(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】光硬化性接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20240705BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240705BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240705BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240705BHJP
C09J 179/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09J163/00
C08G59/40
C09J11/04
C09J11/06
C09J179/00
(21)【出願番号】P 2021036466
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 一馬
(72)【発明者】
【氏名】泉 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】平山 康平
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】小川 亮
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221853(JP,A)
【文献】特開2020-045435(JP,A)
【文献】特開2010-180352(JP,A)
【文献】特開2007-231088(JP,A)
【文献】特開2007-101795(JP,A)
【文献】特開2013-254047(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083832(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0145268(US,A1)
【文献】特開2020-200451(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143777(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C08G 59/40
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 179/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の照射によって硬化可能に構成された光硬化性接着剤(1)であって、
エポキシ系接着成分(11)と、
100質量部の前記エポキシ系接着成分に対して1質量ppm以上150質量ppm以下のチタンブラック(12)と、を含
み、
前記チタンブラックの一次粒子径は5nm以上150nm以下である、光硬化性接着剤(1)。
【請求項2】
前記エポキシ系接着成分には、シアネートエステル樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、活性水素を有するアミン系潜在性硬化剤(C)と、が含まれている、
請求項1に記載の光硬化性接着剤。
【請求項3】
前記アミン系潜在性硬化剤(C)は、1分子中に1個以上の活性水素を有するアミン化合物とエポキシ化合物とを反応させてなる変性アミン(C-1)、及び、前記変性アミン(C-1)とフェノール樹脂との混合物(C-2)からなる群より選択される少なくとも1種である、
請求項2に記載の光硬化性接着剤。
【請求項4】
前記アミン系潜在性硬化剤(C)は、前記変性アミン(C-1)とフェノール樹脂との混合物(C-2)である、
請求項3に記載の光硬化性接着剤。
【請求項5】
前記シアネートエステル樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される化合物(A-1)、下記一般式(2)で表される化合物(A-2)、及び、前記化合物(A-1)~(A-2)のうち1種以上の化合物の重合体(A-3)からなる群より選択される少なくとも1種である、
請求項2~4のいずれか1項に記載の光硬化性接着剤。
【化1】
(ただし、前記一般式(1)におけるA
1及びA
2は、それぞれ独立に非置換のフェニレン基または炭素数1~4のアルキル基で置換されたフェニレン基を表し、Y
1は、エーテル結合、チオエーテル結合または置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。)
【化2】
(ただし、前記一般式(2)におけるmは1以上の整数であり、R
1~R
6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、Y
2及びY
3は、それぞれ独立に2価の炭化水素基またはフッ素置換された2価のアルキレン基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(1)におけるY
1、前記一般式(2)におけるY
2及びY
3は、下記構造式(3)~(11)で表される2価の炭化水素基のうち少なくとも1種である、
請求項5に記載の光硬化性接着剤。
【化3】
(ただし、前記構造式(3)における*は結合手を表し、R
7及びR
8はそれぞれ独立に水素原子、非置換のメチル基またはフッ素置換されたメチル基を表す。)
【化4】
(ただし、前記構造式(4)における*は結合手を表す。)
