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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】2液型ウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240705BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240705BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240705BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J11/04
C09K3/10 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021024379
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126353
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】阿部 愛美
(72)【発明者】
【氏名】松木 裕一
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218539(JP,A)
【文献】特開2021-011538(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080508(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/158289(WO,A1)
【文献】特開2002-080631(JP,A)
【文献】特開2008-195883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
C09K3/10-3/12
C08G18/00-18/87;71/00-71/04
B32B
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート環を有する化合物(B)と、シランカップリング剤(C)とを含有する主剤と、
1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(D)を含有する硬化剤と有し、
前記シランカップリング剤(C)が、イソシアヌレート環を有するものでなく、イソシアネートシランを含有し、
前記主剤又は前記硬化剤が、さらに、微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラー(E)を含有する、2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項2】
組成物全体に対する前記複合フィラー(E)の含有量が、0.1~10質量%である、
請求項1に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記化合物(B)が、脂肪族イソシアネートのイソシアヌレート体である、請求項1又は2に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子量500~20,000のポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを、前記ポリエーテルポリオールが有する水酸基1モルに対する前記芳香族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の割合が1.5~2.5モルになるように混合し、反応させることで得られるウレタンポリポリマーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項5】
前記主剤又は前記硬化剤が、さらに、カーボンブラック又は炭酸カルシウムを含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液型ウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用、建築用、構造用の接着剤、シーリング材として2液型ウレタン系接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/158289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、自動車産業など様々な分野で性能や安全性に対する要求が高まる中、それらに使用される2液型ウレタン系接着剤組成物に対して性能の向上が求められている。特に、高温環境下に長時間晒された後にも優れた接着性(耐熱接着性)を示すことが求められている。また、作業性に優れることも求められている。
【0005】
このようななか、本発明者らが特許文献1を参考に2液型ウレタン系接着剤組成物を調製し、その性能を調べたところ、今後さらに高まるであろう要求を考慮すると、さらなる改良が必要であることが明らかになった。
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、優れた作業性及び優れた耐熱接着性を示す2液型ウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラーを配合することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート環を有する化合物(B)と、シランカップリング剤(C)とを含有する主剤と、
1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(D)を含有する硬化剤と有し、
上記主剤又は上記硬化剤が、さらに、微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラー(E)を含有する、2液型ウレタン系接着剤組成物。
(2) 組成物全体に対する上記複合フィラー(E)の含有量が、0.1~10質量%である、上記(1)に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
(3) 上記化合物(B)が、脂肪族イソシアネートのイソシアヌレート体である、上記(1)又は(2)に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
(4) 上記ウレタンプレポリマー(A)が、分子量500~20,000のポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを、上記ポリエーテルポリオールが有する水酸基1モルに対する上記芳香族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の割合が1.5~2.5モルになるように混合し、反応させることで得られるウレタンポリポリマーである、上記(1)~(3)のいずれかに記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
(5) 上記主剤又は上記硬化剤が、さらに、カーボンブラック又は炭酸カルシウムを含有する、上記(1)~(4)のいずれかに記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、優れた作業性及び優れた耐熱接着性を示す2液型ウレタン系接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の2液型ウレタン系接着剤組成物について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、作業性に優れること、接着性(特に耐熱接着性)に優れることを「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
