いに直交して直線状、直交して楕円状、または直交して円形に偏光することができる。図示の例では、2つの部分光線束TS1′、TS2′の直交円偏光が行われる。第3の格子G3では、部分光線束TS1′、TS2′が最終的に再結合し、異なる偏光の部分光線束TS1′、TS2′が重ね合わされた信号光線束Sがさらに検出ユニットDETの方向に伝播し、検出ユニットDETを介して、位相シフトされた複数の走査信号S
1、S
2、S
3が信号光線束Sから生成される。適切な検出ユニットDETの可能な実施形態を以下に詳細に説明する。
【0039】
図3a、3bは、入射光システムとして形成されたこのような3格子エンコーダの特定の実施形態をそれぞれ異なる断面図で示す。これらの図から分かるように、照明光線束Bによって入射される第1の格子は走査光線経路において基準器10として機能する。この基準器10は、この場合には、異なる位相シフト効果を有する測定方向xに沿って周期的に配置された分割領域10.1、10.2を有する反射型位相格子として構成されており、基準器10の平面図が
図5に示されている。基準器10は、第1の物体(図示しない)に結合されている。
図3a、3bから分かるように、第1の格子もしくは基準器10を介して、照明光線束Bは2つの部分光線束TS1、TS2に分割される。より明確にするために、照明光線束Bの回折および分割時に第1の格子で生じるが、信号生成には使用されない他の回折次数は図面には示されていない。
【0040】
本発明による位置測定装置の他の全ての構成要素は、この実施形態では、第2の物体(同様に図示しない)に結合された走査ユニット20に配置されている。2つの物体、およびこれらとともに基準器10および走査ユニット20は、指定された測定方向xに沿って互いに対して直線的に変位可能であるように配置されている。
【0041】
光源21および検出ユニット23に加えて、走査ユニット20は、走査光線経路で入射される第2の格子を含み、この第2の格子はこの例示的な実施形態では走査格子22とも呼ばれ、この場合には反射型位相格子として構成されている。走査格子22は、上述の光学式の位置測定装置と同様に偏光格子として機能し、走査格子22に入射する直線偏光された部分ビーム束TS1、TS2の回折およびこの場合に生じる方向の変化に加えて、走査格子22に入射した後に、回折された部分ビーム束TS1′、TS2′を互いに直交して偏光させる。図示の例では、
図3bに示すxz平面において入射方向への部分ビームTS1′、TS2′の回折および後方反射が起こる。すなわち、基準器10から入射する部分ビームTS1、TS2は、xz平面内の走査格子22に、いわゆる「リトロー角」で当たり、xz平面で部分ビームTS1′、TS2′として同じ角度で基準器10に反射して戻る。したがって、この実施形態では、2回目に入射された基準器10は、走査光線経路内の第3の格子として働く。走査格子22から入射する部分光線束TS1′、TS2′は、基準器10で再結合され、続いて信号ビームSは検出ユニット23の方向に伝播する。検出ユニット23を介して、信号光線束Sは、それぞれ120°だけ互いに位相シフトされ、位置に依存した3つの走査信号S
1、S
2、S
3に変換され、これらの走査信号は、次いで、例えば、下位の(図示しない)さらなる処理のための制御ユニットに伝送される。これに代えて、もちろん、互いに90°だけ位相シフトされ、位置に依存した4つの走査信号を生成することも可能である。
【0042】
適切な検出ユニット23の可能な実施形態が
図4に概略的に示されている。この図から分かるように、走査光線経路もしくは基準器において通過した第3の格子から入射する信号光線束Sは、重ね合わされた部分ビーム束TS1′、TS2′と共に検出ユニット23において、最初に、信号光線束Sを3つの同一の部分光線束に分割する分割格子23.1に到達する。次に、分割された部分光線束は、偏光方向がそれぞれ互いに60°だけ回動された3つの偏光子23.2a、23.2b、23.2cを通過する。次に、偏光子23.2a、23.2b、23.2cの下流側に配置された光電子検出器23.3a、23.3b、23.3cによって、3つの部分光線束を、それぞれ120°だけ位相シフトされた、変位に依存した3つの走査信号S
1、S
2、S
3に変換し、さらなる処理のために提供することができる。
【0043】
図6a~
図6cを参照して、例えば
図2~
図5に示した光学式の位置測定装置で、入射される第2の格子もしくは走査格子22として走査ビーム経路で使用することができる偏光格子の例示的な実施形態を以下に詳細に説明する。以下の説明では、上記説明で走査格子に使用した偏光格子に同じ符号22を使用する。
【0044】