【化5】
(ただし、前記構造式(5)における*は結合手を表す。)
【化6】
(ただし、前記構造式(6)における*は結合手を表す。)
【化7】
(ただし、前記構造式(7)における*は結合手を表す。)
【化8】
(ただし、前記構造式(8)における*は結合手を表す。)
【化9】
(ただし、前記構造式(9)における*は結合手を表す。)
【化10】
(ただし、前記構造式(10)における*は結合手を表す。)
【化11】
(ただし、前記構造式(11)におけるnは4以上12以下の整数であり、*は結合手を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
光照射によって硬化可能に構成された光硬化性接着剤は、硬化に要する時間が比較的短いという特徴を活かし、種々の分野に用いられている。例えば特許文献1には、エポキシ系接着剤成分と、レーザ光の吸収により前記エポキシ系接着剤を加熱硬化させることが可能な光吸収性成分とを含む迅速光硬化性エポキシ系接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のエポキシ系接着剤組成物にレーザ光を照射する場合、接合しようとする部分の形状や塗布された接着剤組成物の形状等によっては、レーザ光が接着剤組成物の内部まで到達しにくいことがある。また、レーザ光が接着剤組成物の内部まで到達しない場合、接着剤組成物の内部の硬化が不十分となるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、深部硬化性に優れた光硬化性接着剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、レーザ光の照射によって硬化可能に構成された光硬化性接着剤(1)であって、
エポキシ系接着成分(11)と、
100質量部の前記エポキシ系接着成分に対して1質量ppm以上150質量ppm以下のチタンブラック(12)と、を含み、
前記チタンブラックの一次粒子径は5nm以上150nm以下である、光硬化性接着剤(1)にある。
【発明の効果】
【0007】
前記光硬化性接着剤(1)中には、前記特定の量のチタンブラック(12)が含まれている。光硬化性接着剤中のチタンブラックの含有量を前記特定の範囲とすることにより、光硬化性接着剤にレーザ光を照射した際に、光硬化性接着剤の深部までレーザ光を用意に到達させることができる。その結果、光硬化性接着剤の深部硬化性を向上させることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、深部硬化性に優れた光硬化性接着剤(1)を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1における光硬化性接着剤を模式的に示した説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態2における、光硬化性接着剤が適用されたレンズモジュールの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
前記光硬化性接着剤に係る実施形態について、
図1を参照して説明する。本形態の光硬化性接着剤1は、レーザ光の照射によって硬化可能に構成されている。光硬化性接着剤1に照射するレーザ光の波長は、チタンブラックが吸収可能な波長であればよい。例えば、レーザ光としては、780nm~3μmの波長を有する近赤外レーザを使用することができる。光硬化性接着剤1は、エポキシ系接着成分11と、チタンブラック12と、を含んでいる。以下、光硬化性接着剤1のより詳細な構成について説明する。
【0011】
1.エポキシ系接着成分
光硬化性接着剤1中のエポキシ系接着成分11は、レーザ光が照射された際に、チタンブラック12の発熱によって硬化することができるように構成されている。エポキシ系接着成分11には、シアネートエステル樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、アミン系潜在性硬化剤(C)と、が含まれていてもよい。シアネートエステル樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、アミン系潜在性硬化剤(C)とを含む光硬化性接着剤1は、レーザ光が照射されてから硬化するまでの時間をより短縮することができる。
【0012】
1-1.シアネートエステル樹脂(A)
シアネートエステル樹脂(A)としては、1分子中に2個以上のシアナト基(-O-CN)を有する化合物を使用することができる。シアネートエステル樹脂(A)は、例えば、下記一般式(1)で表される化合物(A-1)、下記一般式(2)で表される化合物(A-2)、及び、前記化合物(A-1)~(A-2)のうち1種以上の化合物の重合体(A-3)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であってもよい。
【0013】
【0014】
ただし、前記一般式(1)におけるA1及びA2は、それぞれ独立に非置換のフェニレン基または炭素数1~4のアルキル基で置換されたフェニレン基を表し、Y1は、エーテル結合、チオエーテル結合または置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。
【0015】
【0016】
ただし、前記一般式(2)におけるmは1以上の整数であり、R1~R6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、Y2及びY3は、それぞれ独立に2価の炭化水素基またはフッ素置換された2価のアルキレン基を表す。