【0010】
本発明の2液型ウレタン系接着剤組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート環を有する化合物(B)と、シランカップリング剤(C)とを含有する主剤と、
1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(D)を含有する硬化剤と有し、
上記主剤又は上記硬化剤が、さらに、微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラー(E)を含有する、2液型ウレタン系接着剤組成物である。
【0011】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、上述した本発明の課題が解決されるものと考えられる。その理由は明らかではないが、本発明の組成物において、主剤又は硬化剤が微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラー(複合フィラー(E))を含有する点が1つの特徴点と考えられる。すなわち、微粒子炭酸カルシウムの影響で接着剤中でのタルクの分散性が向上し、フィラーによる接着剤層への補強効果が増すことにより、高温環境下に長時間晒された後にも優れた接着性(耐熱接着性)を示すものと考えられる。なお、後述する比較例2~5に示されるように、上述した効果は微粒子炭酸カルシウムとタルクを複合化せずに配合した場合には得られない。その理由は、複合化せずに配合した場合、分散性が低く、組成物の均一性が低下してしまうためと考えらえる。
【0012】
[主剤]
本発明の組成物において、主剤は、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート環を有する化合物(B)と、シランカップリング剤(C)とを含有する。
【0013】
以下、主剤が含有する各成分について説明する。
【0014】
〔ウレタンプレポリマー(A)〕
上記ウレタンプレポリマー(A)は、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーであれば特に制限されない。
ウレタンプレポリマー(A)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を末端に含有するウレタンプレポリマーであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ウレタンプレポリマー(A)としては、従来公知のものを用いることができる。
ウレタンプレポリマー(A)は、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリイソシアネートと1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、「活性水素化合物」とも言う。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
本発明において、活性水素含有基は活性水素を含有する基を意味する。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0015】
<ポリイソシアネート>
ウレタンプレポリマー(A)の製造の際に使用されるポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI。例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族及び/又は脂環式のポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、アロファネート変性体が挙げられる。
【0016】
ポリイソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、MDIであることがより好ましい。
ポリイソシアネートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
<活性水素化合物>
ウレタンプレポリマー(A)の製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0018】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられる。中でも、ポリオールであることが好ましい。
【0019】
上記ポリオールは、OH基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。ポリオールの具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;(メタ)アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0020】
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位-Ra-O-Rb-を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体のポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネートとの相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの分子量は、本発明の効果等がより優れる理由から、500~20,000であることが好ましい。
なお、本明細書において、ポリオールの分子量は、水酸基価と平均官能基数とから求めた値であり、具体的には、(56,100/水酸基価)×平均官能基数として求められる。
ここで、水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に記載の水酸基価であり、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数である。また、平均官能基数は、1分子のポリオールが有する水酸基の平均の数である。
活性水素化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
<好適な態様>
ウレタンプレポリマー(A)は、本発明の効果等がより優れる理由から、
ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを反応させることで得られるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
【0022】
ウレタンプレポリマー(A)が、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることで得られるウレタンプレポリマーである場合、ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、本発明の効果等がより優れる理由から、1.5~2.5であることが好ましい。
【0023】
ウレタンプレポリマー(A)は、本発明の効果等がより優れる理由から、