既に上述したように、本発明による光学式の位置測定装置では、偏光格子22が、格子のそれぞれの入射位置で、分割された部分光線束に所定の偏光光学効果を及ぼす役割を果たし、これにより異なる偏光状態を有する回折次数が得られる。したがって、別個の偏光光学素子を付加的に走査光線経路に設けることを回避することができる。さらに、このような偏光格子によって、
図2に示す3格子エンコーダにおいても位相シフトされた走査信号の偏光光学的な生成を実現することができる。このようなシステムでは格子間の間隔が一般に小さいことに基づいて、入射される第2の格子の領域では、分割された部分光線束の空間的分離を行わないことが一般的である。すなわち、これらの部分ビームは、第2の格子の領域において重なり合う。したがって、この光線の重なり合いに基づいて、従来の方法で、すなわち、部分光線束内の偏光光学素子によって、位相シフトされた走査信号の偏光光学的な生成を実施することは不可能である。
【0045】
対応する偏光格子22は、本発明による光学式の位置測定装置では、格子のそれぞれの入射位置で異なる偏光状態を有する回折次数が生じるように構成されている。好ましくは、偏光格子22は、結果として生じる+/-1次の回折次数が互いに対して直交して偏光されているように設計される。
【0046】
図6aの適切な偏光格子22の例示的な実施形態の部分平面図、および特に
図6bのそのような偏光格子のユニットセルの詳細図から分かるように、偏光格子22は、格子ギャップ22.1および格子ウェブ22.2の形式で円弧状に湾曲した複数の格子構造22.2を備える。
【0047】
この実施形態では、偏光格子22は、反射型位相格子として構成されている。このことは、交互に配置された格子構造もしくは格子ギャップ22.1および格子ウェブ22.2が、異なる反射特性を有し、特に、入射する部分光線束に対して異なる位相シフト効果を及ぼすことを意味する。
【0048】
格子構造もしくは格子ギャップ22.1および格子ウェブ22.2の長手方向は、
図6a、6bから分かるように、それぞれ測定方向xに平行に配向されている。さらに格子構造は、測定方向xに沿っても測定方向xに対して垂直方向にも周期的に配置されている。測定方向xに沿って、もしくは測定方向xに平行して、複数の格子部分22a、22b、22c、22dが測定方向周期Λで周期的に配置されている。これらの格子部分の長手方向は、測定方向xに垂直に、すなわち、指定されたy方向に向けられている。それぞれの格子部分22a、22b、22c、22d内には円弧状の格子構造が直交周期Λ_orthoで周期的に配置されている。特に、偏光格子22における直交周期Λ_orthoが以下の関係(1)にしたがって選択される場合には有利であることが判明している:
Λ_ortho<1.5・λ (式1)
この場合、
Λ_ortho:=偏光格子における格子構造の直交周期性
λ:=使用する光源の波長
である。
【0049】
関係(1)を保持することによって、対応する偏光格子22が、主回折方向に対して直交する方向に入射する部分ビームに対して弱い回折効果のみを有することを保証することができる。この場合、主回折方向はxz平面内にあり、直交回折方向はyz平面内にある。この実施形態では、xz平面内の回折は、変位に依存した走査信号の生成には決定的であり、他の平面に沿った強い回折効果は、他の場合には信号強度および偏光効果の低減をもたらすことになる。
【0050】
偏光格子22の湾曲した格子構造もしくは格子ギャップ22.1および格子ウェブ22.2は、例えば、
図6a、6bに示す所定の座標系の場合、以下のいずれか一方の関係(2a)、(2b)を使用して解析的に説明することができる:
Y=(Λ/π)・ln(|1/cos(x・π/Λ)|) (式2a)
この場合、
Λ:=格子部分の測定方向周期
x:=測定方向
Y:=格子部分の長手方向
である。
Y=sqrt((Λ/2)
2-x
2) (式2b)
この場合、
Λ:=格子部分の測定方向周期
x:=測定方向
Y:=格子部分の長手方向
である。
【0051】
この場合、関係(2a)は、懸垂線状の格子構造を特徴づけ、関係(2b)は円形線状の格子構造である。
【0052】
特に
図6aから分かるにように、図示の実施形態では、x方向に隣接する格子部分22a、22b、22c、22dの間に、それぞれの直線状の格子ウェブ22.2a、22.2b、22.2cが配置されている。これらの直線状の格子ウェブ22.2a、22.2b、22.2cは、細長い長方形の形状を有し、長方形の長手方向軸線は、測定方向xに垂直に、すなわち方向yに沿って延在している。
【0053】