【0017】
前記一般式(1)におけるY1、前記一般式(2)におけるY2及びY3は、例えば、下記構造式(3)~(11)で表される2価の炭化水素基であってもよい。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
ただし、前記構造式(3)~(11)における*は結合手を表す。前記構造式(3)におけるR7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、非置換のメチル基またはフッ素置換されたメチル基を表す。前記構造式(11)におけるnは4以上12以下の整数である。
【0028】
シアネートエステル樹脂(A)は、より具体的には、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂であることが特に好ましい。
【0029】
1-2.エポキシ樹脂(B)
エポキシ樹脂(B)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を使用することができる。エポキシ樹脂(B)は、1種のエポキシ基を有する化合物のみから構成されていてもよいし、2種以上のエポキシ基を有する化合物から構成されていてもよい。
【0030】
前記光硬化性接着剤1中におけるエポキシ樹脂(B)の含有量は、例えば、シアネートエステル樹脂(A)100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下の範囲から適宜設定することができる。エポキシ樹脂(B)の含有量をシアネートエステル樹脂(A)100質量部に対して1質量部以上とすることにより、光硬化性接着剤1にレーザ光を照射した際に光硬化性接着剤1を十分に硬化させることができる。光硬化性接着剤1の硬化性をより高める観点からは、エポキシ樹脂(B)の含有量は、シアネートエステル樹脂(A)100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。
【0031】
また、エポキシ樹脂(B)の含有量をシアネートエステル樹脂(A)100質量部に対して10000質量部以下とすることにより、優れた物性を有する硬化物を得ることができる。硬化物の物性をより向上させる観点からは、エポキシ樹脂(B)の含有量はシアネートエステル樹脂(A)100質量部に対して1000質量部以下であることが好ましく、500質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂(B)は、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどの単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノールなどの多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物などの多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類;グリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物等であってもよい。これらの化合物は、末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されていてもよいし、多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)によって高分子量化されていてもよい。
【0033】
反応性の観点から、前記エポキシ樹脂(B)には、グリシジル基を有するグリシジル型エポキシ樹脂が含まれていることが好ましく、多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物、グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物及びジシクロペンタジエンジメタノールのポリグリシジルエーテル化合物からなる群より選択される1種または2種以上の化合物が含まれていることがより好ましい。前記エポキシ樹脂(B)に多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物が含まれている場合には、硬化物の耐熱性をより向上させることができる。前記エポキシ樹脂(B)にグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物が含まれている場合には、光硬化性接着剤1の反応性をより向上させるとともに硬化物の耐熱性をより向上させることができる。前記エポキシ樹脂(B)にジシクロペンタジエンジメタノールのポリグリシジルエーテル化合物が含まれている場合には、光硬化性接着剤1に密着性を付与することができる。
【0034】
1-3.アミン系潜在性硬化剤(C)
アミン系潜在性硬化剤(C)としては、例えば、アミノ基に由来する活性水素を備えた化合物や、当該化合物を含む混合物を使用することができる。アミン系潜在性硬化剤(C)の含有量は、例えば、シアネートエステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対して1質量部以上100質量部以下の範囲から適宜設定することができる。アミン系潜在性硬化剤(C)の含有量は、シアネートエステル樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対して5~60質量部であることが好ましい。