分子量が500~20,000のポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを、ポリエーテルポリオールが有する水酸基1モルに対する芳香族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の割合が1.5~2.5モル(すなわち、NCO/OH=1.5~2.5)になるように混合し、反応させることで得られるウレタンポリポリマーであることが好ましい。
【0024】
<含有量>
本発明の組成物において、ウレタンプレポリマー(A)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、10~95質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。
【0025】
本発明の組成物において、ウレタンプレポリマー(A)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、主剤全体に対して、10~95質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。
【0026】
〔化合物(B)〕
上記化合物(B)は、イソシアヌレート環を有する化合物であれば特に制限されない。
【0027】
上記化合物(B)は、本発明の効果等がより優れる理由から、イソシアネートのイソシアヌレート体(ヌレート体)であることが好ましい。
上記イソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリイソシアネートであることが好ましい。ポリイソシアネートの具体例は上述のとおりである。
上記イソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、脂肪族イソシアネートであることが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートであることがより好ましく、脂肪族ジイソシアネートであることがさらに好ましい。
【0028】
<含有量>
本発明の組成物において、化合物(B)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0029】
本発明の組成物において、化合物(B)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、主剤全体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0030】
本発明の組成物において、化合物(B)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
【0031】
〔シランカップリング剤(C)〕
上記シランカップリング剤(C)は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、加水分解性シリル基(特にヒドロカルビルオキシシリル基)及び有機官能基を有する化合物が好ましい。
なお、上記シランカップリング剤(C)はイソシアヌレート環を有さない。
【0032】
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0033】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基(特に、ポリスルフィド基(-S-:nは2以上の整数))、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)、イソシアネート基などが挙げられ、なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、イソシアネート基が好ましい。
【0034】
上記シランカップリング剤(C)は、本発明の効果等がより優れる理由から、イソシアネートシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、又は、モノスルフィド結合と加水分解性シリル基とを有するモノスルフィド化合物であることが好ましく、イソシアネートシランであることがより好ましい。
【0035】
<イソシアネートシラン>
上記イソシアネートシランは、イソシアネート基及び加水分解性基を有するシラン化合物である。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、イソシアネート基及び加水分解性シリル基(特にヒドロカルビルオキシシリル基)を有する化合物であることが好ましい。
【0036】
上記イソシアネートシランは、本発明の効果等がより優れる理由から、イソシアネートとシランカップリング剤とを反応させることで得られる化合物であることが好ましい。
上記イソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリイソシアネートであることが好ましい。ポリイソシアネートの具体例は上述のとおりである。
上記イソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、脂肪族イソシアネートであることが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートであることがより好ましく、脂肪族ジイソシアネートであることがさらに好ましい。
上記イソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、脂肪族ポリイソシアネート(特に脂肪族ジイソシアネート)のビュレット体又はアロファネート体であることが好ましく、脂肪族ポリイソシアネート(特に脂肪族ジイソシアネート)のビュレット体であることがより好ましい。
【0037】
<含有量>
本発明の組成物において、シランカップリング剤(C)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0038】
本発明の組成物において、シランカップリング剤(C)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、主剤全体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0039】
本発明の組成物において、シランカップリング剤(C)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0040】
[硬化剤]
本発明の組成物において、硬化剤は、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(D)を含有する。
【0041】
〔化合物(D)〕
上記化合物(D)は、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)であれば特に制限されない。活性水素化合物の具体例及び好適な態様は上述した主剤中の活性水素化合物と同じである。
【0042】
<含有量>
本発明の組成物において、化合物(D)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0043】
本発明の組成物において、化合物(D)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、硬化剤全体に対して、10~95質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0044】
本発明の組成物において、化合物(D)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、1~30質量%であることが好ましく、10~20質量%であることがより好ましい。