これに対して代替的に、隣接する格子部分22a、22b、22c、22dの間に複数の格子ギャップを配置してもよいし、または交互に隣接して複数の格子ウェブおよび格子ギャップを配置してもよい。さらに、これらの領域には別々の格子ギャップも格子ウェブも配置せず、代わりに、隣接する格子部分22a、22b、22c、22dの格子構造が互いに境界をなしていることも可能である。
【0054】
さらに、偏光格子22の面積充填率FVは、以下の関係式(3)にしたがって選択されると有利であることが判明している:
FV<0.6 (式3)
この場合、
FV:=偏光格子ユニットセルの格子ウェブの面積と偏光格子ユニットセルの総面積との比である。
【0055】
このように寸法決めした偏光格子は、より容易にクリーニングすることができる。さらに、様々な格子構造が互いに十分に分離されることが保証される。+/-1次の回折次数で強度の弱化につながる恐れのある、隣接する格子構造間の不都合な結合効果を防止することができる。
【0056】
偏光格子22の具体的な格子構造およびこのような格子に適した材料に関連して、xz平面における
図6a、6bの偏光格子22の部分断面図を示す
図6cの図を参照されたい。上述したように、偏光格子22のこの実施形態は反射型位相格子として構成されている。この偏光格子22はキャリア基板22.10を含み、このキャリア基板には反射層22.11が平坦に配置されている。この実施形態では、さらに反射層22.11の上方に平坦な位相シフト層22.12が設けられており、この位相シフト層には格子構造層22.13が配置されており、格子構造層には、対応する格子ウェブ22.2および格子ギャップ22.1を有する格子構造が、既に上述した幾何学的形状またはは上記配置で形成されている。
【0057】
偏光格子22のこのような構造では、格子構造層22.13が、次の関係(4)にしたがって選択される層厚dを有することが有利であることが判明している:
d<0.6・λ (式4)
この場合、
d:=格子構造層の層厚
λ:=使用する光源の波長
である。
【0058】
この実施形態では、例えば石英ガラスまたはゼロデュア(Zerodur)を、偏光格子22のためのキャリア基板22.10として使用することができる。
【0059】
反射層22.11は、高屈折率材料および低屈折率材料を有する複数の層からなる金属反射層または反射性の層スタックとして構成することができ、高屈折率材料は、例えばTaOx、TiO2、Siであり、低屈折率材料は、例えばSiO2はである。位相シフト層22.12の材料としては、例えば、SiO2を考慮する。
【0060】
格子構造層22.12の形成に関しては、SiO2、TaOx、TiO2、Siの群の誘電性の材料を使用することができる。しかしながら、この場合にはTiN、GaNなどの半導体材料または例えばAl、Ag、Auなどの導電率の高い金属を用いることも可能である。代替的には、格子構造層22.13は、上述の1つ以上の誘電性の材料または半導体材料を使用した層スタックから構成することもできる。
【0061】
さらなる代替的な実施形態では、反射型位相格子として形成された偏光格子は、反射層を配置した1つのキャリア基板のみを有することができ、反射層の上方には構造化された位相シフト層が配置されている。したがって、この場合、
図6cの例で設けられている別個の位相シフト層および格子構造層は、単一層、すなわち、1つまたは複数の構造化された層の形式で一緒に形成され、これらの層は、付加的な位相シフト層なしに反射層に直接に取り付けられている。
【0062】
対応する偏光格子の所望の偏光効果を設定するために、格子構造の具体的な幾何学的形状および配置、格子パラメータ、構造幅、およびエッチング深さに加えて、当然ながら、使用される材料も適切に適合させて選択されるべきである。
【0063】
図7a~
図7eは、それぞれ、本発明による光学式の位置測定装置を使用することができる偏光格子の代替的な実施形態のユニットセルの図を示す。
【0064】
図7aに示す偏光格子122の変形例では、格子構造は、格子ギャップ122.1および格子ウェブ122.2の形式で懸垂線状に形成されており、x方向にそれぞれユニットセルの縁部まで延在している。これらの格子構造は、上記の関係(2a)によって解析的に特徴づけることができる。
【0065】
図7bは、別の偏光格子222のユニットセルを示しており、円弧状の格子構造もしくは格子ギャップ222.1および格子ウェブ222.2が円形の線状に形成されており、ユニットセルの縁部でx方向にそれぞれ切り取られている。
【0066】
図7cに示す偏光格子322のユニットセルでは、懸垂線状のグリッド構造もしくは格子ギャップ322.1および格子ウェブ322.2が、別個の直線部分を組み合わせて構成されている。