【0035】
アミン系潜在性硬化剤(C)は、1分子中に1個以上の活性水素を有するアミン化合物とエポキシ化合物とを反応させてなる変性アミン(C-1)であってもよい。アミン系潜在性硬化剤(C)は、1種の変性アミン(C-1)から構成されていてもよいし、2種以上の変性アミン(C-1)から構成されていてもよい。
【0036】
変性アミン(C-1)は、前記アミン化合物に由来するアミン構造単位と、前記エポキシ化合物に由来するエポキシ構造単位とを有しており、前記アミン構造単位と前記エポキシ構造単位とが結合した構造を有している。変性アミン(C-1)に用いられるアミン化合物としては、例えば、分子内に2個の第1級及び/又は第2級アミノ基を有するジアミンや、分子内に2個以上の第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミンが挙げられる。これらのアミン化合物は、単独で使用されていてもよいし、2種以上のアミン化合物が併用されていてもよい。
【0037】
より具体的には、変性アミン(C-1)に用いられるアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の脂肪族ジアミン及びポリアミン;イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン等の脂環式ジアミン及びポリアミン;m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレン-2,4-ジアミン、トリレン-2,6-ジアミン、メシチレン-2,4-ジアミン、メシチレン-2,6-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,6-ジアミン等の単核ジアミン及びポリアミン;ビフェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、2,5-ナフチレンジアミン、2,6-ナフチレンジアミン等の芳香族ジアミン及びポリアミン;2-アミノプロピルイミダゾール等のアミノ基を有するイミダゾール化合物等が挙げられる。また、変性アミン(C-1)に用いられるアミン化合物としては、前述した化合物をエポキシ化合物と反応させてなるエポキシ変性アミンを使用することもできる。これらのアミン化合物は、単独で使用されていてもよいし、2種以上のアミン化合物が併用されていてもよい。
【0038】
前記変性アミン(C-1)は、分子内にそれぞれ反応性を異にする2個の第1級及び/又は第2級アミノ基を有するジアミン、及び、分子内に2個以上の第1級及び/又は第2級アミノ基を有し、その1個がエポキシ基と反応した場合その立体障害により残りの第1級及び/又は第2級アミノ基のエポキシ基との反応性が低下するポリアミンからなる群より選択される1種または2種以上のアミン化合物に由来する構造単位を有していることが好ましい。これらのアミン化合物を用いて得られる変性アミン(C-1)は、光硬化性接着剤1の接着性や硬化物の物性等を向上させることができる。なお、前述したジアミンには脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び芳香族ジアミンが含まれる。また、前述したポリアミンには脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン及び芳香族ポリアミンが含まれる。
【0039】
このようなジアミンとしては、例えば、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン及び1,2-ジアミノプロパン、m-キシリレンジアミン、1,3-ビスアミノシクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。
【0040】
また、アミン化合物としては、2-アミノプロピルイミダゾール等の第1級アミノ基を含有するイミダゾール化合物を使用することもできる。このようなイミダゾール化合物を用いて得られる変性アミン(C-1)は、光硬化性接着剤1の低温硬化性をより向上させ、低い温度においても光硬化性接着剤1をより容易に硬化させることができる。
【0041】
変性アミン(C-1)に用いられるエポキシ化合物は、1分子内に1個以上のエポキシ基を有していればよい。
【0042】
より具体的には、変性アミン(C-1)に用いられるエポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、第二ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル化合物、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノグリシジルエステル化合物、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどの単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(つまり、ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(つまり、ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノールなどの多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物などの多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類;グリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で使用されていてもよいし、2種以上のエポキシ化合物が併用されていてもよい。