【0045】
[複合フィラー(E)]
上述のとおり、上述した主剤又は上述した硬化剤は、さらに、微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラー(E)を含有する。上述した主剤及び上述した硬化剤の両方が複合フィラー(E)を含有してもよい。本発明の効果等がより優れる理由から、上述した主剤が複合フィラー(E)を含有するのが好ましい。
【0046】
上記複合フィラー(E)は、微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラーであり、微粒子炭酸カルシウムとタルクとを複合化したものである。
【0047】
〔微粒子炭酸カルシウム〕
上記複合フィラー(E)の原料である微粒子炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムの微粒子であれば特に制限されない。ここで、微粒子とは、その平均粒子径が10μm以下であることを意味する。
上記炭酸カルシウムの具体例としては、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0048】
<平均粒子径>
上記微粒子炭酸カルシウムの平均粒子径は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.01~5.0μmであることが好ましく、0.1~1.0μmであることがより好ましい。
【0049】
なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた、レーザ回折法による体積平均径である。
【0050】
〔タルク〕
上記複合フィラー(E)の原料であるタルクは、特に制限されない。
【0051】
<平均粒子径>
上記タルクの平均粒子径は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1.0~10.0μmであることが好ましく、2.0~5.0μmであることがより好ましい。
【0052】
<アスペクト比>
上記タルクのアスペクト比は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、2~80であることが好ましく、5~50であることがより好ましい。
【0053】
なお、上記アスペクト比は、「平均粒子径/厚み」で表されるものである。
上記タルクの厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)にてタルクを10,000倍で観察し、観察される視野の中からランダムに複数個のタルクを選択しその厚みを測定した測定値をもとに算出した平均値である。
【0054】
〔微粒子炭酸カルシウム/タルク〕
複合フィラー(E)において、タルクに対する微粒子炭酸カルシウムの割合(質量比)は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1~2であることが好ましく、0.2~0.5であることがより好ましい。
【0055】
〔製造方法〕
複合フィラー(E)の製造方法は特に制限されないが、例えば、微粒子炭酸カルシウムとタルクとをヘンシェルミキサー等で強い剪断応力を加えて混合する方法等が挙げられる。
【0056】
〔含有量〕
本発明の組成物において、上記複合フィラー(E)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、2~8質量%であることがより好ましい。
【0057】
本発明の組成物において、上記複合フィラー(E)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、主剤全体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、2~8質量%であることがより好ましい。
【0058】
本発明の組成物において、上記複合フィラー(E)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、1~30質量%であることが好ましく、10~20質量%であることがより好ましい。
【0059】
本発明の組成物において、上記複合フィラー(E)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した化合物(B)の含有量に対して、10~400質量%であることが好ましく、100~250質量%であることがより好ましい。
【0060】
本発明の組成物において、上記複合フィラー(E)の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したシランカップリング剤(C)の含有量に対して、10~1000質量%であることが好ましく、200~600質量%であることがより好ましい。
【0061】
[任意成分]
本発明の組成物は上述した成分以外の成分(任意成分)を含有していてもよい。任意成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
任意成分としては、例えば、上述した複合フィラー(E)以外の充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、上述した化合物(B)以外のイソシアネートの変性体(例えば、アロファネート体、ビュレット体)、触媒(硬化触媒)、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、接着付与剤、ターピネオールのようなテルペン化合物、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤などの各種添加剤等が挙げられる。
なお、上記充填剤は、例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤で表面処理されていてもよい。
【0062】
上述した主剤又は上述した硬化剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、カーボンブラック又は上述した複合フィラー(E)以外の炭酸カルシウムを含有するのが好ましい。
【0063】
〔カーボンブラック〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
【0064】
上記カーボンブラックは特に制限されない。例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
具体的には、上記SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、ISAFとしてはショウワブラックN220(昭和キャボット社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、ニテロン#200(新日化カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(中部カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シースト5(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱#5(三菱化学社製)、FTとしては旭サーマル(旭カーボン社製)、HTC#20(中部カーボン社製)、MTとしては旭#15(旭カーボン社製)等が例示される。
【0065】
<含有量>