【0067】
図7dは、
図7cに示した実施形態の偏光格子をわずかに変更したユニットセルの変形例を示している。この偏光格子422では、格子構造もしくは格子ギャップ422.1および格子ウェブ422.2の隣接する線形部分はさらに付加的なずれを有している。
【0068】
図7eは、最後に、偏光格子522のユニットセルのさらなる変形例を示している。
この例では、格子ギャップ522.1および格子ウェブ522.2の形式の円弧状の格子構造は部分的に中断されている。例えば、ユニットセル内の中央の格子ウェブ522.2は、2つの中断部522.2a、522.2bを有する。
【0069】
図7b~7eの変形例は、製造がより簡単であることにより特に有利であることが判明している;これらの実施形態では、極めて微細に構造化された格子領域を回避することができる。
【0070】
具体的に記載した実施形態に加えて、当然ながら、本発明の範囲内でさらなる構成の可能性が存在する。
【0071】
したがって、2つの物体の回転相対運動を検出するための本発明による光学式の位置測定装置を構成することも可能である。
【0072】
さらに、3格子エンコーダとして形成した場合、第1の格子が基準器の形式で、第2の格子が走査格子もしくは偏光格子の形式で、それぞれ反射性に構成されていることは必須ではない。したがって、当然ながら、第1の格子を透過型位相格子として構成し、第2の格子も透過型位相格子として形成することもできる。同様に、反射型位相格子と透過型位相格子とを有する混合構造の変形例、すなわち、例えば透過型走査格子もしくは透過型偏光格子も可能であり、反射性基準器または透過性基準器、および反射型偏光格子なども可能である。
【0073】
偏光格子が透過型位相格子として透過性であるように構成される場合、例えば、格子構造がエッチングされる透明なキャリア基板を含むことができる。代替的には、透明なキャリア基板に誘電性の材料または半導体材料からなる別個の格子構造層を取り付けることが可能であり、この格子構造層にそれぞれの格子構造が形成される。この場合、格子構造層は適切な層スタックから形成することもできる。
【0074】
さらに、3格子走査原理にしたがって説明した走査に加えて、本発明による光学式の位置測定装置に他の走査光線経路を設けることももちろん可能である。例えば、国際公開第2008/138501号パンフレットまたは欧州特許出願公開第2450672号明細書により既知のような、いわゆる「ストリップエンコーダ」では、いずれか1つの格子が、位相シフトされた走査信号の偏光光学生成を可能にするために偏光格子として構成されており、この場合、付加的な、または別個の偏光光学素子を配置することはもはや必要ではない。このようなシステムでは、第1の格子を反射型位相格子または透過型位相格子として構成し、第2の格子を反射型位相格子として構成してもよい;第2の格子は偏光格子として機能する。
【0075】
しかしながら、この走査原理および他の光学走査原理では、代替的に、入射されるそれぞれの格子を基本的には偏光格子として形成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
A 格子、L1、L2
AO 評価光学系
B 照明光線束
G1、G2、G3 格子
D90、D210、D330 検出器素子
I90、I210、I330 部分光線束
LQ 光源
M 格子
OA 光軸
P2、P3 偏光子
P90、P210、P330 偏光子
PE1、PE2 ラムダ/4プレート
S 信号光線束
S1、S2、S3 走査信号
TS1、TS2 部分光線束
TS1′、TS2′ 部分光線束
Λ 測定方向周期性
Λ_ortho 直交周期性
λ 波長
d 層厚
x 測定方向
10 基準器
10.1、10.2 分割領域
20 走査ユニット
21 光源
22 走査格子、偏光格子
22.1 格子ギャップ
22.2 格子ウェブ
22.10 キャリア基板
22.11 反射層
22.12 位相シフト層
22.13 格子構造層
22a、22b、22c、22d 格子部分
22.1 格子ギャップ
22.2 格子ウェブ
23 検出ユニット
23.1 分割格子
23.2a、23.2b、23.2c 偏光子
23.3a、23.3b、23.3c 光電子検出器
122 偏光格子
122.1 格子ギャップ
122.2 格子ウェブ
222 偏光格子
222.1 格子ギャップ
222.2 格子ウェブ
322 偏光格子
322.1 格子ギャップ
322.2 格子ウェブ
422 偏光格子
422.1 格子ギャップ
422.2 格子ウェブ
522 偏光格子
522.1 格子ギャップ
522.2 格子ウェブ
522.2a、522.2b 中断部