【0043】
変性アミン(C-1)に用いられるエポキシ化合物は、分子内にエポキシ基を2個以上有するポリグリシジルエーテル化合物であることが好ましく、メチレンビスフェノール(つまり、ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(つまり、ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)等のビスフェノール化合物のポリグリシジルエーテルであることが特に好ましい。
【0044】
変性アミン(C-1)の作製に当たっては、反応後に1級及び/又は2級アミノ基が残存するように、アミン化合物とエポキシ化合物とを反応させればよい。例えば、1級及び/又は2級アミノ基を1分子中に合計2個以上有するアミン化合物とエポキシ化合物とを反応させる場合には、アミン化合物が1モルとなる量に対し、エポキシ化合物をそのエポキシ当量が0.5~2当量となる量で反応させることが好ましく、0.8~1.5当量となる量で反応させることがより好ましい。
【0045】
アミン系潜在性硬化剤(C)は、前記変性アミン(C-1)とフェノール樹脂との混合物(C-2)であってもよい。混合物(C-2)中には、1種の変性アミン(C-1)が含まれていてもよいし、2種以上の変性アミン(C-1)が含まれていてもよい。同様に、混合物(C-2)中には、1種のフェノール樹脂が含まれていてもよいし、2種以上のフェノール樹脂が含まれていてもよい。アミン系潜在性硬化剤(C)として前記混合物(C-2)を使用することにより、光硬化性接着剤1の貯蔵安定性をより向上させることができる。
【0046】
変性アミン(C-1)と組み合わせて使用されるフェノール樹脂は、例えばフェノール類とアルデヒド類とを縮重合して得られる樹脂である。フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ナフトール、テルペンフェノール、フェノール化ジシクロペンタジエンなどを挙げることができる。また、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒドを挙げることができる。
【0047】
前記変性アミン(C-1)とフェノール樹脂との混合物(C-2)におけるフェノール樹脂の含有量は、例えば、100質量部の変性アミン(C-1)に対して10質量部以上100質量部以下の範囲から適宜設定することができる。
【0048】
1-4.充填材
エポキシ系接着成分11中には、シアネートエステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及びアミン系潜在性硬化剤(C)に加えて、充填材13が含まれていてもよい。エポキシ系接着成分11中に充填材13を配合することにより、光硬化性接着剤1の硬化物の物性を向上させることができる。充填材13としては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、ガラス、窒化ホウ素、二酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、炭素繊維、酸化鉄及びダイヤモンド等の無機フィラーを使用することができる。充填材13は、透光性を有することが好ましく、波長800nm~1100nmの赤外線レーザ光の透過率が80%以上であることがより好ましい。この場合には、光硬化性接着剤1の硬化性を向上させることができる。
【0049】
2.チタンブラック
光硬化性接着剤1中には、100質量部のエポキシ系接着成分11に対して1質量ppm以上150質量ppm以下のチタンブラック12が含まれている。チタンブラック12は、チタン原子を有する黒色粒子であり、780nm~3μmの波長を有する近赤外光に対する透過率と吸光度とのバランスに優れている。そのため、前記特定の量のチタンブラック12を含む光硬化性接着剤1に近赤外レーザ光を照射した場合、光硬化性接着剤1の深部までレーザ光が到達しやすい。また、チタンブラック12はレーザ光を吸収した際に発熱する性質を有しているため、レーザ光を吸収したチタンブラック12が発熱することにより、エポキシ系接着成分11全体を加熱硬化させることができる。
【0050】
チタンブラック12の含有量は、100質量部のエポキシ系接着成分11に対して1質量ppm以上150質量ppm以下である。チタンブラック12の含有量を100質量部のエポキシ系接着成分11に対して1質量ppm以上とすることにより、レーザ光を照射した際に光硬化性接着剤1を十分に加熱し、エポキシ系接着成分11を硬化させることができる。レーザ光を照射した際の発熱量をより高くする観点からは、チタンブラック12の含有量は、100質量部のエポキシ系接着成分11に対して3質量ppm以上であることが好ましく、5質量ppm以上であることがより好ましい。
【0051】
また、チタンブラック12の含有量を100質量部のエポキシ系接着成分11に対して150質量ppm以下とすることにより、レーザ光を光硬化性接着剤1の深部までより容易に到達させることができ、光硬化性接着剤1の深部硬化性をより向上させることができる。光硬化性接着剤1の深部硬化性をより向上させる観点からは、チタンブラック12の含有量は、100質量部のエポキシ系接着成分11に対して120質量ppm以下であることが好ましい。
【0052】