本発明の組成物において、上記カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0066】
本発明の組成物において、上記カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、30~70質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。
【0067】
〔炭酸カルシウム〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、炭酸カルシウムを含有するのが好ましい。なお、上記炭酸カルシウムは、複合化されていないものであり、上述した複合フィラー(E)を含まない。
【0068】
上記炭酸カルシウムは特に制限されない。例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0069】
<含有量>
本発明の組成物において、上記炭酸カルシウムの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0070】
本発明の組成物において、上記炭酸カルシウムの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、5~100質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
【0071】
〔可塑剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、可塑剤を含有するのが好ましい。
【0072】
上記可塑剤の具体例としては、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
<含有量>
本発明の組成物において、上記可塑剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、1~50質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましい。
【0074】
本発明の組成物において、可塑剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、1~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。
【0075】
〔触媒(硬化触媒)〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、硬化触媒を含有するのが好ましい。
【0076】
上記硬化触媒は、特に限定されないが、具体例としては、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸などカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートなどのリン酸類;オクチル酸ビスマスなどのビスマス触媒;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどのスズ触媒;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(例えば、DMP-30)、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物などの第三級アミン触媒等が挙げられる。
【0077】
上記硬化触媒は、接着性により優れるという点で、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むことが好ましい。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造は、ジモルフォリノジエチルエーテルを基本骨格とする構造である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造において、モルフォリン環が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基は特に制限されない。例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
上記硬化触媒はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
<含有量>
本発明の組成物において、上記硬化触媒の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、組成物全体に対して、0.05~5.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。
【0079】
本発明の組成物において、上記硬化触媒の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したウレタンプレポリマー(A)の含有量に対して、0.05~5.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましい。
【0080】
[製造方法]
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記主剤、上記硬化剤をそれぞれ別の容器に入れて、各容器内を窒素ガス雰囲気下で混合する方法により製造することができる。
【0081】
[混合比]
本発明の組成物において、主剤に対する硬化剤の割合(質量比)は、本発明の効果等がより優れる理由から、0.01~1であることが好ましく、0.05~0.2であることがより好ましい。
【0082】
[基材]
本発明の組成物を適用することができる基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、金属等が挙げられる。
基材は、オレフィン樹脂を含む基材が好適に挙げられる。
オレフィン樹脂を含む基材は、オレフィン樹脂と、例えば、炭素繊維、ガラスフィラーのようなガラス、タルク、炭酸カルシウム又はアルミナのような、充填剤との混合物から得られる基材であってもよい。
【0083】
プラスチックは、例えば、単独重合体、共重合体、水素添加物であってもよい。ゴムも同様である。
【0084】
具体的なプラスチックとしては例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)のようなオレフィン樹脂;
ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂;
ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;アセテート樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂);ポリアミド樹脂が挙げられる。
上記COCは、例えば、テトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンとの共重合体のようなシクロオレフィンコポリマーを意味する。
また、上記COPは、例えば、ノルボルネン類を開環重合し、水素添加して得られる重合体のようなシクロオレフィンポリマーを意味する。
プラスチックは、難接着性樹脂であってもよい。
【0085】
基材は表面処理がなされていてもよい。表面処理としては、例えば、フレーム処理、コロナ処理、イトロ処理が挙げられる。上記各表面処理の方法は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
【0086】
本発明の組成物を基材に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0087】
本発明の組成物を用いる場合、基材にプライマーを用いずとも、本発明の効果を優れたレベルで発現させることができる。
【0088】
本発明の組成物は、湿気等によって硬化することができる。例えば、5~90℃、相対湿度(RH)5~95%の条件下で本発明の組成物を硬化させることができる。
【0089】
[用途]
本発明の組成物は、例えば、自動車用、建築用、構造用の接着剤、シーリング材として有用である。特に、自動車用樹脂パネル用の接着剤として有用である。
【実施例
【0090】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
〔2液ウレタン系接着剤組成物の調製〕
下記表1に示される各成分を同表に示される割合(質量部)で混合することで各2液型ウレタン系接着剤組成物(主剤/硬化剤=10/1(質量比))を調製した。
【0092】
〔評価〕
得られた2液型ウレタン系接着剤組成物について以下の評価を行った。
【0093】
<作業性>
得られた2液型ウレタン系接着剤組成物を用いて三角ビードを打って止めてノズルを引き上げた時の糸の長さを調べた。そして、糸の長さが6cm以下であるものを○(作業性に優れる)とし、糸の長さが6cmを超えるものを×(作業性に劣る)とした。結果を表1に示す。
【0094】
<接着性>
基材(タルク入りポリプロピレン)に得られた2液型ウレタン系接着剤組成物を付与して、接着剤層を形成した(厚み:3mm)。さらに、形成された接着剤層に別の基剤(タルク入りポリプロピレン)を貼り合せて、圧着し、23℃、相対湿度50%の環境下に3日間放置して、積層部材を得た。
得られた積層部材の接着層にナイフで切れ込みを入れ、手で剥離した。そして、剥離面を目視で確認し、剥離面のうち、凝集破壊(CF)の面積の割合を調べた。また、得られた積層部材について耐熱試験(試験条件はそれぞれ90℃336時間、100℃336時間、90℃1000時間)を行い、その後同様の評価を行った(耐熱)。そして、以下の評価基準に従って接着性を評価した。結果を表1に示す。
・◎:CF95%以上
・○:CF80%以上95%未満
・△:CF50%以上80%未満
・×:CF50%未満
ここで、「CF数値」は凝集破壊の面積の割合(%)を示す。例えば、「CF90」は、凝集破壊の面積の割合が90%であることを示す。なお、凝集破壊の面積の割合が多いほど接着性に優れる。また、90℃1000時間の耐熱試験後の接着性が◎又は○であれば、耐熱接着性に優れると言える。
【0095】
【表1】
【0096】
上記表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0097】
<主剤>
・ウレタンプレポリマー:ポリオキシプロピレンジオール(商品名サンニックスPP2000、三洋化成工業社製、水酸基価56、分子量2,000)70質量部とポリオキシプロピレントリオール(商品名サンニックスGP3000、三洋化成工業社製、水酸基価56、分子量3,000)とMDI(商品名スミジュール44S、住化バイエルウレタン社製)とをNCO/OHが2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させることで得られたイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー
・イソシアヌレート化合物:タケネートD-376N(ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)のイソシアヌレート体、三井化学社製)(イソシアヌレート環を有するため上述した化合物(B)に該当する)
・シランカップリング剤:タケネートD-165N(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビュレット体、三井化学社製)と、Y9669(3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)とを反応させることで得られたイソシアネートシラン
・カーボンブラック:親日化カーボン社製#200MP(HAF級カーボンブラック)
・炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製カルファイン200(表面処理軽質炭酸カルシウム)
・複合フィラー1:ハイブリッドフィラーAHT-7525C(微粒子炭酸カルシウム(平均粒子径:0.2μm)とタルク(平均粒子径:3.2μm、アスペクト比:25)とからなる複合フィラー(微粒子炭酸カルシウム/タルク=25/75(質量比))、三共精粉社製)(微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラーであるため、上述した複合フィラー(E)に該当する)
・複合フィラー2:ハイブリッドフィラーAHT-5050(微粒子炭酸カルシウム(平均粒子径:1.4μm)とタルク(平均粒子径:3.2μm、アスペクト比:25)とからなる複合フィラー(微粒子炭酸カルシウム/タルク=50/50(質量比))、三共精粉社製)(微粒子炭酸カルシウムとタルクとからなる複合フィラーであるため、上述した複合フィラー(E)に該当する)
・フィラー1:微粒子炭酸カルシウム(平均粒子径:0.2μm)(上記複合フィラー1の原料である微粒子炭酸カルシウム)
・フィラー2:微粒子炭酸カルシウム(平均粒子径:1.4μm)(上記複合フィラー2の原料である微粒子炭酸カルシウム)
・フィラー3:タルク(平均粒子径:3.2μm、アスペクト比:25)(上記複合フィラー1~2の原料であるタルク)
・可塑剤:ジェイプラス社製DINP(ジイソノニルフタレート)
・硬化触媒:サンアプロ社製UCAT-660M(DMDEE(ジモルフォリノジエチルエーテル))
【0098】
<硬化剤>
・ポリオール:旭硝子社製プレミノール7001K(ポリオキシプロピレントリオール(EO(エチレンオキシド)末端)、水酸基価28mgKOH/g、分子量6,500)
・複合フィラー1~2:それぞれ上述した主剤中の複合フィラー1~2と同じもの。
・フィラー1~3:それぞれ上述した主剤中のフィラー1~3と同じもの。
・炭酸カルシウム:上述した主剤中の炭酸カルシウムと同じもの。
・シランカップリング剤:上述した主剤中のシランカップリング剤と同じもの。
・硬化触媒:上述した主剤中の硬化触媒と同じもの。
【0099】
<表のまとめ>
表1から分かるように、主剤と硬化剤の少なくとも一方が複合フィラー(E)を含有する実施例1~6は、優れた作業性及び優れた耐熱接着性を示した。なかでも、主剤が複合フィラー(E)を含有する実施例1~2及び実施例6は、より優れた接着性(100℃336時間)を示した。
また、実施例1と実施例6との対比(フィラー1及びフィラー3の有無のみが異なる態様同士の対比)から、複合フィラー(E)以外のタルクを含有しない実施例1は、より優れた耐熱接着性を示した。
また、実施例1~2と実施例5との対比(少なくとも主剤が複合フィラー(E)を含有する態様同士の対比)から、複合フィラー(E)の微粒子炭酸カルシウムの平均粒子径が1.0μm以下である、及び/又は、複合フィラー(E)の微粒子炭酸カルシウム/タルクが0.5以下である、実施例1及び実施例5は、より優れた耐熱接着性を示した。
【0100】
一方、複合フィラー(E)を含有しない比較例1~5は、耐熱接着性が不十分であった。また、複合フィラー(E)を含有しない比較例4~5は、作業性も不十分であった。