チタンブラックは、一次粒子から構成されていてもよいし、一次粒子の凝集体であってもよい。チタンブラックの一次粒子径は、5nm以上150nm以下である。これにより、近赤外光に対する透過率と吸光度とをよりバランスよく高めることができる。なお、チタンブラックの一次粒子径は、BET法による比表面積に基づいて算出される値である。
【0053】
光硬化性接着剤1中には、1種のチタンブラック12が含まれていてもよいし、2種以上のチタンブラック12が含まれていてもよい。チタンブラック12としては、例えば、三菱マテリアル電子化成株式会社製チタンブラック「12S」、「16M」、「13M」、「13M-C」、「13M-T」、「UF-8」、赤穂化成株式会社製「Tilack D」等の市販品を使用することができる。また、チタンブラック12は、二酸化チタン又は水酸化チタンに、必要によりバナジウム化合物を付着させた後、アンモニアガス、アミンガス等の窒素含有還元剤の存在下で、電気炉法、熱プラズマ法等の気相反応法により高温焼成することにより得られるものであってもよい。
【0054】
3.その他の成分
光硬化性接着剤1中には、エポキシ系接着成分11及びチタンブラック12の他に、接着剤に用いられる種々の添加剤が含まれていてもよい。
【0055】
例えば、光硬化性接着剤1中には、取り扱いを容易にするため、種々の溶剤が含まれていてもよい。溶剤としては、有機溶剤を使用することが好ましい。より具体的には、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等のエーテル類、イソ-またはn-ブタノール、イソ-またはn-プロパノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、アセトニトリルなどを溶剤として使用することができる。
【0056】
なお、光硬化性接着剤1中には、深部硬化性に影響を及ぼさない範囲であれば、チタンブラック12以外の光吸収性成分を含んでいてもよい。チタンブラック12以外の光吸収性成分としては、例えば、カーボンブラック、黒色含金塗料、アジン系塗料、ニグロシン系化合物などの光吸収性物質を用いることができる。ニグロシン系化合物としては、例えば、ニグロシンの硫酸塩、リン酸塩等の水不溶性ニグロシン系化合物などを挙げることができる。チタンブラック12以外の光吸収性成分の含有量は、100質量部のエポキシ系接着成分11に対して10質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以下であることがより好ましく、0.1質量ppm以下であることがさらに好ましく、0質量ppm、つまり、光硬化性接着剤1中にチタンブラック12以外の光吸収性成分が含まれないことが最も好ましい。
【0057】
(実施形態2)
本形態においては、実施形態1の光硬化性接着剤1の用途の例を説明する。なお、本形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0058】
実施形態1の光硬化性接着剤1は、種々の用途に適用することができる。例えば、光硬化性接着剤1は、
図2に示すようなレンズモジュール2における構成部材同士の接合に使用されていてもよい。
図2のレンズモジュール2は、回路基板21と、回路基板21上に設けられたレンズホルダ22と、レンズホルダ22に保持された1枚以上のレンズ23と、回路基板21におけるレンズ23の光路L上に保持された撮像素子24と、を有している。そして、これらの構成部材同士は、光硬化性接着剤1の硬化物10を介して接合されている。なお、レンズホルダ22には、レンズ23に替えて光学フィルタが保持されていてもよい。
【0059】
また、光硬化性接着剤1は、レーザ光を照射することができる態様であれば、どのような態様で用いられていてもよい。例えば、図には示さないが、光硬化性接着剤1は、部材の端面同士を接合する突き合わせ接合や、平板状部材の板面と端面とを接合する端面部接合、凹部を有する部材と、この凹部に差し込まれた相手材とを接合する差込接合等の種々の接合態様に適用することができる。また、光硬化性接着剤1は、ネジロック剤や、電子部品と回路基板との隙間を封止するアンダーフィル、半導体素子と回路基板とを接続するボンディングワイヤの保護材などの種々の用途に用いることもできる。
【0060】
また、光硬化性接着剤1は、種々の材質の部材に対して接着性を有しているため、接合対象の部材の材質は特に制限されるものではない。前記光硬化性接着剤1の、基材表面に近い部分まで効率的に硬化させることができるという特性を活かす観点からは、例えば、前記光硬化性接着剤1を、従来接着・硬化させることが困難とされるステンレス鋼のような金属表面との接着に好適に用いることができる。
【0061】
(実験例)
本例では、実施形態1に係る光硬化性接着剤1のより具体的な構成の例を説明する。本例においては、まず、シアネートエステル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、アミン系潜在性硬化剤(C)、チタンブラック12及び充填材13が表1に示す質量比で含まれている光硬化性接着剤1(試験剤S1~S3)を準備した。本例において用いたシアネートエステル樹脂(A)はビスフェノール型シアネートエステル樹脂(Lonza社製「LECy」)であり、エポキシ樹脂(B)はビスフェノールA型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製「アデカレジンEP-4100E」)であり、充填材13はシリカ(デンカ株式会社製「FB-975FD」)である。なお、「アデカレジン」は株式会社ADEKAの登録商標である。
【0062】
チタンブラック12としては、一次粒子径の異なる3種のチタンブラックを準備した。本例において使用したチタンブラック12は、具体的には以下の通りである。
P-1:一次粒子径97nmのチタンブラック(三菱マテリアル電子化成株式会社製「13M-C」)
P-2:一次粒子径75nmのチタンブラック(三菱マテリアル電子化成株式会社製「13M」)
P-3:一次粒子径20nmのチタンブラック(三菱マテリアル電子化成株式会社製「UF8」)
【0063】
アミン系潜在性硬化剤(C)としては、変性アミン(C-1)とフェノール樹脂との混合物(C-2)を使用した。本例で使用した変性アミン(C-1)及び混合物(C-2)の作製方法は以下の通りである。
【0064】
まず、フラスコ中に201g(つまり、2.71モル)の1,2-ジアミノプロパンを入れた後、60℃に加温した。次いで、系内の温度が100~110℃に維持されるようにしながら、580gのビスフェノールA型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製「アデカレジンEP-4100E」、エポキシ当量190)をフラスコ内に少しずつ加えた。なお、1,2-ジアミノプロパンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを上記のように配合した場合、1,2-ジアミノプロパン1モルに対するビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量は1.12である。
【0065】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の添加が完了した後、反応系内を140℃まで昇温させ、この温度を1.5時間保持して内容物を反応させた。以上により、変性アミン(C-1)を得た。
【0066】
次に、上記の方法で得られた変性アミン(C-1)100gとフェノール樹脂(旭有機材株式会社製「MP-800K」、軟化点100℃)30gとを混合した後、混合物を30~40Torrの減圧環境下で180~190℃の温度に1時間保持して減圧脱気を行った。これにより、混合物から未反応物を除去した。その後、混合物をジェットミルで粉砕した。以上により、混合物(C-2)を得た。
【0067】
また、本例においては、試験剤S1~S3との比較のため、試験剤S4~S7を準備した。試験剤S4は、チタンブラック12が含まれていない以外は試験剤S1~S3と同様の構成を有している。試験剤S5は、チタンブラック12の配合量が異なる以外は試験剤S1と同様の構成を有している。試験剤S6及び試験剤S7は、チタンブラックに替えてカーボンブラック(三菱カーボンブラック株式会社製「#750B」、一次粒子径22nm)を用いた以外は試験剤S1~S3と同様の構成を有している。
【0068】
次に、試験剤S1~S7の深部硬化性を以下の方法により評価した。まず、アセトンにより脱脂したSUS430の基材に、シリコーン製の型枠を載置し、型枠内に試験剤S1~S7のいずれかを注入した。なお、型枠の厚みは1mmとし、型枠の内寸は、縦2mm、横3mmの長方形状とした。
【0069】
次に、型枠内の試験剤に915nmの波長を有する近赤外レーザ光を照射することにより試験剤を硬化させた。近赤外レーザの出力及び照射時間は表1に示す通りとした。レーザ光を試験剤に照射した後、基材から型枠を取り外した。以上により、基材上に縦2mm、横3mm、厚み1mmの試験剤の硬化物が形成された試験片を得た。
【0070】
得られた試験片の基材を接合強度試験機(Nordson DAGE社製「4000Plus ボンドテスター」)に取り付け、硬化物をツールで押圧することによりせん断力を加えた。そして、硬化物が基材から外れた時点での試験力に基づいて、硬化物のせん断接着強さを算出した。なお、ツールの移動速度は200μm/秒とし、基材の表面とツールとの間隔は100μmとした。
【0071】
表1の「深部硬化性」欄には、硬化物のせん断接着強さが1.0MPa以上である場合には記号「A」を記載し、1.0MPa未満である場合には記号「B」を記載した。深部硬化性の評価においては、硬化物のせん断接着強さが1.0MPa以上である記号「A」の場合を深部硬化性に優れているため合格と判定し、1.0MPa未満である記号「B」の場合を深部硬化性に劣るため不合格と判定した。
【0072】
【0073】
表1に示すように、試験剤S1~S3中には、前記特定の量のチタンブラック12が含まれている。そのため、これらの試験剤を用いた場合には、レーザ光を照射した際に試験剤の内部までレーザ光が到達し、試験剤全体を十分に硬化させることができた。
【0074】
一方、試験剤S4には、レーザ光を吸収可能な成分が含まれていない。そのため、レーザ光の照射によって試験剤S4を十分に硬化させることができなかった。
試験剤S5中のチタンブラック12の含有量は前記特定の範囲よりも多い。そのため、照射されたレーザ光が試験剤S5の深部まで十分に到達せず、試験剤S5の深部を十分に硬化させることができなかった。
【0075】
試験剤S6及び試験剤S7には、レーザ光を吸収可能な成分として、チタンブラック12に替えてカーボンブラックが用いられている。そのため、照射されたレーザ光がこれらの試験剤の深部まで十分に到達せず、試験剤の深部を十分に硬化させることができなかった。
【0076】
本発明は上記各実施形態及び実験例の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 光硬化性接着剤
11 エポキシ系接着成分
12 チタンブラック